| 【発明の名称】 |
光線力学療法製剤 |
| 【発明者】 |
【氏名】上田 栄一 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目26番2号 コニカミノルタエムジー株式会社内
【氏名】元杭 康之 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿一丁目26番2号 コニカミノルタエムジー株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 脂質膜内またはその内部水相に、光増感性化合物を含め少なくとも1種以上の薬物を内 包し、かつ実質的に有機溶剤を含まないリポソームを含むことを特徴とする光線力学療法製剤。 【請求項2】 前記リポソームは、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する少なくとも1種の化 合物が存在する条件下で、脂質膜を構成する脂質膜成分と超臨界もしくは亜臨界状態の二酸化炭素とを混合することにより作製されることを特徴とする請求項1に記載の光線力学療法製剤。 【請求項3】 前記のポリエチレングリコール基を有する化合物が、PEG−リン脂質であることを特徴とする請求項1または2に記載の光線力学療法製剤。 【請求項4】 前記脂質膜が、実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の光線力学療法製剤。 【請求項5】 前記光増感性化合物が、ポルフィマーナトリウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の光線力学療法製剤。 【請求項6】 カテーテルを通じて患部に直接送達されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の光線力学療法製剤。 【請求項7】 がんの光線力学療法に用いられることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の光線力学療法製剤。 【請求項8】 温熱療法を併用することを特徴とする請求項7に記載の光線力学療法製剤。 【請求項9】 前記薬物として、さらに造影物質を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の光線力学療法製剤。 【請求項10】 ポリエチレングリコール基を有する少なくとも1種の化合物が存在する条件下で、脂質 膜成分としてリン脂質とともに、カチオン性脂質およびステロール類から少なくとも1種 選ばれる化合物、さらには必要に応じて親油性の薬物を超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散させた後、少なくとも1種以上の薬物を含む溶液もしくは 懸濁液を導入することによりミセルを形成させ、次いで水を加えて二酸化炭素を排出して、それらの薬物を内部に含有するリポソームを作製することを含む請求項1〜9のいずれかに記載の光線力学療法製剤の製造方法。 【請求項11】 前記のポリエチレングリコール基を有する化合物を、超臨界状態もしくは亜臨界状態にする二酸化炭素に対して0.01〜1質量%の割合で用いることを特徴とする請求項10に記載 の光線力学療法製剤の製造方法。 【請求項12】 i)がんの栄養血管に通じる動脈からカテーテルをなるべくがん組織近傍まで挿入し、 ii)前記の導入用カテーテルを通じて、前記の光線力学療法製剤をがん組織に直接注入しiii)前記カテーテルを通じて、ダイオードレーザーファイバーをがん組織に挿入し、 iv)600〜800nm波長を持つ光の照射によって、前記がん組織を治療すること から構成される、光線力学療法製剤を用いるがんの治療方法。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、光線力学療法製剤に関し、詳しくは光線力学療法に用いられる光増感性化合物を内包するリポソームを含有する光線力学療法製剤およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 光線力学療法(Photodynamic therapy、PDTともいう)として知られる光化学的治療は 、皮膚または他の上皮器官における種々の異常または疾患、特にがんまたは前がん的病変ならびに非悪性の病巣、たとえば乾せんといった皮膚疾患などを処置するための技術である。光線力学療法は、光増感剤を身体の患部に適用した後、その光増感剤を活性化して細胞毒性を示す形態に変換するために光活性化光線に曝すことを含んでいる。これにより病変細胞を殺すか、またはそれらの増殖能力を減少させる。 【0003】 一連の光増感剤が知られており、有名なものにソラレン類、ポルフィリン類、クロリン類およびフタロシアニン類などが挙げられる。このような薬物は、光に曝されたときに毒性になるか、毒性の化学種を生じせしめる。しかしながら、光増感剤の多くは、未だ、すべての異常または疾患を処置するのにはPDT施行上の何らかの制限を伴っている。したがって異常または疾患を処理するために、既存の光増感物質の製剤的改良を含む、より優れた光線力学用治療剤が依然として必要とされる。 【0004】 最近、有望ながん治療法の1つとしてレーザー治療法が注目されており、光線力学療法 はその範疇にも属する。この技術は、非毒性の光増感性薬物の投与と光増感させるための有害ではない光線照射との組み合わせを利用しており、一般にがん治療に施行される外科切除手術に比べて非侵襲的な治療である。また副作用が問題となりやすい化学療法または放射線療法と比較すると、選択的ではあるが、副作用がより低くなる可能性を秘めている。臓器温存が可能であることから、治療されている患者の生活の質(Quality of Life) を向上させる有用な治療法となることが期待されている。 【0005】 そのようながんに対する光線力学療法は、1980年代から研究され、1990年代からは光線力学療法の臨床治療が、日本、アメリカ、カナダ、ドイツなどの多くの国で開始されている。最近の統計からはこの療法の症例が年を追うほど増大していることを示されている。 【0006】 しかし、がんの光線力学療法は次のような基本的な問題がある。i)体内に転移した多 数の病巣が存在するがんの場合には、この療法は、光線が悪性腫瘍組織の全体に透過することができないため、利用できない。ii)光増感剤の価格が非常に高い。iii)光増感剤 は、毒性が示されるまで人体で徐々に分解代謝される。iv)悪性腫瘍中の光増感剤の濃度を高くすることができず、治療効果の低減をもたらす。 【0007】 リポソームを利用することによりPDT用製剤のDDS(薬物送達システム)的改良が進められている。生体膜類似の脂質から構成され、低い抗原性ゆえに安全性が高いとされているリポソームに光増感剤を内包させる手法も検討されている。たとえば、ポルフィリンおよびその誘導体を内包させ、光と組み合わせて腫瘍の治療に用いるリポソーム(特許文献1)、あるいは9−ヒドロキシフェオフォルビド−aとリポソームとの複合体(特表2004-513948号)などが提案されている。これらの方法では、素材としての安全性が高く 、生体内で適度な分解性を有するリポソームを用いるにもかかわらず、製造過程においてリポソーム膜を構成するリン脂質の溶剤として、有機溶媒、特にクロロホルム、ジクロロメタンといったクロル系溶剤を使用する。したがって、どうしても残存する溶剤の毒性があるという理由で実用化に至っていない(たとえば、特許文献2参照)。 【0008】 他方、脂溶性の薬剤は容易にリポソーム中に封入されるが、その封入量は他の要因にも左右されるために必ずしも多くはない。また水溶性電解質である薬剤は、その薬剤の電荷と荷電した脂質の電荷との相互作用を通じてリポソーム内部の水相に封入できるが、薬剤が水溶性の非電解質である場合には、そうした手段を採ることはできない。 【0009】 特開2003-119120(特許文献3)では、リポソームを含有する化粧料、皮膚外用剤を、 超臨界二酸化炭素を用いて製造する方法が開示されており、親水性薬効成分や親油性薬効成分をリポソームに内包する皮膚外用剤の製造例が示されている。しかし、親水性薬効成分として、水溶性電解質の例は示されているが、同法により水溶性非電解質をリポソームに効率よく内包できるか不明であった。またこの方法では、内包率を上げるため、エタノール等の助溶剤の使用が望まれており、有機溶媒を使用せずに内包化率の高いリポソームは作製できない。 【0010】 首尾良く抗がん剤または造影物質をリポソーム内部に内包させても、時間経過とともに外部へ漏出する問題、あるいはリポソームそのものが不安定となる事態も考慮されねばならない。さらにリポソームを生体内へ投与しても、その多くが肝臓、脾臓などの網内系組織で捕捉されるため、所期の効果が得られないことも指摘されている(Cancer Res., 43, 5328(1983))。したがってリポソーム製剤または造影物質を効率よく封入して安定的に 保持でき、かつ安全性に問題のないリポソームの作製方法が望まれている。 【特許文献1】特許第3020372号 【特許文献2】特許第2882607号 【特許文献3】特開2003-119120号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明は、上記の要請に取り組むものであり、有機溶媒を使用せずに作製されるリポソーム内に光増感性化合物を内包させてなる光線力学療法製剤を提案する。本製剤は、がん組織への高い選択性、体内からの容易な排泄性、低副作用性を有する安全性の高い光線力学療法製剤であり、全身投与および局所投与のいずれの治療にも有用である。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明は、脂質膜内またはその内部水相に、光増感性化合物を含め少なくとも1種以上 の薬物を内包し、かつ実質的に有機溶剤を含まないリポソームを含むことを特徴とする光線力学療法製剤である。 【0013】 前記リポソームは、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する少なくとも1種の化 合物が存在する条件下で、脂質膜を構成する脂質膜成分と超臨界もしくは亜臨界状態の二酸化炭素とを混合することにより作製されることを特徴としている。 【0014】 前記のポリエチレングリコール基を有する化合物が、好ましくはPEG−リン脂質である。 前記脂質膜が、実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであることが望ましい。 【0015】 また、前記光増感性化合物は、ポルフィマーナトリウムが望ましい。 本発明の製剤は、カテーテルを通じて患部に直接送達されてもよい。 また、好ましくはがんの光線力学療法に用いられる。 【0016】 温熱療法を併用されてもよい。 前記薬物として、さらに造影物質を含むこともある光線力学療法製剤である。 本発明の前記光線力学療法製剤の製造方法は、ポリエチレングリコール基を有する少なくとも1種の化合物が存在する条件下で、脂質膜成分としてリン脂質とともに、カチオン 性脂質およびステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物、さらには必要に応じて親 油性の薬物を超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散させた後、少なくとも1種以上の薬物を含む溶液もしくは懸濁液を導入することによりミセルを形成 させ、次いで水を加えて二酸化炭素を排出して、それらの薬物を内部に含有するリポソームを作製することを含む製造方法である。 【0017】 前記のポリエチレングリコール基を有する化合物を、超臨界状態もしくは亜臨界状態にする二酸化炭素に対して0.01〜1質量%の割合で用いてもよい。 本発明のがんの治療方法は、 i)がんの栄養血管に通じる動脈からカテーテルをなるべくがん組織近傍まで挿入し、 ii)前記の導入用カテーテルを通じて、前記の光線力学療法製剤をがん組織に直接注入しiii)前記カテーテルを通じて、ダイオードレーザーファイバーをがん組織に挿入し、 iv)600〜800nm波長を持つ光の照射によって、前記がん組織を治療すること から構成される、光線力学療法製剤を用いるがんの治療方法である。 [発明の詳細な説明] 本発明の光線力学療法製剤は、脂質膜内またはその内部水相に、光増感性化合物を含め少なくとも1種以上の薬物を内包し、実質的に有機溶剤を含まないリポソームを含有する ことを特徴としている。 【0018】 本明細書において、「光線力学療法」とは、紫外線、可視光、赤外光などの光に反応する光増感性化合物を体内に取り入れ、光を照射することによって標的箇所を治療する光化学的治療の一方法である。 【0019】 「リポソーム」は、通常、脂質膜、すなわち脂質二重膜から形成されている構造物である。また本明細書では、リポソーム膜を「脂質膜」と言及することもある。リポソーム内に「内包」されるとは、リポソーム内に封入されてそのリン脂質膜と会合しているか、またはリン脂質膜内部に閉じ込められている水相(内部水相)中に存在している状態の両方を含むものとする。また、脂質膜内またはその内部水相に含有される「薬物」には、光増感性化合物、抗がん剤、造影剤、製剤助剤などが含まれる。「がん」は、悪性腫瘍を指し、単に「腫瘍」ということもある。「実質的に」とは、造影剤における残存有機溶媒の濃度の上限値が10μg/Lであることを意味する。 光増感性化合物 本明細書に使用される「光線力学療法製剤(ときに「リポソーム製剤」ともいう)」は、光増感性化合物、すなわち光活性化する光線の照射を受けて、細胞毒性の形態に変換されるか、細胞毒性種を生じさせる光増感性の物質を含有する製剤を言う。リポソームに内包される光増感性化合物として、これまで多数の光増感物質が知られている。本発明の製剤に含まれるリポソームは、使用目的に応じて、いずれの光増感性化合物をも内包して光線力学療法に使用することができる。光増感性化合物については、ソラレン類、クロリン類、フタロシアニン類またはポルフィリン類、あるいはプロトポリフィリンの構造的前駆体であるプロトポルフィリン前駆体(たとえば、自然界に存在する前駆体)ならびに光化学治療剤として機能するそれらの誘導体、たとえばALA、ポルホビリノーゲンまたはそれらの前駆体またはそれらの誘導体(たとえばALAエステル)などが知られている。 【0020】 光増感性化合物は、様々な機構で直接的にまたは間接的にその効果を発揮する。たとえばある光増感性化合物は光により活性化されると、直接に毒性になる。これに対し他のものは、毒性化学種、具体的には、一重項酸素または他の酸素由来のフリーラジカルなどといった酸化剤を生成するように振る舞う。これらの化学種は、脂質、タンパク質および核 酸などの生体分子および細胞物質に対して、極めて有害である。ソラレン類は、直接に作用する光増感性化合物の一例である。この光増感性化合物を用いる潜在的リスクは、望ましくない変異原性および発癌性の副作用が起きる可能性があることである。 【0021】 このような光増感性化合物に代えて、好ましくは間接的な作用様式を有する光増感性化合物が採用される。たとえば、毒性の酸素種を生成することにより間接的に作用するポルフィリン類は、変異原性の副作用を持たず、光化学治療により好都合な候補物質といえる。ポルフィリン類は、ヘムの合成において自然に生じる前駆体である。特に、鉄(Fe3+)が酵素フェロキラターゼ(ferrochelatase)の反応によりプロトポルフィリン IX(Pp) 中に取り込まれると、ヘムが形成される。Pp は、極めて強力な光増感性化合物であるが 、ヘムには光増感効果がない。 【0022】 したがって、好ましい光増感性化合物としては、特に限定されるものではないが、 ポルフィリン(porphyrin); プロトポルフィリン誘導体; フォトフリンTM (Quadra Logic Technologies社(バンクーバー、カナダ) およびヘマトポルフィリン IX(HpIX)などのヘマトポルフィリンIX(hematoporphyrin,HpD); フォトサンIII (Seehof Laboratorium GmbH、Seehof、Wessel- burenerkoog、ドイツ);テトラ(m-ヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC) などのようなクロリン(chlorin); それらのバクテリオクロリン(bacteriochlorin, Scotia Pharmaceuticals社、サリー、 英国)、モノ-L-アスパルチルクロリンe6(NPe6) (Nippon Petrochemical社,CA,アメリカ)、クロリンe6 (Porphyrin Products社)、ベンゾポルフィリン類(Quadra Logic Technologies社、バンクーバー、カナダ)(たとえばベンゾポルフィリンの1価酸環A誘導体、BPD-MA)およびプルプリン類(PDT Pharmaceuticals社、CA、アメリカ)(たとえばスズ-エチルエ チオプルプリン、SnET2); フタロシアニン類(たとえば亜鉛-(Quadra Logic Technologies社,バンクーバー、カナダ)、アルミニウム−あるいはケイ素フタロシアニン類、これらはスルホン酸化されてもよく、特にアルミニウムフタロシアニンジスルホネート(AlPcS2a)、アルミニウムフタロシア ニンテトラスルホネート(AlPcS4)などのスルホン酸化されたフタロシアニン類; ポルフィシーン類(porphycenes); ヒポクレリン(hypocrellins); プロトポルフィリンIX(PpIX); ヘマトポルフィリンジエーテル類; ウロポルフィリン類; コプロポルフィリン類; デューテロポルフィリン; ポリヘマトポルフィリン(PHP) ; ルテチウム テクサフィリン(lutetium texaphyrin, LU-TEX) ; 5-アミノレブリン酸(ALA); ポルホビリノーゲン; ALA エステル類; verteporfin、purlytin、; クロロフィル(chlorophyll)およびバクテリオクロロフィル(bacteriochlorophyll)の誘導体(米国特許No. 5,650,292); およびこれらの前駆体および誘導体が挙げられる。 【0023】 例示の光増感化合物は、それぞれ固有の特徴を有しており、用途に応じてその特徴を適切に活かした使用が望まれる。以下、若干の光増感化合物についてさらに詳述する。 ポルフィリン系薬物の一つであるフォトフリン(Photofrin)TMは、近年、特定のがん の治療における光増感性化合物として承認され、良好な治療効果および安定性を示してい る。フォトフリンは、ポルフィリンの大きなオリゴマーからなり、局所的に適用された場合には、容易には皮膚を浸透しない。それゆえ非経口的に、一般的には静脈内に投与されねばない。しかし、そのような光増感性化合物を静脈内投与した後、5〜6週間はまだ光増感性化合物は体内に残存して、皮膚の光増感を引き起こすという副作用をもたらす。さらに、光線力学療法に最適な光スペクトル(650〜800nm)と比較すれば、フォトフリンの最大光吸収の波長、630nmは低く、悪性腫瘍組織まで届く光透過量は少ない。また純粋なフ ォトフリンを化学合成で調製するためには、いくつかの障害がある。 【0024】 「ヘマトポルフィリン誘導体(Hpd)」などの他のポルフィリン系の光増感性化合物に ついても、がんの光化学治療における利用が報告されている(たとえば、S.Dougherty.J.Natl.Cancer Ins.,1974年,52; 1333; Kellyおよび Snell,J.Urol,1976年,115: 150を参照)。Hpdは、ヘマトポルフィリンを酢酸および硫酸で処理し、その後アセチル化物をアルカリで溶解させることにより得られる複合体混合物である。そうした混合物を使用することには、薬物として不確定な面があるという欠点がある。さらにHpdもまた注射 によって投与されねばならないことから、フォトフリンに見られる同じタイプの副作用が存在する。 【0025】 次世代の光増感性化合物として、ポルフィリン(porphyrin)、クロリン(chlorin)、バクテリオクロリン(bacteriochlorin)およびポルフィシーン(porphycene)が開発さ れている(J. Org. Chem.、第63巻、1646〜1656頁、1998年)。フェオフィチン(pheophytin)は、植物のクロロフィルから金属イオンを除去した後に調製され、フォトフリンと 比べ長波長側で良好な吸収を示す。フェオフィチン自体も光増感性化合物として利用することができるが、その分子構造を変形することにより、さらに優れた光増感性化合物に発展させることができる。しかしながら、その多くは安定性、排泄性、副作用のいずれかの点で依然として問題を残している。 【0026】 Pp前駆体の5- アミノレブリン酸(ALA)が、ある特定の皮膚癌のための光化学治療 剤として研究された(たとえば、WO91/01727参照)。基底細胞癌および扁平上皮癌を覆う皮膚は、健康な皮膚よりもALA を浸透しやすく、皮膚腫瘍中ではフェロキラターゼ濃 度が低いため、ALAの局所的適用は、腫瘍中で選択的に増強されたPp産生に導くことが見出された。しかしALAを用いた光化学治療は、他の病変に対しては必ずしも充分に満足すべきものとは限らない。ALAは、広範囲の腫瘍または他の病態の処置を可能とするほど充分に効果的にすべての腫瘍および他の組織を浸透することができない。そのためALAエステルなどの誘導体を用いる改良が進められている。 【0027】 上記の公知である光増感性化合物は、光線力学療法の利用に際して求められる要件をすべて充たすものはなく、それぞれに一長一短がある。本発明の製剤において、使用目的に適う光増感性化合物を使用する場合には、以下の条件を満足する化合物を選択すればよい。 i)三重項酸素から一重項酸素への高い光反応収率を有すること、 ii)長波長側、特に波長600nm以上のスペクトルの高い吸収を示すこと、 iii)リポソームから放出された後、正常細胞からは速やかに排泄されること、 iv)光増感性化合物自体の最小の副作用および毒性、および v)高純度かつ低コストでの大量生産 本発明の光線力学療法製剤において、光増感性化合物は、ポルフィリン系光増感物質およびクロロフィル系光増感物質から少なくとも1種選ばれることが望ましい。特にがんのPDT用製剤では、光増感性化合物としてポルフィリン系の増感物質が好ましく使用される。ポルフィリン系の増感物質は、悪性腫瘍組織中に蓄積する傾向があることが知られている(特許文献1)。具体的には、向腫瘍性を有するポルフィリン、ヘマトポルフィリンIX、ヘマトポルフィリン誘導体(HpD)などが好ましい。特にリポソームに担持させ る容易性からポルフィマーナトリウム(フォトフリンTM)が好ましい。 リポソーム 本発明の光線力学療法製剤では、光増感性化合物などをマイクロキャリヤーとしてのリポソーム内に封入した形態で使用することにより、標的の臓器、組織の病巣へ効率よく送達させることを図っている。本発明に用いられる好ましいリポソームは、その脂質膜が実質的に一枚膜もしくは数枚膜であり、内包容量が大きくしかも経時および血中での安定性が改善されているリポソームである。 【0028】 本発明のリポソーム製剤において、光増感性化合物などを内包するリポソームの粒径およびその脂質膜を適切に設計することによりターゲティング機能を付与することができる。特に全身投与の場合には、受動的ターゲティングおよび能動的ターゲティングいずれも考慮することが望ましい。前者は、リポソームの粒径、脂質組成、荷電などの調整を通じてその生体内挙動を制御することができる。リポソーム粒径を狭い範囲に揃える調整は、後述する方法に基づき容易に行われる。リポソーム膜表面の設計では、リン脂質の種類と組成、共存物質を変えることにより所望の特性を付与することができる。さらに投与されたリポソームの体内移動と分布に関して、より高度な送達選択性と集積性を可能とする能動的ターゲティングの採用もまた検討されるべきである。一例として、リポソーム膜表面にポリアルキレンオキシド高分子鎖またはポリエチレングリコール(PEG)基を導入することは、標的部位までの誘導過程を制御し得るため、極めて有益である。 【0029】 がん組織などに到達しなかったリポソームは、正常な組織には集積することなく、比較的速やかに分解されて体外に排泄される。これはリポソームを設計する際にその安定性を体外排出時間との関係で適切にコントロールすることにより可能である。そうしたクリアランスの制御により、疎水性の光増感性化合物が多い光線力学療法用の薬物をリポソームに内包させるDDS剤形のもう一つの効果が期待できる。すなわち光増感性化合物をリポソームに内包させると、光増感性化合物が肝臓、脾臓、腎臓、脂肪組織などに非特異的に沈着して、分解・排泄に長時間を要するような事態に陥りにくくなる。したがって徒に体内に留まることによる弊害、遅発性の副作用などを防止できる。 【0030】 実際、遊離形態の光増感性化合物、たとえばポルフィリン系誘導体を全身的に投与された患者は、上記のように残余の化合物が尿中に容易には排泄されないので、光線過敏症を避けるための遮光制限期間が長期間にわたることも多い。光線過敏反応試験で陽性の場合は、陰性になるまで遮光制限を行うことが求められている。遮光制限期間内は、光線過敏症を防ぐために遮光カーテンなどで直射日光を避け、照度を一定のレベル以下にコントロールした室内に過ごす必要がある。光線過敏症が強く現れる恐れのある特定の食品の摂取や、外出に際しては帽子、手袋、長袖等の衣類やサングラスを着用することなどの注意が求められるなど生活上の制約が多い。 【0031】 本発明のリポソーム製剤に含まれるリポソームの脂質膜成分として、一般にリン脂質および/または糖脂質が好ましく使用される。好ましい中性リン脂質として、大豆、卵黄などから得られるレシチン、リゾレシチンおよび/またはこれらの水素添加物、水酸化物の誘導体を挙げることができる。 【0032】 その他のリン脂質として、卵黄、大豆またはその他の動植物に由来するか、または半合成のホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルエタノールアミン、スフィンゴミエリン、合成により得られるホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジミリストリルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)、ジステアロイルホスファ チジルグリセロール(DSPG)、ジパルミトイルホスファチジルイノシトール(DPPI)、 ジステアロイルホスファチジルイノシトール(DSPI)、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などを挙げることができる。 【0033】 本発明のリポソームを構成する脂質膜のリン脂質には、転移温度を有するリン脂質が少なくとも含まれていることが望ましい。リン脂質の「(相)転移温度」とは、リン脂質がとり得るゲルと液晶との両状態間の相転移を生じる温度である。その測定は、示差走査熱量計(DSC)を使用する示差熱分析による。相転移点を有するリン脂質として、ジミリストイルホスファチジルコリン(転移温度、以下同じ、23〜24℃)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(41.0〜41.5℃)、水素添加大豆レシチン(53℃)、水素添加大豆ホスファチジルコリン(54℃)、ジステアロイルホスファチジルコリン(54.1〜58.0℃)などが例示される。 【0034】 本発明において使用するカチオン性脂質は、1、2−ジオレオイルオキシ−3−(トリメチルアンモニウム)プロパン(DOTAP)、N、N−ジオクタデシルアミドグリシルスペ ルミン(DOGS)、ジメチルジオクタデシルアンモニウムブロミド(DDAB)、N−[1−(2、3−ジオレイルオキシ)プロピル]−N、N、N−トリメチルアンモニウムクロリド(DOTMA)、2、3−ジオレイルオキシ−N−[2(スペルミン−カルボキサミド)エチ ル]−N、N−ジメチル−1−プロパンアミニウムトリフルオロアセテート(DOSPA)お よびN−[1−(2、3−ジミリスチルオキシ)プロピル]−N、N−ジメチル−N−(2−ヒドロキシエチル)アンモニウムブロミド(DMRIE)などが挙げられる。 【0035】 カチオン性リン脂質として、ホスファチジン酸とアミノアルコールとのエステル、たとえばジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)もしくはジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)とヒドロキシエチレンジアミンとのエステルなどが挙げられる。これらのカチオン性脂質は全脂質量に対し0.1〜5質量%、好ましくは全脂質量に対し0.3〜3質量%、より好ましくは全脂質量に対し0.5〜2質量%の割合で含有するように添加すればよい。 【0036】 これらのリン脂質は通常、単独で使用されるが、2種以上併用してもよい。ただし2種以上の荷電リン脂質を使用する場合には、負電荷のリン脂質同士または正電荷のリン脂質同士で使用することが、リポソームの凝集防止の観点から望ましい。中性リン脂質と荷電リン脂質を併用する場合、重量比として通常、200:1〜3:1、好ましくは100:1〜4:1、より好ましくは40:1〜5:1である。 【0037】 糖脂質としては、ジガラクトシルジグリセリド、ガラクトシルジグリセリド硫酸エステルなどのグリセロ脂質、ガラクトシルセラミド、ガラクトシルセラミド硫酸エステル、ラクトシルセラミド、ガングリオシドG7、ガングリオシドG6、ガングリオシドG4などのスフィンゴ糖脂質などを挙げることができる。 【0038】 リポソーム膜の構成成分として、上記脂質の他に必要に応じて他の物質を加えることもできる。たとえば、脂質膜安定化剤として作用するステロール類、たとえばコレステロール、ジヒドロコレステロール、コレステロールエステル、フィトステロール、シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、コレスタノール、またはラノステロールなどが挙げられる。また1−O−ステロールグルコシド,1−O−ステロールマルトシドまたは1−O−ステロールガラクトシドといったステロール誘導体もリポソームの安定化に効果があることが示されている(特開平5-245357号公報)。これらの中でも特にコレステロールが好ましい。 【0039】 ステロール類の使用量として、リン脂質1重量部に対して0.05〜1.5重量部、好ましく は0.2〜1重量部、より好ましくは0.3〜0.8重量部の割合が望ましい。0.05重量部未満では 混合脂質の分散性を向上させるステロール類による安定化が発揮されず、2重量部より多 すぎるとリポソームの形成が阻害されるか、形成されても不安定となる。 【0040】 リポソーム膜中のコレステロールは、ポリアルキレンオキシド導入用のアンカーにもなり得る。特開平09−3093号公報には、ポリオキシアルキレン鎖の先端に、種々の機能性物質を共有結合により固定化することができ、リポソーム形成用の成分として利用することができる新規なコレステロール誘導体が開示されている。 上記ステロール類の他にリポソーム膜の構成成分として、グリコール類を加えてもよい。リポソームを作製する際に、リン脂質などともにグリコール類を添加すると、リポソーム内での光増感性化合物の保持効率が上昇する。グリコール類として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4-ブタンジオールなどが挙げられる。グリコール類の使用量として、脂質全質量に対して0.01〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量% の割合が望ましい。 【0041】 リポソーム製剤である本発明のX線造影剤の意図する目的に応じて、高分子鎖であるポリアルキレンオキシド(ポリオキシアルキレン鎖)(PAO)基または類似の基を有するリン脂質または化合物を、リポソーム膜の一成分として使用してもよい。ポリアルキレンオキシド基またはポリエチレングリコール(PEG)基をリポソーム膜表面に付けることにより、崩壊、凝集といったリポソーム自体の不安定性が解決され、経時安定性も改善される。さらに新たな機能をリポソームに付与することができる。例えば、PEG化リポソームには免疫系から認識されにくくなる効果が期待できる。さらにリポソームは、PEG基の導入により水和層が形成されて親水的傾向を持つことにより血中安定性を増して、長時間にわたり血液中の濃度を維持できることが明らかになっている(Biochim. Biophys. Acta., 1066, 29-36(1991))。よって−(CH2CH2O)n−HであらわされるPEG基 のオキシエチレン単位の長さと導入する割合を適宜変えることにより、その機能を調節することができる。PEG基として、オキシエチレン単位が10〜3500、好ましくは100〜2000のポリエチレングリコールが好適である。ポリエチレングリコールを使用する場合の使 用量は、該リポソームを構成する脂質に対して1〜40質量%、好ましくは5〜25質量%程度含むのがよい。リポソームのPEG化には、公知の技術を利用することができる。 【0042】 上記ポリエチレングリコールに代わり、公知の各種ポリアルキレンオキシド基、−(AO)n−Yをリポソーム膜表面に導入してもよい。ここでAOは炭素数2〜4のオキシア ルキレン基を表し、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数であり、1〜2000、好まし くは10〜500、さらに好ましくは20〜200の正の整数である。また、Yは、水素原子、アルキル基(例えば炭素数1〜5の、分岐していてもよい脂肪族炭化水素基)または機能性官能基を表す。 【0043】 炭素数2〜4のオキシアルキレン基(AOで表される)として、例えばオキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシトリメチレン基、オキシテトラメチレン基、オキシ−1−エチルエチレン基、オキシ−1,2−ジメチルエチレン基などが挙げられる。 【0044】 nが2以上の場合、オキシアルキレン基の種類は、同一のものでも異なるものでもよい。後者の場合、ランダム状に付加していても、ブロック状に付加していてもよい。ポリアルキレンオキシド鎖に親水性を付与する場合、オキシアルキレン基としてはエチレンオキシドが単独で付加したものが好ましく、この場合、nが10以上のものが好ましい。また種類の異なるアルキレンオキシドを付加する場合、エチレンオキシドが20モル%以上、好ましくは50モル%以上付加しているのが望ましい。ポリアルキレンオキシド鎖に親油性を付与する場合には、エチレンオキシド以外のオキシアルキレン基の付加モル数を多くする。例えばポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドとのブロック共重合物を含 有するリポソームは、本発明の好ましい態様である。 【0045】 上記Yの機能性官能基は、ポリアルキレンオキシド鎖の先端に糖、糖タンパク質、抗体、レクチン、細胞接着因子といった「機能性物質」を付するためのもので、例えばアミノ基、オキシカルボニルイミダゾール基、N-ヒドロキシコハク酸イミド基といった反応性 に富む官能基が挙げられる。 【0046】 先端に「機能性物質」を結合しているポリアルキレンオキシド鎖が固定化されたリポソームは、ポリアルキレンオキシド鎖導入の効果に加えて、「機能性物質」の機能、例えば「認識素子」として特定臓器指向性、腫瘍組織指向性などの作用が充分に発揮される。腫瘍組織指向性を付与するには、腫瘍細胞のみに存在する腫瘍特異抗原に対応する抗腫瘍モノクローナル抗体を、機能性物質としてリポソーム膜に結合させると、よりターゲット選択性の高いリポソームとなる(例えば、特開平11-28087号公報)。 【0047】 リポソーム膜へのポリアルキレンオキシド鎖の導入は、公知の技術を利用することができる。ポリアルキレンオキシド基を有するリン脂質または化合物は、一種類を単独で使用することができ、あるいは二種以上のものを組み合わせて使用することもできる。その含有量は、リポソーム膜構成成分の合計量に対し、0.001〜50モル%、好ましくは0.01〜25 モル%、より好ましくは0.1〜10モル%である。 【0048】 他に添加できる化合物として、負荷電物質であるジセチルホスフェートといったリン酸ジアルキルエステルなど、正電荷を与える化合物としてステアリルアミンなどの脂肪族アミンが例示される。 【0049】 本発明のリポソーム製剤において、微細粒子としてのリポソームのサイズとその分布の調整は、高いターゲティング性、送達効率と密接に関わっている。粒径(粒子径)は光増感性化合物を内包するリポソームを含む分散液を凍結し、その後破砕した界面をカーボン蒸着し、このカーボンを電子顕微鏡で観察すること(凍結破砕TEM法)により測定することができる。ここで「平均粒径」とは、観察された造影剤粒子の一定の個数、たとえば20個の径の単純平均を指している。これは粒径分布で最も出現頻度の高い粒径を言う「中心粒径」と、通常一致するか、または概ね近似している。 【0050】 上記のように受動的ターゲティング能力をリポソームに持たせるには、リポソームの作製の際に、その粒径のサイズを適切に揃えて調製することが必要になる。特許2619037号 公報には、粒径3μm以上のリポソームを排除することにより、肺の毛細血管におけるリポソームの不都合な滞留が回避されると記載されている。しかし、0.5〜3μmの粒径範囲の リポソームは、必ずしも自然に向腫瘍性とはならない。 【0051】 光増感性化合物を内包するリポソームを向腫瘍性とするためには、「EPR効果(Enhanced permeability and retention、透過性の亢進および滞留)」を利用する狙いから、 その平均粒径を0.1〜0.2μm 、より好ましくは0.11〜0.13μmとすることが望ましい。リ ポソームの平均粒径を0.11〜0.13μm の範囲に揃えることにより、リポソーム製剤をがん組織へ選択的に集中させることが可能となる。固形がん組織にある新生血管壁の孔は、正常組織の毛細血管壁窓(fenestra)の孔サイズ、0.03〜0.08μm に比べて異常に大きく、概ね0.1μm 〜0.2μm の大きさの分子でも血管壁から漏れ出る。このようにEPR効果は、がん組織にある新生血管壁では、正常組織の微小血管壁より透過性が高いことによるものである。 【0052】 血管壁の孔から漏れ出たリポソームは、がん細胞の周辺ではリンパ管が充分に発達していないため、血管に再び戻らずその場に長く留まる。EPR効果は、血流を利用する受動 的な輸送に基づくことから、それが有効に発現するためには血中滞留性の向上が図られねばならない。つまり光増感化合物を内包するリポソーム粒子が、血中に長くとどまって、がん細胞近くの血管を何度も通過することが必要である。光増感性化合物などを内包するリポソームが、上記のように特に大きい粒子でもない場合には、細網系内皮細胞による捕獲貪食の対象になりにくい。このようなEPR効果は、むしろリポソーム製剤の全身化学療法または全身的な投与の場合に考慮されるべきであろう。さらに血管造影の場合、ならびにがん組織の造影に使用する造影剤をも一緒にリポソームに内包させる場合にも有益である。 【0053】 リポソームの好ましい平均粒径は、光線力学療法製剤を生体内に局所的投与する場合に、事情が異なってくる。代表的な局所化学療法である動注化学療法において、がん病巣近傍の血管までカテーテルを通して、光増感性化合物を内包したリポソームを直接適用する際、リポソームの平均粒径を通常0.7〜0.9μm 、より好ましくは0.75〜0.85μm 、 特に好ましくは0.8μm前後に揃えることが望ましい。このような平均粒径にあるリポソームは、がん組織に通じるが透過性が増した栄養動脈の血管壁孔から漏れることなく、標的のがん組織へ集中し、高濃度での腫瘍内蓄積が達成される。 リポソームの製造方法 リポソームを作製する方法として、これまで種々の方法が提案されている。作製方法が異なると、最終的にでき上がったリポソームの形態および特性もまた著しく異なることが多い(特開平6-80560号公報)。そのため所望するリポソームの形態、特性に応じて製造 方法が適宜選択される。一般にリポソームの作製は、リン脂質、ステロールといった脂質膜成分を、ほとんど例外なくまず有機溶媒、たとえばクロロホルム、ジクロロメタン、エチルエーテル、四塩化炭素、酢酸エチル、ジオキサン、THFなどとともに容器中で混合、 溶解することから始められる。特にクロル系溶媒がよく用いられている。このようなリポソームの調製品は、必ず有機溶媒を含んでいる。残存するこれらの有機溶媒を除去するために、複数の工程および長時間の処理を要しているのが現状である。そうした残留する有機溶媒、特にクロル系有機溶媒については、生体に及ぼす悪影響、たとえば副作用が懸念される。 【0054】 本発明のリポソームの製造方法は、ポリエチレングリコール基を有する少なくとも1種 の化合物が存在する条件下で、脂質膜成分としてリン脂質とともに、カチオン性脂質、ステロール類から少なくとも1種選ばれる化合物、ならびに必要に応じて親油性の薬物を超 臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素に溶解もしくは分散させた後、少なくとも1種 以上の薬物の溶液または懸濁液を導入することによりミセルを形成させ、次いで水を加えて二酸化炭素を排出して、光増感性化合物を含む薬物を内部に含有するリポソームを作製することを含むことを特徴としている。このようなリポソームの製造方法により、有機溶媒を全く使用せずに、光増感性化合物の内包化率の高いリポソームが作製できる。また、水溶性非電解質である光増感性化合物もまた効率よくリポソームに内包されることも特徴の一つである。 【0055】 本発明によるリポソームの製造は、有機溶媒を使用せず、超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を用いてリポソームを作製する。二酸化炭素の臨界温度が31.1℃、臨界圧力が75.3 kg/cm2と比較的扱いやすく、不活性なガスゆえ残存しても人体に無害であり、 高純度流体が安価で容易に入手できるなどの理由により好適である。この方法により作製されたリポソームは、後記するように光増感性化合物を内包するのに種々の好ましい特性および利点を有している。本発明の製造方法で使用する超臨界状態(亜臨界状態を含む)の二酸化炭素の温度は、通常25〜200℃、好ましくは31〜100℃、さらに好ましくは35〜80℃である。好適な圧力は、通常50〜500 kg/cm2、好ましくは100〜400 kg/cm2、特に好ま しくは90〜150 kg/cm2の範囲である。 【0056】 超臨界状態もしくは亜臨界状態の二酸化炭素を使用してリポソームを作製する場合、上記脂質膜成分を、超臨界状態(亜臨界状態を含む)にある二酸化炭素に溶解、分散または混合することが必要となる。その際、内包させる薬物のうち、水難溶性の光線力学療法用薬物、具体的には光増感性化合物、抗がん性化合物、親油性造影剤などは脂質膜成分とともに超臨界二酸化炭素に混合させるのがよい。さらに溶解助剤(または助溶媒)としてヒドロキシル基を有する少なくとも1種の化合物の存在下で溶解、分散または混合をするこ とが好ましい。 【0057】 上記のヒドロキシル基を有する化合物(すなわちヒドロキシル基含有化合物)には、たとえば、ヒドロキシル基、ポリオール基、ポリアルキレングリコールエーテル基、またはポリオール/ポリグリコールエーテル基などの組み合わせを、親水性基として有する化合物が含まれる。実際に溶解助剤として使用できるヒドロキシル基含有化合物としては、リン脂質、コレステロールなどといった脂質膜成分と親和性を示し、これらと混合するものが望ましい。さらに、脂質膜成分を極性の液体二酸化炭素中に良好に分散させ、溶解させるためには、適度の親水性と疎水性を兼ね備えた両親媒性のものが好適である。 【0058】 上記のヒドロキシル基を有する化合物にあって、さらに残存する溶解助剤の毒性をも懸念する場合には、安全性の観点から、低級アルコールなどを用いないことが望ましい。したがって効力および安全性を考慮してより好ましい溶解助剤は、ポリエチレングリコール(PEG)基を有する化合物、好ましくはポリエチレングリコール基を有する脂質、より好ましくはPEG−リン脂質が用いられる。そのオキシエチレン単位は10〜3500、好ましくは100〜2000である。 【0059】 このようなヒドロキシル基を有する化合物を1種または2種以上併用することは、内包率を向上させるために望ましい。ヒドロキシル基を有する化合物を、超臨界状態もしくは亜臨界状態にする二酸化炭素の0.01〜1質量%、好ましくは、0.1〜0.8質量%の割合で溶解 助剤として使用するのがよい。 【0060】 本発明の光線力学療法製剤に使用するリポソームの作製方法は、具体的には以下のようにして行なわれる。圧力容器に液体二酸化炭素を加え、上記の好適な圧力および温度のもとにある超臨界状態もしくは亜臨界状態にする。ヒドロキシル基を有する少なくとも1種 の化合物の存在下で、超臨界(もしくは亜臨界)状態の二酸化炭素にリポソームの膜脂質成分としてリン脂質および脂質膜安定化物質、さらには水難溶性の薬物を溶解または分散させる。膜脂質成分としてカチオン性リン脂質、ステロール類から少なくとも1種選ばれ た化合物を上記リン脂質とともに混合して溶解、分散させる。あるいは予めこれらの化合物を加えた圧力容器に液体二酸化炭素を加え、次いで温度、圧力を調整して超臨界状態にして混合してもよい。引き続き生成したリン脂質および脂質膜安定化物質などを含有する超臨界二酸化炭素中に、内包させる薬物の中で水溶性の光増感性化合物、抗がん剤、水溶性ヨウド系造影剤、必要に応じて前記製剤助剤を含む水溶液を導入することによりミセルを形成させる。なお、添加する側と加えられる側を逆にしてもよい。充分に混合した後に、系内に水を加えて減圧し二酸化炭素を排出すると、光増感性化合物などを内包するリポソームが分散している水性分散液が生成する。この場合、該リポソーム膜内外の水相に光増感性化合物が含まれていてもよい。リポソーム内部にも上記水溶液が封入されているため、光増感性化合物はリポソームの外部水相(水性媒体)のほか、主としてリポソーム内部の水相に存在し、いわゆる「内包」の状態にある。さらに該リポソームを0.1〜1.0μm 、好ましくは0.1〜0.45μmの孔径を有する濾過膜を通す。リポソームは、限外ろ過、遠心分離、ゲルクロマトグラフィー、透析などの常套技術により分離することができる。その後、調製物は保存のため凍結乾燥に付してもよい。このような乾燥製剤は使用直前に水性媒体中に再懸濁して分散液とする。再構成後のリポソームの浸透圧モル濃度は、典型的には250〜500 mosmol/L、好ましくは290〜350 mosmol/Lである。 【0061】 超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用するリポソーム調製法は、従来法に比べてリポソームの生成率、封入する薬物の内包効率、内包される薬物のリポソーム内の保持率が高いことが示されている(上記特許文献3参照)。さらに工業的スケールでの応用も可能である。実質的にクロル系溶剤およびその他の有機溶媒を使用せずに、非電解質を含む薬物を効率よくリポソームに封入することができる本法は、本発明の光線力学療法製剤などの製造には有用な方法である。 光線力学療法製剤の製造 本発明の光線力学療法製剤は、上記リポソームを含み、さらに1種類以上の生理的に許容され得る製剤助剤を用いて、当業界において公知の技術により製造することができる。本発明の製剤は、好ましくは滅菌した形態として上市される。その滅菌は、γ線照射、オートクレーブ滅菌、または加熱滅菌により無菌製剤を得る。本発明の好ましい態様の製剤は、リポソームの脂質膜内部の水相およびリポソームを懸濁する水性媒体中に製剤助剤を含有している。この製剤助剤は、リポソームの製剤化に際し、光増感性化合物などとともに添加される物質であり、これまでの造影剤製造技術に基づいて各種の物質が必要に応じて使用される。具体的には生理的に許容される各種の緩衝剤、キレート化剤、薬理的活性物質(たとえば血管拡張剤、凝固抑制剤など)、さらには浸透圧調節剤、安定化剤、抗酸化剤(たとえばα‐トコフェロール、アスコルビン酸)、粘度調節剤、保存剤なども挙げられる。好ましくは、アミン系緩衝剤およびキレート化剤をともに含めるのがよい。pH緩衝剤として、水溶性アミン系緩衝剤および炭酸塩系緩衝剤が好ましく用いられる。特に好ましくはアミン系緩衝剤であり、中でもトロメタモールが望ましい。 【0062】 また、「水性媒体」とは、光増感性化合物、製剤助剤などを溶解もしくは懸濁する水をベースとする溶媒である。その水は、滅菌した発熱物質を含まない水を使用する。リポソームの脂質膜内部の水相(脂質膜により封入された水溶液)以外の水溶液(すなわち該リポソームを懸濁する水性媒体)にも製剤助剤が含まれている場合には、該膜内外で著しい浸透圧差が生じることはなく、これによりリポソームの構造安定性が保たれる。貯蔵中にあっても光増感性化合物などを内包したリポソームの浸透圧効果による不安定化を防止でき、リポソーム内における薬物の保持安定性は向上する。 【0063】 本発明のリポソーム製剤に含有されるリポソームは、実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであることが望ましい。一枚膜のリポソームとは、リン脂質二重層が一層としてなる膜(unilamellar vesicle)で構成されるリポソームである。凍結かつ断(Freeze fracture )レプリカ法による透過型電子顕微鏡(TEM)による観察において、 レプリカが概ね1つの層として認められるリン脂質二重層によりリポソームが構成されて いるものを一枚膜リポソームという。すなわち、観察したカーボン膜に残された粒子の跡について段差がないものが一枚膜と判定され、2つ以上の段差が認められるものは「多重層膜」と判定される。2枚もしくは3枚の膜で構成されるリポソームは、一枚膜リポソームより強度が増している。「実質的に」とは、本発明のリポソーム製剤などにおいて、このような一枚膜のリポソームまたは数枚膜で構成されるリポソームを、造影剤中に含まれる全リポソームのうち、少なくとも80%、好ましくは90%以上含むことを意味する。 【0064】 上記の一枚膜リポソームまたは数枚膜からなるリポソームは、脂質膜構成成分の溶媒として前記超臨界二酸化炭素もしくは亜臨界二酸化炭素を使用し、水による相分離方式により効率よく作製できる。これに対して従来のリポソーム作製方法によると、様々なサイズ、形態の多重層膜(multilamellar vesicles; MLV)からなるリポソームがかなりの割合で存在することが多い。したがって一枚膜または数枚膜のリポソームの比率を高めるためには、さらに超音波を照射するか、一定孔サイズのフィルターに何度も通すなどの操作を必要としていた。一枚膜または数枚膜のリポソームは、MLVと比較して、リポソームの投与量、換言すると投与脂質量が大きくならないという利点もある。 【0065】 リポソーム膜の脂質膜枚数が少ないリポソーム、特に粒径の大きい一枚膜リポソームであるLUV(Large unilamellar veislcles)は、多重層膜リポソームに比べて、大きい 封入容量を提供するという利点がある。本発明の造影剤に好ましく使用されるリポソームは、保持容積がSUVより大きくなり、水溶性抗がん性化合物のトラップ効率、換言すると内包効率も優れている。反面、光増感性化合物の内包効率が良好な一枚膜または数枚膜のリポソームでも、内包する光増感性化合物の重量が相対的に多過ぎるとリポソームの安定性は低下する。特にイオン強度の急激な変化には脆弱である傾向が観察されていた。本発明の造影剤のリポソームは、比較的小さい平均粒径に調整されている。さらにリポソーム膜にポリアルキレンオキシド基を有する化合物(たとえばリン脂質)、ステロール類、グリコールから選ばれる少なくとも1種の化合物を含有させて、脂質膜の安定化を図っている。その結果、そうしたリポソームは、塩ショックに対しても安定的であることが判明した。 【0066】 粒径の調整は、処方またはプロセス条件を変更することにより行なうことができる。たとえば、上記の超臨界状態の圧力を大きくすると形成されるリポソーム粒径は小さくなる。作製するリポソームの粒径分布をより狭い範囲に揃えるには、ポリカーボネート膜、セルロース系の膜などで濾過してもよい。たとえば濾過膜として0.6〜1μmの孔径のフィル ターを装着したエクストルーダーに通すことにより、平均粒径として0.8μmのリポソームを効率よく調製することができる。さらに小さい平均粒径に揃えるには、0.45μmなどの フィルターでろ過する。この押出しろ過法については、たとえばBiochim. Biophys.Acta 557巻,9ページ(1979)に記載されている。このような「押出し」操作を取り入れることに より、上記サイジングに加えて、リポソーム外に存在する光増感性化合物の濃度の調整、リポソーム分散液の交換、望ましくない物質の除去も併せて可能になるという利点もある。 【0067】 本発明のリポソーム製剤のように光増感性化合物などの薬物をリポソームというマイクロキャリヤーに封入する場合、光増感性化合物などの封入効率および内包安定性に加えてリポソームの膜脂質の重量も考慮されねばならない。リポソームの膜脂質の重量が多くなると製剤の粘度が大きくなる。リポソーム内への薬物の封入量として、リポソーム内に封入された水溶液中に、全薬物がリポソーム膜脂質に対して、1〜8、好ましくは3〜8、より好ましくは5〜8の重量比で含有されていることが望ましい。 【0068】 リポソーム内に内包された全薬物の重量比が1未満であると、比較的多量の脂質を注入することが必要となり、製剤の粘度は増大し、結果的に薬物の送達効率が悪くなる。一枚膜もしくは数枚膜のリポソームは、内包容積および内包効率に優れるため有利である。反対に、リポソーム膜脂質に対する全薬物の封入重量比が8を超えると、リポソームは構造的にも不安定となり、リポソーム膜外への薬物の拡散、漏出は、貯蔵中または生体内に注入された後でも避けられない。またリポソーム懸濁薬剤が製造され、分離した直後は100 %の封入が達成されても、浸透圧効果による不安定化に基づき、早くも短時間に封入成分が減少していくことが記載されている(特表平9−505821号公報)。 光線力学療法製剤 本発明の光線力学療法製剤は、通常の光線力学的治療に使用できる。具体的には、全身投与または局所投与(例:腸管、頬、舌下、歯肉、口蓋、鼻、肺、膣、直腸あるいは眼球への送達による)いずれにも用いることができる。また、本発明の光線力学療法製剤を、経口または非経口投与に適した剤形で提供することもできる。このうち局所投与する場合の光線力学療法製剤として、ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、ローション剤、ロウ膏剤、スティック剤、石鹸剤、散剤、錠剤、フィルム剤、膣座薬、エアゾル剤、滴剤、溶液剤および当業界での従来型医薬品形態のいずれかで製剤される。局所投与または経口投与の場合、必要に応じて潤滑剤、保湿剤、乳化剤、懸濁化剤、保存剤、甘味剤、香味 剤、下記の表面浸透助剤などといった吸収促進剤をさらに含んでいてもよい。 【0069】 光化学治療効果を増強する他の活性成分とともに投与してもよい。前述のように、キレート化剤を含有させることもできる。これらは光化学治療剤の安定性を向上させ、またはPpの蓄積を増強する。すなわち、このキレート化剤による鉄のキレート化で、酵素フェロキラターゼの作用により鉄がPpへ取込まれてヘムを形成する反応が妨げられ、その結果Ppが蓄積される。こうして、光増感効果が増強される。 【0070】 この場合のキレート化剤について、アミノポリカルボン酸キレート化剤を使用することが特に好適であり、たとえば金属の解毒化または磁気共鳴造影コントラスト剤中の常磁性金属イオンのキレート化に関する文献中に記載のすべてのキレート化剤が挙げられる。特に、EDTA、CDTA(シクロヘキサンジアミン四酢酸)、DTPA、DOTAおよびこれらの公知の誘導体およびアナログを挙げることができる。特にEDTAが好ましい。鉄キレート化効果を得るために、デスフェリオキサミン(desferrioxamine)および他の鉄担体も、たとえばEDTAのようなアミノポリカルボン酸キレート化剤と併用することができる。キレート化剤は 、1〜20%、たとえば2〜10%(w/w)の濃度で適宜使用することができる。 【0071】 さらに、表面浸透助剤および特にジメチルスルホキシド(DMSO)等のジアルキルスルホキシドが光化学治療効果の増強において有益な効果を与えることが知られている。詳細はWO95/07077に記載されている。 【0072】 本発明の光線力学療法製剤は、さらに光線力学療法の有効性を高めるために、他の薬剤とともに処方し、および/あるいは投与することができる。他の薬剤として薬理的活性物質(たとえば血管拡張剤、凝固抑制剤)が例示される。具体的には腫瘍の治療には、 腫 瘍治療に有効であることが知られている血管形成阻害剤(抗血管形成剤)(O'Reilly ら 、Nature Medicine, 2, p689-692, 1996年; Yamamoto ら Anticancer Research, 14, p1-4, 1994年; およびBrooksら、 J. Clin. Invest., 96, p1815-1822, 1995年)を本発明の光線力学療法製剤とともに光線力学療法に用いて、腫瘍の脈管系をさらに破壊することができる。使用される血管形成阻害剤としては、TNP-470(AGM-1470、フマギリンという真 菌分泌物の合成アナログ;武田薬品工業株式会社(大阪))、アンジオスタチン (ハーバードメディカルスクールChildren's Hospital, Surgical Research Lab.)およびインテグリンαVβ3拮抗薬(例:インテグリンαVβ3のモノクローナル抗体、The Scripps Research Institute, LaJolla, CA)がある。 【0073】 また、免疫療法剤(たとえば抗体もしくはマクロファージ活性化因子等のエフェクター)または化学療法剤を別途または追加的に用いて、本発明による光線力学療法の効果を高めることも可能である。このような補充的薬剤は、投与経路、濃度、処方に関して、これら補充薬剤の使用に関する公知の方法により投与される。これら補充薬剤は、それらの機能に応じて光線力学療法による治療前、治療後または治療中に投与してもよい。たとえば、光線力学療法の5〜10日後に血管形成阻害剤を投与して、腫瘍の再成長を阻止すること ができる。 同様に、抗がん剤も本発明の光線力学療法製剤と併用することができ、薬剤の一部として含有させるか、あるいは別個の治療剤として該光線力学療法製剤と同時に、別個にあるいは逐次して投与することができる。 【0074】 また、グルコースの局所的または全身的投与も光線力学療法において有用であることがわかった。グルコースを投与することによりpHが低下し、これによりALAなどのプロトポルフィリンの疎水性が高まるため、それらの細胞への浸透がより容易になるものと思われる。局所的投与を考える場合、薬剤、たとえばクリーム剤などは0.01〜10% (w/w)のグ ルコースを含むことが好ましい。 【0075】 処置される部位の状態および光線力学療法製剤の性質に応じて、本発明で使用される光線力学療法製剤は、単独投与、あるいは上記のような任意の薬剤と併用投与することができる。たとえば、がん治療の光線力学療法製剤の至適投与量および光照射条件は、通例、病変の種類、部位、症状、患者側の条件などを勘案して個々に設定される。リポソーム内の光増感性化合物量が、従来の投与量と同程度になるようにしてもよい。本発明の光線力学療法製剤における上記光化学治療剤の濃度は、光線力学療法製剤中の化合物の性質、投与様式および症状および患者の状態に依存し、必要に応じて調節することができる。余りに高濃度の溶液とすると、リポソーム同士の凝集、粘度の増大という不都合な事態を考慮されねばならない。通常は、光化学治療剤の濃度(投与する最終の薬剤に対するW/W)は 、0.01〜50%、たとえば0.05〜20%、1〜10% (w/w)が好適である。治療用途のためには、光化学治療剤の濃度は0.1〜50%、たとえば0.2〜30% (w/w)が好適である。 【0076】 本発明の製剤は、好ましくは非経口的に、注射剤または点滴注入剤として、具体的には血管内投与、静脈内投与により患者に投与される。比較的高濃度のリポソーム製剤を大量に短時間で投与する必要がある場合、このようなボーラス注入を可能とする要件は、光線力学療法製剤の流動性と低い粘度である。注入抵抗を少なくして患者の苦痛を軽減し、血管外漏出の危険を回避するため、本発明のリポソーム分散液の粘度(オストワルド法で測定した場合)は、37℃で、20 mPa・s以下、好ましくは18 mPa・s以下、より好ましくは15 mPa・s以下である。 【0077】 投与するリポソーム製剤のオスモル濃度が高いと、心臓・循環系の負担が大きい。血液と等張の溶液または懸濁液を得るには、等張液を提供する濃度で、光増感性化合物を媒質中に溶解もしくは懸濁させる。たとえば光増感性化合物などの溶解性が低いために光増感性化合物などだけでは等張液を提供できない場合、等張の溶液もしくは懸濁液が形成されるように他の非毒性の水溶性物質、たとえば塩化ナトリウムのごとき塩類、マンニトール、グルコース、ショ糖、ソルビトールなどの糖類を媒質中に添加してもよい。 光線力学療法(PDT) 本発明の光線力学療法製剤は、通常の光線力学的治療方法に適用できる。本発明に従い処置し得る異常および疾患には、光線力学療法に対して反応性を示す悪性の、悪性になる前の、および非悪性の異常または疾患がある。その例として腫瘍または他の新生物、特に基底細胞がん、形成異常または他の増殖性疾病、および他の疾病またはバクテリア性、ウィルス性あるいは真菌性による感染、たとえばヘルペスウィルス感染が挙げられる。本発明の光線力学療法製剤は、病巣が離散して形成され、上記製剤を直接投与できる疾病、疾患または異常の治療に特に適している(ここでいう病巣とは、腫瘍その他を含む広い意味で用いられている)。 【0078】 本発明の光線力学療法製剤は全身投与または局所投与いずれにも可能であるが、好ましくは局所的に投与される。もっとも胃障害に対する経口投与などのように、投与が投与部位を含む管路上端で遠隔的になされることになる。直接投与のできない部位への局所的投与は、たとえばカテーテルまたは他の適当な薬物送達システムなどを用いて、当業界で公知の技術により行うことができる。 【0079】 光線力学療法は耐性をもたらすことなく、同一部位に繰り返して施行することができる。 薬物の再分布や再合成などの機序により、分割照射することでむしろ効果が増強する ことがある。副作用として光過敏症がある。正常組織も障害されるが、比較的よく修復される。 【0080】 本発明製剤の投与後、光化学治療効果を得るために投与部位に光を照射する。様々な身体部位を照射する方法として、ランプまたはレーザーが使用される(たとえばVan den Be rgh, Chemistry in Britain, 1986年 5月、pp 430-439を参照)。直接照射ができない部位へは、光ファイバーを用いて照射を行うことができる。光照射を実施する時間の長さは、症状、本発明の光線力学療法製剤の性質および投与形態によって決まる。一般的には、露光時間は約0.5〜48時間のオーダー、たとえば約1〜10時間である。照射は、通常、40〜200 Joules/cm2、たとえば100 Joules/cm2の線量で行われる。 【0081】 照射に用いられる光の波長は、より有効に光化学治療効果が得られるよう選択することができる。通常、ポルフィリン類を光化学治療に用いる場合は、ポルフィリンの吸収極大付近の光で照射を行う。たとえば皮膚がんの光化学治療にALAを用いる従来技術の場合には、350〜640 nm、好ましくは610〜635 nmの波長領域が採用されていた。ところが、ポルフィリンの吸収極大を超えるより広い範囲の波長を選択して照射を行うことにより、光増感効果を増強することができる。これは、Ppおよび他のポルフィリン類がその吸収スペクトル内の波長を有する光に曝されると、特にプロトポルフィリン(PPp)をはじめとする 様々な光生成物に分解されという事実によるものと考えられる。PPpはクロリンの1種で あり、相当な光増感効果を有する。また、その吸収スペクトルは、Ppが吸収する波長を超えて長波長側にさらに伸びており、具体的には、ほぼ700 nmにまで伸びる(Ppは650 nmを超える光をほとんど吸収しない)。したがって、従来の光化学治療において用いられる波長ではPPpは励起されず、このためより高い光増感効果の利益を得ることはできない。500〜850nm、好ましくは600〜800 nm、より好ましくは650〜700 nmの波長範囲の光を用いて 照射を行うととりわけ有効であることが知られている。630および690 nmの波長を含むこ とが特に重要である。 光線力学療法によるがん治療 PDTの臨床応用について、これまではヒトまたは動物の身体の上皮被覆表面、好ましくは粘膜被膜表面における疾患もしくは異常に対する光化学的治療の方法または診断方法、患部表面に好適に適用できる光線力学療法製剤が中心であった。そうした疾患もしくは異常には体表面のがんも含まれる。光線力学療法によるがん治療は、光(光量子)が光量子に感受性のある光増感剤とともに外部から供給されると、体内のその場での光増感作用によりひき起こされる酸素間の化学反応によって生成される一重項酸素またはフリーラジカルが、がん細胞または悪性腫瘍組織を破壊するという機作に基づいている。光増感剤のポルフィリン化合物は、本来的に腫瘍性組織に局在する傾向を有するが、そうした腫瘍選択性は限定的であることが指摘された(特許文献1)。ポルフィリン化合物の腫瘍組織への不均一な分布は、後で副作用として現れる過敏症をもたらす。レーザー装置が大型であること、光線過敏症を避けるための遮光期間が長いことなどから、これまで光線力学療法の普及には制約があった。 【0082】 しかし、遮光期間の短い第二世代の薬剤が開発され、小型半導体レーザーが早期肺がんを対象にして製造承認を受けたことから、今後より多くの医療機関で体内深部のがんにも光線力学療法が施行されることが予想される。リポソームにポルフィリン化合物を内包することによっても、腫瘍組織への取り込みが非特異的に助長されることが示されている(Zhou C.ら, Photochem. Photobiol (1988), 48:487-492)。したがって、本発明のリポソーム製剤は、腫瘍に対するターゲティング能力を必要に応じて変化させることができ、そうした利用に好適である。 【0083】 光線力学療法は他の治療法、すなわち手術、放射線療法、化学療法などに対する相互作用はないため、これらの治療法と組み合わせて実施することができる。また、温熱療法とは密接な相互作用がある。 【0084】 本発明の製剤は、全身化学療法として使用される。好適な対象として、メラノーマ腫瘍、悪性脳腫瘍、卵巣がん、乳がん、皮膚がん、肺がん、食道がんおよび膀胱がんを含む数種のがんに対して有効である。 【0085】 実際のがん光線力学療法は、次のようにして行われる。あらかじめ患者に本発明のリポソーム製剤を静注して投与する。薬物が腫瘍に蓄積するのを待つ。がん組織と正常組織における薬品濃度差が最大となる24〜72時間後に、光増感性化合物の励起波長と一致する波長のレーザー光を照射する。光線力学療法で使用するレーザーは、レーザーメスのほぼ1 /100と低出力なうえ、光増感性化合物を内包するリポソームは、がん組織に多く集積す るため正常組織への障害を最小限に抑え、がん病巣のみを選択的に壊死させることができる。光反応物質に作用し、かつ 組織に十分到達できる波長の光線を照射する。たとえば630nmの波長を持つ赤外線が利用されることが多い。 深部の病変に対しては照射にファイ バーを用いることもある。光線照射は、光源としてエキシマ励起ダイレーザーなどのレーザー光が利用されている。レーザー光は治療面積が小さい、装置本体が大型で高価であるなどの問題点あった。治療面積が大きく、安価でコンパクトな光線力学療法用メタルハライドランプを開発されており、これを使用してもよい。 【0086】 また、本発明の光線力学療法製剤は、局所化学療法である動注化学療法においても好ましく使用される。動注化学療法において、血管造影により腫瘍病巣へ通じる動脈を同定する。動脈が途中で分枝していることも多いため、血管造影の下になるべく腫瘍病巣に近傍までカテーテルを到達させる。複数の栄養血管がある場合には、可能な限り好適な血管を選択する(選択的動注化学療法)。腫瘍の栄養血管内にマイクロカテーテルを挿入し、このカテーテルを通して直接高濃度のリポソーム製剤を短時間で投入する。手術、放射線治療との併用の場合には、ワンショット動注療法が採られる。 【0087】 よって、本発明によるがんの治療方法は、好ましくは次のステップから構成される。 i)がんの栄養血管に通じる動脈からカテーテルをなるべくがん組織近傍まで挿入し、 ii)前記導入用カテーテルを通じて、前記の光線力学療法製剤をがん組織に直接注入し iii)前記導入用カテーテルを通じて、ダイオードレーザーファイバーをがん組織に挿入 し、 iv)600〜800nm、好ましくは650〜700nm波長を持つ光の照射によって、前記がん組織を治療すること 動注化学療法は、転移が少ない限局性のがん組織に対して好適であり、たとえば脳腫瘍、頭頸部がん、肺がん、乳がん、肝がん、子宮頸がん、膀胱がんなどの固形がんに好ましく施行されている。このような動注化学療法によれば、リポソームを含むリポソーム製剤は、カテーテルを通じてがん病巣の近くでがん組織を栄養する血管中に放出されるため、病巣に到達するまでの途中で、血管壁からの漏出、希釈の影響、細網系内皮細胞による捕獲などを受けることなく、がん病巣に直接到達する。好ましい態様として、リポソームの脂質膜は上記の通りPEG化されていてもよいが、平均粒径が0.8μm前後であることが 望ましい。実質的に一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームであれば、その内包容量が大きく光増感性化合物を大量に内包できるため、少ないリポソーム数の投与ですむ。この場合、リポソームに内包される光増感性化合物は、向腫瘍性、組織透過性が低いような光増感物質であってもよい。 【0088】 動注局所投与法においては、血管造影にてがん病巣への栄養血管を同定し、カテーテルを誘導する手技が含まれる。したがって、本発明のリポソーム製剤として、血管造影およびがん組織の造影に使用する造影剤をリポソームに内包させることは、上記動注化学療法には好都合である。具体的にはDDS概念を具現する剤形に基づき、がん診断に特化したX線造影剤と光増感性化合物とを組み合わせた製剤が考えられる。この製剤は造影剤も含有するために、造影により腫瘍の診断も可能である。平均粒径0.8μmのリポソームは、 透過性が高まった腫瘍栄養血管壁からの漏失を生じることなく、腫瘍組織内に分散していき長時間滞留する。 【0089】 本発明のリポソーム製剤に好適な造影剤として、X線検査用として水溶性の非イオン性ヨウド系化合物および油性造影剤が挙げられる。これらの造影剤はリポソームに別個にまたは一緒に、上記光増感性化合物とともにリポソームに内包させてもよい。水溶性ヨウド系化合物はもちろん、腫瘍親和性があるリピオドールでも、平均粒径0.8μmのリポソー ムに内包させることによりがん病巣への送達がさらに向上する。好ましいヨウド系化合物として、イオメプロール、イオパミドール、イオヘキソール、イオプロミド、イオキシラン、イオタスル、イオトロランまたはイオジキサノールが例示される。また油性造影剤として、ヨウド化ケシ油脂肪酸エチルエステルが挙げられる。特に肝細胞がんなどに対しては、肝腫瘍集積性の高いリピオドールが好適である。光増感性化合物と造影剤とを内包させたリポソーム製剤を、血管に留置したカテーテルを通じて投与することにより、腫瘍の造影およびがん治療が可能となる。 【0090】 また転移温度を有するリン脂質を含むリポソームの光線力学療法製剤とがん温熱療法との組み合わせも可能であり、治療効果が増強されることが期待される。光増感性化合物を内包するリポソームを含有する光線力学療法製剤を患者に投与した後、一定時間経過してから身体の外から加温する場合、マイクロ波や電磁波を用いる局所温熱療法が主に行われる。あるいは食道、直腸、子宮、胆管といった管腔内に器具を入れて加温する方法や、がん組織の中に数本の電極針を刺し入れて加温する方法もまた施行される。いずれの場合にも、転移温度を有するリン脂質を含み、一枚膜もしくは数枚膜からなるリポソームでは、熱を加えられるとリポソーム膜の構造が変化して、内包された薬物がリポソーム外に放出されやすくなる。その後、上記のようにレーザー光を照射して治療を行う。 [発明の効果] 本発明の光線力学療法製剤は、i)悪性腫瘍組織への高い選択性、ii)波長600nm以上のスペクトルの高い吸収、iii)投与後の人体からの高い排泄作用、iv)最小の副作用およ び毒性という特性を有する。また、本発明の製剤は、光増感性化合物の患部への効率的送達を可能とし、従来のリポソーム製剤のように、実質的にクロル系溶剤およびその他の有機溶媒を含まない。これにより被検者の負担が一層軽減される。 [実施例] 本発明を以下の実施例によって、より具体的に説明する。しかし、実施例は、実例を挙げて説明しようとするものであり、本発明の範囲を何ら限定しようとする意図のものではない。 【実施例1】 【0091】 ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)86mgと、コレステロール38.4mg、PEG−リン脂質(日本油脂株式会社製、SUNBRIGHT DSPE-020CN)19.2mgの混合物をステンレス製の特製オートクレーブに仕込み、オートクレーブ内を60℃に加熱し、次いで液体二酸化炭素13gを加えた。撹拌を行いながら、50kg/cm2であったオートクレーブ内の圧力を、オ ートクレーブ内の体積を減ずることにより、120kg/cm2にまで上げて、二酸化炭素を超臨 界状態にし、撹拌しながら脂質類を分散・溶解させた。以降の製造は、赤色燈を備えた暗室内で行った。上記の系に撹拌しながら、ポルフィマーナトリウム75mg当り日本薬局方5%ブドウ糖注射液15mLを加えて溶解した溶液を定量ポンプで連続的に注入した。注入終了後、系内を減圧して二酸化炭素を排出し、ポルフィマーナトリウム溶液を含有するリポソームの分散液を得た。得られた分散液を60℃まで加熱し、アドバンテック社製のセルロース系フィルター、1.0μmのフィルターを通した後、さらに0.45μm、0.3μm、0.2μmのフィ ルターを使用して加圧濾過した。得られたリポソームは、平均粒径が0.12μm、内包率が15%であった。 【0092】 得られた試料をスペクトラプロ社製バイオテックRC透析チューブに封入し、多量の日本薬局方5%ブドウ糖注射液中に浸して透析を行い、リポソーム内に取り込めなかったポルフィマーナトリウムを除去した。ポルフィマーナトリウム0.75mg/mL本発明リポソーム製剤 を得た。かかる光線力学療法製剤は、通常の光線力学的治療方法に使用できる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】303000420 【氏名又は名称】コニカミノルタエムジー株式会社 【住所又は居所】東京都新宿区西新宿1丁目26番2号
|
| 【出願日】 |
平成16年8月18日(2004.8.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081994 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴木 俊一郎
【識別番号】100103218 【弁理士】 【氏名又は名称】牧村 浩次
【識別番号】100110917 【弁理士】 【氏名又は名称】鈴木 亨
【識別番号】100115392 【弁理士】 【氏名又は名称】八本 佳子
|
| 【公開番号】 |
特開2006−56807(P2006−56807A) |
| 【公開日】 |
平成18年3月2日(2006.3.2) |
| 【出願番号】 |
特願2004−238506(P2004−238506) |
|