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【発明の名称】 医療用二重包装製剤の製造方法および医療用二重包装製剤
【発明者】 【氏名】谷 晴仁

【氏名】住吉 信昭

【氏名】有田 重明

【氏名】河上 啓一

【氏名】長尾 勝美

【要約】 【課題】品質安定性、保存安定性、取扱い性に優れた医療用二重包装製剤の提供。

【解決手段】易酸化性薬剤22が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器2を収容室3内に具備し、さらに収容室内に液剤が充填された酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器1を、脱酸素剤6と共に酸素バリア性外装袋5内に密封して二重包装体とする工程、および前記二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペース7に露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程を含む医療用二重包装製剤の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を収容室内に具備し、さらに収容室内に液剤が充填された酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器を、脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程、および前記二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程を含むことを特徴とする医療用二重包装製剤の製造方法。
【請求項2】
易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を、連通可能な隔壁により隔てられた2つの収容室を有する酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器の前記隔壁近傍で、前記隔壁の開通に伴う薬剤収容容器の内壁面の離間に伴って小容器が開封するように前記薬剤収容容器の対向する内壁面それぞれに固着させる工程、薬剤収容容器のそれぞれの収容室に液剤を充填する工程、液剤が充填された薬剤収容容器を加熱滅菌する工程、加熱滅菌された薬剤収容容器を脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程、および前記二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程を含むことを特徴とする医療用二重包装製剤の製造方法。
【請求項3】
前記薬剤収容容器が可撓性扁平容器であり、前記小容器が可撓性扁平容器である請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
液剤が充填された酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器を、脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程が、該薬剤収容容器をU字状に二つ折りした状態で、薬剤収容容器を脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程である請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態が、二重包装体の薬剤収容容器が天頂方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を立たせた状態であり、この状態において、小容器全体が収容室内の液剤中に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態が、二重包装体の薬剤収容容器が水平方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を寝かせた状態であり、この状態において、小容器全体が収容室内の液剤中に配置されていることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項7】
前記小容器の外面が薬剤収容容器の内面と相溶性の高いプラスチックで構成されており、薬剤収容容器を加熱滅菌することによって、小容器を前記収容室内壁にブロッキングさせることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれかに記載の方法で製造された医療用二重包装製剤であって、前記少なくとも2つの収容室うちの少なくとも一つの収容室にアミノ酸液が充填され、その他の少なくとも一つの収容室に還元糖液が充填され、前記小容器に少なくとも1種のビタミンを含む液が封入されてなる医療用二重包装製剤。
【請求項9】
前記小容器にビタミンBとビタミンCとを含む液が封入されてなる請求項8に記載の医療用二重包装製剤。
【請求項10】
前記小容器が収容された収容室に充填される液剤が、抗酸化剤を実質的に含まないものである請求項8〜9のいずれかに記載の医療用二重包装製剤。
【請求項11】
還元糖液が充填された収容室に前記小容器が収容され、かつ小容器に脂溶性ビタミンとビタミンBとビタミンCとを含む液が封入されてなる請求項8に記載の医療用二重包装製剤。
【請求項12】
前記小容器が2室に区画され、一方の室には脂溶性ビタミンとビタミンBとビタミンCとを含む液が封入され、他方の室には微量金属元素製剤が封入されてなる請求項11に記載の医療用二重包装製剤。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤収容容器を酸素バリア性外装袋内に密封してなる医療用二重包装製剤の製造方法およびその製造方法により製造された医療用二重包装製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
高カロリー輸液による栄養管理においては、必須成分である糖、アミノ酸、電解質に、ビタミンを加えた輸液を患者に投与する。これらの成分は相互作用をおこし、予め1剤に混合しておくことができないので、従来はそれぞれの製剤を投与前に混合することが行われていた。
【0003】
近年、医療従事者の負担軽減と医療事故防止を目的として、これらの成分を分別収容し、使用時に無菌的に混合できるような多室容器がいくつか開発されている。そのうちの優れたものとして、例えば特許文献1に記載された医療用複室容器を挙げることができる。特許文献1には、医療用複室容器の具体例として、2室の輸液バッグにおいて、いずれの室にも収容できない成分(脂溶性ビタミンなど)を小容器に封入した形で一方の室に収容し、かつ2室の開通に伴って小容器が開封されるように構成された医療用複室容器が開示されている。
【0004】
しかしながら、上記の医療用複室容器は酸素易透過性の可撓性プラスチックにより成形されているので、内容物は酸素の影響を受け易い。そのため、脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重バッグとしたり、アミノ酸液のような易酸化性薬剤には亜硫酸塩などの抗酸化剤が添加されたりしている。また、小容器に脂溶性ビタミンのような易酸化性薬剤を封入した場合には、抗酸化剤が添加された薬剤を充填した室の方に小容器を収容することにより、薬剤の酸化防止が図られている。
【0005】
ところが、上記医療用複室容器において、何らかの理由により抗酸化剤が添加された薬剤を充填した室の方に小容器を収容できない場合、その内容液が収容室のヘッドスペース中の酸素の影響を受ける恐れがある。特に、小容器にビタミンBとビタミンCが共存する場合、ビタミンBはきわめて酸化を受けやすくなり、ヘッドスペース中の酸素といえども無視できなくなる。
尚、上記「何らかの理由」としては、例えば小容器を2室に区画しその一方の室に微量金属元素製剤を封入したような場合、該小容器をアミノ酸液充填室内に収容すると、ごく微量の硫黄ガスが微量金属元素と反応して沈殿を生じてしまうので、それを回避しなければならないという理由などが挙げられる。
【0006】
また、上記したような医療用複室容器などの薬剤収容容器は、酸素バリア性外装袋内に密封されて、二重バッグの状態で保管や搬送等が行われるが、このような二重バッグには、収容室内のヘッドスペース中に酸素が残存しており、保管や搬送等の際に、ヘッドスペース中の酸素によって、易酸化性薬剤が酸化を受け、品質が劣化する問題があった。
【特許文献1】国際公開第03/092574号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、品質安定性、保存安定性、取扱い性に優れた医療用二重包装製剤の製造方法及びその製造方法により製造された医療用二重包装製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を収容室内に具備し、さらに収容室内に液剤が充填された酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器を、脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程、および前記二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程を経ることにより、収容室内のヘッドスペース中の酸素によって、同じ収容室内に収容された小容器に封入されている易酸化性薬剤が酸化を受けることがないように構成した医療用二重包装製剤を製造できることを知見し、このような医療用二重包装製剤が、保存安定性、作業容易性および取扱い性に優れており、上記した従来の問題点を一挙に解決できることを見出した。本発明者らは、このような知見を得た後、さらに検討を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
〔1〕 易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を収容室内に具備し、さらに収容室内に液剤が充填された酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器を、脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程、および前記二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程を含むことを特徴とする医療用二重包装製剤の製造方法、
〔2〕 易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を、連通可能な隔壁により隔てられた2つの収容室を有する酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器の前記隔壁近傍で、前記隔壁の開通に伴う薬剤収容容器の内壁面の離間に伴って小容器が開封するように前記薬剤収容容器の対向する内壁面それぞれに固着させる工程、薬剤収容容器のそれぞれの収容室に液剤を充填する工程、液剤が充填された薬剤収容容器を加熱滅菌する工程、加熱滅菌された薬剤収容容器を脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程、および前記二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程を含むことを特徴とする医療用二重包装製剤の製造方法、
〔3〕 前記薬剤収容容器が可撓性扁平容器であり、前記小容器が可撓性扁平容器である前記〔2〕に記載の製造方法、
〔4〕 液剤が充填された酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器を、脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程が、該薬剤収容容器をU字状に二つ折りした状態で、薬剤収容容器を脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程である前記〔3〕に記載の製造方法、
〔5〕 前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態が、二重包装体の薬剤収容容器が天頂方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を立たせた状態であり、この状態において、小容器全体が収容室内の液剤中に配置されていることを特徴とする前記〔4〕に記載の製造方法、
〔6〕 前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態が、二重包装体の薬剤収容容器が水平方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を寝かせた状態であり、この状態において、小容器全体が収容室内の液剤中に配置されていることを特徴とする前記〔4〕に記載の製造方法、
〔7〕 前記小容器の外面が薬剤収容容器の内面と相溶性の高いプラスチックで構成されており、薬剤収容容器を加熱滅菌することによって、小容器を前記収容室内壁にブロッキングさせることを特徴とする前記〔6〕に記載の製造方法、
〔8〕 前記〔2〕〜〔7〕のいずれかに記載の方法で製造された医療用二重包装製剤であって、前記少なくとも2つの収容室うちの少なくとも一つの収容室にアミノ酸液が充填され、その他の少なくとも一つの収容室に還元糖液が充填され、前記小容器に少なくとも1種のビタミンを含む液が封入されてなる医療用二重包装製剤、
〔9〕 前記小容器にビタミンBとビタミンCとを含む液が封入されてなる前記〔8〕に記載の医療用二重包装製剤、
〔10〕 前記小容器が収容された収容室に充填される液剤が、抗酸化剤を実質的に含まないものである前記〔8〕〜〔9〕のいずれかに記載の医療用二重包装製剤、
〔11〕 還元糖液が充填された収容室に前記小容器が収容され、かつ小容器に脂溶性ビタミンとビタミンBとビタミンCとを含む液が封入されてなる前記〔8〕に記載の医療用二重包装製剤、および
〔12〕 前記小容器が2室に区画され、一方の室には脂溶性ビタミンとビタミンBとビタミンCとを含む液が封入され、他方の室には微量金属元素製剤が封入されてなる前記〔11〕に記載の医療用二重包装製剤、
に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の製造方法は、簡便な操作により、品質安定性、保存安定性、取扱い性に優れた医療用二重包装製剤を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の医療用二重包装製剤の製造方法は、易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を収容室内に具備し、さらに収容室内に液剤が充填された酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器(以下、医療用薬剤収容容器ともいう)を、脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程(工程A)、および前記二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程(工程B)を含む。
【0012】
また、本発明の医療用二重包装製剤の好ましい製造方法は、易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を、連通可能な隔壁により隔てられた2つの収容室を有する酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器の前記隔壁近傍で、前記隔壁の開通に伴う薬剤収容容器の内壁面の離間に伴って小容器が開封するように前記薬剤収容容器の対向する内壁面それぞれに固着させる工程、薬剤収容容器のそれぞれの収容室に液剤を充填する工程、液剤が充填された薬剤収容容器を加熱滅菌する工程、加熱滅菌された薬剤収容容器を脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程、および前記二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程を含む。
【0013】
(医療用薬剤収容容器)
本発明で用いられる医療用薬剤収容容器は、易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を収容室内に具備し、さらに収容室内に液剤が充填された酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器であって、収容室内に酸素を含むヘッドスペースが存在していれば特に限定されず、収容室を複数有していてもよい。収容室が複数である場合には、少なくとも1室の収容室内に前記小容器が具備され、さらにその収容室内に液剤が充填されていればそれでよく、その他の収容室については、液剤および粉末などの固形剤のいずれもが充填可能である。尚、この種の少なくとも2室を有する薬剤収容容器自体は、周知のものであり、具体例としては、例えば、国際公開WO2003/092574号パンフレットに記載の医療用複室容器などが挙げられる。
また、このような医療用薬剤収容容器は、滅菌されているのが好ましく、滅菌方法としては、例えば、ガス滅菌法、熱水浸漬滅菌法、熱水シャワー滅菌法、濾過滅菌法、照射滅菌法(例えば、電子線滅菌法、紫外線滅菌法、γ線滅菌法等)、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)法等が挙げられる。
【0014】
前記医療用薬剤収容容器の製造方法は、本発明の目的を阻害しない限り特に限定されず、公知の手段が適宜に用いられ得る。前記医療用薬剤収容容器の好適な製造方法としては、例えば、易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を、連通可能な隔壁により隔てられた2つの収容室を有する酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器の前記隔壁近傍で、前記隔壁の開通に伴う薬剤収容容器の内壁面の離間に伴って小容器が開封するように前記薬剤収容容器の対向する内壁面それぞれに固着させる工程(工程1)、薬剤収容容器のそれぞれの収容室に液剤を充填する工程(工程2)、および液剤が充填された薬剤収容容器を加熱滅菌する工程(工程3)を含む製造方法が挙げられる。
【0015】
(工程1)
本工程は、易酸化性薬剤が封入されている酸素易透過性プラスチック製の小容器を、連通可能な隔壁により隔てられた2つの収容室を有する酸素易透過性プラスチック製の薬剤収容容器の前記隔壁近傍で、前記隔壁の開通に伴う薬剤収容容器の内壁面の離間に伴って小容器が開封するように前記薬剤収容容器の対向する内壁面それぞれに固着させる工程である。
【0016】
(小容器)
本工程で用いられる小容器は、酸素易透過性プラスチック製であり、該酸素易透過性プラスチックとしては、安全性が確立し、医療用容器の素材として汎用されているポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ環状オレフィン等が例示される。本発明においては、小容器が可撓性扁平容器であるのが好ましく、また、例えば小容器が熱溶着によって薬剤収容容器の収容室の内壁それぞれに固着される場合や薬剤収容容器の加熱滅菌時に小容器がブロッキングされる場合には、小容器の外面が薬剤収容容器の内面と相溶性の高いプラスチックで構成されているのが好ましい。また、小容器は2以上の複数の室に区画されていてもよく、複数の室に区画されている場合には、複数の室のうち、いずれか一室に易酸化性薬剤を封入してもよいし、複数の室にそれぞれ同一または異なる種類の易酸化性薬剤をそれぞれ封入してもよい。
【0017】
易酸化性薬剤は、酸化を受け易い種々の薬剤をいい、このような易酸化性薬剤としては、例えば、輸液の分野では、ビタミン、脂肪乳剤、システイン等のアミノ酸などが挙げられる。また、前記易酸化性薬剤は、液剤に限らず、粉末剤、固形剤、ゲル化剤等であってもよい。
前記易酸化性薬剤の好適な例としては、少なくとも1種のビタミンを含むビタミン含有溶液が挙げられ、より好適な例としては、ビタミンBとビタミンCとを含む液が挙げられる。また、小容器が例えば糖液が充填される収容室に収納される場合には、小容器に脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなど)とビタミンBとビタミンCとを含む液が封入されるのが好ましく、小容器が2室に区画されている場合には、一方の室には脂溶性ビタミンとビタミンBとビタミンCとを含む液が封入され、他方の室には微量金属元素含有液が封入されているのが好ましい。
なお、小容器への易酸化性薬剤の封入は常法に従い行われてよく、例えば、前記易酸化性薬剤を前記小容器に充填し、不活性ガス雰囲気下で充填口を溶着することにより行われる。
【0018】
(薬剤収容容器)
本工程で用いられる薬剤収容容器は、酸素易透過性プラスチック製であり、連通可能な隔壁により隔てられた2つの収容室を有する。酸素易透過性プラスチックとしては、安全性が確立し、医療用容器の素材として汎用されているポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ環状オレフィン等が挙げられる。その酸素透過度は、後述する脱酸素剤がヘッドスペース中の酸素を外側から吸収できる程度、例えば800cc/m・24hr・atm以上、好ましくは900〜2000cc/m・24hr・atm程度であればよい。
【0019】
本工程では、前記薬剤収容容器の隔壁の近傍において、易剥離隔壁の開通に伴って小容器が開封するように前記薬剤収容容器の対向する内壁面それぞれに小容器を固着させる。このような容器形態は、例えば国際公開WO2003/092574号パンフレットに記載されている。
また、本発明においては、前記薬剤収容容器が可撓性扁平容器であるのが好ましい。可撓性扁平容器である場合には、最終製品はダブルバッグ製剤となる。
【0020】
本工程における小容器の固着は常法に従い行われてよく、小容器の固着方法としては、例えば、前記小容器と前記収容室の対向する内壁それぞれとを熱シール等により熱溶着させて、前記小容器を前記収容室の対向する内壁それぞれに固着させる方法などが挙げられる。
【0021】
(工程2)
本工程では、薬剤収容容器のそれぞれの収容室に液剤を充填する。収容室内への液剤の充填は、常法に従い行われ、ヘッドスペースが設けられる。本工程においては、充填後、充填口を熱溶着などの公知の手段を用いて封止する。
【0022】
本工程では、薬剤収容容器のそれぞれの収容室に液剤が充填されるが、液剤としては、例えばアミノ酸液、糖液、微量金属元素含有溶液またはビタミン含有溶液などが挙げられ、これらは、アミノ酸、糖、微量金属およびビタミンなどから選択される各成分をそれぞれ溶媒〔例えば、水(例えば、注射用蒸留水等)等または輸液等〕に溶解し、さらに適宜その他の電解質を溶解し、次いで必要によりpH調整剤でpHを調整することにより、調製され得る。各液剤を充填した各収容室はヘッドスペースを有しているが、小容器が固着している収容室には、酸素含有ガス(例えば、空気など)を封入したヘッドスペースを設けてもよいし、不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガスなど)を封入したヘッドスペースを設けてもよい。不活性ガスを封入したヘッドスペースは、液剤の充填を不活性ガス雰囲気下で行うことにより設けられる。なお、不活性ガス雰囲気下で行う場合、ヘッドスペースのガス成分は殆どが不活性ガスであるが、もともと存在していた空気がわずかに残存するので、ヘッドスペースには、空気(酸素)が混在することになる。
【0023】
前記のアミノ酸としては、例えば必須アミノ酸、非必須アミノ酸および/またはこれらのアミノ酸の塩、エステルまたはN−アシル体などが挙げられる。具体的には例えば、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−スレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−システイン、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、L−グリシンなどのアミノ酸が挙げられる。また、これらアミノ酸はL−アルギニン塩酸塩、L−システイン塩酸塩、L−グルタミン酸塩酸塩、L−ヒスチジン塩酸塩、L−リジン塩酸塩などの無機酸塩や、L−リジン酢酸塩、L−リジンリンゴ酸塩などの有機酸塩、L−チロシンメチルエスエル、L−メチオノンメチルエスエル、L−メチオニンエチルエステルなどのエステル体、N−アセチル−L−システイン、N−アセチル−L−トリプトファン、N−アセチル−L−プロリンなどのN−置換体、L−チロシル−L−チロシン、L−アラニル−L−チロシン、L−アルギニル−L−チロシン、L−チロシル−L−アルギニンなどのジペプチド類の形態でもよい。
【0024】
医療用二重包装製剤の全ての薬剤を混合した溶液中にアミノ酸は、以下の配合量(遊離形態で換算)で配合されていることが好ましい。L−ロイシン約0.4〜20.0g/L、好ましくは約0.8〜10.0g/L、L−イソロイシン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.4〜7.0g/L、L−バリン約0.1〜16.0g/L、好ましくは約0.3〜8.0g/L、L−リジン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.5〜7.0g/L、L−スレオニンを約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.3〜4.0g/L、L−トリプトファン約0.04〜3.0g/L、好ましくは約0.08〜1.5g/L、L−メチオニン約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.2〜4.0g/L、L−フェニルアラニン約0.2〜12.0g/L、好ましくは約0.4〜6.0g/L、L−システイン約0.01〜2.0g/L、好ましくは約0.03〜1.0g/L、L−チロシン約0.01〜2g/L、好ましくは約0.02〜1.0g/L、L−アルギニン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.5〜7.0g/L、L−ヒスチジン約0.1〜8.0g/L、好ましくは約0.3〜4.0g/L、L−アラニン約0.2〜14.0g/L、好ましくは約0.4〜7.0g/L、L−プロリン約0.1〜10.0g/L、好ましくは約0.2〜5.0g/L、L−セリン約0.1〜6.0g/L、好ましくは約0.2〜3.0g/L、グリシン約0.1〜12.0g/L、好ましくは約0.3〜6.0g/、L−アスパラギン酸約0.01〜4.0g/L、好ましくは約0.03〜2.0g/L、L−グルタミン酸約0〜6.0g/L、好ましくは約0〜3.0g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0025】
アミノ酸液は、亜硫酸水素ナトリウムなどの抗酸化剤が含まれていてもよい。また、アミノ酸は、通常、pH調整剤(例えば塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリ)を適宜用いて、好ましくはpH約2.5〜10、より好ましくは約5〜8に調整される。
【0026】
前記の糖としては、従来から各種輸液に慣用されるものでよく、例えばブドウ糖、フルクトースなどの単糖類、マルトースなどの二糖類が例示される。その中でもブドウ糖、フルクトース、マルトースなどの還元糖が好ましく、特に血糖管理などの点で、ブドウ糖が好ましい。これらの還元糖は2種以上を混合して用いてもよく、更にこれらの還元糖にソルビトール、キシリトール、グリセリンなどを加えた混合物を用いてもよい。
【0027】
本発明においては、これらの糖を、医療用二重包装製剤の全ての薬剤を混合した溶液中に、約20〜800g/L、好ましくは約50〜400g/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0028】
糖液は、通常、pH調整剤(例えば、塩酸、酢酸、氷酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリ)を適宜使用して、好ましくはpH約2〜6、より好ましくは約2.5〜5に調整される。
【0029】
前記の微量金属元素としては、上記銅の他、ヒトに対して高カロリー輸液療法などを施す際に生じ得る各種欠乏症状を改善する金属が挙げられる。例えば、鉄、マンガン、亜鉛、セレン、モリブデン、コバルト、クロムなどが挙げられる。これらの微量金属元素は、対象となる患者の状態に対応して一種類のみを使用してもよく、二種類以上を使用してもよい。微量金属元素の充填量は、輸液分野における各種の文献に記載された、一日当たりの各微量元素の投与量(一日必要量)として一般的な範囲内であれば、特に限定されない。銅、マンガン、亜鉛は水に溶解させ、鉄はコロイドとして充填させるのが好ましい。但し、マンガン、亜鉛は、アミノ酸液または糖液と混合して用いることもできる。
【0030】
微量金属元素含有溶液は、通常、pH調整剤(例えば、塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリ)を適宜用いて、好ましくはpH約4〜8、より好ましくは約4.5〜6に調整される。
【0031】
前記のビタミンとしては、脂溶性/水溶性を問わず各種ビタミンが挙げられる。脂溶性ビタミンとしては、例えば、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKなどが挙げられる。ビタミンAとしては、例えばパルミチン酸エステル、酢酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンDとしては例えばビタミンD、ビタミンD、ビタミンD(コレカルシフェロール)およびそれらの活性型(ヒドロキシ誘導体)が挙げられる。ビタミンE(トコフェロール)としては、例えば酢酸エステル、コハク酸エステルなどのエステル形態が挙げられる。ビタミンK(フィトナジオン)としては、例えばフィトナジオン、メナテトレノン、メナジオンなどの誘導体が挙げられる。
水溶性ビタミンとしては、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンC、パントテン酸類、ビタミンB、ナイアシン(ニコチン酸類)、ビタミンB12、ビオチン(ビタミンH)、ミオ−イノシトール、葉酸、ビタミンP、ビタミンUなどが挙げられる。ビタミンB1としては例えば塩酸チアミン、プロスルチアミンまたはオクトチアミンなどが挙げられる。ビタミンBとしては、例えばリン酸エステル、そのナトリウム塩、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチドなどが挙げられる。ビタミンCとしては例えばアスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウムなどが挙げられる。パントテン酸類としては、遊離体に加え、カルシウム塩や還元体であるパンテノールの形態などが挙げられる。ビタミンBとしては、例えば塩酸ピリドキシンなどの塩の形態などが挙げられる。ナイアシンとしては、例えば、ニコチン酸またはニコチン酸アミドなどが挙げられる。ビタミンB12としては、例えばシアノコバラミンなどが挙げられる。ビタミンPとしては、フラボノイド類が挙げられる。
【0032】
これらのビタミンは、全ての溶液を混合した溶液中に、ビタミンAを約400〜6500IU/L、好ましくは約800〜6500IU/L、より好ましくは約800〜4000IU/L、ビタミンD(コレカルシフェノールとして)を約0.5〜10.0μg/L、好ましくは約1.0〜10.0μg/L、より好ましくは約1.0〜6.0μg/L、ビタミンE(酢酸トコフェノールとして)を約1.0〜20.0mg/L、好ましくは約2.5〜20.0mg/L、より好ましくは約2.5〜12.0mg/L、ビタミンK(フィトナジオンとして)を約0.2〜4.0mg/L、好ましくは約0.5〜4.0mg/L、より好ましくは約0.5〜2.5mg/L、ビタミンB(塩酸チアミンとして)を約0.4〜30.0mg/L、好ましくは約0.8〜30.0mg/L、より好ましくは約1.0〜5.0mg/L、ビタミンB(リボフラビンとして)を約0.5〜6.0mg/L、好ましくは約1.0〜6.0mg/L、より好ましくは約1.0〜4.0mg/L、ビタミンB(塩酸ピリドキシンとして)を約0.5〜8.0mg/L、好ましくは約1.0〜8.0mg/L、より好ましくは約1.0〜5.0mg/L、ビタミンB(シアノコバラミンとして)を約0.5〜50.0μg/L、好ましくは約1.0〜20.0μg/L、より好ましくは約1.0〜10.0μg/L、ニコチン酸類(ニコチン酸アミドとして)を約5.0〜80.0mg/L、好ましくは約10.0〜80.0mg/L、より好ましくは約10.0〜50.0mg/L、パントテン酸類(パントテン酸として)を約1.5〜35.0mg/L、好ましくは約3.0〜30.0mg/L、葉酸を約50〜800μg/L、好ましくは約100〜800μg/L、より好ましくは約100〜120μg/L、ビタミンC(アスコルビン酸として)を約12〜200mg/L、好ましくは約25〜200mg/L、好ましくは約25〜120mg/L、ビオチンを約5〜120μg/L、好ましくは約15〜120μg/L、好ましくは約15〜70μg/L配合するのが好ましい。
【0033】
ビタミン含有溶液は、通常、pH調整剤(例えば、塩酸、酢酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸などの酸類や水酸化ナトリウムなどのアルカリ)を適宜用いて、好ましくはpH約4〜8、より好ましくは約5〜7に調整される。
なお、水溶性ビタミンは、その1種以上をアミノ酸液または/および糖液に配合されてもよい。
【0034】
前記の電解質としては、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、塩素、リンなど無機成分の水溶性塩、例えば塩化塩、硫酸塩、酢酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、グリセロリン酸塩などが挙げられる。ナトリウムイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、硫酸ナトリウム、乳酸ナトリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。カリウムイオン供給源としては、例えば塩化カリウム、酢酸カリウム、クエン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、硫酸カリウム、乳酸カルシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約5〜80mEq/L、好ましくは約10〜40mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。カルシウムイオン供給源としては、例えば塩化カルシウム、グルコン酸カルシウム、パントテン酸カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。マグネシウムイオン供給源としては、例えば硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム、酢酸マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mEq/L、好ましくは約2〜20mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。リン供給源としては、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、グリセロリン酸カリウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約1〜40mmol/L、好ましくは約2〜20mmol/Lとなるように配合するのが好ましい。クロルイオン供給源としては、例えば塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどが挙げられ、全ての溶液を混合した溶液中に約10〜160mEq/L、好ましくは約20〜80mEq/Lとなるように配合するのが好ましい。
【0035】
上記電解質のうちカルシウムイオンおよびリンに関しては、アミノ酸液と同一の室に充填する場合、どちらか一方のみを混合させるのが好ましい。また、還元糖液と同一の室に充填する場合には、カルシウムイオン供給源およびリン供給源は共に充填させてもよい。
【0036】
また、アミノ酸液と糖液は、薬剤収容容器のそれぞれ別々の収容室に充填されていることが好ましい。すなわち、薬剤収容容器の一方の収容室にアミノ酸液が充填され、他方の収容室に糖液が充填されていることが好ましい。
【0037】
(工程3)
本工程は、液剤が充填された薬剤収容容器を加熱滅菌する工程である。
加熱滅菌方法としては、例えば、熱水浸漬滅菌法、熱水シャワー滅菌法、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ)法等が挙げられる。高圧蒸気滅菌法は、例えば、約100℃〜125℃、約5分〜30分間の条件で行うことが好ましい。
【0038】
本工程では、薬剤収容容器の隔壁近傍で小容器が薬剤収容容器の内壁面と接触した状態で、薬剤収容容器を加熱滅菌することによって、小容器を前記収容室内壁にブロッキングさせることができる。小容器を前記収容室内壁にブロッキングさせることにより、下記する工程5の実施(特に、二重包装体の薬剤収容容器が水平方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を寝かせた状態の保持)が容易に且つ確実となり得る。
【0039】
本発明においては、小容器本体及びヘッドスペースを含めた全体の比重が収容室の液剤より重い場合は小容器が下面に沈み、軽い場合は上面に浮き上がるため、液剤が薬剤収容容器の収容室内に充填されると、ヘッドスペースの一部と接触する恐れがあり、そのため、小容器の外壁を、薬剤収容容器の収容室内面と相溶性が高く、且つ融点が滅菌温度より低いプラスチックで構成すると、加熱滅菌の際にブロッキングが生じ、ブロッキングによって、小容器の外壁と薬剤収容容器の収容室の内壁との接触点が引っ付いた状態で固定される。固定されたブロッキング部を下面とすれば、工程Bにおいて、容易に且つ確実に小容器を液剤中に保持することができる。
なお、加熱滅菌によってブロッキングを起こすプラスチックの代表例としては、例えばポリエチレンなどが挙げられる。
【0040】
工程1〜3を経て得られた加熱滅菌された薬剤収容容器は、医療用薬剤収容容器として工程Aおよび工程Bに付される。
【0041】
(工程A)
本工程は、医療用薬剤収容容器を脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封して二重包装体とする工程である。
【0042】
本工程で用いられる脱酸素剤としては、公知の各種のもの、例えば水酸化鉄、酸化鉄、炭化鉄等の鉄化合物を有効成分とするものや、低分子フェノールと活性炭を用いたものを使用することができる。その代表的な市販品としては、「エージレス」(三菱ガス化学社製)、「モジュラン」(日本化薬社製)、「セキュール」(日本曹達社製)、「タモツ」(王子化工社製)等が挙げられる。これら市販品の名称は商品名である。
【0043】
本工程で用いられる外装袋は、酸素バリア性であって、医療用薬剤収容容器を密封可能な袋状物であれば特に限定されず、このような外装袋としては、例えば内面が熱融着性フィルム(例えばポリエチレン等のポリオレフィン材)からなり、その表面にアルミニウム箔をラミネートするか、アルミニウムまたはシリカ蒸着フィルム層を形成し、さらに表面に着色剤や紫外線吸収剤を混合したインキによる遮光印刷を必要に応じて施し、最外層にポリエステル等の保護フィルムを積層接着して形成されるフィルム等が使用可能である。
【0044】
脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内への医療用薬剤収容容器の密封は、常法に従い行われ、例えば酸素バリア性外装袋周縁を熱溶着して封止することにより行われる。
また、工程3で得られた加熱滅菌された薬剤収容容器を医療用薬剤収容容器として用いる場合であって、薬剤収容容器が可撓性扁平容器であり、小容器が可撓性扁平容器である場合には、薬剤収容容器をU字状に二つ折りにした状態で、医療用薬剤収容容器を脱酸素剤と共に酸素バリア性外装袋内に密封するのが好ましい。
【0045】
(工程B)
本工程は、工程Aで得られた二重包装体を前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態で前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に存在しなくなるまで保持する工程である。
「前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態」は、前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が前記小容器に接触しない状態であれば特に限定されないが、例えば、前記収容室内の液剤中に前記小容器が配置されるような状態をいう。
【0046】
本発明においては、工程3で得られた加熱滅菌された薬剤収容容器を工程Aの医療用薬剤収容容器として用いる場合であって、薬剤収容容器が可撓性扁平容器であり、小容器が可撓性扁平容器である場合には、前記の小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態が、二重包装体の薬剤収容容器が天頂方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を立たせた状態であり、この状態において、小容器全体が収容室内の液剤中に配置されているのが好ましく、また、二重包装体の薬剤収容容器が水平方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を寝かせた状態であり、この状態において、小容器全体が収容室内の液剤中に配置されているのも好ましい。
【0047】
また、保持時間は、前記収容室内のヘッドスペース中の酸素が実質的に無くなるまでの時間であり、この時間は、ヘッドスペースの体積や酸素濃度、容器の酸素透過度、および脱酸素剤の脱酸素能力などにより変化するので特に限定されないが、好ましくは7〜10日間である。
【0048】
なお、工程Aおよび工程Bに付される医療用薬剤収容容器としては、前記工程1〜3を経て得られる薬剤収容容器以外に、小容器が薬剤収容容器の薬剤収容容器の対向する内壁面に固着していないものであってもよい。この場合は、小容器が収容室内のヘッドスペースに露出しない状態にするには、例えば挟持具で小容器を一時的に固定し、二重包装体の薬剤収容容器の開口部を天頂方向となるように二重包装体を立たせた状態とすればよい。
【0049】
なお、工程Bの好ましい実施形態としては、図6〜8の(a)〜(b)に示すような形態が挙げられる。
【0050】
図6(a)は、工程1〜3を経て得られた医療用薬剤収容容器を工程Aにて外装袋で密封した二重包装体の薬剤収容容器が天頂方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を立たせた状態を示す。この状態において、小容器全体が収容室内の液剤中に配置されている。この状態を保持することにより、図6(a)中のヘッドスペース(7)に存在する酸素(O)が脱酸素剤(6)によって除去され、図6(b)に示すように、ヘッドスペース(7)に酸素が存在しなくなる。そのため、図6(c)で示すように、医療用二重包装製剤の向きを変えて寝かして、ヘッドスペース(7)と小容器(2)とが接触するような場合であっても、工程Bによりヘッドスペース(7)中の酸素が除去されているために、小容器(2)に密封されている易酸化性薬剤(22)は、ヘッドスペース(7)中の酸素によって実質的に酸化を受けることがない。
【0051】
図7(a)は、工程1〜3を経て得られた医療用薬剤収容容器を工程Aにて外装袋で密封した二重包装体の薬剤収容容器が水平方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を寝かせた状態を示す。この状態において、小容器全体が収容室内の液剤中に配置されている。この状態を保持することにより、図7(a)中のヘッドスペース(7)に存在する酸素(O)が脱酸素剤(6)によって除去され、図7(b)に示すように、ヘッドスペース(7)に酸素が存在しなくなる。そのため、図7(c)で示すように、医療用二重包装製剤の向きを変えて立てることによりヘッドスペース(7)と小容器(2)とが接触するような場合であっても、ヘッドスペース(7)中の酸素が除去されているために、小容器に密封されている易酸化性薬剤(22)は、ヘッドスペース(7)中の酸素によって実質的に酸化を受けることがない。
【0052】
図8(a)は、収容室を1室有する医療用薬剤収容容器を工程Aにて外装袋で密封した二重包装体の薬剤収容容器の開口部が天頂方向となるように、二重包装体を立たせた状態を示す。この状態において、ヘッドスペースが収容室内上部に位置し、かつ小容器が収容室内下部の液剤中に位置するように、挟持具(8)で小容器(2)が一時的に固定されている。この状態を保持することにより、図8(a)中のヘッドスペース(7)に存在する酸素(O)が脱酸素剤(6)によって除去され、図8(b)に示すように、ヘッドスペース(7)に酸素が存在しなくなる。そのため、図8(c)に示すように、挟持具(8)を取り除いてヘッドスペース(7)と小容器(2)とが接触しても、ヘッドスペース(7)中の酸素が除去されているために、小容器(2)に密封されている易酸化性薬剤(22)は、ヘッドスペース(7)中の酸素によって実質的に酸化を受けることがない。
【0053】
上記の工程Aおよび工程Bを経て製造された医療用二重包装製剤は、ヘッドスペース中の酸素が脱酸素剤によって実質的に除去されているので、得られた医療用二重包装製剤をどのような向きに変えても、小容器に封入されている易酸化性薬剤(22)は、ヘッドスペース中の酸素によって実質的に酸化を受けない。そのため、品質の劣化を防ぐことができ、取扱い性に優れている。また、本発明の医療用二重包装製剤は、長期の保存安定性に優れ、さらに、医療用二重包装製剤に新たな装置や機構などを導入したりしないので、作業性が損なわれない。
【実施例】
【0054】
(製剤例1)
ビタミンA油、コレカルシフェロール、酢酸トコフェロール及びフィトナジオンをポリソルベート80及びポリソルベート20により可溶化した後、注射用蒸留水に溶解し、更にアスコルビン酸、クエン酸及び水酸化ナトリウムでpH6とした後、リン酸リボフラビンナトリウム及びビオチンを加え、無菌ろ過して表1に示した組成のビタミン含有溶液を易酸化性薬剤として調製した。
尚、表1に示した組成において、リン酸リボフラビンナトリウム(ビタミンB)は110%の仕込み量である。
【0055】
【表1】


【0056】
中間層がポリ環状オレフィン、内外層がポリエチレンからなる厚さ50μmのフィルムより成形した袋に、上記ビタミン含有溶液4mLを充填し、窒素雰囲気下で充填口を溶着して密封し、小容器(2)を得た。
この小容器を、図1に示すように、隔壁(13)で仕切られたa室(3a)とb室(3b)とを備えた薬剤収容容器のa室(3a)に挿入し、隔壁(13)近傍にてヒートシール(19)により固定した。
尚、薬剤収容容器は、ポリエチレンとポリプロピレンの多層フィルムより成形されたもので、当該フィルムの酸素透過度は、約1000cc/m・24hr・atmである。
次に、各結晶アミノ酸及び電解質を溶解し、酢酸でpH7とした後窒素置換を行い、アミノ酸・電解質液を調製した。更にニコチン酸アミド及び葉酸をアミノ酸・電解質液と混合し、無菌ろ過して表2に示した組成のアミノ酸液を調製した。
【0057】
【表2】


【0058】
上記アミノ酸液300mLを、図1に示すように、薬剤収容容器のb室(3b)に、窒素雰囲気下で充填した。
続いて、注射用蒸留水にブドウ糖及び電解質を溶解し、酢酸でpH4.5として、糖・電解質液と混合し、窒素バブリングおよび無菌ろ過して表3に示した組成のブドウ糖溶液を調製した。
【0059】
【表3】


【0060】
上記ブドウ糖溶液696mLを、図1に示すように、薬剤収容容器のa室(3a)に、窒素雰囲気下で充填し、医療用薬剤収容容器として輸液製剤を製造した。尚、a室(3a)のヘッドスペースの体積は、50mLとなるようにした。
【0061】
(製剤例2)
注射用水にコンドロイチン硫酸ナトリウム、塩化第二鉄及び水酸化ナトリウムを各々溶解した。コンドロイチン硫酸ナトリウム溶液に、塩化第二鉄溶液と水酸化ナトリウム溶液を、水酸化ナトリウム溶液から1/10量ずつ交互に添加し、鉄コロイド溶液を調製した。この溶液に所定量の硫酸銅、塩化マンガン及び硫酸亜鉛を注射用水に溶解した液を添加した後、水酸化ナトリウムでpHを5〜6に調整した。これを常法により濾過し、表4の微量金属元素含有溶液を調製した。
【0062】
【表4】


【0063】
小容器(15)を2室に分割し、一方の室に上記微量金属元素溶液4mLを充填した他は製剤例1と同様にして、医療用薬剤収容容器を得た。
【0064】
(実施例1)
製剤例1で得られた医療用薬剤収容容器を、常法に従って高圧蒸気滅菌した後、アルミラミネートフィルム(酸素透過度<0.1cc/m・24hr・atm)より成形された外装袋中に、折り畳んだ状態で、脱酸素剤(三菱ガス化学社製の商品名エージレス)と共に密封した。
これを、図2に示した「二重包装体の薬剤収容容器が天頂方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を立たせた状態」で、室温で1週間保存することにより、医療用ダブルバッグ製剤を得た。
【0065】
(実施例2)
製造例1で得られた医療用薬剤収容容器を、広げて横に寝かせた状態で常法に従って高圧蒸気滅菌した後、アルミラミネートフィルム(酸素透過度<0.1cc/m・24hr・atm)より成形された外装袋中に、折り畳んだ状態で、脱酸素剤(三菱ガス化学社製の商品名エージレス)と共に密封した。
これを、小容器が下面に接着した状態となるよう、図3に示した「前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態が、二重包装体の薬剤収容容器が水平方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を寝かせた状態」で、室温で1週間保存することにより、医療用ダブルバッグ製剤を得た。
【0066】
(実施例3)
製剤例2で得られた医療用薬剤収容容器を、実施例2と同様にして1週間保存することにより、医療用ダブルバッグ製剤を得た。
【0067】
(比較例1)
製剤例1で得られた医療用薬剤収容容器を、常法に従って高圧蒸気滅菌した後、アルミラミネートフィルム(酸素透過度<0.1cc/m・24hr・atm)より成形された外装袋中に、折り畳んだ状態で、脱酸素剤(三菱ガス化学社製の商品名エージス)と共に密封した。
これを、図4に示した「小容器が収容室内のヘッドスペースに露出している状態」で、室温で1週間保存することにより、医療用ダブルバッグ製剤を得た。
【0068】
(比較例2)
製剤例1で得られた医療用薬剤収容容器を、広げて横に寝かせた状態で常法に従って高圧蒸気滅菌した後、アルミラミネートフィルム(酸素透過度<0.1cc/m・24hr・atm)より成形された外装袋中に、折り畳んだ状態で、脱酸素剤(三菱ガス化学社製の商品名エージス)と共に密封した。
これを、小容器が上面に接着した状態となるよう、図5に示した「小容器が収容室内のヘッドスペースに露出している状態」で、室温で1週間保存することにより、医療用ダブルバッグ製剤を得た。
【0069】
(比較例3)
製剤例2で得られた医療用薬剤収容容器を、比較例2と同様にして1週間保存することにより、医療用ダブルバッグ製剤を得た。
【0070】
(試験例)
上記実施例1〜3および比較例1〜3の医療用ダブルバッグ製剤について、小容器内の液中のリン酸リボフラビンナトリウム(ビタミンB)の含量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により測定した。
尚、リン酸リボフラビンナトリウムの含量がリン酸リボフラビンナトリウムの添加量に対して90%を下回るものは、不合格品とした。
結果を表5に示す。
【0071】
【表5】


【0072】
表5より、本発明による実施例1〜3の医療用ダブルバッグ製剤は、ヘッドスペースの窒素置換率がそれほど高くなくてもビタミンBの含量低下は抑えられているが、比較例のものは、窒素置換率を厳密に100%に近づけないと、ビタミンBの含量低下が許容範囲を超えてしまうことが明らかである。また、表5の実施例1の試験結果から、窒素置換率が変化してもビタミンBの含量が変化せず、本発明の医療用ダブルバッグ製剤は安定した品質を確保できることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明により、品質安定性、保存安定性、取扱い性に優れた医療用二重包装製剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】製剤例1にて製造される医療用薬剤収容容器の模式的一部破断図である。
【図2】実施例1における「二重包装体の薬剤収容容器が天頂方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を立たせた状態」を示す模式的断面図である。
【図3】実施例2における「前記小容器が前記収容室内のヘッドスペースに露出しない状態が、二重包装体の薬剤収容容器が水平方向に開口したU字状に二つ折りされた構成となるように、二重包装体を寝かせた状態」を示す模式的断面図である。
【図4】比較例1における「小容器が収容室内のヘッドスペースに露出している状態」を示す模式的断面図である。
【図5】比較例2における「小容器が収容室内のヘッドスペースに露出している状態」を示す模式的断面図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態の一つを示す模式図である。(a)は、二重包装体の模式的断面図を示し、(b)は、(a)の包装体を用いて工程Bを実施することにより得られる医療用二重包装製剤の模式的断面図であり、(c)は、(b)の医療用二重包装製剤を寝かせた状態を示す。
【図7】本発明の好ましい実施形態の一つを示す模式図である。(a)は、医療用薬剤収容容器を外装袋で密封した包装体の模式的断面図を示し、(b)は、(a)の包装体を用いて工程Bを実施することにより得られる医療用二重包装製剤の模式的断面図であり、(c)は、(b)の医療用二重包装製剤を裏返した状態を示す。
【図8】本発明の好ましい実施形態の一つを示す模式図である。(a)は、医療用薬剤収容容器を外装袋で密封した包装体の模式的断面図を示し、(b)は、(a)の包装体を用いて工程Bを実施することにより得られる医療用二重包装製剤の模式的断面図であり、(c)は、(b)の挟持具を取り外した状態を示す。
【符号の説明】
【0075】
1 薬剤収容容器
2 小容器
3 収容室
3a a室
3b b室
5 外装袋
6 脱酸素剤
7 ヘッドスペース
8 挟持具
11 液剤
11a アミノ酸液
11b 還元糖液(ブドウ糖溶液)
13 隔壁
19 ヒートシール
22 易酸化性薬剤
【出願人】 【識別番号】000149435
【氏名又は名称】株式会社大塚製薬工場
【出願日】 平成17年1月5日(2005.1.5)
【代理人】 【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍

【公開番号】 特開2006−187429(P2006−187429A)
【公開日】 平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願番号】 特願2005−994(P2005−994)