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【発明の名称】 医療用複室容器
【発明者】 【氏名】東雲 修身
【住所又は居所】静岡県富士宮市三園平818番地 テルモ株式会社内

【要約】 【課題】イージリィピーラブル性、耐高圧蒸気滅菌性、透明性、柔軟性および外観のバランスに優れた医療用複室容器を提供すること。

【解決手段】メタロセン系触媒で製造され、かつ融点が140℃以下であるポリプロピレンと、オレフィン系またはスチレン系熱可塑性エラストマーとの重合体組成物を内壁面とする容器であって、相対する内壁面の一部が剥離可能な熱シールによって複数の収容室に区画されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタロセン系触媒で製造され、かつ融点が140℃以下であるポリプロピレンと、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーからなる熱可塑性エラストマーとの重合体組成物を内壁面とし、相対する内壁面の一部が剥離可能な熱シールによって複数の収容室に区画されていることを特徴とする医療用複室容器。
【請求項2】
上記熱可塑性エラストマーがエチレン−プロピレンコポリマーもしくはエチレン−ブテン−1コポリマーである請求項1に記載の医療用複室容器。
【請求項3】
上記熱可塑性エラストマーがブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリスチレン)もしくはブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリスチレン)である請求項1に記載の医療用複室容器。
【請求項4】
上記重合体組成物中の熱可塑性エラストマーの含量が10〜40重量%である請求項1に記載の医療用複室容器。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、2種以上の薬液を互いに隔離された別々の収容室で保存し、使用時には隔離部を破断することによって該複数の薬液をクローズドの状態で混合するのに適した医療用複室容器に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野では複数の薬剤成分を混合した状態で生体内に投与することはごく一般的であるが、混合する薬剤成分の組み合わせによっては次のような方法が探られる。例えば輸液の場合、アミノ酸とブドウ糖とを含む液はメイラード反応による変質が起こりやすいので、各成分を別々の閉鎖系に保存しておき、患者への投与の直前に混合することが多いが、この際混合操作を無菌的に(クローズドシステムで)行うために、また容易に操作するために、複数の収容室に区画された容器を用い、該収容室の各々に異なる輸液成分を保存しておき、使用直前に区画された収容室を何らかの手段でクローズドシステム内で連通させ混合する方法が実用化されるようになった。
収容室の区画手段としては、使用直前までは安定に各輸液成分を隔離でき、使用時(混合時)には容易に連通させ得ることが大切であり、このために種々の形態が工夫され提案されている。代表的なものは、(1)収容室間を外側からクランプで狭窄するもの(特開昭53−38189号、特開昭61−103823号、特開平1−160558号など)、(2)収容室間を容器外に露出したチューブで連結し、該チューブをクランプで狭窄するもの(実開昭57−76636号など)、(3)収容室間に用時連通可能な連通具をもつもの(特開昭57−52455号など)、(4)収容室間の隔壁部のシールを比較的安定でかつ混合時には容易に破断できる程度の接着強度としたもの(特開昭63−19149号(特公平6−26563号)、特開昭63−309263号、特開平1−240469号、特開平2−4671号、特開平2−57584号、特開平2−241457号、特開平2−255418号、特開平4−242647号、特開平5−31153号、特開平5−68702号など)、である。
これらのうちで操作性に富み実用性のあるのは、(4)のいわゆるイージリィピーラブルタイプの複室容器であり、最も注目されている。このタイプの技術的ポイントは製造時あるいは輸送時においては収容室間の隔壁シールが比較的安定で破断しにくく、使用時(混合時)には手、治具などで容易に破断され得る程度のシール強度を持ち、かつ外界(大気)とつながる境界部の破断シール強度は十分であることである。したがって、容器の内壁を形成する(すなわち該シール部を成形する)材質の選定が最重要となるのであるが、一般にはミクロ相分離構造を成形する材質例えばポリエチレンとポリプロピレンとの混合物、ポリエチレンと架橋ポリエチレンとの混合物など(これらはシール部の破断時にいわゆる凝集剥離を起こすタイプである)が使われる。
しかしながら、問題なのはこれらの材質が輸液容器としての材料の要件すなわち安全性、柔軟性、透明性、耐熱性(耐高圧蒸気滅菌性)などを満たすか否かであり、最も頻繁に行われるポリプロピレンとポリエチレンの混合物の適用は透明性と柔軟性に難がある。ポリプロピレンとポリエチレンを混合して得たシートは透明性が損なわれる。また、ポリプロピレンは剛性が高く(柔軟性に劣り)、比較的柔軟なポリエチレンを混合しても輸液容器として満足な柔軟性の領域には到達し難い。ポリプロピレンを柔軟化する有効な手段として他のモノマー(例えばエチレンやブテン−1)の共重合が知られているが、柔軟性を増すためにコモノマー量を多くすると、それから得られる容器(シート)の表面にべたつきの問題がある(低分子量成分や無定形成分に起因)。
なお、ここで述べた「ポリプロピレン」は不均一系チタン触媒で製造される通常の結晶性ポリプロピレンのことである。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−38189号
【特許文献2】特開昭61−103823号
【特許文献3】特開平1−160558号
【特許文献4】実開昭57−76636号
【特許文献5】特開昭57−52455号
【特許文献6】特開昭63−19149号(特公平6−26563号)
【特許文献7】特開昭63−309263号
【特許文献8】特開平1−240469号
【特許文献9】特開平2−4671号、
【特許文献10】特開平2−57584号、
【特許文献11】特開平2−241457号
【特許文献12】特開平2−255418号
【特許文献13】特開平4−242647号
【特許文献14】特開平5−31153号
【特許文献15】特開平5−68702号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述したようなイージリィピーラブル型医療用複室容器につきものの材質の選定の問題の解消を課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、メタロセン系触媒で製造され、かつ融点が140℃以下であるポリプロピレン(以下、M−PPと称す)と、オレフィン系熱可塑性エラストマーまたはスチレン系熱可塑性エラストマーからなる熱可塑性エラストマー(以下、単に熱可塑性エラストマーと称す)との重合体組成物を内壁面とし、相対する内壁面の一部が剥離可能な熱シールによって複数の収容室に区画されている医療用複室容器であり、安全性、柔軟性、耐熱性、外観などのバランスにおいて従来にないすぐれた医療用複室容器である。
【発明の効果】
【0006】
以上詳述した如く、本発明の医療用複室容器は140℃以下と比較的低融点のメタロセン系触媒で製造されたポリプロピレンの持つ特性がオレフィン系あるいはスチレン系熱可塑性エラストマーとの組み合わせにおいて良好に発揮されることを利用したものであり、複室容器としての性能(イージリィピーラブル性)はもちろん、透明性、柔軟性、外観などのバランスにすぐれている。また、生産性にも富むので、医療分野に大きく貢献するものと期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
メタロセン系触媒で製造されるポリプロピレンは不均一系チタン触媒で製造される「通常」のポリプロピレン(以下PPと称す)に比し、均一系触媒の効果が発揮され、分子量分布が非常に狭く、ランダム性に富み均質な分子構造をとるので、透明性にすぐれ、低融点の場合でも低分子量物や不定形物(アタクチックポリマー)が非常に少ないのでべたつきが無く溶出成分も微量であることは周知の通りであり、比較的低融点のものが必然的に柔軟性に富むことも明らかであるが、特定の熱可塑性エラストマーとの組み合わせにおいて複室容器としての要件を十分満たすことが本発明によって見出されたのである。本発明におけるM−PP熱可塑性エラストマーとの重合体組成物がミクロ層分離構造を形成するのか、相溶系であるのかなどについては解明の余地があるが、M−PPと熱可塑性エラストマーとの分子間相互作用が適度なシール強度、透明性、柔軟性などと密接に結びついていると考えられている。
【0008】
本発明におけるM−PPはKaminsky−Sinn触媒(活性点の性質が同一という点に着目してシングルサイト触媒あるいは均一系触媒とも言われる)とも呼ばれるメタロセン触媒(一般にはZr, Hf, Tiなどの遷移金属のシクロペンタジエニル系、インデニル系あるいはフレオニル系化合物)を用いて製造されるポリプロピレンのうち融点が140℃以下のものであり、アイソタクチックあるいはシンジオタクチックの立体規則性の度合い、2,1−結合(頭−頭結合あるいは尾−尾結合)や1,3−結合(トリメチレン結合)の含量が調節されて製造される。また、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1などのα−オレフィン類を少量(2〜20モル%)共重合したコポリマーであることもある。M−PPの製造については、例えば曽我和雄ほか著「日本化学会編・新産業化学シリーズ・重合プロセス技術−ポリオレフィン」(大日本図書(株)1994年発行)に述べられている。
【0009】
本発明におけるM−PPはその融点が140℃以下であることを要件とする。
融点が140℃を超えると剛性が高くなり、柔軟性に乏しくなり、M−PPの特性が生きてこないからである。熱可塑性エラストマーはM−PPの柔軟剤として働くが、M−PPの剛性が高い領域では多量に添加することが必要となり、成形性の低下につながる。高圧蒸気滅菌時の温度(通常100〜121℃で行われる)をも考慮すると好ましい融点は120〜135℃である。この領域ではM−PPの曲げ弾性率は約4,000kg/cm2以下であり、比較的少量の熱可塑性エラストマーの添加で柔軟となり、しかも複室容器としての要件である良好なシール挙動を示す。そして成形性、成形物(容器シート)の力学的性質などを考慮すると、温度230℃、荷重2,160gにおけるMFR(メルトフローレイト)が0.3〜15より好ましくは0.5〜15であるのがよい。
【0010】
次に本発明に用いられる熱可塑性エラストマーのうちオレフィン系熱可塑性エラストマー(以下TPOと称す)はエチレンとプロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1などのα−オレフィン類とのコポリマーのうち非晶性もしくは低結晶性の軟質ポリマー(エラストマー)が代表例であり、特に密度0.90g/cm3以下でビカット軟化点が50〜70℃で、エチレン含有量が25〜80重量%のものが好ましく選ばれる。そしてTPOは成形性、成形物の力学的性質などを考慮すると、温度230℃、荷重2,160gにおけるMFRが0.5〜15より好ましくは1〜10程度であるのがよい。
【0011】
また、本発明における熱可塑性エラストマーのうちスチレン系熱可塑性エラストマー(以下SBCと称す)の代表例を以下に挙げる。これらは通常公知の方法で製造される。
(1)ブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリスチレン)(以下SEBSと称す):ポリスチレン−ポリブタジエン(1,2−結合体と1,4−結合体とのコポリマー)−ポリスチレン型のトリブロックコポリマー(SBS)への水素添加によって得られるブロックコポリマーである。M−PPとの親和性、得られるシートのイージリィーピーラブル性などを考慮すると、両端のポリスチレン部(S部)の合計がSEBS中の10〜40重量%さらに好ましくは12〜30重量%を占めるのがよい。また、エチレンブチレンコポリマー部(EB部)はEB部中のブチレン部の割合が20〜90重量%でさらに好ましくは30〜80重量%であるのがよい。そして、成形性、成形物の力学的性質などからSEBSは温度230℃、荷重2,160gにおけるMFRが0.5〜20さらに好ましくは1〜15のものが薦められる。
(2)ブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリスチレン)(以下SEPSと称す):SEBSの場合とほぼ同様、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン型のトリブロックコポリマー(SIS)の水素添加で得られる。SEBSと同様の事柄を考慮すると、両端のポリスチレン部(S部)の合計がSEPS中の8〜40重量%さらに好ましくは10〜35重量%であるのがよく、MFRは0.5〜20さらに好ましくは1〜15のものがよい。
【0012】
(3)ブロック(ポリスチレン−エチレンブチレンコポリマー−ポリエチレン)(以下SEBEと称す):ポリスチレン−ポリブタジエン(1,2−結合体と1,4−結合体のコポリマー)−ポリ−1,4−ブタジエン型のトリブロックコポリマーの水素添加で得られる。SEBSと同様の事柄を考慮すると、ポリスチレン部(S部)、エチレンブチレンコポリマー部(EB部)およびポリエチレン部(E部)の重量割合は好ましくは5〜30:40〜80:10〜40さらに好ましくは8〜25:45〜75:12〜35であり、EB中のブチレン量は25〜90重量%さらに好ましくは30〜80重量%であるのがよい。また、MFRはSEBSと同程度のものがよい。
(4)ブロック(ポリスチレン−エチレンプロピレンコポリマー−ポリエチレン)(以下SEPEと称す):ポリスチレン−ポリ−1,4−イソプレン−ポリ−1,4−ブタジエン構造のトリブロックコポリマーの水素添加によって製造され得る。SEBSと同様の事柄を考慮すると、ポリスチレン部(S部)、エチレンプロピレンコポリマー部(EP部)およびポリエチレン部(E部)の重量割合は好ましくは5〜30:40〜80:10〜40さらに好ましくは8〜25:45〜75:12〜35であって、MFRがSEBSと同程度のものがよい。
(5)ブロック(ポリスチレン−ポリ−1,2−ポリイソプレン−ポリスチレン)もくしはその水素添加物:ポリスチレン含量が10〜50重量%さらに好ましくは15〜40重量%であって、MFRがSEBSと同程度のものがよい。
上記(1)〜(5)のスチレン系熱可塑性エラストマーのうち、(1)のSEBSと(2)のSEPSが最も汎用性に富む。
【0013】
本発明の医療用複室容器の内壁面を形成するのはM−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物であるのは既に示した通りであり、一般には該組成物は、熱シール性、シール強度、柔軟性、透明性、耐熱性などを考慮すると、M−PPと熱可塑性エラストマーとの重量比が90:10〜60:40さらに好ましくは85:15〜65:35であるのがよい。この範囲において良好な性能バランスが得られやすい。
また、本発明の医療用複室容器は内壁面がM−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物であり、M−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物のシート単独からなる場合と、M−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物を内層(容器の内壁面)とし、他のポリマー(または重合体組成物)を外層あるいは中間層とする多層シートの場合がある。後者では容器のガス(水蒸気、酸素など)バリアー性、透明性、柔軟性、耐熱性、強度などの要求性能に応じて他のポリマー(または他の重合体組成物)と組み合わされるが、具体的に好ましい他のポリマー(または他の重合体組成物)の代表例を次に示す。
【0014】
(イ)ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1などのα−オレフィン類を共重合成分とする密度0.910〜0.930g/cm3の線状低密度ポリエチレン。Ziegler-Natta 系触媒やメタロセン系触媒で製造されるが、特に後者は透明性という点で好ましい。
(ロ)結晶性ポリプロピレンまたはこれを主成分とする結晶性ポリプロピレン系コポリーマ。(イ)の場合と同様Ziegler-Natta 系触媒(不均一チタン系触媒)もしくはメタロセン系触媒で製造される。特に後者の場合は柔軟性・透明性のよいポリマーが得られやすいという点ですぐれている。
【0015】
(ハ)(ロ)とアモルファスポリプロピレン(アタクチックポリプロピレン)
との重合体組成物。
(ニ)エチレンビニルアルコールコポリマー、容器に酸素ガスバリアー性を付与する目的で用いられ得る。
また、本発明の医療用複室容器を形成するシートの厚さは全体で0.2〜0.6mmより好ましくは0.25〜0.45mmであるのが適当であり、複層の場合の場合にはM−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物層は0.01mm以上好ましくは0.02mm以上であるのがよい。
【0016】
本発明の複室容器は通常公知の方法で製造され得る。すなわち、単層用あるいは外層用のTダイまたはサーキュラーダイを介して抽出し(溶融温度は170〜250℃さらに好ましくは180〜230℃)、得られたフラット状のシート、チューブ状のシート、パリソンなどについてサーモフォーミング、ブロー、延伸(熱シール性を考慮すると無延伸の方がよいが)、裁断、融着などの手法を適宜活用して所定の形状・形態に加工すればよい。複室容器の作製で最も重要なポイントは熱シールの工程である。複数の収容室間の仕切り(融壁)部のシールは製造時あるいは輸送時には破断が起こりにくく、使用時(混合時)には手、治具などで容易に破断できる程度のシール強度(一般には180℃剥離強度で0.3〜1kg/15mm程度)を示し、外界と接する部分のシール(周辺シール)は容易には破断できない程度のシール強度(180℃剥離強度が1.5kg/15mm以上より好ましくは2kg/15mm以上)であることが要求されるため、仕切り部シールと周辺シールの条件のコントロールが要求される。本発明の容器の場合、仕切り部シールは温度110〜150℃、圧力1〜4kg/cm2、時間0.2〜5秒、シール巾2〜10mmで、周辺シールは温度130〜200℃、圧力2〜5kg/cm2、時間0.2〜10秒、シール巾5mm以上の範囲で行うのが通常である。収容室の数は2〜4個が一般的である。
【0017】
また、M−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物の調製は通常公知の単軸もしくは2軸の溶融混合押出機や静的溶融混合機を利用して行うことができる。混合時の溶融温度は160〜220℃が好ましい。
本発明の複室容器は輸液剤におけるアミノ酸液とブドウ糖液の組み合わせ、あるいは、CAPDに用いる腹膜透析透析液における炭酸水素ナトリウム液とブドウ糖含有電解質液の組み合わせの如く、同一溶液内に存在すると変質が起こりやすい薬液の組み合わせに有効であり、さらには輸液のみならず血液分野にも適用され得るものである。
【実施例】
【0018】
以下実施例によって本発明をさらに具体的に説明する。
1)実験方法
(1)原料ポリマーの準備:使用した原料ポリマー(ペレット状)を表1に示す。なお、融点は示差走査熱量計を用い、10℃/分の昇温速度で測定した。
【0019】
【表1】


【0020】
(2)重合体組成物の調製:表1のポリマーを適宜選択し、45mm中の2軸溶融混練押出機を用いて、所定の割合で180〜200℃の温度範囲で混練し、押出されたストランドを水冷・カッティング乾燥して表2に示すペレット状の重合体組成物を得た。
【0021】
【表2】


【0022】
(3)シートの作製:表1および/または表2のポリマーまたは重合体組成物を単層用または多層用のサーキューラーダイ(インフレダイ)に供給し、180〜200℃でチューブ状のシートを押出し、水冷リングで冷却後、厚さ0.3mm、折径200mmのシートを5m/分の速度で巻き取った。表3にシートの構成を示す。
(4)複室容器の作製:(3)で得られたシートを300mm長に裁断し、中央部の巾7mmを温度120℃、圧力2kg/cm2、時間5秒の条件で熱シール後、片方の室にアミノ酸3wt/v%水溶液、もう一方の室にブドウ糖15wt/v%水溶液各400mlを入れ、両端を巾10mm、温度160℃、圧力4kg/cm2、時間5秒の条件で熱シールし、区画室が2個の薬液入り複室容器を作製した。
(5)高圧蒸気滅菌:(4)の容器を高圧蒸気滅菌機に入れ、窒素雰囲気中で、温度110℃、ゲージ圧1.8kg/cm2、時間30分の条件において滅菌し、室温まで冷却した。
【0023】
(6)容器の透明性の評価:(5)の容器を窒素雰囲気中で48時間以上放置した後、容器シートの一部を切り取って、波長450nmにおける水中透過率を島津ダブルビーム型自記分光光度計UV−300にて測定し、透明性の尺度とした。
(7)容器の柔軟性の評価:(5)の容器の48時間以上放置後のシートをダンベル状に裁断し、JISK7113に準じて引張弾性率を測定し、柔軟性の尺度とした。
(8)シール強度の測定:(5)の容器の48時間以上放置後のシートの中央部(仕切り部)および端部(周辺部)のシール部を切り取り、300mm/分の速度で180°剥離強度を測定した(表3中の剥離強度は15mm巾に換算した値である)。
(9)容器(シート)表面の調査:(5)の容器の48時間以上放置後の容器表面のべたつき状態を肉眼観察するとともに、手でさわって調べた。
(10)容器の仕切り部の破断性(連通性)の評価:(5)のシートを机の上
に寝かせて置き、一方の区画室側を手で押さえる程度で、仕切り部のシールが破断するか否か確認した(各例につき5回テスト)。
(11)溶出物試験:日本薬局方一般試験法「輸液用プラスチック試験法」に準じ、(3)で得られたシートについて試験を行った。
【0024】
【表3】


【0025】
2)実験結果(表3参照):
(1)重合体組成物の調製およびシートの押出成形は順調で、異物、発泡、ブロッキングなどは観察されず、均一性に富む重合体組成物ペレットおよびシートがいずれの場合も得られた。
(2)実施例1〜8のいずれの組成においても溶出物は日本薬局方に適合することが確認された。
(3)表3にシートの構成と高圧蒸気滅菌後の透明性(水中透過率)、柔軟性(引張弾性率)およびシール強度を示す。
本発明におけるM−PPと熱可塑性エラストマーとの重合体組成物を層成分として含む容器(シート)はいずれも透明性と柔軟性にすぐれていることがわかる。一方、比較的高融点のメタロセン系触媒で製造されたポリプロピレンを使用した場合は柔軟性に乏しい(比較例1)。
(4)M−PPの分子量分布の狭さを反映してか、容器(シート)表面にべたつき現象が発生せず、通常PP(比較例2)の欠点を解消している。すなわち、比較例2の場合は表面が濡れていると感じられるほどのべたつき状態であった。
(5)容器の仕切り部の破断性(連通性)は比較例を含めていずれも良好であり、容易に連通させることができた。表3のシール強度のデータもこれを裏付けている。

【出願人】 【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目44番1号
【出願日】 平成18年2月20日(2006.2.20)
【代理人】 【識別番号】100089060
【弁理士】
【氏名又は名称】向山 正一

【公開番号】 特開2006−150099(P2006−150099A)
【公開日】 平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願番号】 特願2006−43015(P2006−43015)