| 【発明の名称】 |
リハビリテーション支援装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】大須 理英子 【住所又は居所】京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2 株式会社国際電気通信基礎技術研究所内
【氏名】大▲高▼ 洋平 【住所又は居所】京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2 株式会社国際電気通信基礎技術研究所内
【氏名】川人 光男 【住所又は居所】京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2 株式会社国際電気通信基礎技術研究所内
|
| 【要約】 |
【課題】リハビリ中に脳活動をモニタすることにより、効率的なリハビリ訓練を行えるリハビリテーション支援装置を提供する。
【解決手段】神経損傷者Aは、頭部にブレインハット1を被っている。ブレインハット1は、脳活動に伴って発生する電場を計測する第1センサ2と、脳血流の状態を検出する第2センサ3とを有する。脳活動解析装置11は、第1センサ2で得られた脳内電場を示す信号と、第2センサ3で得られた脳血流の状態を示す信号とに基づいて、神経損傷者Aの脳活動を解析し、その解析結果をモニタ12及びプリンタ13へ出力する。モニタ12は解析結果を画面に表示し、プリンタ13は解析結果を用紙にプリントアウトし、神経損傷者A、医師及び療法士などへ解析結果を通知する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 神経損傷者に対するリハビリテーションを支援する装置において、リハビリテーション中の神経損傷者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得する取得手段と、該取得手段が取得した情報を出力する手段とを備えることを特徴とするリハビリテーション支援装置。 【請求項2】 神経損傷者に対するリハビリテーションを支援する装置において、リハビリテーション中の神経損傷者に装着される運動補助具と、前記神経損傷者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得する取得手段と、該取得手段が取得した情報に基づいて前記運動補助具を作動させる手段とを備えることを特徴とするリハビリテーション支援装置。 【請求項3】 脳障害を受けた患者に対するリハビリテーションを支援する装置において、前記患者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得する取得手段と、該取得手段が取得した情報を出力する手段とを備えることを特徴とするリハビリテーション支援装置。 【請求項4】 前記取得手段は、前記神経損傷者または患者に装着される、脳が発生する電場を計測する第1センサと、脳内の血流状態を計測する第2センサとを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリハビリテーション支援装置。 【請求項5】 前記取得手段は、前記神経損傷者または患者に装着される、脳内血流中のヘモグロビン濃度を計測するセンサを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のリハビリテーション支援装置。 【請求項6】 前記神経損傷者または患者に、前記脳内血流中のヘモグロビン濃度を計測するセンサを装着する位置は、fMRIで得られるBOLD信号を解析することによって同定されることを特徴とする請求項5記載のリハビリテーション支援装置。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、例えば不慮の事故によって脊髄などが損傷された神経損傷者、または脳血管障害などで脳障害を受けた患者のリハビリテーションを支援するリハビリテーション支援装置に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、脳活動の研究が進んでおり、脳から発生する微弱電場(脳波)及び微弱磁場(脳磁波)の計測精度は高くなっている。また、脳内の電流源の位置を高精度に推定するためのアルゴリスムも提案されている(例えば、特許文献1参照)。 【0003】 神経損傷者とは、脳に運動企図または運動指令を司る細胞の機能が残存しているものの、末梢の筋肉などの効果器までの経路のどこかに損傷または病変があることにより、運動指令が効果器まで十分に到達しない状態にある者を指す。例えば、脊髄損傷を例にとると、交通事故などの不慮の事故、または疾患により脊髄が侵された場合、主に大脳による中枢神経の活動と末梢神経(運動神経,感覚神経)の活動との途絶によって、四肢に機能障害が発生する。このような神経損傷者に対しては、脊髄の可塑性による機能回復を図るために、運動訓練を中心としたリハビリテーション(以下、単にリハビリともいう)が行われる。 【特許文献1】国際公開第WO03/057035号パンフレット 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 リハビリでは、医師または療法士が作成した運動訓練の計画表に従って、神経損傷者が病院内または家庭内で四肢の回復運動を行っている。この場合、従来のリハビリでは、神経損傷者の四肢(末梢神経)の動き(関節の可動角度、筋電図による筋力など)の推移は、リハビリ実行中に検出されているが、脳(中枢神経)内の活動は見られていない。よって、リハビリの初期段階において、正常である大脳の運動野から四肢を動かす命令が出された場合、その命令通りに四肢が動かないため、大脳が活動をやめてしまうという現象(所謂「学習された不使用」(learned non-use))が起こる。 【0005】 神経損傷者にとって、リハビリ訓練は肉体的苦痛を伴うことが多く、また、機能が完全に回復するか否かが心配であって精神的に不安定となることも多い。 【0006】 このような「学習された不使用」の問題及び神経損傷者の事情により、リハビリが中断されて機能回復が遅れたり、さらにはリハビリが停止されて機能回復が得られないことになるという問題がある。 【0007】 また、脳出血などで脳細胞が障害を受けても、時間が経つと血腫が吸収されることに伴い仮死状態にあった脳細胞が生き返る場合があるが、このような場合に、患者は一旦動かなくなると脳が完全に駄目になったと感じて、リハビリを開始する意欲を持たなくなるという問題がある。 【0008】 本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、リハビリ中に脳活動をモニタすることにより、中断または停止されることなく、効率的なリハビリ訓練を行えるリハビリテーション支援装置を提供することを目的とする。 【0009】 本発明の他の目的は、リハビリの開始を患者に促すことができるリハビリテーション支援装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0010】 本発明のリハビリテーション支援装置は、神経損傷者に対するリハビリテーションを支援する装置において、リハビリテーション中の神経損傷者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得する取得手段と、該取得手段が取得した情報を出力する手段とを備えることを特徴とする。 【0011】 本発明のリハビリテーション支援装置は、神経損傷者に対するリハビリテーションを支援する装置において、リハビリテーション中の神経損傷者に装着される運動補助具と、前記神経損傷者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得する取得手段と、該取得手段が取得した情報に基づいて前記運動補助具を作動させる手段とを備えることを特徴とする。 【0012】 本発明のリハビリテーション支援装置は、脳障害を受けた患者に対するリハビリテーションを支援する装置において、前記患者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得する取得手段と、該取得手段が取得した情報を出力する手段とを備えることを特徴とする。 【0013】 本発明のリハビリテーション支援装置は、上記装置において、前記取得手段は、前記神経損傷者または患者に装着される、脳が発生する電場を計測する第1センサと、脳内の血流状態を計測する第2センサとを有することを特徴とする。 【0014】 本発明のリハビリテーション支援装置は、上記装置において、前記取得手段は、前記神経損傷者または患者に装着される、脳内血流中のヘモグロビン濃度を計測するセンサを有することを特徴とする。 【0015】 本発明のリハビリテーション支援装置は、上記装置において、前記神経損傷者または患者に、前記脳内血流中のヘモグロビン濃度を計測するセンサを装着する位置は、fMRIで得られるBOLD信号を解析することによって同定されることを特徴とする。 【0016】 本発明にあっては、神経損傷者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得し、取得した情報を出力して通知する。よって、現時点で例えば四肢は意志通り動かないが、脳は正常な活動をしていることが神経損傷者に理解されるため、リハビリへの取り組みに対する神経損傷者の積極性が向上する。また、医師及び療法士は、神経損傷者の脳活動の推移を知ることができ、病状の診断またはその後の治療方針,訓練計画に活かせる。この結果、有効的なリハビリが行えて、短期間での機能回復を図れる。 【0017】 本発明にあっては、神経損傷者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得し、取得した情報に基づいて、例えば四肢の動きを補助するための運動補助具を作動させる。これにより、神経損傷者はリハビリ中に意志通りの動作を行える。また、脳が正常な活動をしていることが神経損傷者に分かるので、リハビリへの取り組みに対する積極性が向上する。 【0018】 本発明にあっては、脳障害を受けた患者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得し、取得した情報を出力して通知する。よって、脳の機能が回復してきたことを患者は知ることができ、リハビリを開始する意欲が生じる。 【0019】 脳活動を表す一つの指標である脳が発生する電場を示す信号は、時間分解能に優れているが、空間分解能は劣るという特性を有する。一方、脳活動を表す一つの指標である脳内の血流状態を示す信号は、空間分解能に優れているが、時間分解能は劣るという特性を有する。よって、これらの信号を組み合わせることにより、それぞれの信号の長所を活かして、正確な脳活動を計測することが可能となる。 【0020】 脳活動を表す指標である脳内血流中のヘモグロビン濃度変化量に基づいて、脳活動を予測する。よって、脳活動を正確に認識できる。 【0021】 脳内血流中のヘモグロビン濃度を計測するセンサを装着する位置を、fMRIで得られるBOLD信号の解析結果に基づいて同定する。よって、神経損傷者または患者に特有の脳の活動領域へのセンサの装着が可能となる。 【発明の効果】 【0022】 本発明では、神経損傷者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得し、取得した情報を神経損傷者、医師及び療法士などに通知するようにしたので、リハビリに取り組む意欲を神経損傷者に促進させることができ、また、効率的な治療及び訓練を行うことができる。この結果、有効的なリハビリを行うことができて、短期間で機能回復を実現することが可能となる。 【0023】 本発明では、神経損傷者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得し、取得した情報に基づいて運動補助具を作動させるようにしたので、神経損傷者はリハビリ期間にあっても意志通りの動作を行うことできて便利であり、また、リハビリに取り組む意欲も高めることができる。 【0024】 本発明では、脳障害を受けた患者の脳活動を表す情報を非侵襲的に取得し、取得した情報を患者、医師及び療法士などに通知するようにしたので、リハビリに取り組む意欲を患者に促進させることができ、また、効率的な治療及び訓練を行うことができる。 【0025】 本発明では、脳活動の時間分解能に優れている脳が発生する電場を示す信号と、脳活動の空間分解能に優れている脳内の血流状態を示す信号とを組み合わせて、脳活動を非侵襲的に計測するようにしたので、脳活動の状態を正確に把握することができる。 【0026】 本発明では、脳内血流中のヘモグロビン濃度変化量に基づいて、脳活動を予測するようにしたので、脳活動の状態を正確に把握することができる。 【0027】 本発明では、脳内血流中のヘモグロビン濃度を計測するセンサの装着位置を、fMRIで得られるBOLD信号の解析結果に基づいて同定するようにしたので、特有の脳の活動領域へ確実にセンサを装着することができ、センサにて正確な脳活動を表す情報を取得することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0028】 以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。 【0029】 (第1実施の形態) 図1は、本発明で使用する、脳活動を表す情報を非侵襲的に取得する取得手段としてのブレインハットを示す図である。ブレインハット1は、人間の頭部を覆うように帽子状をなした布製の下地体4に、2種類の第1センサ2,第2センサ3を複数個(例えば、数十個〜数百個)ずつ設けた構成をなしている。これらの第1センサ2及び第2センサ3は、等ピッチ(例えば、数ミリ間隔)で配設されている。 【0030】 第1センサ2は、具体的には電極を有する脳波計(EEG:Electroencephalogram)であり、外部からの刺激を受けて脳内の神経細胞が発生する電流に起因する微弱な電場(脳波)を検出する。各第1センサ2は、自身が設置された各部位での脳活動に伴う電場の経時的変化を計測して出力する。第1センサ2は、時間分解能に優れており、数ミリ秒単位での計測が可能である。 【0031】 第2センサ3は、具体的には近赤外光センサ(NIRS:Near Infra Red Spectroscopy)であって、比較的短い波長を持つ赤外光を出射する発光素子とその赤外光の反射光を受ける受光素子とを一組として構成されており、発光素子からの出射光の脳内での吸収量に基づいて脳血流の状態を検出する。各第2センサ3は、自身が設置された各部位における脳血流を計測して出力する。第2センサ3は、磁場,電場のように他の領域からの影響を受けないため空間分解能に優れており、数ミリ単位での計測が可能である。 【0032】 このような第1センサ2及び第2センサ3は、小型の構成であっても脳活動に関する情報を取得できるため、上述したようなブレインハット1に簡単に取り付けることができ、大型の構成を必要としない。 【0033】 図2は、第1実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。神経損傷者Aは、図1に示したブレインハット1を頭部に被っている。ブレインハット1には、ブレインハット1の第1センサ2及び第2センサ3で検出された信号を入力する脳活動解析装置11が接続されている。また、脳活動解析装置11には、モニタ12及びプリンタ13が接続されている。 【0034】 脳活動解析装置11は、第1センサ2で得られた脳内電場を示す信号と、第2センサ3で得られた脳血流の状態を示す信号とに基づいて、神経損傷者Aの脳活動を解析し、必要に応じてその解析結果をモニタ12及びプリンタ13へ出力する。解析結果としては、例えば、「右手で物を掴もうとする」命令、「左足を前へ出そうとする」命令などが、脳活動解析装置11で得られる。モニタ12は、このような解析結果を画面に表示し、プリンタ13はこのような解析結果を用紙にプリントアウトする。 【0035】 このような構成により、リハビリ中の神経損傷者Aの脳活動が、神経損傷者A、医師及び療法士などに通知される。神経損傷者Aにとっては、脳が正常に動作していることが分かるので、リハビリに取り組む意欲が向上する。また、医師及び療法士にとっては、神経損傷者Aの脳活動の状況を把握できるので、病状の診断の助けになるだけでなく、訓練計画も含めた正確な治療方針を容易に決定することができる。 【0036】 また、大脳皮質に電極を埋め込むような方法ではなく、ブレインハット1を被せて非侵襲的に脳内活動の情報を取得しているので、神経損傷者Aは苦痛を全く感じない。また、ブレインハット1を被るだけで良いので、神経損傷者Aへ過度の肉体的負担及び精神的負担を与えることがない。 【0037】 なお、解析結果を表示またはプリントアウトすることとしたが、第1センサ2及び第2センサ3で得られた計測データをそのまま、モニタ12に表示したり、プリンタ13でプリントアウトすることも可能である。 【0038】 (第2実施の形態) 図3は、第2実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。第1実施の形態では、神経損傷者Aが病院内にいる場合を想定しているが、この第2実施の形態は、神経損傷者Aが家庭内でリハビリを行っている場合を想定した構成である。 【0039】 家庭内の神経損傷者Aは、図1に示したブレインハット1を頭部に被っている。ブレインハット1には、ブレインハット1の第1センサ2及び第2センサ3で検出された信号を集計する集計装置21が接続されている。集計装置21には、病院側とデータの無線通信を行う通信装置22が接続され、通信装置22には病院からの脳活動の解析結果を表示する表示装置23が接続されている。 【0040】 病院には、データ処理装置30が設けられている。データ処理装置30は、家庭内の通信装置22との間でデータの無線通信を行う通信部31と、ブレインハット1の第1センサ2及び第2センサ3で検出された信号に基づき神経損傷者Aの脳活動を解析する脳活動解析部32と、解析結果を表示するモニタ部33と、解析結果をプリントアウトするプリンタ部34と、解析結果を記憶する記憶部35と、これらの各ハードウェアの動作を制御するCPU36とを備えている。 【0041】 第1センサ2及び第2センサ3で検出された信号は、集計装置21で経時的に集計された後、通信装置22を介して病院へ送信される。その集計データは、通信部31で受信されて脳活動解析部32へ入力される。脳活動解析部32は、脳内電場を示すデータと脳血流の状態を示すデータとに基づいて、神経損傷者Aの脳活動を解析し、必要に応じてその解析結果をモニタ部33、プリンタ部34及び記憶部35へ出力する。モニタ部33は解析結果を画面に表示し、プリンタ部34は解析結果を用紙にプリントアウトし、記憶部35は解析結果を内部に記憶する。 【0042】 また、脳活動解析部32で得られた解析結果は、通信部31から神経損傷者Aの家庭へ送信される。この解析結果は、通信装置22で受信されて表示装置23で表示され、神経損傷者Aに通知される。 【0043】 第2実施の形態でも、第1実施の形態と同様な効果を奏することができる。また、神経損傷者Aの近傍に脳活動を解析するための装置を設ける必要がないので、家庭内でリハビリを行う神経損傷者Aにも、本発明を適用できる。また、データ処理装置30により、複数の神経損傷者を一括的に管理することができる。 【0044】 なお、上述した例では、家庭,病院間を無線通信する場合について説明したが、既存の公衆回線を利用してデータ通信を行うようにしても良いことは勿論である。 【0045】 (第3実施の形態) 図4は、第3実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。神経損傷者Aは、図1に示したブレインハット1を頭部に被っている。また、神経損傷者Aには、四肢の運動を補助する運動補助具41が装着されている。図4に示す例では、手関節の背屈動作による物体の把持運動を補助する手関節駆動式把持装具が、運動補助具41として神経損傷者Aの前腕から手にかけて装着されている。 【0046】 ブレインハット1には、ブレインハット1の第1センサ2及び第2センサ3で検出された信号を入力する脳活動解析装置11が接続されている。また、脳活動解析装置11には、運動補助具41の動作を制御する動作制御装置42が接続されている。 【0047】 脳活動解析装置11は、第1センサ2で得られた脳内電場を示す信号と、第2センサ3で得られた脳血流の状態を示す信号とに基づいて、神経損傷者Aの脳活動を解析し、その解析結果を動作制御装置42へ出力する。動作制御装置42は、入力された解析結果に応じて運動補助具41の動作を制御する。例えば、図4に示す例では、解析結果が「手首を曲げて物を掴もうとする」命令である場合、運動補助具41(手関節駆動式把持装具)が動作制御装置42の制御により駆動されて、その把持動作が補助される。 【0048】 図5は、第3実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。第1センサ2及び第2センサ3により、脳活動を表す情報(脳内電場を示す信号と脳血流の状態を示す信号)を取得して、取得した情報を脳活動解析装置11に入力する(ステップS1)。脳活動解析装置11により、取得した情報に基づいて、神経損傷者Aの脳活動を解析して、その解析結果を動作制御装置42に入力する(ステップS2)。解析結果が四肢の運動に関する命令であるか否かを判断する(ステップS3)。解析結果が四肢の運動に関する命令である場合(S3:YES)、運動補助具41を装着している四肢(例えば、図4の例では左手)の運動に関する命令であるか否かを判断する(ステップS4)。運動補助具41を装着している四肢の運動に関する命令である場合(S4:YES)、動作制御装置42により、解析した命令に応じてその運動補助具41を作動させて(ステップS5)、動作は終了する。解析結果が四肢の運動に関する命令でない場合(S3:NO)、または、運動補助具41を装着している四肢の運動に関する命令でない場合(S4:NO)には、そのまま動作が終了する。 【0049】 第3実施の形態では、神経損傷者Aの脳活動の解析結果に基づいて、手首などの四肢の動きを補助するための運動補助具41を作動させるようにしているため、神経損傷者はリハビリ中に意志通りの動作を行うことができる。また、脳が正常に活動していることが神経損傷者Aに分かるので、リハビリに対する意欲が向上する。 【0050】 (第4実施の形態) 図6は、第4実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。神経損傷者Aは、図1に示したブレインハット1を頭部に被っている。また、神経損傷者Aの四肢の所定部位には、振動を発生する振動素子51が装着されている。 【0051】 ブレインハット1には、ブレインハット1の第1センサ2及び第2センサ3で検出された信号を入力する脳活動解析装置11が接続されている。また、脳活動解析装置11には、振動素子51の振動を制御する振動制御装置52が接続されている。 【0052】 脳活動解析装置11は、第1センサ2で得られた脳内電場を示す信号と、第2センサ3で得られた脳血流の状態を示す信号とに基づいて、神経損傷者Aの脳活動を解析し、その解析結果を振動制御装置52へ出力する。振動制御装置52は、入力された解析結果に応じて振動素子51の振動を制御する。例えば、解析結果が「右腕を上げようとする」命令である場合、右腕に装着した振動素子51を振動させ、解析結果が「左脚を曲げようとする」命令である場合、左脚に装着した振動素子51を振動させる。 【0053】 このような第4実施の形態では、脳が正常であることを神経損傷者Aは振動刺激によって実感できるので、リハビリに対して取り組む意欲は高くなる。 【0054】 なお、上述した例では、脳活動を表す情報を非侵襲的に取得する手段として、EEGとNIRSとを組み合わせるようにしたが、これに限定されるものではない。他の例としては、例えば、時間分解能が高い脳磁計(MEG:Magnetoencephalography) と、空間分解能が高い磁気共鳴装置(fMRI:functional Magnetic Resonance Imaging)とを組み合わせるようにしても良い。脳活動を表す情報を得る手段は任意であり、すべての場合において本発明を適用できることは勿論である。 【0055】 また、第1〜第4実施の形態を適宜組み合わせた構成であっても良いことは言うまでもない。 【0056】 (第5実施の形態) 以下、fMRIとNIRSとを組み合わせて、リハビリを支援する本発明の他の実施の形態について説明する。 【0057】 fMRIから得られるBOLD信号のレベルは、脳活動が活発な部位で高くなることが知られており、BOLD信号のレベル変化を解析することにより、特定の部位(運動野、知覚野など)での脳活動の程度を知ることが可能である。特に、運動野におけるBOLD信号と実際の筋出力とには非常に高い相関関係が認められている。実際的には、BOLD信号値の加算平均を求めて、脳活動の指標としている。 【0058】 また、NIRSは、前述したように脳血流を光学的に計測して、脳活動を検知するセンであり、例えば、ヘモグロビンの光吸収特性の変動に基づき、脳の神経活動に伴う局所的な血流変化を計測して、脳機能を検知する。具体的に、NIRSは、酸化ヘモグロビン(oxy-Hb)と、還元ヘモグロビン(deoxy-Hb)と、oxy-Hb及びdeoxy-Hbの和である総ヘモグロビン(total-Hb)との相対濃度変化量を計測できる。これらの計測値の中で、oxy-Hbが、四肢運動のための脳活動と最も高い相関関係を有している。 【0059】 健常者に対して行った実験について説明する。健常者の左側頭部にNIRSを設置する。図7は、設置したNIRSの構成を模式的に示している。このNIRSは、近赤外光を出射する5個の発光素子(図7に○で示す)と、近赤外光を受ける4個の受光素子(図7に□で示す)とを有しており、発光素子/受光素子の1個ずつの組合せにより、計測対象の部位として12種のチャンネル(CH1〜CH12)が存在する。 【0060】 そして、その健常者に、右手の親指と人指し指とを用いて、所定周期で非磁性体の道具の開閉運動を行わせて、このときの健常者のoxy-Hbの濃度変化をNIRSで計測した。使用した道具は、ゴムばねの種類によって開閉運動に必要となる力が異なるように設計されており、指を閉じた状態で4種類の力の大きさ(4.9N,14.7N,24.5N,29.4N)が必要である。4種類の力夫々について、健常者に開閉運動を課す時間は15秒間とした。また、NIRSにおけるoxy-Hbの濃度のサンプリング周期は0.1秒とした。 【0061】 この計測結果(oxy-Hb濃度の経時変化)を図8に表す。図8の横軸の0〜15秒の間が開閉運動を課された時間である。開閉運動に伴って、oxy-Hb濃度が増加しており、必要な力の大きさが大きくなればなるほどoxy-Hb濃度も増加していくことが分かる。なお、12種のチャンネルの夫々において、このoxy-Hb濃度の経時変化パターンは異なっており、力の大きさとoxy-Hb濃度とで著明な相関関係が得られたチャンネルは、特にCH4とCH9とであった。よって、手指運動に関して特に活性となる脳の部位は、この被験者の場合、CH4及びCH9に対応する領域と考えられる。 【0062】 このことから、力の大きさとoxy-Hb濃度との間には、相関関係が認められるため、oxy-Hb濃度の計測値から、例えば指に加えられるべき力の大きさ(どの程度の力を加えたいかを表すヒトの意志)を予測することが可能である。 【0063】 図9は、健常者が行った2種類の手指運動に関して、CH4及びCH9でのoxy-Hb濃度計測結果から予測した筋力の大きさ(図中太線)と、実際に測定した手指筋力の大きさ(図中細線)との関係を表すグラフである。図9の結果から、高い相関精度が得られていることが理解される。 【0064】 図10は、筋力の大きさの予測精度を表すグラフであり、縦軸は予測の良さを評価するための評価係数である。また、横軸aはCH4のみでのoxy-Hb濃度計測結果から筋力を予測した場合、横軸bはCH4及びCH9でのoxy-Hb濃度計測結果から筋力を予測した場合、横軸cは全12種のCH1〜CH12でのoxy-Hb濃度計測結果から筋力を予測した場合を示している(図7のa,b,c参照)。2種のチャンネル(CH4及びCH9)に基づいて予測した場合と、全12種のチャンネルに基づいて予測した場合とで、それらの予測精度は殆ど変わらない。よって、手指運動に関して関連が深いチャンネルを選択すれば、その選択したチャンネルにおけるoxy-Hb濃度計測結果に基づき、全チャンネルに基づいて予測しなくても、精度が高い筋力の予測結果を得ることができる。このことは、コスト低減につながる。 【0065】 第5実施の形態は、上述したような知見に基づいてなされたものである。以下の例では、神経損傷者が右手麻痺の患者とする。まず、その神経損傷者に対して、fMRIの検査結果により、右の手指の運動を司る部位がどこであるかを同定する。右の手指の運動を司る部位は左運動野であるが、その部位には個人差がある。そこで、神経損傷者に右の手指を動かすことを考えてもらって、そのときfMRIで得られるBOLD信号を解析して、その神経損傷者に特有の脳の活動領域を同定する。 【0066】 図11は、第5実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。神経損傷者Aは、fMRIの検査結果に基づき同定された領域を含む位置に、NIRS60が取り付けられている。NIRS60には、NIRS60で検出された信号(oxy-Hb濃度)を入力する脳活動解析装置61が接続されている。また、脳活動解析装置61には、モニタ62及びプリンタ63が接続されている。 【0067】 脳活動解析装置61は、NIRS60で検出されたoxy-Hb濃度の経時変化に基づいて、神経損傷者Aの脳活動を解析し、必要に応じてその解析結果をモニタ62及びプリンタ63へ出力する。解析結果としては、例えば、「右手の親指と人指し指とを用いて軽い力で物体を摘もうとする」命令、「掴んだ物体を急に放そうとする」命令などが、脳活動解析装置61で得られる。モニタ62は、このような解析結果を画面に表示し、プリンタ63はこのような解析結果を用紙にプリントアウトする。 【0068】 このような構成により、リハビリ中の神経損傷者Aの脳活動が、神経損傷者A、医師及び療法士などに通知される。よって、神経損傷者Aにとっては、脳が正常に動作していることが分かるので、リハビリに取り組む意欲を向上させることができる、医師及び療法士にとっては、神経損傷者Aの脳活動の状況を把握できるので、病状の診断の助けになるだけでなく、訓練計画も含めた正確な治療方針を容易に決定することができるなど、優れた効果を奏する。 【0069】 第5実施の形態において、予め、右手指を動かす意志を神経損傷者Aに持ってもらって、そのときのNIRS60の計測結果を学習しておき、この学習結果を参照して、脳活動解析装置61で脳活動の解析を行うようにする場合には、その解析精度の向上を図ることができる。 【0070】 なお、このようなNIRS60を利用した第5実施の形態に対して、第2実施の形態の構成(家庭内でのリハビリ)、第3実施の形態の構成(運動補助具の制御)、第4実施の形態の構成(振動素子の装着)の何れかを適宜組み合わせるようにしても良いことは勿論である。 【0071】 上述した例では、神経系が損傷している患者のリハビリに対する本発明の適用を説明したが、以下に、本発明の他の適用例について説明する。動脈瘤破裂などによる脳出血、または脳梗塞などによる脳虚血により、脳細胞が障害を受けても、時間が経つと血腫が引いたり血流が復活する、もしくは神経回路が再構築されたりして、障害を受けた脳細胞が機能を回復する場合がある。ところが、脳からの命令に応じて例えば四肢が一旦動かなくなった場合に、患者は脳が完全に駄目になったと思い込んで、脳を働かせようとする意志をなくしてしまう。 【0072】 このような場合に、上述した第1〜第5実施の形態のように脳活動をモニタしていけば、脳の機能が回復したこと、または脳の機能が徐々に回復してくことを、患者は知ることができ、そこからリハビリを開始する意欲が生じたり、リハビリを継続する気力が増強される。 【図面の簡単な説明】 【0073】 【図1】本発明で使用するブレインハットを示す図である。 【図2】第1実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。 【図3】第2実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。 【図4】第3実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。 【図5】第3実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の動作手順の一例を示すフローチャートである。 【図6】第4実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。 【図7】NIRSの構成を示す模式図である。 【図8】NIRSで得られるoxy-Hb濃度の経時変化を示すグラフである。 【図9】予測した筋力の大きさと、実際に測定した手指筋力の大きさとの関係を表すグラフである。 【図10】筋力の大きさの予測精度を表すグラフである。 【図11】第5実施の形態に係るリハビリテーション支援装置の構成を示す図である。 【符号の説明】 【0074】 1 ブレインハット 2 第1センサ 3 第2センサ 11,61 脳活動解析装置 12,62 モニタ 13,63 プリンタ 23 表示部 30 データ処理装置 32 脳活動解析部 33 モニタ部 34 プリンタ部 41 運動補助具 42 動作制御装置 A 神経損傷者
|
| 【出願人】 |
【識別番号】393031586 【氏名又は名称】株式会社国際電気通信基礎技術研究所 【住所又は居所】京都府相楽郡精華町光台二丁目2番地2
|
| 【出願日】 |
平成18年2月23日(2006.2.23) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100078868 【弁理士】 【氏名又は名称】河野 登夫
【識別番号】100114557 【弁理士】 【氏名又は名称】河野 英仁
|
| 【公開番号】 |
特開2006−263460(P2006−263460A) |
| 【公開日】 |
平成18年10月5日(2006.10.5) |
| 【出願番号】 |
特願2006−47327(P2006−47327) |
|