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【発明の名称】 上肢リハビリ装置
【発明者】 【氏名】古荘 純次

【氏名】井上 昭夫

【氏名】笠 潮

【要約】 【課題】本発明に係る上肢リハビリ装置は、手首まで含む上肢の運動機能を回復させる訓練を行うことができ、より一層高い安全性を確保すること、より一層実感覚に近い力学的感覚を伝えることができる上肢リハビリ装置を提供することを目的とする。

【解決手段】本発明に係る上肢リハビリ装置の第1の構成は、患者の上肢の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置において、患者の手首の3自由度のうち、少なくとも1自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える少なくとも1個の駆動手段と、前記駆動手段の駆動を調整する少なくとも1個の機能性流体クラッチと、を有することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の上肢の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置において、
患者の手首の3自由度のうち、少なくとも1自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える少なくとも1個の駆動手段と、前記駆動手段の駆動を調整する少なくとも1個の機能性流体クラッチと、を有することを特徴とする上肢リハビリ装置。
【請求項2】
患者の上肢の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置において、
患者の手首の3自由度のうち、少なくとも1自由度の作動に対して患者に力学的感覚を伝える少なくとも1個の機能性流体ブレーキ、を有することを特徴とする上肢リハビリ装置。
【請求項3】
患者の上肢の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置において、
3つの自由回転軸あるいは回転機構を有する患者が操作するグリップと、
前記3つの自由回転軸あるいは回転機構の回転駆動を制御する回転駆動制御機構と、
を有することを特徴とする上肢リハビリ装置。
【請求項4】
前記グリップの前記3つの自由回転軸あるいは回転機構は、患者の手首を伸展、屈曲させる方向、患者の手首を外転、内転させる方向、患者の手首を回外、回内させる方向に回転可能であることを特徴とする請求項3に記載の上肢リハビリ装置。
【請求項5】
ワイヤーを備え、該ワイヤーを引っ張ることで駆動制御することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の上肢リハビリ装置。
【請求項6】
両端にジョイントを取り付けた回転軸を備え、該回転軸を回転することで駆動制御することを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の上肢リハビリ装置。
【請求項7】
患者の肘および肩の3自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える、3個の駆動手段と、少なくとも3個の機能性流体クラッチと、を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の上肢リハビリ装置。
【請求項8】
患者の肘および肩の3自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える、3個の駆動手段と、少なくとも3個の機能性流体ブレーキと、を有することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の上肢リハビリ装置。
【請求項9】
上下方向を長手方向とした回動軸と、該回動軸に一端を回動自在に取り付けた第1及び第2フレームと、該第1及び第2のフレームのそれぞれの他端に回動自在に取り付けた上下方向を長手方向とした第3のフレームとからなる平行リンクと、
前記グリップを先端に設け、前記第3のフレームに支持され、 前記平行リンクの変形により上下方向に移動可能なアームと、を有することを特徴とする請求項3〜請求項8のいずれか1項に記載の上肢リハビリ装置。
【請求項10】
前記駆動手段は複数のワイヤーにて前記3つの自由回転軸あるいは回転機構を駆動しており、前記自由回転軸あるいは回転機構の回転部において、前記複数のワイヤーの間隔を狭くしたことを特徴とする請求項3〜請求項9のいずれか1項に記載の上肢リハビリ装置。
【請求項11】
前記グリップの重量バランスをとるバランサーを設けたことを特徴とする請求項10又は請求項11に記載の上肢リハビリ装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の上肢の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運動機能改善を目的としたリハビリテーションに有用な、速く正確な運動をリラックスした状態で行うことのできる機能の回復を効果的に実現させることのできる、運動訓練装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
また、コンピュータによって形成された画像や、ロボットを媒体とした実際に存在する世界と、電気粘性流体の波動抵抗とを実時間で連動させ、力学的感覚を操作者に呈示する仮想現実システムが提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第3120065号公報
【特許文献2】国際公開第96/02887号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、人間が扱う機械等は、故障や制御不良により人間に危害を加えないように、より高い安全性を確保することが求められている。特に、前述の従来例は、患者が操作するものであり、より一層高い安全性が求められる。
【0006】
また、患者自ら訓練を進めることができ、療法士のサポートをなるべく必要としないが、患者の運動機能の回復は促進できることが求められている。さらに、患者により一層、実感覚に近い力学的感覚を伝えることも求められている。
【0007】
また、脳卒中の患者は手首を含む上肢機能に障害をもつ場合が多い。しかし、従来の上肢リハビリ装置では、手首の姿勢は把持部で拘束を受けない。つまり、手首まで含む上肢のリハビリテーションを十分に行うことが求められている。
【0008】
そこで本発明に係る上肢リハビリ装置は、手首まで含む上肢の運動機能を回復させる訓練を行うことができ、より一層高い安全性を確保すること、より一層実感覚に近い力学的感覚を伝えることができる上肢リハビリ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明に係る上肢リハビリ装置の第1の構成は、患者の上肢の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置において、患者の手首の3自由度のうち、少なくとも1自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える少なくとも1個の駆動手段と、前記駆動手段の駆動を調整する少なくとも1個の機能性流体クラッチと、を有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第2の構成は、患者の上肢の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置において、患者の手首の3自由度のうち、少なくとも1自由度の作動に対して患者に力学的感覚を伝える少なくとも1個の機能性流体ブレーキ、を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第3の構成は、患者の上肢の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置において、3つの自由回転軸あるいは回転機構を有する患者が操作するグリップと、前記3つの自由回転軸あるいは回転機構の回転駆動を制御する回転駆動制御機構と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第4の構成は、第3の構成の上肢リハビリ装置であって、前記グリップの前記3つの自由回転軸あるいは回転機構は、患者の手首を伸展、屈曲させる方向、患者の手首を外転、内転させる方向、患者の手首を回外、回内させる方向に回転可能であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第5の構成は、第1〜第4のいずれかの構成の上肢リハビリ装置であって、ワイヤーを備え、該ワイヤーを引っ張ることで駆動制御することを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第6の構成は、第1〜第5のいずれかの構成の上肢リハビリ装置であって、両端にジョイントを取り付けた回転軸を備え、該回転軸を回転することで駆動制御することを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第7の構成は、第1〜第6のいずれかの構成の上肢リハビリ装置であって、患者の肘および肩の3自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える、3個の駆動手段と、少なくとも3個の機能性流体クラッチと、を有することを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第8の構成は、第1〜第6のいずれかの構成の上肢リハビリ装置であって、患者の肘および肩の3自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える、3個の駆動手段と、少なくとも3個の機能性流体ブレーキと、を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第9の構成は、第3〜第8のいずれかの構成の上肢リハビリ装置であって、上下方向を長手方向とした回動軸と、該回動軸に一端を回動自在に取り付けた第1及び第2フレームと、該第1及び第2のフレームのそれぞれの他端に回動自在に取り付けた上下方向を長手方向とした第3のフレームとからなる平行リンクと、前記グリップを先端に設け、前記第3のフレームに支持され、 前記平行リンクの変形により上下方向に移動可能なアームと、を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第10の構成は、第3〜第9のいずれかの構成の上肢リハビリ装置であって、前記駆動手段は複数のワイヤーにて前記3つの自由回転軸あるいは回転機構を駆動しており、前記自由回転軸あるいは回転機構の回転部において、前記複数のワイヤーの間隔を狭くしたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明に係る上肢リハビリ装置の第11の構成は、第10又は第11の構成の上肢リハビリ装置であって、前記グリップの重量バランスをとるバランサーを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る上肢リハビリ装置の第1〜第4、第7、第8の構成によれば、手首まで含む上肢の運動機能を回復させる訓練を行うことができ、より一層高い安全性を確保すること、より一層実感覚に近い力学的感覚を伝えることができる。
【0021】
本発明に係る上肢リハビリ装置の第9の構成によれば、実感覚に近い力学的感覚を操作者に呈示することができる。
【0022】
本発明に係る上肢リハビリ装置の第5、第6の構成によれば、正確な駆動伝達(バックドライブ性の向上)と、軽量化を図ることができ、装置の安全性を高めることができる。
【0023】
本発明に係る上肢リハビリ装置の第10の構成によれば、ワイヤーの捩れをおさえ、ワイヤーの長さの変化を小さくすることができ、バックドライブ性を高めることができる。
【0024】
本発明に係る上肢リハビリ装置の第11の構成によれば、グリップの重量バランスを保ち、グリップが自重等で回転してしまうことを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
[第一実施形態]
本発明に係る上肢リハビリ装置の第一実施形態について、図を用いて説明する。
【0026】
(上肢リハビリ装置の構成)
まず、本発明に係る上肢リハビリ装置の構成について説明する。図1は本発明に係る上肢リハビリ装置の概略構成図、図2は3次元力学的感覚提示手段の構成図、図3は3次元力学的感覚提示手段及び運動検知手段のブロック図である。図4は機能性流体ブレーキの構成図である。
【0027】
図1、図2に示すように、患者の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置は、プログラム選択手段であるSWボックス1、3次元力学的感覚提示手段2、運動検知手段であるセンサ3、画像表示手段であるモニタ4、フィードバック手段5、コンピュータ6、緊急停止手段7から構成されている。
【0028】
SWボックス1は、選択ボタンと入力ボタンを備え、選択ボタンを押すことでカーソルを移動して患者に合わせた訓練プログラムを選び、入力ボタンを押すことでその訓練プログラムを選択する。
【0029】
図2に示すように、3次元力学的感覚提示手段2は、駆動手段であるモータ8、クラッチ9、ロボットアーム10から構成されている。3次元力学的感覚提示手段2は、ほぼ一定速度で駆動(回転)するモータ8からクラッチ9を介して駆動を伝達することで患者の上肢に3次元の力学的感覚を伝える。
【0030】
図3に示すように、モータ8、クラッチ9、センサ3は、X、Y、Z軸(ロボットアーム10の回動軸)にそれぞれ設けられており、グリップ11を3次元で操作(移動)でき、グリップ11の3次元の動きを検知できる。
【0031】
モータ8は、患者の肘および肩の3自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える、3個の駆動手段である。クラッチ9は、1個で正逆転を制御できる機能性流体クラッチを少なくとも1個用いるか、それぞれ正転、逆転を制御する少なくとも2個の機能性流体クラッチを用いることができる。
【0032】
モータ8の回転速度は、減速機を介して減速されて、クラッチ9において20rpm以下、好ましくは10rpmになるようなほぼ一定の回転速度に設定されている。クラッチ9からロボットアーム10の回動軸へ伝わる回転の回転速度が20rpmの時、後述するグリップ11の移動速度は1m/sとなる。同様に、クラッチ9からロボットアーム10の回動軸へ伝わる回転の回転速度が10rpmの時、グリップ11の移動速度は人の上肢の速度と同等の0.5m/sとなる。
【0033】
モータ8として、直流モータ、誘導モータ、超音波モータ、パルスモータ等の様々なモータを使用できる。直流モータでは、一定電圧を印加することにより、逆起電力と印加電圧がバランスする近傍において回転速度は変動するが、ほぼ一定の回転速度とすることができる。誘電モータでは、一定の周波数の交流を印加することにより、すべり速度の範囲内で回転速度は変動するが、ほぼ一定の回転速度とすることができる。超音波モータでは、一定の信号を与え続けることにより、ほぼ一定の回転速度とすることができる。パルスモータでは、一定の周期のパルスを印加することにより、ほぼ一定の回転速度とすることができる。
【0034】
これらのモータは、サーボモータに比べて安価であり、センサ、コントローラを必要としないため、かかるモータを用いることで上肢リハビリ装置の製造コストをおさえることができる。
【0035】
尚、モータ8として、DCサーボモータ、ACサーボモータ等を用い、ロータリーエンコダー、レソルバ、タコジェネレータ等のセンサ情報をフィードバックすることにより、速度をほぼ一定に制御する方法もある。この場合は、上記直流モータ、誘導モータ、超音波モータ、パルスモータ等を用いる場合と較べて、速度の変動は一般に小さくなるという利点がある。一方、モータが高価である、センサーおよびコントローラーを必要とするというコスト上の欠点、およびセンサーやコントローラの故障および配線の断線等によるモータの暴走の可能性があるという欠点も有する。しかしながら、かかるDCサーボモータ、ACサーボモータ等の制御は、回転速度をほぼ一定とする制御であり、モータの暴走の可能性は低く、高い安全性を確保することができる。
【0036】
クラッチ9は、電気粘性流体106を注入された電気粘性(ER)流体クラッチである。電気粘性流体クラッチは、フランジ127(127a、127b)に形成された深溝126(126a、126b)に円筒電極123(123a、123b)を挿入し、その隙間に電気粘性流体106を注入した構成となっている。クラッチ9は、円筒電極123により電気粘性流体106に印加される電圧を変化することで電気粘性流体106の抵抗を変化させ、モータ8の出力トルクを変化させて伝達している。
【0037】
尚、クラッチ9は、電気粘性流体クラッチに限定されるものではなく、磁気粘性(MR)流体クラッチ、磁性流体クラッチ、パウダークラッチ、ER流体に変えてERゲルを用いたERゲルクラッチ等の機能性流体クラッチであってもよい。また、クラッチ9は、円筒型に限定されるものではなく、ディスク型、多重ディスク型であってもよい。
【0038】
ここで、機能性流体とは、電場、磁場、光、剪断力などの外部刺激により、粘弾性特性が変化する流体である。ER流体(エレクトロ・レオロジー流体)とは、電場によってレオロジー特性を変えることのでき、粘弾性が大きく変化する流体である。MR流体(マグネト・レオロジー流体)とは、磁場によってレオロジー特性を変えることができ、粘弾性が大きく変化する流体である。機能性流体クラッチとは、ER流体あるいはMR流体の粘弾性特性を外部刺激により変化させて伝達力を制御するクラッチである。
【0039】
例えば、モータ8によって、上下のフランジ127a、127bを同一速度で回転させると、上下の円筒電極123a、123bには、同じ大きさで反対方向の回転力が発生し、ロボットアーム10の回動軸には、何の回転力も伝わらない。
【0040】
次に、上の円筒電極123aにのみ電圧を印加すると、上の深溝126aに注入された電気粘性流体106の粘性が増大し、上の円筒電極123aの回転力が弱くなる。ロボットアーム10の回動軸は、上下の電気粘性流体106の粘性抵抗の差に比例した回動力で回動する。逆に、下の円筒電極123bにのみ電圧を印加した場合には、ロボットアーム10の回動軸は逆方向に回動する。
【0041】
このように、上下の円筒電極123に印加する電圧を制御することによって、ロボットアーム10の回動軸の回動方向、回転力を制御できる。
【0042】
電気粘性流体106は、電気的に応答よくその粘性を変化する。このため、多くの機械部品を使用することなく、コンパクトで応答が速く、実感覚に近い3次元の力学的感覚を患者に伝えることができる。
【0043】
また、モータ8、クラッチ9に変えて、機能性流体ブレーキ29を用いることもできる。機能性流体ブレーキとは、ER流体あるいはMR流体の粘弾性特性を外部刺激により変化させて伝達力を制御するブレーキである。
【0044】
図4に示すように、ブレーキ29は、電気粘性流体106を注入された電気粘性(ER)流体ブレーキである。電気粘性流体ブレーキは、フランジ127に形成された深溝126に円筒電極123を挿入し、その隙間に電気粘性流体106を注入した構成となっている。ブレーキ29は、円筒電極123により電気粘性流体106に印加される電圧を変化することで電気粘性流体106の抵抗を変化させ、ロボットアーム10から伝達される患者の力(入力トルク)に変化させた抵抗を加えている。
【0045】
すなわち、ブレーキ29は、モータ等の駆動手段から人間(患者)への力の伝達を調整するクラッチとは異なり、人間側が発生する力を調整してロボットアーム10の動きを調整し、また力覚を呈示するために使用される。
【0046】
これにより、手首の関節が回りすぎて、患者の手首に過度の負担がかかることを防止できる。
【0047】
尚、ブレーキ29は、電気粘性流体ブレーキに限定されるものではなく、磁気粘性(MR)流体ブレーキ、磁性流体ブレーキ、パウダーブレーキ、ER流体に変えてERゲルを用いたERゲルブレーキ等の機能性流体ブレーキであってもよい。また、ブレーキ29は、円筒型に限定されるものではなく、ディスク型、多重ディスク型であってもよい。
【0048】
例えば、円筒電極123に電圧を印加すると、深溝126に注入された電気粘性流体106の粘性が増大し、患者の操作に対して負荷を大きくすることができる。そして、円筒電極123に印加する電圧を制御することによって、ロボットアーム10の回動軸の回転力を制御できる。
【0049】
(ロボットアーム10)
図5はロボットアームの斜視図、図6はロボットアームを上側から見た模式図、図7はロボットアームを背面側から見た模式図である。尚、説明のために、回転軸41〜43等は省略している。図5に示すように、ロボットアーム10は、平行リンク12、アーム13、空間リンク(アーム13、回動軸19、40、支軸20b、21b、40a、フレーム20〜23)、回転軸41、42、43を備えている。平行リンク12は、上下方向(Z軸方向)を長手方向とした回動軸19、第1〜第3のフレーム20、21、22を相互に回動自在に取り付けて、平行四辺形を形成している。
【0050】
第1及び第2のフレーム20、21は、一端で、回動軸19に直交するように取り付けられた支軸20b、21bを中心に垂直方向に回動可能に形成されている。第1及び第2のフレーム20、21は、回動軸19の回動に伴って水平方向に回動する。第1及び第2のフレーム20、21の一端には、カウンターウェイト20a、21aが設けられている。カウンターウェイト20a、21aは、第1及び第2のフレーム20、21の支軸20b、21bを中心に平行リンク12、アーム13の自重を支えている。
【0051】
第3のフレーム22は、回動軸19と平行になるように上下方向を長手方向として、第1及び第2のフレーム20、21の他端に回動自在に取り付けられている。第3のフレーム22の下端にアーム13が固定されている。また、アーム13は、平行リンク12の変形により、支軸20b、21bを中心に上下方向(Z軸方向)に移動可能に構成されている。すなわち、第1及び第2のフレーム20、21の回動により、第3のフレーム22が上下方向(Z軸方向)に移動することでアーム13も第3のフレーム22と同様に移動する。
【0052】
アーム13は、一端でフレーム23に連結され、他端にグリップ11を着脱可能に取り付けている。図6(a)に示すように、フレーム23は、一端で連結部23aを介してアーム13と連結し、他端で連結部23bを介して支軸40aと連結している。支軸40aは回動軸19と同軸上に設けられた回動軸40に取り付けられている。
【0053】
そして、図6(b)、図6(c)に示すように、回動軸19、40の回動により、支軸20b、21b、40aを介して第1及び第2のフレーム20、21、フレーム23が常に平行に水平方向に回動軸19、40を中心として回動する。
【0054】
また、連結部23aはアーム13を首振り可能に連結しており、連結部23bは支軸40aを首振り可能に連結している。これにより、回動軸40のみ回動し、支軸40aを介してフレーム23をフレーム20、21と平行に移動することで、アーム13の先端のグリップ11が左右に移動する(図6(b)、図6(c)の一点鎖線、二点鎖線の状態)。
【0055】
また、図7(a)、図7(b)に示すように、連結部23aはアーム13を軸回転可能に連結しており、連結部23bは支軸40aを軸回転可能に連結している。支軸20b、21b、40aを中心として第1及び第2のフレーム20、21、フレーム23を常に平行に回動してフレーム22を上下方向に移動することで、アーム13を介してグリップ11を上下に移動する。
【0056】
このように、ロボットアーム10に、平行リンク12の変形により上下方向に移動可能なアーム13の水平面内における回転運動を3次元的な空間リンクにより行わせる機構を設けた。3次元的な空間リンクは、アーム13、回動軸19、40、支軸20b、21b、40a、フレーム20〜23とにより形成されている。
【0057】
これにより、歯車、ベルト等の駆動伝達機構を介してアーム13を移動する方法に比べて、駆動伝達における摩擦を低減することができ、ロボットアーム10のバックドライブ性を飛躍的に向上させることができる。ここで、バックドライブ性とは、負荷側から逆にアクチュエータ(クラッチ9、モータ8)側を回転させるあるいは動かす際の、回転させ易さあるいは動かし易さの度合いをいう。そして、クラッチ9として、電気粘性(ER)流体クラッチ、磁気粘性(MR)流体クラッチ等の機能性流体クラッチを用いることで、3次元力学的感覚提示手段2のバックドライブ性を向上させることができる。
【0058】
(回転軸41、42、43、ユニバーサルジョイント44)
回転軸41、42、43は、平行リンク12の鉛直方向下方で、回動軸40とフレーム22とを連結するように設けられている。図8に示すように、回転軸41、42、43は、軸回りに回転可能となっている。回転軸41、42、43の一端にはユニバーサルジョイント44が設けられており、後述するモータ52、62、72から駆動力を伝達される。回転軸41、42、43の他端には、ユニバーサルジョイント44が設けられており、プーリ41a、42a、43aが固定されており、モータ52、62、72から伝達された駆動力を、後述するワイヤー51、61、71に伝達する。
【0059】
回転軸41、42、43とユニバーサルジョイント44を用いることで、確実な駆動伝達ができ、装置のバックドライブ性を高めることができる。尚、ユニバーサルジョイント44に変えて、等速ジョイント等のジョイントを用いることもできる。等速ジョイントを用いることで、回転力(駆動力)を伝達する方向を変えても角速度を一定に保つことができる。
【0060】
モータ52、62、72は、モータ8と同様に、直流モータ等を使用でき、上肢リハビリ装置の製造コストをおさえることや、速度の変動をおさえたり、高い安全性を確保することができる。
【0061】
(クラッチ9、ブレーキ29)
また、モータ52、62、72の駆動を伝達する駆動伝達系に、クラッチ9のような機能性流体クラッチを設けている。また、モータ52、62、72、クラッチ9に変えて、ブレーキ29を設けてもよい。ここで、モータ52、62、72は、後述するグリップ11を構成する外フレーム14、内フレーム15、回転軸17を回転させて、患者の手首の3自由度の回転(図10参照)を制御する駆動源である。
【0062】
クラッチ9として、電気粘性(ER)流体クラッチ、磁気粘性(MR)流体クラッチ等の機能性流体クラッチを用いることで、グリップ11のバックドライブ性を向上させることができる。また、ブレーキ29として、機能性流体ブレーキを用いることで、人間側が発生する力を調整してグリップ11の動きを調整し、力覚を呈示することができる。これにより、手首の関節が回りすぎて、患者の手首に過度の負担がかかることを防止できる。従って、グリップ11の操作においても、コンパクトで応答が速く、実感覚に近い3次元の力学的感覚を患者に伝えることができる。
【0063】
また、ブレーキ29として機能性流体ブレーキを用いることで、患者の状況に応じて動作範囲(手首の回転範囲)を変化させることができる。さらに、ブレーキ29は、応答性が良いため、単に各自由度毎の回転範囲を決めるだけでなく、複数の自由度を関連させて動作範囲を設定することもできる。
【0064】
さらに、機能性流体ブレーキは、力の応答性が良いため、適切なダンピング(速度に比例した抵抗力)を与えることができ、装置の安全性や操作性を高めることができる。また、ブレーキ29は、モータ等のように積極的に患者に力を加えることがないため、ブレーキ29を用いることで、装置の誤作動による危険性も回避できる。
【0065】
尚、本発明は、患者の手首の3自由度(外フレーム14、内フレーム15、回転軸17)のすべてにモータ、クラッチ9や、ブレーキ29を設けた構成に限定されるものではない。例えば、患者の手首の1自由度又は2自由度(外フレーム14、内フレーム15、回転軸17のいずれか1つ又は2つ)にのみ、モータ、クラッチ9や、ブレーキ29を設け、他の自由度は自由回転としてもよい。
【0066】
また、モータ及びクラッチ9とブレーキ29を組み合わせて使用した構成としてもよい。例えば、患者の手首の1自由度又は2自由度には、モータ及びクラッチ9を用いて、他の自由度には、ブレーキ29を用いたり、自由回転とした構成であってもよい。
【0067】
(グリップ11)
図9はグリップの構成図である。図9に示すように、グリップ11は、患者が操作する部分であり、外フレーム14、内フレーム15、1対の軸受16、回転軸17、把持部18から構成されている。
【0068】
グリップ30には、患者の手首の3自由度の作動に対して駆動を伝達して患者に力学的感覚を伝える、少なくとも2個の駆動手段(モータ52、62、72)と、モータ52、62、72の駆動を調整する少なくとも1個の機能性流体クラッチまたはブレーキ(不図示)と、が設けられている。駆動手段(モータ52、62、72)は、グリップ11の3つの自由回転軸あるいは回転機構(外フレーム14、内フレーム15、回転軸17)を駆動する。
【0069】
図10に示すように、手首の3自由度とは、Yaw回転、Pitch回転、Roll回転をいう。Yaw回転は、図10(a)に示す手首を伸展、屈曲させる矢印Y方向の動きである。Pitch回転は、図10(b)に示す手首を外転、内転させる矢印P方向の動きである。Roll回転は、図10(c)に示す手首を回外、回内させる矢印R方向の動きである。
【0070】
外フレーム14は、コの字状(凹状)に形成され、アーム13の先端に、アーム13の軸回り(矢印R方向)にRoll回転可能に着脱可能に取り付けられている。内フレーム15は、四角形に形成され、中心点を挟んで対向する2点で、外フレーム14の両端14aに回転可能に軸支されている。すなわち、内フレーム15は、この対向する2点を結ぶ直線を中心として矢印P方向にPitch回転可能となっている。
【0071】
軸受16は、内フレーム15内に対向して固定されており、回転軸17の軸方向が内フレーム15の回転軸に直交する。回転軸17は、軸受16に両端を矢印Y方向にYaw回転可能に軸支されている。把持部18は、回転軸17の中央かつアーム13の延長線上に固定されており、患者が把持して360°回転自在に操作可能に形成されている。
【0072】
尚、3つの自由回転軸あるいは回転機構である外フレーム14、内フレーム15、回転軸17の3つの回転軸方向は、把持部18の位置で交わる。これにより、実感覚に近い力学的感覚を操作者に呈示することができる。しかし、本発明はかかる位置関係に限定されるものではなく、3つの回転軸方向が交わらないような配置であってもよい。
【0073】
また、外フレーム14、内フレーム15の形状は、上記形状に限定されるものではなく、外フレーム14は、U字状(半円形)であってもよく、内フレーム15は、円形であってもよい。
【0074】
(グリップの回転駆動制御機構)
次に、グリップ11の回転駆動を制御する回転駆動制御機構について説明する。本実施形態の回転駆動制御機構は、捻り方式を採用している。
【0075】
図11はグリップ11の回転駆動制御機構の構成図である。図11に示すように、本実施形態のグリップ11の内部には、外フレーム14を矢印R方向に回転させるワイヤー51、内フレーム15を矢印P方向に回転させるワイヤー61、回転軸17を矢印Y方向に回転させるワイヤー71が設けられている。
【0076】
ワイヤー51は、一端をプーリ41aに取り付けられており、駆動手段であるモータ52から駆動力を伝達される。ワイヤー51の他端は、外フレーム14の端部に設けられた回転用プーリ53に取り付けられている。ワイヤー51は、複数のアイドラ54によって位置決めされ、アーム13の内部を配線されている。ワイヤー51は、2本設けられており、モータ52の駆動により、回転軸41を回転し、2本のワイヤー51のどちらか一方を引く。これにより、回転用プーリ53を介して、外フレーム14が矢印R方向に正逆転する(Roll回転)。
【0077】
ワイヤー61は、一端をプーリ42aに取り付けられており、駆動手段であるモータ62から駆動力を伝達される。ワイヤー61の他端は、内フレーム15の端部に設けられた回転用プーリ63に取り付けられている。ワイヤー61は、複数のアイドラ64によって位置決めされ、アーム13、外フレーム14の内部を配線されている。ワイヤー61は、2本設けられており、モータ62の駆動によりどちらか一方を引く。これにより、ワイヤー61、回転用プーリ63を介して、内フレーム15が矢印P方向に正逆転する(Pitch回転)。
【0078】
ワイヤー71は、一端をプーリ43aに取り付けられており、駆動手段であるモータ72から駆動力を伝達される。ワイヤー71の他端は、回転軸17の端部に設けられた回転用プーリ73に取り付けられている。ワイヤー71は、複数のアイドラ74によって位置決めされ、アーム13、外フレーム14、内フレーム15の内部を配線されている。ワイヤー71は、2本設けられており、モータ62の駆動によりどちらか一方を引く。これにより、回転用プーリ73を介して、回転軸17が矢印Y方向に正逆転する(Yaw回転)。
【0079】
このように、回転駆動制御機構を、回転軸とワイヤーとから構成したことにより、正確な駆動伝達(バックドライブ性の向上)と、軽量化を図ることができ、装置の安全性を高めることができる。
【0080】
また、3つの自由回転軸あるいは回転機構である外フレーム14、内フレーム15、回転軸17の回転部(アーム13と外フレーム14の接続部、外フレーム14と内フレーム15の接続部、内フレーム15と回転軸17の接続部)において、複数のワイヤー51、61、71の間隔を狭くしている。特に、図12(a)に示すように、アーム13と外フレーム14との接合部では、複数のワイヤー51、61、71の間隔を狭くしている。
【0081】
これにより、図12(b)に示すように、外フレーム14、内フレーム15、回転軸17のいずれかを回転させた際に、アーム13、外フレーム14、内フレーム15の内部を配線されたワイヤーの捩れによる長さの変化を小さくしている。そして、ワイヤーの長さの変化を小さくすることで、ワイヤーの耐久性を向上させることができる。また、ワイヤーを太くすることができ、装置の剛性を高めることができる。また、バックドライブ性を高めることができる。
【0082】
(センサ3〜緊急停止手段7)
センサ3には、ロータリーエンコーダが用いられており、各回動軸等の回動を検出して、患者の上肢(グリップ10)の3次元の位置、運動を検知する。すなわち、センサ3により、各回動軸の角度、回転加速度を検出することで、グリップ11(患者の上肢)の3次元の位置、移動速度を検知する。
【0083】
モニタ4は、訓練プログラムの画像及び患者の位置、運動に基づいた画像を表示する。
【0084】
フィードバック手段5は、訓練プログラムを行った訓練結果を次の訓練プログラムにフィードバックする。すなわち、フィードバック手段5は、訓練結果から患者の運動機能回復の程度を評価し、運動機能回復の程度に合わせて次の訓練プログラムを選択する。また、フィードバック手段5は、訓練結果から患者の運動機能回復の程度を評価、提示する。評価、提示の方法としては、点数をモニタ4に表示したり、拍手等の効果音を出力する方法がある。
【0085】
コンピュータ6は、フィードバック手段5、緊急停止手段7を備え、SWボックス1、3次元力学的感覚提示手段2、センサ3、モニタ4に接続しており、上肢リハビリ装置を制御している。すなわち、コンピュータ6は、SWボックス1で選択する訓練プログラム及び、選択した訓練プログラムの画像を表示する信号をモニタ4へ送ること、患者に3次元の力学的感覚を伝えるために電気粘性流体106に印加する電圧を変えること、センサ3で検知した患者の動きを表示する信号をモニタ4へ送ること等を行っている。
【0086】
また、コンピュータ6は、選択した訓練プログラムの設定によっては、患者の上肢を支える仮想下面の力学的感覚を伝えるように3次元力学的感覚提示手段2、モニタ4を制御することもできる。仮想下面を斜めに傾けたり、抵抗の有る下面として、患者の訓練に負荷をかけることもできる。
【0087】
緊急停止手段7は、3次元力学的感覚提示手段2に所定以上の力が加わった際に、その所定以上の異常な力、速度等の情報をセンサ3から受け、かかる情報に基づいて、モータ8を停止したり、クラッチ9により力の伝達を切ったりすることで、上肢リハビリ装置を緊急停止する。
【0088】
(上肢リハビリ装置による訓練方法)
次に、上肢リハビリ装置による訓練方法について説明する。図13は上肢リハビリ装置による訓練方法を説明するフローチャート、図14は訓練プログラムの設定の説明図、図15は「壁画めくり」の訓練プログラムの説明図である。
【0089】
図13に示すように、まず、患者が運動機能回復訓練を行うことができる体勢を整えた後、上肢リハビリ装置の電源をONにする(S1)。次に、SWボックス1を用いて、モニタ4に患者名が表示されたリストから訓練を行う患者名を選択する(S2)。尚、患者名を選択する設定に変えて、患者名を直接入力する設定、バーコード、音声等で患者を認識する設定としてもよい。
【0090】
次に、SWボックス1を用いて、実行する訓練プログラムを選択する(S3)。図14に示すように、この訓練プログラムには、「壁画めくり」、「迷路」等のプログラムがあり、粘性抵抗の強弱、壁間隔等のパラメータを変更することで、訓練プログラムの設定(運動の強度、難易度)を変更可能となっている。このため、予め、患者毎に訓練プログラムを患者に合わせた設定として記憶させておくことができる。
【0091】
選択した訓練プログラムが開始し、患者はプログラムに従って訓練を行う(S4)。例えば、「壁画めくり」の訓練プログラムでは、図15(a)に示すように、壁画が描かれた正面の壁24と、この正面の壁を囲む上左右の3枚の壁25〜27と、床面28がモニタ4に表示される。患者は、グリップ11を正面の壁24に当たるように押し込んだ状態で、正面の壁24に沿って動かす。グリップ11の動きを検知したセンサ3からグリップ11の位置、運動の情報の信号がコンピュータ6に送られ、グリップ11の軌道に沿って、薄いベールで隠してある壁画が現れてくる。1枚の壁画の所定の割合(例えば80%)、所定の場所(絵が描かれた部分)等をめくるといった目標をクリアすることで、次にめくる壁画が現れ、患者は次々と壁画をめくっていく。訓練条件としては、5分間のタイムリミットで5cm毎に奥行方向に配置された6面の壁画をめくる等の様々な訓練条件を設定することができる。
【0092】
訓練中は、異常停止の有無を判断している(S5)。異常停止した場合には、停止理由がトルクオーバーか否かを判断する(S6)。トルクオーバーである場合には、モニタ4にトルクオーバーの表示をして(S7)、全プログラムを完了するか否か選択する(S18)。トルクオーバーでない場合には、停止理由が非常停止か否かを判断する(S8)。非常停止である場合には、モニタ4に非常停止の表示をし(S9)、ブザーを鳴らして療法士に異常を知らせ(S10)、訓練を終了する(S19)。非常停止でない場合には、システム異常と判断して、モニタ4にシステム異常の表示をし(S11)、ブザーを鳴らして療法士に異常を知らせ(S12)、訓練を終了する(S19)。
【0093】
異常停止がない場合には、訓練を中止するか否かを選択する(S13)。訓練を中止した場合には、モニタ4に訓練中止の表示をして(S14)、全プログラムを完了するか否か選択する(S18)。
【0094】
訓練を中止しない場合には、タイムオーバーか否かを判断している(S15)。所定時間、グリップ11の動きが検知されない場合には、タイムオーバーと判断して、モニタ4にタイムオーバーの表示をして(S16)、全プログラムを完了するか否か選択する(S18)。
【0095】
タイムオーバーでないと判断された場合には、訓練プログラムが正常終了したか否かを判断する(S17)。正常終了していない場合には、S4に戻り上記のシーケンスを繰り返す(S4〜S17)。
【0096】
訓練プログラムが正常終了した場合には、全プログラムを完了するか否か選択する(S18)。全プログラムを完了した場合には、訓練終了の表示を行う。この際、正常終了した場合には、訓練結果を表示し、フィードバック手段5により患者の運動機能回復の程度を評価、提示する(S19)。
【0097】
例えば、「壁画めくり」の訓練プログラムでは、図15(b)に示すように、消去した壁画の枚数、訓練終了にかかった時間等を表示する。また、以前に行った訓練の結果、試行回数等も合わせて表示することで、運動機能の回復具合を評価、提示することができる。
【0098】
全プログラムを完了しない場合には、次のプログラムに進む選択を行い(S20)、次の訓練を開始する(S21、S4〜S21)。この際、前のプログラムを正常終了した場合には、次の訓練の開始前に、フィードバック手段5により前の訓練の結果を表示し、フィードバック手段5により患者の運動機能回復の程度を評価、提示する。
【0099】
療法士は、訓練の結果にもとづいて、訓練プログラムの設定(運動の強度、難易度)を変更して、次回行う訓練プログラムの設定を記憶させておくことができる。
【0100】
以上説明したように、本発明によれば、手首まで含む上肢の運動機能を回復させる訓練を行うことができ、より一層高い安全性を確保すること、より一層実感覚に近い力学的感覚を伝えることができる。
【0101】
[第二実施形態]
次に本発明に係る上肢リハビリ装置の第二実施形態について図を用いて説明する。図16は他のグリップの構成図である。上記第一実施形態と説明の重複する部分については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0102】
図16に示すように、本実施形態の上肢リハビリ装置は、上記第一実施形態のグリップ11に変えてグリップ30を用いたものである。グリップ30は、患者が操作する部分であり、第1フレーム31、第2フレーム32、回転軸33、把持部34から構成されている。
【0103】
第1フレーム31は、L字状に形成され、その一端で、上下方向(Z軸方向)を中心に回動可能に、アーム13の先端に着脱可能に支持されている。第2フレーム32は、L字状に形成され、その一端で、アーム13の長手方向と平行な回動軸を中心として回動可能に、第1フレーム31の他端に支持されている。回転軸33は、その一端で、第2フレーム32の他端にZ軸方向及びアーム13の長手方向に直交する方向を中心に回動可能に支持されている。把持部34は、回転軸33の他端に固定されており、患者が把持して360°回転自在に操作可能に形成されている。
【0104】
これにより、グリップの構造を簡略化して、軽量化、低コスト化を図ることができる。また、軽量化により上肢リハビリ装置の安全性を高めることもできる。さらに、グリップ30を、四角形、コの字状(凹状)のフレームを設けることなく、L字状のフレームにて構成したことにより、大きなリングが患者の視界を妨げることがなく、グリップ30を操作する際に、モニタ4を見やすくすることができる。
【0105】
また、第1フレーム31、第2フレーム32の形状は、上記形状に限定されるものではなく、1/4円弧状であってもよい。
【0106】
(グリップの回転駆動制御機構)
ここで、グリップ30の回転駆動を制御する回転駆動制御機構について説明する。図17、図18に示すように、本実施形態の回転駆動制御機構は、上記第一実施形態の捻り方式に変えて、重軸構造を採用している。
【0107】
図17に示すように、グリップ30の内部には、第1フレーム31を矢印Y方向に回転させるワイヤー81、第2フレーム32を矢印P方向に回転させるワイヤー91、93、回転軸33を矢印Y方向に回転させるワイヤー101、103、105が設けられている。
【0108】
ワイヤー81は、一端をプーリ41aに取り付けられており、駆動手段であるモータ52から駆動力を伝達される。ワイヤー81の他端は、第1フレーム31の端部に設けられた回転用プーリ53に取り付けられている。ワイヤー81は、アーム13の内部を配線されている。ワイヤー81は、2本設けられており、モータ52の駆動により、回転軸41を回転し、2本のワイヤー81のどちらか一方を引く。これにより、回転用プーリ53を介して、第1フレーム31が矢印Y方向に正逆転する(Yaw回転)。
【0109】
ワイヤー91は、一端をプーリ42aに取り付けられており、駆動手段であるモータ62から駆動力を伝達される。ワイヤー91の他端は、回転軸92の一端に設けられた中間プーリ92aに取り付けられている。回転軸92の他端には、中間プーリ92bが設けられている。回転軸92は、第1フレーム31の内部で回転可能となっている。回転軸92は、アーム13の内部と第1フレーム31の内部にまたがって設けられている。中間プーリ92aは、アーム13の内部にあり、中間プーリ92bは第1フレーム31の内部にある。
【0110】
ワイヤー93は、複数のアイドラ94によって位置決めされ、第1フレーム31の内部を配線されている。ワイヤー93は、一端を中間プーリ92bに取り付けられており、他端を回転用プーリ63に取り付けられている。ワイヤー91、93は、それぞれ2本づつ設けられており、駆動手段であるモータ62の駆動により、回転軸42を回転し、2本のワイヤー91のどちらか一方を引く。これにより、中間プーリ92aを介して回転軸92が正逆転し、中間プーリ92b、ワイヤー93、回転用プーリ63を介して第2フレーム32が矢印R方向に正逆転する(Roll回転)。
【0111】
ワイヤー101は、一端をプーリ43aに取り付けられており、駆動手段であるモータ72から駆動力を伝達される。ワイヤー101の他端は、回転軸102の一端に設けられた中間プーリ102aに取り付けられている。回転軸102の他端には、中間プーリ102bが設けられている。回転軸102は、中空の回転軸92の内部に回転可能に設けられている。回転軸102は、アーム13の内部と第1フレーム31の内部にまたがって設けられている。中間プーリ102aは、アーム13の内部にあり、中間プーリ102bは第1フレーム31の内部にある。
【0112】
ワイヤー103は、第1フレーム31の内部を配線されている。ワイヤー103は、一端を中間プーリ102bに取り付けられており、他端を回転軸104の一端に設けられた中間プーリ104aに取り付けられている。回転軸104の他端には、中間プーリ104bが設けられている。回転軸104は、第2フレーム32の内部に回転可能に設けられている。回転軸104は、第1フレーム31の内部と第2フレーム32の内部にまたがって設けられている。中間プーリ104aは、第1フレーム31の内部にあり、中間プーリ104bは内フレーム32の内部にある。
【0113】
図18に示すように、ワイヤー105は、第2フレーム32の内部を配線されている。ワイヤー105は、一端を中間プーリ104bに取り付けられており、他端を回転用プーリ33aに取り付けられている。ワイヤー101、103、105は、それぞれ2本づつ設けられており、駆動手段であるモータ72の駆動により、回転軸41を回転し、2本のワイヤー71のどちらか一方を引く。これにより、中間プーリ102aを介して回転軸102が正逆転し、中間プーリ102b、ワイヤー103、中間プーリ104aを介して回転軸104が正逆転し、ワイヤー105、回転用プーリ33aを介して回転軸33が矢印P方向に正逆転する(Pitch回転)。
【0114】
尚、ワイヤー105に変えて、プッシュプル式又はプルプル式のだ管ワイヤーや、トルクチューブを用いることもできる。
【0115】
(重量バランス機構)
また、上記第一実施形態のグリップ11は、両持ちの構造であり、重量バランスが保たれていた。しかし、グリップ30は、片持ちの構造であり、重量バランスが崩れている。具体的には、第2フレーム32の先端には、回転軸33、把持部34の重量がかかっている。このため、第2フレーム32が矢印R方向に回転してしまう。そこで、図19に示すように、グリップ30の重量バランスをとるバランサー35を設けている。
【0116】
バランサー35は、ベルト36、プーリ37、カウンターウェイト38から構成されている。ベルト36は、プーリ37、39に掛け回されている。プーリ37には、カウンターウェイト38が固定されている。プーリ39は、回転軸42の回動軸40側に取り付けられている。
【0117】
第2フレーム32の角度とカウンターウェイト38の角度は、図20(a)に示すような点対象となる角度、又は図20(b)に示すような線対称となる角度となっている。このような角度とすることで、カウンターウェイト38によって、第2フレーム32が自重や、回転軸33、34の重量によって回転する方向と逆方向にトルクをかけることができる。
【0118】
これにより、モータ62で第2フレーム32の姿勢を保持することなく、第2フレーム32の重量バランスを保ち、第2フレーム32が自重等で回転してしまうことを防止できる。
【0119】
ここで、カウンターウェイト38の重心とプーリ37の回転中心との距離rを小さくし、カウンターウェイト38の重量mを大きくする。これにより、バランスをとるために必要なトルクmrを確保しつつ、慣性モーメントmrを小さくすることができる。
【0120】
尚、グリップは上記構成に限定されるものではなく、アーム先端に取り付けられ、1点で交わる3つの自由回転軸あるいは回転機構を有するものであればよい。
【0121】
また、回転駆動制御機構は、捻り方式、重軸構造のいずれか一方のみで構成する必要はなく、捻り方式、重軸構造の両方を組み合わせて構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0122】
本発明の活用例として、患者の運動機能を回復させる訓練を行うための上肢リハビリ装置に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】第一実施形態に係る上肢リハビリ装置の概略構成図である。
【図2】3次元力学的感覚提示手段の構成図である。
【図3】3次元力学的感覚提示手段及び運動検知手段のブロック図である。
【図4】機能性流体ブレーキの構成図である。
【図5】ロボットアームの斜視図である。
【図6】ロボットアームを上側から見た模式図である。
【図7】ロボットアームを背面側から見た模式図である。
【図8】ジョイントと回転軸の構成図である。
【図9】グリップの構成図である。
【図10】手首の3自由度の説明図である。
【図11】グリップの回転駆動制御機構の構成図である。
【図12】ワイヤーの捩れ防止機構の説明図である。
【図13】上肢リハビリ装置による訓練方法を説明するフローチャートである。
【図14】訓練プログラムの設定の説明図である。
【図15】訓練プログラムの説明図である。
【図16】第二実施形態にかかるグリップの構成図である。
【図17】第二実施形態にかかるグリップの回転駆動制御機構の構成図である。
【図18】第二実施形態にかかるグリップの回転駆動制御機構の構成図である。
【図19】第二実施形態にかかる重量バランス機構の構成図である。
【図20】第二実施形態にかかる第2フレームの角度とカウンターウェイトの角度を示す図である。
【符号の説明】
【0124】
1…SWボックス、2…3次元力学的感覚提示手段、3…センサ、4…モニタ、5…フィードバック手段、6…コンピュータ、7…緊急停止手段、8…モータ、9…クラッチ、10…ロボットアーム、11…グリップ、12…平行リンク、13…アーム、14…外フレーム、14a…両端、15…内フレーム、16…軸受、17、19、26…回動軸、18、34…把持部、20〜23…フレーム、20a、21a、38…カウンターウェイト、20b、21b…支軸、23a、23b…連結部、24、25、27…壁、28…床面、29…ブレーキ、30…グリップ、31…第1フレーム、32…第2フレーム、33、40〜43、92、102、104…回転軸、33a、53、63、73…回転用プーリ、35…バランサー、36…ベルト、37、39、41a〜43a…プーリ、40a…支軸、44…ユニバーサルジョイント、51、61、71、81、91、93、101、103、105…ワイヤー、52…モータ、54、64、74、94…アイドラ、62、72…モータ、92a、92b、102a、102b、103a、103b、104a、104b…中間プーリ、106…電気粘性流体、123…円筒電極、126…深溝、127…フランジ
【出願人】 【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
【出願日】 平成17年3月14日(2005.3.14)
【代理人】 【識別番号】100095315
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 裕幸

【識別番号】100134717
【弁理士】
【氏名又は名称】大石 裕司

【公開番号】 特開2006−247280(P2006−247280A)
【公開日】 平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願番号】 特願2005−71505(P2005−71505)