トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 超音波美容装置
【発明者】 【氏名】布村 真人
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地 松下電工株式会社内

【要約】 【課題】超音波美容装置において、低コストかつ容易に、振動子からホーンに高効率に振動エネルギーを伝達可能となると共に振動ブロックの発熱を抑える。

【解決手段】超音波振動を発生する振動子1と、この振動子1に接着され、生体肌表面叉は生体に超音波を伝達させるホーン3で構成される超音波振動ブロック4とを備え、ホーン3と振動子1の接着層厚みを、超音波振動ブロック4の超音波振動振幅の大きな部位に対応して薄厚みとする断面構造とした。これにより、最も超音波振動エネルギーが伝達する部位は振動振幅が大きい部位であるので、振動子1から発生する超音波振動エネルギーを高効率にホーン3へ伝達することができ、振動子1とホーン3間でのエネルギーロスを低減することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波振動を発生する振動子と、この振動子に接着され、任意形状の超音波放射面から生体肌表面叉は生体内の目的箇所に超音波を伝達させるホーンで構成される超音波振動ブロックと、この超音波振動ブロックを駆動する駆動回路とを備えた超音波美容装置において、
前記ホーンと振動子の接着層厚みを、前記超音波振動ブロックの超音波振動振幅の大きな部位に対応して薄厚みとする断面構造としたことを特徴とする超音波美容装置。
【請求項2】
前記振動子が中央部分の振動振幅が最も大きい分布となる板状であるとき、前記ホーンの振動子接着面側を緩やかな略凸状の断面構造としたことを特徴とする請求項1記載の超音波美容装置。
【請求項3】
前記振動子が、中央部分の振動振幅が小さく、周辺部の振動振幅が大きい分布となるものであるとき、前記ホーンの振動子接着面側を緩やかな略M字状の断面構造としたことを特徴とする請求項1記載の超音波美容装置。
【請求項4】
前記振動子が、中央部分の振動振幅が小さく、周辺部の振動振幅が大きい分布となるものであるとき、前記ホーンの中央部に窪み又は穴を設けた断面構造としたことを特徴とする請求項1記載の超音波美容装置。
【請求項5】
前記振動子は、リング状であることを特徴とする請求項3叉は請求項4に記載の超音波美容装置。
【請求項6】
前記ホーンの振動子接着面は、粗面であることを特徴とする請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の超音波美容装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波領域での振動エネルギーを利用して生体肌表面、又は生体内の目的箇所を美容する超音波美容装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から超音波美容装置は、例えば、特許文献1に示されるようなものが知られている。この種の超音波美容装置は、図22に示すように、電気振動を機械振動に変換する超音波振動子101(以下、振動子という)と、振動子101により変換された機械振動の振動エネルギーを、超音波音響エネルギーとして生体肌表面又は生体102内に伝達させる放射面を備えたキャップ状ホーン103からなる超音波振動ブロック104(以下、振動ブロックという)を備え、ジェルやゲルなどの超音波伝達用媒体105を介して生体102の被美容処理部に超音波を伝達させている。
【0003】
この超音波美容装置のA部のエネルギー伝達フローは、図23に示すように、電気振動(電気エネルギー)から機械振動(運動エネルギー)、機械振動(運動エネルギー)から超音波音響エネルギーに変換され、最終的に目的の超音波処理が行われるため、各エネルギー変換の過程においてエネルギーのロスが生じ、それぞれのエネルギー伝達過程における高効率化が必要とされる。そこで、各エネルギー変換において、電気−機械エネルギー変換過程の給電部には電極にハンダや接点バネで高効率に給電する方法、機械−音響エネルギー変換過程において、ジェルやゲルにより高効率にエネルギーを伝達させる方法が用いられ、さらに振動子とホーンそれぞれにおいて高効率エネルギー伝達のための設計が行われていた。
【0004】
ところが、振動ブロック構成内部においては、ホーン、振動子のそれぞれにおいて緻密な設計が要求される他に、振動子とホーンという全く別の部材を接着(機械的な接続を含む)するために、図24に示すように、振動子101とホーン103の間には空気層干渉防止も兼ねた20μm程度の接着剤の層106が存在し、振動ブロック104全体のバランスを崩す要因となり、超音波振動エネルギー伝達の妨げとなる。
【0005】
一般的な超音波美容器における、エネルギー変換効率は70%程度が主流で、振動ブロックの振動損失により20%程度のロスが存在し、このエネルギーの伝達損失を防ぐことで、理論的には90%以上の高効率実現も可能となる。
【0006】
このエネルギー伝達損失を防ぐ方法としては、振動子とホーンをボルト締めにより強固に固定し、振動子とホーン間に介在する層厚を薄くする方法が応用されており、90%程度の高効率を実現している装置があるが、強固なボルトが必要な構造上、装置が大型となるなど、メガソニック領域の小型主流の超音波美容器には向かないうえ、振動子の割れ防止や振動特性の維持の必要上、締め付けトルクなどの管理が面倒である。また、上記のような振動ブロック内でのエネルギーロスは、直接熱となり、振動ブロックを発熱させるため、装置故障の原因となっていた。
【特許文献1】特開2002−345915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、振動ブロックの高効率化を図り、高安定で小型の超音波美容装置の実現が望まれていた。本発明は、振動子とホーンの接着部位に着目し、接着面断面構造を選択的に制御することにより、低コストかつ容易に、高効率に振動子からホーンに振動エネルギーを伝達可能となると共に、振動ブロックの発熱を抑えることが可能な超音波美容装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述目的を達成するため、本発明は、超音波振動を発生する振動子と、この振動子に接着され、任意形状の超音波放射面から生体肌表面叉は生体内の目的箇所に超音波を伝達させるホーンで構成される超音波振動ブロックと、この超音波振動ブロックを駆動する駆動回路とを備えた超音波美容装置において、前記ホーンと振動子の接着層厚みを、前記超音波振動ブロックの超音波振動振幅の大きな部位に対応して薄厚みとする断面構造としたものである。
また、前記振動子が中央部分の振動振幅が最も大きい分布となる板状であるとき、前記ホーンの振動子接着面側を緩やかな略凸状の断面構造とすればよい。
また、前記振動子が、中央部分の振動振幅が小さく、周辺部の振動振幅が大きい分布となるものであるとき、前記ホーンの振動子接着面側を緩やかな略M字状の断面構造とすればよい。
また、前記振動子が、中央部分の振動振幅が小さく、周辺部の振動振幅が大きい分布となるものであるとき、前記ホーンの中央部に窪み又は穴を設けた断面構造とすればよい。
また、前記振動子は、リング状とすることができる。
また、前記ホーンの振動子接着面は、粗面とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超音波振動エネルギーの振動振幅が大きい部位に対応して振動ブロック内の振動子とホーン間の接着層厚みを可及的に薄くした断面構造としており、最も超音波振動エネルギーが伝達する部位は振動振幅が大きい部位であるので、振動子から発生する超音波振動エネルギーを高効率にホーンへ伝達することができ、振動子とホーン間でのエネルギーロスを低減することができる。これにより、振動ブロックでの不要な発熱を防ぐことができると共に、安定した超音波美容の駆動を行える。そして、このような断面構造を、面倒な管理や高いコストをかけずに低コストに実現できる。
【0010】
そして、ホーンと振動子の接着面には、空気層の排除目的も兼ねて接着剤の層を存在させるが、その最低限必要な層厚みを選択的に最も超音波振動エネルギーが伝達する振動振幅の大きい部位へ位置させることで、超音波振動エネルギーを高効率にホーンへ伝達することができる。
【0011】
また、振動子が板状であるとき、ホーンの振動子接着面側を緩やかな略凸状の断面構造として選択的に密着させることで、振動子の中央部分の振動振幅が最も大きい分布となることから、高効率に超音波振動エネルギーをホーンへ伝達することができる。ホーンの加工には、予め中央部を凸面にさせる、断面台形状軌跡のプログラムを指定することが有効である。
【0012】
また、リング状振動子のように、中央部分は振動振幅が小さく、その周辺部の振動振幅が大きく、略M字状の振動振幅分布となるものを用いる場合、ホーン断面も振動子接着側を凸とした略M字状に構成することで、最も振動振幅の大きい部分の超音波振動エネルギーを高効率にホーンへ伝達することができる。
【0013】
また、これとは別に、ホーン中央部に窪み叉は穴を設けることで、凸面形状で突出しすぎたホーン中央部分をあえて削り、ホーンと振動子の密着性を上昇させることができる。
【0014】
また、ホーンの振動子接着面を粗面とすることで、ホーンと振動子の間には、接着剤の層を有効に介在させて、空気層の存在を無くし易いので、超音波振動エネルギーの伝達を高効率に行える。また、振動子の電極をホーンと導通させ、ホーンを電極とする場合は、形成した粗面の凹凸が振動子電極と干渉して接触するため、電気的に導通し易くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明が適用される超音波美容装置について図面を参照して説明する。図1及び図2は、超音波美容装置の構成と、同装置の振動ブロック構成を示す。超音波美容装置は、超音波振動の駆動源となる超音波振動子1(以下、振動子という)と、この振動子1に接着され、超音波振動を生体肌表面又は生体2内の目的箇所に伝達させるホーン3で構成される超音波振動ブロック4(以下、振動ブロックという)と、この振動ブロック4を駆動する駆動回路7と、これらを保持するハウジング8とを備えている。aは駆動回路7から振動子1を駆動する電気信号、bは生体2の被美容処理部に対する超音波振動を示す。
【0016】
振動ブロック4における振動子1が接着されたホーン2の厚みdを、超音波振動における1/2波長の整数倍(図2左側に波長の腹と節を示す)に設定し、振動子1の両端に交流電圧をかけることで、電気エネルギーを振動エネルギー(運動エネルギー)に変換して振動ブロック4は超音波振動を行う。さらに、変換された振動エネルギーは、ホーン放射面から音響エネルギーに変換され、ジェルやゲルなどの超音波伝達媒体5を介して接触された生体2などの被美容処理部へ超音波振動を伝達させる。振動子1は、両面に電極11を有し、一方の電極に駆動回路7からの一方のリード線12が接続され、他方の電極は導電性をもってホーン3に接続され、ホーン3に駆動回路7から他方のリード線13が接続される。
【0017】
ところで、超音波美容装置においては、高効率かつ安全に生体肌表面又は生体内の目的箇所に超音波を伝達できることが要求される。このため、振動ブロック4は、振動子1やホーン3に緻密な設計を要する他、主にセラミック製の振動子1と、主に金属製のホーン3という全く別の物体で構成され、その間には接着剤などが満たされ層を形成して空気層の干渉を防ぐ役割をするため、振動子1から発生した超音波振動エネルギーを振動子1から接着層へ、さらに接着層からホーン3へというように伝達させなければならず、この層厚みが、振動ブロック4におけるエネルギーロス発生の主な原因となる。また、ホーン3においては、その寸法や平面度などに緻密な設計が必要とされ、主にアルミなどの金属塊やインパクト成型塊の切削から製作されることになるため、切削時の保持方法や、切削摩擦熱による変形から、切削面が撓み、さらに切削工具を引き上げる際の凸跡などにより、ホーン3の振動子接着面の断面は、図3に拡大して示すように、凹凸が形成されてしまい、理想的な平面形状の実現は困難である。
【0018】
上記のような凹凸が形成された振動子接着面を図4(これは本実施形態ではない)に示す。ホーン3と振動子1間の接着層6の厚みは、最低限必要な厚み(t1)よりも厚く形成された、不要な接着剤厚み(t2)が存在することになり、不要に接着層6の厚みを増加させ、それは超音波振動エネルギー伝達を妨げる原因となる。図示矢印Bは振動エネルギーを示し、振動子1の中央部寄り振動エネルギーの方が外周部寄りのそれよりも大きいが、エネルギー伝達は接着層6の厚みにより影響を受ける。
【0019】
なお、本明細書及び図面では、超音波振動の振幅を表現の便宜上、本来の縦波を横波に変換して記述し、超音波振動の伝達方向を矢印の方向で示し、振動振幅の大きさ及び、振動エネルギーの大きさを矢印の大きさで示している。また、超音波振動ブロックの断面図記述に当たっては、数cmのホーン底面に存在する高さ数μmの凹凸を分かりやすく表現するために、異なる縦横拡大比を用いている。また、振動子1のマイナス側の電極に関しては、電極を折り返す方法、ホーン3から導通させる方法と大別して2種あるが、ここでは、ホーン3から導通させる方法で記述している。
【0020】
さらに、ホーン3の断面を±3μm程度以下の平面度で均一に構成し、全面を必要最小限の接着層6の厚みとするには、材料ロット毎の緻密な設計が必要になり、コストと時間がかかるうえ、振動子の面積が大きい場合には、接着時に均等で大きな面圧力が必要になり、管理が困難である。
【0021】
そこで、本実施形態においては、図5に示すように、振動ブロック4におけるエネルギーロス低減手段として、超音波振動エネルギーの主な伝達経路の接着層6を選択的に最も薄くできる構造をホーン3又は振動子1の接着面に設け、振動子1からの超音波振動エネルギーを高効率にホーン3へ伝達できるようにした。すなわち、本例では、ホーン3と振動子1の接着層6の厚みが、振動ブロック4の超音波振動振幅の大きな部位に対応して薄厚みとする断面構造としている。
【0022】
これにより、超音波振動エネルギーが通過する部分を選択的に最も薄くでき、振動子1とホーン3を密着させることができるため、エネルギー伝達ロスの原因となる不要な接着剤の厚みが少なくなり、矢印Cで示すように、接着層における振動エネルギーの減衰が少なくなり、超音波振動エネルギーのロスを低減させ、安全かつ高安定に超音波美容器を発振させることができる。さらには、従来のように高い圧力で接着層全面を均等な最薄接着層厚みに管理する必要がなく、最も重要な位置の超音波伝達経路の接着層厚みを、最薄厚みに構成することが可能となる。
【0023】
以下、本実施形態をより具体的に説明する。図6はホーンと振動子の構成を示す。上述の通り、ホーン3における振動子1接着面には、振動子1からの超音波振動エネルギーを高効率にホーンへ伝達させるための断面構造(D)を有し、ホーン3はキャップ形状の平板又は平板状で、好ましくはアルミ又はアルミ合金が使用され、用途によってはチタン合金も使用される。
【0024】
振動子1とホーン3は、超音波厚み方向振動における定在波振動体を構成しており、その定在波は、好ましくは振動子1内で1/2波長の奇数倍、ホーン3内で1/2波長の整数倍を構成している。振動子1とホーン3の境界面は、好ましくは振動ブロック4内の定在波の腹位置(図6)になるよう設計する。これにより、振動子1から発生する超音波振動エネルギーを高効率にホーン3へ伝達できるようになり、振動子1とホーン3間でのエネルギーロスを低減することができる。
【0025】
振動子1は、好ましくは円板状で、圧電材料としては、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)などのセラミックス材料が好ましく利用される。振動子1は、厚み方向振動を主として伸縮振動を行い、その振動の際の歪から径方向にも振動するため、径方向へも高効率に振動させる必要がある。そのため、振動子1は円板状が最も高効率であり、超音波振動エネルギーの高効率伝達のためには、ホーン3は、平板叉は平板状が最も好ましい。さらに、超音波美容器の用途は主に肌へ用いられるため、ホーン3はキャップ形状が好ましく、これにより振動ブロック4の保持が容易となる。
【0026】
また、振動子1からの超音波振動エネルギーを高効率にホーン3へ伝達させるための断面構造(D)は、振動子1とホーン3の接着面のうち、振動ブロック4叉は振動子1の超音波振動振幅が比較的大きい部位の投射面を、選択的に密着させる構造をすることが好ましい。
【0027】
振動ブロック4において、振動子1から発生した超音波振動エネルギーは、ホーン3に伝達され、さらにホーン放射面から被美容処理部へ伝達される。超音波振動エネルギーの伝達には、振動子1のセラミックや、ホーン3の金属、さらには美容処理用のジェルやゲルなどの伝達させる媒体が不可欠で、その過程内に空気層が介在すると、超音波振動エネルギーは反射され、ほとんど伝達されなくなる。そのため、最も空気層の形成されやすい振動子1とホーン3の間には空気層を排除するために、接着剤などの媒体を介在させることが必要である。この層は、薄いほど超音波の伝達に有利であるが、接着剤の性能上の問題などから、前述したように、20μm程度が最低でも常に存在する必要がある。
【0028】
超音波美容器の振動子1においては、美容施術面積の確保などのために、主にφ30mm程度の円板状振動子を用いる場合が多い。いま、円板状振動子1をキャップ状平板ホーン3に接着し、振動させると、図7(a)(b)に示すにように、振動振幅分布は、中央突出型になり、主に中央部分を超音波振動エネルギーが伝達する。
【0029】
そこで、先に説明した通り、性能上最低必要な接着層を、最も振動振幅の大きい部位の投射面に位置するように選択して密着させる構造、例えば円板状振動子では中央部分の投射面を選択的に密着させる凸面状にホーン3を構成する。この構成は、上述の図5に示した通りである。これにより、最低限必要な接着層厚みを、最も超音波振動エネルギーが伝達する部位へ位置させることができ、振動ブロック全体として高効率に超音波振動エネルギーをホーン3へ伝達させ、高効率な振動を行うことができる。
【0030】
このような超音波ホーン3の製作方法は、主に金属塊を切削する加工による。ホーン3は高効率に超音波振動をさせるため、厚みや表面状態に、緻密な設計を要する。キャップ状ホーン製作のために、図8(a)(b)(c)に示すように、保持具24(模式的に矢印で示す)により保持させた金属塊21を小型棒状の切削ドリル22などを用いて渦巻状に切削し、図9に示すようなキャップ状ホーン3を製作する。このような製作においては、切削摩擦熱などにより、切削面が撓み、凹面形状となる。そこで、図10に示すように、キャップ状ホーン3は、撓んで凹面形状となった底面3aの表側が研磨により平坦にされるが、キャップ状ホーン3の内部を平坦にすることは、厚み管理からも困難である。
【0031】
例えば、一般的切削方法により5μm程度凹面になったホーン3に振動子1を貼り付けた場合、最低限必要な接着剤の層20μmが振動子1の円周面に位置してしまうことになり、振動エネルギーの最も大きい中央部分の接着層は、合計25μm以上となり、1.25倍に厚くなる。
【0032】
そこで、図11に示すように、予め中央が突出するような切削プログラムを組み、ホーン3の内表面を凸面上になるように切削する。例えば、φ20mm程度の振動子を接着する、厚み1.2mm程度のホーン製作の場合は、中央φ20mm程度を、高さ10μm程度の台形の軌跡が描けるようなプログラムにする。これにより、摩擦熱などによる撓みと相殺され、ホーン3の内面中央部が凸面の切削形状を得ることが可能となる。図12に示すように、ホーン3の底面3aを研磨することで、所望の形状が得られる。
【0033】
キャップ状ホーン3の他の実施形態を、図13乃至図15に示す。ここに、振動子1からの超音波振動エネルギーを高効率にホーン3へ伝達させるための断面構造は、振動子接着面3b側を凸面とした略M字状としている。この場合、振動エネルギーの最も大きい部分(図15のE)が振動伝達に影響を受けるが、大部分の振動減衰を低減することができ、効率低下の影響は少なくなる。
【0034】
キャップ状ホーン3のさらに他の実施形態を、図16乃至図18に示す。ここに、振動振幅均一と、不要な振動モード抑制のために、振動子1はリング形状とすることが望ましく、これにより、さらに中央の尖凸部の影響を受けにくくできる。リング状振動子1を接着した振動ブロック4においては、中央部分は積極的に振動しないため、振動振幅が小さく、その周辺の振幅が大きくなる、断面が略M字状の振動振幅分布となる。そのため、振動振幅の大きい部位の接着層を薄くするために、振動子1との接着面におけるホーン3断面を、振動子接着側を凸とした略M字状に構成している。
【0035】
接着面断面を実測して拡大したものを図17に示している。中央φ5mm付近にできる尖凸は、ドリルを抜くときの加工跡である。中央部分5μm凹面のホーン3を振動子1に接着した場合と、5μmM字面のホーン3を振動子1に接着した場合では、M字面ホーンの方が、20%程度高効率にできた。リング形状の振動子1は、図18のFで示す中央部分においては積極的に振動しないため、大部分の振動減衰を低減することができるからである。これにより、最も振動振幅の大きい部分の超音波振動エネルギーを高効率にホーンへ伝達させることができる。好ましくは、前記凸面形状も含め、振動子接着面における、最高点と最低点の差を実効平面度とし、その実効平面度は5μm程度以下になるような加工が望ましい。
【0036】
また、図19に示すように、ホーン3の中央に窪み叉は穴3aを設けて、M字状断面を構成してもよく、ドリル加工跡や凸面形状で突出し過ぎた中央部分をあえて削ることで、ホーン3の中央の窪み叉は穴3aの周囲部分(G)の振動エネルギーの振動減衰を低減することができ、略M字と同様、振動子1とホーン3の密着性を上昇させ、高効率な超音波伝達が可能となる。
【0037】
ホーン3のさらに他の実施形態を図20に示す。同図では円で囲んだ部分を順次拡大して示している。ホーン3における振動子1との接着面は、粗面状に構成する。好ましくは、高さ3〜15μm、幅50〜200μm程度の粗面状であることが望ましい。振動子1とホーン3の間の層には、空気層があると超音波振動は伝達しないため、接着層6には主に接着剤が満たされる。この接着剤を、空気層を噛まずに満たすためには、ホーン3と振動子1の接着面を粗面状にすることが有効である。これにより、ホーン3と振動子1の間には、接着剤の層を有効に介在させ、空気層が存在しないものにできるため、超音波振動エネルギーの伝達を高効率にできる。
【0038】
また、振動子1の電極をホーン3と導通させ、ホーン3を電極とする場合は、形成した粗面の凹凸が振動子1の電極と干渉して接触するため、電気的に導通しやすくできる。このような、粗面の製作方法は主に切削方法により、切削ドリルの刃形状、回転数や回転速度、さらに送り速度を制御することで可能となる。振動子1とホーン3の接着には、1液性エポキシ樹脂系接着剤を用いる。振動子1とホーン3の間には、主に均等な厚みの接着層の介在が、空気層排除のためにも必要である。また、接着層内も超音波振動エネルギーを伝達させる必要があるため、硬度90(JIS D)程度以上の高硬度なエポキシ系接着剤が有効である。さらに、振動子1とホーン3間の接着剤密度を20μm程度以下の厚みで均等とするには、速乾性のない1液性が有効で、粘度10Pa・s程度の低粘度な接着剤が有効である。これにより、接着層内で発生するエネルギーロスを低減させ、高効率に超音波振動エネルギーを伝達することができる。
【0039】
ホーン3のさらに他の実施形態を図21(a)(b)に示す。振動子1からの超音波振動を高効率に伝達させる断面構造は、ホーン3とは別に振動子1に構成してもよい。同図(a)は振動子1の断面が凸型のものを、(b)は振動子1の断面が略M字型のものを示す。この実施形態においては、振動子1は型取りなどで同一な形状が作り易いことから、狙いの接着層が実現しやすい。この結果、超音波振動振幅の大きい部分(H,I)での振動減衰を低減できることになり、高効率に超音波振動をホーン3へ伝達させることができる。
【0040】
本実施形態に用いた厚み方向振動における振動子1は、伸縮振動を行い、径方向にも振動するため、振動子1を円板状にすることで無理なく振動を行うことができ、さらに超音波振動エネルギーの高効率伝達のためには、ホーン3も板状にすることで、超音波振動を高効率に伝達させることができる。また、超音波美容器は主に肌へ用いられるため、ホーン3がキャップ形状であることが扱い易いものとなる。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、発明の趣旨を変更しない範囲で種々の構成を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明が適用される超音波美容装置の断面図。
【図2】同装置の振動ブロックの断面図。
【図3】ホーンの振動子接着面の断面実測図。
【図4】凹凸が形成された振動子接着面を持つ振動ブロックの断面図。
【図5】本発明の実施形態に係る超音波美容装置の振動ブロックの断面図。
【図6】本実施形態を具体的に説明するための振動ブロックの断面図。
【図7】(a)は本実施形態における振動振幅分布図、(b)は振動振幅実測値を示す図。
【図8】(a)はキャップ状ホーン製作を説明するための切削加工直前の斜視図、(b)は切削方向を示す上面図、(c)は切削加工中の斜視図。
【図9】切削加工後のキャップ状ホーンの斜視図。
【図10】切削加工後のキャップ状ホーンを表面研磨することを示す図。
【図11】切削プログラムを示す図。
【図12】切削加工後のキャップ状表面研磨することを示す図。
【図13】他の実施形態に係るキャップ状ホーンの切削プログラムを示す図。
【図14】切削加工後のキャップ状ホーンを表面研磨することを示す図。
【図15】断面略M字型のホーンと振動子の断面図。
【図16】(a)はさらに他の実施形態に係るホーンの振動振幅分布を示す断面図、(b)は振動振幅実測値を示す図。
【図17】接着面断面実測図。
【図18】断面M字型のホーンとリング状振動子の断面図。
【図19】さらに他の実施形態に係るホーンの断面図。
【図20】さらに他の実施形態に係るホーンの順次拡大断面図。
【図21】(a)はさらに他の実施形態に係る振動子断面凸型の場合の断面図、(b)は振動子断面略M字型の場合の断面図。
【図22】従来の超音波美容装置の構成及び動作を説明するための図。
【図23】同上のエネルギー伝達フローを示す図。
【図24】同上の振動子とホーンの接着部断面拡大図。
【符号の説明】
【0043】
1 超音波振動子(振動子)
2 生体肌表面又は生体
3 ホーン
4 超音波振動ブロック
6 接着層
7 駆動回路
【出願人】 【識別番号】000005832
【氏名又は名称】松下電工株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1048番地
【出願日】 平成17年3月14日(2005.3.14)
【代理人】 【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫

【識別番号】100121692
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 勝美

【識別番号】100125221
【弁理士】
【氏名又は名称】水田 愼一

【公開番号】 特開2006−247251(P2006−247251A)
【公開日】 平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願番号】 特願2005−71030(P2005−71030)