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【発明の名称】 鍼灸用針管及び鍼灸針ユニット、並びに鍼灸針ユニットの使用方法
【発明者】 【氏名】伊東 大介
【住所又は居所】静岡県静岡市清水袖師町1007番地の1 セイリン株式会社内

【要約】 【課題】使い勝手のよい保護膜を備える鍼灸用針管及び鍼灸針ユニットを提供する。

【解決手段】切皮を補助するための針管本体121の外面に付着させて、柔軟性がある保護膜122を設ける。この保護膜122は、無負荷時の自然な状態で前記外面上に保持される。また、この保護膜122は、所定の外力の付加により針管本体121に対して軸方向に移動させて、針管本体121から分離することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切皮時に針体を包囲するように配置され、切皮を補助する針管本体と、
この針管本体の外面に付着させて設けられた、柔軟性がある概略円筒状の保護膜と、を含んで構成され、
この保護膜は、無負荷時の自然な状態で前記外面上に保持される一方、保護膜に対する所定の外力の付加により針管本体に対して軸方向に移動させて、針管本体から分離可能である鍼灸用針管。
【請求項2】
前記針管本体は、第1の素材で形成され、
前記保護膜は、この第1の素材よりも軟化点が低い第2の素材で形成された請求項1に記載の鍼灸用針管。
【請求項3】
前記針管本体は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリスチレンで形成された請求項1に記載の鍼灸用針管。
【請求項4】
前記保護膜は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニル樹脂、ゴム又はポリ四フッ化エチレンで形成された請求項3に記載の鍼灸用針管。
【請求項5】
前記保護膜は、浸漬、塗布又は射出成形により形成される請求項2又は4に記載の鍼灸用針管。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の鍼灸用針管と、この針管よりも長い針とを含んで構成され、
この針は、先端側が針先とされた針体と、この針体の基端側に形成された、前記針管の内径よりも小さな外径の針柄とを含んで構成される鍼灸針ユニット。
【請求項7】
請求項6に記載の鍼灸針ユニットの使用方法であって、
前記針を前記針管に内装した状態で皮膚上に配置するとともに、前記針管により補助して切皮を行い、
切皮後、前記保護膜に所定の外力を付加した状態で前記針管本体を引き抜き、前記針上に保護膜を残し、
前記針上に残された保護膜の外側から前記針体を支持して、更に刺入する使用方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、鍼灸療法の分野で使用される鍼灸用針管及び鍼灸針ユニット、並びに鍼灸針ユニットの使用方法に関し、詳細には、施術時(特に、刺入時)に施術者の指と針体との接触を防ぎ、施術者及び患者の双方の安全性を確保するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
鍼灸療法において、施術者は、鍼灸針のうち細くて長い針(すなわち、毫針)を、次のような手技により患者に刺入する。
管針法による場合は、針を針管に挿入した状態で皮膚上に立て、切皮又は穿皮という動作により針先を2〜3mmほど刺入して、硬い皮膚を通過させる。その後、針から針管を取り去り、右利きの場合は、左手で針体を支えつつ、針先の刺入している皮膚を押し開くようにして、右手で刺入を進める。
【0003】
ここで、刺入を進める際に、押し手(すなわち、左手)の親指及び人差し指が針体に触れることとなる。使い捨ての針を最初に使用するときは、親指等が針体に触れることで、ヒト蛋白(ここでは、皮膚のかけら)や、指に付着した微生物により針体を汚染するという危険を冒すこととなり、2回目以降に使用するときは、一度患者の体内に入った針体に施術者の指が触れるという危険を冒すこととなる。
【0004】
従って、刺入時に施術者の指が針体に触れることは、施術者に対しても、患者に対しても安全上避けたい行為である。しかしながら、実際には、押し手を添えないと針を正確に刺入することは困難である。
全日本鍼灸学会安全性委員会の安全性ガイドラインによれば、施術に際し、ゴム手袋又は指サックを着用するように指導されているが、ツボを探す際の指の感覚が鈍ることや、ゴム手袋又は指サックを患者毎に取り替えることの煩雑さ等、使い勝手の悪さから実施されないでいる。
【0005】
このような使い勝手の悪さを解消するため、ゴム手袋等の着用を不要とした鍼灸針として、次のものが知られている。すなわち、針体の一部に、針体に対する密着性が低い保護膜を設けたものである(特許文献1)。
【特許文献1】特開2001−276177号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この保護膜付きの針によれば、刺入時において、針体と、これを支持する施術者の指との間に保護膜が介在することとなるので、ゴム手袋等を着用しなくても、施術者の指と針体との接触を回避することができる。また、この保護膜は、針体に対する密着性が低く、軸方向に移動可能であるので、施術者は、保護膜の外側から針体を支えつつ、刺入を進めることができる。
【0007】
しかしながら、この公知の針には、刺入前の作業に関する次のような問題がある。すなわち、保護膜が針体上に設けられ、針とともに針管に挿入されるため、皮膚上への配置に際し、保護膜が針体から脱落し易い状態にあり、容易に配置することができないことである。
本発明は、ゴム手袋等を着用せずに施術者の指が針体に触れることを回避するとともに、針及び針管(保護膜を含む。)の皮膚上への配置に際し、保護膜の脱落をなくし、配置を容易なものとすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、鍼灸用針管及びこれを含んで構成される鍼灸針ユニット、並びにこの鍼灸針ユニットの使用方法を提供する。
本発明に係る鍼灸用針管は、切皮時に針体を包囲するように配置され、切皮を補助する針管本体と、この針管本体の外面に付着させて設けられた、柔軟性がある概略円筒状の保護膜とを含んで構成される。この保護膜は、無負荷時の自然な状態で前記外面上に保持される一方、所定の外力の付加により針管本体に対して軸方向に移動させて、針管本体から分離することができる。
【0009】
本発明に係る鍼灸針ユニットは、この鍼灸用針管と、この針管よりも長い針とを含んで構成され、この針は、先端側が針先とされた針体と、この針体の基端側に形成された、針管の内径よりも小さな外径の針柄とを含んで構成される。
本発明に係る鍼灸針ユニットの使用方法は、針を針管に内装した状態で皮膚上に配置するとともに、針管により補助して切皮を行い、その後、保護膜に所定の外力を付加した状態で針管本体を引き抜き、針上に保護膜を残し、この針上に残された保護膜の外側から針体を支持して、更に刺入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、施術(特に、刺入)に際し、ゴム手袋等の着用が不要であるため、ツボを探す際の皮膚からの情報や、刺入時における針からの情報を直に指で感じ取ることができる。また、保護膜を針管の外面に付着させて設けたので、針を内装した状態で皮膚上に配置する際に、保護膜が脱落することがなく、容易に配置することができる。なお、保護膜は、針管を取り去る際に、所定の外力を付加することにより容易に針管から分離し、針上に残すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る鍼灸針ユニット1aの構成を示している。
本実施形態では、鍼灸針ユニット1aは、針11と、この針11を内装した鍼灸用針管(以下、単に「針管」という。)12とを含んで構成され、これらを一体とした状態で使用者に提供される。
【0012】
針11は、針体111と、針柄112とを含んで構成される。針体111は、ステンレス、銀又は金合金等で形成され、細長く、深部への刺入を目的とするものである。針体111は、一側の先端が針先とされ、他側に針柄112が固着されている。針体111は、この他側において、端部が鉤又は波状に湾曲させて形成されている。針柄112は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリスチレン等のプラスチックで形成され、この鉤状等に形成された湾曲部分を覆うように、インサート成形等により針体111と一体成形されている。
【0013】
他方、針管12は、針管本体121と、保護膜122とを含んで構成される。針管本体121は、施術時において、後述する切皮を補助するためのものであり、切皮に際し、針体111を包囲するように皮膚上に配置される。針管本体121は、ポリプロピレン、ポリエチレン又はポリスチレン等のプラスチックを素材として、針柄112の外径よりも大きな内径を持たせた、軸方向に長い円筒状に形成されている。針管本体121は、針柄112から露出する針体部分111aよりも長く、これを完全に包囲することができる。また、針11を内装した状態では、針管本体121から針柄112の外端部112aがわずかに(たとえば、4mmほど)突出する。保護膜122は、刺入時に施術者の指と針体111との間に介在させ、これらの接触を回避するためのものであり、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエチレンテレフタレート、エチレン酢酸ビニル樹脂、ゴム又はポリ四フツ化エチレン等の樹脂又はプラスチックを素材として、針管本体121よりも短い(たとえば、10〜30mm)円筒状に形成されている。なお、保護膜122は、完全な円筒状に限らず、側壁の一部に切込み又は切欠きが設けられてもよい。
【0014】
本実施形態では、保護膜122は、針管本体121の素材よりも軟化点(ビカット軟化点を採用してよい。)が低い材料を素材としており、針管本体121の形成後又はそれ以前に、浸漬、塗布又は射出成形(たとえば、二色成形)等の加工方法により形成することができる。保護膜122は、負荷がかかっていない自然な状態で針管本体121上に保持されるが、針管本体121に対する密着性が低く、所定の外力を付加することにより容易に軸方向に移動させ、針管本体121から分離することができる。
【0015】
鍼灸針ユニット1aは、針11を針管12に内装した状態で使用者に提供される。針柄112及び針管本体121の素材に同じ材料を採用することで、これらを超音波溶着(点Pで示す。)により一体化することができる。鍼灸針ユニット1は、滅菌及び包装工程を経て、使用者に提供される。
次に、以上のように構成される鍼灸針ユニット1aの使用方法について、図2により説明する。
【0016】
まず、包装具から鍼灸針ユニット1aを取り出し、針11を針管12から分離する。この分離は、片手で針管12を支えつつ、他方で針柄112の外端部112aに対し、図1の上向きに荷重を付加するか、あるいは捩ることにより行うことができる。
次に、図2(a)のように、針11を内装した状態で針管12をツボのある皮膚上に立て、矢印A1の方向に針柄112を軽く叩くことで、切皮を行う。その後、図2(b)のように、押し手で保護膜122を挟み、外側から外力Fを付加した状態(保護膜122に対し、下向きの保持力が生じる。)で、矢印A2の方向に針管12を引き抜き、保護膜122のみを針11上に残す。そして、図2(c)のように、保護膜122を押し手で押し潰すようにして、保護膜122の外側から針体111を支えつつ、針先の刺入している皮膚を押し開くようにして、刺し手で刺入を進める。ここで、押し手と針体111との間に保護膜122が介在するため、施術者の指が針体111に直接触れることはない。針体111が目的の深さに達し、通常通りに適当な技法を行った後、針11を抜き取り、針管12とともに廃棄する。
【0017】
なお、針体111は、少なくとも保護膜122の長さの分だけ刺入されないで残ることに留意すべきである。たとえば、保護膜の長さが20mmである場合は、長さが30mmの針は、10mmの深さまで、長さが50mmの針は、30mmの深さまでしか刺入されない。この制約は、針柄112の近くまで刺入し得る場合に比べ、折針等の事故に対して安全に作用する。折針事故は、針体111の根元で起きる事例が多いが、この鍼灸針ユニット1では、折針事故の際に、少なくとも保護膜122の長さに相当する分が刺入されないで残るからである。
【0018】
本実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
すなわち、第1に、保護膜122を設け、刺入に際し、この保護膜122を施術者の指と針体111との間に介在させることとしたので、ゴム手袋等の着用が不要となり、ツボを探す際の皮膚からの情報や、刺入時における針11からの情報を直に指で感じ取ることができ、施術を円滑、かつ良好に行うことができる。
【0019】
第2に、保護膜122を針管本体121の外面に付着させて設けることとしたので、針11を内装した状態で針管12を皮膚上に配置する際に、保護膜122が脱落することがなく、容易に配置することができる。なお、保護膜122を針管本体121上に設けるための加工工程は、鍼灸針の一般的な製造工程に容易に組み込むことができる。
第3に、針柄112及び針管本体121の素材に同じ材料を採用し、超音波溶着によりこれらを一体化することとしたので、施術時において、包装具から取り出した後に針11を落下又は紛失する危険を低減することができる。
【0020】
次に、本発明の他の実施形成について説明する。
図3は、本実施形態に係る鍼灸針ユニット1bの構成を示している。
本実施形態では、針管本体121の壁厚を軸方向で変化させ、薄く形成した部分の外面上に保護膜122を設けることとしている。すなわち、本実施形態では、針管本体121のうち、一方の端縁を含む第1の部分121a(押し手が据えられる。)をそれ以外の第2の部分121bよりも薄く形成し、浸漬等の加工方法により保護膜122を形成して、これを第1の部分121aの外面に付着させている。針管本体121の第1の部分121aの厚さと、保護膜122の厚さと和が、針管本体121の第2の部分121bの厚さと等しくなるように設定されており、針管本体121に保護膜122を付着させた状態で、針管本体121及び保護膜122の各外面により1つの円筒状面が形成されている。針管本体121及び保護膜122の素材には、先の実施形態におけると同様のものを採用することができる。
【0021】
このように構成される針管12に、先の実施形態におけると同様に構成される針11を内装し、これらを超音波溶着により一体化して、鍼灸針ユニット1bとして使用者に提供する。
本実施形態によれば、特に、次のような効果を得ることができる。
すなわち、針管本体121の一部121aを他の部分121bよりも薄く形成し、この部分121aの外面上に保護膜122を設けることとしたので、針管12から保護膜122による段差をなくし、針管12の使い勝手を向上させることができる。
【0022】
なお、以上では、針柄112及び針管本体121の素材として樹脂を採用することとしたが、これに限らず、針柄112を金属製とする一方、針管本体121をプラスチック製とするなど、所望の素材を適宜に選択してよい。
また、本発明に係る鍼灸用針管は、使用者に対し、鍼灸針ユニットとして提供するほか、針管単体として提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る鍼灸針ユニットの構成
【図2】同上鍼灸針ユニットの使用方法
【図3】本発明の他の実施形態に係る鍼灸針ユニットの構成
【符号の説明】
【0024】
1a,1b…鍼灸針ユニット、11…針、111…針体、112…針柄、12…針管、121…針管本体、122…保護膜。
【出願人】 【識別番号】390024545
【氏名又は名称】セイリン株式会社
【住所又は居所】静岡県静岡市清水区袖師町1007番地の1
【出願日】 平成16年11月26日(2004.11.26)
【代理人】 【識別番号】100078330
【弁理士】
【氏名又は名称】笹島 富二雄

【識別番号】100087505
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 春之

【公開番号】 特開2006−149544(P2006−149544A)
【公開日】 平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願番号】 特願2004−342393(P2004−342393)