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【発明の名称】 歩行補助装置用装着具
【発明者】 【氏名】島田 圭
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【要約】 【課題】アクチュエータの支持剛性と装着容易性とを、より一層高次元に両立し得る歩行補助装置用装着具を提供する。

【解決手段】使用者の少なくとも股関節に対応する位置にトルク発生手段(トルクアクチュエータTA1)を装着すべく使用者の腰部に着脱自在ならしめる開口を備えた歩行補助装置用装着具(腰部支持具1)を、少なくともその一部に相対摺動可能部分が設けられた複数の剛体部(左部21L・右部21R・中央部21C)と、前記相対摺動可能部分に設けられた結合・離脱手段(ロック機構R)とを有し、前記相対摺動可能部分を伸縮移動させて前記開口の寸法を増減させるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の少なくとも股関節に対応する位置にトルク発生手段を装着すべく使用者の腰部に着脱自在ならしめる開口を備えた歩行補助装置用装着具であって、
少なくともその一部に相対摺動可能部分が設けられた複数の剛体部と、前記相対摺動可能部分に設けられた結合・離脱手段とを有し、
前記相対摺動可能部分を伸縮移動させて前記開口の寸法を増減させることを特徴とする歩行補助装置用装着具。
【請求項2】
前記複数の剛体部は、脊柱を中心にして左右方向に分割されたものであることを特徴とする請求項1に記載の歩行補助装置用装着具。
【請求項3】
使用者の少なくとも股関節に対応する位置にトルク発生手段を装着すべく使用者の腰部に着脱自在ならしめる開口を備えた歩行補助装置用装着具であって、
上方から手でつかむ取っ手を有することを特徴とする歩行補助装置用装着具。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行補助装置用装着具に関し、より詳しく言うと、下肢機能が低下した人に筋力補助動力を加えるための歩行補助装置を腰部に装着するための装着具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
外傷や疾病、あるいは加齢による筋力低下で自力歩行が困難となった人のために、股関節や膝関節にトルクアクチュエータを装着し、トルクアクチュエータが発生する回転力で下肢の運動を補助するようにした歩行補助装置が種々提案されている。
【0003】
このような歩行補助装置の装着具として、軟質合成樹脂材で形成したコルセット様の腹帯をベルトで腹部に固定するようにしたものが知られている(特許文献1を参照されたい)。
【特許文献1】特開2002−301124号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記文献1に開示されたものは、複数箇所のバックルの締め/弛め作業を着脱の都度行わねばならず、着脱作業が厄介である上、骨格のない腹部に装着するものであるため、強く締め付けると腹部の圧迫感が強くなって日常生活に支障を来たし、緩いと股関節の側方に位置させたアクチュエータのトルクを受け止めることができずに大腿部に加える補助力が逃げてしまうといった欠点がある。
【0005】
股関節アクチュエータから大腿部への動力伝達効率を高めるには、腰部に対するアクチュエータの支持剛性を高くすれば良いが、装着具の剛性を高くすると、体形差に対する適合性が低くなってしまうため、製作費用が嵩みがちとなることが避けられない。
【0006】
しかも、従来のものは、アクチュエータが組み込まれた状態の装置一式の重量を使用者自身が支えつつ下肢に装着しなければならず、この種の補助装置を必要とする身体機能が衰えている人にとって、少なからぬ肉体的負担を強いられるものであった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の問題点を解消すべく案出されたものであり、その主な目的は、アクチュエータの支持剛性と装着容易性とを、より一層高次元に両立し得る歩行補助装置用装着具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の請求項1は、使用者の少なくとも股関節に対応する位置にトルク発生手段(トルクアクチュエータTA1)を装着すべく使用者の腰部に着脱自在ならしめる開口を備えた歩行補助装置用装着具(腰部支持具1)を、少なくともその一部に相対摺動可能部分が設けられた複数の剛体部(左部21L・右部21R・中央部21C)と、前記相対摺動可能部分に設けられた結合・離脱手段(ロック機構R)とを有し、前記相対摺動可能部分を伸縮移動させて前記開口の寸法を増減させることを特徴とするものとした。特に前記複数の剛体部を、脊柱を中心にして左右方向に分割されたものとすると良い(請求項2)。
【0009】
また本発明の請求項3は、使用者の少なくとも股関節に対応する位置にトルク発生手段を装着すべく使用者の腰部に着脱自在ならしめる開口を備えた歩行補助装置用装着具を、上方から手でつかむ取っ手を有することを特徴とするものとした。
【発明の効果】
【0010】
このような本発明の請求項1の構成によれば、装着具を剛体で構成するので、トルク発生手段の力の身体への伝達効率を高めることができる。しかも剛体で形成したにも拘わらず、腰部を通過させる開口の寸法を自由に増減し得るので、着脱容易性と体形差に対する適合性とを共に高める上に多大な効果を奏することができる。特に請求項2によれば、股関節アクチュエータの取付部の剛性を損なうことがないので、トルク発生手段の力の伝達効率を高める上に寄与し得る。
【0011】
また請求項3の構成によれば、装着時に装置の自重を容易に支持することができるので、装着容易性をより一層高める上に効果的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付の図面を参照して本発明について詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明が適用された外骨格型歩行補助装置の全体を示す斜視図であり、図2は、使用者への装着状態を示す側面図である。図1に示すように、この歩行補助装置は、使用者の腰部に装着される腰部支持具1と、使用者の左右の大腿部に装着される上下に長い棒状をなす大腿部支持具2と、使用者の左右の下腿部に装着される上下に長い棒状をなす下腿部支持具3と、使用者が履いた靴に装着される足部支持具4とからなっている。
【0014】
腰部支持具1は、図3に示すように、比較的剛性の高い部材で上面視略U字形(コの字形)に形成された基部1aと、基部1aの前端部に結合した左右一対の開閉部1bとからなり、全体として前方中央部が開放されたC字形をなしている。
【0015】
腰部支持具1の側部前端および大腿部支持具2の上端には、左右の股関節にトルクを付与するトルクアクチュエータTA1(図2)を取り付けるための左右一対の股関節アクチュエータベース5が設けられている。また大腿部支持具2の下端および下腿部支持具3の上端には、左右の膝関節にトルクを付与するトルクアクチュエータTA2(図2)を取り付けるための左右一対の膝関節アクチュエータベース6が設けられている。
【0016】
大腿部支持具2の股関節アクチュエータベース5並びに膝関節アクチュエータベース6との連結部は、回動軸が前後方向に延在するヒンジ7a・7bを介して屈曲自在に連結されている。また下腿部支持具3の膝関節アクチュエータベース6並びに足部支持具4との連結部も、回動軸が前後方向に延在するヒンジ8a・8bを介して屈曲自在に連結されている。そして大腿部支持具2及び下腿部支持具3は、上下に伸縮可能にされると共に、使用者の体格に応じた適正寸法に設定した上で、例えばねじ手段などをもってその長さが固定されるようになっている。
【0017】
各アクチュエータベース5・6に個々に取り付けられるトルクアクチュエータTA1・TA2は、クラッチ及び減速機付き電動モータからなり、腰部支持具1並びに大腿部支持具2の下端のそれぞれにモータハウジングが固定され、大腿部支持具2並びに下腿部支持具3の各上端のそれぞれにロータが固定される。これにより、股関節並びに膝関節の運動に対応した補助的なトルクが、腰部支持具1の側部前端と大腿部支持具2の上端との連結部および大腿部支持具2の下端と下腿部支持具3の上端との連結部に与えられる。なお、両トルクアクチュエータTA1・TA2は、それぞれが対応する各アクチュエータベース5・6に対して反復着脱可能なねじ手段などを介して取り付けられており、保守・整備の簡略化が図られている。
【0018】
大腿部支持具2の上下方向中間位置には、一対の弾性C字形部材を適宜な上下間隔をおいて連結してなる大腿部結合クリップ9が、所定範囲を上下に摺動可能に結合している。また下腿部支持具3の上下方向中間位置にも、一対の弾性C字形部材を適宜な上下間隔をおいて連結してなる下腿部結合クリップ10が、所定範囲を上下に摺動可能に結合している。
【0019】
下腿部支持具3と足部支持具4との連結部11は、左右方向に延在する軸上で回動可能になっており、足首の運動に追従可能になっている。
【0020】
腰部支持具1の中央部には、図示されない上肢との結合部が設けられる背当て板12が取り付けられている。なお、制御回路やバッテリー等の補機類は、背当て板12に取り付けられる。
【0021】
一方、腰部支持具1の基部1aの左右両側部の上面には、上方から手でつかむグリップ13が設けられている。そして基部1aは、L字形をなす左部21L並びに右部21Rと、背当て板12に一体結合されたI字形をなす中央部21Cとの3つの部分からなり、左部21L並びに右部21Rの対向端同士が、中央部21Cに対して左右方向へ摺動可能に係合している。また左右の開閉部1bも、基部1aを構成する左部21L並びに右部21Rの各前端部に対し、前後方向への摺動ガイド22を介して連結されている。これにより、着脱時には、左右の開閉部1bの内端間の寸法(前方中央の開放部の幅寸法)を増大させ、かつ左右の開閉部1bを前方へ移動させることができ、装着時には、基部1aの幅寸法及び開閉部1bの前後位置を使用者の体格に応じて適正に設定した上で、次に詳述するロック機構をもって固定し得るようになっている。
【0022】
ロック機構Rは、左部21L並びに右部21Rのそれぞれと中央部21Cとの摺合部、および左右の各開閉部1bとこれに対応する摺動ガイド22との間に設けられており、その構造は、図4、5に概念的に示したように、互いに相対摺動可能に組み合わされた第1の部材31及び第2の部材32と、第1の部材31に固定されたブラケット33にピン軸34をもって枢支されたラチェットポール35と、長軸が傾斜した長孔36をもってピン軸34に係合したラチェットレバー37と、第2の部材32に形成された鋸刃状をなすラチェットギア38とからなっている。
【0023】
ラチェットレバー37は、長孔36の範囲を遊動可能になっている。そして、ラチェットポール35は、ラチェットギア38との噛み合い状態を維持するように、捩りコイルばねなどで図における時計回り方向へ弾発付勢されている。
【0024】
図4に示す噛み合い初期状態で、第1、第2両部材31・32を互いに伸長させる向き(図4において左右方向)に引っ張ると、ラチェットギア38の歯の1つにラチェットポール35が噛み込んで伸長方向への相対摺動が阻止される。この状態から、ラチェットレバー37を僅かに左動させてラチェットレバー37の先端のラチェット爪37aをラチェットギア38の歯の1つに噛み合わせた上でラチェットレバー37を反時計回りに回動させると、ラチェット爪37aが回動して第2の部材32を右向きに引き込む。この時、ラチェットポール35の遊端がラチェットギア38の歯先で押し上げられ、ラチェットギア38との噛み合いが外れる。
【0025】
図5に示したように、ラチェットレバー37を反時計回りに一杯回動させると、ラチェットギア38の歯の1つ分だけ第2の部材32が右方へ進み、捩りコイルばねなどの弾発力でラチェットポール35の遊端が1つだけ進んだラチェットギア38の歯に噛み込み、第2の部材32の戻りを阻止する。
【0026】
このようにして、ラチェットレバー37を所定角度だけ往復回動することにより、第2の部材32が歩進的に第1の部材31側へ引き込まれる。
【0027】
両者の連結解除時は、ラチェットレバー37を反時計方向へ回動させてラチェットポール35の遊端をラチェットギア38の歯先から逃がし、その噛み合いが外れた位置でラチェットポール35を固定することにより、第2の部材32の戻り移動(左動)がフリーになる。
【0028】
このような構成のラチェット式ロック機構Rのラチェットレバー37を中央部21C(背板12)の左右両側端に設け、基部1aを構成する左部21L並びに右部21Rの対向端にラチェットギア38を設けることにより、基部1aを構成する左部21L並びに右部21Rを背板12を中心に左右にスライド移動させ、且つ適宜な位置で固定することができる。
【0029】
このロック機構Rを、基部1aの摺動ガイド部22と開閉部1bとの間に設け、基部1a側にラチェットレバー37を設け、開閉部1bの摺動ガイド部22との摺合部にラチエットギア38を設けることにより、開閉部1bを前後移動可能に且つ適宜な位置で固定自在とすることができる。
【0030】
このような構成の歩行補助装置を使用者の下肢に装着するには、先ず、腰部支持具1の開閉部1b同士間の間隔寸法および開閉部1bの前後方向位置を適宜に設定しておき、基部の側部上面に形成されたグリップ13を把持して使用者の腰部Hに腰部支持具1を装着する。腰部Hの後背面に背当て板12が当接したところで左右の基部の幅寸法及び両開閉部1bの位置を調節し、且つ上記したロック機構Rのラチェットを効かせて、図3に示したように、左右の腸骨陵部23(骨盤側面端点)から仙腸関節24(脊柱と骨盤の接合点)の後背面に対応する部位にU字形をなす基部1aを当接させ、左右の腸骨棘部25(骨盤前面端点)に対応する部位に左右一対の開閉部1bを当接させ、使用者の腰骨のところに腰部支持具1を位置決めする。
【0031】
次に、大腿部結合クリップ9並びに下腿部結合クリップ10の開放端側を拡開し、使用者の大腿部並びに下腿部の外側方から使用者の大腿部並びに下腿部に各クリップ9・10を抱着させることにより、大腿部支持具2並びに下腿部支持具3が使用者の脚部に装着される。この時、クラッチを切って両トルクアクチュエータTA1・TA2をフリーにしておけば、大腿部支持具2並びに下腿部支持具3の上下各端部がヒンジ7a・7b・8a・8bから側方へ折れ曲がるので、椅子に腰掛ける等した体勢で歩行補助装置を脚部に容易に装着することができる。
【0032】
各クリップ9・10は、対応する各支持具2・3に対して上下方向に摺動可能に結合しているので、使用者の大腿部並びに下腿部と、これらに対応する各支持具2・3との間に運動時にずれが生じても、太もも並びにふくらはぎに対して各クリップ9・10は位置ずれを起こさないので、装着時の違和感を低減することができる。
【0033】
腰部支持具1の分割態様は、図6に示したように、装着時に全閉する2分割(a)、装着時に一方が開放した2分割(b)、あるいは前後方向についての2分割(c)等々、種々の変形が可能である。また装着時に握るグリップも、上記のような別部材とせずに、基部1の側面に指先を差し込める凹所を設けるものであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明が適用された歩行補助装置の装着具の全体斜視図である。
【図2】歩行補助装置の装着状態を示す側面図である。
【図3】腰部支持具の装着状態を示す上面図である。
【図4】ロック機構の初期状態を示す側面図である。
【図5】ロック機構の一歩締め込んだ状態を示す側面図である。
【図6】腰部支持具の分割の別の態様を示す概略図である。
【符号の説明】
【0035】
1 腰部支持具(歩行補助装置用装着具)
1a 基部(剛体からなる部分)
1b 開閉部
21L 左部
21R 右部
21C 中央部
22 摺動ガイド
TA1 トルクアクチュエータ(トルク発生手段)
R ロック機構(結合・離脱手段)
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成16年9月7日(2004.9.7)
【代理人】 【識別番号】100089266
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 陽一

【公開番号】 特開2006−75198(P2006−75198A)
【公開日】 平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願番号】 特願2004−259670(P2004−259670)