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【発明の名称】 生体光計測装置
【発明者】 【氏名】川口 文男
【住所又は居所】東京都千代田区内神田1丁目1番14号 株式会社日立メディコ内

【要約】 【課題】本発明は、検出光の検出精度を向上させることができる生体光計測装置を得ることを目的とするものである。

【解決手段】主ロックイン処理部12は、変調周波数を参照信号として、参照信号と同期した信号の抽出を行う。第1の補正用ロックイン処理部13は、変調周波数よりも低い周波数の参照信号を用いて補正用ロックイン処理を行う。第2の補正用ロックイン処理部14は、変調周波数よりも高い周波数の参照信号を用いて補正用ロックイン処理を行う。ノイズ補正部15では、第1及び第2の補正用ロックイン処理部13,14による補正用ロックイン処理の結果を用いて、主ロックイン処理により検出された検出光の強度が補正される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の変調周波数で強度変調された照射光を発生する光源部と、
上記照射光を被検体に照射することにより上記被検体から得られる検出光の強度を、上記変調周波数と同じ周波数の信号を参照信号とする主ロックイン処理により検出する強度検出部と
を備え、
上記強度検出部は、上記変調周波数とは異なる周波数の信号を参照信号とする補正用ロックイン処理の結果を用いて、上記主ロックイン処理により検出された検出光の強度を補正することを特徴とする生体光計測装置。
【請求項2】
上記強度検出部は、上記変調周波数よりも低い周波数を参照信号とする第1の補正用ロックイン処理部と、上記変調周波数よりも高い周波数を参照信号とする第2の補正用ロックイン処理部とを有していることを特徴とする請求項1記載の生体光計測装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、光を用いて被検体の光学特性を計測する生体光計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、生体光計測装置は、被検体の生理変化に伴う光学変化を、検出光強度の微弱な変化から求める。従って、外乱光の影響を除き高精度な計測を実施するために、照射光を特定周期で変調し、かつ検出された光信号をロックイン回路で同期し計測するロックイン光計測法が用いられている。ロックイン型計測回路は、特定周波数の信号を精度良く選択的に計測できる計測回路方式である(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−146151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の生体光計測装置では、照射光は、被検体を通過する際に吸収や散乱により大きな減衰を受ける。また、照射光の強度は、安全上の観点から制限される。このため、検出光の強度は微弱となり、検出信号は回路ノイズの影響を受け易い。これに対して、微弱な検出光を精度良く検出するため、電子増倍機能のある光検出器、例えば光電子増倍管やアバランシェフォトダイオード(APD)が用いられている。
【0005】
しかし、このような電子増倍型の光検出器は、電子を高い電圧で加速し増倍するため、自発的な電子発生によるショットノイズを発生する。このショットノイズは、短時間にパルス状の信号を発生させるため、広帯域の信号を間歇的に発生させる。また、ショットノイズは、広帯域であるため、計測信号の変調周波数域に漏れ込み、ロックイン回路を用いた峡帯域のフィルタでも除去が困難である。このため、被検体内での光減衰が大きい場合、高感度の電子増倍型の光検出器を用いても十分な検出精度が得られないことがある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、検出光の検出精度を向上させることができる生体光計測装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る生体光計測装置は、所定の変調周波数で強度変調された照射光を発生する光源部と、照射光を被検体に照射することにより被検体から得られる検出光の強度を、変調周波数と同じ周波数の信号を参照信号とする主ロックイン処理により検出する強度検出部とを備え、強度検出部は、変調周波数とは異なる周波数の信号を参照信号とする補正用ロックイン処理の結果を用いて、主ロックイン処理により検出された検出光の強度を補正する。
【発明の効果】
【0008】
この発明の生体光計測装置は、変調周波数とは異なる周波数の信号を参照信号とする補正用ロックイン処理の結果を用いて、主ロックイン処理により検出された検出光の強度を補正するので、ショットノイズによる影響を低減し、検出光の検出精度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、この発明を実施するための最良の形態について、図面を参照して説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による生体光計測装置の要部を示すブロック図である。図において、被検体1には、光源部2で発生された照射光が照射される。照射光が被検体1を反射又は透過して得られる検出光の強度は、強度検出部3により検出される。具体的には、強度検出部3は、検出光の強度の時間変化を計測する。例えば、被検体が人体頭部であるとすると、強度検出部3で検出された検出光強度の情報は、皮膚及び頭蓋骨を通過しており、大脳の血流の情報を含んでいる。
【0010】
光源部2は、レーザ光を発生する半導体レーザ等のレーザ光源4と、レーザ光源4を駆動するレーザ駆動回路5とを有している。レーザ光源4は、可視から赤外の波長領域中で波長、例えば780nm付近の波長の光を放射する。波長は、780nmに限定されるものではなく、また波長数も1波長に限定されるものではない。
【0011】
レーザ駆動回路5は、発振器6により与えられる所定の変調周波数fに基づいて、照射光の強度を変調する。変調周波数fとしては、例えば生体の血流変化を十分計測可能な10KHzが選択される。
【0012】
具体的には、レーザ駆動回路5では、レーザ光源4に対して直流バイアス電流を印可するとともに変調周波数fを印加することで、レーザ光源4から放射される照射光に変調を与える。この変調方式としては、矩形波によるデジタル変調が用いられている。また、変調方式として正弦波等の任意波形の繰り返しを用いてもよい。
【0013】
強度検出部3は、光検出器7、ロックインアンプ処理部8及びコンピュータ9を有している。光検出器7は、検出光強度を電気信号に変換する。光検出器7としては、例えばAPD等の高感度電子増倍型検出器が用いられている。ロックインアンプ処理部8は、発振器6から得た変調周波数fと同位相・同周波数の信号を参照信号とする主ロックイン処理を行う。
【0014】
図2は図1の強度検出部3のより具体的な構成を示すブロック図である。ロックインアンプ処理部8は、アンプ10、A/D変換器11、主ロックイン処理部12、第1の補正用ロックイン処理部13、第2の補正用ロックイン処理部14及びノイズ補正部15を有している。アンプ10は、光検出器7からの信号を電圧変換する。
【0015】
A/D変換器11は、アンプ10からのアナログ信号をデジタル信号に変換する。A/D変換器11の変換サイクルは、光源部2の変調周期に比べて十分大きい100KHzとする。これにより、デジタル信号のサンプルナイキスト周波数は50KHzとなり、変調信号10KHzを十分な精度でサンプルすることができる。
【0016】
ロックイン処理部12〜14としては、DSP(Digital Signal Processor)が用いられている。A/D変換器11から出力されたデジタル信号は、ロックイン処理部12〜14により平行して処理される。
【0017】
主ロックイン処理部12は、上記の主ロックイン処理を行う。即ち、主ロックイン処理部12は、変調周波数f(10KHz)を参照信号として、参照信号と同期した信号の抽出を行う。また、主ロックイン処理部12におけるローパスフィルタの遮断周波数は100Hzとし、主ロックイン処理部12からの出力信号は、50サンプル/秒のデジタル信号列としてノイズ補正部15に送られる。
【0018】
第1及び第2の補正用ロックイン処理部13,14は、変調周波数fとは異なる周波数の信号を参照信号とする補正用ロックイン処理を行う。具体的には、第1の補正用ロックイン処理部13は、変調周波数fよりも低い周波数f(例えば8KHz)の参照信号を用い、補正用ロックイン処理を行う。また、第1の補正用ロックイン処理部13のローパスフィルタの遮断周波数は100Hzとし、第1の補正用ロックイン処理部13からの出力信号は、50サンプル/秒のデジタル信号列としてノイズ補正部15に送られる。
【0019】
第2の補正用ロックイン処理部14は、変調周波数fよりも高い周波数f(例えば12KHz)の参照信号を用い、補正用ロックイン処理を行う。ここでは、変調周波数fが周波数fと周波数fとの中間になるように周波数f,fが設定されている。また、第2の補正用ロックイン処理部14のローパスフィルタの遮断周波数は100Hzとし、第2の補正用ロックイン処理部14からの出力信号は、50サンプル/秒のデジタル信号列としてノイズ補正部15に送られる。
【0020】
ノイズ補正部15では、第1及び第2の補正用ロックイン処理部13,14による補正用ロックイン処理の結果を用いて、主ロックイン処理により検出された検出光の強度が補正される。ノイズ補正部15としては、例えばDSPが用いられている。
【0021】
なお、ロックイン処理としては、サイン・コサインの位相が相互に90度ずれた参照信号による位相検波信号のそれぞれの2乗和の平均を出力する位相不感型ロックインアンプ処理が実行される。これにより、参照信号と照射光との位相差変動による信号揺らぎを防ぐことができる。また、位相調整作業が不要になるとともに、ノイズ補正処理におけるショットノイズの位相ずれの影響を除くことができ、高精度なノイズ補正を可能とする。
【0022】
ここで、図3は図1の強度検出部3で通常検出される検出光の周波数と強度との関係を示すグラフである。照射光の強度を変調周波数f(10KHz)で変調することにより、検出光の強度も、周波数fで鋭いピークを持っている。他の周波数帯の出力は、外部からの迷光によるノイズと考えることができる。
【0023】
迷光は自然光が主であるため、ノイズは、広い周波数帯域で時間方向に安定した強度を有している。つまり、ノイズのパワーは、周波数方向及び時間軸方向に一様に広がっている。このため、峡帯域計測であるロックインアンプ計測信号への影響は小さい。
【0024】
しかし、高感度光検出器を用いて微弱光の計測を行う場合、迷光によるノイズとは別に、短時間に大きなピークを持つパルス状ショットノイズが発生する。例えば、光検出器7としてAPDを用いる場合、電子増倍部の加圧電位を高くすると、ショットノイズの発生率が増加する。このようなショットノイズは、計測装置の応答時間に比べて長いランダムな時間間隔の間歇的で幅の狭いパルス状であるため、フィルタ処理後もロックインアンプ処理部8へ伝播しノイズ源となる。
【0025】
図4は図2のロックイン処理部12〜14の出力信号及びノイズ補正部15での補正後の信号の時間変化を示すグラフである。図4に示すように、ショットノイズが発生すると、各周波数のロックイン処理後の3つの信号に類似したノイズ信号が付加される。この場合、迷光や回路系の熱雑音等によるホワイトノイズもショットノイズの上に重なるが、ホワイトノイズはショットノイズよりも小さい。
【0026】
次に、ノイズ補正部15での具体的な補正処理の一例について説明する。ノイズ補正部15には、ロックイン処理部12〜14からの信号が50サンプル/秒の率で入力される。本実施の形態では、3つの周波数(f,f,f)が近接しているため、周波数空間上のショットキーパルスノイズによるノイズのパワースペクトル分布は、周波数fのほぼ線形な関数であると仮定することが可能で、LAn(f)を計測周波数におけるショットパルスによるノイズのパワーの推定値とすると、次式が成立する。
LAn(f)=(f−f)(LA(f)−LA(f))/(f−f)+LA(f
この結果、ショットノイズ補正後の信号を次式により求めることができる。
LA(f)’=LA(f)−LAn(f
【0027】
なお、ノイズ計測ウインドウの数をさらに増やした場合は、ショットノイズで推定されるスペクトル関数を用いてノイズ推定及び補正が可能となる。例えば、ショットノイズをガウス関数とすると、ノイズ関数はこの1/e幅σの逆数となるガウス関数となるため、このσを変数として計測周波数におけるLA信号を最小二乗法でフィッティングすることで、精度の高いノイズ推定及び補正が可能となる。
【0028】
上記のようなプロセスを、DSP回路で構成されたノイズ補正部15により50サンプル/秒で行えば、実時間で信号のノイズを補正することが可能となる。補正後の信号は、コンピュータ9に入力され、コンピュータ9の表示部には、信号変化が実時間で表示される。
【0029】
上記のように、この実施の形態の生体光計測装置では、変調周波数とは異なる周波数の信号を参照信号とする補正用ロックイン処理の結果を用いて、主ロックイン処理により検出された検出光の強度を補正するので、ショットノイズによる影響を低減し、検出光の検出精度を向上させることができる。
【0030】
また、ロックインアンプ処理部8には、変調周波数よりも低い周波数を参照信号とする第1の補正用ロックイン処理部13と、変調周波数よりも高い周波数を参照信号とする第2の補正用ロックイン処理部14とが設けられているので、強度の補正をより正確に行うことができる。
【0031】
なお、上記の例では、主ロックイン処理、補正用ロックイン処理及びノイズ補正処理をDSP回路により実行しているが、十分な処理速度が得られればコンピュータにより実行してもよい。
また、上記の例では、デジタル方式によるロックイン回路の構成例を示したが、同様の機能を有するアナログ方式のロックイン回路を用いても同様の機能は得られる。
さらに、上記の例では、第1及び第2の補正用ロックイン処理部13,14を用いたが、補正用ロックイン処理部は、1つ又は3つ以上であってもよい。即ち、f,fとは異なる周波数f〜fを参照周波数とする第3〜第nの補正用ロックイン処理部を用いることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明の実施の形態1による生体光計測装置の要部を示すブロック図である。
【図2】図1の強度検出部のより具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】図1の強度検出部で通常検出される検出光の周波数と強度との関係を示すグラフである。
【図4】図2のロックイン処理部の出力信号及びノイズ補正部での補正後の信号の時間変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0033】
1 被検体、2 光源部、3 強度検出部、12 主ロックイン処理部、13 第1の補正用ロックイン処理部、14 第2の補正用ロックイン処理部。
【出願人】 【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
【住所又は居所】東京都千代田区外神田四丁目14番1号
【出願日】 平成17年5月11日(2005.5.11)
【代理人】 【識別番号】100057874
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道照

【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治

【識別番号】100084010
【弁理士】
【氏名又は名称】古川 秀利

【識別番号】100094695
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 憲七

【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順

【公開番号】 特開2006−314462(P2006−314462A)
【公開日】 平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願番号】 特願2005−138721(P2005−138721)