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【発明の名称】 警告報知システム
【発明者】 【氏名】石橋 義治
【住所又は居所】栃木県大田原市下石上1385番地 東芝メディカルシステムズ株式会社本社内

【氏名】櫻井 康雄
【住所又は居所】栃木県大田原市下石上1385番地 東芝メディカルシステムズ株式会社本社内

【氏名】藤本 克彦
【住所又は居所】栃木県大田原市下石上1385番地 東芝メディカルシステムズ株式会社本社内

【氏名】柴田 真理子
【住所又は居所】栃木県大田原市下石上1385番地 東芝メディカルシステムズ株式会社本社内

【氏名】大湯 重治
【住所又は居所】栃木県大田原市下石上1385番地 東芝メディカルシステムズ株式会社本社内

【要約】 【課題】大出血の予兆を的確に知ることができ、危険度に応じて警告を発することの可能な警告報知システムを提供すること。

【解決手段】被検体の血圧、心拍数、及び体温データを個別に計測し、それぞれのトレンドデータを作成する。また、各トレンドデータごとに正常範囲を指定し、常時比較する。そして、3つのトレンドデータのうち少なくとも2つが正常範囲から逸脱した場合には、大出血の予兆を示す警告を発生させる。また、正常範囲から逸脱してからの経過時間や、逸脱の程度、逸脱したデータの組み合わせなどに応じて、警告のレベルを段階的に可変するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の血圧データと、心拍数データと、体温データとを取得するデータ取得手段と、
前記血圧データと、前記心拍数データと、前記体温データのそれぞれのトレンドデータを作成するトレンドデータ作成手段と、
前記血圧データのトレンドデータと、前記心拍数データのトレンドデータと、前記体温データのトレンドデータとのうち少なくとも2つ以上のトレンドデータが正常範囲から逸脱した場合に、操作者に警告を報知する警告報知手段とを具備することを特徴とする警告報知システム。
【請求項2】
さらに、前記血圧データのトレンドデータ、前記心拍数データのトレンドデータ、および、前記体温データのトレンドデータごとに、前記正常範囲を区分する閾値を個別に設定するための範囲指定手段を具備することを特徴とする請求項1に記載の警告報知システム。
【請求項3】
前記範囲指定手段は、前記トレンドデータごとの閾値を前記被検体の既往歴に応じて可変可能であることを特徴とする請求項2に記載の警告報知システム。
【請求項4】
前記範囲指定手段は、前記トレンドデータごとの閾値を術式に応じて可変可能であることを特徴とする請求項2に記載の警告報知システム。
【請求項5】
前記範囲指定手段は、前記トレンドデータごとの閾値を前記被検体の平常値に対する割合で可変可能であることを特徴とする請求項2に記載の警告報知システム。
【請求項6】
前記トレンドデータ作成手段は、前記トレンドデータの各々を移動平均値により算出することを特徴とする請求項2に記載の警告報知システム。
【請求項7】
前記警告報知手段は、正常範囲を逸脱したトレンドデータの数に応じて段階的に警告を報知することを特徴とする請求項1に記載の警告報知システム。
【請求項8】
前記警告報知手段は、前記警告の段階に応じて警告音の高さを可変することを特徴とする請求項7に記載の警告報知システム。
【請求項9】
前記警告報知手段は、前記警告の段階に応じて警告音の大きさを可変することを特徴とする請求項7に記載の警告報知システム。
【請求項10】
前記警告報知手段は、前記警告を視覚的に表示する表示器を備え、前記警告の段階に応じて前記表示器における表示色を可変することを特徴とする請求項7に記載の警告報知システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、医療分野において被検体から得たバイタルデータに基づき操作者に警告を発するシステムに関する。特にこの発明は、被検体の出血の危険度に応じて警告を発するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては種々の患者モニタリング装置が開発されており、これらの装置により患者や術者の得られるメリットはますます大きくなってきている。手術中の患者の周囲には麻酔のための設備機器や心電図モニタなどが所狭しと配置され、操作者はこれらの装置から出力される画像や音などにより患者の状態変化を知ることができる(例えば特許文献1〜3を参照)。特許文献1には、取得した患者情報に予めしきい値を設定し、患者情報がしきい値を越した際に警告を発生するシステムが開示される。特許文献2には、或る患者情報についてその数値の変化を常時モニタリングし、数値に応じて異なる警告を発生するシステムが開示される。特許文献3には、心電図信号の周波数領域での解析を行うシステムが開示される。
【特許文献1】特表2001−501840号公報
【特許文献2】特開2002−65574号公報
【特許文献3】特開2003−220044号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、近年では単一の患者情報から得られる医学的な意味のほか、複数の情報を組合わせて新たな医学的な知見を得ることが可能となってきている。最近の学会等の報告によれば、手術中の小出血が大出血になる予兆として高度低血圧、心拍数の増加、皮膚温度の低下が同時におこることが確認されている。
【0004】
しかしながら上記したように、既存の警告システムはいずれも個別の患者情報に基づいて警告を発するに留まり、複数の患者情報を組合わせて新たな意味のある情報として警告を発するようなシステムは知られていない。例えば大出血に関しては、血圧データと、心拍数データと、体温データとを組み合わせることにより、その予兆を事前に知ることができる可能性があることが、第15回日本臨床モニター学会総会(2004年4月開催)等にて報告されている。
【0005】
本発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、大出血の予兆を的確に知ることができ、危険度に応じて警告を発することの可能な警告報知システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明の一態様によれば、被検体の血圧データと、心拍数データと、体温データとを取得するデータ取得手段と、前記血圧データと、前記心拍数データと、前記体温データのそれぞれのトレンドデータを作成するトレンドデータ作成手段と、前記血圧データのトレンドデータと、前記心拍数データのトレンドデータと、前記体温データのトレンドデータとのうち少なくとも2つ以上のトレンドデータが正常範囲から逸脱した場合に、操作者に警告を報知する警告報知手段とを具備することを特徴とする警告報知システムが提供される。
【0007】
このような手段を講じることにより、被検体の血圧と、心拍数と、体温のそれぞれのトレンドデータが作成され、これらのデータの組み合わせに基づいて大出血の予兆に関する新たな知見を得ることが可能になる。各トレンドデータにはデフォルトで、あるいは事前のデータ入力により正常範囲が設定され、少なくとも2つのトレンドデータが正常範囲から逸脱すると操作者に警告が報知される。従ってシステムの操作者は大出血の予兆をより的確に、かつ事前に知ることができ、患者および術者の双方にとり大きなメリットを得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、大出血の予兆を的確に知ることができ、危険度に応じて警告を発することの可能な警告報知システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1は、本発明に係わる警告報知システムの一実施の形態を示すブロック図である。図1において、データ入力部1は各種センサや診断装置(図示せず)から取得される、患者に関連するバイタルデータをシステムに入力する。この実施形態では患者の血圧、心拍数、および体温をバイタルデータの一例として採りあげる。血圧は最高血圧および最低血圧を含み、体温は例えば皮膚表面温度である。また心拍数の代わりに心電図や心電音を入力しても良い。この場合には心電図または心電音からR−R間隔を計測し、その時間幅を患者バイタルデータとすると良い。
【0010】
コンソール2は、操作者からの指示や指令などをシステムに入力するための手段であり、例えばキーボードなどを備える。なおタッチパネル型のディスプレイや、ライトペン、マウス等の指示デバイスを用いることもできる。特にコンソール2は、各種患者バイタルデータの正常範囲を指定してシステムに入力するために用いられる。
【0011】
演算処理部3は、コンソール2を介して指定された正常範囲と、データ入力部1から与えられる各種患者バイタルデータを重ね合わせた表示画面を作成する。この表示画面は表示器4に表示される。また演算処理部3は、各種バイタルデータごとにトレンドデータを算出し、各トレンドデータと正常範囲とをリアルタイムで比較して逸脱の有無を監視する。この監視の結果、正常範囲から逸脱したトレンドデータがある場合には、演算処理部3は表示器4、あるいはスピーカ5を介して操作者に警告を報知する。特に演算処理部3は、正常範囲からの逸脱の程度に応じて警告を段階的に発生させ、警告段階に応じてその発生の仕方(表示器4における色分け、あるいはスピーカ5からの警告音の大きさ、高さなど)を変化させる。
【0012】
演算処理部3により処理されたデータ、および新たに作成されたデータは、表示器4やスピーカ5によって、操作者やその他の術者に報知される。記録部6は、データ入力部1から与えられる患者バイタルデータ、あるいは演算処理部3により演算処理された各種データを記録する。特に記録部6は、各バイタルデータごとに正常範囲の閾値を記憶し、演算処理部3による比較に供する。
【0013】
トレンドデータの正常範囲は、表1に示すように術式に応じて指定される。
【表1】


【0014】
表1に示すように、術式のリスク度合いに応じて正常範囲の閾値は変わる。例えば腹部の腫瘍摘出手術などにおいて、腹腔鏡下と開腹下でのリスクに応じて異なる閾値が設定される。表1では腹腔鏡下におけるリスクがより高いことが示される。
【0015】
表1の値は術式ごとに予め決められているデフォルト値であり、記録部6にデータベース化されて格納される。コンソール2を介して術式が指定されると、または病院内の情報システムから術式データが入力されると、その術式に応じた血圧・心拍・体温のデフォルト値が記録部6から読み出される。読み出された値はシステムに設定されるとともに、表示器4に表示される。正常範囲が指定されたのちデータ入力部1による各種患者バイタルデータの取得が開始されると、表示器4において図2に示す表示が開始される。
【0016】
図2は、図1の表示器4の表示内容を示す模式図である。図2に示すように、表示器4には複数の患者バイタルデータが表示され、各データごとに正常範囲と正常を逸脱した範囲(網掛け部分)とが色分けして表示される。それぞれのバイタルデータは時間の経過と共に画面左側から新規のデータが現れ、右側に向かってスクロールしていく。グラフが右端に達するとそのデータの表示は終了し、再び左端からグラフ表示される。
【0017】
図2において、上から順に血圧データ、心電図データ、体温データが表示される。血圧データにおいてはグラフ上が最高血圧の経過を示し、下が最低血圧の経過を示す。図2から判るように、血圧のトレンドデータは徐々に低下する傾向を示しており、現状では最高血圧、最低血圧ともに正常範囲を逸脱している。そこで危険を示す赤の表示色がグラフ右側に表示される。さらにその右欄には現在の最高及び最低血圧値が参考データとして表示される。図2においては最高血圧値として90が表示され、最低血圧として35が表示されている。
【0018】
図2の血圧データにおいては、時系列の血圧データが最高血圧、最低血圧ともに正常範囲外に逸脱したことが示されている。また血圧データの移動平均が演算処理部3により算出され、トレンドとして血圧値が低下する傾向が見られる。演算処理部3は演算データと記録部6の閾値データとの比較によりこのことを認識し、危険度のより高い赤色を表示する。時系列データ、またはトレンドデータの一方が危険領域内にある場合には黄色の表示となるし、時系列データが正常範囲内であれば、緑の表示となる。
【0019】
次に、図2の心電図データにおいて上側は計測された心電図データを時系列的に示し、その直下に、心電図データから取得したR−R間隔を時間に対して曲線状に結んでグラフ化したデータを示す。右欄の数値45はR−R間隔の現在値を示す。心電図データにおいてもR−R間隔が正常範囲を逸脱したことが示され、これに応じて警告の黄色が表示されている。なお血圧データに比べ、R−R間隔の移動平均が低下しだしてからそれほどの時間は経過していないので、危険度のそれほど高くない黄色表示が示される。
【0020】
図2の体温データにおいては、皮膚温度の変化が時系列的に示される。数値36により、現時点における体温は36度であることが示される。ここでは皮膚温度が正常範囲内であり、移動平均による低下傾向も示されていないので、緑色の表示となる。ここでも皮膚温度の瞬時データが正常範囲外に逸脱すれば警告表示は黄色になるし、さらに移動平均のグラフが低下傾向を示せば、警告表示は赤色に変わる。
【0021】
図2においては、血圧、心電図、体温の3種の患者バイタルデータの移動平均を算出し、その低下傾向を加味して危険度を判断している。これに代えて、各時刻における現時点の生データ(時系列データ)と移動平均値とを比較し、生データが移動平均値を下回っている場合に赤の警告表示をするようにしても良い。特に、各表示色に合わせて合成音声をスピーカ5から出力することで危険を術者に告知したり、どの患者バイタルデータが正常範囲外に逸脱したかを併せて告知するようにすれば、術者が術野領域に集中していたとしても危険を容易に術者に伝えることができる。
【0022】
ところでこの実施形態では、血圧のトレンドデータと、心拍数のトレンドデータと、体温のトレンドデータとの相互の関係に着目し、いずれか2つが正常領域から逸脱した場合には別の警告を表示するようにする。例えば図2においては<注意>を示す警告表示が、各バイタルデータの警告とは別に表示される。これは大出血の予兆を警告するものであり、上記3つのバイタルデータの変化から予測し得ることが近年の研究から明らかになっている。図2においては血圧および心拍数のトレンドデータが正常範囲を逸脱しており、これに<注意>の表示が対応付けられる。またこの状態が継続すれば、より危険度の高い<警告>が表示され、その色も例えば黄色から赤へと変化させる。さらにスピーカ5からの報知メッセージも段階的に音量を大きくしたり、メッセージ内容を変えたり、音程を上げたりしても良い。
【0023】
また、血圧と心拍数との組み合わせに限らず、心拍数のトレンドデータと体温のトレンドデータとが正常範囲を逸脱した場合にも、同様の警告を発するようにしても良い。特に、この両データの組み合わせのリスクがより高ければ、最初から<警告>の旨を発するようにしても良い。さらに、血圧、心拍数および体温のトレンドデータが全て正常範囲外に移れば、直ちに<警告>を表示するようにする。
【0024】
このようにこの実施形態では、被検体の血圧、心拍数、及び体温データを個別に計測し、それぞれのトレンドデータを作成する。また、各トレンドデータごとに正常範囲を指定し、常時比較する。そして、3つのトレンドデータのうち少なくとも2つが正常範囲から逸脱した場合には、大出血の予兆を示す警告を発生させる。また、正常範囲から逸脱してからの経過時間や、逸脱の程度、逸脱したデータの組み合わせなどに応じて、警告のレベルを段階的に可変するようにする。
【0025】
このようにしたので、操作者は大出血の予兆の度合いに応じた警告を受け取ることができ、医療行為の継続、中断、緊急対応等の判断を容易に行えるようになる。特に、大出血の予兆をそれ単独で検出可能なセンサは無く、この実施形態により医療関係者に新たな情報を提供することが可能になるので、医療現場においては大きなメリットとなる。以上のことから、大出血の予兆を的確に知ることができるようになり、危険度に応じて警告を発することの可能な警告報知システムを提供することが可能となる。
【0026】
なお本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではない。例えば上記実施形態では患者の血圧、心電図(心拍数)、体温に注目したが、このほか酸素飽和度や体内イオン濃度、あるいは麻酔深度などのバイタルデータを計測し、他のバイタルデータと組み合わせるようにしても良い。
【0027】
また、表1に代えて、各トレンドデータの正常範囲は術式が同じであっても患者の既往歴の有無に応じて可変することもできる。当然ながら、表2に示すように過去に手術歴のある患者においてはリスクが高いことが考えられる。患者ごとの既往歴は電子化されたカルテデータなどのかたちで記録部6に予め記憶されており、手術に際してはそのデータを読み出して正常範囲の設定に用いる。
【表2】


【0028】
さらに、各トレンドデータの閾値は、表3に示すように被検体の平常値に対する割合で指定することも可能である。例えば術式の違いに応じて閾値をパーセンテージで指定することにより、患者ごとの平常値の違いに応じた値を指定することが可能である。なお表(1)〜(3)に示す値は一例であり、患者ごとの個人差に応じた術者の知見により自由に可変設定することができる。
【表3】


【0029】
このほか、手術対象の患者に対して過去に実施された手術のデータがあれば、そのときの術式やバイタルデータの解析値なども参酌してトレンドデータの閾値が設定される。このように各トレンドデータの正常範囲は患者ごとに、術式ごとに、あるいは患者の普段からの状態に基づいて種々に可変設定することができる。
【0030】
さらにこの発明は、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係わる警告報知システムの一実施の形態を示すブロック図。
【図2】図1の表示器4の表示内容を示す模式図。
【符号の説明】
【0032】
1…データ入力部、2…コンソール、3…演算処理部、4…表示器、5…スピーカ、6…記録部
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
【住所又は居所】栃木県大田原市下石上1385番地
【出願日】 平成17年3月25日(2005.3.25)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦

【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲

【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠

【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊

【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司

【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘

【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男

【識別番号】100092196
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 良郎

【公開番号】 特開2006−263384(P2006−263384A)
【公開日】 平成18年10月5日(2006.10.5)
【出願番号】 特願2005−90077(P2005−90077)