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【発明の名称】 脳波計測表示方法及び装置
【発明者】 【氏名】森田 耕司
【課題】浅深度から深深度に至るあらゆる鎮静及び意識レベルに対応した状態の計測・表示・管理を可能にする。

【解決手段】測定脳波から生成された各種脳波情報エントロピーや脳波複雑度の情報より成る指標と血中薬剤濃度と麻酔深度との相関を表す脳波情報1と、測定脳波から第二の脳波状態情報として脳波情報エントロピー、パワースペクトラム、脳波複雑度情報を得る脳波情報処理手段2と、麻酔薬i(i=1,2,……N)に対応して脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標CをΣciにより与える線形結合手段3と、脳波情報、線形結合手段、第二の脳波状態情報から、投与された薬剤濃度の関数として麻酔深度をリアルタイムに判定する判定手段4と、判定結果により薬剤投与条件を制御して最適化する制御手段5と、判定と制御の状態を表示する表示手段6とを有する脳波計測表示装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め測定された脳波から第一の脳波状態情報として生成された脳波情報エントロピー、(パワー)スペクトラムエントロピー、ラムペルチェフ複雑度等のエントロピーや脳波複雑度の情報より成る指標と血中薬剤濃度と麻酔深度(脳波意識レベル)との相関を表す脳波情報を取得し、
リアルタイムに測定されている脳波を複数の既知アルゴリズムにより処理し、第二の脳波状態情報として脳波情報エントロピー、パワースペクトラム、脳波複雑度情報等を取得し、
前記脳波情報を参照して、浅深度から深深度までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の麻酔薬の薬効が存在する範囲を前記指標と関連付けて定義しておき、麻酔薬i(i=1,2,……N)に対応して複数の麻酔薬及び指標ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与え、
前記脳波情報及び前記各ciの一次結合Σciを参照し、前記第二の脳波状態情報から、投与された薬剤濃度の関数として麻酔深度をリアルタイムに判定し、
前記判定の結果により薬剤投与条件を最適化するために制御し、
前記判定と制御の状態を表示する各手順を具備して成る脳波計測表示方法。
【請求項2】
予め測定された脳波から第一の脳波状態情報として生成された脳波情報エントロピー、(パワー)スペクトラムエントロピー、ラムペルチェフ複雑度等のエントロピーや脳波複雑度の情報より成る指標と血中薬剤濃度と麻酔深度(脳波意識レベル)との相関を表す脳波情報と、
リアルタイムに測定されている脳波を複数の既知アルゴリズムにより処理し、第二の脳波状態情報として脳波情報エントロピー、パワースペクトラム、脳波複雑度情報等を得るための脳波情報処理手段と、
前記脳波情報を参照して、浅深度から深深度までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の麻酔薬の薬効が存在する範囲を前記指標と関連付けて定義しておき、麻酔薬i(i=1,2,……N)に対応して複数の麻酔薬及び指標ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与えるためのアルゴリズム線形結合手段と、
前記脳波情報及び前記アルゴリズム線形結合手段を参照し、前記脳波情報処理手段から得られた第二の脳波状態情報から、投与された薬剤濃度の関数として麻酔深度をリアルタイムに判定するための判定手段と、
前記判定手段により得られた判定結果により薬剤投与条件を最適化するための制御手段と、
前記判定と制御の状態を表示するための表示手段と
を具備して成る脳波計測表示装置。
【請求項3】
予め測定された脳波から第一の脳波状態情報として生成された脳波情報エントロピー、(パワー)スペクトラムエントロピー、ラムペルチェフ複雑度等のエントロピーや脳波複雑度の情報より成る指標と脳波意識レベルとの相関を表す脳波情報を取得し、
リアルタイムに測定されている脳波を複数の既知アルゴリズムにより処理し、第二の脳波状態情報として脳波情報エントロピー、パワースペクトラム、脳波複雑度情報等を取得し、
前記脳波情報を参照して、覚醒から睡眠までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の前記指標と関連付けて定義しておき、複数の指標ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与え、
前記脳波情報及び前記各ciの一次結合Σciを参照し、前記第二の脳波状態情報から、鎮静及び意識レベルをリアルタイムに判定し、
前記判定の結果により鎮静及び意識レベルを正常化するために制御し、
前記判定と制御の状態を表示する各手順を具備して成る脳波計測表示方法。
【請求項4】
予め測定された脳波から第一の脳波状態情報として生成された脳波情報エントロピー、(パワー)スペクトラムエントロピー、ラムペルチェフ複雑度等のエントロピーや脳波複雑度の情報より成る指標と脳波意識レベルとの相関を表す脳波情報と、
リアルタイムに測定されている脳波を複数の既知アルゴリズムにより処理し、第二の脳波状態情報として脳波情報エントロピー、パワースペクトラム、脳波複雑度情報等を得るための脳波情報処理手段と、
前記脳波情報を参照して、覚醒から睡眠までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の前記指標と関連付けて定義しておき、複数の指標ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与えるためのアルゴリズム線形結合手段と、
前記脳波情報及び前記アルゴリズム線形結合手段を参照し、前記脳波情報処理手段から得られた第二の脳波状態情報から、鎮静及び意識レベルをリアルタイムに判定するための判定手段と、
前記判定手段により得られた判定結果により鎮静及び意識レベルを正常化するための制御手段と、
前記判定と制御の状態を表示するための表示手段と、
を具備して成る脳波計測表示装置。




【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、脳波情報の計測処理とその処理結果を表示する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
脳波は覚醒状態では極めて多くの情報をランダムに含み、一見、ランダムノイズとして計測され、この状態で脳波から情報を取り出すことは不可能と考えられている。しかし、麻酔等による鎮静状態では極めて限定された情報しか含まないため、脳波は脳の状態を表す指標として採用される。したがって、麻酔深度定量手法として脳波が使用されることが多い。それらの定量手法では、脳波の特徴を種々の解析手法で抽出して定量する。脳波のフーリエ変換によるパワースペクトル、中間周波数(MF)、スペクトルエッジ周波数95(SF95)、デルタパワー(DP)等は古典的解析手法として有名である。
【0003】
これらの脳波解析手法については、非特許文献1に記載されている。脳波の波形解析は従来、脳電位をストリップチャートレコーダにて紙に記録した後、目視観察しその特徴を抽出していた。標準記録速度は、毎秒25mmであるため、1時間ほどの脳波解析では90mに及ぶ記録をつぶさに解析する必要があった。周波数解析は目視による生波形脳波計測から解析脳波計測に移行した最初の手法である。脳波に含まれる規則性を抽出するため、生波形を三角関数の高調波周波数成分(フーリエ変換)に分離(周波数スペクトル)し、その周波数成分の振幅の自乗(パワースペクトル)を求める。これらスペクトルは低域より、デルタ(0.5-3.4Hz)、シータ(3.5-7.4Hz)、サブアルファ(7.5-9.4Hz)、アルファ(9.5-12.4Hz)、ベータ(12.5-30Hz)波と呼ばれる。デルタ領域は鎮静レベルの進行に従い振幅が増加する傾向がみられるため、デルタ領域の電力の絶対値を絶対デルタパワー(delta power)、全周波数域電力に対する比を相対デルタパワーと呼ぶ。一方中間周波数(median frequency)は、これらすべての周波数域に及ぶ振幅分布の中間値を示す周波数である。スぺクトルエッジ周波数95(spectral edge frequency 95:SF95)は、低域から数えて全電力の95%に達したときの周波数である。
【非特許文献1】I. J. Rampil, "A primer for EEG signal processing in anesthesia, Anethesiology, (1998), 89, 4, pp.980 - 1002
【0004】
これらの指標は、鎮静レベルの進行に伴い、デルタパワーは増加、SF95と中間周波数は低下する傾向にある。しかし、対象とする患者群間での分散が大きく、麻酔深度との相関も低いとされ、その臨床使用は減少する傾向にある。古典的解析手法は脳波データを因果律に基づく内部規則性(繰り返しなどのdeterministic law)を持つ連続規則的データと仮定し、その周期の定量を試みるものであった。そこで、バイスペクトラル分析(BIS)ならびに近似エントロピー(APEN)、シャノンの情報エントロピー(SHEN)、スペクトラルエントロピー(SPEEN)等のエントロピーや複雑度(COMPLEX)計測法など、より高度な手法が近年導入されつつある。新たな解析手法としてAnesthesia誌など多くの文献に公開されているアルゴリズムでは、エントロピー、複雑度が注目されている。脳波は種々のランクの規則性を含み、規則性が高い場合は脳波の構成する波形パターンの種類が少なく、規則性が低い場合は脳波を構成する波形パターンの数が多いと考えられる。
【0005】
脳波を構成する波形パターンは熱力学における状態変数(エントロピー)に例えられ、エントロピーと呼ばれるが、脳波の場合は、規則性が高い場合エントロピーは低く、反対に規則性が低い場合はエントロピーが高いとする。脳波情報エントロピーについては前出の非特許文献1に記載されている。規則性と逆の変化を示すため、エントロピーは不規則性とも呼ばれる。不規則性を計算する手法に近似エントロピー(approximate entropy)がある。一方、脳波の振幅を抽出しその振幅毎の頻度(振幅の頻度分布)を求め、それらのシャノン(Shannon)情報エントロピーを求めたものは、振幅エントロピー(amplitude entropy)と呼ばれる。さらに、脳波を周波数解析し、その周波数毎の頻度(周波数の頻度分布)を求め、同様にシャノンの情報エントロピーを求めたものがスペクトルエントロピー(spectral entropy)である。対象とする周波数レンジにより状態エントロピー(state entropy: SE)と反応エントロピー(response entropy: RE)がある。周波数レンジはそれぞれ0.8-32Hz, 0.8-47Hzである。後者は脳波と筋電図を含む。浅鎮静レベル特に覚醒寸前の状況における筋電図の変化は差し迫った覚醒を示すとされる。
【0006】
脳波の規則性の高低は脳波の複雑度の高低と見ることもできる。この場合、規則性が高い場合は複雑度が低い(単純)と見て、逆に規則性が低い場合は、複雑度が高いと見る。脳波の未来の値を現在の値から推定する場合、規則性は重要な手がかりで、規則性が十分に有る場合は容易に(=単純に)推定出来る事からもこれらの関係が理解できる。こうした自己回帰モデル(確定論的過程)では、複雑度がその確定のための尺度となる。複雑度の定量尺度にneural complexity, KL-complexity, ラムペルチェフ複雑度(Lempel-Ziv complexity)がある。特にLempel-Zivのそれは計算法が簡略で臨床現場での使用に便利である。
【0007】
こうした、公開アルゴリズムによる脳波解析は、近年始められたばかりで、麻酔深度との相関結果が一定していないと結論される。しかし、アルゴリズムが公開されていることにより、多くの施設、研究者により検証が可能であるため、今後の主要分析手法になるとみられる。
【0008】
一方、非公開の新たな解析手法によるアルゴリズム(BIS, ARX, PSI, Narcotrend) も脳波計に組み込まれている。例えば米国、Aspect Medical Systems社のBISモニターが良く知られている。この周波数解析では振幅の自乗値であるパワースペクトルを使用するので、スペクトルの位相が失われ、振幅情報のみが得られている。バイスペクトル解析は、逆に位相情報を使用する。脳波は周波数解析により、各部で異なった周波数成分を持つ。今仮に場所Aのa1なる周波数成分と場所Bのb1なる周波数成分の間の位相差をa1とb1のカップリングと呼ぶことにしよう。場所Aにおけるすべての周波数成分a1..aNと、場所Bにおけるすべての周波数成分b1..bNから、それぞれ(a1..aN)×(b1..bN)の組み合わせを取ると、総計N2個の位相差カップリングの集合(バイスペクトル集合)ができる。BIS(bispectral index)はこの集合を単一の0から100までの指標に表したものである。この指標への過程は公開されていない。BISモニター内部では、数多くの臨床データから得られた内部データベース(統計テンプレート)を持ち、測定データをこのテンプレートに参照した後、BISに変換する。その他の非公開アルゴリズムにはARX, PSI, Narcotrendがある。これらの非公開アルゴリズムによる解析手法の概要については、現在のところ実用化の見通しは不明である。
【0009】
上記各非公開アルゴリズムのうち、最も古くから麻酔深度のモニターとして市販されてきたBISモニターでは、PDと中程度の麻酔レベルとの相関が高く、浅麻酔レベルとの相関は低い。また、中乃至深レベルの麻酔深度では、バースト・サプレッション波の出現により、BISに飽和が見られる。また、手術中の亜酸化窒素ガス併用時に、実際の深度レベルより、浅いまたは深い(研究者により分かれる)レベルと見誤る確立が高い。また、高い相関を示す鎮静薬がある一方で、低い相関しか示さない鎮静薬があるなど、特定の鎮静薬のみに選択的な効果を持つのが問題である。
【0010】
一方、近年の研究では、脳波は確率論的不規則過程に由来する信号であると仮定し、これら不規則過程における規則性の多少を論じることを念頭に分析することが多い。これら旧来や近来の解析手法における数学的理論自体は確立され、明確ではあるものの、それらの計算結果が種々のデータ環境でどのような特徴を持つか、何れがどのような環境で優れているかなどは明確ではない。これらは実際の臨床使用において最終的に明確化されると結論されるが、各種麻酔、手術手法や病態などの条件、要因が異なる臨床環境での結果の導出は時間がかかるものと推定される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上述の脳波情報から得られた指標を用いて麻酔深度を計測・表示・管理する従来技術においては、麻酔薬の種類と実現可能な鎮静レベルとの間に多くの制限が存在する。したがって、浅深度から深深度に至る、あらゆる深度の鎮静及び意識レベルに対応して麻酔深度を計測・表示・管理することは不可能であり、鎮静及び意識レベルの制御に支障を来たしている。そこで、こうした制限を除去して浅深度から深深度に至る、あらゆる鎮静及び意識レベルに対応した状態の計測・表示・管理を可能にすることが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明では浅深度から深深度までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の麻酔薬の薬効が存在する範囲を定義しておき、麻酔薬i(i=1,2,……N)に対応して複数の麻酔薬ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与える。こうして得られた論理をファームウエア化することにより、浅深度から深深度に至る任意の鎮静・意識レベルに対応する脳波情報の計測処理と、その処理結果の表示方式及び装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
脳波状態情報として生成された各種エントロピーと脳波の規則性を律する複雑度とによって表された複数の脳波乱雑度に重み付けをして一次結合し、これを指標として鎮静・意識レベルを与えることにより、鎮静・意識レベルを浅深度から深深度まで任意の値に制御できるため、手術時の薬物動態と薬効との関係を広範囲にわたり容易、且つ迅速に指定でき、手術時の麻酔制御の精度を向上できる効果がある。また、多くの臨床における制御を通して得られる脳波解析データの蓄積により、脳波情報の解析精度が向上するので、睡眠時無呼吸症候群のモニターとしても利用できる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに本発明について詳細に説明する。まず、本発明における一次線形理論を展開する前に、脳波の不規則性に対する指標の関係をアルゴリズムによって説明する。最初に、生成条件、生成要因が統一された擬似的脳波信号を作成して各解析手法の特質を評価する。評価用に、次の2種のテストベンチモデルを作成してシミュレーションを行う。脳波の複雑度は近似エントロピー、シャノンの振幅エントロピー、(パワー)スペクトルエントロピー(状態エントロピー、反応エントロピーを含む。)、ラムペルチェフ複雑度、スペクトル端95、中間周波数等を指標とする。
【0015】
(1)確定論的自己回帰モデル(線形モデル)
脳波生成の背景が因果律によって規定される、確定論的(deterministic)生成を仮定した場合には、その生成の過程で不規則過程の割合が増加する計算モデルを作成し、各アルゴリズムによる解析手法を評価する。脳波生成がこのモデルに従う場合、現在の脳波は過去のデータより予測可能であり、予測式が高次の場合には複雑になる。シミュレーションでは、複雑度の増大は乱数列の割合を増加させて対応制御する。
【0016】
(2)確率論的モデル(非線形ダイナミックモデル)
脳波の生成の背景が確率論により規定される非線形ダイナミックス現象とし、脳波としてロジスティック・マップ(logistic map)関数を使用する。構成パラメータを変化させ、収束点(attractor)を2、4…2N乗と分岐(bifurcation)してゆき最終的にカオス(chaos)とした。各収束状態において生成される関数値を脳波として各種のアルゴリズムによる解析手法を試み、得られた指標の値を評価する。脳波の生成がこのモデルに従う場合、初期値や式中の変数値により収束点が変化する。複雑度の増大は収束点を増加させて制御する。
【0017】
シミュレーション方法は次の手法1、手法2によっている。手法1では、最大(100)、最小(0)を繰り返す信号を、完全な繰り返し信号とし、その繰り返し信号に乱数からなる不規則データを0-100%まで、20%刻みで増加させ、それぞれのデータ列を脳波と仮定した。手法1は確定論的自己回帰モデル(線形モデル)に対応する。脳波波形の乱雑度は脳の覚醒を示す指標と考えられる。そこで、近似エントロピー、ラムペルチェフ複雑度、振幅エントロピー、スペクトルエントロピー、スペクトルエッジ95、中間周波数をそれぞれ指標として、乱雑度に対する指標値の関係を線形量としてシミュレーションによりプロットした。図1は手法1によるシミュレーション結果を示すプロットである。その結果、スペクトルエントロピーが最も優れたレスポンスを示した。
【0018】
手法2では、
Xn+1=A*Xn*(1-Xn) (1)
なるロジスティック・マップ関数を使用した。初期値を0.25、係数Aを3.2, 3.48,3.56, 3.568, 3.57, 3.8(収束点:attracter数はそれぞれ、2, 4, 8, 16, 32, Chaos)とした。データ生成数は1000とした。
図2は、手法2によるシミュレーション結果である。図1と同様のシミュレーションを確率論的モデル(非線形ダイナミックモデル)に適用してシミュレーションにより図2にプロットした。指標は図1と同様に、近似エントロピー、ラムペルチェフ複雑度、振幅エントロピー、スペクトルエントロピー、スペクトル端95、中間周波数を採用した。分岐数に対する指標値を非線形ダイナミックスにより求めて図2に示す。図2から振幅エントロピーと近似エントロピーが優れていることが明らかになった。
【0019】
結果は次の通りである。確定論的データ生成過程における乱数付加による不規則度増加模擬データ(方法1)においては、図1に示すようにシャノンの振幅エントロピー値ならびに、ラムペルチェフ複雑度の値が不規則度の上昇と線形増加傾向を示した。一方、近似エントロピーは乱雑度20%においてピークを持つ、非線形性を示した。一方、ロジスティック・マップ関数による生成データでは、図2に示すように近似エントロピーはアトラクター数の増加に伴って増加したが、ラムペルチェフ複雑度はアトラクター数が32まではほぼ一定で、カオス状況で急激に増加した。これらの結果から麻酔深度計測には、良好な線形性と高感度が求められることが判明した。従って、方法1によって生成されるデータが臨床における脳波に近いと仮定すると、振幅エントロピー、ラムペルチェフ複雑度の両方法は有意義である。近似エントロピーは非線形性を示すことより、使用における制限を考慮しなければならない。一方、確率論的データ生成を脳波と仮定した場合、近似エントロピーは線形性、感度ともに優れる。
【0020】
脳波は線形、及び非線形のデータを含むと考えられる。したがって、両データセットに優れた手法が脳波情報の計測処理と、その処理結果の表示方式及び装置として優れていると考えられる。シミュレーションに使用したデータセットの関数が脳波を良好に近似できるとするならば、振幅エントロピー、スペクトルエントロピーが最も優れ、ラムペルチェフ複雑度がこれに次ぐ。以上のシミュレーション結果に基づき、本発明では、振幅エントロピー、スペクトルエントロピー、ラムペルチェフ複雑度に重点を置いて複数のアルゴリズムの公開された指標を採用し、浅深度から深深度までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の麻酔薬の薬効が存在する範囲を定義する。次に、酔薬i(i=1,2,……N)に対応して複数の麻酔薬ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与える。すなわち、
C=Σci =Σxi・ki (i=1,2,……N) (2)
こうして得られた論理をファームウエア化する。これにより、浅深度から深深度に至る任意の鎮静・意識レベルに対応する脳波情報の計測処理と、その処理結果の表示方式及び装置を構成する。
【実施例1】
【0021】
図3は本発明による脳波計測処理表示装置の一実施例を示すブロック図である。図3で参照符号1は予め測定された脳波から第一の脳波状態情報として生成された脳波情報エントロピー、(パワー)スペクトラムエントロピー、ラムペルチェフ複雑度等のエントロピーや脳波複雑度を含む第一の脳波状態情報より成る指標と血中薬剤濃度と麻酔深度(脳波意識レベル)との相関を表す脳波情報、2はリアルタイムに測定されている脳波を複数の既知アルゴリズムにより処理し、第二の脳波状態情報として脳波エントロピー、脳波パワースペクトラム、脳波複雑度情報を得るための脳波情報処理手段、3は前記脳波情報を参照して、浅深度から深深度までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の麻酔薬の薬効が存在する範囲を指標と関連付けて定義しておき、麻酔薬i(i=1,2,……N)と指標とに対応して複数の麻酔薬及び指標ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与えるためのアルゴリズム線形結合手段、4は脳波情報及びアルゴリズム線形結合手段を参照し、脳波情報処理手段から得られた第二の脳波状態情報から、投与された薬剤濃度の関数として麻酔深度をリアルタイムに判定するための判定手段、5は判定手段により得られた判定結果により薬剤投与条件を制御して最適化するための制御手段、6は判定と制御の状態・指示を表示するための表示手段である。
【0022】
脳波情報1を構成する、第一の脳波状態情報として予め生成された脳波情報エントロピー、(パワー)スペクトラムエントロピー、ラムペルチェフ複雑度等のエントロピーや脳波複雑度の情報は本装置を作成する段階で指標として組み込まれるものである。したがって、こうした脳波状態情報は予め多くの披検者を使って生成され、統計量として纏められたものである。脳波エントロピーは、近似エントロピー、振幅エントロピー、スペクトルエントロピー、状態エントロピー、反応エントロピーがあり、麻酔深度レベルの指標として採用される。パワースペクトラムは古典的な方法で、デルタ波、シータ波、サブアルファ波、アルファ波、ベータ波に分かれるが、絶対デルタパワーは鎮静レベルの指標になる。一方、中間周波数、スペクトル端周波数95が指標となり得る。脳波複雑度情報はニューラル・コンプレキシティ、KL−コンプレキシティ、ラムペルチェフ・コンプレキシティなどが含まれる。これらの脳波情報の属性は麻酔深度を含み、データベースの構成要素として登録される。
【0023】
麻酔薬剤にはデスフルラン、セボフルラン、イソフルラン等の吸入麻酔薬、プロポフォル、ミダゾルラム、フェンタニル等の静脈麻酔薬がある。これらの麻酔薬の属性は脳波状態情報と関連付けてデータベースに登録される。
【0024】
近似エントロピー、振幅エントロピー、スペクトルエントロピー、状態エントロピー、反応エントロピー、ニューラル・コンプレキシティ、KL−コンプレキシティ、ラムペルチェフ・コンプレキシティ等の処理アルゴリズムは、前述のようにAnesthesia誌など多くの文献に公開されているので解析をトレースすることができる。脳波情報処理手段2は、測定されている脳波を複数の既知アルゴリズムによりリアルタイムに処理し、第二の脳波状態情報として脳波エントロピー、脳波パワースペクトラム、脳波複雑度情報等を得る。アルゴリズム線形結合手段3は、前述の脳波情報1を参照して、浅深度から深深度までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の麻酔薬の薬効が存在する範囲を指標と関連付けて定義しておき、麻酔薬i(i=1,2,……N)に対応して複数の麻酔薬及び指標ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与える。判定手段4は、前述の脳波情報1に登録されている第一の脳波状態情報及びアルゴリズム線形結合手段3を参照し、前述の脳波情報処理手段2とアルゴリズム線形結合手段3からそれぞれ得られた第二の脳波状態情報とその線形結合から、該当する脳波情報の内容に基づき、投与された薬剤濃度の関数として意識レベルをリアルタイムに判定する。
【0025】
上記判定の結果、現在の麻酔深度や意識レベルが期待した値とは異なる場合、制御手段5は前述の判定手段4により得られた判定結果に応じた薬剤投与条件の制御を行って、麻酔深度を最適化する。この制御はリアルタイムに実施する必要性があり、測定から判定、判定から制御、制御から最適化に至るループは生体系に対して速やかに応答するものでなければならない。
したがって、表示手段6は前述の判定と制御の状態と指示を的確に表示するものである。
【0026】
図3に示す脳波計測処理表示装置は睡眠時無呼吸症候群の発症を検出するモニターとしても構成される。このとき、図3で参照符号1は予め測定された脳波から第一の脳波状態情報として生成された脳波情報エントロピー、(パワー)スペクトラムエントロピー、ラムペルチェフ複雑度等のエントロピーや脳波複雑度を含む第一の脳波状態情報より成る指標と脳波の覚醒・睡眠を示す意識レベルとの相関を表す脳波情報、2はリアルタイムに測定されている脳波を複数の既知アルゴリズムにより処理し、第二の脳波状態情報として脳波エントロピー、脳波パワースペクトラム、脳波複雑度情報を得るための脳波情報処理手段、3は前記脳波情報を参照して、覚醒から睡眠までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で指標と関連付けて定義しておき、複数の指標に対応して複数の指標ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与えるためのアルゴリズム線形結合手段、4は脳波情報及びアルゴリズム線形結合手段を参照し、脳波情報処理手段から得られた第二の脳波状態情報から、投与された薬剤濃度の関数として麻酔深度をリアルタイムに判定するための判定手段、5は判定手段により得られた判定結果により薬剤投与条件を制御して最適化するための制御手段、6は判定と制御の状態・指示を表示するための表示手段である。
【0027】
脳波情報1を構成する、第一の脳波状態情報として予め生成された脳波情報エントロピー、(パワー)スペクトラムエントロピー、ラムペルチェフ複雑度等のエントロピーや脳波複雑度の情報は本装置を作成する段階で指標として組み込まれるものである。したがって、こうした脳波状態情報は予め多くの披検者を使って生成され、統計量として纏められたものである。脳波エントロピーは、近似エントロピー、振幅エントロピー、スペクトルエントロピー、状態エントロピー、反応エントロピーがあり、脳波の意識レベルの指標として採用される。パワースペクトラムは古典的な方法で、デルタ波、シータ波、サブアルファ波、アルファ波、ベータ波に分かれるが、絶対デルタパワーは鎮静レベルの指標になる。一方、中間周波数、スペクトル端周波数95が指標となり得る。脳波複雑度情報はニューラル・コンプレキシティ、KL−コンプレキシティ、ラムペルチェフ・コンプレキシティなどが含まれる。これらの脳波情報の属性はデータベースの構成要素として登録される。
【0028】
近似エントロピー、振幅エントロピー、スペクトルエントロピー、状態エントロピー、反応エントロピー、ニューラル・コンプレキシティ、KL−コンプレキシティ、ラムペルチェフ・コンプレキシティ等の処理アルゴリズムは、前述のようにAnesthesia誌など多くの文献に公開されているので解析をトレースすることができる。脳波情報処理手段2は、測定されている脳波を複数の既知アルゴリズムによりリアルタイムに処理し、第二の脳波状態情報として脳波エントロピー、脳波パワースペクトラム、脳波複雑度情報等を得る。アルゴリズム線形結合手段3は、前述の脳波情報1を参照して、覚醒から睡眠までの鎮静及び意識レベルを、複数の範囲で複数の指標と関連付けて定義しておき、複数の指標ごとに脳波の乱雑度xiと重み係数kiとの積xi・kiにより鎮静・意識レベルの指標ciを与え、指定する鎮静・意識レベルにおける指標Cを各ciの一次結合Σciによって与える。判定手段4は、前述の脳波情報1に登録されている第一の脳波状態情報及びアルゴリズム線形結合手段3を参照し、前述の脳波情報処理手段2とアルゴリズム線形結合手段3からそれぞれ得られた第二の脳波状態情報とその線形結合から、該当する脳波情報の内容に基づき、覚醒および睡眠の意識レベルをリアルタイムに判定する。
【0029】
上記判定の結果、現在の意識レベルが期待した値とは異なる場合、制御手段5は前述の判定手段4により得られた判定結果に応じた制御を行って、呼吸状態を正常化して脳波状態を正常化する。この制御はリアルタイムに実施する必要性があり、測定から判定、判定から制御、制御から正常化に至るループは生体系に対して速やかに応答するものでなければならない。
したがって、表示手段6は前述の判定と制御の状態と指示を的確に表示するものである。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明による脳波計測表示装置は外科手術現場はもとより、病気や怪我による意識レベルの低下、あるいは睡眠時無呼吸症候群等の意識レベルモニター、その他の健康管理機器として用途が広い。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】乱雑度に対する指標値の関係を線形量としてシミュレーションした結果を示すプロット
【図2】分岐数に対する指標値を非線形ダイナミックスによりシミュレーションした結果。
【図3】本発明による脳波計測表示装置の一実施例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0032】
1 脳波情報1
2 脳波情報処理手段
3 アルゴリズム線形結合手段
4 判定手段
5 制御手段
6 表示手段


【出願人】 【識別番号】505098959
【氏名又は名称】有限会社池田電子工学研究所
【出願日】 平成17年3月17日(2005.3.17)
【代理人】 【識別番号】100097098
【弁理士】
【氏名又は名称】吉原 達治

【公開番号】 特開2006−255134(P2006−255134A)
【公開日】 平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願番号】 特願2005−76285(P2005−76285)