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【発明の名称】 超音波診断装置
【発明者】 【氏名】鷲見 篤司
【住所又は居所】栃木県大田原市下石上1385番地 東芝メディカルシステムズ株式会社本社内

【要約】 【課題】超音波診断装置において、簡易かつ低コストの装置構成において、A/D変換回路が飽和する確率を低減させ、超音波断層像の画質劣化やノイズ発生を抑制すること。

【解決手段】超音波診断装置10は、断層像生成のための超音波送信を行なう前に、超音波のダミー送信を行なうように制御する制御手段32と、ダミー送信によって得られた増幅率設定用の受信信号OQの強度に基づいて、断層像生成用の受信信号OPに対する増幅率を設定する増幅率設定手段29と、断層像生成用の受信信号OPを、増幅率設定手段で設定した増幅率で増幅する前置増幅手段22と、この前置増幅手段22の出力信号をデジタル変換するデジタル変換手段23と、このデジタル変換手段23からの出力信号に対して所定の処理を行なう信号処理手段と、この信号処理手段からの出力信号を基に、断層像を表示する表示手段28とを備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に対して超音波を送信する一方、前記被検体の内部で反射した超音波反射波を受信信号に変換する送受信手段と、
前記送受信手段に対し、断層像生成のための超音波送信を行なう前に、超音波のダミー送信を行なうように制御する制御手段と、
前記ダミー送信によって得られた増幅率設定用の受信信号の強度に基づいて、前記断層像生成のための超音波送信によって得られる断層像生成用の受信信号に対する増幅率を設定する増幅率設定手段と、
前記断層像生成用の受信信号を、前記増幅率設定手段で設定した増幅率で増幅する断層像生成用増幅手段と、
前記断層像生成用増幅手段の出力信号をデジタル変換する断層像生成用デジタル変換手段と、
前記断層像生成用デジタル変換手段からの出力信号に対して所定の処理を行なう信号処理手段と、
前記信号処理手段からの出力信号を基に、前記断層像を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
前記増幅率設定用の受信信号を仮増幅率で増幅する増幅率設定用増幅手段と、この増幅率設定用増幅手段の出力信号をデジタル変換して前記増幅率設定手段に出力する増幅率設定用デジタル変換手段とを備え、前記増幅率設定手段は、前記仮増幅率を、前記増幅率設定用の受信信号の増幅によって前記増幅率設定用デジタル変換手段が飽和しないように設定することを特徴とする請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記増幅率設定用デジタル変換手段が飽和していない場合、前記増幅率設定手段は、前記増幅率設定用の受信信号の最大振幅レベルとターゲットとする振幅レベルとの差に対応するオフセットの増幅率OGを演算し、前記増幅率AGPを、前記仮増幅率AGQと前記オフセットの増幅率OGとから、
[数1]
AGP=AGQ+OG
によって設定することを特徴とする請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
複数回の超音波送信でn本のラスタ情報を生成し、これらラスタ情報から構成される第mフレームの超音波断層像を生成する超音波診断装置において、
被検体に対して超音波を送信する一方、前記被検体の内部で反射した超音波反射波を受信信号に変換する送受信手段と、
前記送受信手段に対し、第mフレーム像を構成するn本目のラスタ情報生成のための超音波送信を行なう前に、超音波のダミー送信を行なうように制御する制御手段と、
前記ダミー送信によって得られた増幅率設定用の受信信号の強度に基づいて、前記ラスタ情報生成のための超音波送信によって得られるラスタ情報生成用の受信信号[m,n]に対する増幅率[m,n]を設定する増幅率設定手段と、
前記ラスタ情報生成用の受信信号[m,n]を、前記増幅率設定手段で設定した増幅率[m,n]で増幅するラスタ情報生成用増幅手段と、
前記ラスタ情報生成用増幅手段の出力信号をデジタル変換するラスタ情報生成用デジタル変換手段と、
前記ラスタ情報生成用デジタル変換手段からの出力信号に対して所定の処理を行なう信号処理手段と、
前記信号処理手段からの出力信号を基に、前記ラスタ情報から構成される断層像を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記第mフレーム像を構成するラスタ情報生成のための超音波送信のうちの一部を行なう前のみに、前記ダミー送信を行なうように制御することを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記制御手段は、フレーム像毎に、前記ダミー送信を行なうラスタが変化するように制御することを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
前記増幅率設定用の受信信号を前記仮増幅率で増幅する増幅率設定用増幅手段と、この増幅率設定用増幅手段の出力信号をデジタル変換して前記増幅率設定手段に出力する増幅率設定用デジタル変換手段とを備え、前記増幅率設定手段は、前記仮増幅率を、前記増幅率設定用の受信信号の増幅によって前記増幅率設定用デジタル変換手段が飽和しないように設定することを特徴とする請求項4に記載の超音波診断装置。
【請求項8】
前記増幅率設定手段は、前記仮増幅率を、n−1本目のラスタ情報生成時に使用した増幅率とは異なる値にて設定することを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【請求項9】
前記増幅率設定手段は、前記仮増幅率AGQを、n−1本目のラスタ情報生成時に使用した増幅率AGP[m,n−1]と補正係数α(α<1)とから、
[数2]
AGQ=AGP[m,n−1]×α
によって設定することを特徴とする請求項7に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波断層像を生成して表示する超音波診断装置に係り、特に、超音波断層像の画質を改善できる超音波診断装置に関する。
【0002】
である。
【背景技術】
【0003】
検査部位組織を超音波断層像(Bモード像)として表示する超音波診断装置において、超音波プローブで受信した微小信号は前置増幅手段であるプリアンプによって適当な増幅率にて増幅される。プリアンプで増幅率が過小であるとS/N低下を招く一方、増幅率が過大であると、プリアンプの出力信号がA/D変換回路の飽和レベルを超過してしまい、画像の分解能の劣化を招く恐れがある。よって、検査部位内の高品質な画質を提供するためには、プリアンプにおいて最適な増幅率を設定することが重要である。
【0004】
プリアンプで増幅された信号の振幅を、A/D変換回路の飽和レベル以下に抑える方法として、A/D変換回路の出力信号に対して遅延加算及び絶対値演算を行なった出力信号の振幅から飽和レベル超過の有無を判定し、飽和レベル超過と判定された場合に所定のレベルまで増幅率を下げる方法がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
また、信号のA/D変換回路における飽和レベル超過によって発生する高調波のレベルから飽和レベル超過の有無を検出し、飽和レベル超過が検出された場合は、信号が飽和レベル以下になるまで送信パワー又は増幅率の設定を下げる方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
さらに、アナログ的に可変である増幅率で受信信号を増幅し、A/D変換回路出力後の各素子の受信信号の振幅レベルを検出する。この受信信号の振幅レベルが最大振幅又は最大振幅の直前に達した場合は増幅率を固定し、残りはデジタル的に可変である後置増幅率で受信信号を増幅する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0007】
加えて、複数のプリアンプを用意して、段階的に増幅率を与えた信号をそれぞれA/D変換し、A/D変換回路で飽和レベルを超過しない増幅率設定の出力信号で画像を構成する方法がある(例えば、特許文献4参照。)。
【0008】
また、受信した検査部位組織エコーの振幅の平均値や最大値といった情報から、ターゲットとする階調レベルに表示するためにアダプティブに増幅率を設定する方法がある(例えば、特許文献5参照。)。
【特許文献1】特開平10−118066号公報
【特許文献2】特開平11−56846号公報
【特許文献3】特開平11−76232号公報
【特許文献4】特開平2−246943号公報
【特許文献5】米国特許第6398733号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び特許文献2に係る発明は、プリアンプの出力信号の振幅が飽和レベルを超過したか否かをリアルタイムで検出することができる。しかし、プリアンプの出力信号がA/D変換回路の飽和レベル超過と判定された場合には、どの程度増幅率又は送信パワーを下げれば飽和レベル超過が回避できるかという情報は得られない。よって、特許文献1及び特許文献2の技術によってプリアンプにおける最適な増幅率を設定するためには、複数回のフィードバックが必要となる。
【0010】
例えば、増幅率を適当に下げてA/D変換回路における信号の飽和レベル超過の有無を再判定した結果、再びA/D変換回路で飽和レベル超過と判定した場合は、さらに増幅率を下げて再判定することになる。一方、信号が飽和レベルを超過していないと判定した場合にも、振幅が下がりすぎているとS/N劣化を招くため、飽和レベルを超過しないレベルで、プリアンプにおける最大の増幅率を求めなければならない。
【0011】
このように、最適な増幅率を求めるためにフィードバックを繰返していると、飽和で劣化したりS/N劣化した画像がその間出力したりするだけでなく、スキャンの対象となる検査部位が動いてしまい、フィードバックが信号レベルの変化に追従できなくなる恐れがある。
【0012】
同様に、特許文献3に係る発明によると、プリアンプの出力信号の振幅が最大振幅または最大振幅の直前に達するまで増幅率を可変させる必要がある。よって、必ずしも短時間にプリアンプにおける最適な増幅率が設定されない。
【0013】
また、特許文献4に係る発明によると、プローブ素子1素子の受信信号のために複数のプリアンプ回路およびA/D変換回路が必要となり、回路規模が大きくなりコストがかかるという問題がある。
【0014】
さらに、特許文献5に係る発明によると、検査部位組織エコーの平均値や最大値を求めてから目標の輝度レベルになるように増幅率補正を行なうが、プリアンプの出力信号がA/D変換回路の飽和レベルを超過しているかどうかはわからないため、A/D変換回路の信号飽和レベル超過を回避することは困難である。
【0015】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、簡易かつ低コストの装置構成において、A/D変換回路が飽和する確率を低減させ、超音波断層像の画質劣化やノイズ発生の抑制を実現できる超音波診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る超音波診断装置は、上述した課題を解決するために、被検体に対して超音波を送信する一方、前記被検体の内部で反射した超音波反射波を受信信号に変換する送受信手段と、前記送受信手段に対し、断層像生成のための超音波送信を行なう前に、超音波のダミー送信を行なうように制御する制御手段と、前記ダミー送信によって得られた増幅率設定用の受信信号の強度に基づいて、前記断層像生成のための超音波送信によって得られる断層像生成用の受信信号に対する増幅率を設定する増幅率設定手段と、前記断層像生成用の受信信号を、前記増幅率設定手段で設定した増幅率で増幅する断層像生成用増幅手段と、前記断層像生成用増幅手段の出力信号をデジタル変換する断層像生成用デジタル変換手段と、前記断層像生成用デジタル変換手段からの出力信号に対して所定の処理を行なう信号処理手段と、前記信号処理手段からの出力信号を基に、前記断層像を表示する表示手段とを備えた。
【0017】
また、本発明に係る超音波診断装置は、複数回の超音波送信でn本のラスタ情報を生成し、これらラスタ情報から構成される第mフレームの超音波断層像を生成する超音波診断装置において、被検体に対して超音波を送信する一方、前記被検体の内部で反射した超音波反射波を受信信号に変換する送受信手段と、前記送受信手段に対し、第mフレーム像を構成するn本目のラスタ情報生成のための超音波送信を行なう前に、超音波のダミー送信を行なうように制御する制御手段と、前記ダミー送信によって得られた増幅率設定用の受信信号の強度に基づいて、前記ラスタ情報生成のための超音波送信によって得られるラスタ情報生成用の受信信号[m,n]に対する増幅率[m,n]を設定する増幅率設定手段と、前記ラスタ情報生成用の受信信号[m,n]を、前記増幅率設定手段で設定した増幅率[m,n]で増幅するラスタ情報生成用増幅手段と、前記ラスタ情報生成用増幅手段の出力信号をデジタル変換するラスタ情報生成用デジタル変換手段と、前記ラスタ情報生成用デジタル変換手段からの出力信号に対して所定の処理を行なう信号処理手段と、前記信号処理手段からの出力信号を基に、前記ラスタ情報から構成される断層像を表示する表示手段とを備えた。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る超音波診断装置によると、簡易かつ低コストの装置構成において、A/D変換回路が飽和する確率を低減でき、超音波断層像の画質劣化やノイズ発生の抑制を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明に係る超音波診断装置の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る超音波診断装置の実施の形態を示す概略図である。
【0021】
図1は、超音波を利用して被検体内の診断部位についての超音波断層像(Bモード像)を生成して表示する超音波診断装置10を示す。この超音波診断装置10には、送受信手段としての超音波プローブ(以下、単に「プローブ」と略す。)11、送信回路20及び受信回路21と、増幅手段としての前置増幅手段22と、デジタル変換手段23と、信号処理手段としてのデジタル遅延手段24、加算回路25、後置増幅回路26及び画像処理回路27と、表示手段28と、増幅率設定手段29と、前置増幅率制御信号発生手段30と、後置増幅率制御信号発生手段31と、制御手段32と、操作手段としての操作パネル33とが備えられる。
【0022】
プローブ11は、一次元に配列された複数個(L個)の超音波振動子をその先端部分に有する。被検体に対してプローブ11の先端部分を接触させ、被検体に超音波(送信超音波)を送信する一方、被検体の内部で反射した超音波反射波(受信超音波)を受信信号に変換する。また、プローブ11の超音波振動子は、多芯ケーブルを介して送信回路20及び受信回路21に接続されている。
【0023】
送信回路20には、図示しないが、レートパルス発生器、送信遅延回路及びパルサが具備される。レートパルス発生器は、被検体の所定方向に超音波を放射するための駆動パルスの繰返し周期(レート周期)を決定するレートパルスを発生する。このレートパルスは、プローブ11に超音波送信を行なわせる駆動パルスを定まったレートに割り当てたものである。レートパルス発生器は、レートパルスを送信遅延回路に供給する。
【0024】
図2は、送信回路20で発生されるレートパルスの一例を示す図である。このレートパルスは、断層像生成用の駆動パルスPの繰返しからなる駆動パルスPk(駆動パルスP1,P2,…)によって形成される。
【0025】
図1に示された送信回路20の送信遅延回路は、送信に使用される超音波振動子と同数のLチャンネルの独立な遅延回路から構成され、超音波を所定の深さに収束するための収束用遅延時間と、超音波を所定方向に送信するための偏向用遅延時間とを、受信したレートパルスに与え、このレートパルスをパルサに供給する。このパルサは、送信遅延回路と同数のLチャンネルの独立な駆動回路を有しており、プローブ11に有する超音波振動子を駆動し、被検体内に超音波を放射する。Lチャンネルのパルサの各々は、送信遅延回路からの出力信号によって正極性の駆動パルスを発生させる正極性パルサと、負極性の駆動パルスを発生させる負極性パルサとが対になって構成される。この負極性パルサの駆動波形は、正極性パルサの駆動波形を反転させたものとなっている。
【0026】
プローブ11の超音波振動子は電気音響変換素子であり、超音波送信時には送信回路20からの駆動パルスを超音波に変換する。一方、超音波振動子は、超音波受信時には超音波反射波を電気的な微小信号に変換し、その微小信号を受信回路21で順次受信する。受信回路21は、微小信号を処理して検査部位内の組織の情報を抽出する。
【0027】
前置増幅手段22として、プローブ11に有する超音波振動子と同数のLチャンネルの独立なプリアンプ22−L(22−1,22−2,…)が設けられている。プリアンプ22−Lは、図2に示された駆動パルスPkに従った超音波送信によって受信回路21が受信する受信信号(反射エコー信号)OPkを、前置増幅率制御信号発生手段30によって与えられる前置増幅率AGPにてそれぞれ増幅する。
【0028】
デジタル変換手段23として、プリアンプ22−Lのそれぞれに対応するLチャンネルの独立なA/D変換回路23−L(23−1,23−2,…)が設けられている。A/D変換回路23−Lは、プリアンプ22−Lからの出力信号をそれぞれデジタル信号に変換する。
【0029】
信号処理手段としてのデジタル遅延手段24として、A/D変換回路23−Lのそれぞれに対応するLチャンネルの独立なデジタル遅延回路24−L(24−1,24−2,…)が設けられている。デジタル遅延回路24−Lは、A/D変換回路23−Lからの出力信号に所定の遅延を与える。
【0030】
信号処理手段としての加算回路25は、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号を整相加算(所定方向から得られた受信信号を位相を合わせて加算)し、受信フォーカスをかける。
【0031】
信号処理手段としての後置増幅回路26は、加算回路25からの出力信号を、後置増幅率制御信号発生手段31によって与えられる後置増幅率DGにて増幅する。
【0032】
信号処理手段としての画像処理回路27は、後置増幅回路26からの出力信号に対して、例えば、包絡線検波やlog圧縮等の信号処理を行なうようになっている。
【0033】
表示手段28は、信号処理回路27からの出力信号を基に、時間的に連続した生体組織の断層像である複数枚のフレーム像を表示する。表示手段28には、画像データを一旦保存した後、画像データを標準TV信号(TVフォーマット)に変換するDSC(Digital Scan Converter)36と、超音波断層像を表示するCRT(Cathode Ray tube)37とが具備される。
【0034】
操作パネル33は、超音波断層像の前置増幅率(アナログゲイン)AGと後置増幅率(デジタルゲイン)DGとを総じた総計増幅率(トータルゲイン)TG等をオペレータが入力操作するものである。
【0035】
ここで、制御手段32から送信回路20に、断層像生成のための超音波送信を行なう前に、断層像生成のための超音波送信によって得られる断層像生成用の受信信号OPに対する前置増幅率を設定するための超音波のダミー送信を行なうように制御信号(以下、「ダミー送信制御信号」という。)を送信する。このダミー送信制御信号を送信した場合、送信回路20のレートパルス発生器は、断層像生成用の駆動パルスPkに先立って増幅率設定用のダミー駆動パルスQを付加し、それらパルスを定まったレートに割り当てたレートパルスを発生する。レートパルス発生器は、レートパルスを送信遅延回路に供給する。
【0036】
図3は、送信回路20で発生され、駆動パルスPkに先立ってダミー駆動パルスQを付加したレートパルスの一例を示す図である。図3に示されたレートパルスでは、断層像生成用の駆動パルスP3(k=3)に先立ってダミー駆動パルスQを付加し、それらパルスを定まったレートに割り当てた例を示す。なお、図3に示されたレートパルスでは、便宜上、ダミー駆動パルスQを破線で示す。
【0037】
ダミー送信制御信号が送信されると、図1に示された制御手段32から増幅率設定手段29及び前置増幅率制御信号発生手段30に、ダミー送信制御信号を識別する識別信号を送信する。増幅率設定手段29は、超音波のダミー送信によって得られる増幅率設定用の受信信号OQに対する仮前置増幅率AGQを、前置増幅率AGPとは異なる値にて設定する。仮前置増幅率AGQは、例えば、前置増幅率AGPよりも小さい値とする。前置増幅率制御信号発生手段30は、増幅率設定手段29で設定した仮前置増幅率AGQを前置増幅手段22に与える。プリアンプ22−Lは、図3に示されたダミー駆動パルスQに従った超音波のダミー送信により受信回路21で受信したチャンネルL毎の受信信号OQを、前置増幅率制御信号発生手段30によって与えられる仮前置増幅率AGQにてそれぞれ増幅する。
【0038】
制御手段32から増幅率設定手段29に、ダミー送信制御信号を識別する識別信号を送信した場合、増幅率設定手段29は、デジタル遅延回路24−L(又はデジタル変換回路23−L)からの出力信号の強度に基づいて、前置増幅率AGPを設定する。この前置増幅率AGPは、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号の振幅がA/D変換回路23−Lの飽和レベルを超過しないように設定される。また、設定された前置増幅率AGPと総計増幅率TGとから、加算回路25からの出力信号を増幅する後置増幅率DGを設定する。
【0039】
プリアンプ22−Lは、ダミー駆動パルスQの次のタイミング以降に形成された駆動パルスPk(図3では駆動パルスP3,P4,…)に従った超音波送信によって受信回路21で受信した受信信号OPkを、上記により設定した前置増幅率AGPにてそれぞれ増幅する。後置増幅回路26は、加算回路25からの出力信号を、上記により設定した後置増幅率DGにて増幅する。
【0040】
なお、図1に示した超音波診断装置10では、前置増幅手段22に、断層像生成用の受信信号OPを増幅する機能と、増幅率設定用の受信信号OQを増幅する機能とを兼用させ、また、デジタル変換手段23に、断層像生成用の受信信号OPを増幅した信号をデジタル変換する機能と、増幅率設定用の受信信号OQを増幅した信号をデジタル変換する機能とを兼用させた。しかし、この場合に限定されるものではなく、断層像生成用の増幅手段と増幅率設定用の増幅手段とをそれぞれ設け、また、断層像生成用のデジタル変換手段と増幅率設定用のデジタル変換手段とをそれぞれ設ける構成としてもよい。
【0041】
続けて、超音波診断装置10を用いた超音波診断方法について、図4に示されるフローチャートにて説明する。ここでは、図3に示されたレートパルスを形成するダミー駆動パルスQに従った超音波のダミー送信による動作と、駆動パルスP3に従った超音波送信による動作について説明する。
【0042】
図1に示された超音波診断装置10の制御手段32は、ダミー送信制御信号を送信回路20のレートパルス発生器に送信して、駆動パルスP3に従った断層像生成のための超音波送信を行なう前に、ダミー駆動パルスQに従った増幅率の設定を行なうための超音波のダミー送信を行なうように制御する(ステップS1)。このレートパルス発生器では、駆動パルスP3に先立って増幅率設定用のダミー駆動パルスQを付加し、それらパルスを定まったレートに割り当てたレートパルスが発生される。このレートパルスがレートパルス発生器から送信遅延回路に供給される。
【0043】
送信回路20の送信遅延回路では、検査部位内に送信される超音波を所定の深さに収束する収束用遅延時間と、超音波を所定方向に送信する偏向用遅延時間とが、受信したレートパルスに与えられる。パルサでは、収束用遅延時間と偏向用遅延時間とが与えられたレートパルスによってプローブ11の超音波振動子を駆動させ、プローブ11から検査部位内に超音波が送信される。
【0044】
プローブ11の超音波振動子では、検査部位で反射した超音波反射波が順次受信され、その超音波反射波が電気的な微小信号に変換される。この微小信号は、受信回路21によって順次受信されて信号処理される。ダミー駆動パルスQに従った超音波の増幅率設定用の受信信号OQと、駆動パルスP3に従った断層像生成用の受信信号OP3とが、受信回路21からプリアンプ22−Lに順次送信される(ステップS2)。
【0045】
ステップS1にてダミー送信制御信号が送信されると、制御手段32から増幅率設定手段29及び前置増幅率制御信号発生手段30に、ダミー送信制御信号を識別する識別信号が送信される。増幅率設定手段29では、超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQに対する仮前置増幅率AGQが、前置増幅率AGPとは異なる値にて設定される。この仮前置増幅率AGQは、例えば、前置増幅率AGPよりも小さい値とする。前置増幅率制御信号発生手段30は、増幅率設定手段29で設定した仮前置増幅率AGQを前置増幅手段22に与える。ここで、仮前置増幅率AGQは、前置増幅率AGPと第1補正係数α(α<1)から、
[数3]
AGQ=AGP×α …(1)
によって設定される。
【0046】
プリアンプ22−Lでは、ステップS2にて送信されたダミー駆動パルスQに従った増幅率設定用の受信信号OQが、式(1)で設定した仮前置増幅率AGQにてそれぞれ増幅される(ステップS3)。
【0047】
プリアンプ22−Lからの出力信号はA/D変換回路23−Lでデジタル変換され、このA/D変換回路23−Lからの出力信号に対してデジタル遅延回路24−Lで遅延処理が行なわれ、このデジタル遅延回路24−Lからの出力信号は増幅率設定手段29に入力される。
【0048】
増幅率設定手段29では、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号の強度に基づいて、断層像生成のための超音波送信によって得られた受信信号OPに対する増幅率(前置増幅率AGP及び後置増幅率DG)が設定される(ステップS4)。まず、増幅率設定手段29では、増幅率設定用の受信信号OQであるデジタル遅延回路24−Lの出力信号の最大振幅レベルがターゲットとする振幅レベル(ターゲットレベル)に達しておらず、A/D変換回路23−Lの全チャンネルが飽和していない場合、増幅率設定手段29では、デジタル遅延回路24−Lの出力信号の最大振幅レベルとターゲットとする振幅レベルとの差に対応するオフセットの増幅率OGが演算される。増幅率設定手段29では、前置増幅率AGPが、式(1)で設定した仮前置増幅率AGQとオフセットの増幅率OGとから、
[数4]
AGP=AGQ+OG …(2)
によって設定される。例えば、デジタル遅延回路24−Lの出力信号のデジタルbit数が12bitであれば、最大出力信号がFFHであるので、その約90%に当たるE60Hをターゲットレベルとする。
【0049】
一方、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号のうち1チャンネルでも最大振幅レベルがターゲットレベルを超過してA/D変換回路23−Lのいずれかが飽和している場合、増幅率設定手段29では、前置増幅率AGPが、式(1)で設定した仮前置増幅率AGQと第2補正係数β(β≦1)とから、
[数5]
AGP=AGQ×β …(3)
によって設定される。よって、A/D変換回路23−Lのいずれかが飽和している場合でも、前置増幅率AGPをある程度下げることで、断層像表示時に信号が飽和する確率を下げることができる。
【0050】
次いで、後置増幅率DGは、式(2)又は(3)にて設定した前置増幅率AGPと総計増幅率TGとから、
[数6]
DG=TG−AGP …(4)
によって設定される。
【0051】
次いで、前置増幅率制御信号発生手段30は、ステップS4にて式(2)又は(3)で設定した前置増幅率AGPを前置増幅手段22に与える。プリアンプ22−Lでは、ステップS2にて送信された駆動パルスP3に従った超音波送信によって得られた受信信号OP3が、ステップS4にて設定された前置増幅率AGPにてそれぞれ増幅される(ステップS5)。
【0052】
プリアンプ22−Lからの出力信号はA/D変換回路23−Lでデジタル変換され、このA/D変換回路23−Lからの出力信号に対してデジタル遅延回路24−Lで遅延処理が行なわれ、このデジタル遅延回路24−Lからの出力信号は加算回路25に入力される。
【0053】
次いで、加算回路25では、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号が整相加算されて受信フォーカスがかけられる。加算回路25から出力信号は後置増幅回路26で、ステップS4にて式(4)で設定されて後置増幅率制御信号発生手段31で与えられる後置増幅率DGにて増幅される(ステップS6)。後置増幅回路26からの出力信号に対して、画像処理回路27で、包絡線検波やlog圧縮等の信号処理が行なわれる。画像処理回路27からの出力信号は表示手段28のDSC36に入力され、標準TV走査信号に変換される。この標準TV走査信号から被検体の検査部位組織を表す超音波断層像がCRT37に表示される(ステップS7)。
【0054】
超音波診断装置10及び超音波診断方法によると、ダミー駆動パルスQに従った超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQを仮前置増幅率AGQで増幅した信号を用い、式(2)又は(3)によって前置増幅率AGPを設定する。設定された前置増幅率AGPで受信信号OPkを増幅すると、A/D変換回路23−Lが飽和する確率を低減でき、超音波断層像の画質劣化やノイズ発生の抑制を実現できる。また、増幅率設定用のダミー駆動信号Qの付加を増やしダミー送信を行なえば行なう程、A/D変換回路23−Lが飽和する確率を低減させることができる。
【0055】
続けて、超音波診断装置10を用いた超音波診断方法の第1変形例について、図5に示されるフローチャートにて説明する。ここでは、n(n=1,2,…,N)回の超音波送信で、n本のラスタの画像情報(ラスタ情報)を生成し、これらラスタ情報から第m(m=1,2,…,M)フレームの超音波断層像を生成する場合について説明する。
【0056】
図1に示された超音波診断装置10の制御手段32は、ダミー送信制御信号を送信回路20のレートパルス発生器に送信して、第mフレーム像を構成するn本全てのラスタ情報を生成するための超音波送信をそれぞれ行なう前に、増幅率の設定を行なうための超音波のダミー送信を行なうように制御する(ステップS11)。このレートパルス発生器では、第mフレーム像を構成するn本目のラスタ情報生成のための駆動パルスP[m,n]に先立って増幅率設定用のダミー駆動パルスQ[m,n]を付加し、それらパルスを定まったレートに割り当てたレートパルスが発生される。このレートパルスがレートパルス発生器から送信遅延回路に供給される。
【0057】
図6は、送信回路20で発生され、全ての駆動パルスP[m,n]に先立ってダミー駆動パルスQ[m,n]を付加して発生したレートパルスの一例を示す図である。
【0058】
図1に示された送信回路20の送信遅延回路では、検査部位内に送信される超音波を所定の深さに収束する収束用遅延時間と、超音波を所定方向に送信する偏向用遅延時間とが、受信したレートパルスに与えられる。このパルサでは、収束用遅延時間と偏向用遅延時間とが与えられたレートパルスによってプローブ11の超音波振動子を駆動させ、プローブ11から検査部位内に超音波が送信される。
【0059】
プローブ11の超音波振動子では、検査部位で反射した超音波反射波が順次受信され、その超音波反射波が電気的な微小信号に変換される。この微小信号は、受信回路21によって順次受信されて信号処理される。ダミー駆動パルスQ[m,n]に従った超音波の増幅率設定用の受信信号OQ[m,n]と、駆動パルスP[m,n]に従ったラスタ情報生成用の受信信号OP[m,n]とが、受信回路21からプリアンプ22−Lに繰返し送信される(ステップS12)。具体的には、ダミー駆動パルスQ[m,1]、駆動パルスP[m,1]、ダミー駆動パルスQ[m,2]、駆動パルスP[m,2]、…によって得られた受信信号OQ[m,1]、OP[m,1]、OQ[m,2]、OP[m,2]、…が順次送信される。
【0060】
ステップS11にてダミー送信制御信号が送信されると、制御手段32から増幅率設定手段29及び前置増幅率制御信号発生手段30に、ダミー送信制御信号を識別する識別信号が送信される。増幅率設定手段29では、超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQ[m,n]に対する仮前置増幅率AGQ[m,n]が、n−1本目のラスタ情報生成時に使用した前置増幅率AGP[m,n−1]とは異なる値にて設定される。仮前置増幅率AGQ[m,n]は、例えば、前置増幅率AGP[m,n−1]よりも小さい値とする。前置増幅率制御信号発生手段30は、増幅率設定手段29で設定した仮前置増幅率AGQ[m,n]を前置増幅手段22に与える。ここで、仮前置増幅率AGQ[m,n]は、前置増幅率AGP[m,n−1]と第1補正係数α(α<1)から、
[数7]
AGQ[m,n]=AGP[m,n−1]×α …(5)
によって設定される。なお、式(5)に用いた前置増幅率AGP[m,n−1]は2≦n≦Nの場合であり、n=1の場合にはデフォルトで設定された値とする。
【0061】
プリアンプ22−Lでは、ステップS12にて送信されたダミー駆動パルスQ[m,n]に従った増幅率設定用の受信信号OQ[m,n]が、式(5)で設定した仮前置増幅率AGQ[m,n]にてそれぞれ増幅される(ステップS13)。
【0062】
プリアンプ22−Lからの出力信号はA/D変換回路23−Lでデジタル変換され、このA/D変換回路23−Lからの出力信号に対してデジタル遅延回路24−Lで遅延処理が行なわれ、このデジタル遅延回路24−Lからの出力信号は増幅率設定手段29に入力される。
【0063】
増幅率設定手段29では、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号の強度に基づいて、断層像生成のための超音波送信によって得られた受信信号OPに対する増幅率(前置増幅率AGP[m,n]及び後置増幅率DG[m,n])が設定される(ステップS14)。まず、増幅率設定手段29では、増幅率設定用の受信信号OQであるデジタル遅延回路24−Lの出力信号の最大振幅レベルが、ターゲットレベルに達しておらず、A/D変換回路23−Lの全チャンネルが飽和していない場合、増幅率設定手段29では、デジタル遅延回路24−Lの出力信号の最大振幅レベルとターゲットとする振幅レベルとの差に対応するオフセットの増幅率OGが演算される。増幅率設定手段29では、前置増幅率AGP[m,n]が、式(5)で設定した仮前置増幅率AGQ[m,n]とオフセットの増幅率OGとから、
[数8]
AGP[m,n]=AGQ[m,n]+OG …(6)
によって設定される。
【0064】
一方、デジタル遅延回路24−Lの出力信号のうち1チャンネルでも最大振幅レベルがターゲットレベルを超過してA/D変換回路23−Lのいずれかが飽和している場合、増幅率設定手段29では、前置増幅率AGP[m,n]が、式(5)で設定した仮前置増幅率AGQ[m,n]と第2補正係数β(β≦1)とから、
[数9]
AGP[m,n]=AGQ[m,n]×β …(7)
によって設定される。よって、A/D変換回路23−Lのいずれかが飽和している場合でも、前置増幅率AGP[m,n]をある程度下げることで、断層像表示時に信号が飽和する確率を下げることができる。
【0065】
次いで、後置増幅率DG[m,n]は、式(6)又は(7)にて設定した前置増幅率AGP[m,n]と総計増幅率TGとから、
[数10]
DG[m,n]=TG−AGP[m,n] …(8)
によって設定される。
【0066】
次いで、前置増幅率制御信号発生手段30は、ステップS14にて式(6)又は(7)で設定した前置増幅率AGP[m,n]を前置増幅手段22に与える。プリアンプ22−Lでは、ステップS12にて送信された駆動パルスP[m,n]に従った超音波送信によって得られた受信信号OP[m,n]が、ステップS14にて設定された前置増幅率AGP[m,n]にてそれぞれ増幅される(ステップS15)。
【0067】
プリアンプ22−Lからの出力信号はA/D変換回路23−Lでデジタル変換され、このA/D変換回路23−Lからの出力信号に対してデジタル遅延回路24−Lで遅延処理が行なわれ、このデジタル遅延回路24−Lからの出力信号は加算回路25に入力される。
【0068】
次いで、加算回路25では、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号が整相加算されて受信フォーカスがかけられる。加算回路25からの出力信号は後置増幅回路26で、ステップS14にて式(8)で設定されて後置増幅率制御信号発生手段31で与えられた後置増幅率DG[m,n]にて増幅される(ステップS16)。後置増幅回路26からの出力信号に対して、画像処理回路27で、包絡線検波やlog圧縮等の信号処理が行なわれる。画像処理回路27からの出力信号は表示手段28のDSC36に入力され、標準TV走査信号に変換される。この標準TV走査信号から被検体の検査部位組織を表す超音波断層像がCRT37に表示される(ステップS17)。
【0069】
次いで、第mフレーム像を構成する最後のN本目のラスタ情報の生成が終了したかが判断される(ステップS18)。ステップS18の判断にてYes、すなわち、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成が終了した場合、第m+1フレーム像の生成を行なうかが判断される(ステップS19)。ステップS19の判断にてYes、すなわち、第m+1フレーム像の生成を行なう場合、ステップS11に戻り、第mフレーム像の生成と同様に第m+1フレーム像の生成が行なわれる。一方、ステップS19の判断にてNo、すなわち、第m+1フレーム像の生成を行なわない場合、第mフレーム像の生成をもって動作を終了する。
【0070】
また、ステップS18の判断にてNo、すなわち、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成が終了していない場合、ステップS11に戻り、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成までステップS11乃至S18の動作を繰返す。
【0071】
図7は、CRT37に表示された第mフレーム像と各ラスタ情報との関係の一例を示す図である。
【0072】
図7は、1本目乃至N本目のラスタ情報で構成される第mフレーム像を示すものである。例えば、1本目のラスタ情報は、ダミー駆動パルスQ[m,1]に従った超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQ[m,1]からステップS14にて設定した前置増幅率AGQ[m,1]を用いて、駆動パルスP[m,1]に従った超音波送信によって得られた受信信号OP[m,1]を増幅して生成したものである。
【0073】
超音波診断装置10及び超音波診断方法の第1変形例によると、第mフレームを構成するN本全てのラスタについて、ダミー駆動パルスQ[m,n]に従った超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQ[m,n]を仮前置増幅率AGQ[m,n]で増幅して出力した信号を用い、式(6)又は(7)によって前置増幅率AGP[m,n]を設定する。設定した前置増幅率AGP[m,n]で受信信号OP[m,n]を増幅すると、A/D変換回路23−Lが飽和する確率を低減でき、超音波断層像の画質劣化やノイズ発生の抑制を実現できる。
【0074】
ここで、図5に示されたフローチャートによる超音波診断方法の第1変形例は、第mフレーム像を構成するN本全てのラスタ情報の生成に先立って増幅率の設定を行なう場合である。この場合のレートパルスを示す図6の場合は、N本全てのラスタ情報を生成する時間が必要となるので、超音波断層像のフレームレートが低下する。よって、図5に示されたフローチャートによる超音波診断方法では、CRT37に表示された画像がちらつき易くなることも考えられる。
【0075】
したがって、第mフレーム像を構成する適度に間引かれたラスタの画像情報の生成においてのみ増幅率の設定を行なうようにしてもよい。以下、図4に示されたフローチャートによる超音波診断方法の第2変形例として、第mフレーム像を構成する奇数(nodd)本目のラスタ情報についてのみ増幅率の設定を行なう方法を、図8に示されたフローチャートを用いて説明する。なお、第mフレーム像を構成する偶数(neven)本目のラスタ情報についてのみ増幅率の設定を行なうようにしても同様の動作となる。
【0076】
図1に示された超音波診断装置10の制御手段32は、ダミー送信制御信号を送信回路20のレートパルス発生器に送信して、第mフレーム像を構成するN本のラスタ情報のうち、nodd本目のラスタ情報を生成するための超音波送信を行なう前のみに、増幅率の設定を行なうための超音波のダミー送信を行なうように制御する(ステップS21)。このレートパルス発生器では、第mフレーム像を構成するnodd本目のラスタ情報生成のための駆動パルスP[m,nodd]に先立って増幅率設定用のダミー駆動パルスQ[m,nodd]を付加し、それらパルスを定まったレートに割り当てたレートパルスが発生される。このレートパルスがレートパルス発生器から送信遅延回路に供給される。
【0077】
図9は、送信回路20で発生され、駆動パルスP[m,nodd]に先立ってダミー駆動パルスQ[m,nodd]を付加したレートパルスの一例を示す図である。
【0078】
図1に示されたプローブ11の超音波振動子では、検査部位で反射した超音波反射波が順次受信され、その超音波反射波が電気的な微小信号に変換される。この微小信号は、受信回路21によって順次受信されて信号処理される。ダミー駆動パルスQ[m,nodd]に従った超音波のダミー送信によって得られた増幅率設定用の受信信号OQ[m,nodd]と、駆動パルスP[m,nodd]に従った超音波送信によって得られたラスタ情報生成用の受信信号OP[m,nodd]と、駆動パルスP[m,nodd+1(neven)]に従った超音波送信によって得られたラスタ情報生成用の受信信号OP[m,nodd+1]とが、受信回路21からプリアンプ22−Lに繰返し送信される(ステップS22)。具体的には、ダミー駆動パルスQ[m,1]、駆動パルスP[m,1]、駆動パルスP[m,2]、ダミー駆動パルスQ[m,3]、…によって得られた受信信号OQ[m,1]、OP[m,1]、OP[m,2]、OQ[m,3]、…が順次送信される。
【0079】
ステップS21にてダミー送信制御信号が送信されると、制御手段32から増幅率設定手段29及び前置増幅率制御信号発生手段30に、ダミー送信制御信号を識別する識別信号が送信される。増幅率設定手段29では、超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQ[m,nodd]に対する仮前置増幅率AGQ[m,nodd]が、nodd−1本目のラスタ情報生成時に使用した前置増幅率AGP[m,nodd−1]とは異なる値にて設定される。仮前置増幅率AGQ[m,nodd]は、例えば、前置増幅率AGP[m,nodd−1]よりも小さい値とする。前置増幅率制御信号発生手段30は、増幅率設定手段29で設定した仮前置増幅率AGQ[m,nodd]を前置増幅手段22に与える。ここで、仮前置増幅率AGQ[m,nodd]は、前置増幅率AGP[m,nodd−1]から、『n』を『nodd』に置換した式(5)によって設定される。
【0080】
プリアンプ22−Lでは、ステップS22にて送信されたダミー駆動パルスQ[m,nodd]に従った超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQ[m,nodd]が、式(5)で設定した仮前置増幅率AGQ[m,nodd]にてそれぞれ増幅される(ステップS23)。
【0081】
プリアンプ22−Lからの出力信号はA/D変換回路23−Lでデジタル変換され、このA/D変換回路23−Lからの出力信号に対してデジタル遅延回路24−Lで遅延処理が行なわれ、このデジタル遅延回路24−Lからの出力信号は増幅率設定手段29に入力される。
【0082】
増幅率設定手段29では、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号の強度に基づいて、断層像生成のための超音波送信によって得られた受信信号OP[m,nodd]に対する前置増幅率(前置増幅率AGP[m,nodd]及び後置増幅率DG[m,nodd])が設定される(ステップS24)。まず、増幅率設定手段29では、増幅率設定用の受信信号OQであるデジタル遅延回路24−Lの出力信号の最大振幅レベルがターゲットレベルに達しておらず、A/D変換回路23−Lの全チャンネルが飽和していない場合、増幅率設定手段29では、デジタル遅延回路24−Lの出力信号の最大振幅レベルとターゲットとする振幅レベルとの差に対応するオフセットの増幅率OGが演算される。増幅率設定手段29では、前置増幅率AGP[m,nodd]が、式(5)で設定した仮前置増幅率AGQ[m,nodd]とオフセットの増幅率OGとから、『n』を『nodd』に置換した式(6)によって設定される。
【0083】
一方、デジタル遅延回路24−Lの出力信号のうち1チャンネルでも最大振幅レベルがターゲットレベルを超過してA/D変換回路23−Lのいずれかが飽和している場合、増幅率設定手段29では、前置増幅率AGP[m,nodd]が、式(5)で設定した仮前置増幅率AGQ[m,nodd]と第2補正係数βとから、『n』を『nodd』に置換した式(7)によって設定される。
【0084】
次いで、後置増幅率DG[m,nodd]は、式(6)又は(7)にて設定した前置増幅率AGP[m,nodd]と総計増幅率TGとから、『n』を『nodd』に置換した式(8)によって設定される。
【0085】
次いで、前置増幅率制御信号発生手段30は、ステップS24にて式(6)又は(7)で設定した前置増幅率AGP[m,nodd]を前置増幅手段22に与える。プリアンプ22−Lでは、ステップS22にて送信された駆動パルスP[m,nodd]に従った超音波送信によって得られた受信信号OP[m,nodd]が、ステップS24にて設定された前置増幅率AGP[m,nodd]にてそれぞれ増幅される(ステップS25)。
【0086】
プリアンプ22−Lからの出力信号はA/D変換回路23−Lでデジタル変換され、このA/D変換回路23−Lからの出力信号に対してデジタル遅延回路24−Lで遅延処理が行なわれ、このデジタル遅延回路24−Lからの出力信号は加算回路25に入力される。
【0087】
次いで、加算回路25では、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号が整相加算されて受信フォーカスがかけられる。加算回路25からの出力信号は後置増幅回路26で、ステップS24にて式(8)で設定されて後置増幅率制御信号発生手段31で与えられた後置増幅率DG[m,nodd]にて増幅される(ステップS26)。後置増幅回路26からの出力信号に対して、画像処理回路27で、包絡線検波やlog圧縮等の信号処理が行なわれる。画像処理回路27からの出力信号は表示手段28のDSC36に入力され、標準TV走査信号に変換される。この標準TV走査信号から被検体の検査部位組織を表す超音波断層像がCRT37に表示される(ステップS27)。
【0088】
次いで、第mフレーム像を構成する最後のN本目のラスタ情報の生成が終了したかが判断される(ステップS28)。ステップS28の判断にてYes、すなわち、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成が終了した場合、第m+1フレーム像の生成を行なうかが判断される(ステップS29)。ステップS29の判断にてYes、すなわち、第m+1フレーム像の生成を行なう場合、ステップS21に戻り、第mフレーム像の生成と同様に第m+1フレーム像の生成を行なう。一方、ステップS29の判断にてNo、すなわち、第m+1フレーム像の生成を行なわない場合、第mフレーム像の生成をもって動作を終了する。
【0089】
また、ステップS28の判断にてNo、すなわち、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成が終了していない場合、ステップS30に進み第mフレーム像を構成し、nodd本目の次のラスタであるnodd+1(neven)本目のラスタ情報の生成を行なう。
【0090】
プリアンプ22−Lでは、ステップS21にて送信された駆動パルスP[m,nodd+1]に従った超音波送信によって得られたラスタ情報生成用の受信信号OP[m,nodd+1]が、ステップS24で設定した前置増幅率AGP[m,nodd]にてそれぞれ増幅される(ステップS30)。なお、m≧2の場合、ラスタ情報生成用の受信信号OP[m,nodd+1]を、前置増幅率AGP[m−1,nodd+1]にてそれぞれ増幅してもよい。
【0091】
プリアンプ22−Lからの出力信号はA/D変換回路23−Lでデジタル変換され、このA/D変換回路23−Lからの出力信号に対してデジタル遅延回路24−Lで遅延処理が行なわれ、このデジタル遅延回路24−Lからの出力信号は加算回路25に入力される。
【0092】
次いで、加算回路25では、デジタル遅延回路24−Lからの出力信号が整相加算されて受信フォーカスがかけられる。加算回路25からの出力信号は後置増幅回路26で、ステップS24にて式(8)で設定されて後置増幅率制御信号発生手段31で与えられた後置増幅率DG[m,nodd]にて増幅される(ステップS31)。後置増幅回路26からの出力信号に対して、画像処理回路27で、包絡線検波やlog圧縮等の信号処理が行なわれる。画像処理回路27からの出力信号は表示手段28のDSC36に入力され、標準TV走査信号に変換される。この標準TV走査信号から被検体の検査部位組織を表す超音波断層像がCRT37に表示される(ステップS32)。
【0093】
次いで、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成が終了したかが判断される(ステップS33)。ステップS33の判断にてYes、すなわち、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成が終了した場合、第m+1フレーム像の生成を行なうかが判断される(ステップS34)。ステップS34の判断にてYes、すなわち、第m+1フレーム像の生成を行なう場合、ステップS21に戻り、第mフレーム像の生成と同様に第m+1フレーム像の生成を行なう。一方、ステップS34の判断にてNo、すなわち、第m+1フレーム像の生成を行なわない場合、第mフレーム像の生成をもって動作を終了する。
【0094】
ステップS33の判断にてNo、すなわち、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成が終了していない場合、ステップS21に戻り、第mフレーム像を構成するN本目のラスタ情報の生成までステップS21乃至S33の動作を繰返す。
【0095】
超音波診断装置10及び超音波診断方法の第2変形例によると、第mフレーム像を構成する奇数(偶数)本目のラスタについて、ダミー駆動パルスQ[m,nodd]に従った超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQ[m,nodd]を仮前置増幅率AGQ[m,nodd]で増幅して出力した信号を用い、式(6)又は(7)によって前置増幅率AGP[m,nodd]を設定する。設定した前置増幅率AGP[m,nodd]で受信信号OP[m,nodd]を増幅すると、A/D変換回路23−Lが飽和する確率を低減でき、超音波断層像の画質劣化やノイズ発生の抑制を実現できる。
【0096】
さらに、超音波診断装置10及び超音波診断方法の第2変形例によると、第mフレームを構成する奇数(偶数)本目のラスタについてのみ、ダミー駆動パルスQ[m,nodd]に従った超音波のダミー送信によって得られた受信信号OQ[m,nodd]を仮前置増幅率AGQ[m,nodd]で増幅して出力した信号を用い、式(6)又は(7)によって前置増幅率AGP[m,nodd]を設定する。設定した前置増幅率AGP[m,nodd]で受信信号OP[m,nodd]を増幅すると、超音波診断方法の第1変形例の場合と比較して、フレームレートの低下を抑えることができる。
【0097】
なお、制御手段によって、フレーム像毎に、ダミー送信を行なうラスタが変化するように制御させるようにしてもよい。例えば、奇数フレームである第1フレーム像では、偶数本目のラスタについてのみ増幅率の設定を行なう一方、偶数フレームである第2フレーム像では、奇数本目のラスタについてのみ増幅率の設定を行なう。その場合、例えば、第2フレーム像を構成する2本目のラスタにおける画像情報の生成においては、ステップS30のように受信信号OP[2,2]を前置増幅率AGP[2,1]にて増幅してもよいし、前置増幅率AGP[1,2]にて増幅してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明に係る超音波診断装置の実施の形態を示す概略図。
【図2】レートパルスの一例を示す図。
【図3】ダミー駆動パルスを付加したレートパルスの一例を示す図。
【図4】超音波診断装置を用いた超音波診断方法を示すフローチャート。
【図5】超音波診断装置を用いた超音波診断方法の第1変形例を示すフローチャート。
【図6】ダミー駆動パルスを付加したレートパルスの一例を示す図。
【図7】CRTに表示された第mフレーム像と各ラスタ情報との関係の一例を示す図。
【図8】超音波診断装置を用いた超音波診断方法の第2変形例を示すフローチャート。
【図9】ダミー駆動パルスを付加したレートパルスの一例を示す図。
【符号の説明】
【0099】
10 超音波診断装置
11 超音波プローブ
20 送信回路
21 受信回路
22 前置増幅手段
22−L プリアンプ
23 デジタル変換手段
23−L A/D変換回路
24 デジタル遅延手段
24−L デジタル遅延回路
29 増幅率設定手段
32 制御手段
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
【住所又は居所】栃木県大田原市下石上1385番地
【出願日】 平成16年12月27日(2004.12.27)
【代理人】 【識別番号】100078765
【弁理士】
【氏名又は名称】波多野 久

【識別番号】100078802
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 俊三

【公開番号】 特開2006−181052(P2006−181052A)
【公開日】 平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願番号】 特願2004−376879(P2004−376879)