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【発明の名称】 超音波診断装置
【発明者】 【氏名】石原 外美

【氏名】高沢 武志

【要約】 【課題】骨粗鬆症やリウマチなどの骨疾患を適確に診断する。

【解決手段】骨を含む検査部位に投射する超音波の反射波、透過波にそれぞれ基づいて検査部位の空隙率φe 、φt を算出する反射波解析手段11、透過波解析手段12と、空隙率φe 、φt に基づいて骨の空隙率βを算出し、骨の平均密度ρb 、平均ヤング率Eb を算出する評価手段13とを設ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨を含む検査部位に投射する超音波の反射波、透過波にそれぞれ基づいて検査部位の空隙率を算出する反射波解析手段、透過波解析手段と、前記反射波解析手段、透過波解析手段からの各空隙率に基づいて検査部位の骨の空隙率を算出し、骨の平均密度、平均ヤング率を算出する評価手段とを備えてなる超音波診断装置。
【請求項2】
前記反射波解析手段は、逆方向から投射する超音波の各反射波に基づいて検査部位の空隙率を算出することを特徴とする請求項1記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記反射波解析手段には、雑音除去手段を前置することを特徴とする請求項1または請求項2記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記透過波解析手段は、固相を伝搬するファスト波、液相を伝搬するスロー波の各伝搬速度に基づいて検査部位の空隙率を算出することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、骨粗鬆症やリウマチなどの骨疾患を適確に診断することができる超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
骨を含む生体組織に超音波を投射すると、骨と、骨のまわりの筋肉との境界面で超音波が反射するから、生体組織内の骨の位置や形状をチェックすることができる。また、骨に対して超音波を斜めに投射し、皮質骨中に超音波の一部を伝搬させて皮質骨中の伝搬速度を計測することにより、骨密度を評価することも可能である(たとえば特許文献1)。超音波は、空隙を有する材料中を伝搬するとき、材料の空隙率によって伝搬速度が変化するからである。
【特許文献1】特開2002−34986号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
かかる従来技術によるときは、皮質骨中の超音波の伝搬速度を計測して骨密度を評価することができるとしても、骨の硬さ(剛性)を測定することができないため、必ずしも十分な診断結果を得ることができないという問題があった。骨中の超音波の伝搬速度は、骨の空隙率に加えて、骨の剛性によっても変化する可能性があるが、従来は、骨の剛性に全く着目していなかったからである。
【0004】
そこで、この発明の目的は、かかる従来技術の問題に鑑み、検査部位に投射する超音波の反射波、透過波の双方を解析することによって、骨の平均密度、平均ヤング率を算出し、一層適確な診断結果を得ることができる超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するためのこの発明の構成は、骨を含む検査部位に投射する超音波の反射波、透過波にそれぞれ基づいて検査部位の空隙率を算出する反射波解析手段、透過波解析手段と、反射波解析手段、透過波解析手段からの各空隙率に基づいて検査部位の骨の空隙率を算出し、骨の平均密度、平均ヤング率を算出する評価手段とを備えることをその要旨とする。
【0006】
なお、反射波解析手段は、逆方向から投射する超音波の各反射波に基づいて検査部位の空隙率を算出することができ、反射波解析手段には、雑音除去手段を前置することができる。
【0007】
また、透過波解析手段は、固相を伝搬するファスト波、液相を伝搬するスロー波の各伝搬速度に基づいて検査部位の空隙率を算出してもよい。
【発明の効果】
【0008】
かかる発明の構成によるときは、反射波解析手段は、検査部位に投射する超音波の反射波に基づいて検査部位の空隙率を算出するが、このようにして算出される空隙率は、検査部位の内部組織が骨と筋肉等の軟組織とからなるとした場合の軟組織の割合を示す。検査部位に投射された超音波は、一般に、骨の表面から反射する他、投射側と反対側の軟組織の表面から反射するからである。一方、透過波解析手段は、骨と軟組織とを透過する透過波の伝搬速度に基づいて検査部位の空隙率を算出するが、このようにして算出される空隙率は、筋肉等の軟組織と、骨髄や骨中の空隙との合計を液相とし、他を固相とする場合の平均的な空隙率である。
【0009】
そこで、評価手段は、反射波解析手段からの空隙率φe 、透過波解析手段からの空隙率φt に基づいて、
φe =(D−d)/D=1−d/D …(1)
φt =(Dφe +dβ)/D=φe +(d/D)β …(2)
の各式により、骨の空隙率βを分離して算出することができる。ただし、Dは、超音波の投射方向にとる検査部位の全幅、dは、同方向にとる検査部位中の骨の全幅である。
【0010】
また、評価手段は、骨の空隙率βを利用して、
ρb =(1−β)ρs +βρf …(3)
Eb =(1−β)Es +βEf …(4)
の各式により、骨の平均密度ρb 、平均ヤング率Eb を求めることができる。ただし、ρs 、Es は、それぞれ検査部位の固相部(緻密骨)の密度、ヤング率であり、ρf 、Ef は、それぞれ液相部(骨髄、筋肉など)の密度、ヤング率である。骨の平均密度ρb 、平均ヤング率Eb は、骨粗鬆症やリウマチなどの骨疾患の診断指標として有効である。
【0011】
反射波解析手段は、逆方向から投射する超音波の各反射波を利用することにより、超音波の投射方向を逆にしたときの計測値を平均し、骨の全幅dを一層精度よく計測することができる。なお、超音波の投射方向を逆方向に反転させるには、超音波の送波側、受波側の双方にそれぞれ切換可能な一対の素子(トランスジューサ)を検査部位の表面側、裏面側に密着させ、一方の素子を送波側にして超音波のパルスを送信し、直ちに受波側に切り換えて反射波を受信し、その後、他方の素子を同様に動作させればよい。また、このとき、検査部位の全幅Dは、適当な距離センサにより、各素子の間隔を読み取るものとする。ただし、各素子は、送波側から受波側に切り換えるとき、不要な雑音を生じることがあるため、反射波解析手段には、このような切換時の雑音を除去する雑音除去手段を前置させることが好ましい。
【0012】
一方、透過波解析手段は、検査部位の表面側、裏面側に密着させる反射波解析手段用の一対の素子をそのまま兼用して使用することができる。すなわち、一方の素子から超音波を送信し、他方の素子により透過波を受信すればよい。なお、一般に、固相を伝搬するファスト波は、伝搬材料の空隙率によって伝搬速度が大きく変化し、空隙率を精度よく検出することができる。これに対し、液相を伝搬するスロー波は、伝搬中の減衰が少なく、受波レベルを大きくすることができる。そこで、透過波解析手段は、ファスト波、スロー波の両方に着目して検査部位の空隙率を算出することが好ましく、有効なデータが得られる限り、両者に基づく空隙率の平均値を採用することが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を以って発明の実施の形態を説明する。
【0014】
超音波診断装置は、パーソナルコンピュータ10内にソフトウェアによって構成する反射波解析手段11、透過波解析手段12を備えてなる(図1)。
【0015】
超音波診断装置は、骨Bを含む検査部位Pを対象として、骨Bの評価、診断に使用する(図2)。検査部位Pは、たとえば腕、指などであり、骨Bのまわりには、筋肉等の軟組織Mが存在し、骨Bの中心部には、骨髄Bm が存在する。また、骨Bには、微細な空隙Bp 、Bp …が含まれている。
【0016】
検査部位Pの表面側、裏面側には、超音波の送波側、受波側の双方に切換可能な一対の素子(トランスジューサ)T1 、T2 が密着して配置されている。素子T1 、T2 には、切換スイッチSWを介して励振器21が接続され、素子T1 、T2 の出力は、ディジタルストレージスコープ22に個別に接続されている。また、ディジタルストレージスコープ22の出力は、パーソナルコンピュータ10に入力されている。
【0017】
ディジタルストレージスコープ22の出力は、パーソナルコンピュータ10内において、雑音除去手段11a、12aを介して反射波解析手段11、透過波解析手段12に分岐接続されている(図1)。反射波解析手段11、透過波解析手段12の各出力は、評価手段13に接続されており、評価手段13の出力は、ディスプレイ、プリンタなどの出力手段14に接続されている。なお、反射波解析手段11には、図示しない距離センサによって検出する素子T1 、T2 の距離、すなわち検査部位Pの全幅Dが入力されている。
【0018】
図2において、切換スイッチSWを介して一方の素子T1 を励振器21に接続し、送波側にセットした素子T1 から超音波のパルスを送信して素子T1 を受波側に切り換えると、素子T1 は、検査部位Pからの反射波を受信することができる(図3)。ただし、図3(A)は、検査部位P内における反射波の発生経路を示す模式概念図であり、同図(B)は、素子T1 によって受信される反射波波形の一例である。そこで、ディジタルストレージスコープ22は、図3(B)の反射波の波形データをそのまま記憶し、必要に応じてパーソナルコンピュータ10に送出することができる。
【0019】
一方、切換スイッチSWを切り換え、他方の素子T2 を介して同様の動作を実行すると、検査部位Pに対する超音波の投射方向を逆にして、同様の反射波の波形データをディジタルストレージスコープ22に記憶させることができる。ただし、励振器21は、素子T1 、T2 を1MHz 程度の高周波により励振するものとする。
【0020】
また、図2において、素子T1 を励振器21に接続して送波側とし、素子T2 を受波側として素子T1 から超音波を送信すると、素子T2 により検査部位Pを透過する透過波を受信することができる(図4)。ただし、このとき、素子T2 が受信するのは、素子T1 から到達する透過波に加えて、素子T2 、T1 を介して反射する透過波を含む。図4(A)は、このようにして検査部位P内を透過する透過波の伝搬経路を示す模式概念図であり、同図(B)は、素子T2 によって受信される透過波波形の一例である。
【0021】
なお、図4(A)の点線は、骨Bと素子T2 との間に生じる反射波を示し、この反射波は、同図(B)において、間隔が狭い規則正しいピークとして検出されている。また、同図(B)には、固相を伝搬するファスト波、液相を伝搬するスロー波が個別に検出されている。ただし、図4(B)において、Δts 、Δtf は、それぞれファスト波、スロー波が検査部位Pを透過して往復するに要する伝搬時間である。ディジタルストレージスコープ22は、図4(B)の透過波の波形データをそのまま記憶し、必要に応じてパーソナルコンピュータ10に送出することができる。
【0022】
反射波解析手段11は、雑音除去手段11aを介してディジタルストレージスコープ22からの反射波の波形データを取得すると、それを解析することにより、反射波に基づく検査部位Pの空隙率φe =(D−d)/D=1−d/Dを算出する。検査部位Pの全幅Dは、図示しない距離センサの出力として取得するものとし、骨Bの全幅dは、図3(A)、(B)より、
L2 =Δt1 ・Vb /2=d
L3 =Δt2 ・Vm /2
L1 +L2 +L3 =D
の各式から算出することができる。ただし、Vb 、Vm は、それぞれ骨B内、軟組織M内の超音波の伝搬速度であり、たとえばVb =2775m/s、Vm =1482.9m/sである。また、検査部位P内の距離L1 、L2 、L3 は、素子T1 から超音波を送信するとして図3(A)のように定め、時間差Δt1 、Δt2 は、素子T1 に近い側、遠い側の骨Bの各表面、素子T1 から遠い側の検査部位Pの表面からの各反射波が素子T1 に到達するまでの時間差である(図3(B))。
【0023】
なお、反射波解析手段11は、素子T1 、T2 を切り換えて同様に超音波のパルスを送受信し、超音波の投射方向を正逆にしたときの骨Bの全幅d=L2 の平均値に基づいて、検査部位Pの空隙率φe を算出するものとする。
【0024】
素子T1 、T2 は、送波側にして超音波のパルスを送信し、直ちに受波側にして反射波を受信するが、切換時に雑音を発生することがある。そこで、雑音除去手段11aは、たとえば、ディジタルストレージスコープ22に記憶される波形データをフーリエ変換し、雑音域の低周波成分をカットしてフーリエ逆変換することにより、素子T1 、T2 を送波側から受波側に切り換える際に発生する雑音を除去することができる。ちなみに、図3(B)の反射波の波形データは、雑音除去手段11aによる雑音除去後の波形を示している。
【0025】
一方、透過波解析手段12は、雑音除去手段12aを介してディジタルストレージスコープ22からの透過波の波形データを取得すると、透過波に基づく検査部位Pの空隙率φt =f(V)を算出する。ここで、超音波の伝搬速度Vは、図4(B)のファスト波、スロー波のいずれに着目するかにより、
Vf =D/(Δtf /2)=2D/Δtf
または
Vs =D/(Δts /2)=2D/Δts
のいずれかであり、関数fは、ファスト波、スロー波に対応して、たとえば図5の曲線の一方を適用するものとする。そこで、透過波解析手段12は、ファスト波、スロー波にそれぞれ着目するときの空隙率φt の平均値を採用するものとする。なお、図5は、Biotの式として知られる多孔質性物体内の超音波の伝搬速度Vf 、Vs の理論式を、海綿骨中を伝搬するファスト波、スロー波に適用して線図化したものである。雑音除去手段12aは、透過波の波形データに含まれる不用な雑音を除去し、必要に応じて設ければよい。
【0026】
評価手段13は、反射波解析手段11からの空隙率φe 、透過波解析手段12からの空隙率φt に基づき、検査部位P内の骨Bの空隙率βを算出することができる。φe 、φt 、βの間には、前述の(1)、(2)式が成立するからである。すなわち、透過波に基づく空隙率φt は、検査部位Pの全幅Dに対する骨Bの液相幅dβと、軟組織Mの幅Dφe との和に等しい(図6)。ただし、図6は、図2の素子T1 、T2 間の検査部位Pの断面構成を透過波の伝搬経路に沿って模式化して示している。
【0027】
つづいて、評価手段13は、前述の(3)、(4)式を使用して、骨Bの平均密度ρb 、平均ヤング率Eb を求め、健常者のそれと比較して有効な診断結果を得ることができる。評価手段13は、その後、出力手段14を介し、反射波解析手段11、透過波解析手段12による解析結果、評価手段13による計算結果、診断結果を含むデータをデータ出力する。
【0028】
なお、以上の一連の動作は、パーソナルコンピュータ10に組み込む図示しない統括制御手段を介し、励振器21、切換スイッチSW、素子T1 、T2 、ディジタルストレージスコープ22に対する各動作指令を適切に出力し、反射波解析手段11、透過波解析手段12、評価手段13を適時に起動させることにより、必要なすべての診断工程を全自動化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】全体ブロック系統図
【図2】使用状態模式図
【図3】動作説明図(1)
【図4】動作説明図(2)
【図5】動作説明線図
【図6】動作説明模式図
【符号の説明】
【0030】
P…検査部位
B…骨
φe 、φt 、β…空隙率
ρb …平均密度
Eb …平均ヤング率
11…反射波解析手段
11a…雑音除去手段
12…透過波解析手段
13…評価手段

特許出願人 株式会社 越 屋
代理人 弁理士 松 田 忠 秋
【出願人】 【識別番号】397059249
【氏名又は名称】株式会社越屋
【出願日】 平成16年12月15日(2004.12.15)
【代理人】 【識別番号】100090712
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 忠秋

【公開番号】 特開2006−167097(P2006−167097A)
【公開日】 平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願番号】 特願2004−362830(P2004−362830)