トップ :: A 生活必需品 :: A61 医学または獣医学;衛生学




【発明の名称】 医療用マニピュレータ
【発明者】 【氏名】松日楽 信 人
【住所又は居所】神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内

【氏名】貞 本 敦 史
【住所又は居所】神奈川県川崎市幸区小向東芝町1番地 株式会社東芝研究開発センター内

【要約】 【課題】鉗子に多自由度を付加し高機能化することで操作性を向上させた医療用マニピュレータの提供を目的とする。

【解決手段】医療用マニピュレータは、鉗子先端10に2自由度以上の可動部があり、鉗子後端部50にその操作部があり、操作部には位置決めを行う第1の操作部60と鉗子先端の姿勢決めを行う第2の操作部70を備えている。位置決め操作と先端姿勢決め操作とを別々の操作で行うので、互いの操作による干渉の影響が少なく、微細操作が容易となり、信頼性、安全性の高い医療用マニピュレータを提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2自由度を有しており作業対象物に接触する作業部と、
術者が把持可能な第1の操作部と、
前記作業部の前記2自由度方向の動作を制御するための第2の操作部と、備え、
前記第2の操作部は、前記第1および第2の操作部の為す角度が変更可能に取り付けられていることを特徴とする医療用マニピュレータ。
【請求項2】
前記第2の操作部は、それぞれが前記作業部の前記2自由度方向の少なくとも一方向の動作を制御可能で、前記術者が把持した方の手の指で操作を行うための第1および第2のスイッチを有することを特徴とする請求項1または2に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項3】
前記第1のスイッチは、第1のダイヤルを有すること特徴とする請求項3に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項4】
前記第2のスイッチは、前記第1のダイヤルの回動方向と異なる回動方向をもつ第2のダイヤルを有することを特徴とする請求項4に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項5】
前記第1のスイッチは、一対の第1のボタンスイッチを有すること特徴とする請求項3に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項6】
前記第2のスイッチは、一対の前記第1のボタンスイッチが並ぶ方向と異なる方向に並べられた一対の第2のボタンスイッチを有することを特徴とする請求項6に記載の医療用マニピュレータ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は医療用マニピュレータに係り、特に手術用の鉗子などが具備される医療用マニピュレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、胆のう摘出手術など腹腔鏡下手術においては図8に示すように患者150の腹部に小さな穴151、152、153を数カ所あけ、それらにトラカール154を取付け、トラカール154を介してそれらの穴に内視鏡161、鉗子171、172等を挿入し、術者(通常、外科医)160が内視鏡161の映像をモニタ162を見ながら手術を行っている(特許文献1参照)。
【0003】
このような手術は開腹しないので患者への負担が少なく、術後の回復や退院までの日数が大幅に軽減し、今後、適用分野の拡大が期待されている手術方法である。
【特許文献1】特表平10-504984号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の腹腔鏡下手術は患者150への負担が少なく優れた手術方法ではあるが術者160が実際に術部を見れないこと、また、鉗子171、172には通常開閉する把持部しか設けられていないため、把持部の開閉動作以外である把持部の姿勢(方向)を変えることができず操作性が悪くなる可能性があった。
【0005】
このような要因により、前述の手術方法で適切な処置を行える術者が限られること、また、熟練するまでに時間がかかることが問題となっている。
【0006】
このような課題に対して、マスタスレーブマニピュレータなど遠隔操作型ロボット技術の応用がいくつか研究されている。しかしながら、これらは術者が操作するマスタアームと手術を行うスレーブアームとが完全に分離したロボットシステムであり、マスタアームの指令値が電気信号としてスレーブアームに伝わるものである。
【0007】
したがって、通常、マスタ、スレーブともに6自由度以上の関節数を有し構造が複雑であり、それぞれにコントローラが必要なことから電気的にも部品、配線、制御系などが増えた複雑なシステムとなるため信頼性が低下する恐れがある。
【0008】
また、装置自体が大掛かりとなり、購入費用やメンテナンス費用も増大する。
【0009】
さらに、術者は離れたところから操作するので万一出血などの緊急自体と成った場合にすぐに患者を処置することができないといった問題が発生する恐れもあった。
【0010】
そこで本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、作業部を少なくとも2自由度以上の多自由度を有する構成とし操作部にて作業部の位置と姿勢とを操作することによって、作業部の操作性を向上させた医療用マニピュレータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様によれば、少なくとも2自由度を有しており作業対象物に接触する作業部と、術者が把持可能な第1の操作部と、前記作業部の前記2自由度方向の動作を制御するための第2の操作部と、備え、前記第2の操作部は、前記第1および第2の操作部の為す角度が変更可能に取り付けられていることを特徴とする医療用マニピュレータが提供される。
【0012】
このような本発明によれば、作業部を少なくとも2自由度を有する構造にすることで操作性を向上させると共に高機能化が達成でき、またマスタスレーブマニピュレータに比べて装置全体の不必要な自由度を大幅に減少し機構も単純化されることで信頼性が向上し費用も抑制することができる。また緊急時には術者が患者近傍に存在しているため迅速に患者に対して処置ができ、安全性の高い手術を実現することができる。さらに従来、熟練医しかできなかった手術が簡単に安全に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたような本発明では、位置決め操作と姿勢決め操作との操作部を分離することで、互いの操作による干渉の影響が少なく、微細操作が容易となり、信頼性、安全性の高い医療用マニピュレータを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の医療用マニピュレータの実施の形態について説明する。
【0015】
図1乃至図4は本発明の実施の形態による医療用マニピュレータを示す構成概略図である。尚、本発明の医療用マニピュレータは鉗子を想定している。
【0016】
医療用マニピュレータは、作業部である鉗子先端部10には矢印方向に回転可能な第1の回転関節20と第1の回転間接20に対し90度回転軸がずれた位相である矢印方向に回転可能な第2の回転関節30と作業対象物を把持することが可能で開閉することができる把持開閉部40を有し、鉗子後端部50には術者が把持可能な第1の操作部である操作桿60と2つの回転関節を操作する第2の操作部であるジョイスティック70と開閉を操作するためのレバー80を有しており、このような構成からなる。尚、医療用マニピュレータには、医療用マニピュレータの動作を制御するための制御部乃至電源に接続されるコード(図示しない)が設けられている。
【0017】
このような構成からなる第1の実施の形態の動作について説明する。
【0018】
ジョイスティック70にはポテンショメータなどの角度検出器が備えられており、上下左右の動きを検出する。その検出角度は図示していない制御装置に電気的に送られる。同様に開閉部操作用のレバーにも変位検出器がある。また、鉗子先端の2つの回転関節と開閉部は後端部側に設置されたモータ90、91、92によりワイヤ、プーリ、歯車などを介して前記制御装置からの駆動信号により駆動される。
【0019】
操作者は操作桿60を握り、親指をジョイスティックの上(平坦部)にかけ、上下左右に動かすことで、その操作量を角度検出器で読み取り、鉗子先端の第1の回転関節と第2の回転関節をそれぞれ操作量に応じて駆動する。同様にレバー80の位置を検出して鉗子先端部10の開閉量を制御する。その他の操作については従来の鉗子の操作と同様である。
【0020】
したがって従来よりも、先端に2つの回転関節がある分、自在に鉗子先端の方向を指先の操作だけで変えることができ、より縫合作業などの繊細な手術作業を容易に行うことができる。さらに、鉗子の位置決め操作は操作桿60を握り動かし、先端部の姿勢は親指の操作で行うため術者の操作が容易となる。
【0021】
また、アクチュエータは電磁力モータの他に、形状記憶合金や静電アクチュエータなどでも良い。また操作側にもアクチュエータを設けることで、先端の力を操作者に返すことも可能である。例えば、把持部に掛かる力を歪ゲージなどからなる力センサで検出して、その検出した力に応じた力を操作側のレバーで指に対して発生させることにより、操作者は把持している力を感じることができる。2つの回転関節20、30に対しても同様である。また、鉗子先端部10の開閉動作はレバーでなくとも、ジョイスティック70を上から押すことで機能するスイッチを設けて動作させることもできる。例えばジョイスティック70を一度押すと鉗子先端部10が閉じて再度押すと開くような構成とすることもできる。
【0022】
さらに、ジョイスティック70は並進や傾きなどの変位量ではなく、多軸方向の力を検出できる力センサにより、術者が動かしたい方向に掛かる力を検出して、この検出された力の方向へ鉗子先端部10を動かすこともできる。
【0023】
操作桿60は図1に示す様に、長手方向と直角方向に取付いていても良いし、図3(a)に示す様に長手方向に取付いていても良いし、角度を付けて取り付けても良い。さらに図3(b)に示す様に鉗子後端部50と操作棹60との間に回転軸100を設け、術者が任意の角度に設定することもできる。手術内容や術者の使用しやすい角度で使用することにより操作性が向上する。
【0024】
このほかに、図4(a)に示す様にジョイスティック70の代わりにスイッチ200でも良く、例えば、左210、右220、上230、下240の4つのボタンスイッチがあり、ボタンを押している間のみ鉗子先端が動くような動作をさせることも可能である。あるいは図4(b)に示す様にダイヤル250、260でも良いし、図4(c)に示す様にパソコンのマウスに使われているようなトラックボール270を取付け操作しても良い。
【0025】
以上述べたような第1の実施の形態では、作業部を少なくとも2自由度以上の多自由度を有する構成とし操作部にて作業部の位置と姿勢とを操作することによって、作業部の操作性を向上させることができる。
【0026】
また、作業部を操作する際にはジョイスティック70、レバー80を用いるため、術者が鉗子を手放すことなく位置または姿勢を変更することができ、また術者の手首を回転させたり折り曲げたりせずに位置または姿勢を変更することが可能であるため、作業部と作業部が作業を行う患部との相対的な位置ずれの発生を抑制することができる。
【0027】
次に本発明の第2の実施の形態の医療用マニピュレータについて図5を用いて説明する。図5は第2の実施の形態の操作部の説明図である。
【0028】
操作部は第1の操作部である操作桿300と第2の操作部であるつまみ部310からなる。操作桿300を把持すると指がつまみ部310にかかり、つまみ部310は直交する2つの回転軸320、330で支持されている。つまみ部310で鉗子先端のロール軸320、ヨー軸330の操作が可能であり、先端の姿勢操作は、操作桿300を動かして行う位置決め操作とは異なった操作部で行うので微細な操作が実現できる。ここでつまみ部を支持する関節の順序は問わない。
【0029】
図6(a)は図5の関節配置を示し、ヨー軸330a、ロール軸320aの順でつまみ部310に接続されている。図6(b)は逆の順の関節配置を示し、ロール軸320b、ヨー軸330bの順でつまみ部310に接続されている。ともにつまみ部の中心340は、マニピュレータ長手方向350、ロール軸320、ヨー軸330が交わった点となっている。
【0030】
つまみ部310によりロール軸を操作するとその角度を検出して、制御部を介してモータが駆動され、それに対応する角度に先端部が動作する。同様にヨー軸を操作すると、先端のヨー軸が対応する角度だけ動作する。先端の関節は必ずしも操作部と同じ関節に対応している必要はなく、座標変換を介して操作性が良くなる様に自由に対応させることができる。
【0031】
また、つまみ部310には押しスイッチ360があり、押し込めば鉗子把持部が閉じ再度押せば把持部が開く。あるいは指を挿入することが可能な部材が設けられ、この部分に指を挿入して指を開閉させることにより開閉量を検出しこの開閉量に対応するように把持部を開閉させることもできる。
【0032】
以上述べたような第2の実施の形態では、作業部を少なくとも2自由度以上の多自由度を有する構成とし操作部にて作業部の位置と姿勢とを操作することによって、作業部の操作性を向上させることができる。
【0033】
また関節にはモータなどアクチュエータを取り付けることで、第1の実施の形態と同様に操作時の反力を操作者に返すことができ、より操作性を向上させることができる。
【0034】
また、作業部の位置と姿勢の操作を別々の操作部で行うことができるため、従来では位置操作部と姿勢操作部とが同じであったために姿勢操作を行った場合に作業部の位置が多少なりともその影響を受けて動いてしまい先端部の微細な作業が困難であったが本形態によれば簡単に実施することができる。
【0035】
次に本発明の第3の実施の形態の医療用マニピュレータについて図7を用いて説明する。図7は第3の実施の形態の操作部の説明図である。
【0036】
操作者の手首(もしくは腕)は第1の操作部として鉗子後端部400にベルトなどの固定部410で固定され、指先で同じく後端部400に固定された第2の操作部であるジョイスティック420を操作する。手首を動かすことでマニピュレータ全体を動かし、指先でジョイスティック410を操作することで鉗子先端の姿勢を変えることができる。また、このような方式では長手方向に長くなり操作性が低下する可能性があり、折り曲がる関節部430を設けて任意の位置で固定することで長手方向は短くなり操作が容易となる。この場合、固定機構440は電磁ブレーキでも良いし、ねじやロック機構などで機械的に固定しても良い。400aは関節部430を回転した形態を示す。
【0037】
以上述べたような第3の実施の形態では、作業部を少なくとも2自由度以上の多自由度を有する構成とし操作部にて作業部の位置と姿勢とを操作することによって、作業部の操作性を向上させることができる。
【0038】
また、術者は位置操作を操作桿を握る動作を意識せずに、腕を動かすことで自然と位置操作が可能になるため、より先端部の姿勢操作に集中でき微細作業が容易になる。
【0039】
尚、本発明は上記各実施の形態には限定されず種々変形して実施できることは言うまでもない。例えば、鉗子先端部の自由度は2自由度の場合を説明したが、必要に応じて3自由度以上の自由度を有しても良い。
【0040】
また、医療分野だけでなく、精密作業を行う装置にも適用することができる。
【0041】
また、鉗子は術者によって支持されているが必要に応じて鉗子を支持する支持手段を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の医療用マニピュレータの第1の実施の形態の概略斜視図。
【図2】本発明の医療用マニピュレータの第1の実施の形態の操作部を示す概略図。
【図3】本発明の医療用マニピュレータの第1の実施の形態の別の操作部を示す概略図。
【図4】本発明の医療用マニピュレータの第1の実施の形態の姿勢操作方法を示す概略図。
【図5】本発明の医療用マニピュレータの第2の実施の形態の操作部を示す概略斜視図。
【図6】本発明の医療用マニピュレータの第2の実施の形態の操作部を示す模式図。
【図7】本発明の医療用マニピュレータの第3の実施の形態の操作部を示す概略斜視図。
【図8】従来の医療用マニピュレータの概略構成図。
【符号の説明】
【0043】
10 鉗子先端部
20 第1の回転軸
30 第2の回転軸
40 開閉部
50 鉗子後端部
60 操作桿
70 ジョイスティック
80 レバー
90 モータ
100 回転軸
200 スイッチ
210、220、230、240 押しボタンスイッチ
250、260 ダイヤル
270 トラックボール
300 操作桿
310 つまみ部
320、320a、320b ロール軸
330、330a、330b ヨー軸
340 つまみ部中心
350 マニピュレータ長手方向
360 押しスイッチ
400 後端部
410 固定部
420 ジョイスティック
430 回転軸
440 固定機構
400a 回転後の後端部
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目1番1号
【出願日】 平成18年3月6日(2006.3.6)
【代理人】 【識別番号】100075812
【弁理士】
【氏名又は名称】吉武 賢次

【識別番号】100088889
【弁理士】
【氏名又は名称】橘谷 英俊

【識別番号】100082991
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 泰和

【識別番号】100096921
【弁理士】
【氏名又は名称】吉元 弘

【識別番号】100103263
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 康

【公開番号】 特開2006−150105(P2006−150105A)
【公開日】 平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願番号】 特願2006−59799(P2006−59799)