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【発明の名称】 内視鏡光学系
【発明者】 【氏名】秋山 大輔
【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリンパス株式会社内

【氏名】松本 伸也
【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリンパス株式会社内

【要約】 【課題】連続的に変化する波長に対応した所望の結像状態を得ることができる内視鏡光学系を提供する。

【解決手段】透過波長を連続的に変更可能な分光透過率特性可変素子をスコープ光学系3に含む内視鏡光学系である。分光透過率特性可変素子35よる透過波長の変化に同期して、スコープ光学系3に備わる光学素子37,38ないしその保持枠36が移動可能に構成されている。分光透過率特性可変素子35を制御する分光透過率特性可変素子制御手段51と、スコープ光学系3に備わる光学素子ないしその保持枠の移動を制御する移動制御手段52を有し、同一光学系上に配置される、スコープ光学系3に備わる光学素子ないしその保持枠と分光透過率特性可変素子35とが別個に作動するようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透過波長を連続的に変更可能な分光透過率特性可変素子をスコープ光学系に含む内視鏡光学系であって、
前記分光透過率特性可変素子の制御に同期して、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠を移動可能にしたことを特徴とする内視鏡光学系。
【請求項2】
前記分光透過率特性可変素子による透過波長の変化に同期して、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠が移動するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡光学系。
【請求項3】
前記分光透過率特性可変素子を制御する分光透過率特性可変素子制御手段と、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠の移動を制御する移動制御手段を有し、同一光学系上に配置される、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠と前記分光透過率特性可変素子とが別個に作動することを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡光学系。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の波長領域の検出を行うことができる内視鏡として、透過波長を変更可能な分光透過率特性可変素子をスコープ光学系に含む内視鏡が、本件出願人により、例えば、次の特許文献1に提案されている。
また、従来、内視鏡先端部の光学系において、光学素子を動かして結像状態を変える構成が、例えば、次の特許文献2に記載のように知られている。
また、従来、カメラにおいては、可視光と赤外光とにおける最良の結像位置を調整する機能を備えたカメラが、例えば、次の特許文献3に提案されている。
また、従来、内視鏡光源装置において、狭帯域化した波長特性を持つバンドパスフィルタを通して、時系列に青色、緑色、赤色の光を生体へパルス照射し、生体の深さ方向の情報を得る構成が、次の特許文献4に記載のように知られている。
また、従来生体内の組織や細胞の様子を生体内で観察できる手段として、例えば先端に走査型共焦点光学系が組み込まれたプローブ(内視鏡)を体内に挿入し、内蔵の細胞等を直接観察する装置が、特許文献5に提案されている。
【特許文献1】特願2003−172361号明細書
【特許文献2】特許第3186337号公報
【特許文献3】DE10207665A1
【特許文献4】特開2004−8412号公報
【特許文献5】特開2000−171726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1に記載の内視鏡では、使用する波長を広い範囲にわたって変える際に生じる色収差により、最良の結像位置が変わってしまう。この問題は、特に、小型化を図るために1枚レンズ等の枚数の少ないカプセル内視鏡用の光学系や、硬性鏡などのレンズ枚数の非常に多い内視鏡光学系において、色収差の補正が困難な光学系では顕著である。
また、特許文献1に記載の内視鏡では、特許文献1に記載の内視鏡で生体内の色素を観察した場合、観察している色素が生体内においてどの程度の深さに位置するのかを知ることができない。
【0004】
また、特許文献2に記載の光学素子を動かして結像状態を変える構成は、1波長(一般的には、587.6nm等)のみを基準として結像状態を調整するようになっており、波長の変化に対応して結像状態を調整することはできない。
【0005】
また、特許文献3に記載のカメラにおける可視光と赤外光における最良の結像位置の調整機能は、波長を切り替えたときに調整用のガラス板を光路に挿脱する仕組みとなっており、径の細さが求められる内視鏡先端部には適さない。また、特許文献3の構成は、可視光と赤外光の2種類の波長のみの切り替えに対応して結像位置を調整しているだけであり、連続的に多数の波長に切り替えた場合に、各波長に対応した最良の結像位置になるとは限らない。しかも、特許文献3に記載のカメラでは、連続的に切り替わる多数の波長に対応した最量の結像位置を得ようとしても、調整用のガラス板が無数に必要となるため、実現が困難である。
【0006】
また、特許文献4に記載のバンドパスフィルタを用いた光源装置で出射光の波長を切り替える構成では、任意の波長を照射することができず、波長が制限される。この構成において、選択する波長数を増やすには、バンドパスフィルタを増加する必要があるため、装置が大型化し、原価の増加する。また、この構成では出射する波長の変化に応じて最良の結像位置を調整することもできない。
【0007】
また、特許文献5に記載の光学系においては、特に波長別に観察する工夫がなされていない。
【0008】
このように、従来、内視鏡光学系では、連続的に変化する波長に対応した所望の結像状態を得ることができなかった。特に蛍光観察においては、蛍光が非常に微弱光であるため、検出のS/Nを向上させるには対物光学系の開口(NA)を大きくする必要がある。このため、収差の発生量が大きくなり、また観察深度も非常に小さくなり、ボケた画像となっていた。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、連続的に変化する波長に対応した所望の結像状態を得ることができる内視鏡光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため本発明による内視鏡光学系は、透過波長を連続的に変更可能な分光透過率特性可変素子をスコープ光学系に含む内視鏡光学系であって、前記分光透過率特性可変素子の制御に同期して、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠を移動可能にしたことを特徴としている。
【0011】
また、本発明による内視鏡光学系においては、前記分光透過率特性可変素子による透過波長の変化に同期して、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠が移動するようにするのが好ましい。
【0012】
また、本発明による内視鏡光学系においては、前記分光透過率特性可変素子を制御する分光透過率特性可変素子制御手段と、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠の移動を制御する移動制御手段を有し、同一光学系上に配置される、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠と前記分光透過率特性可変素子とが別個に作動するようにするのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、透過波長に合わせて色収差を補正することができ、透過波長を変化させても、同じ被写体を最良の結像状態ではっきりと撮像することができ、また、この波長の進達度を利用した方法に観察を所望する深さのみをフォーカスする構造を加えることができ、生体観察等においてより診断能を増すことが可能な内視鏡光学系が得られる。また、焦点深度が浅くなるようにスコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠を移動させることで、蛍光観察をする場合において、観察を所望する深度の蛍光のみをはっきりと観察することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施例の説明に先立ち、本発明の作用効果について説明する。
本発明の内視鏡光学系のように、透過波長を連続的に変更可能な分光透過率特性可変素子を用いれば、蛍光標識物質からの蛍光波長を分離して、複数の蛍光波長を検出することが可能となる。そして、エタロン等のエアギャップ可変式の分光透過率特性可変素子を用いることで、光学系全体を小型化でき、波長帯域変換速度を高速化でき、低消費電力化できる等の利点がある。また、エアギャップ可変式の分光透過率特性可変素子を介して、蛍光標識物質が発する蛍光のピーク波長を走査することにより、蛍光波長が狭帯域でガウス分布をしているような蛍光標識物質を用いた場合には、その蛍光標識物質が発する蛍光波長を高速かつ確実に分離して検出することができる。
その上で、本発明の内視鏡光学系のように、前記分光透過率特性可変素子の制御に同期して、前記スコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠を移動可能にすれば、各透過波長の結像状態に対応して、各透過波長が撮像素子の撮像面で結像するように、分光透過率可変光学素子による透過波長の変化に同期して、光学素子又は光学素子を保持した保持枠が、前記透過波長の光路上に沿って移動するようにすることで、透過波長に合わせて色収差を補正することができ、透過波長を変化させても、同じ被写体を最良の結像状態ではっきりと撮像することができる。この効果は、特に、小型化を図るために1枚レンズ等の枚数の少ないカプセル内視鏡用の光学系や、硬性鏡などのレンズ枚数の非常に多い内視鏡光学系において、色収差の補正が困難な光学系で顕著である。
【0015】
また、本発明の内視鏡光学系によれば、観察手法の一例として、波長ごとに、観察距離を変えて観察することができる。このため、生体観察等においては、波長の進達度を利用した方法があるが、本発明の内視鏡光学系によれば、この波長の進達度を利用した方法に観察を所望する深さのみをフォーカスする構造を加えることができ、生体観察等においてより診断能を増すことができる。
また、本発明の内視鏡光学系によれば、焦点深度が浅くなるようにスコープ光学系に備わる光学素子ないしその保持枠を移動させることで、蛍光観察をする場合において、観察を所望する深度の蛍光のみをはっきりと観察することができる。
【0016】
図1は本発明の一実施形態にかかる内視鏡光学系の要部原理説明図であり、(a),(c)は分光透過率特性可変素子の分光透過率特性を示すグラフ、(b),(d)は光学構成を示す説明図である。また、図1中、(a),(b)と、(c),(d)とでは、互いに分光透過率特性可変素子による透過波長が異なる。なお、図1(d)では便宜上、図1(b)と共通な一部の構成の図示を省略してある。図2は本発明の内視鏡光学系に適用可能な分光透過率特性可変素子の一構成例の概念図であり、(a)は分光透過率特性可変素子の概略構成図、(b)は(a)に示した分光透過率特性可変素子の分光透過率特性を示すグラフである。図3は本発明の内視鏡装置に適用可能な分光透過率特性可変素子の他の構成例の概念図であり、(a)は分光透過率特性可変素子の概略構成図、(b)は(a)に示した分光透過率特性可変素子の分光透過率特性を示すグラフである。
【0017】
図1に示す内視鏡光学系は、透過波長を連続的に変更可能なエアギャップ可変式の分光透過率特性可変素子35をスコープ光学系3に含んでいる。また、分光透過率特性可変素子35に接続されたフィルタ制御回路51と、スコープ光学系3に備わるレンズ37、撮像素子38等の光学素子、又は、レンズ37、撮像素子38等の光学素子を保持した保持枠36に接続された光学系制御回路52を介して、分光透過率特性可変素子35による透過波長の変化に同期して、レンズ37、撮像素子38等の光学素子、又は、レンズ37、撮像素子38等の光学素子を保持した保持枠36が、前記透過波長の光路上に沿って移動するように構成されている。なお、図1(b)、図1(d)中、4は試料、33は対物レンズ、39は絞り、34は励起光カットフィルタである。また、説明の便宜上、スコープ光学系に備わるファイバスコープは省略して示してある。また、図1(a)、図1(c)中、破線は実施例1の内視鏡装置に適用される励起光カットフィルタの分光透過率特性を示している。
なお、図1の内視鏡光学系では、レンズ37、撮像素子38及びこれらの保持枠36を移動可能に構成されているが、スコープ光学系に備わる光学素子としてプリズムが含まれる場合には、プリズムをこれらの光学素子とともに移動するようにしてもよい。
【0018】
エアギャップ可変式の分光透過率特性可変素子35は、エアギャップ可変式エタロンで構成されている。エアギャップ可変式エタロンは、例えば、図2(a)に示すように、2枚の基板35X−1、35X−2の対向面に反射膜35Y−1、35Y−2を形成し、反射膜35Y−1、35Y−2間にエアギャップdを設けて構成される。そして、基板35X−1側からの入射光に多光束干渉を発生させ、エアギャップdの長さを変えることにより基板35X−2側からの出射光の最大透過率の波長を変化させる。すなわち、図2(a)で示されるエアギャップdを変化させると、図2(b)で示すように最大透過率の波長はTaからTbに変化する。エアギャップは、ピエゾ素子などの圧電素子を用いて変化させることができるようになっている。
【0019】
また、エアギャップ可変式の分光透過率特性可変素子35は、図3(a)に示すような小型のエアギャップ可変式エタロンとして、表面マイクロマニシング法で製作した静電力を用いたタイプのもので構成してもよい。
図3(a)に示す小型エタロンでは、2つの高反射率のハーフミラー35’X−1、35’X−2が対向配置されている。ハーフミラー35’X−1、35’X−2の対向面には表面に金属皮膜や誘電体多層膜が設けられ、反射強度が調整可能になっている。ハーフミラー35’X−1は、弾性変形可能なヒンジ部35’Z−1に接続されている。ハーフミラー35’X−2は、基板35’Y−2に固定されている。ヒンジ部35’Z−1と基板35’Y−2は、互いに間隔を開けてスペーサ35’αに接続されている。また、図3(a)の小型エタロンでは、図示省略したマイクロアクチュエータを用いて対向するハーフミラー35’X−1と35’X−2との間に静電気力を生じさせてヒンジ部35’Z−1を弾性変形させることで対向するハーフミラー35’X−1と35’X−2の間隔を変えることができるようになっている。そして、この間隔を変えることにより透過する波長帯域を変えることができる。
【0020】
また、図3(a)に示す小型エタロンにおいても、エアギャップを所定の間隔で変化させたときに周期的に透過率のピークが現れる。ピークは、前記エアギャップを変化させることで波長を走査して、所定の波長に移動する。
図3(b)はエアギャップ可変式エタロンにおける基準エアギャップと透過波長がピークとなるときのエアギャップとの関係の一例を示す特性図である。
エタロンの基準エアギャップをdとすると、透過波長は(λ/2)・n (但し、nは整数)でピークとなる。従って、基準エアギャップdが定まると、エアギャップが(2/n)dのときに透過波長はピークとなる。
【0021】
従って、エアギャップ可変式エタロンで基準エアギャップに基づいて基板間の間隔(エアギャップ)を制御してピーク波長を走査することにより、所望の波長領域で複数の蛍光波長を検出することができる。このようなエアギャップ可変式エタロンによるエアギャップ調整を用いれば、例えば、内視鏡装置において蛍光標識物質からの蛍光波長を分離して特定の波長帯域のみを検出することができる。
また、光学系全体を小型化でき、波長帯域変換速度を高速化でき、低消費電力化できる。
なお、エアギャップ可変式の分光透過率特性可変素子35のエアギャップ制御は、フィルタ制御回路51で行うようになっている。
【0022】
ここで、図1(a)に示すように分光透過率特性可変素子35の最大透過率の波長がTaであるときと、図1(c)に示すように最大透過率の波長がTbであるときとでは、光学系の色収差により結像位置が変化する。このように波長を変化させたにもかかわらず、光学系及び撮像素子の位置を固定したり、或いは一種類のみのでの結像状態に合わせて撮像素子38の撮像面に結像するように光学系又は撮像素子を移動させたのでは、撮像素子38の撮像面に合焦せず、被写体をはっきりと撮像できない。
【0023】
本実施形態の内視鏡装置では、光学系制御回路52に、スコープ光学系3における透過波長に対応して、透過波長の光が撮像素子38の撮像面で結像する位置に光学素子及びその保持枠等の移動量を設定しておく。そして、例えば、光学系制御回路52が、フィルタ制御回路51を介した分光透過率特性可変素子35による透過波長の変化に同期して、図1(d)に示すように、レンズ37、撮像素子38等の光学素子、又は、レンズ37、撮像素子38等の光学素子を保持した保持枠36を、各透過波長の光が撮像素子38の撮像面で結像する位置に移動させる。
このため、本実施形態の内視鏡光学系によれば、透過波長を変化させても、透過波長に合わせて色収差を補正することができ、同じ被写体を最良の結像位置ではっきりと撮像することができる。
【0024】
図4は本発明の内視鏡光学系による他の実施形態を示す説明図であり、(a)は生体内の波長進達度を示す概念図、(b),(d)は分光透過率特性可変素子による透過波長特性を示すグラフ、(c),(e)は光学配置を示す説明図である。また、図4中、(b),(c)と、(d),(e)とでは、互いに分光透過率特性可変素子による透過波長が異なる。
本実施形態の内視鏡光学系は、光学部材の配置及び基本的な作用は、図1に示した実施形態と同様である。ただし、図示省略した光学系制御回路による光学素子及びその保持部材の制御が図1の実施形態とは異なる。
【0025】
生体の内部の到達する光は波長により異なり、光は長波長であるほど生体内の内部まで到達する。そこで、本実施形態の内視鏡光学系では、生体内における観察を所望する深度に合わせて、図示省略したフィルタ制御回路を介して分光透過率特性可変素子35の透過波長を制御したときに、図示省略した光学系制御回路が、レンズ37、撮像素子38等の光学素子を保持した保持枠36を移動させることによって、波長の生体内進達度に合わせて最良な結像状態となるように合焦距離を変えるようにする。
例えば、490nmの短波長では、生体の表層に焦点を合わせ、例えば、700nmの長波長では、表層から1mm奥に焦点を合わせるように、レンズ37、撮像素子38等の光学素子を保持した保持枠36を移動させる。
図4の実施形態のようにすれば、生体内における異なる深さの部位ごとにはっきりと観察でき、診断能が向上する。また、診断する部位や患部の進行度により、検出する波長を変更する必要もある。本構成では、特定の波長特性を持つバンドパスフィルタとは異なり、装置が大型化やコストアップすることなく、任意の波長を選択することもできる。
【0026】
図5は本発明の内視鏡光学系によるさらに他の実施形態を示す説明図であり、(a)は蛍光試料の蛍光波長帯を示す概念図、(b),(d)は分光透過率特性可変素子による透過波長特性を示すグラフ、(c),(e)は光学配置を示す説明図である。また、図5中、(b),(c)と、(d),(e)とでは、互いに分光透過率特性可変素子による透過波長が異なる。
【0027】
本実施形態の内視鏡光学系も、光学部材の配置及び基本的な作用は、図1に示した実施形態と同様である。ただし、図示省略した光学系制御回路による光学素子及びその保持部材の制御が図1の実施形態とは異なる。
蛍光試料の深度は、その色(観察する蛍光の波長)で区別できる。そこで、本実施形態の内視鏡光学系では、図示省略したフィルタ制御回路を介して所望の蛍光を透過するように分光透過率特性可変素子35を制御する際に、図示省略した光学系制御回路を介して、焦点深度が浅くなるようにレンズ37、撮像素子38等の光学素子、及びこれらを保持した保持枠36を移動させる。このようにすると、観察を所望する深度の蛍光のみがはっきりと観察できる。
また、観察深度を浅くする手法として、明るさ絞りに可変機能を設けても良い。
なお、十分に色収差が補正された光学系や高感度の検出素子を用いて十分に観察深度の広くした光学系においては、波長毎にフォーカス調整をする必要はない。このような光学系では、図5(f)で示すように、生体からの反射光を検出する可視領域(I)のピント
位置と、蛍光体からの蛍光を検出する赤外領域(II)のピント位置、の観察モード別の二
点のフォーカス調整だけでも良い。
【0028】
なお、本発明の内視鏡光学系は、これらの実施形態に限定されるものではなく、例えば、単純に、各波長それぞれで、異なる観察深度を走査して観察することができるように、光学制御回路を構成してもよい。
【実施例1】
【0029】
以下、本発明の内視鏡光学系のより具体的な実施例について図面を用いて説明する。
図6は本発明の実施例1にかかる内視鏡光学系を備えた内視鏡装置を示す概略構成図である。
実施例1の内視鏡装置1は、光源光学系2と、スコープ光学系3と、プロセッサ5と、モニタ6とで構成されている。生体4には、図7、図8に示すような量子ドットが蛍光標識物質として予め投与されている。
【0030】
図7は量子ドットの例を示す説明図である。図7において、量子ドット80は、例えば、直径2〜5nmの半導体CdSeの微小球を核として、その表面にZnSをコートしてシェル層を形成する。このシェル層に、硫黄分子を介して水酸基を吸着させる。この水酸基の一部を目標とするたんぱく質と結合させるものである。
【0031】
図8は量子ドットの励起・発光スペクトルを示す特性図である。図8において、破線は量子ドットの励起光のスペクトル分布、実線は、CdSe及びInPからなる粒径の異なる量子ドットの発光スペクトル分布である。図8に示したように、励起光は900nm程度の領域まで分布する。また、量子ドットは近赤外波長領域で蛍光を発するものである。量子ドットの蛍光波長は従来の蛍光色素の波長と比較して次のような特徴がある。
(1)発光スペクトルの半値幅が中心波長の1/200程度(典型的には20〜30nm)であり、蛍光色素の約1/3程度に狭くなっている。
(2)発光スペクトルのピーク波長は、量子ドットの大きさ(径)及び材質を選択することにより、およそ400nm〜2000nmぐらいの範囲で比較的自由に設定することが可能である。すなわち、量子ドットの材質の設定や径の調整により、狭帯域のガウス分布の作成が可能である。
(3)励起スペクトルは、発光スペクトルの中心波長の位置に関わらず、可視光〜紫外光領域では短波長側程その強度が強くなっている。
【0032】
光源光学系2は、光源21と、オプションフィルタ22と、RGBフィルタ23を有している。光源21は、例えばキセノンランプを用いて構成されており、可視光領域、及び蛍光標識物質の励起波長を含む波長領域の光を放射する。
オプションフィルタ22は、光源21から発光される光の光路上に設けられており、光源21から放射された光の透過波長を可視光帯域及び赤外光帯域の波長域を含む光成分に制限する帯域制限(バンドパス)フィルタとして機能する。
【0033】
図9は実施例1の内視鏡装置において帯域制限フィルタとして機能するオプションフィルタ22の一構成例を示す説明図、図10はオプションフィルタ22の透過率特性を示す特性図である。
図9に示すように、オプションフィルタ22は、遮光性の円板の周方向に可視光透過フィルタ27Xと赤外光透過フィルタ27Yを設けて構成されている。この円板は、回転軸25により回転可能に構成されている。そして、図10に示すように、光源側から入射した光のうち、可視域(400〜700nm)のみの光を射出する特性と、波長域600〜2000nmの波長域のうち650〜900nmまでの赤外光を含む光とを射出する特性を有している。
【0034】
光路上に可視光透過フィルタ27Xを配置した場合には、図10の特性TVISに示したように可視領域の波長の光を透過させる。また、光路上に赤外光透過フィルタ27Yを配置した場合には、図10の特性TIRに示したように赤外領域の波長の光を透過させる。すなわち、オプションフィルタ22は、円板の光路上の位置を変えることにより、可視領域の波長の光または赤外領域の波長の光のいずれかを選択して透過させる機能を有している。このように、光源21の光はオプションフィルタ22により、可視光帯域から励起光の赤外帯域に至る波長帯域の光成分が透過されるようになっている。
【0035】
図11は回転フィルタ23の一構成例を示す説明図、図12は回転フィルタ23の透過率特性を示す特性図である。
回転フィルタ23は、図11に示すように、遮光性の円板の周方向に青色フィルタ29Xと、緑色フィルタ29Yと、赤色フィルタ29Zとを設けて構成されており、可視光の青色光(B)、緑色光(G)、赤色光(R)を透過させる特性を有している。この円板は、回転軸26により回転可能に構成されている。
そして、回転フィルタ23は、円板を回転させて青色フィルタ29X、緑色フィルタ29Y、赤色フィルタ29Zを光路上に配置することにより、それぞれ図11に示すようにB、G、Rの各色の光が透過する。なお、図11の例では、青色フィルタ29X、緑色フィルタ29Y、赤色フィルタ29Zは、それぞれ青色、緑色、赤色の波長の光を透過する他に、赤外領域の光を透過する特性を有している。
【0036】
ここで、図10、図12の特性と、図8の特性とを参照すると、光源光学系2は、可視光領域、赤外光領域のいずれの領域の光を透過した場合でも、図8で示したような量子ドットを用いた蛍光標識物質の励起波長の少なくとも一部を含むことになる。また、光源光学系2からスコープ光学系3には、600nm〜2000nmの波長帯域のうち少なくとも一部を、蛍光標識物質を投与した被検査対象物(生体)に照射するような光が出力される。ここで、600nm〜2000nmの波長帯域は、近赤外領域での散乱、吸収が少なく深達度に優れており、この波長領域での励起及び複数の励起波長が存在するので、生体の癌診断に適合している。
このように、回転フィルタ23は、円板を回転させることにより、面順次光を被検査体に照射することができるようになっている。
【0037】
図6に戻り、スコープ光学系3は、ライドガイドファイバ31と、照明レンズ32と、対物レンズ33と、絞り39と、レンズ37と、励起光カットフィルタとしての固定フィルタ34と、エアギャップ可変式の分光透過率特性可変素子35と、撮像素子としてのCCDを用いた検出器(受光部)38を有している。
光源光学系2の回転フィルタ23で透過された帯域波長の光は、ライトガイドファイバ31で伝送され、照明レンズ32を通して生体4を照明する。上述のように、スコープ光学系3は、励起光としては600nm〜2000nmの波長帯域のうち少なくとも一部を被検査体である生体4に照射する。照明レンズ32は、生体4の照明手段として機能している。
【0038】
対物レンズ33は、照明レンズ32に隣接して設けられている観察窓(図示を省略)に取り付けられている。対物レンズ33には、照明レンズ32で照明された生体4からの反射光及び蛍光標識物質からの蛍光が入射され、その結像位置に像を結ぶ。この光学像は、レンズ37、固定フィルタ34、分光透過率特性可変素子35、レンズ37を通り、受光部38の撮像面上に伝送される。
【0039】
固定フィルタ34は、可視光成分と赤外の蛍光の波長帯域を透過し、赤外の励起光の波長帯域を遮断する分光透過率特性を有している。
エアギャップ可変式の分光透過率特性可変素子35は、図2、図3を用いて説明したいずれかのタイプのエタロンを用いて構成されている。また、分光透過率特性可変素子35はフィルタ制御回路51と接続されている。
レンズ37又はレンズ37を保持する保持枠36と、受光部38は、光学系制御回路52に接続されている。また、レンズ37又はレンズ37を保持する保持枠36と、受光部38の少なくともいずれかは、光学系制御回路52を介して光路上を移動可能に構成されている。
【0040】
プロセッサ5は、フィルタ制御回路51と、光学系制御回路52と、プリプロセス回路53と、A/D変換器54と、映像信号処理回路55と、D/A変換器56を備えている。
【0041】
フィルタ制御回路51は、光源光学系2に備わる各フィルタ22,23の光路上の位置合わせ及び回転駆動を制御するとともに、それに合わせて分光透過率特性可変素子35に設けられている、例えば圧電素子に印加する電圧を制御して透過波長帯域を移動させるように構成されている。また、フィルタ制御回路51は、光学系制御回路52、プリプロセス回路53及び映像信号処理回路55に所定の制御信号を入力するようになっている。
【0042】
光学系制御回路52は、分光透過率可変光学素子35より制御信号として送られる透過波長の変化情報に同期して、各透過波長の結像状態に対応して、各透過波長が撮像素子である受光部38の撮像面で結像するように、レンズ36もしくはレンズを保持した保持枠37又は受光部38を移動させるように構成されている。
【0043】
プリプロセス回路53は、受光部38を経て入力される画像信号に対して、増幅器によるゲインの調整や、ホワイトバランス補正回路等による可視光画像のホワイトバランス調整等の前処理を行うように構成されている。
【0044】
A/D変換器54は、プリプロセス回路53から入力されたアナログの画像信号をデジタル信号に変換する。
映像信号処理回路55は、A/D変換器54でデジタル信号に変換された信号を、図示省略した画像メモリに格納した後、画像強調、ノイズ除去等の画像処理や、蛍光画像、通常画像、文字情報の同時表示のための表示制御等を行うように構成されている。なお、映像信号処理回路55では、さらに、蛍光像と通常画像との重ね合わせ表示や、通常画像と蛍光像の画像間演算による蛍光像の規格化の処理も行うことができる。
【0045】
D/A変換器56は、映像信号処理回路55から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換する。
D/A変換器56から出力される映像信号はモニタ6に入力され、CCD38の撮像面に結像された蛍光像及び可視光像をモニタ6の表示面に表示することができるようになっている。
【0046】
このように構成された実施例1の内視鏡装置を用いて、生体の観察を行う場合の一例を説明する。
まず、通常観察を行う場合について説明する。この場合は、図9に示したオプションフィルタ22に備わる可視光透過フィルタ27Xが光路上に固定され、可視光を透過し赤外光を遮光する。この状態で、図11に示したRGBフィルタ23が所定の回転数で回転することにより、赤外励起光(IR)は遮光され、青(B)、緑(G)、赤(R)の光を透過し、被検査体である生体4にはこれらの光が順次照射される。
【0047】
図6に示したスコープ光学系3において、分光透過率特性可変素子35の圧電素子の駆動電圧をV0とする。実施例1では、駆動電圧がV0のときに、周期的に発生する分光透過率特性可変素子35の透過率のピークのうち可視光帯域でのピーク位置を、照明光B,G,Rの中心波長とほぼ一致するようにしている。したがって、駆動電圧V0が一定の状態で、撮像素子としての検出器38の受光面では生体への照明光に対応して、青(B)と蛍光(IR0)、緑(G)と蛍光(IR0)、赤(R)と蛍光(IR0)の波長成分の光像を受光する。
【0048】
検出器38で受光された光像は、光電変換されることによりR,G,Bの色成分画像の信号に変換されて、プロセッサ5に入力される。プロセッサ5で、上述したように信号処理を行った後に、モニタ6に可視光による通常の内視鏡画像が表示される。
【0049】
次に、蛍光像と通常画像を同時観察する場合の一例について説明する。この場合には、例えば、オプションフィルタ22の可視光透過フィルタ27Xで最初の1フレームにおいて可視光を透過し、続く1フレームにおいて赤外透過フィルタ27Yで赤外光を透過させてオプションフィルタ22を1回転させる。このため、オプションフィルタ22は、可視光と赤外光を交互に透過する状態となる。
【0050】
この状態で、RGBフィルタ23を、オプションフィルタ22の1/3の回転数で回転させる。すなわち、帯域制限フィルタ22が1回転して、可視光と赤外光を交互に透過した状態で青色(B)フィルタ29Xを光路上に固定して、透過光を被検査体に照射する。同様にして、オプションフィルタ22が1回転して、可視光と赤外光を交互に透過した状態で、緑色(G)フィルタ29Yと赤色(R)フィルタ27Zをそれぞれ光路上に固定して、透過光を被検査体に照射する。
【0051】
ここで、図6に示したスコープ光学系において、オプションフィルタ22で可視光を透過し、RGBフィルタ23で青色(B)フィルタを光路上に固定した状態での、分光透過率特性可変素子35の圧電素子の駆動電圧を、通常観察時と同じV0とする。オプションフィルタ22で赤外光を透過した状態での前記駆動電圧をV1とする。
【0052】
次に、RGBフィルタ23で緑色(G)フィルタを光路上に固定した状態での、オプションフィルタ22で可視光を透過した状態の前記駆動電圧をV0とし、オプションフィルタ22で赤外光を透過した状態の前記駆動電圧をV2とする。
また、RGBフィルタ23で赤色(R)フィルタを光路上に固定した状態での、オプションフィルタ22で可視光を透過した状態の前記駆動電圧をV0とし、オプションフィルタ22で赤外光を透過した状態の前記駆動電圧をV3とする。
なお、分光透過率特性可変素子35を制御する駆動電圧をV0≠V1≠V2≠V3とし、各々の駆動電圧での透過帯域は異なるようにしている。
【0053】
検出器38の受光面の前方には励起光を遮光する固定フィルタ34が配置されている。これにより、検出器38の受光面には、生体への照射光に対応して順次、青(B)と蛍光(IR0)、蛍光(IR1)、緑(G)と蛍光(IR0)、蛍光(IR2)、赤(R)と蛍光(IR0)、蛍光(IR3)の波長成分のみの画像を受光する。なお、分光透過率特性可変素子35を制御する駆動電圧をV0≠V1≠V2≠V3とし、各々の駆動電圧での透過帯域は異なるようにしているため、順次検出する蛍光の波長帯域はIR0≠IR1≠IR2≠IR3となる。したがって、青、緑、赤の3種類の可視光像と、IR1、IR2、IR3の3種類の蛍光像が得られる。このように、蛍光観察においては、異なる3種類の量子ドットからの蛍光波長を分離し抽出することができる。
【0054】
このように、蛍光像と通常光像を同時観察する場合には、オプションフィルタ22とRGBフィルタ23とは、ある周期で同期して回転するように制御される。また、分光透過率特性可変素子35の圧電素子の駆動電圧は、オプションフィルタ22とRGBフィルタ23と同期して制御される。また、検出器38では、RGBフィルタ23とオプションフィルタ22の位置に応じて、青、緑、赤の可視光、あるいは赤外の蛍光を受光する。検出器38の出力信号はプロセッサ5により信号処理されモニタ6に蛍光画像と通常観察画像とが表示される。
【0055】
この観察過程に際し、本実施例の内視鏡光学系は、分光透過率特性可変素子35を透過する波長の変化に同期して光学系制御回路52が、各透過波長ごとに異なる結像状態に対応して、各波長の光がそれぞれ色収差を補正された状態で検出器38の撮像面上に結像するように、レンズ37や検出器38、又はレンズ37を保持する保持枠36を光軸方向に移動させる。なお、実際の移動は、光学系制御回路52に接続された図示省略したモータ等の駆動手段で行うようになっている。
このため、分光透過率特性可変素子35で透過波長を変化させも、透過波長に合わせて色収差を補正することができ、同じ被写体をはっきりと撮像することができる。
【0056】
なお、プロセッサ5は、分光透過率を波長別に分割することによって、蛍光を発しているピーク波長を演算又はカウントし、カウント数に応じて表示画像に擬似カラー表示させる。また、前記透過率を波長別に分割することによって、蛍光を発しているピーク波長を演算又はカウントし、プロセッサ5に設けたメモリ内にある蛍光ピーク波長対たんぱく質のテーブル(図示省略)を参照し、生体内たんぱく質を同定すると共に、同定したたんぱく質をデータとしてメモリ内に格納する。このように、カウント数に応じて表示画像に擬似カラー表示させるようにすれば、癌などの病巣部の現状を誤差なく確実に観察することができる。また、個別の生体内たんぱく質のデータを随時メモリから読み出し、基準となる蛍光ピーク波長対たんぱく質のテーブルのデータと対比して診断などに利用することができる。
【0057】
また、蛍光標識物質に用いる量子ドットの蛍光波長は、図8に示したように材質及び外径の調整により狭帯域ガウス分布の作成が可能である。例えば、青のシリーズとしては、CdSeナノクリスタル使用で、各外径は2.1、2.4、3.1、3.6、4.6nmである。また、緑のシリーズでは、InPナノクリスタル使用で、各径は3.0、3.5、4.6nmである。さらに、赤のシリーズでは、InAsナノクリスタル使用で、各径は2.8、3.6、4.6、6nmである。
【0058】
そして、実施例1において蛍光標識物質(タグ)として、材料をCdSe、InP、InAsとした外径2.1〜6.6nmの範囲で、検出対象の生体(プロテイン)の数に合わせて、外径を複数変えた量子ドットを利用してもよい。複数の外径を有する量子ドットは、それぞれ親水性、抗体特性、生体適合性を持つように合成する。その前提として、材料及び外径を各々最適化し、分光特性は赤外励起、赤外蛍光の条件内に設定することが望ましい。
【0059】
上記のように量子ドットを利用すれば、蛍光標識物質(タグ)を投与して、光を照射し、生体の外部まで近赤外波長領域の蛍光を取り出せるので、生体深部で発生した初期の癌でも正確に観察できる。このため、生体へ投与した蛍光標識物質を利用することで、早期癌を診断することが可能となる。また、内視鏡装置による高度の診断能が可能となる。量子ドットは顕微鏡下で1時間以上の観察が可能で蛍光寿命が長く、蛍光が明るいという特性を有している。また、生体深部では実質的には励起光が赤外光の領域に限定されるため、光源側では赤外光のバンドパスフィルタは不要である。なお、量子ドットでは各蛍光波長は狭帯域でガウス分布をしており、エタロンタイプのバンドパスフィルタで検出する特性に適合している。
【0060】
また、上述したように、生体の内部の到達する光は波長により異なる。そこで、本実施例の内視鏡光学系において、生体内における観察を所望する深度に合わせて、フィルタ制御回路51を介して分光透過率特性可変素子35の透過波長を制御したときに、光学系制御回路52が、レンズ37、撮像素子38等の光学素子、及びこれらの光学素子を保持した保持枠36を移動させることによって、波長の生体内進達度に合わせて最良な結像状態となるように合焦距離を変えるようにしてもよい。このようにすれば、生体内における異なる深さの部位ごとにはっきりと観察でき、診断能が向上する。
【0061】
また、上述したように、蛍光試料の深度は、その色(観察する蛍光の波長)で区別できる。そこで、本実施例の内視鏡光学系では、フィルタ制御回路51を介して所望の蛍光を透過するように分光透過率特性可変素子35を制御する際に、光学系制御回路52を介して、焦点深度が浅くなるようにレンズ37、撮像素子38等の光学素子、及びこれらを保持した保持枠36を移動させてもよい。このようにすると、観察を所望する深度の蛍光のみがはっきりと観察できる。
また、観察深度を浅くする手法として、明るさ絞りに可変機能を設けても良い。
なお、十分に色収差が補正された光学系や十分に観察深度の広い光学系においては、波長毎にフォーカス調整をする必要はない。このような光学系では、図5(f)で示すように、生体からの反射光を検出する可視領域(I)のピント位置と、蛍光体からの蛍光を検
出する赤外領域(II)のピント位置、の観察モード別の二点のフォーカス調整だけでも良
い。これにより、制御の簡略化が図れる。
【0062】
なお、蛍光標識物質としては、近赤外領域において複数の異なる蛍光を発する物質であればよく、量子ドットに限られるものではない。
他の例として、有機蛍光色素等が上げられる。図17は、MolecularProbes社の有機蛍光色素“Alexa Fluor647”と“Alexa Fluor680”の吸収及び蛍光スペクトルを示す特性図である。
図中、実線はAlexa Fluor647の吸収スペクトルを示し、点線はAlexa Fluor647の蛍光スペクトルを示し、一点鎖線はAlexa Fluor680の吸収スペクトルを示し、二点鎖線はAlexa Fluor680の蛍光スペクトルを示す。また、斜線部分は励起光の波長を示す。図で示すように、620nm近傍の波長の励起光を用いることにより、近赤外波長領域で2種類(Alexa Fluor647、Alexa Fluor680)の異なる波長の蛍光が得られる。量子ドットに限らず、このような特性の蛍光色素を極早期癌診断のための蛍光標識物質として用いてもよい。
【実施例2】
【0063】
図13は本発明の実施例2にかかる内視鏡光学系を備えたカプセル内視鏡装置の要部を示す概略構成図である。
実施例2のカプセル内視鏡装置94は、装置本体の内部に光源装置2とライトガイド31の代わりにLED90を備えるとともに、電源を電池(またはコンデンサ)91で構成し、更に、検出した信号をアンテナ92を用いて無線で外部装置95へ送信する点が、図6に示した実施例1の内視鏡装置とは、大きく異なる。
カプセル型内視鏡装置94には、制御回路5と、コンデンサまたは電池を用いた電源96と、電源96と電気的に接続されるコイル91と、位置制御用マグネット93と、アンテナ92が設けられている。また、カプセル型内視鏡装置94は、LED90からの出射光を透明カバー97を通して生体に照射し、その反射光または蛍光をレンズ37に導入するようになっている。
コイル91は、外部からの磁力線で位置制御用マグネット93が磁化されたときに磁気誘導により電流を流して電源96のコンデンサの充電又は電池の充電を行う。位置制御用マグネット93は、外部からの電磁波によりカプセル型内視鏡装置94を移動させるエネルギー源となっている。アンテナ92は、検出器38の検出信号を外部装置95に送信する。
外部装置95には、アンテナ95aと、モニタ95bと、制御回路(図示省略)が設けられている。アンテナ95aは、カプセル型内視鏡装置94のアンテナ92から送信される信号を受信するとともに、位置制御用マグネット93に対して電磁波、即ち、磁気エネルギーを送信する。モニタ95bは、アンテナ92から送信されアンテナ95aで受信される検出器38の検出信号に基づいて制御回路(図示省略)を介して形成される画像を表示する。
その他の構成及び作用効果は実施例1の内視鏡装置とほぼ同じである。
実施例2のカプセル内視鏡装置では、小型化を図るためレンズ37が1枚で構成されている。このため色収差の補正を十分に行うことが出来ない。従って、可視領域(I)、赤
外領域(II)の全ての領域において、異なる波長を検出する際には、常にフォーカス調整
を行う必要がある。しかるに、実施例2のカプセル内視鏡装置によれば、異なる波長を検出する際には、常にフォーカス調整を行うことができるため、常にピントの合った鮮明な画像が得られる。
【実施例3】
【0064】
実施例3の内視鏡装置は、光源装置2のオプションフィルタ22と回転フィルタ23の構成が、実施例1の内視鏡装置と異なる。
具体的には、図9で示すオプションフィルタの開口部27X,27Yは、帯域制限のフィルタを設置せずに素通し窓として用いる。また、図11で示す回転フィルタの開口部29X,29Y,29Zも、帯域制限のフィルタを設置せずに素通し窓として用いる。その他の構成及び作用は実施例1の内視鏡装置とほぼ同じであり、これにより生体からの反射光を波長別で、且つ深さ方向の情報を同時に取得することができる。
実施例3の内視鏡装置によれば、光源装置2から可視光(白色光)を時系列にパルス照射できる。そして、回転フィルタの駆動と同期して波長可変フィルタの透過特性を変更し、その波長特性に応じてフォーカス調整を行う。これにより、回転フィルタの遮光期間に、撮像素子38からプロセッサ5へ電気信号を転送すれば、撮像素子38から素子シッタの機能を省くことが出来、使用できる撮像素子の選択肢が広げることができる。
なお、R・G・B等の可視光観察の場合には、オプションフィルタの開口部27X、または27Yに、図10で示す可視透過フィルタ帯域制限フィルタTVISを配置してもよい。これにより、プラスチック等の耐熱性の低い安価なライトガイドを用いることができる。
【実施例4】
【0065】
図14は本発明の実施例4にかかる内視鏡光学系を備えた内視鏡装置の要部を示す概略構成図である。
実施例4の内視鏡装置は、図6で示す光源装置2のオプションフィルタ22と回転フィルタ23を省いた点が、実施例3の内視鏡装置と異なる。
その他の構成及び作用は実施例3の内視鏡装置とほぼ同じであり、これにより生体からの反射光を波長別で、且つ深さ方向の情報を同時に取得することができる。特に波長可変分光素子により任意の波長を選択できる。
実施例4の内視鏡装置によれば、光源装置2からは可視光(白色光)を常時照射できる。そして、撮像素子38の素子シャッタと同期して波長可変フィルタの透過特性を変更し、その波長特性に応じてフォーカス調整を行う。これにより、光源装置2からはオプションフィルタ及び回転フィルタの機能を省くことが出来、光源装置の小型化及び原価低減ができる。
なお、R・G・B等の可視光観察の場合には、光源21とライトガイド31の光路間に図10で示す可視透過フィルタ帯域制限フィルタTVISを配置してもよい。これにより、プラスチック等の耐熱性の低い安価なライトガイドを用いることができる。
【実施例5】
【0066】
図15は本発明の実施例5にかかる内視鏡光学系を備えた内視鏡装置の要部を示す概略構成図である。
実施例5の内視鏡装置は、スコープ光学系3の対物レンズ33〜検出器38までの構成が、実施例1の内視鏡装置とは異なる。
具体的には、スコープ光学系3は、生体4から検出器38に向かって順に、対物レンズ37と、固定フィルタ34と、分光透過率特性可変素子35と、イメージガイド用単ファイバ31’と、レンズ37’と、検出器38を有して構成されている。その他の構成及び作用効果は実施例1の内視鏡装置とほぼ同じである。
実施例5のスコープ光学系3では、単ファイバ31’のコアがピンホールの役目を果たす、共焦点光学系となっている。これにより、分光素子の透過率特性とレンズ保持枠によるフォーカス調整を独立して行うことで、生体の波長特性を含めた立体像が得られる小型の共焦点光学系が可能となる。なお、図中レンズ37は1枚であるが、複数枚からなる構成でも良い。
【実施例6】
【0067】
図16は本発明の実施例6にかかる内視鏡光学系を備えた内視鏡装置の要部を示す概略構成図であり、実施例5の内視鏡装置とは、固定フィルタ34と、分光透過率特性可変素子35の配置が異なる。
具体的には、スコープ光学系3は、生体4から検出器38に向かって順に、対物レンズ37と、イメージガイド用単ファイバ31’と、レンズ37’と、固定フィルタ34と、分光透過率特性可変素子35と、レンズ37”と、検出器38を有して構成されている。その他の構成及び作用効果は実施例1の内視鏡装置とほぼ同じである。
実施例6の内視鏡装置のスコープ光学系3によれば、プローブ先端部の小型化が図れる。
【0068】
なお、これら上記実施例においては、光学素子又は光学素子を保持する保持枠を、分光透過率特性可変素子を通過する赤外領域の蛍光波長による結像状態に対応して、各透過波長の光が撮像素子の撮像面で結像するように移動させたが、分光透過率特性可変素子を通過する波長が異なるものであれば、蛍光波長として用いる赤外領域の波長の光の他に通常のR・G・B等の可視光についてもそれぞれの波長による結像状態に対応して、各透過波長の光が撮像素子の撮像面で結像するように構成してもよい。このようにした場合には、通常のカラー観察において色収差が補正された鮮明な像が得られる。
また、観察深度を浅くする手法として、明るさ絞りに可変機能を設けても良い。
なお、十分に色収差が補正された光学系や十分に観察深度の広い光学系においては、波長毎にフォーカス調整をする必要はない。このような光学系では、生体からの反射光を検出する可視領域(I)のピント位置と、蛍光体からの蛍光を検出する赤外領域(II)のピ
ント位置、の観察モード別の二点のフォーカス調整だけでも良い。これにより、制御の簡略化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の一実施形態にかかる内視鏡光学系の要部原理説明図であり、(a),(c)は分光透過率特性可変素子の分光透過率特性を示すグラフ、(b),(d)は光学構成を示す説明図である。
【図2】本発明の内視鏡光学系に適用可能な分光透過率特性可変素子の一構成例の概念図であり、(a)は分光透過率特性可変素子の概略構成図、(b)は(a)に示した分光透過率特性可変素子の分光透過率特性を示すグラフである。
【図3】本発明の内視鏡装置に適用可能な分光透過率特性可変素子の他の構成例の概念図であり、(a)は分光透過率特性可変素子の概略構成図、(b)は(a)に示した分光透過率特性可変素子の分光透過率特性を示すグラフである。
【図4】本発明の内視鏡光学系による他の実施形態を示す説明図であり、(a)は生体内の波長進達度を示す概念図、(b),(d)は分光透過率特性可変素子による透過波長特性を示すグラフ、(c),(e)は光学配置を示す説明図である。
【図5】本発明の内視鏡光学系によるさらに他の実施形態を示す説明図であり、(a)は蛍光試料の蛍光波長帯を示す概念図、(b),(d)は分光透過率特性可変素子による透過波長特性を示すグラフ、(c),(e)、(f)は光学配置を示す説明図である。
【図6】本発明の実施例1にかかる内視鏡光学系を備えた内視鏡装置を示す概略構成図である。
【図7】量子ドットの例を示す説明図である。
【図8】量子ドットの励起・発光スペクトルを示す特性図である。
【図9】実施例1の内視鏡装置において帯域制限フィルタとして機能するオプションフィルタ22の一構成例を示す説明図である。
【図10】オプションフィルタ22の透過率特性を示す特性図である。
【図11】実施例1の内視鏡装置における回転フィルタ23の一構成例を示す説明図である。
【図12】回転フィルタ23の透過率特性を示す特性図である。
【図13】本発明の実施例2にかかる内視鏡光学系を備えたカプセル内視鏡装置を示す概略構成図である。
【図14】本発明の実施例4にかかる内視鏡光学系を備えた内視鏡装置を示す概略構成図である。
【図15】本発明の実施例5にかかる内視鏡光学系を備えた内視鏡装置の要部を示す概略構成図である。
【図16】本発明の実施例6にかかる内視鏡光学系を備えた内視鏡装置の要部を示す概略構成図である。
【図17】有機蛍光色素の励起・発光強度を示す特性図である。
【符号の説明】
【0070】
1 内視鏡装置
2 光源光学系
3 内視鏡先端部(スコープ光学系)
4 生体
5 プロセッサ
6 モニタ
21 光源
22 オプションフィルタ
23 回転フィルタ(RGBフィルタ)
25、26 回転軸
27X 可視光透過フィルタ
27Y 赤外光透過フィルタ
29X 青色フィルタ
29Y 緑色フィルタ
29Z 赤色フィルタ
31 ライトガイドファイバ
31’ イメージガイド用単ファイバ
32 照明レンズ
33 対物レンズ
34 固定フィルタ
35 分光透過率特性可変素子
35X−1、35X−2、35’Y−2 基板
35Y−1、35Y−2 反射膜
35’X−1、35’X−2 ハーフミラー
35’Z−1 ヒンジ部
35’α スペーサ
36 保持枠
37、37’、37” レンズ
38 検出器(撮像素子)
51 フィルタ制御回路
52 光学系制御回路
53 プリプロセス回路
54 A/D変換器
55 映像信号処理回路
56 D/A変換器
80 量子ドット
90 LED
91 電池、又はコンデンサ
92 アンテナ
93 位置制御用マグネット
94 カプセル内視鏡装置
95 外部装置
95a アンテナ
95b モニタ
96 電源
97 透明カバー

【出願人】 【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号
【出願日】 平成16年10月27日(2004.10.27)
【代理人】 【識別番号】100065824
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 泰司

【識別番号】100104983
【弁理士】
【氏名又は名称】藤中 雅之

【公開番号】 特開2006−122195(P2006−122195A)
【公開日】 平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願番号】 特願2004−312330(P2004−312330)