| 【発明の名称】 |
生体内組織閉鎖具および生体内組織閉鎖装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】川浦 政克 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
【氏名】丸山 智司 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】生体内組織膜の肉厚や硬さ等の条件にかかわらず、生体内組織膜に形成された傷穴を容易かつ確実に閉じることができて、完全に止血することができるとともに、安全性の高い生体内組織閉鎖具および生体内組織閉鎖装置を提供すること。
【解決手段】本発明の生体内組織閉鎖具1は、生体内組織膜の傷穴の周辺部を覆うシール部2と、折り畳まれた第1の形態と拡幅した第2の形態とに変形可能である枠状をなす変形部4と、変形部4を第2の形態に保持する固定部3とを備える。固定部3が変形部4の第1の開口部43および第2の開口部44を貫通し、第2の開口部44が固定部3と係合して固定されることにより変形部4が第2の形態に保持されたとき、第1の開口部43が固定部3を挿通しつつ固定部3に対し変位することにより、シール部2と変形部4との間に形成される生体内組織膜の挟み代の大きさが可変となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 生体内組織膜を貫通する傷穴を閉じる生体内組織閉鎖具であって、 前記生体内組織膜の一方の面側から前記傷穴および前記傷穴の周辺部を覆うシール部と、 折り畳まれた第1の形態と、前記シール部との間に前記生体内組織膜を挟持可能に拡幅した第2の形態とに変形可能である枠状をなす変形部と、 一端が前記シール部に連結して設けられ、前記変形部を前記第2の形態に保持する固定部とを備え、 前記変形部は、前記固定部が貫通可能な第1の開口部と、前記固定部が貫通可能であるとともに前記第1の開口部よりも前記シール部から遠くにある前記第2の開口部とを有し、 前記固定部が前記第1の開口部および前記第2の開口部を貫通し、前記第2の開口部が前記固定部と係合して固定されることにより前記変形部が前記第2の形態に保持され、 前記変形部が前記第2の形態になったとき、前記第1の開口部が前記固定部を挿通しつつ前記固定部に対し変位することにより、前記シール部と前記変形部との間に形成される前記生体内組織膜の挟み代の大きさが可変であることを特徴とする生体内組織閉鎖具。 【請求項2】 前記変形部が前記第1の形態になっているとき、前記固定部は、前記第1の開口部を貫通しているとともに前記第2の開口部を貫通していない請求項1に記載の生体内組織閉鎖具。 【請求項3】 前記変形部が前記第1の形態になっているとき、前記固定部は、前記第1の開口部および前記第2の開口部を貫通している請求項1に記載の生体内組織閉鎖具。 【請求項4】 前記固定部は、帯状をなし、その厚さ方向の側には容易に倒れて前記シール部に寄り添うように変形可能であり、前記厚さ方向と直交する方向の側には倒れにくいように構成されている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。 【請求項5】 前記固定部の根元付近の部分は、他の部分に対し幅が広くなっている請求項4に記載の生体内組織閉鎖具。 【請求項6】 前記変形部は、多角形状をなし、その角部のうちの2つに前記第1の開口部および前記第2の開口部がそれぞれ形成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。 【請求項7】 前記変形部は、4つのリンクを一体的に形成してなる四角形をなし、該四角形の対角位置にある2つの角部同士が接近、離間するように変形するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。 【請求項8】 生体吸収性材料で構成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。 【請求項9】 請求項1ないし8のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具を生体内に配置し、該生体内組織閉鎖具により生体内組織膜を貫通する傷穴を閉じる生体内組織閉鎖装置であって、 請求項1ないし8のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具と、 先端部において前記生体内組織閉鎖具を着脱自在に保持する長尺部材とを有することを特徴とする生体内組織閉鎖装置。 【請求項10】 前記生体内組織閉鎖具の変形部を前記第1の形態から前記第2の形態へ変形させる操作を行う操作手段を有する請求項9に記載の生体内組織閉鎖装置。 【請求項11】 前記操作手段は、前記固定部を基端側へ牽引する牽引手段と、前記変形部を先端側へ押圧する押圧手段とを有する請求項9または10に記載の生体内組織閉鎖装置。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、生体内組織閉鎖具および生体内組織閉鎖装置に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、血管や他の生体内組織中にカテーテル等の診断或いは治療用装置を挿入してなされる低侵襲手術が広く行なわれている。例えば、心臓の冠状動脈の狭窄の治療においては、その治療処置を行なうために血管内へカテーテル等の器具を挿入することが必要になる。 【0003】 このようなカテーテルの血管内への挿入は、通常、大腿部を切開して形成した穿刺孔を介して行なわれる。従って、治療処置が終了した後に、穿刺孔の止血を行なう必要があるが、大腿動脈からの出血時の血圧(出血血圧)は高いため、医療従事者が長時間の間、手指で押さえ続ける(用手圧迫)等の過酷な作業が必要となる。 【0004】 カテーテルが挿入される大腿動脈の血管壁の肉厚は、健常な血管の場合で約1mmである。これに対し、心臓等へのカテーテルによる処置および検査を受ける患者においては、心臓以外の箇所においても何らかの血管疾患を患っている可能性があり、カテーテルが挿入される大腿動脈においても血管病変が存在する場合があるので、例えば、血管が肥厚して血管壁の肉厚が2mm以上あったり、石灰化して血管壁が硬くなっている場合もある。また、複数回カテーテル手技を受けた患者に関しては、血管の穿刺部周辺が繊維化して痕跡となり硬くなってしまう場合もある。また、カテーテルの挿入によって形成される傷の大きさは、血管の弾性、厚み、病変等によって各患者で異なる。このように、カテーテルが留置される患者の血管の状態は、症例によっていろいろである。 【0005】 近年、前述したような止血作業を容易かつ確実に行うことを目的とした生体内組織閉鎖具が開発されている。その一例として、下記特許文献1には、2つの柔軟な円盤状の部材が中央部で接続されるように一体化された、血管の傷穴を閉鎖する器具が開示されている。しかしながら、このものは、2つの円盤状の部材の位置関係が固定されているため、患者の血管壁の肉厚や血管周辺組織の状態によって、止血効果が左右され、十分な止血効果が得られない場合がある。 【0006】 また、下記特許文献2には、糸が取り付けられた閉鎖要素を血管内に配置し、この糸を通してリングを滑らせ、リングが血管の外側で糸をロックすることで血管の傷穴を閉鎖する装置が提案されている。しかしながら、このものは、リング(ロッキング部材)を糸に何らかの方法で固定するものであるが、固定の方法が具体的に示されておらず、皮下組織内での固定作業が困難である点と、リングの外径は傷穴に入り得る寸法である必要があるため、小型にならざるを得ず、血管に形成された穴から血管内にリングが落下する可能性があるなどの問題がある。また、閉鎖作業後に糸を皮下組織内で切断する操作が必要な点も煩雑である。 【0007】 【特許文献1】米国特許第5690674号明細書 【特許文献2】特許第3133059号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明の目的は、生体内組織膜の肉厚や硬さ等の条件にかかわらず、生体内組織膜に形成された傷穴を容易かつ確実に閉じることができて、完全に止血することができるとともに、安全性の高い生体内組織閉鎖具および生体内組織閉鎖装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0009】 このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。 (1) 生体内組織膜を貫通する傷穴を閉じる生体内組織閉鎖具であって、 前記生体内組織膜の一方の面側から前記傷穴および前記傷穴の周辺部を覆うシール部と、 折り畳まれた第1の形態と、前記シール部との間に前記生体内組織膜を挟持可能に拡幅した第2の形態とに変形可能である枠状をなす変形部と、 一端が前記シール部に連結して設けられ、前記変形部を前記第2の形態に保持する固定部とを備え、 前記変形部は、前記固定部が貫通可能な第1の開口部と、前記固定部が貫通可能であるとともに前記第1の開口部よりも前記シール部から遠くにある前記第2の開口部とを有し、 前記固定部が前記第1の開口部および前記第2の開口部を貫通し、前記第2の開口部が前記固定部と係合して固定されることにより前記変形部が前記第2の形態に保持され、 前記変形部が前記第2の形態になったとき、前記第1の開口部が前記固定部を挿通しつつ前記固定部に対し変位することにより、前記シール部と前記変形部との間に形成される前記生体内組織膜の挟み代の大きさが可変であることを特徴とする生体内組織閉鎖具。 【0010】 (2) 前記変形部が前記第1の形態になっているとき、前記固定部は、前記第1の開口部を貫通しているとともに前記第2の開口部を貫通していない上記(1)に記載の生体内組織閉鎖具。 【0011】 (3) 前記変形部が前記第1の形態になっているとき、前記固定部は、前記第1の開口部および前記第2の開口部を貫通している上記(1)に記載の生体内組織閉鎖具。 【0012】 (4) 前記固定部は、帯状をなし、その厚さ方向の側には容易に倒れて前記シール部に寄り添うように変形可能であり、前記厚さ方向と直交する方向の側には倒れにくいように構成されている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。 【0013】 (5) 前記固定部の根元付近の部分は、他の部分に対し幅が広くなっている上記(4)に記載の生体内組織閉鎖具。 【0014】 (6) 前記変形部は、多角形状をなし、その角部のうちの2つに前記第1の開口部および前記第2の開口部がそれぞれ形成されている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。 【0015】 (7) 前記変形部は、4つのリンクを一体的に形成してなる四角形をなし、該四角形の対角位置にある2つの角部同士が接近、離間するように変形するものである上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。 【0016】 (8) 生体吸収性材料で構成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具。 【0017】 (9) 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具を生体内に配置し、該生体内組織閉鎖具により生体内組織膜を貫通する傷穴を閉じる生体内組織閉鎖装置であって、 上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体内組織閉鎖具と、 先端部において前記生体内組織閉鎖具を着脱自在に保持する長尺部材とを有することを特徴とする生体内組織閉鎖装置。 【0018】 (10) 前記生体内組織閉鎖具の変形部を前記第1の形態から前記第2の形態へ変形させる操作を行う操作手段を有する上記(9)に記載の生体内組織閉鎖装置。 【0019】 (11) 前記操作手段は、前記固定部を基端側へ牽引する牽引手段と、前記変形部を先端側へ押圧する押圧手段とを有する上記(9)または(10)に記載の生体内組織閉鎖装置。 【発明の効果】 【0020】 本発明によれば、生体内組織膜に形成された傷穴を容易かつ確実に閉じることができて、完全に止血することができる。 【0021】 特に、シール部と変形部との間に形成される、生体内組織膜の挟み代の大きさが可変になっているので、生体内組織膜が厚い人、薄い人、硬い人、軟らかい人等の種々の症例に応じて挟み代の間隔が適度な大きさに自動的に調整される。よって、生体内組織膜の厚さや硬さ等の条件にかかわらず、傷穴の周辺の生体内組織膜を適度な力で挟持し、迅速かつ確実に止血することができる。また、生体内組織膜にダメージを与えることもない。 【発明を実施するための最良の形態】 【0022】 以下、本発明の生体内組織閉鎖具および生体内組織閉鎖装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。 【0023】 図1は、本発明の生体内組織閉鎖具におけるシール部および固定部を示す斜視図、図2は、本発明の生体内組織閉鎖具における変形部を示す斜視図、図3ないし図5は、それぞれ、本発明の生体内組織閉鎖具を示す斜視図である。 【0024】 本発明の生体内組織閉鎖具1は、例えば、血管等の生体管腔、生体内部器官、生体内部組織等の生体内組織膜に形成され、経皮的に貫通した傷穴90(生体内組織膜を貫通する傷穴)を閉じる(閉鎖する)ための器具である。 【0025】 この生体内組織閉鎖具1は、図1に示すシール部2および固定部3と、図2に示す変形部4とで構成される。まず、シール部2および固定部3について説明する。 【0026】 図1に示すように、シール部2は、生体内組織膜の一方の面(内面)側から傷穴90の周辺部(生体内組織膜の傷穴90を含む部分)に密着して傷穴90を覆う平面部21を有する部材であり、板状(平面視で略舟形)をなしている。ここで、生体内組織膜が、血管壁(生体管腔壁)である場合は、前記一方の面は、血管壁(生体管腔壁)の内面であり、前記他方の面は、血管壁(生体管腔壁)の外面である。 【0027】 固定部3は、後述するように、変形部4を第2の形態に保持する機能を有している。この固定部3は、帯状(長方形の板状)をなしており、その一端は、シール部2の平面部21の中央に連結されている。 【0028】 固定部3の頂部付近には、変形部4の第2の開口部44に係合する係合部31が設けられている。係合部31は、固定部3の片面側に、間隔をおいて平行に形成された係合凸部(凸条)311、313を有しており、両係合凸部311、313の間に係合溝312が形成されている。係合凸部311、313および係合溝312は、固定部3の長手方向と直交する方向に沿って形成されている。 【0029】 この固定部3は、その根元が屈曲しやすいため、その厚さ方向の側、すなわちシール部2の長手方向側には容易に倒れてシール部2に寄り添うように変形可能である。これに対し、固定部3は、その面内方向の側、すなわちシール部2の長手方向と直交する方向の側には倒れにくい。これにより、生体内組織閉鎖具1を穿刺部位に留置されたシース6内に挿入する際、この挿入をし易いように、シール部2と固定部3とが平行に近くなる姿勢に容易に変形させることができる。 【0030】 固定部3の、シール部2に対する根元付近の部分には、他の部分に対し幅が広くなった広幅部32が形成されている。この広幅部32の幅は、傷穴90の幅にほぼ一致した寸法とされているのが好ましい。これにより、生体内組織閉鎖具1を傷穴90に留置した後、位置ズレを起こすのをより確実に防止することができる。なお、傷穴90の幅は、イントロデューサーシースの外径と等しいため、広幅部32の幅は、後述するシース6の外径とほぼ等しい寸法としておけばよい。 【0031】 なお、図示の構成と異なり、広幅部32がなく、固定部3がシール部2との境界部までストレートに形成されていてもよい。 【0032】 固定部3の頂部付近には、後述する牽引手段としての糸8が挿通する糸挿通孔33が形成されている。 【0033】 また、固定部3の、係合部31と広幅部32との間の中間部34は、凹凸のない部分とされている。 【0034】 シール部2および固定部3は、同一の材料で一体的に形成されているのが好ましいが、複数部品を組み合わせて構成されていてもよい。 【0035】 図2に示す変形部4は、折り畳まれた第1の形態と、シール部2の平面部21との間に生体内組織膜を挟持可能に拡幅した第2の形態とに変形可能な枠状の部材であり、シール部2および固定部3とは別部材として構成されている。 【0036】 ここで、本実施形態では、変形部4は、4つのリンクを一体的に形成してなり、ヒンジ状に屈曲可能な4つの角部を有する四角形(四角形の枠状)をなしている。この変形部4は、図2中上下方向の対角位置にある2つの角部41と角部42とが互いに接近、離間することにより、図3に示す第1の形態と、図5に示す第2の形態とに変形する。 【0037】 角部41、42のうちの図2中下側の角部41には、固定部3が貫通(挿通)可能な第1の開口部43が形成されており、図2中上側の角部42には、固定部3が貫通(挿通)可能な第2の開口部44が形成されている。第1の開口部43、第2の開口部44は、それぞれ、略H字状の孔で構成されている。 【0038】 変形部4の4つのリンクのうち、角部41を挟む2つのリンク45、45の長さは、角部42を挟む2つのリンク46、46の長さよりも短くされている。 【0039】 図3に示すように、本実施形態の生体内組織閉鎖具1では、変形部4が第1の形態になっているとき、固定部3は、第1の開口部43を貫通しており、かつ第2の開口部44を貫通していない状態とされる。この状態では、係合部31は、第1の開口部43を通過して、変形部4の枠の内側に入っている。すなわち、第1の開口部43は、中間部34を挿通している。第1の開口部43は、中間部34に沿って固定部3の長手方向に変位(スライド移動)可能になっている。 【0040】 また、図3に示す状態では、糸8は、同図中上側から第2の開口部44を挿通し、固定部3の糸挿通孔33を挿通して、さらに同図中下側から第2の開口部44を挿通するように配設されている。 【0041】 変形部4は、以下に説明するような操作により、図3に示す第1の形態から、図5に示す第2の形態へと変形させられる。 【0042】 図3に示す状態から、糸8を基端方向に引いて張力をかけながら、後述するプッシャー7を先端方向に押すと、糸8が固定部3を基端方向に牽引しつつプッシャー7が変形部4の角部42を先端方向に押圧することにより、第1の開口部43(角部41)が固定部3の根元側へ移動し、広幅部32に当接し、さらに、角部42が角部41へ接近して、変形部4が拡幅していく(図4参照)。 【0043】 図4に示す状態から、さらに糸8に張力をかけつつ、プッシャー7を先端方向に押すと、固定部3の頂部が第2の開口部44を貫通する。固定部3を挿通した第2の開口部44は、その縁部が係合部31の係合溝312に挿入して係合することにより、固定部3に固定される。これにより、図5に示すように、角部42が角部41から離間しないように保持されて、変形部4が第2の形態に維持される状態となる。 【0044】 図5に示す状態では、角部41を挟む2つのリンク45、45が開いて、これらリンク45、45の外面が、シール部2の平面部21に対向するように位置する。これにより、リンク45、45の外面と、平面部21との間に、傷穴90の周辺の生体内組織膜を挟持することができる。 【0045】 また、本発明の生体内組織閉鎖具では、図5に示す状態で第1の開口部43が中間部34に沿って固定部3の長手方向に変位(移動)可能になっており、これにより、リンク45、45の外面と平面部21との間に形成される、生体内組織膜の挟み代(隙間)10の大きさが可変になっている。よって、生体内組織膜が厚い人、薄い人、硬い人、軟らかい人等の種々の症例に応じて挟み代10の間隔が適度な大きさに自動的に調整されるので、生体内組織膜の厚さや硬さ等の条件にかかわらず、傷穴90の周辺の生体内組織膜を適度な力で挟持し、迅速かつ確実に止血することができるとともに、生体内組織膜にダメージを与えることもない。 【0046】 なお、図5に示す状態では、変形部4の弾性により、挟み代10が小さくなる方向に付勢されている。これにより、挟み代10の大きさは、挟持された生体内組織膜に適合した大きさに自動的に変化する。 【0047】 また、図示の構成では、広幅部32の幅は、変形部4の第1の開口部43の幅より大きくなっており、これにより、広幅部32は、第1の開口部43に挿入できない。よって、広幅部32の高さは、挟み代10の最小寸法を規定する機能を有する。この観点から、広幅部32の高さは、生体内組織膜(血管壁)の厚み以下であるのが好ましく、具体的には、最も薄いと考えられる正常血管の厚み(約1mm)より小さいことが好ましい。 【0048】 生体内組織閉鎖具1は、生体吸収性材料で構成されているのが好ましい。これにより、生体内組織閉鎖具1の主要部分が所定期間後に生体に吸収され、最終的に生体内に残らないので、人体への影響をなくすことができる。 【0049】 用いられる生体吸収性材料としては、例えば、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリジオキサノン等の単体、あるいはこれらの複合体が挙げられる。 【0050】 なお、生体内組織閉鎖具1の構成材料としては、生体吸収性材料に限らず、例えば、樹脂や金属等の生体適合性材料を用いることができる。 【0051】 また、変形部4の変形機能に求められる材料物性としては、ヒンジ特性に優れたものであることが望ましい。具体的には、引張り強さ250〜500(kg/cm2)、伸び150〜800%、引張弾性率8〜20(×103kg/cm2)、曲げ強さ300〜700(kg/cm2)のものが好ましい。これらの物性値を満たすことによって、変形部4は、ヒンジ特性に優れ、変形部4が所望の変形能を有することができる。 【0052】 図7ないし図10は、それぞれ、図3ないし図5に示す生体内組織閉鎖具を備えた本発明の生体内組織閉鎖装置の作用(動作)および構成を説明するための断面側面図である。 【0053】 なお、説明の都合上、図7〜図10において、図中の左下側を「先端」、右上側(手元側)を「基端」として説明する。 【0054】 これらの図に示す生体内組織閉鎖装置5は、前述した生体内組織閉鎖具1を備え、この生体内組織閉鎖具1を生体内に挿入して傷穴90に配置するための装置である。 【0055】 図7に示すように、生体内組織閉鎖装置5は、シース6と、シース6内に挿入可能であり、その先端部において生体内組織閉鎖具1を着脱自在に保持する細長いプッシャー(長尺部材)7と、糸8と、糸留めキャップ(糸保持部材)9とを有している。 【0056】 シース6は、可撓性を有する円筒状のシース本体61と、シース本体61の基端部に設置されたハブ62とを有している。このシース6としては、例えば、カテーテルを用いた治療(PCI)や診断(CAG)の処置後に留置されているシース(イントロデューサシース)を用いてもよく、また、この生体内組織閉鎖装置5専用のものであってもよい。すなわち、生体内組織閉鎖装置5の構成要素には、シース6が含まれていてもよく、また、含まれていなくてもよい。 【0057】 プッシャー7は、細長いプッシャー本体71と、プッシャー本体71の基端部に設けられ、シース6のハブ62の外側に嵌合可能なハブ72とで構成されている。 【0058】 プッシャー本体71の先端部には、中空部73が形成されている。生体内組織閉鎖具1は、この中空部73内に変形部4の一部が挿入された状態で、プッシャー本体71の先端部に保持されている。 【0059】 プッシャー7の中心部には、その全長に渡り糸挿通孔74が形成されている。生体内組織閉鎖具1の固定部3の糸挿通孔33に通された糸8は、この糸挿通孔74に通されており、糸8の両端側は、糸挿通孔74の基端開口から外部へ露出している。 【0060】 このようなプッシャー7と、糸8とにより、生体内組織閉鎖具1の変形部4を第1の形態から第2の形態へ変形させる操作を行う操作手段が構成される。そして、プッシャー7は、変形部4を先端側へ押圧する押圧手段として機能する。 【0061】 糸挿通孔74の基端開口には、糸留めキャップ9が嵌入されており、糸8は、この糸留めキャップ9と糸挿通孔74の基端開口内周面との間に挟まれて、固定されている。 【0062】 このような構成により、糸留めキャップ9が装着されている状態では、糸8の張力により、生体内組織閉鎖具1がプッシャー本体71の先端部に保持される。 【0063】 次に、生体内組織閉鎖装置5を用いて行なう止血作業の手順について、図6ないし図11を参照しつつ、順を追って説明する。 【0064】 図6に示すように、経皮的にカテーテルを挿入して治療(PCI)や診断(CAG)等の処置がなされた後には、シース6が穿刺部位に留置されており、このシース6の先端部は、血管壁に形成された傷穴90を通ってこの血管内に挿入されている。 【0065】 図7に示すように、先端部に生体内組織閉鎖具1を保持したプッシャー7を、シース6の基端開口からシース6内に挿入してゆく。そして、図8に示すように、シース6のハブ62にプッシャー7のハブ72とを嵌合させると、シース6の先端開口からプッシャー本体71の先端部が突出して、生体内組織閉鎖具1が血管内に挿入される。 【0066】 次に、図9に示すように、合体したシース6およびプッシャー7をゆっくり穿刺部位から引き抜く方向に移動させると、シール部2が血管壁の内面に当接し、傷穴90および傷穴90の周辺部がシール部2に覆われる。これにより、変形部4および固定部3は、それぞれ、血管の外側に移動する。 【0067】 なお、術者は、前記シール部2で傷穴90および傷穴90の周辺部を覆う際の作業(操作)においては、シース6およびプッシャー7を傷穴90から引き抜く方向に移動させた際、シール部2が傷穴90およびその周辺組織に当接したときの抵抗(面当て抵抗)を感知すると、シール部2が傷穴90およびその周辺組織に当接し(面当てされ)、シール部2の位置決めが完了したものと判断する。 【0068】 次に、図10に示すように、糸留めキャップ9をプッシャー7のハブ72から取り外す。そして、糸8を少し引いてテンションを加えつつ、プッシャー7を先端方向に押すと、、図11(a)に示すように、プッシャー本体71の先端部(中空部73付近の部位)が変形部4を押圧することにより、変形部4が第2の形態に変形する。このとき、同図に示すように、プッシャー本体71の中空部73付近の部位は、弾性的に変形して拡径するので、変形部4が拡幅するのを妨げることはない。 【0069】 変形部4が第2の形態に変形すると、リンク45、45の外面が血管壁の外側から傷穴90および傷穴90の周辺部を覆い、シール部2の平面部21が血管壁の内側から傷穴90および傷穴90の周辺部を覆うことにより、両者の間に血管壁が挟み込まれ、傷穴90が閉じる。そして、固定部3の係合部31が変形部4の第2の開口部44に係合して、変形部4が第2の形態に保持される。 【0070】 次に、図11(b)に示すように、シース6およびプッシャー7を穿刺部位から抜去し、さらに、図11(c)に示すように、糸8を抜去することにより、止血作業が完了する。 【0071】 図11(c)に示す状態では、前述したように、血管壁の挟み代10の大きさが可変になっているので、血管壁が厚い人、薄い人、硬い人、軟らかい人等の種々の症例に応じて挟み代10の間隔が適度な大きさに自動的に調整され、血管壁の厚さや硬さ等の条件にかかわらず、傷穴90の周辺の血管壁を適度な力で挟持し、迅速かつ確実に止血することができる。また、血管壁にダメージを与えることもない。 【0072】 図12は、本発明の生体内組織閉鎖具の他の構成例を示す斜視図であり、変形部4が第1の形態のときを示す図である。以下、同図を参照して、本発明の生体内組織閉鎖具の他の構成例について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。 【0073】 図12に示す生体内組織閉鎖具1’は、前述した生体内組織閉鎖具1と比べ、固定部3が係合部31より上側へ延長して形成されており、変形部4が第1の形態のときに、既に固定部3が第2の開口部44を貫通した状態とされている。これにより、変形部4を第2の形態に変形させるとき、第2の開口部44が固定部3の延長部分(ガイド部)35を通って係合部31へ案内されるので、変形部4のブレが防止され、変形部4をより円滑かつ確実に第2の形態に変形させることができる。 【0074】 以上、本発明の生体内組織閉鎖具および生体内組織閉鎖装置を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。 【図面の簡単な説明】 【0075】 【図1】本発明の生体内組織閉鎖具におけるシール部および固定部を示す斜視図である。 【図2】本発明の生体内組織閉鎖具における変形部を示す斜視図である。 【図3】本発明の生体内組織閉鎖具を示す斜視図である。 【図4】本発明の生体内組織閉鎖具を示す斜視図である。 【図5】本発明の生体内組織閉鎖具を示す斜視図である。 【図6】生体の穿刺部位に留置されたシースを示す断面側面図である。 【図7】図3ないし図5に示す生体内組織閉鎖具を備えた本発明の生体内組織閉鎖装置の作用(動作)および構成を説明するための断面側面図である。 【図8】図3ないし図5に示す生体内組織閉鎖具を備えた本発明の生体内組織閉鎖装置の作用(動作)および構成を説明するための断面側面図である。 【図9】図3ないし図5に示す生体内組織閉鎖具を備えた本発明の生体内組織閉鎖装置の作用(動作)および構成を説明するための断面側面図である。 【図10】図3ないし図5に示す生体内組織閉鎖具を備えた本発明の生体内組織閉鎖装置の作用(動作)および構成を説明するための断面側面図である。 【図11】図3ないし図5に示す生体内組織閉鎖具の作用を説明するための断面側面図である。 【図12】本発明の生体内組織閉鎖具の他の構成例を示す斜視図である。 【符号の説明】 【0076】 1、1’ 生体内組織閉鎖具 10 挟み代 2 シール部 21 平面部 3 固定部 31 係合部 311、313 係合凸部 312 係合溝 32 広幅部 33 糸挿通孔 34 中間部 35 延長部分 4 変形部 41、42 角部 43 第1の開口部 44 第2の開口部 45、46 リンク 5 生体内組織閉鎖装置 6 シース 61 シース本体 62 ハブ 7 プッシャー 71 プッシャー本体 72 ハブ 73 中空部 74 糸挿通孔 8 糸 9 糸留めキャップ 90 傷穴
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000109543 【氏名又は名称】テルモ株式会社 【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目44番1号
|
| 【出願日】 |
平成16年9月29日(2004.9.29) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091292 【弁理士】 【氏名又は名称】増田 達哉
|
| 【公開番号】 |
特開2006−95096(P2006−95096A) |
| 【公開日】 |
平成18年4月13日(2006.4.13) |
| 【出願番号】 |
特願2004−285184(P2004−285184) |
|