| 【発明の名称】 |
血管接合具および血管接合装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】飯沼 一成 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
【氏名】江崎 祐造 【住所又は居所】神奈川県足柄上郡中井町井ノ口1500番地 テルモ株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】安全かつ容易に、短時間で、二つの血管の側壁同士を接合することができる血管接合具および血管接合装置を提供すること。
【解決手段】本発明の血管接合具2は、二つの血管の側壁同士を接合するものであって、ほぼ楕円形の環状をなし、その外周面が両血管の側壁に形成された孔の内周部に密着するように装着されるリング21と、リング21の長軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、初めは外周側に突出しないように寝た姿勢になっている第1の主係合片22と、リング21の長軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、初めから外周側に突出するように起立した姿勢になっている第2の主係合片23とを有する。第1の主係合片22が起立した姿勢になるように塑性変形させて、第1の主係合片22および第2の主係合片23を両血管の血管壁に係合させることにより両血管を接合する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 二つの血管の側壁同士を接合する血管接合具であって、 ほぼ楕円形の環状をなし、その外周面が前記両血管の側壁に形成された孔の内周部に密着するように装着されるリングと、 前記リングの長軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、初めは外周側に突出しないように寝た姿勢になっている第1の主係合片と、 前記リングの長軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、初めから外周側に突出するように起立した姿勢になっている第2の主係合片とを有し、 前記第1の主係合片が起立した姿勢になるように塑性変形させて、前記第1の主係合片および前記第2の主係合片を前記両血管の血管壁に係合させることにより、前記両血管を接合することを特徴とする血管接合具。 【請求項2】 ビッカース硬度が200以下の材料で構成されている請求項1に記載の血管接合具。 【請求項3】 前記第1の主係合片および前記第2の主係合片の起立した姿勢は、前記長軸方向に対しほぼ平行な姿勢である請求項1または2に記載の血管接合具。 【請求項4】 前記リングは、概ね、円筒を、該円筒の中心軸に対し傾斜している互いに平行な二つの平面で切断したような形状をなしている請求項1ないし3のいずれかに記載の血管接合具。 【請求項5】 前記リングの短軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記第1の主係合片より小さい第1の副係合片と、 前記リングの短軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記第2の主係合片より小さい第2の副係合片とをさらに有する請求項1ないし4のいずれかに記載の血管接合具。 【請求項6】 前記第1の副係合片は、初めは外周側に突出しない姿勢になっており、 前記第2の副係合片は、初めから外周側に突出する姿勢になっており、 前記両血管を接合する際に、前記各第1の副係合片が外周側に突出する姿勢になるように塑性変形させる請求項5に記載の血管接合具。 【請求項7】 請求項1ないし6のいずれかに記載の血管接合具と、 先端部に前記血管接合具を装着し、前記血管接合具を血管内へ挿入する細長い挿入部と、 寝た姿勢の前記第1の主係合片を起立させる起立手段とを備えることを特徴とする血管接合装置。 【請求項8】 前記挿入部は、前記第1の主係合片を押圧して起立させる爪部を有する第1の筒状体と、 前記第1の筒状体の外側に設けられ、前記リングの内側に挿通されて前記血管接合具を内側から支持する第2の筒状体と、 前記第2の筒状体の外側に設けられ、前記血管接合具が基端方向に移動しないように抑止する第3の筒状体と、 前記第3の筒状体の外側に設けられ、前記リングの外周面を押さえる第4の筒状体とを備える請求項7に記載の血管接合装置。 【請求項9】 前記第1の筒状体は、前記第2の筒状体に対し軸方向に移動可能になっており、 前記第2の筒状体は、前記第1の筒状体の爪部の位置にスリットを有し、 前記第1の筒状体を前記第2の筒状体に対し基端方向に移動させることにより、前記爪部が前記スリットを通って外側に突出し、前記第1の主係合片を押圧して起立させる請求項8に記載の血管接合装置。 【請求項10】 前記第1の筒状体を前記第2の筒状体に対し軸方向に移動させる操作部が前記挿入部の基端側に設けられている請求項9に記載の血管接合装置。 【請求項11】 前記挿入部の外径が1〜40mmである請求項7ないし10のいずれかに記載の血管接合装置。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、血管接合具および血管接合装置に関する。 【背景技術】 【0002】 高齢化社会、食生活の欧米化に伴い、血管疾患患者数は増加傾向にあり、これらの治療法として冠状動脈バイパス手術や人工血管を用いたバイパス手術などが治療法として確立され、多くの患者がその恩恵に授かっている。例えば虚血性心疾患患者に対して内胸動脈と冠状動脈を手術で接合することで治療が施されたり、また、閉塞性動脈硬化症の患者に対して、人工血管を用いた血行再建術により足の切断を回避させる治療法等が広く行われている。また、血液透析患者のブラッドアクセスとして、患者の動脈と静脈を直接接合したり、あるいは人工血管を接合することでシャントを作製することにより、血液透析療法を可能としている。 【0003】 一般的にはこれら治療における血管接合は、縫合糸を用いて治療が行われている。また、近年、複数のクリップで挟んで接合する技術や縫合糸の断端にスプリングを設けることで縫合糸の結紮を容易にする技術、さらに、生体血管と固定したのち、目的血管に接合することを目的とした器具が提案されている。 【0004】 縫合糸を用いた従来の縫合手術は、時間を要しかつ困難な仕事であり、外科医の高度な熟練および経験を必要とする。例えば内胸動脈と冠状動脈を接合する場合には、手技に多くの手術時間を要し、また、人工心肺装置を使用して一旦心臓を停止させた状態で縫合糸を用いて血管同士を接合する方法が一般的であることから患者への負担も大きいという課題を有している。また、縫合糸を用いた接合する手術は、手術の出来不出来が治療の結果に大きく影響してくるという課題が残されている。さらに、縫合糸と針を用いた接合は、病的な血管の治療においてしばしば血管の裂けを引き起こす危険性を秘めている。 【0005】 このような状況のなかで、特に、内胸動脈と冠状動脈を接合する技術は、下記理由から、安全かつ容易に、短時間で接合する手段を提供することに対し高い関心が集まっている。 【0006】 (1)内胸動脈と冠状動脈を接合する手術の際には、患者を人工心肺バイパス装置上に置く必要があり、心臓を全身循環から隔絶し、かつ一般に冷たい心臓麻酔液の輸液により心臓を通常停止させて、心臓の接合する血管部位を静止しかつ血液のない状態にして治療が行われている。このような循環隔絶および心肺停止は非常に外傷性が大きく、また、心臓が心臓麻酔停止している時間とともに、手術後の合併症の頻度が直接変化することがわかっている。 【0007】 (2)手術室時間が高コストであるため、外科的処置が長引くと、病院および患者へのバイパス手術コストが非常に増大してしまう。従って、接合に要する時間および全手術時間を短縮することが望まれている。 【0008】 縫合糸以外の試みとして、ステープルを用いた接合手段が広く手術領域で使用されており、胃腸手術の領域において見られる腸のような中空器官の接合として種々の器具が開発されている。しかしながら、これらの器具は、器具の小型化が困難であり、小さな血管の接合に用いることができないだけでなく、最も致命的なのはこれら器具は、反転接合を意図として設計されていることから腸管の漿膜に近置することを目的に設定された器具とは明確に区別されるべきである。特に、下記理由からこれら器具は血管接合として用いることはできない。 【0009】 (1)反転血管は、血流に乱れを生じさせる。これにより、血流量が減少しかつ乱れの末梢流側が虚血状態になり、さらには流れの乱れまたは渦により、血栓を剥離させまたは血管を閉塞する血栓症を引き起こす可能性がある。 【0010】 (2)腸管とは異なり、血管の外面は一体成長しない。 (3)血栓症を引き起こさない永久的血管を確保するには、最内層(内皮)が一体に成長して、連続的で妨げのない全血管の内腔を形成しなければならない。 【0011】 血管接合を目的とした提案としては、つめを設けることにより、接合の前に、つめと生体血管とを固定し、その後固定した生体血管を別の導管に接続する技術が特表2002−529141号公報(特許文献1)において提案されているが、これら先行技術は、管状移植片の端部を導管の側壁に接続することを目的としており、第一のフィンガー、第二のフィンガー、第三のフィンガー、第四のフィンガーから構成されている。特に、管状移植片の端部を固定する目的で管状移植片穿孔ための係合フックが特徴となっている。 【0012】 この先行技術は、2次元的な面で構成されているのではなく、係合フックを含む、3次元的な立体構造により構成されていることが特徴となっている。3次元的な立体構造、特に係合フックのような構造は、血管の側壁同士を接続することを目的とした場合、血管への物理的な外傷を与える危険性を秘めており、また、血流の乱れを引き起こし、血栓による閉塞や長期的開存性が得られないという欠点を有している。 【0013】 以上述べたように、安全かつ容易に、短時間でいかなる血管接合にも対応でき、血管への物理的刺激を極力減らし、長期的に良好な開存性が得られる器具の提案には至っていない。 【0014】 【特許文献1】特表2002−529141号公報 【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0091398号明細書 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0015】 本発明の目的は、安全かつ容易に、短時間で、二つの血管の側壁同士を接合することができる血管接合具および血管接合装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0016】 このような目的は、下記(1)〜(11)の本発明により達成される。 (1) 二つの血管の側壁同士を接合する血管接合具であって、 ほぼ楕円形の環状をなし、その外周面が前記両血管の側壁に形成された孔の内周部に密着するように装着されるリングと、 前記リングの長軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、初めは外周側に突出しないように寝た姿勢になっている第1の主係合片と、 前記リングの長軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、初めから外周側に突出するように起立した姿勢になっている第2の主係合片とを有し、 前記第1の主係合片が起立した姿勢になるように塑性変形させて、前記第1の主係合片および前記第2の主係合片を前記両血管の血管壁に係合させることにより、前記両血管を接合することを特徴とする血管接合具。 【0017】 (2) ビッカース硬度が200以下の材料で構成されている上記(1)に記載の血管接合具。 【0018】 (3) 前記第1の主係合片および前記第2の主係合片の起立した姿勢は、前記長軸方向に対しほぼ平行な姿勢である上記(1)または(2)に記載の血管接合具。 【0019】 (4) 前記リングは、概ね、円筒を、該円筒の中心軸に対し傾斜している互いに平行な二つの平面で切断したような形状をなしている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の血管接合具。 【0020】 (5) 前記リングの短軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記第1の主係合片より小さい第1の副係合片と、 前記リングの短軸方向の両端部にそれぞれ設けられ、前記第2の主係合片より小さい第2の副係合片とをさらに有する上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の血管接合具。 【0021】 (6) 前記第1の副係合片は、初めは外周側に突出しない姿勢になっており、 前記第2の副係合片は、初めから外周側に突出する姿勢になっており、 前記両血管を接合する際に、前記各第1の副係合片が外周側に突出する姿勢になるように塑性変形させる上記(5)に記載の血管接合具。 【0022】 (7) 上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の血管接合具と、 先端部に前記血管接合具を装着し、前記血管接合具を血管内へ挿入する細長い挿入部と、 寝た姿勢の前記第1の主係合片を起立させる起立手段とを備えることを特徴とする血管接合装置。 【0023】 (8) 前記挿入部は、前記第1の主係合片を押圧して起立させる爪部を有する第1の筒状体と、 前記第1の筒状体の外側に設けられ、前記リングの内側に挿通されて前記血管接合具を内側から支持する第2の筒状体と、 前記第2の筒状体の外側に設けられ、前記血管接合具が基端方向に移動しないように抑止する第3の筒状体と、 前記第3の筒状体の外側に設けられ、前記リングの外周面を押さえる第4の筒状体とを備える上記(7)に記載の血管接合装置。 【0024】 (9) 前記第1の筒状体は、前記第2の筒状体に対し軸方向に移動可能になっており、 前記第2の筒状体は、前記第1の筒状体の爪部の位置にスリットを有し、 前記第1の筒状体を前記第2の筒状体に対し基端方向に移動させることにより、前記爪部が前記スリットを通って外側に突出し、前記第1の主係合片を押圧して起立させる上記(8)に記載の血管接合装置。 【0025】 (10) 前記第1の筒状体を前記第2の筒状体に対し軸方向に移動させる操作部が前記挿入部の基端側に設けられている上記(9)に記載の血管接合装置。 【0026】 (11) 前記挿入部の外径が1〜40mmである上記(7)ないし(10)のいずれかに記載の血管接合装置。 【発明の効果】 【0027】 本発明によれば、第1の主係合片は初めは外周側に突出せずに寝ており、第2の主係合片は初めから外周側に突出して起立した姿勢になっているので、血管接合具を血管の穿刺孔に容易に位置合わせすることができる。また、血管接合具が誤って穿刺孔を通り過ぎてしまうことも防止できるので、血管壁に物理的傷害を与えるおそれもない。 【0028】 また、第1の主係合片を塑性変形させることによって血管壁に係合させるので、接合の際の位置合わせや確実性に優れ、血管への外傷の危険性がなく、また、血流の乱れ、血栓による閉塞などの危険性を軽減することができる。 【0029】 また、リングを楕円形にしたので、接合した二つの血管の間の開口面積を広くとることができるので、大きな血流量が得られ、特に細い血管の場合であっても十分な血流量を確保することができる。 【0030】 さらに、第1の主係合片および第2の主係合片をリングの長軸方向の両端部に配置したことにより、血管壁に対する係合しろの長さを十分に確保することができ、血管を確実に接合することができる。 【0031】 このようなことから、容易かつ短時間で血管を接合することができ、また、安全性も極めて高い。 【0032】 また、リングの短軸方向の両端部に第1の副係合片および第2の副係合片を設けた場合には、血管接合完了後、リングの短軸方向の両端部付近の血管壁がリングの中央側にはみ出して開口を塞いでしまうのを長期間に渡り確実に防止することができるので、接合した二つの血管の間の十分な血流を術後長期間に渡り確実に確保することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0033】 以下、本発明の血管接合具および血管接合装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。 【0034】 図1および図2は、それぞれ、本発明の血管接合具の実施形態を示す斜視図であり、図1は、初めの状態、図2は、第1の主係合片および第1の副係合片を外周側に突出するように塑性変形させた状態を示す図である。 【0035】 これらの図に示す本発明の血管接合具2は、二つの血管の側壁同士を接合することにより、吻合を形成するものである。なお、血管接合具2は、生体の血管、人工血管のいずれにも適用することができる。 【0036】 図1に示すように、血管接合具2は、ほぼ楕円形(長円形)の環状をなすリング21を有している。図示の構成では、リング21は、帯体を楕円環状に巻いたような形状になっている。 【0037】 血管接合具2は、接合する二つの血管の側壁に形成された孔(穿刺孔)の内周部にリング21の外周面が密着するように装着され、この密着部分により、血液が漏出しないように液密性が確保される。すなわち、リング21の外周面は、血管壁の孔部に対するシール面(密着しろ)として機能する。 【0038】 なお、接合する血管を穿刺する穿刺具の外径よりリング21の外径を大きくすることにより、穿刺孔を広げるようにしてリング21が装着されるので、穿刺孔の内周部をリング21の外周面に確実に密着させることができる。 【0039】 リング21は、その長軸方向が血管の長手方向にほぼ平行になるように装着される。本発明では、リング21を楕円形としたことにより、血管接合部における両血管の間の開口(連絡流路)を広くとることができるので、大きな血流量が得られ、特に細い血管の場合であっても十分な血流量を確保することができる。 【0040】 リング21の長軸方向の長さは、適用する血管径などによってもその好ましい大きさは異なるが、通常は、1〜40mmであるのが好ましく、1〜10mmであるのがより好ましい。 【0041】 リング21の長軸方向の長さは、短軸方向の長さの1.1〜6倍であるのが好ましく、1.1〜2.0倍であるのがより好ましい。 【0042】 リング21の幅(図1中のL1で示す長さ)は、適用する血管径などによってもその好ましい大きさは異なるが、通常は、0.2〜5mmであるのが好ましく、0.3〜1.5mmであるのがより好ましい。 【0043】 このようなリング21は、本実施形態では、円筒を、該円筒の中心軸に対し傾斜している互いに平行な二つの平面で切断したような形状をなしている。これにより、後述する挿入部3の先端部に装着するとき、位置ずれやぐらつきを生じることなく確実に保持することができる。 【0044】 図1に示すように、リング21の長軸方向の両端部には、それぞれ、第1の主係合片22が設けられている。第1の主係合片22は、初めはリング21の外周側に突出しないように寝た姿勢になっている。 【0045】 また、リングの長軸方向の両端部には、それぞれ、第2の主係合片23が設けられている。第2の主係合片23は、初めからリング21の外周側(リング21の長軸方向)に突出するように起立した姿勢になっている。 【0046】 血管接合時には、第1の主係合片22が起立した姿勢(リング21の長軸方向に対しほぼ平行な姿勢)になるように塑性変形させる(図2参照)ことにより、第1の主係合片22および第2の主係合片23を血管壁に係合させて、二つの血管を接合することができる。 【0047】 本発明の血管接合具2は、バネ性質や超弾性質を利用することなく、塑性変形によって血管壁に第1の主係合片22を係合させることを特徴としている。これにより、接続の際の位置合わせや確実性に優れるという特徴を有する。 【0048】 また、本発明では、血管壁に係合して二つの血管を接合する第1の主係合片22および第2の主係合片23をリング21の長軸方向の両端部に配置したことにより、血管壁に対する係合しろの長さ(後述する図7中のL2で示す長さ)を十分に確保することができ、血管を確実に接合することができる。すなわち、リング21の短軸方向の両端部は、接合する血管の長手方向と直交する方向に位置するので、係合しろを長く確保できないが、リング21の長軸方向の両端部は、血管の長手方向に位置するので、血管壁に対する係合しろの長さを十分に確保することができる。 【0049】 図示の構成では、第1の主係合片22および第2の主係合片23は、線材をU字状に湾曲加工して形成されている。第1の主係合片22および第2の主係合片23を構成する線材の線径は、特に限定されないが、0.5mm以下であるのが好ましく、0.1〜0.3mmであるのがより好ましい。 【0050】 なお、第1の主係合片22および第2の主係合片23の形状は、血管壁へ物理的負荷やストレスを与えにくい形状であれば、U字状に限らずいかなる形状でもよい。また、第1の主係合片22および第2の主係合片23は、線材で構成されたものに限らず、板片で構成されていてもよい。 【0051】 血管接合具2の構成材料としては、第1の主係合片22を起立させたとき塑性変形して第1の主係合片22の起立状態が保持されるような材料が用いられ、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、純チタンもしくはチタン合金、Ni−Ti合金、コバルトベース合金、マグネシウム等が好ましく用いられる。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが特に好適である。 【0052】 また、血管接合具2は、焼きなましを施されたものであるのが好ましい。焼きなましを行うことにより、血管接合具2の柔軟性、変形追従性および可塑性が向上し、屈曲した血管内での留置性がより良好となる。また、焼きなましを行わない場合に比べて、血管接合具2を拡張した後の拡張前形状に復元しようとする力、特に、屈曲した血管部位で拡張したときに発現する直線状に復帰しようとする力が減少し、屈曲した血管内壁に与える物理的な刺激が減少し、肥厚や穿孔などの要因を減少させることができる。さらに、屈曲変形に方向性が生ぜず、いかなる方向への屈曲が容易となり、血管の動きに伴い、血管に与えるストレスをさらに軽減することができる。 【0053】 また、血管接合具2の構成材料は、比較的柔軟なものであるのが好ましく、具体的には、ビッカース硬度が200以下の材料であるのが好ましい。これにより、血管接合後も、曲がった血管等、血管の湾曲に追従して容易に湾曲(変形)するとともに、その湾曲(変形)した形状を血管接合具2自体が維持するため、血管への負担が軽減される。その結果、血管接合具2と柔軟な血管との物理的性質のミスマッチに伴う合併症の軽減や長期開存性へ寄与することができる。また、柔軟な性質であることから、血管の縮径に伴う刺激を軽減することができる。 なお、上記ビッカース硬度は、JIS Z 2244に基づいて測定することができる。 【0054】 リング21の短軸方向の両端部には、それぞれ、第1の副係合片24が設けられている。第1の副係合片24は、初めは外周側に突出しないような姿勢になっており(図1参照)、血管接合時に、外周側に突出するように塑性変形される(図2参照)。 【0055】 また、リング21の短軸方向の両端部には、それぞれ、第2の副係合片25が設けられている。第2の副係合片25は、初めから外周側に突出する姿勢になっている。 【0056】 これら第1の副係合片24、第2の副係合片25の大きさは、第1の主係合片22、第2の主係合片23より小さくされており、血管の長手方向と直交する方向に突出しないような大きさになっている。 【0057】 本実施形態では、このような第1の副係合片24および第2の副係合片25を設けたことにより、血管接合完了後、リング21の短軸方向の両端部付近の血管壁がリング21の中央側にはみ出してくるのを長期間に渡り確実に防止することができるので、接合した二つの血管の間の十分な血流を術後長期間に渡り確実に確保することができる。 【0058】 図3は、本発明の血管接合装置の実施形態を示す斜視図、図4および図5は、それぞれ、図3に示す血管接合装置の先端部の斜視図である。以下の記載では、図3ないし図5中の左下側を「先端」、右上側を「基端」として説明する。 【0059】 図3に示すように、血管接合装置1は、前述した血管接合具2と、この血管接合具2を先端部に支持する細長い挿入部3と、挿入部3の基端側に設置された操作部4とを有している。 【0060】 挿入部3は、血管接合具2を支持して血管内へ挿入する機能を有する。挿入部3の外径は、血管接合具2の大きさに応じて異なるが、例えば1〜40mm程度、より好ましくは、1〜10mm程度とされる。 【0061】 挿入部3は、剛性を有するもの(可撓性のないもの)、可撓性(柔軟性)を有するもの、のいずれでもよい。 【0062】 また、挿入部3の構成材料は、合成高分子材料、金属材料のいずれでもよく、合成高分子材料としては、例えばポリウレタン、シリコン系樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはこれらの共重合体、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、テフロン(PTFE)(「テフロン」は登録商標)などの各種フッ素樹脂、その他ゴム材料などが例としてあげられる。また、金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、チタン、Ni−Ti合金など各種合金等が挙げられる。 【0063】 また、挿入部3は、軸方向に沿って外径が変化するテーパ状の部分を有していてもよい。また、挿入部3の形状は、図示のような直線形状に限らず、弓形状、U字形状、S字形状などいずれの形状とすることも可能である。 【0064】 挿入部3の全長は、特に限定されないが、通常、10〜600mm程度であるのが好ましく、50〜200mm程度であるのがより好ましい。 なお、挿入部3の先端部には、血管壁を穿刺する針先を設けてもよい。 【0065】 操作部4は、挿入部3の基端部に固定された棒状の把持部41と、把持部41に対し軸方向に移動可能に設置された指掛け部42とを有している。 【0066】 この操作部4は、把持部41を握った手の親指を指掛け部42に当てて、指掛け部42を基端側へ引くことができる。後述するように、指掛け部42を引くことにより、血管接合具2の第1の主係合片22を起立させることができる。 【0067】 図4に示すように、挿入部3は、第1の筒状体31と、第1の筒状体31の外側に設けられた第2の筒状体32と、第2の筒状体32の外側に設けられた第3の筒状体33と、第3の筒状体33の外側に設けられた第4の筒状体34とを有している。 【0068】 第1の筒状体31には、第1の主係合片22を押圧して起立させる爪部311(起立手段)と、第1の副係合片24を押圧して外周側に突出させる爪部312とが設けられている。この爪部311、312は、第1の筒状体31の側壁に切れ込みを入れて形成された短冊状の板片で構成され、図5に示すように外側に突出するように曲がりぐせが付けられいる。 【0069】 第1の筒状体31の基端部は、把持部41の内部で指掛け部42に連結されている。これにより、第1の筒状体31は、指掛け部42の操作により、軸方向に移動可能になっている。 【0070】 また、このような第1の筒状体31内の中空部には、ガイドワイヤーを挿通可能になっている。 【0071】 第2の筒状体32は、血管接合具2のリング21の内側に挿通されており、血管接合具2を内側から支持している。この第2の筒状体32の側壁には、爪部311、312の位置に、軸方向に延びる複数のスリット(細長い側孔)321が形成されている。 【0072】 指掛け部42の操作により第1の筒状体31が基端方向に移動すると、爪部311、312がスリット321から外側に突出し、第1の主係合片22、第1の副係合片24を押圧して塑性変形させ、外周側に突出させる(図5参照)。 【0073】 その後、第1の筒状体31を先端方向に戻すと、爪部311、312を第2の筒状体32の内側に引っ込ませることができる。 【0074】 第3の筒状体33の先端部は、リング21に当接している。これにより、血管接合具2が基端方向に移動するのが防止され、軸方向の位置決めがなされる。 【0075】 第4の筒状体34の先端部は、リング21の外周面を押さえている。これにより、血管接合具2が径方向にずれるのを確実に防止することができる。この第4の筒状体34の先端部には、第2の主係合片23および第2の副係合片25を逃げるための逃げ部(切欠き)が形成されている。 【0076】 第2の筒状体32、第3の筒状体33および第4の筒状体34は、軸方向に相対的に移動しないように互いに固定されている。これら第2の筒状体32、第3の筒状体33および第4の筒状体34の基端部は、把持部41に固定されている。 【0077】 図6および図7は、それぞれ、本発明の血管接合具2の作用を説明するための図である。以下、図6および図7に基づいて、血管接合装置1を用いた血管接合方法の一例について説明する。なお、図6および図7中では、図面の簡単化のため、挿入部3の図示を省略する。 【0078】 [1] 接合するバイパス血管100および被バイパス血管200を露出、剥離し、被バイパス血管200はその両端を血管鉗子でクリッピングし、バイパス血管100は一端を結紮し、他端を血管鉗子でクリッピングする。その後、バイパス血管100の結紮部とクリッピング部の間の結紮部側よりの位置でバイパス血管100を切断する。 【0079】 [2] 切断したバイパス血管100の端部より図示しない穿刺具を挿入し、その針先をバイパス血管100の内腔から血管外側に向けて穿刺する。次いで、バイパス血管100の外側に突出した針先を被バイパス血管200の側壁に穿刺し、穿刺具の先端部を被バイパス血管200内に挿入する。このとき、針先は、できるだけ、被バイパス血管200と並行になるように前進させ、被バイパス血管200を貫通しないように注意する。その後、形成された穿刺孔に図示しないガイドワイヤーを留置するとともに、穿刺具を抜去する。 【0080】 前述したように、上記穿刺具の外径は、リング21の外径より小さいものとされる。これにより、リング21を穿刺孔に装着したとき、リング21が穿刺孔を広げるように作用するので、穿刺孔の内周部をリング21の外周面に確実に密着させることができ、液密性を確保することができる。 【0081】 [3] 血管接合装置1の挿入部3を、留置したガイドワイヤーに沿わせて、切断したバイパス血管100の端部から挿入する。すなわち、図6中の矢印方向から挿入部3を挿入する。挿入部3を両血管内に進めていくと、血管接合具2の第2の主係合片23がバイパス血管100の穿刺部に引っ掛かり、手応えが感じられるので、ここで挿入を停止する。これにより、図6に示す状態となり、第1の主係合片22は、被バイパス血管200内に挿入され、第2の主係合片23は、バイパス血管100内にとどまる。 【0082】 このように、第2の主係合片23が初めから外周側に突出した姿勢になっていることにより、血管接合具2をバイパス血管100および被バイパス血管200の穿刺部に容易に位置合わせすることができ、また、誤って穿刺部を通り過ぎてしまうことも防止できるので、血管壁に物理的傷害を与えるおそれもない。よって、安全に、かつ短時間で効率良く両血管を接合することができる。 【0083】 [4] 図6に示す状態から、指掛け部42を引いていくと、第2の筒状体32のスリット321から爪部311、312が突出し、これらが第1の主係合片22および第1の副係合片24を押圧して塑性変形させ、外周側に突出させる。これにより、図7に示すように、バイパス血管100および被バイパス血管200の側壁(血管壁)に第1の主係合片22および第2の主係合片23が係合してリング21が固定され、両血管の接合が達成される。 【0084】 [5] 両血管を接合したら、指掛け部42を先端方向に戻して爪部311、312を引っ込ませた後、挿入部3を血管接合具2から抜去する。その後、バイパス血管100の端部を結紮し、血管鉗子を外し血流を再開させる。これにより、血管接合手技が終了する。 【0085】 以上説明したような血管接合具2によれば、リング21を楕円形にしたことにより、血管接合部におけるバイパス血管100と被バイパス血管200との間の開口面積を広くとることができるので、大きな血流量が得られ、特に細い血管の場合であっても十分な血流量を確保することができる。 【0086】 また、第1の主係合片22および第2の主係合片23をリング21の長軸方向の両端部に配置したことにより、血管壁に対する係合しろの長さ(図7中のL2で示す長さ)を十分に確保することができ、血管を確実に接合することができる。すなわち、リング21の短軸方向の両端部は、バイパス血管100、被バイパス血管200の長手方向と直交する方向に位置するので、係合しろを十分に確保できないが、リング21の長軸方向の両端部は、バイパス血管100、被バイパス血管200の長手方向に位置するので、血管壁に対する係合しろの長さを十分に確保することができる。 【0087】 さらに、本実施形態では、リング21の短軸方向の両端部に第1の副係合片24および第2の副係合片25を設けたことにより、血管接合完了後、リング21の短軸方向の両端部付近の血管壁がリング21の中央側にはみ出して開口を塞いでしまうのを長期間に渡り確実に防止することができるので、接合した二つの血管の間の十分な血流を術後長期間に渡り確実に確保することができる。 【0088】 以上、本発明の血管接合具および血管接合装置を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、血管接合具および血管接合装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。 【図面の簡単な説明】 【0089】 【図1】本発明の血管接合具の実施形態を示す斜視図(初めの状態)ある。 【図2】本発明の血管接合具の実施形態を示す斜視図(第1の主係合片および第1の副係合片を外周側に突出するように塑性変形させた状態)である。 【図3】本発明の血管接合装置の実施形態を示す斜視図である。 【図4】図3に示す血管接合装置の先端部の斜視図である。 【図5】図3に示す血管接合装置の先端部の斜視図である。 【図6】本発明の血管接合具の作用を説明するための図である。 【図7】本発明の血管接合具の作用を説明するための図である。 【符号の説明】 【0090】 1 血管接合装置 2 血管接合具 21 リング 22 第1の主係合片 23 第2の主係合片 24 第1の副係合片 25 第2の副係合片 3 挿入部 31 第1の筒状体 311、312 爪部 32 第2の筒状体 321 スリット 33 第3の筒状体 34 第4の筒状体 4 操作部 41 把持部 42 指掛け部 100 バイパス血管 200 被バイパス血管
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| 【出願人】 |
【識別番号】000109543 【氏名又は名称】テルモ株式会社 【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目44番1号
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| 【出願日】 |
平成16年6月25日(2004.6.25) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091292 【弁理士】 【氏名又は名称】増田 達哉
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| 【公開番号】 |
特開2006−6649(P2006−6649A) |
| 【公開日】 |
平成18年1月12日(2006.1.12) |
| 【出願番号】 |
特願2004−188599(P2004−188599) |
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