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【発明の名称】 魚節の製造方法
【発明者】 【氏名】友杉 順
【住所又は居所】福岡県北九州市八幡東区川淵町9の27 太平工業株式会社八幡支店内
【氏名】本行 政美
【住所又は居所】福岡県北九州市八幡東区川淵町9の27 太平工業株式会社八幡支店内
【課題】原料魚を短時間で経済的に加工して旨み成分を豊富に含有する魚節にすることが可能な魚節の製造方法を提供する。

【解決手段】凍結状態又は半凍結状態の原料魚11を全身のまま低温水蒸気を用いて低温加熱処理してから高温水蒸気を用いて高温加熱処理することで原料魚11の解凍から蛋白変性までを連続的に行ない、蛋白変性した原料魚11を解体処理してから焙乾処理を行なう。ここで、低温加熱処理は温度が90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下加熱して行ない、高温加熱処理は100℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて6分以上で60分以下加熱して行なうことが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結状態又は半凍結状態の原料魚を全身のまま低温水蒸気を用いて低温加熱処理してから高温水蒸気を用いて高温加熱処理することで前記原料魚の解凍から蛋白変性までを連続的に行ない、蛋白変性した前記原料魚を解体処理してから焙乾処理を行なうことを特徴とする魚節の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の魚節の製造方法において、前記低温加熱処理では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱し、前記高温加熱処理では100℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて6分以上かつ60分以下加熱することを特徴とする魚節の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の魚節の製造方法において、前記低温加熱処理では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱し、前記高温加熱処理では100℃を超えて140℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上かつ30分以下加熱した後、140℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上かつ30分以下加熱することを特徴とする魚節の製造方法。
【請求項4】
凍結状態又は半凍結状態の原料魚を全身のまま低温水蒸気で加熱し、その後高温水蒸気で加熱する加熱操作を1又は複数回繰り返す第1の加熱処理を行なってから低温水蒸気で加熱する第2の加熱処理を行ない、次いで高温水蒸気で加熱する第3の加熱処理を行なうことで前記原料魚の解凍から蛋白変性までを連続的に行ない、蛋白変性した前記原料魚を解体処理してから焙乾処理を行なうことを特徴とする魚節の製造方法。
【請求項5】
請求項4記載の魚節の製造方法において、前記第1の加熱処理の加熱操作では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱してから100℃を超え140℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上かつ15分以下加熱し、前記第2の加熱処理では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱し、前記第3の加熱処理では100℃を超え350℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上かつ15分以下加熱することを特徴とする魚節の製造方法。
【請求項6】
請求項4記載の魚節の製造方法において、前記第1の加熱処理の加熱操作では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱してから100℃を超え140℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上かつ15分以下加熱し、前記第2の加熱処理では90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上かつ30分以下加熱し、前記第3加熱処理では100℃を超えて140℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上かつ30分以下加熱した後、140℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上かつ30分以下加熱することを特徴とする魚節の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の魚節の製造方法において、前記原料魚は鰹、鯖、鰺、及び鰯のいずれか1であることを特徴とする魚節の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、魚節の製造方法に係り、更に詳細には凍結又は半凍結状態の原料魚を低温水蒸気及び高温水蒸気を用いて解凍から蛋白変性までを連続して行なった後解体して焙乾する魚節の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鰹節等の魚節の原料魚は、一本釣りや延縄等の漁獲方法で捕獲された後、漁船上でそのまま冷凍処理され、凍結状態又は半凍結状態で陸揚げされる。このため、従来の魚節の製造では、先ず、凍結状態又は半凍結状態の原料魚を解凍水槽中に浸漬し、水を通過させながら、あるいは空気を解凍水槽中に吹き込みながら半日〜1日かけて解凍を行なっていた。そして、解凍された原料魚を解体処理して頭、ひれ、及び内臓等を取り除き、煮熟槽に収容して1〜3時間煮熟処理して蛋白変性を行ない、次いで原料魚を放冷し、骨及び鱗等を取り除き、適当な寸法(厚み、幅、及び長さ)に切り分け焙乾処理して(燻製にして)、旨みと保存性を高めた魚節としていた。
しかし、解凍処理時に原料魚の温度が高くなり過ぎると(例えば、0℃を超えると)旨み成分(イノシン酸等)が溶出するという問題があった。また、頭、ひれ、及び内臓等を取り除いているため、長時間の煮熟時に切り口から煮熟槽中に旨み成分が溶出するという問題もある。そこで、特許文献1に記載されているように、原料魚を凍結あるいは半凍結状態で解体処理を行ない、過熱水蒸気により連続的に蛋白変性を行なってから焙乾する方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2003−259800号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、凍結あるいは半凍結状態の原料魚を解体処理して、頭、ひれ、及び内臓等を取り除くことは、特殊な器具、例えば、鋸状の刃物を使用しても容易ではなく、解体処理に時間を要するという問題がある。そして、鋸状の刃物を用いて解体処理を行なうため、切り口の凹凸が激しく滑らかに仕上がらず、切り口の部分が魚節として使用できないという問題が生じる。また、過熱水蒸気を当てて煮熟処理して蛋白変性を行なう際に、過熱水蒸気が直接切り口に当たるとその部分の魚肉が焼け過ぎて均一に煮熟処理できないという問題が生じる。更に、解体処理の際に取り除いた部分は魚節として使用できず、原料魚から魚節を製造する際の製造歩留りが低下するという問題がある。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、原料魚を短時間で経済的に加工して旨み成分を豊富に含有する魚節にすることが可能な魚節の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的に沿う第1の発明に係る魚節の製造方法は、凍結状態又は半凍結状態の原料魚を全身のまま低温水蒸気を用いて低温加熱処理してから高温水蒸気を用いて高温加熱処理することで前記原料魚の解凍から蛋白変性までを連続的に行ない、蛋白変性した前記原料魚を解体処理してから焙乾処理を行なう。
原料魚の解凍から蛋白変性までを連続的に行なうので、処理時間を短縮することができる。原料魚を解体せずに蛋白変性させるので、切り口から旨み成分が流出したり、魚肉に高温水蒸気が直接触れることがない。また、蛋白変性が完了した後に原料魚の解体処理を行なうので、解体が容易になると共に頭、ひれ、及び内臓等も焙乾することができる。
【0007】
前記目的に沿う第2の発明に係る魚節の製造方法は、凍結状態又は半凍結状態の原料魚を全身のまま低温水蒸気で加熱し、その後高温水蒸気で加熱する加熱操作を1又は複数回繰り返す第1の加熱処理を行なってから低温水蒸気で加熱する第2の加熱処理を行ない、次いで高温水蒸気で加熱する第3の加熱処理を行なうことで前記原料魚の解凍から蛋白変性までを連続的に行ない、蛋白変性した前記原料魚を解体処理してから焙乾処理を行なう。
低温水蒸気と高温水蒸気を交互に使用して加熱するので、高温水蒸気を原料魚に当てる際に魚表面が水で覆われた状態にすることができ、高温水蒸気を原料魚の表面に当てても原料魚を焦がさないでその温度を効率的に上昇させることができる。また、原料魚を解体せずに蛋白変性させるので、切り口から旨み成分が流出したり、魚肉に高温水蒸気が直接触れることがない。また、蛋白変性が完了した後に原料魚の解体処理を行なうので、解体が容易になると共に頭、ひれ、及び内臓等も焙乾することができる。
【発明の効果】
【0008】
第1及び第2の発明に係る魚節の製造方法においては、蛋白変性が完了するまで原料魚の解体を行なわないので、原料魚に切り口が存在しないために魚肉に高温水蒸気が直接触れることがなく、魚肉が焦げたり固くなったりするのを防止することが可能になる。また、切り口からの旨み成分の流出が防止でき、旨み成分の残存量が多い魚節を得ることが可能になる。更に、蛋白変性が完了した後に原料魚の解体処理を行なうので、解体が容易になると共に、通常廃棄されていた頭、ひれ、及び内臓等も焙乾することができ、出汁の原料等に利用することが可能になる。凍結又は半凍結状態の原料魚を始めに低温水蒸気を使用して加熱するので、原料魚の内部温度を0℃を超えないようにしてゆっくりと上げることができ、表面を焦がさずに内部まで解凍することが可能になる。その結果、旨み成分の減少を防止することができる。更に、高温水蒸気を併用して加熱を行なうので、解凍から蛋白変性が完了するまでの所要時間を短縮(例えば、従来半日以上要していた処理時間が3時間以内に)することが可能になる。
【0009】
特に、第2の発明に係る魚節の製造方法においては、始めに低温水蒸気で加熱し、その後高温水蒸気で加熱する加熱操作を1又は複数回繰り返す第1の加熱処理を行なってから低温水蒸気で加熱する第2の加熱処理を行ない、次いで高温水蒸気で加熱する第3の加熱処理を行なうので、高温水蒸気を原料魚の表面に当てる際に原料魚の表面を低温水蒸気の凝縮により形成される水で覆うことができ、原料魚を焦がさないでその温度を効率的に上昇させることが可能になる。その結果、原料魚の解凍から蛋白変性までの処理時間を更に短縮することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
ここで、図1は本発明の一実施の形態に係る魚節の製造方法に適用する魚節の製造装置の説明図、図2は同魚節の製造装置に装入する原料魚の状態を示す説明図である。
図1、図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る魚節の製造方法を適用する魚節の製造装置10は、原料魚の一例であり凍結又は半凍結状態で頭、ひれ、及び内臓を備えた鰹11を、例えば金網等の通気性部材で構成された載置部12を備えたトレイ13に載せて移送するチェーンコンベア14と、チェーンコンベア14を内側で通過させトレイ13に載せられ移送中の鰹11に対して上下から水蒸気を噴出して解凍から蛋白変性までを連続して行なう加熱室15を有している。以下、これらについて詳細に説明する。なお、原料魚としては、鰹11を使用したが、鯖、鰺、又は鰯を使用することもできる。
【0011】
チェーンコンベア14は、金網等の通気性を備えた部材で形成されトレイ13を載せて移送する輪状のベルト部16と、ベルト部16を内側から緊張状態で支持しながら一定方向に周回移動させる駆動車輪17及び従車輪18を有している。
加熱室15は、駆動車輪17から従車輪18に向けて移動するベルト部16の周囲を囲むように配置された筒状の外壁部19と、外壁部19の上流側の端部に設けられベルト部16が進入する開口部20を備えた入側壁部材21と、外壁部19の下流側の端部に設けられベルト部16が退出する開口部22を備えた出側壁部材23を有している。また、加熱室15は、外壁部19の長手方向に直交するように隙間を設けて配置され、ベルト部16が通過可能な開口部24が形成された、例えば5枚の仕切壁25を有している。
【0012】
更に、加熱室15は、各仕切壁25によって区切られ、上流側から下流側に順に配置される6つの加熱処理領域26〜31を有し、加熱処理領域26〜31にはそれぞれ水蒸気噴出部36を備えた水蒸気供給手段33が設けられている。
ここで、水蒸気供給手段33には、隙間を開けてベルト部16を上下から挟むように上部噴出器34と下部噴出器35が設けられ、上、下部噴出器34、35のベルト部16に対向する面にはそれぞれ水蒸気を噴出する水蒸気噴出部36が複数設けられている。更に、水蒸気供給手段33には、上、下部噴出器34、35に高温水蒸気の一例である過熱水蒸気を供給する水蒸気過熱器37が設けられ、各水蒸気過熱器37には低温水蒸気の一例である飽和水蒸気が水蒸気発生器38(例えば、ボイラー)より供給されるようになっている。
【0013】
このような構成とすることにより、水蒸気過熱器37を運転して水蒸気発生器38から水蒸気を供給すると上、下部噴出器34、35にそれぞれ過熱水蒸気を供給することができ、上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36から高温水蒸気として過熱水蒸気を噴出させることができる。また、水蒸気過熱器37を停止して水蒸気発生器38から水蒸気を供給すると上、下部噴出器34、35にそれぞれ飽和水蒸気を供給することができ、上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36から低温水蒸気として飽和水蒸気を噴出させることができる。従って、各加熱処理領域26〜31に設けられた水蒸気供給手段33毎に水蒸気過熱器37の運転条件及び停止の設定を行なうことにより、加熱処理領域26〜31毎に上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36から噴出させる水蒸気の温度を調整することができる。
そして、上部噴出器34の水蒸気噴出部36から噴出した水蒸気はトレイ13に載せられた鰹11の上面に当たり鰹11の上面側を加熱することができる。また、下部噴出器35の水蒸気噴出部36から噴出した水蒸気はベルト部16、次いでトレイ13の載置部12を通過して鰹11の下面に当たり鰹11の下面側を加熱することができる。このため、解凍又は半解凍状態の鰹11を載せたトレイ13をベルト部16に載置して加熱室15内を移動させると、鰹11には移動中に周囲から水蒸気が吹き付けられて徐々に温度が上昇し、加熱室15内を移動する間に解凍から蛋白変性までを連続的に行なうことができる。
【0014】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る魚節の製造方法について説明する。
第1の実施の形態に係る魚節の製造方法は、常圧下で、凍結状態又は半凍結状態の鰹11を全身のまま低温水蒸気として温度が90℃以上で100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下の時間加熱する低温加熱処理の工程と、低温加熱処理の工程が終了した鰹11を高温水蒸気として100℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて6分以上で60分以下の時間加熱する高温加熱処理の工程を有している。
【0015】
ここで、温度が90℃以上で100℃以下の飽和水蒸気を用いるのは、凍結状態又は半凍結状態の鰹11の表面を焦がさずに効率的に温度を上げるためであり、加熱時間を4分以上で30分以下としたのは、鰹11の表層部を解凍させてその表面が連続して水に覆われるようにするためである。また、常圧下で100℃を超えると飽和水蒸気は過熱水蒸気となる。なお、飽和水蒸気の温度が90℃未満であると、凍結状態又は半凍結状態の鰹11の表面が連続して水に覆われる状態になるのに多くの時間を要するため好ましくない。また、凍結状態又は半凍結状態の鰹11の表面に100℃を超える過熱水蒸気を当てて解凍を行なうと、鰹11の解凍により発生し表面を覆っている水が急速に蒸発し鰹11の表面の温度が急上昇して鰹11の表面が焦げるので好ましくない。また、鰹11の高温加熱処理に100℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて、6分以上で60分以下の時間加熱するのは、鰹11の内部までの解凍を終了させると共に、解凍が完了した部位の温度を徐々に上昇させて蛋白変性を効率的に行なわせるためである。低温加熱処理により、鰹11の解凍が十分に進行し、鰹11の内部には十分な水分が存在した状態になっているため、過熱水蒸気を鰹11に当てても鰹11の表面の温度が異常に上昇するのを抑えて鰹11全体の温度を徐々に上昇させることができる。なお、加熱時間が6分未満では蛋白変性を完了させることができず、60分を超えて加熱すると鰹11の温度が上昇し過ぎ変色が生じるため好ましくない。
【0016】
先ず、低温加熱処理の時間及び高温加熱処理の時間を設定し、チェーンコンベア14の移送速度を選択して低温加熱処理及び高温加熱処理の時間が確保できるように、低温加熱処理及び高温加熱処理にそれぞれ使用する加熱処理領域26〜31を決める。そして、低温加熱処理に使用する、例えば、加熱処理領域26〜29の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、高温加熱処理に使用する、例えば加熱処理領域30、31の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)を設定する。また、低温加熱処理に使用する飽和水蒸気が得られるように、水蒸気発生器38の運転条件(飽和水蒸気の温度)を設定する。
【0017】
次いで、水蒸気発生器38、及び高温加熱処理に使用する加熱処理領域30、31に設けられた水蒸気供給手段33の水蒸気過熱器37を運転して、各加熱処理領域26〜31に設定された条件の水蒸気を噴出させる。また、チェーンコンベア14を選択した移送速度で駆動させる。そして、図2に示すように、凍結又は半凍結状態の鰹11をトレイ13の載置部12の上に並べ、鰹11を載せたトレイ13をチェーンコンベア14の上流側からベルト部16に順次隙間を設けて載せていく。
ベルト部16に載せられたトレイ13はベルト部16の移動と共に加熱室15に近づき、入側壁部材21に形成された開口部20から加熱処理領域26に進入する。加熱処理領域26内では上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36から飽和水蒸気が噴出しているので、上部噴出器34の水蒸気噴出部36から噴出した飽和水蒸気はトレイ13に載せられた鰹11の上面に当たり鰹11の上面側を加熱する。また、下部噴出器35の水蒸気噴出部36から噴出した飽和水蒸気はベルト部16、次いでトレイ13の載置部12を通過して鰹11の下面に当たり鰹11の下面側を加熱する。加熱処理領域26を通過したトレイ13は加熱処理領域27に進入し同様に飽和水蒸気により鰹11の上下面側の加熱が行なわれる。そして、加熱処理領域28を通過し加熱処理領域29に進入して退出する時点では、鰹11の内部温度は、例えば0℃まで到達している。
【0018】
次いで、トレイ13が加熱処理領域30内に進入すると、加熱処理領域30内では上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36から過熱水蒸気が噴出しているので、上部噴出器34の水蒸気噴出部36から噴出した過熱水蒸気はトレイ13に載せられた鰹11の上面に当たり鰹11の上面側を加熱する。また、下部噴出器35の水蒸気噴出部36から噴出した過熱水蒸気はベルト部16、次いでトレイ13の載置部12を通過して鰹11の下面に当たり鰹11の下面側を加熱する。これによって、鰹11の内部温度は徐々に上昇して行く。このとき、鰹11は内部まで解凍されており、鰹11の表面には水膜、鱗、及び表皮が存在しているので、過熱水蒸気が当てられても表面が焦げることはない。加熱処理領域30を通過したトレイ13は加熱処理領域31に進入し同様に過熱水蒸気により鰹11の上下面側の加熱が行なわれる。そして、加熱処理領域31を通過し加熱処理領域31から退出する時点では、鰹11の内部は十分に加熱されて蛋白変性が完了している。
蛋白変性が完了した鰹11は開口部22から排出されるので、この鰹11を放冷し、解体処理して頭、ひれ、内臓、骨、及び鱗等を取り除き、適当な寸法(厚み、幅、及び長さ)に切り分け、焙乾処理する。これによって、旨みと保存性が高まった魚節が得られる。
【0019】
ここで、高温加熱処理の工程を、100℃を超えて140℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上で30分以下の時間加熱する第1高温加熱処理の工程と、第1高温加熱処理後に140℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上で30分以下の時間加熱する第2高温加熱処理の工程に分割して行なうこともできる。高温水蒸気の温度を段階的に変えることで、原料魚の表面を焦がさずに原料魚の内部温度を効率的に上昇させて蛋白変性を起こさせることができる。
この場合は、低温加熱処理の時間、第1高温加熱処理の時間、及び第2高温加熱処理の時間をそれぞれ設定し、チェーンコンベア14の移送速度を選択して低温加熱処理、第1高温加熱処理、第2高温加熱処理の時間が確保できるように、低温加熱処理、第1高温加熱処理、及び第2高温加熱処理にそれぞれ使用する加熱処理領域26〜31を決める。そして、低温加熱処理に使用する加熱処理領域の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、第1及び第2高温加熱処理に使用する加熱処理領域の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)をそれぞれ設定する。また、低温過熱処理に使用する飽和水蒸気が得られるように、水蒸気発生器38の運転条件(飽和水蒸気の温度)を設定するようにすればよい。
【0020】
なお、第1高温加熱処理に100℃を超えて140℃以下の過熱水蒸気を用いたのは、鰹11の解凍により発生し表面を覆っている水の蒸発を抑えながら鰹11の内部の温度を効率的に上昇させて解凍を促進するためである。加熱時間を3分以上で30分以下としたのは鰹11の解凍を進行させて、鰹11の表層部に十分な水分が存在する状態にするためである。第2高温加熱処理に140℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いたのは、鰹11の内部まで解凍を終了させると共に、解凍が完了した部位の温度を徐々に上昇させて蛋白変性を効率的に行なわせるためである。第1高温加熱処理により、鰹11の解凍が十分に進行し、鰹11の内部には十分な水分が存在した状態になっているため、過熱水蒸気を鰹11に当てても鰹11の表面の温度が異常に上昇するのを抑えて鰹11全体の温度を徐々に上昇させることができる。なお、加熱時間が3分未満では蛋白変性を完了させることができず、30分を超えて加熱すると鰹11の温度が上昇し過ぎ変色が生じるため好ましくない。
【0021】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る魚節の製造方法について説明する。
第2の実施の形態に係る魚節の製造方法は、常圧下で、凍結状態又は半凍結状態の鰹11を全身のまま低温水蒸気として90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下の時間加熱する第1の前加熱処理の工程と、第1の前加熱処理の後に高温水蒸気として100℃を超え140℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上で15分以下の時間加熱する第1の後加熱処理の工程を備えた第1の加熱処理の工程と、第1の加熱処理の工程が終了した鰹11を低温水蒸気として90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下の時間加熱する第2の加熱処理の工程と、第2の加熱処理の工程が終了した鰹11を高温水蒸気として100℃を超え350℃以下の過熱水蒸気を用いて5分以上で15分以下の時間加熱する第3の加熱処理の工程を有している。
【0022】
第1の前加熱処理を温度が90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて行なうのは、凍結状態又は半凍結状態の鰹11の表面を焦がさずに効率的に温度を上げるためであり、加熱時間を4分以上で30分以下としたのは、鰹11の表層部を解凍させてその表面が連続して水に覆われるようにするためである。なお、飽和水蒸気の温度が90℃未満であると、凍結状態又は半凍結状態の鰹11の表面が連続して水に覆われる状態になるのに多くの時間を要するため好ましくない。また、第1の後加熱処理を100℃を超えて140℃以下の過熱水蒸気を用いて行なうのは、鰹11の解凍により発生し表面を覆っている水の蒸発を抑えながら鰹11の内部の温度を効率的に上昇させて解凍を促進するためである。加熱時間を5分以上で15分以下としたのは鰹11の解凍を進行させて、鰹11の表層部に十分な水分が存在する状態にするためである。第2の加熱処理を90℃以上かつ100℃以下の飽和水蒸気を用いて4分以上で30分以下加熱するのは、鰹11の解凍を更に促進すると共に、鰹11の表面及び内部に十分な水分を存在させるためである。第3の加熱処理を100℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて、5分以上で15分以下の時間加熱するのは、鰹11の内部までの解凍を終了させると共に、解凍が完了した部位の温度を徐々に上昇させて蛋白変性を効率的に行なわせるためである。第2の加熱処理までに、鰹11の解凍は十分に進行し、鰹11の内部には十分な水分が存在した状態になっているため、過熱水蒸気を鰹11に当てても鰹11の表面の温度が異常に上昇するのを抑えて鰹11全体の温度を徐々に上昇させることができる。なお、加熱時間が5分未満では蛋白変性を完了させることができず、15分を超えて加熱すると鰹11の温度が上昇し過ぎ変色が生じるため好ましくない。
【0023】
先ず、第1の前加熱処理、第1の後加熱処理、第2の加熱処理、及び第3の加熱処理の各時間を設定し、チェーンコンベア14の移送速度を選択して第1の前加熱処理、第1の後加熱処理、第2の加熱処理、及び第3の加熱処理の各時間が確保できるように、第1の前加熱処理、第1の後加熱処理、第2の加熱処理、及び第3の加熱処理にそれぞれ使用する加熱処理領域26〜31を決める。
そして、第1の前加熱処理に使用する、例えば、加熱処理領域26の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、第1の後加熱処理に使用する加熱処理領域27の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)を設定する。また、第2の加熱処理に使用する、例えば、加熱処理領域28の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、第3の加熱処理に使用する、例えば加熱処理領域29〜31の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)を設定する。また、加熱処理領域26、28で噴出させる飽和水蒸気が得られるように、水蒸気発生器38の運転条件(飽和水蒸気の温度)を設定する。
【0024】
次いで、水蒸気発生器38、加熱処理領域27、29〜31に設けられた水蒸気供給手段33の水蒸気過熱器37を運転して、各加熱処理領域26〜31に設定された条件の水蒸気を噴出させる。また、チェーンコンベア14を選択した移送速度で駆動させる。そして、図2に示すように、凍結又は半凍結状態の鰹11をトレイ13の載置部12の上に並べ、鰹11を載せたトレイ13をチェーンコンベア14の上流側からベルト部16に順次隙間を設けて載せていく。
ベルト部16に載せられたトレイ13はベルト部16の移動と共に加熱室15に近づき、入側壁部材21に形成された開口部20から加熱処理領域26に進入する。加熱処理領域26内では鰹11の上、下面側がそれぞれ飽和水蒸気により加熱される。加熱処理領域26を通過したトレイ13は加熱処理領域27に進入し同様に過熱水蒸気により鰹11の上下面側の加熱が行なわれる。このとき、鰹11は表層部は解凍されているため表面には水膜が存在し、更に、鱗及び表皮も存在しているので、過熱水蒸気が当てられても表面が焦げることはない。そして、過熱水蒸気が当たるため、鰹11を効率的に加熱することができる。
【0025】
トレイ13が加熱処理領域27を通過して加熱処理領域28内に進入すると、加熱処理領域28内では上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36から飽和水蒸気が噴出しているので、鰹11の上下面側の加熱が行なわれ、加熱処理領域28を通過し加熱処理領域28から退出する時点では、鰹11の内部温度は、例えば0℃まで到達している。
続いて、トレイ13が加熱処理領域29内に進入すると、加熱処理領域29内では上、下部噴出器34、35の水蒸気噴出部36からは過熱水蒸気が噴出しているので、鰹11の上下面側が加熱され、鰹11の内部温度は徐々に上昇して行く。このとき、鰹11は内部まで解凍されており、鰹11の表面には水膜、鱗、及び表皮が存在しているので、過熱水蒸気が当てられても表面が焦げることはない。加熱処理領域29を通過したトレイ13は加熱処理領域30更に加熱処理領域31に進入し、加熱処理領域31から退出する時点では、鰹11の内部は十分に加熱されて蛋白変性が完了している。
蛋白変性が完了した鰹11は放冷し、解体処理して頭、ひれ、内臓、骨、及び鱗等を取り除き、適当な寸法(厚み、幅、及び長さ)に切り分け焙乾処理する。これによって、旨みと保存性が高まった魚節が得られる。
【0026】
ここで、第3加熱処理の工程を、高温水蒸気として100℃を超えて140℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上で30分以下の時間加熱する第3の前加熱処理の工程と、第3前加熱処理後に高温水蒸気として140℃を超えて350℃以下の過熱水蒸気を用いて3分以上で30分以下の時間加熱する第3の後加熱処理の工程に分割して行なうこともできる。このように、高温水蒸気の温度を段階的に変えることで、鰹11の表面を焦がさずに鰹11の内部温度を効率的に上昇させて蛋白変性を起こさせることができる。
この場合は、第1の前加熱処理、第1の後加熱処理、第2の加熱処理、第3の前加熱処理、及び第3の後加熱処理の時間をそれぞれ設定し、チェーンコンベア14の移送速度を選択して第1の前加熱処理、第1の後加熱処理、第2の加熱処理、第3の前加熱処理、及び第3の後加熱処理の時間が確保できるように、それぞれで使用する加熱処理領域26〜31を決める。そして、第1の前加熱処理と第2の加熱処理に使用する加熱処理領域の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37を停止させ、第1の後加熱処理、第3の前加熱処理、及び第3の後加熱処理に使用する加熱処理領域の水蒸気供給手段33に設けられた水蒸気過熱器37の運転条件(過熱水蒸気の温度)をそれぞれ設定する。また、第1の前加熱処理と第2の加熱処理に使用する飽和水蒸気が得られるように、水蒸気発生器38の運転条件(飽和水蒸気の温度)を設定するようにすればよい。
【実施例】
【0027】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
原料魚として、長さ400mm、幅100mm、厚さ70mm前後で、重量が1.3〜1.6kgの凍結状態の鰹を使用した。また、鰹の解凍と蛋白変性には、第1〜第6加熱処理領域を備えた加熱室を使用した。実施例1〜8として、表1に記載した水蒸気の温度と加熱処理時間で鰹の解凍と蛋白変性を行ない、蛋白変性が完了した鰹を放冷した後、解体処理して頭、ひれ、内臓、骨、及び鱗等を取り除き、切り分けて焙乾処理を行ない、鰹節を製造した。
ここで、加熱に使用した水蒸気の温度は、上、下噴出器の各噴出口から噴出する際の水蒸気の温度であり、噴出口と鰹の表面までの距離は40mm前後になるように調整した。また、比較例1として、100℃の飽和水蒸気を用いて解凍から蛋白変性を行ない、解体処理して焙乾処理を行なって鰹節を製造した。更に、比較例2として、150℃の過熱水蒸気を用いて解凍から蛋白変性を行ない、解体処理して焙乾処理を行なって鰹節を製造した。
【0028】
【表1】


【0029】
得られた鰹節はその状態(亀裂の有無及び色)を検査すると共に、沸騰した水1000ccに鰹節20gを加えて出汁を調製し官能評価による味覚試験を行なった。その結果を、表1に示す。
実施例1〜6及び8では、鰹節に亀裂及び変色は存在せず、出汁の旨みは強くなっていた。また、実施例7では、鰹節に亀裂及び変色は存在せず、出汁の旨みは大変強くなっていた。一方、比較例1では、亀裂の発生はなかったが、部分的に変色しており、出汁の旨みは弱くなった。また、比較例2では、亀裂が多数発生し、変色も激しくなり、出汁の旨みは弱く水っぽい状態であった。
【0030】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨を変更しない範囲での変更は可能であり、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組み合わせて本発明の魚節の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。
例えば、鰹の解凍と蛋白変性には6つの加熱処理領域を備えた加熱室を使用したが、過熱条件に応じて加熱処理領域の数を5以下としても、7以上にしてもよい。
また、第2の実施の形態では、凍結状態又は半凍結状態の鰹を全身のまま低温水蒸気で加熱し、その後高温水蒸気で加熱する加熱操作を1回行なう第1の加熱処理を行なってから第2の加熱処理、更に第3の加熱処理を行なったが、第1の加熱処理として凍結状態又は半凍結状態の鰹を全身のまま低温水蒸気で加熱し、その後高温水蒸気で加熱する加熱操作を複数回繰り返すようにしてもよい。これによって、鰹の解凍を素早く行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態に係る魚節の製造方法に適用する魚節の製造装置の説明図である。
【図2】同魚節の製造装置に装入する原料魚の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0032】
10:魚節の製造装置、11:鰹、12:載置部、13:トレイ、14:チェーンコンベア、15:加熱室、16:ベルト部、17:駆動車輪、18:従車輪、19:外壁部、20:開口部、21:入側壁部材、22:開口部、23:出側壁部材、24:開口部、25:仕切壁、26〜31:加熱処理領域、33:水蒸気供給手段、34:上部噴出器、35:下部噴出器、36:水蒸気噴出部、37:水蒸気過熱器、38:水蒸気発生器
【出願人】 【識別番号】599029589
【氏名又は名称】豊田テクノ株式会社
【住所又は居所】福岡県北九州市小倉南区上吉田3丁目17番23号
【出願日】 平成16年7月28日(2004.7.28)
【代理人】 【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男

【公開番号】 特開2006−34188(P2006−34188A)
【公開日】 平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願番号】 特願2004−220164(P2004−220164)