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【発明の名称】 アデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)活性を阻害する組成物の使用
【発明者】 【氏名】シジョ、 マシュー
【氏名】ヴィシュウェツュワライア プラカシュ
【課題】金属塩及び多価アルコールのATPアーゼ阻害組成物を得ること、更には、保存中にヌクレオチド分解産物の減少を導く魚肉中ATPアーゼ阻害組成物を使用する方法を開発し、その後の魚肉及び水産物の保存安定性を拡大させる。

【解決手段】魚肉アクトミオシンのアデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)活性を阻害するための方法に関し、特に、魚肉アクトミオシンに阻害量の金属塩、例えば塩化亜鉛又は硫酸亜鉛と、多価アルコール、例えばソルビトール及びマンニトールを添加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚肉アクトミオシンに阻害量の亜鉛塩又は多価アルコールを添加する、魚肉アクトミオシンのATPアーゼ活性を阻害するための多価アルコール及び亜鉛塩の使用。
【請求項2】
魚肉アクトミオシンに2〜10%(w/v)の多価アルコールを添加する請求項1に記載の使用。
【請求項3】
多価アルコールがソルビトール及びマンニトールから選択される請求項2に記載の使用。
【請求項4】
魚肉アクトミオシンに6〜10%(w/v)のソルビトールを添加する請求項3に記載の使用。
【請求項5】
魚肉アクトミオシンに4〜8%(w/v)のマンニトールを添加する請求項3に記載の使用。
【請求項6】
魚肉アクトミオシンに1×10-5M〜1×10-2Mの亜鉛塩を添加する請求項1に記載の使用。
【請求項7】
亜鉛塩が塩化亜鉛及び硫酸亜鉛である請求項6に記載の使用。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉アクトミオシンのアデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)活性を阻害するための方法に関する。特に、本発明は、金属塩、即ち塩化亜鉛と、多価アルコール、即ちソルビトール及びマンニトールとによって、イワシ(Sardinella longiceps)のアクトミオシンに由来するヌクレオチド分解酵素、アデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)を阻害することに関する。
【背景技術】
【0002】
凍結処理及び冷凍保存は、筋肉タンパク質を保存するための最も広範に受け入れられた方法である。このプロセスの間に筋原線維タンパク質が変性/凝固すると、結果的にタンパク質の機能性が失われることとなる。凍結処理の間での変性を減らすために、種々の凍結防止剤及びその組み合わせが試みられてきた(例えば、非特許文献1)。ミオシンはマッスルフードの機能性の主要な要因であり、そして種々の処理によってその機能性を改良するための研究が、広範囲にわたってなされてきた(例えば、非特許文献2及び3)。ミオシンは非対称性が強い分子であり、二本の重鎖と二対の軽鎖からなる520KDの分子量を有する(非特許文献4)。ミオシンは、非常に多くの収縮システムの主要なタンパク質成分の一つであり、骨格筋における総タンパク質のほぼ50%を構成する(非特許文献5)。それぞれの重鎖のN−末端側の半分は、球状の頭部、即ちアクチン結合部位及びATP結合部位を含むミオシンサブフラグメント1(S1)に折りたたまれる(非特許文献6)。アデノシン三リン酸は魚介食品中で、一連の中間体からヒポキサンチンへ酵素的に分解され、その結果、死体硬直が生じて筋肉のpHが低下し、低品質の肉となる(非特許文献7)。筋肉が凍る速度が速いほど、死後解糖及びATPの分解作用の速度が遅くなり、このことは、解凍時の少ない滲出液に反映される。屠殺前に、動物を弛緩させるのに十分な量の硫酸マグネシウムを注入すれば、ATPの分解速度を更に鈍化させ、そしてインビボの水分保持能力の維持が、より高い程度に高められ、そして肉汁の程度に反映される。ATPの分解が停止した場合、次いで、解凍時の肉汁の程度は更に少なくなる(非特許文献8)。魚が死んだ後、ATPからIMPへの変換は、1日又は2日以内に完了することが通常であり、このことは全体的に触媒プロセスであると推測される。ATPからのヒポキサンチンの形成は速く、そして内因性の酵素に依存する。ATP及びADPの死後枯渇は、アクチンとミオシンとの相互作用を可能にし、永久的なアクトミオシンの架橋結合を形成させる(非特許文献7)。
【0003】
ヌクレオチドのATP、ADP及びIMPが、−20℃で貯蔵された魚肉アクトミオシンに対する保護効果を発揮することが示されてきたが、一方、ヌクレオチドの異化産物であるイノシン及びヒポキサンチンはこれらのタンパク質を不安定化させた(非特許文献9)。この発見は、結果的に高濃度のATP、ADP及びIMPを伴う新鮮な魚肉の方が、新鮮さに乏しい魚肉よりも冷凍保存時に最も安定である理由を説明することに役立つかもしれない(非特許文献10)。
【0004】
筋小胞体のATPアーゼ活性を阻害する多数の化合物が参照され得る。ノニルフェノール及び3,5ジブチル−4−ヒドロキシトルエン(BHT)は、骨格筋の筋小胞体のCa2+及びMg2+ATPアーゼ活性を阻害した(非特許文献11)。2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジヒドロキシベンゼン(BHQ)及びその他の疎水性の1,4−ジヒドロキシベンゼンは、骨格筋の筋小胞体のCa2+ATPアーゼを阻害する(非特許文献12)。Ca2+ATPアーゼのヌクレオチド活性化とホスホランバンによる阻害との強い関係が見出された。ホスホランバンは、基質の親和性に、又は二つの調節的な役割、即ち触媒的な役割及び調節的な役割を果たすヌクレオチドの能力に影響を及ぼすことなく、活性化可能なCa2+ATPアーゼの数を減少させる。促進的な条件下でさえ、タンニンは、線形ディクソンプロットに従うMg2+ATPの拮抗阻害剤である。高濃度のタンニンのその後の阻害作用は、タンニンとCa2+ATPアーゼのヌクレオチド結合部位についての競合作用に起因する。対照的にエラグ酸は、曲線を成すディクソンプロットを形成し、このことは、ヌクレオチド活性化を部分的に阻害することを示唆している(非特許文献13)。サプシガルジンは、植物由来のセスキテルペンラクトンであるが、これは、速筋及び心筋から単離された筋小胞体のATPアーゼ活性とCa2+の取り込みとを停止させるが、原形質膜のCa2+ATPアーゼ又はNa,K ATPアーゼのいずれにも影響を与えない(非特許文献14)。2,5−ジ(tert−ブチル)−1,4−ベンゾヒドロキノン(BHQ)が、0.4μMの親和性で筋小胞体のCa2+,Mg2+−ATPアーゼを阻害することも示されている(非特許文献15)。ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−5−メチルフェニル)メタン・ビスフェノール)は、特定された骨格筋の筋小胞体のCa2+Mg2+ATPアーゼの最も強力な阻害剤である(非特許文献16)。単離されたタンパク質が、リン酸化平滑筋ミオシンのアクチン活性化Mg2+ATPアーゼ活性を阻害するので、カルポニンは、平滑筋収縮の制御に関与する薄フィラメント会合タンパク質である(非特許文献17)。
【0005】
非特許文献18も参照され得る。これには、筋小胞体膜のCa2+ATPアーゼ活性の強力な阻害剤であるジエチルスチルベストロールについて記述されている。その他の構造的に関連する分子、たとえば二つのベンゼン環のパラの位置にヒドロキシル基を持つジエンストロール又はヘキセストロールなどが、同様の影響を生じさせる。
【0006】
非特許文献19も参照され得る。これには、高分子量の共溶媒、ポリエチレングリコールの添加が凝固をもたらすことが示されている。この凝固は、低イオン強度での測定時に、Mg2+介在性ATPアーゼ活性の可逆的な喪失が伴う20%のPEGの添加によって報告される。PEGによって誘導されるS1の凝固により、閉鎖位置から開放位置へのレバーアームの動きが機械的に抑制され、そして強固な結合のために、M**ADP・PiからM*ADPへの移行が抑制され、S1のMg2+ATPアーゼ活性が阻害される(非特許文献20)。ポリエチレングリコールはATPアーゼ活性を25〜40%低下させた(非特許文献21)。
【0007】
ハートマン(Hartman)ら、2002年12月17日出願の高処理能力サルコメアアッセイ(High thorouput sarcomeric assay)についての特許文献1も参照され得る。これは、サルコメアのATPアーゼのカルシウム要求性について記載している。
【0008】
ハートマンら、2003年1月21日出願の高処理能力サルコメアアッセイ(High thorouput sarcomeric assay)についての特許文献2も参照され得る。これは心臓のサルコメアのATPアーゼについて記載している。ハートマンら、2003年6月3日出願のサルコメアタンパク質の組成についての特許文献3も参照され得る。これは生化学的に機能するサルコメアの生物活性を制御する化合物について記載している。
【0009】
【非特許文献1】スルタンベイワ及びリー・チャン(Sultanbawa and Li-Chan)、1998年、冷凍保存中のリングコッドのすり身における糖類と多価アルコールとのブレンド物の凍結防止効果(Cryoprotective effect of sugars and polyol blends in ling cod surimi during frozen storage)、Food Research International, 31(2), p87-98
【非特許文献2】クリスチンソン及びハルチン(Kristinsson and Hultin)、2003年、タラの筋肉タンパク質の機能特性に与える低pH処理及び高pH処理の影響(Effect of low and high pH treatments on the functional properties of cod muscle proteins)、J.Agric.Food Chem., 51, p5103-5110
【非特許文献3】クリスチンソン及びハルチン、2003b年、低pH及び高pHにおけるタラのミオシンの高次構造及びサブユニットアセンブリの変化ならびにその後のリフォールディング(Changes in the conformation and subunit assembly of cod myosin at low and high pH and after subsequent refolding)、J.Agric.Food Chem., 51, p7187-7196
【非特許文献4】レイメント(Rayment)ら、1993年、ミオシンのサブフラグメント−1の三次元構造:分子モーター(Three dimensional structure of myosin subfragment-1: a molecular motor)、Science, 261, p50-58
【非特許文献5】ハリントン及びロジャーズ(Harrington and Rodgers)、1984年、ミオシン、Ann.Rev.Biochem, 53, p35-73
【非特許文献6】トガシ(Togashi)ら、2002年、スケトウダラのミオシン及びライトメロミオシンの示差走査熱量測定及び円二色性分光測定(Differential scanning calorimetry and circular dichroism spectrometry of wallye Pollack myosin and light meromyosin)、J.Agric.Food Chem., 50, p4803-4811
【非特許文献7】アシエ(Ashie)ら、1996年、新鮮な魚肉及び甲殻類の損傷及び賞味期限の延長(Spoilage and shelf life extension of fresh fish and shell fish)、Critical Reviews in Food Science and Nutrition, 36, p87-121
【非特許文献8】ローリー(Lawrie),R.A.、1968年、recent advances in food science、第4巻、第365頁
【非特許文献9】ジャン(Jiang)ら、1987年、−20℃での冷凍保存中のアデノシンヌクレオチド及びそれらの誘導体が、インビトロの筋原線維タンパク質の変性に及ぼす効果(Effect of adenosine nucleotides and their derivatives on the denaturation of myofibrillar proteins in vitro during frozen storage at -20℃、J Food Sci., 52(1), p117-123
【非特許文献10】フクダ(Fukuda)ら、1984年、筋原線維タンパク質の凍結変性に及ぼすマサバの新鮮度の影響(Effect of freshness of chub mackerel on the freeze denaturation of myofibrillar proteins)、Bull Jap.Soc.Sci.Fish, 50, p845-852
【非特許文献11】ミケランジェリ(Michelangeli) , S. ら、1990年、ノニルフェノールによる(Ca2+Mg2+)ATPアーゼの阻害メカニズム(Mechanism of inhibition of the (Ca2+Mg2+) ATPase by Nonylphenol)、Biochemistry, 29, p3091-3101
【非特許文献12】カーン(Khan)ら、1995年、ジヒドロキシベンゼンのCa2+ATPアーゼとの相互作用:ジヒドロキシベンゼン及びセスキテルペンラクトンに対する別個の結合部位(Interactions of dihydroxy benzenes with the Ca2+ ATPase: separate binding sites for dihydroxy benzenens and sesquiterpene lactones)、Biochemistry, 34, p14385-14393
【非特許文献13】コール(Coll),K.E.ら、1999年、ホスホランバンと心臓の筋小胞体のCa2+アデノシントリホスファターゼのヌクレオチドの活性化との関係(Relationship between phospholamban and nucleotide activation of cardiac sarcoplasmic reticulum Ca2+ adenosinetriphosphatase)、Biochemistry, 38, p2444-2451
【非特許文献14】リットン(Lytton),J.ら、1991年、サプシガルジンは、筋小胞体又は小胞体のCa2+ATPアーゼファミリーのカルシウムポンプを阻害する(Thapsigargin inhibits the sarcoplasmic or endoplasmic reticulum Ca2+ ATPase family of calcium pumps)、J.Biol.Chem., 266(26), p17067-17071
【非特許文献15】ウィクトム(Wictome),M.ら、1992年、阻害剤のサプシガルジン及び2,5ジ(ter−ブチル)−1,4−ベンゾヒドロキノンは、E2体のCa2+Mg2+ATPアーゼを好む(The inhibitors thapsigargin and 2,5 di(ter-butyl)-1,4-benzohydroquinone favour the E2 form of Ca2+ Mg2+ ATPase)、FEBS Letts., 304, p109-113
【非特許文献16】ソコロブ(Sokolove),P.M.ら、1986年、フェノール性の抗酸化剤:筋小胞体のCa2+Mg2+ATPアーゼの強力な阻害剤(Phenolic antioxidants: potent inhibitors of the Ca2+ Mg2+ ATPase of sarcoplasmic reticulum)、FEBS Letts., 203, 121-126
【非特許文献17】ワインダー及びウォールシュ(Winder and Walsh)、1990年、平滑筋カルポニンの、アクトミオシンMg2+ATPアーゼの阻害とリン酸化による制御(Smooth muscle calponin inhibition of actomyosin Mg2+ ATPase and regulation by phosphorylation)、J.Biol.Chem., 265, p10148-10155
【非特許文献18】マルチネス−アゾリン(Martnez-azorin),F.ら、1992年、ジエチルスチルベストロール及びそれに関連する化合物が、筋小胞体のCa2+輸送ATPアーゼに及ぼす影響(Effect of diethylstilbestrol and related compound on the Ca2+ transporting ATPase of sarcoplasmic reticulum)、J.Biol.Chem.,267(17), p11923-11929
【非特許文献19】ハイスミス(Highsmith)ら、1998年、機械的に固定することによるミオシンのサブフラグメント1活性の可逆的な不活性化(Reversible inactivation of myosin subfragement 1 activity by mechanical immobilization)、Biophys. J., 74(3), p1465-1472
【非特許文献20】ペイセル(Peyser)ら、2003年、凝固を誘導する共溶媒は、移行期の支配的な中間体を安定化させることによってミオシンのATPアーゼ活性を阻害する(Cosolvent induced aggregation inhibits myosin ATPase activity by stabilizing the predominant transition intermediate)、Biochemistry, 42, p12669-12675
【非特許文献21】チン(Chinn)ら、2000年、活動的な筋繊維の機械的な活動及びATPアーゼ活性に与えるポリエチレングリコールの影響(Effect of polyethylene glycol on the mechanical and ATPase activity of active muscle fibres)、Biophys.J., 78(2), p927-939
【特許文献1】米国特許第6495337号
【特許文献2】米国特許第6509167号
【特許文献3】米国特許第6573061号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の主な目的は、金属塩及び多価アルコールのATPアーゼ阻害組成物を得ることである。本発明の更に別の目的は、保存中にヌクレオチド分解産物の減少を導く魚肉中ATPアーゼ阻害組成物を使用する方法を開発し、その後の魚肉及び水産物の保存安定性を拡大させることである。
本発明の更に別の目的は、種々のpH条件及び温度条件における上記化合物の阻害効果を明らかにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の魚肉アクトミオシンのATPアーゼ活性を阻害するための多価アルコール及び亜鉛塩の使用は、魚肉アクトミオシンに阻害量の亜鉛塩又は多価アルコールを添加するものである。
ここで、魚肉アクトミオシンに2〜10%(w/v)の多価アルコールを添加することが好ましい。
また、多価アルコールがソルビトール及びマンニトールから選択されることが好ましく、この場合、6〜10%(w/v)のソルビトールを添加すること、及び4〜8%(w/v)のマンニトールを添加することがそれぞれ更に好ましい。
またここで、魚肉アクトミオシンに1×10-5M〜1×10-2Mの亜鉛塩を添加することが好ましく、亜鉛塩が塩化亜鉛及び硫酸亜鉛であることが更に好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、魚肉アクトミオシンのアデノシントリホスファターゼ活性を阻害することができ、魚肉タンパク質の保存安定性を改良することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、魚肉(fish)アクトミオシンのアデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)活性を阻害するための方法に関する。より具体的には、本発明は、金属塩、即ち塩化亜鉛と、多価アルコール、即ちソルビトール及びマンニトールとによって、イワシ(Sardinella longiceps)のアクトミオシンに由来するヌクレオチド分解酵素アデノシントリホスファターゼ(ATPアーゼ)を阻害することに関する。
【0014】
本発明の一つの態様においては、選択される酵素活性は、Ca2+で活性化されたアデノシントリホスファターゼ活性(Ca2+ATPアーゼ活性)でもよい。
【0015】
本発明の別の態様においては、選択される多価アルコールは、ソルビトール及びマンニトールでもよい。
本発明の更に別の態様においては、多価アルコールを2〜10%(w/w)の濃度で選択してもよい。
【0016】
本発明の別の態様においては、選択される重金属は、Ca2+ATPアーゼ活性を阻害し得る塩化亜鉛である。
本発明の更に別の態様においては、1×10-5M〜1×10-2Mの濃度で選択された亜鉛化合物は、Ca2+ATPアーゼ活性を阻害し得る。
【0017】
本発明の更に別の態様においては、選択されるpHは7.0と9.0との間の範囲でもよい。
本発明の更に別の態様においては、選択される温度は25℃〜45℃の間でもよい。
【0018】
本発明の更に別の態様においては、選択される魚肉はインディアン・オイル・サーディン(Sardinella longiceps)でもよい。
【0019】
本発明によれば、魚肉アクトミオシンのアデノシントリホスファターゼ活性を阻害する方法は、魚肉タンパク質の保存安定性を改良する。
また、活性を阻害するために、低濃度のソルビトール及びマンニトールを用いることができる。
更に活性を低下させるために用いるのに必要なZnCl2は、極めて少量、即ち、製品の栄養価をその後に改善する酵素活性の完全な阻害には、わずか1×10-3Mの濃度が要求されるのみである。
【実施例】
【0020】
本発明に従って、新鮮なインディアン・オイル・サーディン(Sardinella longiceps)からアクトミオシンを単離し、ペリー(Perry)、1955(ミオシンアデノシントリホスファターゼ、Methods in enzymology, 2, p582)の方法に従って、そのCa2+ATPアーゼ活性について試験した。基質には0.05mLの50mMのATP、0.2mLの0.1MのCaCl2が含まれ、そして異なる濃度の選択された多価アルコールが存在する。基質中で、異なる濃度のソルビトール及びマンニトールの存在下にて酵素活性をアッセイした。温度が調整された振盪恒温槽内で、15分間活性を維持した。1mLの15%トリクロロ酢酸を添加することによって、この反応を停止させた。タウスキー及びショール(Taussky and Shorr)、1953(無機リンを測定するためのマイクロ熱量法、J Biol Chem, 202, p675)に従って、上清中の無機リン酸塩の量を決定した。25℃における酵素活性を100%とし、そして異なる濃度の多価アルコールの存在下及び異なる温度にて、この活性に基づくパーセントとして酵素活性を表示した。
【0021】
[実施例1]
pHが7.0で温度が25℃における、ソルビトール及びマンニトールがアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のソルビトール又はマンニトール−コントロール、2%、4%、6%、8%及び10%が存在するKCl(0.5M)含有トリス−Cl緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH7.0及び温度25℃における多価アルコール存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表1に示す。
【0022】
【表1】


【0023】
[実施例2]
pHが7.0で温度が37℃における、ソルビトール及びマンニトールがアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のソルビトール又はマンニトール−コントロール、2%、4%、6%、8%及び10%が存在するKCl(0.5M)含有トリス−Cl緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH7.0及び温度37℃における多価アルコール存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表2に示す。
【0024】
【表2】


【0025】
[実施例3]
pHが7.0で温度が45℃における、ソルビトール及びマンニトールがアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のソルビトール又はマンニトール−コントロール、2%、4%、6%、8%及び10%が存在するKCl(0.5M)含有トリス−Cl緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH7.0及び温度45℃における多価アルコール存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表3に示す。
【0026】
【表3】


【0027】
[実施例4]
pHが9.0で温度が25℃における、ソルビトール及びマンニトールがアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のソルビトール又はマンニトール−コントロール、2%、4%、6%、8%及び10%が存在するKCl(0.5M)含有グリシン−NaOH緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH9.0及び温度25℃における多価アルコール存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表4に示す。
【0028】
【表4】


【0029】
[実施例5]
pHが9.0で温度が37℃における、ソルビトール及びマンニトールがアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のソルビトール又はマンニトール−コントロール、2%、4%、6%、8%及び10%が存在するKCl(0.5M)含有グリシン−NaOH緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH9.0及び温度37℃における多価アルコール存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表5に示す。
【0030】
【表5】


【0031】
[実施例6]
pHが9.0で温度が45℃における、ソルビトール及びマンニトールがアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のソルビトール又はマンニトール−コントロール、2%、4%、6%、8%及び10%が存在するKCl(0.5M)含有グリシン−NaOH緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH9.0及び温度45℃における多価アルコール存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表6に示す。
【0032】
【表6】


【0033】
[実施例7]
pHが7.0で温度が25℃における、塩化亜鉛がアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のZnCl2−コントロール、1×10-5M、1×10-4M、1×10-3M、1×10-2Mが存在するKCl(0.5M)含有トリス−HCl緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH7.0及び温度25℃における塩化亜鉛存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表7に示す。
【0034】
【表7】


【0035】
[実施例8]
pHが7.0で温度が37℃における、塩化亜鉛がアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のZnCl2−コントロール、1×10-5M、1×10-4M、1×10-3M、1×10-2Mが存在するKCl(0.5M)含有トリス−HCl緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH7.0及び温度37℃における塩化亜鉛存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表8に示す。
【0036】
【表8】


【0037】
[実施例9]
pHが7.0で温度が45℃における、塩化亜鉛がアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のZnCl2−コントロール、1×10-5M、1×10-4M、1×10-3M、1×10-2Mが存在するKCl(0.5M)含有トリス−HCl緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH7.0で温度45℃における塩化亜鉛存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表9に示す。
【0038】
【表9】


【0039】
[実施例10]
pHが9.0で温度が25℃における、塩化亜鉛がアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のZnCl2−コントロール、1×10-5M、1×10-4M、1×10-3M、1×10-2Mが存在するKCl(0.5M)含有グリシン−NaOH緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH9.0及び温度25℃における塩化亜鉛存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表10に示す。
【0040】
【表10】


【0041】
[実施例11]
pHが9.0で温度が37℃における、塩化亜鉛がアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のZnCl2−コントロール、1×10-5M、1×10-4M、1×10-3M、1×10-2Mが存在するKCl(0.5M)含有グリシン−NaOH緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH9.0及び温度37℃における塩化亜鉛存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表11に示す。
【0042】
【表11】


【0043】
[実施例12]
pHが9.0で温度が45℃における、塩化亜鉛がアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のZnCl2−コントロール、1×10-5M、1×10-4M、1×10-3M、1×10-2Mが存在するKCl(0.5M)含有グリシン−NaOH緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH9.0及び温度45℃における塩化亜鉛存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表12に示す。
【0044】
【表12】


【0045】
[実施例13]
pHが9.0で温度が25℃における、硫酸亜鉛がアクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性に及ぼす影響を調べるために、反応混合液中に異なる濃度のZnSO4−コントロール、1×10-5M、1×10-4M、1×10-3M、1×10-2Mが存在するKCl(0.5M)含有グリシン−NaOH緩衝液の存在下で、活性を測定した。pH9.0及び温度25℃における硫酸亜鉛存在下での魚肉由来アクトミオシンのCa2+ATPアーゼ活性のパーセントを表13に示す。
【0046】
【表13】


【0047】
このように本発明によれば、魚肉アクトミオシンのアデノシントリホスファターゼ活性を阻害することができ、魚肉タンパク質の保存安定性を改良することができる。

【出願人】 【識別番号】595059872
【氏名又は名称】カウンシル オブ サイエンティフィク アンド インダストリアル リサーチ
【出願日】 平成16年6月18日(2004.6.18)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【公開番号】 特開2006−77(P2006−77A)
【公開日】 平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願番号】 特願2004−181839(P2004−181839)