| 【発明の名称】 |
糖尿病性網膜症・腎症モデル動物 |
| 【発明者】 |
【氏名】加藤 一郎
【氏名】平賀 紘一
【氏名】岡本 宏
【氏名】高沢 伸
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| 【要約】 |
【課題】カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2の常時活性化が起こった場合に引き起こされる糖尿病の発症機構の解明および糖尿病合併症の治療薬をスクリーニングするために有用な糖尿病合併症を発症するモデル哺乳動物を提供すること。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 インスリンプロモーター、変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のDNA、SV40−ポリAシグナルの順に配列された遺伝子が導入され、糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物。 【請求項2】 変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のDNAが配列番号3記載のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードする遺伝子である請求項1記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物。 【請求項3】 インスリンプロモーターがラットインスリンプロモーターである請求項1〜2のいずれかに記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物。 【請求項4】 トランスジェニック非ヒト哺乳動物がげっ歯類である請求項3に記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物。 【請求項5】 げっ歯類がマウスである請求項4に記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物。 【請求項6】 生後2〜3週間で糖尿病を発症し、4〜7ヶ月で糖尿病網膜症および糖尿病性腎症を発症する請求項5記載のマウス。 【請求項7】 糖尿病合併症が糖尿病網膜症および糖尿病性腎症である請求項1〜5のいずれかに記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物。 【請求項8】 請求項1〜7のいずれか記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を用いることを特徴とする糖尿病合併症治療薬のスクリーニング方法。 【請求項9】 糖尿病合併症治療薬が糖尿病網膜症の治療薬および/または糖尿病性腎症の治療薬である請求項8のスクリーニング方法。 【請求項10】 インスリンプロモーター、変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のタンパク質をコードするcDNA、SV40−ポリAシグナルの順に配列した導入遺伝子を構築し、該導入遺伝子をトランスジェニック非ヒト哺乳動物の受精卵の雄性前核に導入し、得られた卵細胞を培養した後、偽妊娠雌性マウスの輸卵管に移植し、その後被移植動物を飼育し、産まれた仔のトランスジェニック非ヒト哺乳動物から前記cDNAを有する仔のトランスジェニック非ヒト哺乳動物を選択することを特徴とする糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の創製方法。 【請求項11】 変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のタンパク質が、配列表の配列番号3記載のアミノ酸配列からなるタンパク質であることを特徴とする請求項10記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の創製方法。 【請求項12】 インスリンプロモーターがラットインスリンプロモーターである請求項10〜11のいずれかに記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の創製方法。 【請求項13】 トランスジェニック非ヒト哺乳動物がげっ歯類である請求項12に記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の創製方法。 【請求項14】 げっ歯類がマウスである請求項13に記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の創製方法。 【請求項15】 マウスが生後2〜3週間で糖尿病を発症し、4〜7ヶ月で糖尿病網膜症および糖尿病性腎症を発症するマウスである請求項14記載の非ヒト哺乳動物の創製方法。 【請求項16】 糖尿病合併症が糖尿病網膜症および糖尿病性腎症である請求項10〜14のいずれかに記載の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物の創製方法。 【請求項17】 請求項10〜16のいずれか記載の創製方法で創製された糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を用いることを特徴とする糖尿病合併症治療薬のスクリーニング方法。 【請求項18】 糖尿病合併症治療薬が糖尿病網膜症の治療薬および/または糖尿病性腎症の治療薬である請求項17のスクリーニング方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、糖尿病合併症の病態モデル動物に関し、さらに詳しくは、インスリンプロモーター、変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のDNA、SV40−ポリAシグナルの順に配列された遺伝子が導入されたことで早期に糖尿病を発症し、さらに糖尿病性網膜症・腎症などの糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物、該動物の創製方法並び該動物用いる糖尿病合併症の治療薬のスクリーニング方法に関する。 【背景技術】 【0002】 日本国内の糖尿病患者数は増加の一途をたどり、最新の厚生省統計では推定罹患人口は、700万人に達する。全世界では現在5000万人、近い将来は1億人に達すると予想されている。これに伴い糖尿病合併症でクオリティ・オブ・ライフ(quality of life:QOL)が著しく損なわれる患者数も急増している。糖尿病合併症の中でも、血管合併症である糖尿病性腎症、糖尿病網膜症、糖尿病性神経障害は3大合併症と称されている。糖尿病性腎症や糖尿病網膜症の治療としては、透析療法・光凝固療法が主に行われているがそれらはあくまで対症療法であり、未だその根本的治療法は確立していないのが現状である。 【0003】 一方、遺伝子組み換えによる糖尿病モデル動物に関しては、例えばアンチセンス・グルコキナーゼ遺伝子を染色体に取り込んだ糖尿病モデルマウス(特許文献1)、ヒトインスリン遺伝子プロモーターと、かかるプロモーターの下部に付着される熱衝撃蛋白質70遺伝子が融合された糖尿病発生遺伝子をマウスに導入した糖尿病発症トランスジェニックマウス(特許文献2)、母親性の発現を示すインプリンティング遺伝子であるMeg1/Grb10遺伝子が導入されたトラスジェニック非ヒト哺乳動物(特許文献3)等が提案されている。 他方,カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2(CaMキナーゼ2:CaMK2)は、1980年にラット脳において神経伝達物質の一つであるセロトニン生合成の律速酵素であるトリプトファンヒドロキシラーゼを活性化する新しいタイプのカルモジュリン依存性リン酸化酵素として発見された酵素である。この酵素は、通常、Ca2+濃度依存的に活性化され、インスリン分泌反応において重要な役割を果たす。この酵素の1アミノ酸変異体(286番目のスレオニンがアスパラギン酸に置換)は、カルシウム非依存で常時活性化されることが知られている(非特許文献1)。 【特許文献1】特開平6−292485 【特許文献2】特開平9−28384 【特許文献3】特開2001−112373 【非特許文献1】Cell,Vol.81,891−904,1995 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 糖尿病は、インスリン依存性の1型糖尿病とインスリン抵抗性の2型糖尿病に分けられるが、いずれも高血糖を放置すると網膜症や腎症など合併症を発症する。 糖尿病性腎症や糖尿病網膜症の最適なモデル動物を開発し、糖尿病合併症の治療・予防への応用を図ることは、科学的重要性と社会的緊急性とを併せ持つ。 本発明の目的は、カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2の常時活性化が起こった場合に引き起こされる糖尿病発症機構の解明および糖尿病合併症発症モデル動物の創製並びに糖尿病合併症発症モデル動物を用いた糖尿病性腎症・糖尿病網膜症・糖尿病神経障害等の糖尿病合併症の治療薬をスクリーニングするための方法の構築である。 【課題を解決するための手段】 【0005】 高血糖状態の膵臓ランゲルハンス島β細胞では,カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2の活性化が持続していることが推定される。そこで本発明者らは、カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2変異体のタンパク質をコードするcDNAをインスリンプロモーターの下流に含有する導入遺伝子を構築し、該導入遺伝子をマウス受精卵の雄性前核にマイクロインジェクションし、得られた卵細胞を培養した後、偽妊娠雌性マウスの輸卵管に移植し、その後被移植動物を飼育し、産まれた仔マウスから前記cDNAを有する仔マウスを選択することを特徴とするトランスジェニックマウスを創製した。さらに、本発明者らは研究を進め、今般創製したトランスジェニックマウスが、生後2〜3週間で劇症型の糖尿病を100%発症すること、さらに4ヶ月程度飼育することで、糖尿病性腎症および糖尿病網膜症を発症することを見出し、本発明を完成した。 以下、本発明を詳細に説明する。 【0006】 本発明で使用されるインスリンプロモーターは、特に限定されないが、例えば、げっ歯類、とりわけ、ラットのインスリンプロモーターが好ましい。また、インスリンプロモーターは、例えば、肝臓由来ゲノムDNAを鋳型としてPCR法で調製すればよい。具体的なものとして、例えば、ラットインシュリン2遺伝子から得られるプロモーター(配列番号1)が挙げられる。 【0007】 本発明で使用される変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2は、この酵素の1アミノ酸変異体であり、286番目のスレオニンがアスパラギン酸に置換したものである。具体的なものとして、例えば、配列番号3のアミノ酸配列のタンパク質が挙げられる。 この酵素のDNAは、例えば、CD1マウス脳由来のDNAを2つのDNA断片に分けて、それぞれを鋳型としてPCR法で増幅し、得られた各々のPCR産物をプラスミドに導入後、通常知られた方法で調製すればよい。具体的なものとして、例えば、配列番号2のDNA配列が挙げられる。 【0008】 本発明で使用されるインスリンプロモーター、変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のDNA、SV40−ポリAシグナルの順に配列された遺伝子は、例えば、変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のDNAおよびSV−40が導入されたプラスミドから、導入用のDNA断片を切り出し、それらを通常知られた方法で連結したDNAを有するプラスミドを得、さらにこのプラスミドとインスリンプロモーターを有するプラスミドを用いて、通常知られた方法により調製すればよい。具体的なものとして、例えば、配列番号5のDNA配列の遺伝子が挙げられる。また、SV40−ポリAシグナルとしては、例えば、配列番号4のDNA配列が挙げられる。 【0009】 本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物は、例えばげっ歯類等の非ヒト哺乳動物の受精卵にインスリンプロモーター、変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のDNA、SV40−ポリAシグナルの順に配列された遺伝子を導入し、当該受精卵を偽妊娠雌性非ヒト哺乳動物に移植し、当該非ヒト哺乳動物からインスリンプロモーター、変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のDNA、SV40−ポリAシグナルの順に配列された遺伝子が導入された非ヒト哺乳動物を分娩させることにより創製することができる。非ヒト哺乳動物としては、マウス、ラット等げっ歯類;ウサギ等の哺乳動物を例示することができるが、創製、育成、使用の簡便さ等からしてマウスが好ましい。また、受精卵への遺伝子の導入方法は特に限定されるものではなく、マイクロインジェクション法やエレクトロポレーション法等を例示することができる。 【0010】 トランスジェニック非ヒト哺乳動物がトランスジェニックマウスの場合を例に挙げてより具体的に説明すると、ラットインスリンプロモーター、変異型のカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のタンパク質をコードするcDNA、SV40−ポリAシグナルの順に配列した導入遺伝子を構築し、該導入遺伝子をマウス受精卵の雄性前核にマイクロインジェクションし、得られた卵細胞を培養した後、偽妊娠雌性マウスの輸卵管に移植し、その後被移植動物を飼育し、産まれた仔マウスから前記cDNAを有する仔マウスを選択することよりトランスジェニックマウスを創製することができる。上記マウスの受精卵としては、特に限定されないが、例えば、BDF1マウスの受精卵を用いることが好ましい。また、注入する導入遺伝子の数は受精卵1個当たり100〜3000分子が適当である。また、cDNAを有する仔マウスの選択は、例えば、マウスの尻尾等よりDNAを抽出し、ラットインスリン遺伝子の配列の一部およびカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2に相補的な配列をプライマーとするPCR法で増幅し、導入遺伝子を確認しながら選択するればよい。ここで選択されたマウスを初代として飼育し、例えば、CD1マウスと交配して弟2世代マウスを得ることができる。 【0011】 本発明の糖尿病合併症を発症するトランスジェニック非ヒト哺乳動物を用いる糖尿病網膜症および/または糖尿病腎症等の糖尿病合併症の治療薬をスクリーニングする方法としては、本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物、例えば雄のトランスジェニックマウスに、被検物質を投与し、該トランスジェニック非ヒト哺乳動物から得られた尿の尿糖値や、眼球の付け根部分や尻尾などから採血した血液の血糖値等の測定や生存率等を検討することにより、該被検物質の糖尿病治療効果を評価することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0012】 [実施例] 以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はかかる実施例により何ら制限されるものではない。 実施例1 (ラットインスリンプロモーターの調製) ラットインスリン2遺伝子のプロモーターDNA断片は、Wistar ラット肝臓由来ゲノムDNAを鋳型としてPCR(Polymerase chain reaction)法で 論文 [Lomedico et al., セル(Cell)18巻、545-558頁、1979年]中のDNA配列を参考にして723bpを増幅して得られた。用いたオリゴヌクレオチドプライマーは、その中にBamHI認識配列およびXmaI認識配列を形成するように修飾した以下のものを用いた。 5’-AAGGATCCCCCCAACCACTCCAAGTGG-3’(配列番号6), 5’-TACCCGGGTAGCTGGTCACTTAGGGCTG-3’(配列番号7) 得られたPCR産物をBamHIおよびXmaIで消化後、プラスミド(pBlueScript SK-:米国Stratagene社)の当該制限酵素部位に導入した。 得られたラットインスリン2遺伝子DNA断片の遺伝子配列(BamHI-XmaI断片723 bp)を配列番号1に示す。 【0013】 実施例2 (変異型カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2のDNAの調製) アミノ酸変異型(286番目のスレオニンがアスパラギン酸に置換された)カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2αをコードするDNA断片は、CD1マウス脳由来complementary DNAを鋳型としてPCR(Polymerase chain reaction)法で 論文 [Mayford et al., セル(Cell)81巻、891-904頁、1995年] を参考にして2つのDNA断片(A fragment, B fragment)に分けて増幅して得られた。 A fragmentの増幅に用いたオリゴヌクレオチドプライマーは、その中にXmaI認識配列およびAatII認識配列を形成するように修飾した以下のものを用いた。 5’-TTCCCGGGTACCCCTGCCTGCCCAGTGCCA-3’(配列番号8), 5’-TCGACGTCCTCCTGTCTGTGCATGCAGGAA-3’(配列番号9) 得られたPCR産物(A fragment)を末端がT(1塩基)突出したプラスミド(pBlueScript SK-:米国Stratagene社)に導入した。 B fragmentの増幅に用いたオリゴヌクレオチドプライマーは、その中にAatII認識配列およびBamHI認識配列を形成するように修飾した以下のものを用いた。 5’-AGGACGTCGACTGCCTGAAGAAGTTCAATG-3’(配列番号10), 5’-TTGGATCCCGTCAATGCGGCAGGACGGAGG-3’(配列番号11) 得られたPCR産物(B fragment)を末端がT(1塩基)突出したプラスミド(pBlueScript SK-:米国Stratagene社)に導入した。 A fragmentを導入したプラスミドをXmaIおよびAatIIで消化したのちにゲルで切り出したinsert DNA断片、B fragmentを導入したプラスミドをAatIIおよびBamHIで消化したのちにゲルで切り出したinsert DNA断片、XmaIおよびBamHIで消化済みのプラスミド(pBlueScript SK-:米国Stratagene社)の3者を等モル比にて混合し、3者が連結したDNAを作製した。 得られたカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2αをコードするDNA断片は、PCR法による制限酵素部位AatII導入により本来の遺伝子とは異なり286番目のスレオニンがアスパラギン酸に置換されたキナーゼをコードする。 得られた変異型カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2αDNA断片の遺伝子配列(XmaI-BamHI断片1475 bp)を配列番号2に示す。 また、配列番号2のDNAがコードする蛋白質のアミノ酸配列を配列番号3に示す。 【0014】 実施例3 (インスリンプロモーター/変異型カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2/SV40−ポリA含有DNAの調製) 変異型カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2αDNA断片を導入したプラスミドをXmaIおよびBamHIで消化したのちにゲルで切り出したinsert DNA断片(XmaI-BamHI断片1475 bp)、ポリA付加シグナルおよびイントロンを含むSV40遺伝子をBglIIおよびEcoRIで消化したのちにゲルで切り出したinsert DNA断片(BglII-EcoRI断片1604 bp、配列番号4)、XmaIおよびEcoRIで消化済みのプラスミド(pBlueScript SK-:米国Stratagene社)の3者を等モル比にて混合し、3者が連結したDNAを作製した。 さらに、ラットインスリン2遺伝子DNA断片を導入したプラスミドをXmaIおよびBamHIで消化したのちにゲルで切り出したinsert DNA断片(BamHI-XmaI断片723 bp)、変異型カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2αDNAとSV40遺伝子を導入したプラスミドをXmaIおよびEcoRIで消化したのちにゲルで切り出したinsert DNA断片(XmaI-EcoRI断片3073 bp)、BamHIおよびEcoRIで消化済みのプラスミド(pBlueScript SK-:米国Stratagene社)の3者を等モル比にて混合し、3者が連結した融合DNAを持つプラスミドを作製した。このプラスミド内部には5’端から、ラットインスリン2遺伝子DNA、変異型カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2αDNA、SV40遺伝子が順に接続されており、全3790 bpのインサートを持つ。この融合遺伝子のDNA配列を配列番号5に示す。 【0015】 実施例4 (導入遺伝子の調製) 配列番号4のDNA配列を含むプラスミドDNAを抽出した後、制限酵素NotIとSalIで切断して1.0%のアガロースゲル(Agarose gel)で電気泳動(electrophoresis)して3.8 kbの変異型カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2α発現遺伝子DNAを含むアガロースゲル断片を切り出し、GeneClean Kit(Bio101社)を用いて精製した。そして、DNAの濃度が3ng/μlになるように10mM Tris-HCl(pH 7.4)/0.1mM EDTA(pH 8.0)溶液で希釈した後、マイクロインジェクションに使用した(導入遺伝子の構造を図1示す)。 【0016】 実施例5 (トランスジェニックマウスの作製) 受精卵採取用のマウスstrainはBDF1(日本クレア社)を用いた。排卵促進剤投与後に交尾させた翌日の受精卵を雌マウスの卵管より採取して、極細のガラスピペットを用いて上記DNA溶液(3ng/μl)を受精卵の雄性前核に注入した。翌日までこれらの受精卵を培養したのちに自然分娩により20日後に出産させた。うまれた20匹のマウスを飼育し、4週齢で尾の一部からDNAを抽出して、PCR法により、導入遺伝子DNAの導入の有無を検査した。導入遺伝子の増幅に用いたオリゴヌクレオチドプライマーは、ラットインスリン遺伝子の配列の一部、およびカルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2に相補的な配列からなる以下の2本のプライマーを用いた。 5’-GTGGGCTATGGGTTTGTGGAAGGAGA-3’(配列番号12), 5’-TTCCTCGAAGAGCTGGTACTCTTCC-3’(配列番号13) PCRによるスクリーニングの結果、3匹がトランスジェニックマウスであることが確認された。 これらの初代トランスジェニックマウスを飼育し、CD1マウス(日本チャールス・リバー社)と交配して、第2世代(F1)マウスを得た。トランスジェニックマウス3匹ともF1マウスへの導入遺伝子の子孫伝達(Germ-line transmission)が確認され、系統化を確認した。 【0017】 実施例6 (トランスジェニックマウスの性質) F1マウスでの糖尿病発症率について血糖測定器(Accu-checkII、ロシュ・ダイアグノステイクス社)を用いて調べた。その結果、3系統のトランスジェニックマウス系列の全てがF1世代で顕性糖尿病(随時血糖400以上)を生後4週齢以内に発症した。F1世代におけるトランスジェニックマウスの糖尿病発症率は3系統とも100%であった。膵臓切片の免疫組織化学により、トランスジェニックマウス膵β細胞は抗カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2α抗体により強陽性に染色された。 【0018】 生後8週齢ではトランスジェニックマウス膵ランゲルハンス島は非常に小型で、インスリン産生細胞はほとんど消滅し主にグルカゴン産生細胞により構成されており、正常の野性型マウスの膵ランゲルハンス島と比較するとその違いは明らかであった。このトランスジェニックマウスの血糖値は600-1500の高値を示し、6か月生存率は50-70%程度と低率で、極めて重症の1型糖尿病を100%発症することが明らかになった。 【0019】 実施例7 (トランスジェニックマウスの糖尿病性腎症) トランスジェニックマウス(Tgマウス)腎臓の検索により、生後20週齢ではTgマウス腎臓は3系統とも腎腫大(1.5〜2.0倍)し、PAM染色にて腎糸球体にメサンギウム基質の増生などの糸球体硬化病変を起こしておりヒト糖尿病性腎症の類似病変像を示した(図2)。同週齢の野性型マウスの腎臓糸球体像(図3)と比べるとその違いは明瞭であった。さらにトランスジェニックマウス腎臓では強度高血糖の結果生じた糸球体内グリコーゲン顆粒を反映するArmanni-Ebstein病変が確認されるとともに、その糸球体基底膜にはAGE(Advanced Glycation Endproducts)様の顆粒状沈着物が認められた。 【0020】 実施例8 (トランスジェニックマウスの糖尿病網膜症) 生後20週齢トランスジェニックマウスマウスの網膜の病理組織切片像を解析した。その結果、Ganglion Cell Layer(GC)とOuter Nuclear Layer(ON)各神経細胞層の脱落・減少などの糖尿病性網膜症に見られる病理所見が認められた(図4)。同週齢の野性型マウスの網膜組織(図5)は各神経細胞層が正常に保たれており、その違いは明瞭に認められた。 【産業上の利用可能性】 【0021】 本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物、とりわけ、げっ歯類であるトランスジェニックマウスは、カルシウム/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ2の常時活性化が起こった場合に引き起こされる糖尿病の発症機構の解明するために有用であり、さらに本発明のトランスジェニック非ヒト哺乳動物、とりわけ、げっ歯類であるトランスジェニックマウスを化合物のスクリーニングに用いることにより、糖尿病のみならず、糖尿病網膜症、糖尿病性腎症などの糖尿病合併症の治療薬をスクリーニングすることができ、糖尿病、糖尿病合併症の医薬品の開発に有用である。 【図面の簡単な説明】 【0022】 【図1】本発明の導入遺伝子の構造 【図2】本発明のトランスジェニックマウスのPAM染色腎臓糸球体像 【図3】野生型マウスのPAM染色腎臓糸球体像 【図4】本発明のトランスジェニックマウスの網膜組織 【図5】野性型マウスの網膜組織
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| 【出願人】 |
【識別番号】305060567 【氏名又は名称】国立大学法人富山大学 【識別番号】504157024 【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
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| 【出願日】 |
平成17年6月7日(2005.6.7) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2006−340604(P2006−340604A) |
| 【公開日】 |
平成18年12月21日(2006.12.21) |
| 【出願番号】 |
特願2005−166388(P2005−166388) |
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