| 【発明の名称】 |
運動機能障害評価方法とその利用方法、及びその方法に使用するための運動機能評価装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】戸田 正博
【氏名】矢口 雅江
【氏名】田伏 将尚
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| 【要約】 |
【課題】本発明は、トレッドミルを用いて、より高感度に運動機能を評価し得る方法を提供し、さらにその方法に使用するための装置を提供することを目的とする。
【解決手段】被検体がトレッドミルを歩行中又は走行中に、正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することによって、ヒト又はヒト以外の脊椎動物における運動機能を評価する。さらに、上記運動機能を評価するための運動機能評価装置は、トレッドミルとトレッドミル上の被検体の歩行又は走行を監視するための監視装置と、トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行できずに足を滑らせた回数を計測するための計測装置を備える。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ヒト以外の脊椎動物における運動機能障害を評価する方法であって、 トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする方法。 【請求項2】 前記運動機能障害が、神経疾患によって生じた障害であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記トレッドミルが、ロータロッドトレッドミルであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。 【請求項4】 ヒト以外の脊椎動物における運動機能障害を伴う疾病を診断する方法であって、 トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする方法。 【請求項5】 運動機能障害を有するヒト以外の脊椎動物に対して、該運動機能障害に対する治療を評価する方法であって、 トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする方法。 【請求項6】 運動機能障害を有するヒト以外の脊椎動物に対して、該運動機能障害に対する治療薬の有効性を評価する方法であって、 トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする方法。 【請求項7】 ヒト以外の脊椎動物へ、有害事象として運動機能障害を発現し得る薬物を投与する際の前記薬物の安全性を評価する安全性評価方法であって、 トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することによって前記運動機能障害の程度を評価することを特徴とする安全性評価方法。 【請求項8】 脊椎動物の運動機能を評価するための運動機能評価装置であって、 トレッドミルと、 該トレッドミル上における被検体の歩行又は走行を監視するための監視装置と、 該トレッドミル上で該被検体が正常歩行又は正常走行できずに足を滑らせた回数を計測するための計測装置と、 を備えた運動機能評価装置。 【請求項9】 前記監視装置は、前記被検体が足を滑らせたことを検知するための検知装置を備えることを特徴とする、請求項8に記載の運動機能評価装置。 【請求項10】 前記検知装置が、赤外線センサーを含むことを特徴とする、請求項9に記載の運動機能評価装置。 【請求項11】 前記検知装置が、動画カメラを含むことを特徴とする、請求項9に記載の運動機能評価装置。 【請求項12】 請求項6に記載の治療薬有効性評価方法を用いて、前記運動機能障害に対して有効な治療薬をスクリーニングする方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、脊椎動物の運動機能障害評価方法とその利用方法、及びその方法に使用するための運動機能評価装置に関する。 【背景技術】 【0002】 被検体の運動機能を測定し、その運動機能を評価するために、従来、トレッドミルを用いて被検体に対して強制的に運動負荷を与えた時の走行時間、走行距離、及び、持久力を測定することが行われてきた。そして、現在まで、このようなトレッドミルによる運動機能測定方法を利用して、疾病(例えば、卒中発作又は脊髄損傷による運動機能障害)の状態が評価されてきた(例えば、非特許文献1、非特許文献2参照。)。 【0003】 このような従来の運動機能測定方法は、被検体の歩行を肉眼で観察することによって運動機能を評価しているため、運動機能を客観的に評価できず、評価において定量性を欠くという問題点を有していた。この問題点を解決するために、現在までに、被検体の歩行を計測する装置が開発されてきた(例えば、特許文献1、特許文献2参照。)。 【特許文献1】特開平10−228540号公報 【特許文献2】特開2003−250780号公報 【非特許文献1】Arch.Phys.Med.Rehabil. (2003) 84:1458-65 【非特許文献2】Science.(1998) 279:320 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 例えば、マウス又はラットなどの実験動物の運動機能を測定する装置としてロータロッドトレッドミルがあるが、この装置を用いた運動機能測定方法は、回転するロータの軸の表面を走行している被検体が、その軸の表面から落下するとフォトビームなどで検知し、その被検体の持久時間を計測するという方法であったが、より高感度に運動機能を測定し得る測定方法の開発が期待されている。 【0005】 そこで、本発明は、トレッドミルを用いて、より高感度に運動機能を評価し得る方法と、その方法に使用し定量的に測定するための装置を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0006】 トレッドミルを使用した運動機能評価試験を被検体に施行した場合、被検体は、トレッドミル上の可動性の床面上を歩行又は走行しているため、歩行又は走行開始時の衝撃による転倒、あるいは歩行又は走行時のスリップなどの問題を除き、被検体の運動機能が低下すれば、その床面上を正常歩行又は正常走行できなくなり、足を滑らすという動作を生じる。本発明者らは、被検体がトレッドミル上を歩行中又は走行中に、正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らす動作に着目し、足を滑らせた回数を計測することによって、従来の運動機能評価方法より、より高感度に運動機能を評価する方法を発明した。 【0007】 すなわち、本発明に係る運動機能評価方法は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物における運動機能障害を評価する方法であって、その運動機能評価方法は、トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする。 【0008】 前記運動機能障害は、例えば、神経疾患によって生じた障害などである。 【0009】 なお、前記トレッドミルは、例えば、ロータロッドトレッドミルである。 【0010】 また、本発明に係る運動機能障害を伴う疾病を診断する方法は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物における運動機能障害を伴う疾病を診断する方法であって、トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする。 【0011】 さらに、本発明に係る運動機能障害に対する治療を評価する方法は、運動機能障害を有するヒト又はヒト以外の脊椎動物に対して、該運動機能障害に対する治療を評価する方法であって、トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする。 【0012】 また、本発明に係る治療薬の有効性を評価する方法は、運動機能障害を有するヒト又はヒト以外の脊椎動物に対して、該運動機能障害に対する治療薬の有効性を評価する方法であって、トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする。 【0013】 さらに、本発明に係る薬物の安全性評価方法は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物へ、有害事象(例えば、副作用)として運動機能障害を発現し得る薬物を投与する際の前記薬物の安全性を評価する安全性評価方法であって、トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することによって前記運動機能障害の程度を評価することを特徴とする。 【0014】 また、本発明に係る運動機能評価装置は、脊椎動物の運動機能を評価するための運動機能評価装置であって、その運動機能評価装置は、トレッドミルと、該トレッドミル上における被検体の歩行又は走行を監視するための監視装置と、該トレッドミル上で該被検体が正常歩行又は正常走行できずに足を滑らせた回数を計測するための計測装置を備えている。 【0015】 前記監視装置は、例えば、前記被検体が足を滑らせたことを検知するための検知装置を備えてもよい。 【0016】 また、前記検知装置は、例えば、赤外線センサー又は動画カメラを含んでもよい。 【0017】 さらに、本発明に係る治療薬のスクリーニング方法は、運動機能障害を有するヒト又はヒト以外の脊椎動物に対して、トレッドミル上で被検体が正常歩行又は正常走行ができずに足を滑らせた回数を計測することを特徴とする、運動機能障害に対する治療薬の有効性を評価する方法を用いて、前記運動機能障害に対して有効な治療薬をスクリーニングする方法である。 【0018】 本明細書に記載される用語「トレッドミル」とは、可動性の床面を備え、被検体が、動く床面上を逆らって歩行又は走行し得るように作製された装置をいう。また、本発明において、使用し得るトレッドミルは、ロータロッドトレドミルも含むが、この「ロータロッドトレッドミル」とは、ロータを回転させ、そのロータが回る軸の表面上を被検体が回転方向に逆らって歩行又は走行できるように構成されている装置をいう。 【発明の効果】 【0019】 本発明によって、トレッドミルを用いて、より高感度に運動機能を評価し得る方法と、その方法に使用し定量的に測定するための装置を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0020】 以下に、本発明の実施の形態において実施例を挙げながら具体的かつ詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 【0021】 なお、本発明の目的、特徴、利点、及びそのアイデアは、本明細書の記載により、当業者には明らかであり、本明細書の記載から、当業者であれば、容易に本発明を再現できる。以下に記載された発明の実施の形態及び具体的な実施例などは、本発明の好ましい実施態様を示すものであり、例示又は説明のために示されているのであって、本発明をそれらに限定するものではない。本明細書で開示されている本発明の意図ならびに範囲内で、本明細書の記載に基づき、様々に修飾ができることは、当業者にとって明らかである。 【0022】 ==運動機能評価方法== 本発明の運動機能評価方法は、トレッドミル上で被検体が正常歩行あるいは正常走行する時に「足を滑らせた」回数を計測することによって運動機能障害を評価する。ここで使用するトレッドミルは、可動性の床面を備え、被検体が、動く床面上を逆らって歩行又は走行し得るように作製された装置ならばどんな形態でもよい。典型的には、床面がベルト状に構成され、ベルトが動くことにより床面が動くように構成されている。また、円柱を倒した形状をしたロータを回転させ、そのロータの表面上を被検体が回転方向に逆らって歩行又は走行できるように構成されているロータロッドトレッドミルでも、運動機能障害を評価し得る。ロータロッドトレッドミルは、ロータの表面という曲面上を歩行又は走行する装置であり、平面上に比べ歩行又は走行することが難しいため、運動機能障害の検出感度が高く、より好ましい。 【0023】 被検体は、例えば、ヒト又はヒト以外の脊椎動物個体とする。このトレッドミル上に被検体を乗せ、床面を稼動させる。次いで、床面の移動方向に逆らって、被検体を強制的に歩行又は走行させる。回転数は、被検体が落ちない程度に設定するのが好ましく、例えば、実施例における回転数は脳挫傷モデルの場合5-6rpmに設定したが、より高い回転数にすると、被検体のスリップをさらに誘導するため、運動機能評価の感度を上げることが可能である。被検体は、運動機能障害があると足を滑らせるので、本方法では、単位時間あたりの足を滑らせた回数を計測する。実施例では、1分間あたりの足を滑らせた回数を計測した。ここで、「足を滑らせる」とは、被検体が、転倒したり、スリップしたり、つまずいたり、下肢がもつれたりすることによって生じる下肢の動作を含むが、これらの動作に限定されない。計測の途中でロータから落ちてしまった場合は、やり直せばよい。次いで、この計測値を基にして、被検体の運動機能を評価する。運動機能評価方法としては、単位時間あたりの足を滑らせた回数が基準値より増加している時は、運動機能障害を有するか又は元々有していた運動機能障害が増悪していると評価し、逆にその回数が基準値より減少している時は、運動機能障害を有さないか又は元々有していた運動機能障害が軽減していると評価する。単位時間あたりの足を滑らせた回数が多ければ多いほど、重度な運動機能障害を有すると判断できる。ここで、比較対照とする基準値は、例えば、正常な個体の運動機能の値としてもよいし、同一被検体の運動機能障害を有さない時の運動機能の値としてもよいが、これらに限定されず、同一被検体における任意の時点における運動機能の値とすることができる。 【0024】 ==運動機能障害を有する疾病の診断== ヒト又はヒト以外の脊椎動物における運動機能障害を有する疾病の診断において、本発明の運動機能評価方法を利用することができる。 【0025】 評価対象となる運動機能障害は、運動機能に対する障害であれば特に限定されず、神経系の障害であっても、筋肉系の障害であってもよい。また、運動機能障害の原因となる疾患としては、脳血管障害、脊髄血管障害、脳・脊髄腫瘍、脊椎疾患による神経障害、感染症疾患、痴呆性疾患、代謝・中毒性疾患、基底核変性疾患、脊髄小脳変性疾患、運動ニューロン疾患、末梢神経疾患、脱髄疾患、筋疾患、及び、先天異常などが考えられ、具体的には、歩行障害、起立障害、痙攣、舞踏病、バリズム、ジストニア、てんかん、ミオクローヌス、チック、脳出血、脳血栓症、脳塞栓症、脳梗塞、脳卒中、脳虚血、Binswanger病、片麻痺、四肢麻痺、運動失調、脊髄梗塞、脊髄静脈性梗塞、脳腫瘍、脊髄腫瘍、脳炎、脳膿瘍、結核腫、アルツハイマー病、パーキンソン病、痴呆、Wilson病、肝レンズ核変性症、Menkes病、アミロイドーシス、スフィンゴリピドーシス、アミノ酸代謝異常症、ビタミン欠乏症、アルコール症、アルコール性神経障害、有機溶剤中毒、スモン、進行性核上性麻痺、線条体黒質変性症などの疾病が挙げられるが、これらの疾病に限定されない。 【0026】 本発明は、特に、肉眼では判断し難い軽度の運動機能障害を呈する疾患を診断する際に有用である。例えば、本発明の運動機能評価方法に従って被検体の運動機能を測定し、健常動物の運動機能の値又はその他の基準値(例えば、疾病ごとの運動機能を予め設定し、その値をスコア化する)と比較することによって、被検体の運動機能障害の有無を判断することができる。なお、疾病を診断する際、本発明の運動機能評価方法は、他の検査(例えば、CT又はMRIなどの画像検査)と組み合わせて利用してもよい。 【0027】 ==運動機能障害を有する疾病に対する治療の評価== ヒト又はヒト以外の脊椎動物における運動機能障害を有する疾病に対する治療の評価方法は、単位時間あたりの足を滑らせた回数を計測し、この値が治療前より減少している時は、「治療効果有り」と判断し、この値が治療前と同じ又は増加している時には、「治療効果無し」と判断する。このようにして、本発明の評価方法により、用いている治療方法が有効か否かを判断することができる。ここでの治療は、リハビリテーションなどの投薬を必要としない治療でもよく、治療薬を投与するものでもよい。 【0028】 また、治療薬を投与する治療に対しては、本発明の運動機能評価方法を用いて、治療薬の有効性を評価することができる。治療薬の有効性評価方法は、単位時間あたりの足を滑らせた回数を計測し、この値が治療薬投与時より減少した時は、治療薬が有効であると判断し、この値が治療薬投与時と同じ又は増加した時には、治療薬は無効であると判断する。なお、この評価方法を用いることができる時期は、治療薬投与後であればいつでもよく、経時的でも、数分後でも、数時間後でも、数日後でも、数年後でもよい。 【0029】 使用される治療薬としては、運動機能障害を治療し得る薬剤であればどのような薬剤でもよい。また、使用される治療薬は、経口的、又は、非経口的(例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は、硬膜下腔内)に投与されることが可能であり、効果的な用量かつ適切な剤型であれば、経口剤や、吸入剤を含めて、どのような用量・剤型でも使用可能である。実施例では、IL−12を用いた。 【0030】 さらに、本発明の運動機能評価方法を用いて、上記のような治療薬の有効性評価を行うことによって、治療薬に対する用量設定を行うことができる。例えば、対象となる治療薬の投与量と、本発明の運動機能評価方法に従って測定した、その治療薬投与後の被検体の運動機能値とを相関させ、治療薬を減らしても運動機能の改善が減少しない最小投与量を決めるなど、治療薬の用量設定を行うことができる。 【0031】 また、本発明の運動機能評価方法を用いれば、個体差、性差、種差又は年齢差による治療薬の感受性の相違を測定することができ、感受性の違いを考慮して治療薬の投与量を設定することができる。 【0032】 ==薬物投与後の薬物の安全性評価== 本発明の運動機能評価方法は、ヒト又はヒト以外の脊椎動物に対して、副作用のような有害事象として運動機能障害を発現し得る薬物を投与する際の薬物の安全性評価に利用できる。 【0033】 薬物の安全性評価方法は、単位時間あたりの足を滑らせた回数を計測し、この値が薬物投与時と同じ又は減少した時は、この薬物は安全であると判断し、この値が薬物投与時より増加した時には、この薬物は有害であると判断する。なお、この評価方法を用いることができる時期は、薬物投与後であればいつでもよく、経時的でも、数分後でも、数時間後でも、数日後でも、数年後でもよい。 【0034】 安全性を評価する対象となる薬物は、被検体に投与し得る薬物であればなんでもよい。また、この薬物の投与経路は、経口的であっても、非経口的(例えば、皮内、皮下、筋肉内、腹腔内、静脈内、又は、硬膜下腔内)であってもよい。この薬物の剤型は、経口剤や、吸入剤を含めて、どのような剤型でもよく、どのような用量でも使用可能である。 【0035】 例えば、被検体が複数の薬物を併用した場合、その薬物の薬理作用からは単純に予想されない運動機能障害を発現する薬物−薬物間相互作用を、本発明の運動機能評価方法に従って見出すことができる。 【0036】 また、神経障害を引き起こす薬物として知られているバルビツール酸誘導体、メプロバメート、クロルジアゼポキシド、ジアゼパム、ニトラゼパム、フェニトイン、イソニアジド、エチオナミド、MAO阻害薬などを被検体へ投与した場合、被検体が運動機能障害の副作用を発現しているか否かを、本発明の運動機能評価方法を用いて判断することができる。 【0037】 さらに、未知の薬物を被検体へ投与した場合でも、被検体が運動機能障害の副作用を発現しているか否かを、本発明の運動機能評価方法を用いて見出すことができる。 【0038】 ==運動機能評価装置== 本発明で使用する運動機能評価装置は、トレッドミル以外に、監視装置と計測装置を備える。監視装置とは、被検体がトレッドミル上を運動している動作をモニターする装置であり、被検体が足を滑らせた動作を機械的に検知する検知装置を備えていることが好ましい。この検知装置としては、例えば、赤外線センサー、又は、動画カメラ等が挙げられる。また、計測装置とは、監視装置と連動して、監視装置によって検知された、被検体が足を滑らせた動作の回数を計測する装置を指す。 【0039】 例えば、上述した検知装置が赤外線センサーである運動機能評価装置の構成図を、図2Aに示す。なお、図1Aは、ロータロッドトレッドミル全体を示し、図1Bは、ロータロッドトレッドミルを正面から見て回転軸付近を拡大した拡大図を示している。図2Aに示すように、この運動機能評価装置は、ロータロッドトレッドミル(1)、床面の移動方向と平行方向に赤外線(2)を発信する赤外線発信器(3)、赤外線受信時に被検体の足(4)によって遮断された赤外線非受信時各々のデータを解析できる計測装置(5)などを備えている。まず、ロータロッドトレッドミルの軸(6)の表面上に被検体を乗せ、ロータを回転させて被検体を運動させる。この間、被検体がロータの軸の表面上で足(4)を滑らせると、この足(4)が赤外線発信器(3)から発信されている赤外線(2)を遮断する。赤外線が遮断された回数を計測装置(5)で計測することによって、被検体の運動機能を測定することが可能になる。図2Aでは、ロータの軸(6)の後方より赤外線を発信しているが、ロータロッドトレッドミルの軸(6)が透明の場合、ロータの軸の前方より赤外線を発信して、被検体が足を滑らせた動作を検知してもよい。 【0040】 図2Bは、本発明の一実施例として説明する検知装置が動画カメラである運動機能評価装置の構成図を示す。本実施の形態における運動機能評価装置は、ロータロッドトレッドミル(1)、動画カメラ(7)、計測装置(8)などを備えている。まず、ロータロッドトレッドミルの軸(6)の表面上に被検体を乗せ、ロータを回転させて被検体を運動させる。この間、常に動画カメラ(7)は作動させ、ロータロッドトレッドミル上を運動している被検体の動きを、ロータの軸(6)の後方より撮影する。計測装置(8)は、動画カメラによって撮影された動画データを静止画像データに変換するシステム、この静止画像データを蓄積するシステム、この静止画像データを解析するシステムなどを備え、これらのシステムを用いて動画データから被検体が足を滑らせた回数を計測する。より厳密に計測を行いたい場合は、動画カメラで撮影した画像を再生して、被検体が足を滑らせた回数を手動で計測してもよい。なお、ロータの軸が透明の場合、ロータの軸の前方より被検体の歩行又は走行を動画カメラで撮影してもよい。 【0041】 ==運動機能障害に対して有効な治療薬をスクリーニングする方法== ヒト又はヒト以外の脊椎動物に対して、運動機能障害に対して有効な治療薬をスクリーニングするために、本発明の運動機能評価方法を利用することができる。 【0042】 まず、運動機能疾患を有する動物モデルに、運動機能障害の治療薬の候補である新規化合物を投与し、単位時間あたりの足を滑らせた回数を計測する。投与前と比較して、投与後にその回数が減少すれば、この化合物は運動機能障害に対して有効であったと判断できる。また、この値が既知の化合物を投与した時より減少した時は、新規化合物は既知化合物より効果が高いと判断できる。さらに、この化合物の濃度を変えて、運動機能障害に対する効果を観察することにより、この化合物の効果の濃度依存性も明らかにできる。また、副作用として運動機能障害が生じるような場合、その副作用を抑制する化合物なども、同様にしてスクリーニングすることができる。 【0043】 本発明に従ったスクリーニング方法は、トレッドミルさえあれば試験を実施することができるので、化合物をスクリーニングする際の費用対効果が高い。また、このスクリーニング方法は、実施方法が簡便であり、自動化も可能であるため、スクリーニング時間を短縮することができ、短期間に多種の化合物をスクリーニングすることができる。 【実施例】 【0044】 以下、実施例を用いて、以上に説明した実施態様を具体的に説明するが、これは、実施の一例であって、本発明をこの実施例に限定するものではない。 【0045】 <実施例1:脳挫傷モデルマウスに対する運動機能評価> ===脳挫傷モデルマウスの作製=== 6週齢BALB/c系統雌マウス及び6週齢C57Bl/6系統雌マウスを本試験に用いた。照明の明暗サイクルを7:00〜19:00とし、餌又は水を自由に摂取できるケージにて、これらのマウスを飼育した。 【0046】 脳挫傷モデルマウスを作製するため、10%ネンブタール麻酔下において、小動物用脳定位固定装置を用いてマウス頭部を固定し、頭皮を頭尾軸方向に1.5cm切開した後、歯科用ドリルを用いて、左前頭皮質(運動野皮質部位)に相当する頭蓋骨を直径2.5mmに薄く削除した。次いで、CO2ボンベを接続した冷凍手術装置アモイルス・クライオ ACU22-XT(株式会社キーラーアンドワイナー)及び網膜剥離プローブ(標準型P-2355、直径2.5mm)(株式会社キーラーアンドワイナー)を用いて、30秒×5回、30秒間隔で頭蓋骨削除後の頭蓋骨部位へ-80℃に設定したプローブ先端をあて、直径2.5mmの脳挫傷を作製した(cryo群)。コントロールとして、頭部の皮膚切開のみ行ない、冷凍手術を施さなかったマウスも作製した(sham群)。 【0047】 cryo群においては、図3に示すように、大脳皮質運動野への挫傷部位を1ヶ所(大脳皮質運動野部分的損傷)、2ヶ所(大脳皮質運動野部分的損傷)及び4ヶ所(大脳皮質運動野全領域損傷)としたマウスを作製し、それぞれ1ヶ所モデル、2ヶ所モデル及び4ヶ所モデルと称した。 【0048】 なお、脳切片に対してHE染色を行うことによって、脳挫傷の確認を行った。 【0049】 ===Slipping試験及びロータロッドトレッドミル試験=== 上述したように作製したモデルマウスに対し、本発明の運動機能評価方法を用いた「Slipping試験」を行った。本試験には、回転軸の回転数を一定(5〜6rpm)にしたロータロッドトレッドミル(Rotarod treadmill)(Muromachi社)を用いた。本試験前日に、正確な試験結果を得るために、本試験と同じロータロッドトレッドミルを用いて、マウスに対して5分間歩行訓練を行った。本試験は、まず、マウスがロータロッドトレッドミルの回転軸の表面上に乗ることができたことを確認し、その上で回転軸の表面上でのマウスの歩行を観察し、正常歩行ができずに足を滑らせた回数を1分間計測した。 【0050】 コントロール試験として、従来の運動機能評価方法である「ロータロッドトレッドミル試験」を行った。Slipping試験と同様、正確な試験結果を得るために、本試験前日に、本試験と同じロータロッドトレッドミルを用いて、マウスに対して5分間歩行訓練を行った。本試験では、まず、回転数を2rpmに維持したロータロッドトレッドミルの回転軸の表面上にマウスを乗せ、マウスが回転軸の表面上に乗ることを確認した後に、回転数を2〜20rpm、速度を2rpm/20秒、又は、回転数を4〜40rpm、速度を4rpm/20秒に設定し、マウスが回転軸から落下するまでの時間(最長600秒間)を測定した。 【0051】 ===1ヶ所モデルにおける運動機能評価=== 上述のように、脳挫傷モデルマウス1ヶ所モデルを作製(30秒×5回×1ヶ所、インターバル30秒)し、Slipping試験及びロータロッドトレッドミル試験を実施した(N=5,*<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001)。Slipping試験の結果は図4Aに、ロータロッドトレッドミル試験の結果は図4Bに示す。 【0052】 Slipping試験の結果については、脳挫傷14日目まで、sham群とcryo群との間に有意な差が認められていたのに対して、ロータロッドトレッドミル試験の結果については、脳挫傷2日目までしかsham群とcryo群との間に有意な差が認められなかった。Slipping試験の方が、ロータロッドトレッドミル試験より、より長期間スコアの違いを認めたことは、Slipping試験の方が、運動機能のより微細な差を検出できるためであると考えられる。このように、Slipping試験は、従来の運動機能測定方法に比べ、より高感度に運動機能を測定し得ることができることが明らかになった。 【0053】 ===2ヶ所モデルにおける運動機能評価=== 同様に、脳挫傷モデルマウス2ヶ所モデルを作製(30秒×5回×2ヶ所、インターバル30秒)し、Slipping試験及びロータロッドトレッドミル試験を実施した(N=5,*<0.05、**p<0.01、***p<0.005)。Slipping試験の結果は図5Aに、ロータロッドトレッドミル試験の結果は図5Bに示す。 【0054】 その結果、Slipping試験及びロータロッドトレッドミル試験共に、脳挫傷56日目においても、sham群とcryo群との間に有意な差が認められた。2ヶ所モデルの場合、運動機能の障害が1ヶ所モデルより大きいため、脳挫傷56日目でも従来の運動機能評価方法でも十分障害を検出しうる程度の障害が残っていると考えられた。 【0055】 ===4ヶ所モデルにおける運動機能評価=== 以下に示すように、2系統のマウスを用い、さらに冷凍手術装置アモイルス・クライオ ACU22-XTや網膜剥離プローブの使用方法を変えることによって、3種類の4ヶ所モデルを作製した。 (1)C57Bl/6系統雌マウス 30秒×10回×4ヶ所 (2)BALB/c系統雌マウス 30秒×10回×4ヶ所 (3)BALB/c系統雌マウス 30秒× 5回×4ヶ所 Slipping試験の結果は図6Aに、ロータロッドトレッドミル試験の結果は図6Bに示す(N=5),*<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001)。 【0056】 その結果、Slipping試験においては、両系統のマウスにおいて脳挫傷56日目までsham群とCryo群との間で運動機能に有意な差が認められた。一方、ロータロッドトレッドミル試験においては、C57B1/6系統のマウスのみにsham群とcryo群との間に運動機能の有意な差が認められただけで、BALB/c系統のマウスにおいてはsham群とCryo群との間に有意な差を全く認めなかった。このように、Slipping試験は、従来の運動機能測定方法では検出できないマウス系統においても運動機能障害を検出し得た。従って、ここでもまた、Slipping試験はロータロッドトレッドミル試験に比べ、より高感度に運動機能を測定し得ることが明らかになった。 【0057】 <実施例2:脳挫傷モデルマウスに対する薬物投与後の運動機能評価> ===脳挫傷モデルマウスへの薬物の脳内投与=== 実施例1と同様に脳挫傷モデルマウス2ヶ所モデルを作製(30秒×5回×2ヶ所、インターバル30秒)し、この脳挫傷モデルマウスを用いて、以下の実験を行った。 【0058】 脳挫傷モデルマウスに対して、コントロール群では生理食塩水(0.9% NaCl)5μlを、IL−12投与群ではマウスIL−12(4ng/μl)5μlを、イトウマイクロシリンジ(MS-N05)に準備し、そのシリンジを脳定位固定装置へ設置し、直ちに脳挫傷モデルマウスの脳室へ投与した。針を注入した位置は、ブレグマ(Bregma)中心から左方へ1mm、後方へ0.5mm、深さ2mmとし、注入速度は5μl/5分とした。 【0059】 生理食塩水又はIL−12を投与後に、医療用クリップを用いて頭皮を閉じ、麻酔から覚醒するまで保温し、覚醒後はホームケージへ戻した。 【0060】 ===脳挫傷モデルマウスに対する薬物投与後の運動機能評価=== このようにIL−12を投与した脳挫傷モデルマウスに対し、Slipping試験及びロータロッドトレッドミル試験を実施した(コントロール群N=8、IL−12投与群N=9、*<0.05、**p<0.01、***p<0.005、****p<0.001)。Slipping試験の結果は図7Aに、ロータロッドトレッドミル試験の結果は図7Bに示す。 その結果、Slipping試験及びロータロッドトレッドミル試験共に、コントロール群に比べて、IL-12群では運動機能が回復している傾向が認められた。 【0061】 また、Slipping試験においては、脳挫傷56日目まで、IL−12投与群とコントロール群との間に運動機能の有意な差が認められた。一方、ロータロッドトレッドミル試験においては、脳挫傷28日目まで、IL−12投与群とコントロール群との間に運動機能の有意な差が認められたが、脳挫傷56日目にはIL−12投与群とコントロール群との間に運動機能の有意な差が認められなくなった。 【0062】 このように、Slipping試験は、運動機能障害に対する治療薬の有効性を評価する方法として有効であることが明らかになった。 【図面の簡単な説明】 【0063】 【図1A】本発明に係る一実施例において、運動機能評価装置を示す図であり、本図はロータロッドトレッドミルの図である。 【図1B】本発明に係る一実施例において、運動機能評価装置を示す図であり、本図は正面からロータロッドトレッドミルを見た場合、回転軸付近を拡大した拡大図である。 【図2A】本発明に係る一実施例において、運動機能評価装置の側面から見た透視図であり、本図は検知装置が赤外線センサーである運動機能装置を示す図である。 【図2B】本発明に係る一実施例において、運動機能評価装置の側面から見た透視図であり、本図は検知装置が動画カメラである運動機能装置を示す図である。 【図3】本発明に係る一実施例において、作製した脳挫傷モデルマウス(1ヶ所、2ヶ所、4ヶ所)を表す図である。 【図4A】本発明に係る一実施例において、脳挫傷モデルマウス1ヶ所モデルにおける行動実験の結果を表すグラフであり、本図はSlipping試験を表す。 【図4B】本発明に係る一実施例において、脳挫傷モデルマウス1ヶ所モデルにおける行動実験の結果を表すグラフであり、本図はロータロッドトレッドミル試験を表す。 【図5A】本発明に係る一実施例において、脳挫傷モデルマウス2ヶ所モデルにおける行動実験の結果を表すグラフであり、本図はSlipping試験を表す。 【図5B】本発明に係る一実施例において、脳挫傷モデルマウス2ヶ所モデルにおける行動実験の結果を表すグラフであり、本図はロータロッドトレッドミル試験を表す。 【図6A】本発明に係る一実施例において、脳挫傷モデルマウス4ヶ所モデルにおける行動実験の結果を表すグラフであり、本図はSlipping試験を表す。 【図6B】本発明に係る一実施例において、脳挫傷モデルマウス4ヶ所モデルにおける行動実験の結果を表すグラフであり、本図はロータロッドトレッドミル試験を表す。 【図7A】本発明に係る一実施例において、2ヶ所モデルにおける脳室内にIL−12を注入後の行動実験の結果を表すグラフであり、本図はSlipping試験を表す。 【図7B】本発明に係る一実施例において、2ヶ所モデルにおける脳室内にIL−12を注入後の行動実験の結果を表すグラフであり、本図はロータロッドトレッドミル試験を表す。 【符号の説明】 【0064】 1 トレッドミル 2 赤外線 3 赤外線発信器 4 マウスの足 5 計測装置 6 回転軸 7 動画カメラ 8 計測装置
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| 【出願人】 |
【識別番号】899000079 【氏名又は名称】学校法人慶應義塾 【識別番号】503355498 【氏名又は名称】株式会社GBS研究所
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| 【出願日】 |
平成17年5月17日(2005.5.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】110000176 【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
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| 【公開番号】 |
特開2006−320221(P2006−320221A) |
| 【公開日】 |
平成18年11月30日(2006.11.30) |
| 【出願番号】 |
特願2005−144531(P2005−144531) |
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