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【発明の名称】 蓄光テグス、その製造方法および蓄光性道糸
【発明者】 【氏名】天野 清
【住所又は居所】愛知県岡崎市昭和町字河原1番地 東レ・モノフィラメント株式会社内

【要約】 【課題】高強度で発光性に優れるとともに、繰り返し使用した場合も、蓄光性蛍光体含有の蓄光性樹脂層が剥離しにくく、さらに剥離による発光性や強度の低下もなく、十分な耐久性を有する蓄光テグスおよび蓄光性道糸の提供。

【解決手段】合成樹脂モノフィラメントおよびマルチフィラメントから選ばれた合成繊維の表面および/または繊維間に、蓄光性蛍光体を含有する樹脂からなる蓄光性樹脂層を形成してなり、この蓄光性樹脂層が蓄光テグス全体に占める比率が5〜40重量%の範囲であることを特徴とする蓄光テグス、その製造方法および蓄光テグスを使用した蓄光性道糸。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂モノフィラメントおよびマルチフィラメントから選ばれた合成繊維の表面および/または繊維間に、蓄光性蛍光体を含有する樹脂からなる蓄光性樹脂層を形成してなり、この蓄光性樹脂層のテグス全体に占める比率が5〜40重量%の範囲であることを特徴とする蓄光テグス。
【請求項2】
前記合成繊維が、ポリエチレンおよび/またはポリアリレートからなるマルチフィラメントであることを特徴とする請求項1に記載の蓄光テグス。
【請求項3】
前記蓄光性樹脂層を構成する樹脂が、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、エステルアクリレート系、アクリレート系およびオキセタン系から選ばれた光硬化性樹脂の少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の蓄光テグス。
【請求項4】
前記蓄光性樹脂層に占める蓄光性蛍光体の比率が5〜50重量%の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の蓄光テグス。
【請求項5】
合成樹脂モノフィラメントおよびマルチフィラメントから選ばれた合成繊維を、蓄光性蛍光体、光重合性オリゴマー、光重合性モノマーおよび光重合開始剤をからなる液状の光硬化性樹脂に浸漬し、表面および/または繊維間に前記液状の光硬化性樹脂を付着せしめた合成繊維を、さらにダイスに通して所定の形状に成形した後、紫外線等の光を照射して前記液状の光硬化性樹脂を硬化させることにより蓄光性樹脂層を形成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄光テグスの製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の蓄光テグスを使用してなることを特徴とする蓄光性道糸。
【請求項7】
リールに巻いて使用され、かつ竿またはリールに設置された蓄光器の中を通過することにより発光することを特徴とする請求項6に記載の蓄光性道糸。
【請求項8】
疑似餌釣り用道糸であることを特徴とする請求項6または7に記載の蓄光性道糸。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、光などの外部刺激を受けることにより発光し、外部刺激を取り除いた後も、一定時間、暗所で残光を持続する蓄光テグス、その製造方法および蓄光性道糸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光などの外部刺激を受けることにより発光し、外部刺激を取り除いた後も、一定時間、暗所で残光を持続する発光性合成繊維は、従来から主にカーペット等のインテリア用途や夜釣り用釣糸等のレジャー用途において広く利用されている。
【0003】
特に、発光性合成繊維の1つである蓄光テグスに関する従来技術としては、糸本体の表面に夜光塗料を塗布した釣用道糸(例えば、特許文献1参照)、アクリル系、ウレタン系またはエポキシ系樹脂にアルミン酸ストロンチウムにEuを賦活剤として添加した蓄光性蛍光体と沈降防止剤を含有したバインダーを塗布した釣糸(例えば、特許文献2参照)、式SrmAlnOm+3n/2(但し、m≧2、n≧3)で表されるアルミン酸ストロンチウムの蓄光性蛍光体を含有する樹脂層を合成繊維の表面に形成させた釣糸(例えば、特許文献3参照)などが既に知られている。
【0004】
しかし、上記の従来技術により得られる蓄光テグスは、十分な発光性を有するものの、使用を繰り返すうちに、竿ガイドなどとの接触により、糸表面に形成した発光層が剥離しやすくなり、さらに発光層が剥離することにより、発光性が低下するばかりか、強度低下の原因となり、蓄光テグスとして十分な耐久性が保持されにくいという問題を抱えていた。
【0005】
一方、無機物質と光硬化性樹脂との複合物質からなる立体構造物であって、無機物質と光硬化性樹脂を含む溶液を用いて光造形法により形成した立体構造物(例えば、特許文献4参照)が知られている。
【0006】
しかし、上記の立体構造物とは、人工発光毛髪などの人工発光繊維であり、高い強度を必要とするテグスとは異なり、十分な耐久性を有していないため、実際にテグスとして使用し難いものであった。
【0007】
このような実状から、高強度で発光性に優れるとともに、繰り返し使用した場合も、糸表面に形成した蓄光性樹脂層が剥離しにくく、さらに剥離による発光性や強度の低下もなく、十分な耐久性を有する蓄光テグスの実現が釣り人達の間で強く要求されていた。
【0008】
また、蓄光テグスを継続的に発光させる技術として、竿またはリールに蓄光テグスを発光させる蓄光器が備えられた釣用具(例えば、特許文献5参照)が本発明者らによって提案されており、この蓄光器による発光システムをさらに有効的に利用するとともに、従来よりも蓄光テグスを長時間持続発光させる技術の実現が強く望まれていた。
【特許文献1】特開平10−113107号公報
【特許文献2】実案第3024904号公報
【特許文献3】特開2002−125548号公報
【特許文献4】特開2004−136577号公報
【特許文献5】特開2004−298048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、高強度で発光性に優れるとともに、繰り返し使用した場合も、蓄光性蛍光体を含有する蓄光性樹脂層が剥離しにくく、さらに剥離による発光性や強度の低下もなく、十分な耐久性を有する蓄光テグス、その製造方法および蓄光テグスからなる蓄光性道糸を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため本発明によれば、合成樹脂モノフィラメントおよびマルチフィラメントから選ばれた合成繊維の表面および/または繊維間に、蓄光性蛍光体を含有する樹脂からなる蓄光性樹脂層を形成してなり、この蓄光性樹脂層がテグス全体に占める比率が5〜40重量%の範囲であることを特徴とする蓄光テグスが提供される。
なお、本発明の蓄光テグスにおいては、
前記合成繊維が、ポリエチレンおよび/またはポリアリレートからなるマルチフィラメントであること、
前記蓄光性樹脂層を構成する樹脂が、ウレタンアクリレー系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、エステルアクリレー系、アクリレート系およびオキセタン系から選ばれた光硬化性樹脂の少なくとも1種であること、および、
前記蓄光性樹脂層に占める蓄光性蛍光体の比率が5〜50重量%の範囲であることがいずれも好ましい態様であり、これらの条件を満たすことによって一層優れた効果を取得することができる。
【0011】
また、本発明の蓄光テグスの製造方法は、合成樹脂モノフィラメントおよびマルチフィラメントから選ばれた合成繊維を、蓄光性蛍光体、光重合性オリゴマー、光重合性モノマーおよび光重合開始剤をからなる液状の光硬化性樹脂に浸漬し、表面および/または繊維間に前記液状の光硬化性樹脂を付着せしめた合成繊維を、さらにダイスに通して所定の形状に成形した後、紫外線等の光を照射して前記液状の光硬化性樹脂を硬化させることにより蓄光性樹脂層を形成することを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の蓄光性道糸は、上記の蓄光テグスを使用してなることを特徴とし、なかでも、リールに巻いて使用され、かつ竿またはリールに設置された蓄光器の中を通過することにより発光する蓄光性道糸および疑似餌釣り用道糸として好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高強度で発光性に優れるとともに、繰り返し使用した場合も、蓄光性蛍光体含有の樹脂層が剥離しにくく、さらに剥離による発光性や強度の低下もなく、十分な耐久性を有する蓄光テグスを取得することができる。
【0014】
また、本発明の蓄光性道糸は、竿またはリールに設置された蓄光器による発光システムをより効果的に利用することができ、この発光システムにより、長時間持続的に発光することができため、その実用性は極めて高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
本発明の蓄光テグスが、高強度で発光性に優れるとともに、繰り返し使用した場合も、蓄光性蛍光体含有の樹脂層が剥離しにくく、さらに剥離による発光性や強度の低下もなく、十分な耐久性を有するためには、蓄光テグスが合成樹脂モノフィラメントおよびマルチフィラメントから選ばれた合成繊維の表面および/または繊維間に、蓄光性蛍光体を含有する樹脂からなる蓄光性樹脂層を形成してなり、この蓄光性樹脂層の蓄光テグス全体に占める比率が5〜40重量%の範囲であることが必要であり、好ましくは10〜35重量%の範囲である。
【0017】
本発明の蓄光テグスを構成する合成繊維の素材としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン612、ナイロン6/66共重合体、ナイロンMXD6などのポリアミド系樹脂、重合成分の80重量%以上がフッ化ビニリデン成分であるポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート/サクシネートおよび/またはアジペート共重合体、ポリエチレン、およびポリアリレートなどが挙げられ、これらの合成樹脂を通常の溶融紡糸法により得られたモノフィラメントおよびマルチフィラメントから選ばれた少なくとも1種が使用できるが、中でも、蓄光テグスとして優れた強度や耐摩耗、さらには適度な硬さを有するなどの理由から、ポリエチレンおよび/またはポリアリレートからなるマルチフィラメントの使用が好ましく、さらには引張強度1.3GPa以上、引張破断伸度10%以下のポリエチレンおよび/またはポリアリレートからなるマルチフィラメントの使用が好ましい。
【0018】
蓄光性樹脂層を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂、光硬化性樹脂、および水溶性樹脂などが使用されるが、蓄光性蛍光体を含有する蓄光性樹脂層に耐剥離性能を持たせるためには、なかでも光硬化性樹脂であることが好ましい。
【0019】
通常の蓄光性蛍光体を含有する合成樹脂溶液を使用して合成繊維の表面および/または繊維間に蓄光性樹脂層を形成した場合は、合成樹脂を溶解する溶剤を除去する必要があるため、合成樹脂溶液を熱硬化する際に溶剤が気化し、それに起因する気泡が蓄光性樹脂層の内部や合成繊維と蓄光性樹脂層の界面に発生する場合がある。その結果、蓄光性樹脂層が硬化した後、この気泡が空隙となって残るため、合成繊維と蓄光性樹脂層との接触性が低下し、蓄光性樹脂層が剥離しやすくなる傾向がある。
【0020】
また、蓄光性蛍光体を含有する溶融した合成樹脂を使用して蓄光性樹脂層を形成した場合は、溶融した合成樹脂が高温の状態で合成繊維と接触するため、合成繊維に熱劣化などの影響を与えやすい傾向となる。
【0021】
これに対して、蓄光性蛍光体を含有する液状の光硬化性樹脂を使用して蓄光性樹脂層を形成した場合には、溶融した合成樹脂を使用した場合に比べ合成繊維に熱的影響を与えにくく、また合成樹脂溶液を使用した場合に比べ合成繊維との濡れ性に優れ、溶剤が気化することによる空隙が発生しないなどの特長があり、これらが剥離に強い蓄光性樹脂層を形成する要因であると考えられる。
【0022】
ここで、本発明の蓄光テグスの蓄光性樹脂層を構成する光硬化性樹脂とは、光重合性オリゴマー(広義の単量体を含む重合主剤)、光重合性モノマー(反応性希釈剤)、および光重合開始剤により重合された合成樹脂である。そして、この液状の光硬化性樹脂に蓄光性蛍光体を含有させることにより、蓄光テグスの蓄光性樹脂層において発光性が発現される。
【0023】
そして、前記蓄光性樹脂層のテグス全体に占める比率が5重量%を下回ると、発光性が低下しやすくなるばかりか蓄光性樹脂層が剥離しやすくなり、逆に40重量%を上回ると、合成繊維の占める体積が小さくなることから蓄光テグスの強度が低下しやすくなり、十分な耐久性が得られにくくなる。
【0024】
なお、重合主剤である光重合性オリゴマーとしては、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、エポキシアクリレート系、エステルアクリレート系、アクリレート系、およびオキセタン系などが挙げられるが、これらの中でも、ウレタンアクリレート系、エポキシ系、およびオキセタン系が好ましく、さらには、重合反応速度が速く、加工性に優れ、ポリアミド系樹脂繊維との相性に優れたラジカル重合型のウレタンアクリレート系、重合収縮歪みが小さく、ポリフッ化ビニリデン系樹脂繊維、ポリエチレン系樹脂繊維、およびポリアリレート系樹脂繊維との相性に優れたカチオン重合型のエポキシ系、および重合反応速度が速く、重合収縮歪みが小さいオキセタン系の使用が好ましい。
【0025】
また、反応性希釈剤である光重合性モノマーには、アクリレート系、エポキシ系、ビニルエーテル系、およびポリエン・チオール系などが挙げられ、本発明においては特にこれらに限定されない。
【0026】
さらにまた、光重合開始剤には、主にラジカル重合開始剤とカチオン系重合開始剤があり、ラジカル重合開始剤としては、例えば、ジヒドロアセトフェノンなどのアセトフェノン系重合開始剤、イソブチルゼンゾインエーテルなどのベンゾインエーテル系重合開始剤、ベンゾフェノンなどのケトン系重合開始剤が挙げられ、カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩などが挙げられ、本発明においては特にこれらに限定されない。
【0027】
上記の光重合性オリゴマー、光重合性モノマー、および光重合開始剤を含む液状の光硬化性樹脂としては、例えば、(株)ディーメック製デソライトSCR330(ウレタン系)、SCR701(エポキシ系・汎用)、SCR710(エポキシ系、ABSライク樹脂)、SCR8100(エポキシ系、PEライク樹脂)、SCR11120(エポキシ系、クリスタルクリア樹脂)、SCR950(オキセタン系)などの市販品が挙げられ、本発明においては、これらを入手して好ましく使用することができる。
【0028】
一方、液状の光硬化性樹脂に添加する蓄光性蛍光体としては、優れた発光性を発現するという理由から、Eu(ユウロピウム)、Dy(ジスプロシウム)を賦活剤として含むアルミン酸ストロンチウム系の蓄光性蛍光体を好ましく使用することができる。
【0029】
なお、蓄光性蛍光体としては、根本特殊化学社製N夜光ルミノーバ(登録商標)G300FF、GLL300FF、GLL300FFS、BGL300FF、BGL300FFSなどの市販品が挙げられ、本発明においては、これらを入手して好ましく使用することができる。
【0030】
ただし、蓄光性樹脂層中の蓄光性蛍光体の含有量は、発光性の発現を左右するほか、蓄光性樹脂層を形成する際には光硬化性樹脂の重合反応速度や重合収縮歪みに影響を及ぼすため、その含有量は5〜50重量%、特に10〜40重量%の範囲であることが好ましい。
【0031】
ここで、蓄光性樹脂層中の蓄光性蛍光体の含有量が上記の範囲を下回ると、蓄光テグスの発光性が低下しやすくなり、逆に、蓄光性蛍光体の含有量が上記の範囲を上回ると、光硬化性樹脂の重合反応速度が遅くなりやすいばかりか、重合時の収縮歪みや強度低下が大きくなりやすいなどの問題が生じるために好ましくない。
【0032】
なお、本発明の蓄光テグスにおいては、本発明の効果を損なわない限り、蓄光性樹脂層を形成する光硬化性樹脂に、必要に応じて光重合助剤、熱重合禁止剤などの添加剤、および着色剤を添加しても良い。
【0033】
次に、本発明の蓄光テグスの製造方法の一例について説明する。
【0034】
本発明の蓄光テグスは、まず、公知の溶融紡糸法またはゲル紡糸法などで得られたモノフィラメントまたはマルチフィラメントから選ばれた合成繊維を、蓄光性蛍光体、光重合性オリゴマー、光重合性モノマー、および光重合開始剤を含有する液状の光硬化性樹脂に浸漬し、表面および/または繊維間に液状の光硬化性樹脂を付着せしめた合成繊維を、さらにダイスに通して所定の形状に成形した後、紫外線等の光を照射して液状の光硬化性樹脂を硬化させ、蓄光性樹脂層を形成することによって得られる。
【0035】
ここで所定の形状とは、丸形のほか、三角形、正方形または長方形などの四角形、五角形以上の多角形、楕円、星形、多葉状などの形状を言い、本発明においては特にこれらに限定されない。
【0036】
なお、蓄光性蛍光体、光重合性オリゴマー、光重合性モノマー、および光重合開始剤を含む液状の光硬化性樹脂の粘性は、数cPの低粘度レベルから数万cPの高粘度レベルまで高範囲で使用することができるが、加工性が良いとの理由から、数cPレベルから数百cPレベルのものが好ましい。
【0037】
また、紫外線等の光を照射する照射装置は市販のものを使用することがきるが、光源としては、例えば、水銀灯、キセノンランプ、カーボンアーク、プラズマアーク、メタルハライドアークなどが挙げられ、中でも高圧水銀ランプ、メタルハライドランプが、光硬化性樹脂の硬化効率が良いとの理由から特に好ましく使用できる。
【0038】
なお、高圧水銀ランプなどで紫外線を照射された液状光硬化性樹脂は、重合反応で発熱し170〜180℃近くまで温度上昇する場合があることから、融点の低い合成繊維を使用する場合は、冷風などで合成繊維の融点以下まで温度を下げてやることが、合成繊維の熱劣化を防ぐために必要であるが、紫外線は、冷風などによる影響を受けずに光硬化性樹脂の重合反応に働く等の特長がある。
【0039】
また、紫外線等の光を照射して蓄光性樹脂層を形成した後、蓄光性テグスの表面層を強化する目的で、さらに蓄光性樹脂層の表面に熱可塑性樹脂で合成樹脂層を形成しても良い。
【0040】
以上のとおり、本発明の蓄光テグスは、高強度で発光性に優れるとともに、繰り返し使用した場合も、蓄光性蛍光体含有の蓄光性樹脂層が剥離しにくく、さらに剥離による発光性や強度の低下もなく、十分な耐久性を有するため、実際に夜釣り用の蓄光テグスとして使用した場合には、竿ガイドなどとの接触による蓄光性樹脂層の剥離に強いほかに、発光性や強度も高く、耐久性が十分に保持されるなどの優れた特長を発揮する。
【0041】
次に、本発明の蓄光性道糸は、上記の蓄光テグスを用いてなるものであり、特に蓄光性樹脂層を形成する樹脂が光硬化性樹脂であるものが好ましく、この蓄光性道糸によれば、蓄光性樹脂層の耐剥離性や強度耐久性を十分に発揮するとともに、竿またはリールに設置された蓄光器による発光システムをより効果的に利用することができ、さらには、発光システムにより、長時間持続的に発光することができる。
【0042】
また、ルアーやワームを使ったルアーフィッシング、エギを使ったエギングおよびフライを使ったフライフィッシングなどの疑似餌釣りは、疑似餌を常に動かし続けて魚を誘き寄せるために、キャスティングと巻き取りが繰り返し行われる。
【0043】
本発明の蓄光性道糸と蓄光器を組み合わせて使用した疑似餌釣りにおいては、このキャスティングと巻き取りが繰り返し行われるため、蓄光性道糸が蓄光器の中を常に通過し続け、蓄光性道糸が長時間持続して発光する。
【0044】
したがって、本発明の蓄光性道糸を疑似餌釣り用道糸として使用した場合には、さらに優れた発光性とその持続性を遺憾なく発揮するためにより好ましい。
【実施例】
【0045】
以下、本発明の蓄光テグスおよび蓄光性道糸について実施例に基づいて説明する。なお、実施例における蓄光テグスの物性評価および蓄光テグスを蓄光道糸として使用した場合の実用評価は以下の方法で行った。
【0046】
[蓄光テグスの物性評価]
A.強度保持率
蓄光性蛍光体を含有する樹脂を合成繊維に形成する前後の合成繊維および蓄光テグスの引張強さ(N)をJIS L1013−1999の8.5の規定に準じて測定した。また蓄光性樹脂層を形成する前後の合成繊維および蓄光テグスの繊度をそれぞれJIS L1013−1999の8.3に準じて測定した。そして、蓄光性樹脂層を形成する前後の合成繊維および蓄光テグスの引張強さをそれぞれの繊度で割り返し、引張強度(cN/dtex)を求めた。さらに、求めた引張強度を比重換算し、それぞれ単位断面積当たりの引張強度(GPa)で表した。そして、蓄光性樹脂層を形成した後の蓄光テグスの引張強度(GPa)を、蓄光性樹脂層を形成する前の合成繊維の引張強度(GPa)で割り返し、その百分率を強度保持率(%)とした。
【0047】
B.残光輝度
JIS Z8720の規定に準じて測定した。詳しくは、白色の台紙に均一、且つ厚さ5mm以上蓄光テグスを巻き付け、これにD65常用光源400lxの光を20分間照射し、光源を取り除いて1分間経過した後、トプコン製TOPCON BM−5輝度計を用いて蓄光テグスの残光輝度(mcd/m2)を測定した。残光輝度(mcd/m2)の数値が大きいほど発光性に優れていることを示す。
【0048】
C.樹脂層の剥離性
JIS L1095−7.10.2Bに規定する屈曲摩耗試験に準じて測定した。詳しくは、固定された直径1.0mmの摩擦子(硬質鋼線(SWP−SF))の上に接触させた蓄光テグスを前記摩擦子の左右各55度角度で斜め下に設けたフリーローラー2個(ローラー間距離:70mm)の下に掛け、別の1個のフリーローラーの上を介して繊維の一端に0.196cN/dtexの荷重を掛けてセットした。蓄光テグス試料を往復回数105回/分、往復ストローク長25mmの条件で10000回摩擦子に接触往復させた後、蓄光テグスの蓄光性樹脂層の剥離状態を目視で観察し、次の3段階で評価を行った。
○:蓄光性樹脂層の剥離が見られなかった
△:蓄光性樹脂層の一部に剥離が見られた
×:蓄光性樹脂層の剥離が全体的に見られた。
【0049】
[蓄光テグスの実用評価]
A.蓄光テグスの耐久性
実施例および比較例で得られた蓄光テグスを蓄光性道糸としてリール巻き、その蓄光性道糸を竿に設置した蓄光器に通して発光させながら実際にルアーを使用して夜釣りを行った。その際の耐久性について、次の2段階で評価を行った。
○:魚が掛かった時、糸切れすることなく、魚を釣り上げることができた
×:魚が掛かった時、頻繁に糸切れが発生し、魚を取り逃がすことがあった。
【0050】
B.蓄光テグスの操作性
実施例および比較例で得られた蓄光テグスを蓄光性道糸としてリール巻き、その蓄光性道糸を竿に設置した蓄光器に通して発光させながら実際にルアーを使用して夜釣りを行った。その際の操作性について、次の3段階で評価を行った。
○:竿ガイドや竿に設置した蓄光器の中を容易に通過することができ、使いやすかった、
△:使用を繰り返しているうちに蓄光性樹脂層が一部剥離し始めたが、竿ガイドや蓄光器の中への通過に支障を来すほどではなかった、
×:使用を繰り返しているうちに蓄光性樹脂層が剥離し、竿ガイドや蓄光器への引っ掛かりや絡み付きといったトラブルが発生し、使いにくかった。
【0051】
C.蓄光テグスの発光性
実施例および比較例で得られた蓄光テグスを蓄光性道糸としてリール巻き、その蓄光性道糸を竿に設置した蓄光器に通して発光させながらルアーを使用して夜釣りを行った。その際の発光性およびその持続性について、次の3段階で評価を行った。
○:蓄光性道糸の糸筋がはっきりと視認でき、発光性が十分に持続した、
△:使い始め当初は、蓄光性道糸の糸筋がはっきりと視認できたが、使用を繰り返しているうちに蓄光性樹脂層が剥離し始め、発光性が低下した、
×:蓄光性道糸の糸筋が視認できるが、発光性は不十分であった。
【0052】
[実施例1]
アルミン酸ストロンチウム系蓄光性蛍光体(根本特殊化学製N夜光ルミノーバBGL300FFS)30重量%とウレタン系オリゴマーを重合主剤とする液状の光硬化性樹脂((株)ディーメック製SCR330)70重量%からなる合成樹脂液に、繊度750dtex、引張強度0.95GPaのポリアミドモノフィラメントを浸漬した後、0.32mmのダイスに通して合成樹脂液を絞った。引き続き、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射し、合成樹脂液を硬化させて940dtex(約0.32mm)、引張強度0.76GPaの蓄光テグスを得た。
【0053】
[実施例2]
アルミン酸ストロンチウム系蓄光性蛍光体(根本特殊化学製N夜光ルミノーバGLL300FF)30重量%とエポキシ系オリゴマーを重合主剤とする液状の光硬化性樹脂((株)ディーメック製SCR11120)70重量%からなる合成樹脂液に、繊度1150dtex、引張強度0.91GPaのポリフッ化ビニリデンモノフィラメントを浸漬した後、0.32mmのダイスに通して合成樹脂液を絞った。引き続き、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射し、合成樹脂液を硬化させて1350dtex(約0.32mm)、引張強度0.73GPaの蓄光テグスを得た。
【0054】
[実施例3]
アルミン酸ストロンチウム系蓄光性蛍光体(根本特殊化学製N夜光ルミノーバGLL300FF)30重量%とエポキシ系オリゴマーを重合主剤とする液状の光硬化性樹脂((株)ディーメック製SCR8100)70重量%からなる合成樹脂液に、繊度670dtex(140f×4t)、引張強度2.50GPa、引張破断伸度5.1%のポリエチレンマルチフィラメント(東洋紡社製ダイニーマ)を浸漬した後、0.36mmのダイスに通して合成樹脂液を絞った。引き続き、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射し、合成樹脂液を硬化させて990dtex(約0.36mm)、引張強度1.75GPaの蓄光テグスを得た。
【0055】
[実施例4]
アルミン酸ストロンチウム系蓄光性蛍光体(根本特殊化学製N夜光ルミノーバGLL300FFS)30重量%とオキセタン系オリゴマーを重合主剤とする液状の光重合性樹脂((株)ディーメック製SCR950)70重量%からなる合成樹脂液に、繊度890dtex(10f×8t)、引張強度2.20GPa、引張破断伸度3.6%のポリアリレートマルチフィラメント(クラレ社製ベクトラン)を浸漬した後、0.37mmのダイスに通して合成樹脂液を絞った。引き続き、高圧水銀灯を用いて紫外線を照射し、合成樹脂液を硬化させて1300dtex(約0.37mm)、引張強度1.45GPaの蓄光テグスを得た。
【0056】
[実施例5]
合成樹脂液中の蓄光性蛍光体の含有量を60重量%とし、ダイスの孔径を0.32mmとした以外は、実施例3と同一の製法で繊度700dtex(約0.32mm)、引張強度2.38GPaの蓄光テグスを得た。
【0057】
[実施例6]
合成樹脂液中の蓄光性蛍光体の含有量を50重量%とし、ダイスの孔径を0.39mmとした以外は、実施例3と同一の製法で繊度1200dtex(約0.39mm)、引張強度1.50GPaの蓄光テグスを得た。
【0058】
[実施例7]
アルミン酸ストロンチウム系蓄光性蛍光体(根本特殊化学製N夜光ルミノーバBGL300FFS)30重量%と水溶性ポリアミド液(帝国化学製トレジンFS−350、樹脂濃度20重量%)70重量%からなる合成樹脂溶液に、繊度750dtex、引張強度0.95GPaのポリアミドモノフィラメントを浸漬した後、0.32mmのダイスに通して合成樹脂溶液を絞った。引き続き、150℃の乾燥機に通して合成樹脂溶液を固化し、940dtex(約0.32mm)、引張強度0.76GPaの蓄光テグスを得た。
【0059】
[実施例8]
アルミン酸ストロンチウム系蓄光性蛍光体(根本特殊化学製N夜光ルミノーバGLL300FF)30重量%と水溶性アクリル液(帝国化学製アクリサイズME−18、樹脂濃度18重量%)70重量%からなる合成樹脂溶液に、繊度670dtex(140f×4f)、引張強度2.50GPa、引張破断伸度5.1%のポリエチレンマルチフィラメント(東洋紡社製ダイニーマ)を浸漬した後、0.36mmのダイスに通して合成樹脂溶液を絞った。引き続き、150℃の乾燥機に通して合成樹脂溶液を固化し、990dtex(約0.36mm)、引張強度1.75GPaの蓄光テグスを得た。
【0060】
[比較例1]
合成樹脂液中の蓄光性蛍光体の含有量を50重量%とし、ダイスの孔径を0.31mmとした以外は、実施例3と同一の製法で繊度690dtex(約0.31mm)、引張強度2.40GPaの蓄光テグスを得た。
【0061】
[比較例2]
合成樹脂液中の蓄光性蛍光体の含有量を30重量%とし、ダイスの孔径を0.42mmとした以外は、実施例3と同一の製法で繊度1460dtex(約0.42mm)、引張強度1.25GPaの蓄光テグスを得た。
【0062】
各実施例および比較例における蓄光テグスを構成する各条件を表1に示す。また、各実施例および比較例の蓄光テグスの物性評価結果および蓄光テグスを蓄光性道糸として使用した場合の実用評価結果を表2に示す。
【0063】
【表1】


【0064】
【表2】


【0065】
表1と表2の結果から明らかなように、本発明の蓄光テグス(実施例1〜6)は、強度保持率と残光輝度が高く、蓄光性樹脂層が剥離しにくいものであった。そして、本発明の蓄光テグスを実際に蓄光性道糸としてリールに巻き、竿に設置した蓄光器に通過して発光させながらルアーを使用して夜釣りを行った場合、高い発光性とその持続性を遺憾なく発現するとともに、耐久性、操作性に優れることから、その実用性は極めて高いものであった。
【0066】
また、光硬化性樹脂の代わりに、水溶性ポリアミド液および水溶性アクリル液を使用した蓄光テグス(実施例7および8)は、実際に蓄光性道糸として使用した場合には、実施例1〜6の蓄光テグスを使用した蓄光性道糸に比べ、蓄光性樹脂層の一部の剥離や竿ガイドおよび蓄光器内の通過性がやや劣るものの、蓄光器による発光システムを十分利用することができ、強度保持率や残光輝度も十分高いものであった。
【0067】
一方、蓄光性樹脂層の蓄光テグス全体に占める比率が本発明の規定範囲を下回る蓄光テグス(比較例1)は、強度保持率は高いものの、蓄光性樹脂層が耐剥離性および残光輝度が低いため、実際に蓄光性道糸として使用した場合には発光性と操作性が低く、蓄光器による発光システムを効果的に利用することができなかった。
【0068】
また、蓄光性樹脂層の蓄光テグス全体に占める比率が本発明の規定範囲を上回る蓄光テグス(比較例2)は、残光輝度が高く、蓄光性樹脂層も剥離しにくいものではあるが、強度保持率が低いため、実際に蓄光性道糸として使用した場合には耐久性が低く、本発明が目的とする効果を十分に発揮するものではなかった。
【0069】
[実施例9]
実施例1で得られたモノフィラメントを道糸として使用し、一旦リールに巻き取った。そして、リールを竿に取り付け、リールに巻かれた道糸をリールと竿のガイドとの間に設置された蓄光器(特開2004−298048号公報の実施例1に記載の蓄光器)の中に通し、実際にルアーを使用して夜釣りを行った。その結果、キャスティングおよび巻き取りを繰り返すことにより道糸が常に蓄光器の中を通過し続けるため、長時間道糸が発光し続け、常に道糸を視認しながら夜釣りを行うことができた。
【0070】
[実施例10]
実施例3で得られたモノフィラメントを道糸として使用し、実施例9と同じく、実際にルアーを使用して夜釣りを行った。その結果、実施例9の道糸を使用した場合と同じく、長時間道糸が発光し続け、常に道糸を視認しながら夜釣りを行うことができた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の蓄光テグスは、高強度で発光性に優れるとともに、繰り返し使用した場合も、蓄光性蛍光体含有の蓄光性樹脂層が剥離しにくく、さらに剥離による発光性や強度の低下もなく、十分な耐久性を有するため、実際に夜釣り用の蓄光性道糸として使用した場合、蓄光性樹脂層が竿ガイドなどとの接触による剥離に強いほかに、発光性や強度も高く、耐久性や操作性も十分に保持されるなどの優れた特長を発揮する。
【0072】
また、本発明の蓄光性道糸は、竿またはリールに設置された蓄光器による発光システムをより効果的に利用することができ、この発光システムにより、長時間持続的に発光することができるため、その実用性は極めて高い。
【出願人】 【識別番号】000219288
【氏名又は名称】東レ・モノフィラメント株式会社
【住所又は居所】愛知県岡崎市昭和町字河原1番地
【出願日】 平成17年9月16日(2005.9.16)
【代理人】 【識別番号】100104950
【弁理士】
【氏名又は名称】岩見 知典

【公開番号】 特開2006−136315(P2006−136315A)
【公開日】 平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願番号】 特願2005−269482(P2005−269482)