| 【発明の名称】 |
TGF−β1誘導の新規腎間質性線維化モデル動物 |
| 【発明者】 |
【氏名】丸山 弘樹
【氏名】小林 明央
|
| 【要約】 |
【課題】新規な腎線維化非ヒト哺乳動物を提供すること。
【解決手段】本発明の腎線維化非ヒト哺乳動物は、TGF−β1遺伝子が導入されており、腎臓においてTGF−β1が発現し、腎間質部分で線維化が生じていることを特徴とする。さらに上記の非ヒト哺乳動物を利用することで腎線維化を予防又は治療することができる物質のスクリーニングが可能である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 TGF−β1遺伝子が導入され、腎臓間質の線維芽細胞で発現し、かつ、間質領域が線維化することを特徴とする非ヒト哺乳動物。 【請求項2】 TGF−β1遺伝子が、生体内においてダイマーを形成することができないように改変された変異体である請求項1に記載の非ヒト哺乳動物。 【請求項3】 TGF−β1遺伝子が、野生型ブタTGF−β1のアミノ酸配列においてダイマー形成に関与するシステイン残基のうち、少なくとも223番目と225番目のシステイン残基をセリン残基に置換した変異体である、請求項1又は2に記載の非ヒト哺乳動物。 【請求項4】 腎臓の萎縮が生じることを特徴とする請求項1から3何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 【請求項5】 腎臓におけるヒドロキシプロリン量が野生型動物と比較した場合に有意に増加している請求項1から4何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 【請求項6】 腎臓におけるフィブロネクチンの発現量が野生動物と比較した場合に有意に増加している請求項1から5何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 【請求項7】 導入したTGF−β1遺伝子の発現による腎線維化が生じた後、内在性のTGF−β1により、腎線維化が進行することを特徴とする請求項1から6何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 【請求項8】 非ヒト哺乳動物がラットである、請求項1から7何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 【請求項9】 請求項1から8何れかに記載の非ヒト哺乳動物を用いることを特徴とする、腎線維化を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法。 【請求項10】 請求項9に記載のスクリーニング方法により得られる物質。 【請求項11】 請求項9に記載のスクリーニング方法によって得られる物質を有効成分として含有する、腎線維化の予防又は治療剤。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、TGF−β1遺伝子が導入され、腎臓間質の線維芽細胞で発現し、かつ、間質領域が線維化されている腎線維化モデル非ヒト哺乳動物、当該モデル非ヒト哺乳動物を利用した腎線維化を改善又は抑制するための物質のスクリーニング方法、当該スクリーニング方法によって得られる腎線維化を改善又は抑制するための物質、及び当該物質を有効成分として含有する腎線維化の予防又は治療剤に関する。 【背景技術】 【0002】 腎疾患は、その症状等により、慢性及び急性の腎不全、ネフローゼ症候群等に分類されているが、全ての腎疾患が腎線維化を伴い、末期腎不全に到っている。特に慢性的な腎機能の低下は、腎線維化の進行と深くかかわっており、腎線維化の進行阻害が慢性腎不全の進行抑制につながると考えられている。 【0003】 トランスフォーミンググロースファクター−ベータ(TGF−β)は、腎線維化の誘導因子として中心的な役割を果たすことが知られている(非特許文献1)。さらにTGF―βは線維化の起因となる他のグロースファクターの発現も誘導する。 【0004】 これまで様々な腎疾患の発症メカニズムの解析や腎疾患治療薬の評価を目的としてモデル動物が作製されているが、そのほとんどが疾患の初期に生じるメサンギウム細胞の異常モデルである(特許文献1、2等)。 【0005】 腎疾患がかなり進行した段階で生じる間質部の線維化モデルとしては、例えば、一方の尿管を結紮させることで線維化を生じさせる一側尿管結紮水腎症(unilateral ureteral obstruction, UUO)モデル(非特許文献2)や腎臓の5/6を摘出することで線維化を生じさせる5/6腎摘モデル(非特許文献3)が知られている。これらのモデル動物は、TGF−β以外の因子によっても線維化が誘導されている可能性があるため、TGF−βによる線維化作用を特異的に阻害する物質を評価できるモデル動物としては不十分であった。また、これらのモデルは、腎線維化に抵抗性を示したり、間質部で線維化が生じるまでに時間がかかったりするため、短時間で容易に間質部の線維化を生じるモデルが望まれていた。 【0006】 【非特許文献1】Border WA,他、Transforming growth factor beta in tissue fibrosis, N Engl J Med 1994;331:1286-92 【非特許文献2】Atul K,他、Interstitial fibrosis in obstructive nephropathy, Kidney International, Vol.44(1993), pp.774-788 【非特許文献3】Yee-Yung Ng,他、Tubular epithelial-myofibroblast transdifferentiation in progressive tubulointerstitial fibrosis in 5/6 nephrectomized rats, Kidney International, Vol.54(1998),pp.864-876 【特許文献1】特開2002−119170号 【特許文献2】特開2003−185658号 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明は、腎臓にTGF−β1遺伝子が導入された腎線維化モデル動物、当該モデル動物を用いて腎線維化阻害作用を有する物質をスクリーニングする方法を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生体内においてジスルフィド結合が生じないために常に生理活性を有するTGF−β1遺伝子を腎臓に導入することにより、腎臓の間質部位が線維化することを見出した。具体的には、ジスルフィド結合に関与するTGF−β1のアミノ酸配列上のセリン残基をシステイン残基に置換した変異体遺伝子を適当な発現ベクターに挿入し、これを腎臓へ経静脈的に遺伝子導入することで腎臓の間質部位が線維化することを確認した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、以下の発明が包含される。 (1)TGF−β1遺伝子が導入され、腎臓間質の線維芽細胞で発現し、かつ、間質領域が線維化することを特徴とする非ヒト哺乳動物。 (2)TGF−β1遺伝子が、生体内においてダイマーを形成することができないように改変された変異体である上記(1)に記載の非ヒト哺乳動物。 (3)TGF−β1遺伝子が、野生型ブタTGF−β1のアミノ酸配列においてダイマー形成に関与するシステイン残基のうち、少なくとも223番目と225番目のシステイン残基をセリン残基に置換した変異体である、上記(1)又は(2)に記載の非ヒト哺乳動物。 (4)腎臓の萎縮が生じることを特徴とする上記(1)から(3)何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 (5)腎臓におけるヒドロキシプロリン量を野生型動物と比較した場合に有意に増加している上記(1)から(4)何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 (6)腎臓におけるフィブロネクチンの発現量が野生動物と比較した場合に有意に増加している上記(1)から(5)何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 (7)導入したTGF−β1遺伝子の発現による腎線維化が生じた後、内在性のTGF−β1により、腎線維化が進行することを特徴とする上記(1)から(6)何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 (8)非ヒト哺乳動物がラットである、上記(1)から(7)何れかに記載の非ヒト哺乳動物。 (9)上記(1)から(8)何れかに記載の非ヒト哺乳動物を用いることを特徴とする、腎線維化を改善又は抑制する物質のスクリーニング方法。 (10)上記(9)に記載のスクリーニング方法により得られる物質。 (11)上記(9)に記載のスクリーニング方法によって得られる物質を有効成分として含有する、腎線維化の予防又は治療剤。 【発明の効果】 【0009】 本発明のTGF−β1遺伝子を腎臓に導入した腎線維化モデル動物は、腎臓の間質部分が線維化しており、腎疾患における腎線維化の発症機構の解明、腎線維化予防剤又は治療剤のスクリーニングに有用である。特に本発明の腎線維化モデル動物は、TGF−β1遺伝子を経静脈的に導入することで得られるため作製が容易であり、TGF−β1が直接線維化を誘発していることからTGF−β1特異的線維化阻害剤のスクリーニングが可能となるという利点を有する。また、通常、かなり病状の進行した腎臓に見られる腎間質部分で線維化が、TGF−β1遺伝子導入後3日目から見られるため、長期間飼育する必要がないという利点、導入したTGF−β1遺伝子の発現により腎線維化を生じた後、内在性のTGF−β1により、腎線維化が進行するため、より有効で安全な薬物の評価が可能という利点も有する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0010】 本発明において「TGF−β1遺伝子」とは、公知の遺伝子であり、ヒト、ネズミ、ブタ等様々な哺乳動物由来の遺伝子又はこれらの遺伝子の変異体を意味する。 【0011】 ここでいう変異体遺伝子とは、TGF−β1遺伝子と同一機能を有していればよく、該遺伝子の一部が欠損、置換及び/又は付加された遺伝子等を意味する。欠損、置換又は付加される塩基数は、該遺伝子が導入された際に発現される蛋白質がTGF−β1と同等の機能を有するものであれば特に制限されないが、1〜100個、好ましくは1〜50個、より好ましくは1〜10個程度である。 【0012】 TGF−β1は、通常、生体内においては分子同士がジスルフィド結合し、ダイマーを形成しているため生理活性を持たないが、本発明で用いられるTGF−β1遺伝子は、特に該ダイマーを形成しないように改変された変異体を用いることが好ましい。ダイマーを形成することができない変異型TGF−β1は、生体内において常に生理活性を有しており、遺伝子導入後、短期間で腎臓の間質部分が線維化したモデル動物を得ることが可能となる。具体的には、例えば、野生型ブタTGF−β1のアミノ酸配列(配列番号1)におけるアミノ酸番号223番目と225番目のシステイン残基をセリン残基に置換した変異体遺伝子(Shanti K. Samuel Moritani, et. al., EMBO J. 11: 1599-1650, 1998)を用いることができる。このような変異型遺伝子のDNAは、例えば、ダイマーを形成するTGF−β1遺伝子をコードするDNAを鋳型とし、ジスルフィド結合に関与する残基を他の残基に置換した変異配列を含む合成オリゴヌクレオチドプライマーを用いたPCRにより得ることができる。 【0013】 本発明のTGF−β1遺伝子が導入された非ヒト哺乳動物において、腎臓の線維化は、腎臓の萎縮を直接確認する、線維化の指標であるフィブロネクチンの発現を確認する、若しくは組織コラーゲン量の指標であるヒドロキシプロリンを定量し、TGF−β1遺伝子の導入されていない腎臓のヒドロキシプロリン量とを比較することで確認することができる。ヒドロキシプロリン量の測定は、実施例4において詳細に説明するが、既に報告されているKivirikko等(Anal.Biochem.19,249,1967)の方法やWoessner法等により定量することができる。例えば、Woessner法によって測定する場合には、適切な前処理をおこなった試料にクロラミンT溶液、過塩素酸溶液、P-ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液の各溶液を指定の条件で順次添加・放置を行い560nmの吸光度で測定することが可能である。 【0014】 本発明において「フィブロネクチンの発現量が野生動物と比較した場合に有意に増加している」又は「ヒドロキシプロリン量が野生動物と比較して有意に増加している」とは、例えば、StudentのT検定を行った場合、そのP値が有意水準5%以下である場合をいう。 【0015】 本発明の腎線維化非ヒト哺乳動物の作製方法は、特に限定されないが、例えば、適当なプロモーター配列を有する公知のベクターの下流に当該遺伝子を組み込み、腎臓組織細胞に直接導入することにより得ることができる。 【0016】 本発明において使用されるベクターやプロモーターは、動物細胞発現用に通常用いられているものであれば特に制限なく使用することができる。ベクターとしては、例えば、ウィルスベクター、プラスミドベクターを使用することができる。プロモーターとしては、例えば、ウィルス、鳥類、各種哺乳動物由来のものを用いることができる。 【0017】 また、本発明で用いられるベクターには、目的とするmRNAの発現を終結させるためのターミネーター配列を目的遺伝子の下流に連結させることができる。このようなターミネーターとして、ラビットβ-グロビンの3'-UTR(3'側未翻訳配列)等を用いることができる。また、TGF−β1を高発現させるために、サイトメガロウイルス等のエンハンサー領域を連結することもできる。 【0018】 TGF−β1遺伝子を導入する方法は、作製の簡便さから腎臓に直接導入する方法が好ましく、特に組み換えプラスミドベクターを経腎静脈的に投与する公知の方法(特開2003―40803)に従って導入した場合には、TGF−β1を腎間質部位の線維芽細胞に特異的に発現させることが容易となることから好ましい。 【0019】 本発明において、非ヒト哺乳動物の腎臓の線維化による萎縮は、TGF−β1遺伝子の投与量に依存して上昇する。したがって、TGF−β1遺伝子の投与量は、使用する哺乳動物の種類や使用目的によって、適宜調製することが可能である。例えば、本発明のTGF−β1遺伝子をプラスミドDNA100μg以上導入して、腎線維化モデルラットを作製した場合には、腎臓の線維化を示すヒドロキシルプロリンの発現量や腎臓の萎縮が、腎線維化の予防又は治療薬の評価に使用することができる程度、変化している。 【0020】 本発明で用いられる非ヒト哺乳動物は、ヒト以外の哺乳動物であれば特に制限されないが、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウシ等が利用できる。特に、作製、繁殖の容易さやライフサイクルの短さ等から、マウス、ラット等のげっ歯類が好ましく、中でもラットが好ましい。 【0021】 本発明の腎線維化非ヒト哺乳動物に候補物質を投与し、該非ヒト哺乳動物のヒドロキシプロリン量、TGF−β1の発現量、腎臓の萎縮等の変化を測定することで候補物質が腎線維化予防又は治療効果を有するか評価することができる。 【0022】 本発明の非ヒト哺乳動物は、導入したTGF−β1遺伝子の発現により腎線維化が生じた後、内在性のTGF−β1により、腎線維化が進行することを特徴の一つとしているが、特に内在性のTGF−β1により腎線維化が進行している時に候補物質の評価を行えば、よりネイティブな病態の線維化を評価できることから、効率のよいスクリーニングが可能となる。 【0023】 また、本発明の非ヒト哺乳動物に生じる間質部分での線維化は、病状の進行した腎臓で観察されるものであるため、病状の進行した腎疾患、更には、今まで治療することができなかった末期の腎疾患の治療に有効な物質をスクリーニングすることも可能である。 【0024】 更に、本発明の非ヒト哺乳動物は、TGF−β1の発現を病態変化の唯一の引き金としていることから遺伝子導入後の腎線維化の進行過程等を調査することにより、腎線維化の発症進行のメカニズムを解明することもできる。 【0025】 本発明のスクリーニング方法に供される候補物質としては、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液等が用いられ、これらの化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。またペプチドライブラリーや化合物ライブラリー等を用いることもできる。更に、上記のスクリーニング方法で得られた物質から誘導される化合物又はそれらの塩でもよい。 【0026】 該化合物の塩としては、生理学的に許容される無機酸(例えば、塩酸、リン酸)、有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)または塩基(例えば、アルカリ金属)等との塩が挙げられるが、特に生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。 【0027】 該化合物を医薬組成物として使用する場合は、通常行われる手段に従って、錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして、あるいは無菌性溶液、懸濁液剤などの注射剤として利用することができる。 【0028】 該化合物の投与量は、投与対象、投与方法等にあわせて、適宜調製することができる。 次に、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 【実施例】 【0029】 実施例1 発現ベクターの調製 大阪大学・宮崎等により開発されたCAG(サイトメガロウィルスエンハンサー/ニワトリβ−アクチンハイブリッド)プロモーターを有する発現ベクター・pCAGGS(1)(図1A)の1728bp及び1740bpの制限酵素EcoRIサイトに活性化TGF−β1・cDNA(2)(3)(4)を挿入して作製した。 【0030】 TGF−β1・cDNA(図1B)は、野生型ブタ由来変異型TGF−β1(3)(4)を用いた。野生型ブタ由来変異型TGF−β1は、QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(東洋紡)を用いて野生型ブタTGF−β1のアミノ酸配列(配列番号1)の223番目と225番目のシステインをセリンに置換することで作製できる。 【0031】 TGF−βは、生体内において通常潜在型としてダイマー形成をしており生理活性を持たない。それに対し、TGF−β1のアミノ酸配列(配列番号1)に変異(アミノ酸番号223番目と225番目のシステイン残基をセリン残基に置換)を挿入した場合、S-S結合が出来ないためモノマーで存在する。故に、発現したTGF−β1は常に生理活性を有する。 (1) Hitoshi Niwa, Ken-ichi Yamamura, Jun-ichi Miyazaki (1991) Gene 108, 193-200. (2) Amy M. Burnner, HansMarquardt, et. al. (1989) J. Biol. Chem. 264, 13660-13660 (3) Shanti K. Samuel Moritani, et. al., EMBO J. 11: 1599-1650, 1998 (4) Moritani, M., et. al.,J. Clin. Inv. 102: 499-506, 1998 【0032】 実施例2 TGF−β1遺伝子の導入及びタンパク質の発現(ウエスタンブロッティング) ウィスターラット(8週齢、雄、(株)日本SLCより購入)の左腎静脈及び腎動脈をクランプした。腎臓へ実施例1に記載の変異型TGF−β1遺伝子を組み込んだプラスミドDNA300μgをリンゲル溶液1mlに溶解し24ゲージカテーテル(SURFLO I.V.;Terumo, Tokyo,Japan)を用いて左腎静脈に注射後、直ちに血流を再開させた(以後、経静脈的遺伝子導入法という)。 【0033】 1,2,3,4,7,14日後の腎臓について定法によりウエスタンブロッティングを実施した。検出分子特有の条件を以下に示す。 【0034】 TGF-β1は、凍結腎臓組織から抽出したタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル(以下SDS-PAGE)16%で電気泳動を行い、検出の際、抗体はTGF−β1(v):SC-146 Lot No. J191(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)を最終濃度1μg/mlでおこなった。 【0035】 フィブロネクチンは、SDS-PAGE6%で電気泳動を行い、検出の際、抗体はフィブロネクチン(P1H11):SC-18825 Lot No. A292(Santa Cruz Biotechnology, Inc.)を最終濃度0.2μg/mlでもちいた。結果を図2に示す。 【0036】 TGF−β1は、1日目から強いタンパク質発現が確認され徐々に減少する事が確認出来た。 【0037】 フィブロネクチンは、1日目はほとんど発現が確認できないが2日目からタンパク質発現が確認でき3日目をピークとして14日後まで発現が持続していることが確認された。 【0038】 実施例3 TGF−β1遺伝子導入ラット腎臓における外来性及び内在性TGF−β1遺伝子の経時的発現変化(リアルタイムPCR) ウィスターラット(8週齢)の腎臓へ実施例1に記載の変異型TGF−β1遺伝子を組み込んだプラスミドDNA300μgを経静脈的に遺伝子導入し、1,2,3,4,7,14,28日後の腎臓について、外来性、内在性、及び全TGF−β1遺伝子のmRNA発現量を調査した(N≧5)。 【0039】 凍結腎臓組織より抽出した全RNA 1μgより調整したcDNAを鋳型として、SYBRグリーン法を用いたリアルタイムPCRを行った。全TGF−β1遺伝子のmRNA発現量は、内在性(ラット)及び外来性(ブタ)TGF−β1遺伝子に共通して相補的結合する以下のプライマーセットを用いた。コラーゲンタイプIIIのmRNA発現量は、a1鎖のmRNAと相補的結合するプライマーセットを用いた。PCR反応は94℃ 10分間の後、94℃ 1分間、60℃ 1分間を40回行った。検出はABI PRISM 7700 Sequence Detection System(Applied Biosystems)を用いた。各遺伝子のmRNA発現量は、GAPDH遺伝子で補正し、空ベクター(CAGGS)もしくはCAG-TGF-β1遺伝子導入1日後のmRNA発現量を1として示した。結果を図3に示す。 【0040】 外来性TGF−β1遺伝子のmRNAは、遺伝子導入1日後には発現が確認され、その後徐々に減少し、7日後には検出できないほど発現が低下した。一方、内在性TGF−β1遺伝子のmRNA発現量は遺伝子導入後1日目から増加していることが確認できた。これらの結果より、遺伝子導入7日目以降は、内在性のTGF−β1によって腎臓の線維化が進行しており、外来性のTGF−β1の関与が低いことがわかった。 【0041】 使用したプライマーは、以下の通りである。 外来性(ブタ) TGF−β1遺伝子特異的プライマーセット; TGFBpor-rat2FW ata tgc tgt tca aca cgt cgg agc(配列番号2) TGFBpor-rat2RV gta gcc cca gga atc att gct gta(配列番号3) 内在性(ラット) TGF−β1遺伝子特異的プライマーセット; ratTGFb1-fw1 caa ctg tgg agc aac acg tag aac(配列番号4) ratTGFb1-rv1 ctg aag cga aag ccc tgt att c(配列番号5) 内在性(ラット)及び外来性(ブタ)TGF−β1遺伝子共通プライマーセット; ratporTGFb1-fw1 ccc ttc ctg ctc ctc atg gcc(配列番号6) TGFBpor-rat1RV ctg aag cag tag ttg gta tcc agg(配列番号7) ラットコラーゲンタイプIII a1 遺伝子プライマーセット; ratcol3a1-RT-fw1 ttg cct aca tgg atc agg cca atg(配列番号8) ratcol3a1-RT-rv1 acc agt gtg ttt agt gca gcc atc(配列番号9) GAPDH遺伝子プライマーセット; TaqMan Rodent GAPDH Control Reagents(Applied Biosystems) 【0042】 実施例4 腎臓へのTGF−β1遺伝子導入による線維化の誘発 ウィスターラット(8週齢、雄、(株)日本SLCより購入)の腎臓へ実施例1に記載の変異型TGF−β1遺伝子を組み込んだプラスミドDNA300μgを実施例2に記載の経静脈的遺伝子導入法により遺伝子を導入した。 【0043】 1週間後遺伝子導入を行った腎臓を採材した。この凍結腎臓組織100mgが10%重量/容量になるように超純水を添加しホモジネートした。ネジ付き試験管に組織懸濁液1mlをうつし1mlの濃塩酸(12N)を加え、加熱しながら加水分解を行った(105℃、18時間)。冷却後、凍結乾燥により塩酸を除去・乾固させ4mlの超純水に再び溶解させ、フィルターを用いて不溶成分を除去した。得られた濾液300μlについてクロラミンT溶液 150μl(クロラミンT 1.4g, 超純水 20ml, メチルセルロブ 30ml, クロラミンTバッファー(pH 6.0) 50ml)を添加し20分間室温放置した。クロラミンTバッファー(pH 6.0)は超純水1L当たりクエン酸ナトリウム(一水塩) 50g, 氷酢酸 12ml, 酢酸ナトリウム(三水塩) 120gを添加し、NaOHでpH6.0に調整した。過塩素酸20%, 150μlを添加し5分間室温放置した。P-ジメチルアミノベンズアルデヒド溶液 150μl(P-ジメチルアミノベンズアルデヒド 20gをメチルセロルブに溶かし100mlに調製)を添加し60℃, 20分間加熱後、水で冷やした。吸光度計にて560nmの値を測定しヒドロキシルプロリンの定量(Woessner法)を行った。 【0044】 その結果を図4に示す。TGF-β1遺伝子を導入した腎臓はヒドロキシプロリンの増加を示した。ヒドロキシルプロリンは線維化の指標であるコラーゲンの構成成分であるため、その組織当たりの量の変化は線維化とパラレルと考えられている。よって、線維化を誘発していると考えられる。 【0045】 実施例5 腎間質部へのTGF-β1遺伝子の導入による腎臓の萎縮1 ウィスターラット(8週齢、雄、(株)日本SLCより購入)の腎臓へ実施例1に記載の変異型TGF−β1遺伝子を組み込んだプラスミドDNA300μgを実施例2に記載の経静脈的遺伝子導入法で遺伝子導入した。 【0046】 7日後腎臓を採材すると遺伝子導入した腎臓が萎縮した(図5)。もう一方の腎臓では萎縮は認められていない。これらの結果は肉眼観察及び病理組織学的な所見による。 【0047】 実施例6 腎間質部へのTGF-β1遺伝子の導入による腎臓の萎縮2 ウィスターラット(8週齢、雄、(株)日本SLCより購入)の腎臓へ実施例1に記載の変異型TGF−β1遺伝子を組み込んだプラスミドDNAをそれぞれ30μg,100μg,300μgずつ実施例2に記載の経静脈的遺伝子導入法で左腎臓に遺伝子導入した。TGF-β1遺伝子を導入していない右腎臓と比較した左腎臓の質量と導入TGF-β1遺伝子量との関係を経時的に28日まで調査した。結果を図6に示す。 30μgではほとんど腎臓の質量に変化は認められなかったが、100、300μgでは濃度依存的に腎臓の質量の減少が認められた。100、300μgでは濃度依存的に腎臓の萎縮が認められた。 【0048】 実施例7 TGF-β1,300μgの遺伝子導入による線維化の進展 ウィスターラット(8週齢、雄、(株)日本SLCより購入)の腎臓へ実施例1に記載の変異型TGF−β1遺伝子を組み込んだプラスミドDNA300μgを実施例2に記載の経静脈的遺伝子導入法により遺伝子導入し、3,7,14,28日間の腎臓の組織切片について線維化を確認した。 【0049】 定法(新染色法のすべて 別冊Medical Technology:10-13 1999)に従いマッソン・トリクローム染色により膠原線維を染色した(図7)。遺伝子導入後3日後には間質領域の拡張が確認され、少なくとも28日間まで線維化の維持または増悪化が確認された。 28日後には糸球体密度が極端に高くなっている像が認められており、強い萎縮が組織学的にも確認できた。 【0050】 実施例8 TGF−βI型受容体特異的阻害剤 前投与試験 ウィスターラット(8週齢、雄、(株)日本SLCより購入)の腎臓へ実施例1に記載の変異型TGF−β1遺伝子を組み込んだプラスミドDNA300μgを実施例2に記載の経静脈的遺伝子導入法により遺伝子導入し、文献(5)(6)に従って合成したTGF−βI型受容体特異的阻害剤であるSB-431542を経口投与した。方法は、60mg/kg/day(5%アラビアゴムを基剤とした懸濁水溶液)を一日一回10:00に投与することを基本し、0日目に1回目の投与を行いその日の午後に遺伝子導入実験、続いて14日間連続して経口投与した。 (5) N. J. LAPING等 (2002) Mol. Pharmacol. 62:58-64 (6)GARETH J. INMAN等(2002) Mol. Pharmacol. 62:65-74 14日後の腎臓組織を用いてヒドロキシルプロリンの定量(Woessner法)を行った。その結果を図8Aに示す。 SB-431542を経口投与した群は、連続投与14日後に有意にヒドロキシルプロリンが低下していた。すなわち、特異的なTGF−βI型受容体特異的阻害剤の投与で腎臓の線維化が抑制されたことを示した。 【0051】 また、上記腎臓組織を実施例7と同様にしてマッソン・トリクローム染色により膠原線維を染色した。これを光学顕微鏡下で各個体の腎臓皮質を40倍の倍率で4視野を撮影し IPLab Spectrum(Scananalytics Inc.)により線維化領域の定量解析を行った。その結果を図8Bに示す。対照として空ベクター(CAGGS)を注入した(TGF−β1遺伝子を導入しなかった)ラットの腎臓組織(図8B左)及びTGF−β1遺伝子導入後、TGF−βI型受容体特異的阻害剤を投与しなかったラットの腎臓組織(図8B右)も同様に染色し、定量解析を行った。 その結果、組織学的にも、特異的なTGF−βI型受容体特異的阻害剤の投与で線維化が抑制されていることが確認できた。 【0052】 これらの結果により、腎臓の間質部で過剰発現したTGF−β1が直接線維化を誘発したことが証明できた。 【0053】 本モデルは新規病態動物モデルである。薬剤評価用として利用するにはコントロール薬剤の存在とそれによって病態は制御出来なくてはならないが、本モデルはこれらの点を解消している。 【図面の簡単な説明】 【0054】 【図1A】図1Aは実施例1で使用されたベクターの構造を示す。 【図1B】図1Bは実施例1で使用された変異型TGF−β1遺伝子及びプロモーター及びターミネーター配列が連結され、変異型TGF−β1遺伝子が組み込まれたラビットβ−グロビンの3番目のエクソン部分の構造を示す。 【図2】図2は、TGF−β1遺伝子導入後の腎臓についてウエスタンブロッティングを実施した結果を示す。 【図3】図3は、TGF−β1遺伝子導入後の腎臓について外来性及び内在性TGF−β1遺伝子の経時的発現変化をリアルタイムPCRによって測定した結果を示す。 【図4】図4は、TGF−β1遺伝子導入後の腎臓のヒドロキシルプロリンの量をWoessner法によって測定した結果を示す。 【図5】図5は、TGF−β1遺伝子導入7日後に摘出した腎臓を示す。 【図6】図6は、TGF−β1遺伝子導入後の腎臓の質量を経時的に測定した結果を示す。 【図7】図7は、TGF−β1遺伝子導入後の腎臓の繊維化をマッソン・トリクローム染色により膠原線維を染色することで経時的に観察した結果を示す。 【図8A】図8Aは、TGF−β1遺伝子導入後、TGF−βI型受容体特異的阻害剤であるSB-431542を投与した際のヒドロキルシプロリン量をWoessner法によって測定した結果を示す。 【図8B】図8Bは、TGF−β1遺伝子導入後、TGF−βI型受容体特異的阻害剤であるSB-431542を投与した際の腎臓の線維化をマッソン・トリクローム染色により膠原線維を染色することで観察した結果及び染色された膠原線維の面積を測定した結果を示す。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000002819 【氏名又は名称】大正製薬株式会社
|
| 【出願日】 |
平成16年6月22日(2004.6.22) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100115406 【弁理士】 【氏名又は名称】佐鳥 宗一
【識別番号】100074114 【弁理士】 【氏名又は名称】北川 富造
|
| 【公開番号】 |
特開2006−6103(P2006−6103A) |
| 【公開日】 |
平成18年1月12日(2006.1.12) |
| 【出願番号】 |
特願2004−183151(P2004−183151) |
|