| 【発明の名称】 |
八重咲き植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用 |
| 【発明者】 |
【氏名】高木 優
【氏名】平津 圭一郎
【氏名】光田 展隆
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| 【要約】 |
【課題】八重咲き植物体の生産方法を提供する。
【解決手段】雌しべの形成に関与する転写因子をコードするポリヌクレオチドと、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとのキメラ遺伝子を植物細胞に導入して、上記転写因子と上記機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物細胞内で生産させる。該キメラタンパク質が、上記転写因子が標的とする遺伝子の発現を抑制し、八重咲き植物体が生産される。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 雌しべの形成に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物体で生産させることにより、花の形態を八重咲きにすることを特徴とする八重咲き植物体の生産方法。 【請求項2】 上記転写因子をコードする遺伝子と上記機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを、植物細胞に導入する形質転換工程を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の八重咲き植物体の生産方法。 【請求項3】 さらに、上記組換え発現ベクターを構築する発現ベクター構築工程を含んでいることを特徴とする請求項2に記載の八重咲き植物体の生産方法。 【請求項4】 上記転写因子が、以下の(a)または(b)記載のタンパク質であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 (a)配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。 (b)配列番号134に示されるアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。 【請求項5】 上記転写因子をコードする遺伝子として、以下の(c)または(d)記載の遺伝子が用いられることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 (c)配列番号135に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。 (d)配列番号135に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、雌しべの形成に関与するタンパク質をコードする遺伝子。 【請求項6】 上記機能性ペプチドが、次に示す式(1)〜(4) (1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3 (但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsnまたはGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。) (2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3 (但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPheまたはIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。) (3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3 (但し、式中、Z1はLeu、Asp−LeuまたはLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、GlnまたはAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。) (4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu (但し、式中、Z4はGlu、GlnまたはAspを示す。) のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 【請求項7】 上記機能性ペプチドが、配列番号1〜17のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 【請求項8】 上記機能性ペプチドが、以下の(e)または(f)記載のペプチドであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 (e)配列番号18または19に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。 (f)配列番号18または19に示されるアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチド。 【請求項9】 上記機能性ペプチドが、次に示す式(5) (5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu (但し、式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、SerまたはHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、LysまたはAspを示す。) で表されるアミノ酸配列を有するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 【請求項10】 上記機能性ペプチドが、次に示す式(6)〜(8) (6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu (7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu (8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu (但し、各式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、SerまたはHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、SerまたはHisを示し、γ2はGln、Asn、Thr、Ser、His、LysまたはAspを示す。) のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するものであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 【請求項11】 上記機能性ペプチドが、配列番号20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、38、39、または40に示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 【請求項12】 上記機能性ペプチドが、配列番号36または37に示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の八重咲き植物体の生産方法。 【請求項13】 請求項1から12のいずれか1項に記載の生産方法により生産された、八重咲き植物体。 【請求項14】 上記八重咲き植物体には、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれることを特徴とする請求項13に記載の八重咲き植物体。 【請求項15】 請求項1から12のいずれか1項に記載の生産方法を行うためのキットであって、 上記転写因子をコードする遺伝子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを少なくとも含むことを特徴とする八重咲き植物体生産キット。 【請求項16】 さらに、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含むことを特徴とする請求項15に記載の八重咲き植物体生産キット。 【請求項17】 雄しべまたは雌しべの形成に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物体で生産させることにより、植物体を不稔化することを特徴とする不稔性植物体の生産方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、八重咲き植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用に関するものであり、特に遺伝子の転写を抑制することによる八重咲き植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用に関するものである。 【背景技術】 【0002】 一般に、花はがく、花弁、雄しべ、雌しべの4つの器官からなり、花芽分裂組織を4つの同心円状領域、つまり、外側からwhorl1〜4に分けた場合、whorl1には4つのがく、whorl2には4つの花弁、whorl3には6つの雄しべ、whorl4には2つの心皮が融合した雌しべが作られる。これらの器官の形質は、花のホメオティック遺伝子によって決定されることが知られている(非特許文献1)。花のホメオティック遺伝子は、A、B、Cの3クラスに分類され、転写因子をコードしている。そのため、これらの遺伝子群の組み合わせによって、花芽分裂組織に形成される花器官の種類が決定される。すなわち、クラスAのみが働くとがくが、クラスAとBが協働すると花弁が、クラスBとCが協働すると雄しべが、クラスCのみが働くと雌しべが形成される。したがって、ホメオティック遺伝子の機能が突然変異などで失われると、ある器官が他の器官の形質に転換する。このような変化はホメオティックな変換と呼ばれ、植物ではシロイヌナズナ等で花の器官形質決定に関与するホメオティック遺伝子が明らかになっている(非特許文献1)。 【0003】 agamous遺伝子(以下「AG遺伝子」と称する)は、上記のクラスC遺伝子であり、AG遺伝子の機能が失われたAG変異体では、クラスAの機能が花の全領域に及び、雄しべが花弁に変化し、野生型では雌しべとなる領域に新しい花が作られ、花の形態は八重咲きとなることが知られている(非特許文献1)。 【0004】 これまで、八重咲き植物体の作製を目的として花の形態を変化させる場合は、その目的とする形質を有する植物の品種を掛け合わせる交配育種を行うのが一般的である。 【0005】 また、近年、特定の遺伝子の働きを抑制する方法として、2本鎖RNAを細胞の中に入れ、その配列に相同な細胞のmRNAを分解するRNA干渉(RNAi)法が広く用いられるようになってきている。 【0006】 ところで、本発明者は、任意の転写因子を転写抑制因子に転換するペプチドを種々見出している(例えば、特許文献1〜7、非特許文献2、3参照)。このペプチドは、Class II ERF(Ethylene Responsive Element Binding Factor)タンパク質や植物のジンクフィンガータンパク質(Zinc Finger Protein、例えばシロイヌナズナSUPERMANタンパク質等)から切り出されたもので、極めて単純な構造を有している。 【0007】 さらに、本発明者は、種々の転写因子と上記ペプチドとを融合させた融合タンパク質(キメラタンパク質)をコードする遺伝子を植物体内に導入することを試みている。そして、これにより、転写因子が転写抑制因子に転換され、該転写因子が転写を促進する標的遺伝子の発現が抑制された植物体を生産することに成功している。 【特許文献1】特開2001−269177公報(平成13年(2001)10月2日公開) 【特許文献2】特開2001−269178公報(平成13年(2001)10月2日公開) 【特許文献3】特開2001−292776公報(平成13年(2001)10月2日公開) 【特許文献4】特開2001−292777公報(平成13年(2001)10月23日公開) 【特許文献5】特開2001−269176公報(平成13年(2001)10月2日公開) 【特許文献6】特開2001−269179公報(平成13年(2001)10月2日公開) 【特許文献7】国際公開第WO03/055903号パンフレット(平成15年(2003)7月10日公開) 【非特許文献1】酒井一著、「植物の形を決める分子機構」、秀潤社、150−155頁 【非特許文献2】Ohta,M.,Matsui,K.,Hiratsu,K.,Shinshi,H.and Ohme−Takagi,M.,The Plant Cell, Vol.13,1959−1968,August,2001 【非特許文献3】Hiratsu,K.,Ohta,M.,Matsui,K.,Ohme−Takagi,M.,FEBS Letters 514(2002)351−354 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0008】 しかしながら、従来の交配育種による方法では、目的とする形質を有する植物を生産するためには、長い年月と、熟練者の経験が必要である。したがって、短期間で簡便、確実に八重咲き植物体を得ることは非常に困難である。 【0009】 また、上記RNAi法によってAG遺伝子の機能を抑制し、八重咲き植物体を得ることも考えられるが、RNAi法には、遺伝子の発現を抑制する場合にターゲットとする部位の決定が困難であり、試行錯誤が必要であること、コンストラクトの構築が難しいこと、細胞によってはトランスフェクションの効率が低く、RNA干渉の効果が限定されること、等の種々の問題点がある。したがって、RNAi法によって八重咲き植物体を短期間で簡便、確実に得ることは非常に困難である。 【0010】 本発明は、上記の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、雌しべの形成に関与する転写因子を転写抑制因子に転換し、上記転写因子の標的遺伝子の転写を抑制することにより、短期間で簡便、確実に八重咲き植物体を生産する方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0011】 本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、雌しべの形成に関与する転写因子を転写抑制因子に転換し、上記転写因子の標的遺伝子の転写を抑制することにより、八重咲き植物体を短期間で簡便、確実に生産することができることを初めて明らかにし、本発明を完成させるに至った。 【0012】 すなわち、本発明にかかる八重咲き植物体の生産方法は、雌しべの形成に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物体で生産させることにより、花の形態を八重咲きにすることを特徴としている。 【0013】 上記構成によれば、上記転写因子を転写抑制因子に転換することができ、植物体内では、上記転写因子の標的遺伝子の転写が抑制される。また、上記転写因子の標的遺伝子の転写を抑制するという形質は、ドミナントであるので、上記従来の技術で作製したAG変異体のように、劣勢ホモ個体を単離する必要がない。したがって、短期間で、簡便、確実に八重咲き植物体を生産することができる。 【0014】 また、上記構成によれば、得られる八重咲き植物体は、種子が形成されない不稔性植物体となる。したがって、複雑な遺伝子組み替え技術を利用することなく、目的の植物を非常に簡便に不稔性植物体とすることができる。 【0015】 また、本発明にかかる八重咲き植物体の生産方法は、上記転写因子をコードする遺伝子と上記機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを、植物細胞に導入する形質転換工程を含んでいることが好ましい。 【0016】 上記構成によれば、上記機能性ペプチドが付加されたカセットベクターに上記転写因子の遺伝子を組み込み、植物細胞に導入するだけで、上記キメラタンパク質を植物細胞内で発現させることができ、上記キメラタンパク質により転写因子の標的遺伝子の転写を容易に抑制することができる。したがって、短期間に、簡便、確実に八重咲き植物体を生産することができる。 【0017】 また、本発明にかかる八重咲き植物体の生産方法は、さらに、上記組換え発現ベクターを構築する発現ベクター構築工程を含むことが好ましい。 【0018】 また、上記転写因子は、以下の(a)または(b)記載のタンパク質であることが好ましい。(a)配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。(b)配列番号134に示されるアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。 【0019】 また、上記転写因子をコードする遺伝子として、以下の(c)または(d)記載の遺伝子を用いることが好ましい。 (c)配列番号135に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。 (d)配列番号135に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、雌しべの形成に関与するタンパク質をコードする遺伝子。 【0020】 上記構成によれば、上記転写因子は上記機能性ペプチドにより転写抑制因子に転換され、上記転写因子の標的遺伝子の転写が抑制される。したがって、短期間に、簡便、確実に八重咲き植物体を生産することができる。 【0021】 また、上記機能性ペプチドは、次に示す式(1)〜(4) (1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3 (但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsnまたはGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。) (2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3 (但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPheまたはIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。) (3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3 (但し、式中、Z1はLeu、Asp−LeuまたはLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、GlnまたはAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。) (4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu (但し、式中、Z4はGlu、GlnまたはAspを示す。) のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するものであることが好ましい。 【0022】 また、上記機能性ペプチドは、配列番号1〜17のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであることが好ましい。 【0023】 また、上記機能性ペプチドは、以下の(e)または(f)記載のペプチドであってもよい。(e)配列番号18または19に示されるアミノ酸配列を有するペプチド。(f)配列番号18または19に示されるアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列を有するペプチド。 【0024】 また、上記機能性ペプチドは、次に示す式(5) (5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu (但し、式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、SerまたはHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、LysまたはAspを示す。) で表されるアミノ酸配列を有するものであってもよい。 【0025】 また、上記機能性ペプチドは、次に示す式(6)〜(8) (6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu (7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu (8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu (但し、各式中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、SerまたはHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、SerまたはHisを示し、γ2はGln、Asn、Thr、Ser、His、LysまたはAspを示す。) のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するものであってもよい。 【0026】 また、上記機能性ペプチドは、配列番号配列番号20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、38、39、または40に示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであってもよい。 【0027】 また、上記機能性ペプチドは、配列番号36または37に示されるアミノ酸配列を有するぺプチドであってもよい。 【0028】 上記機能性ペプチドは、上記式のいずれかで表されるアミノ酸配列を有するペプチドまたは上記配列番号に示されるいずれかのペプチドであり、その多くは極めて短いペプチドであるため、合成が容易であり、上記転写因子の標的遺伝子の転写抑制を効率的に行うことができる。また、上記機能性ペプチドは、機能的に重複(リダンダント)する他の転写因子の活性に優先して標的遺伝子の発現を抑制する機能を有している。それゆえ、標的遺伝子の発現を効果的に抑制できるという効果を奏する。 【0029】 また、本発明にかかる植物体は、上記生産方法により生産された八重咲き植物体であることを特徴としている。上記植物体には、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれることが好ましい。 【0030】 また、本発明にかかる八重咲き植物体の生産キットは、上記の生産方法を行うためのキットであって、上記転写因子をコードするポリヌクレオチドと、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを少なくとも含むことを特徴としている。上記八重咲き植物体の生産キットは、さらに、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含んでいてもよい。 【0031】 また、本発明に係る不稔性植物体の生産方法は、不稔性植物体の形成に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を、植物体で生産させることにより、植物体を不稔化することを特徴としている。 【0032】 上記構成によれば、得られる植物体は、種子が形成されない不稔性植物体となる。したがって、複雑な遺伝子組み替え技術を利用することなく、非常に簡便に目的の植物を不稔性植物体とすることができる。 【発明の効果】 【0033】 本発明に係る八重咲き植物体の生産方法は、以上のように、雌しべの形成に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物体で生産させ、上記転写因子の標的遺伝子の転写を抑制することにより、八重咲き植物体を生産するという構成を備えているので、短期間に、簡便、確実に八重咲き植物体を生産することができるという効果を奏する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0034】 以下、本発明に係る八重咲き植物体の生産方法およびこれを用いて得られる植物体、並びにその利用について詳述する。 (1)八重咲き植物体の生産方法 本発明は、八重咲き植物体を生産する技術であって、雌しべの形成に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたキメラタンパク質を植物体で生産させることにより、八重咲き植物体を生産するものである。 【0035】 上記キメラタンパク質を生産させる方法では、上記転写因子は、上記機能性ペプチドにより転写抑制因子に転換される。そのため、上記キメラタンパク質における転写因子由来のDNA結合ドメインが、転写因子の標的遺伝子に結合すると、転写因子の標的遺伝子の転写が抑制される。その結果、雌しべの形成に関与する遺伝子の機能が失われ、上述したクラスAの機能が花の全領域に及ぶため、雄しべが花弁に変化し、野生型では雌しべとなる領域に新しい花が作られ、八重咲き植物体が形成される。すなわち、図4(A)に示すように、外側からがく、花弁、花弁の順で花が繰り返し形成される。 【0036】 また、上記キメラタンパク質が上記転写因子の標的遺伝子の転写を抑制するという形質は、ドミナントである。すなわち、雌しべの形成に関与する正常な遺伝子が存在していても、転写因子の標的遺伝子の転写が抑制された変異型の遺伝子の方が優勢に発現する。そのため、例えば交配や、RNAi法のような従来技術で作製した変異体のように、劣勢ホモ個体を単離する必要がない。 【0037】 したがって、短期間で、簡便、確実に、八重咲き植物体を生産することができる。 【0038】 また、得られる八重咲き植物体は、種子が形成されない不稔性植物体となる。上記不稔性植物体には、雄しべも雌しべも全く形成されない完全不稔性植物体の他、不完全な雄しべ様器官および/または雌しべ様器官が形成されるものの、種子の形成が抑制される不稔性植物体も含まれる。 【0039】 上記不稔性植物体では、種子が形成されない。また、上記完全不稔性植物体では、花粉の離散が生じない。したがって、遺伝子組み換え植物の環境への拡散を防止することができる。 【0040】 (I)本発明で用いられるキメラタンパク質 上述したように、本発明で用いられるキメラタンパク質は、雌しべの形成に関与する転写因子と、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチドとを融合させたものである。そこで、上記転写因子および機能性ペプチドそれぞれについて説明する。 【0041】 (I−1)転写因子 本発明で用いられる転写因子は、雌しべの形成に関与する転写因子であれば、特に限定されるものではない。一実施形態において、本発明で用いられる転写因子は、配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質、または配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質の変異体である。配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質は、上記AG遺伝子がコードする転写因子であり、雌しべの形成に関与する。 【0042】 変異体としては、欠失、挿入、逆転、反復、およびタイプ置換(例えば、親水性の残基の別の残基への置換、しかし通常は強く親水性の残基を強く疎水性の残基には置換しない)を含む変異体が挙げられる。特に、タンパク質における「中性」アミノ酸置換は、一般的にそのタンパク質の活性にほとんど影響しない。 【0043】 タンパク質のアミノ酸配列中のいくつかのアミノ酸が、このタンパク質の構造または機能に有意に影響することなく容易に改変され得ることは、当該分野において周知である。さらに、人為的に改変させるだけではく、天然のタンパク質において、当該タンパク質の構造または機能を有意に変化させない変異体が存在することもまた周知である。 【0044】 当業者は、周知技術を使用してタンパク質のアミノ酸配列において1または数個のアミノ酸を容易に変異させることができる。例えば、公知の点変異導入法に従えば、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの任意の塩基を変異させることができる。また、タンパク質をコードするポリヌクレオチドの任意の部位に対応するプライマーを設計して欠失変異体または付加変異体を作製することができる。さらに、本明細書中に記載される方法を用いれば、作製した変異体が所望の活性を有するか否かを容易に決定し得る。 【0045】 好ましい変異体は、保存性もしくは非保存性アミノ酸置換、欠失、または添加を有する。好ましくは、サイレント置換、添加、および欠失であり、特に好ましくは、保存性置換である。これらは、本発明に係るタンパク質活性を変化させない。 【0046】 代表的に保存性置換と見られるのは、脂肪族アミノ酸Ala、Val、Leu、およびIleの中での1つのアミノ酸の別のアミノ酸への置換;ヒドロキシル残基SerおよびThrの交換、酸性残基AspおよびGluの交換、アミド残基AsnおよびGlnの間の置換、塩基性残基LysおよびArgの交換、ならびに芳香族残基Phe、Tyrの間の置換である。 【0047】 上記に詳細に示されるように、どのアミノ酸の変化が表現型的にサイレントでありそうか(すなわち、機能に対して有意に有害な効果を有しそうにないか)に関するさらなるガイダンスは、Bowie, J.U.ら「Deciphering the Message in Protein Sequences: Tolerance to Amino Acid Substitutions」,Science 247:1306−1310 (1990)(本明細書中に参考として援用される)に見出され得る。 【0048】 本実施形態に係る転写因子は、以下の(a)または(b)記載のタンパク質であることが好ましい。 (a)配列番号134に示されるアミノ酸配列からなるタンパク質。 (b)配列番号134に示されるアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列からなるタンパク質。 【0049】 なお、上記の「(i)記載のアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列」及び「配列番号134に示されるアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列」における「1個または数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。このような変異タンパク質は、上述したように、公知の変異タンパク質作製法により人為的に導入された変異を有するタンパク質に限定されるものではなく、天然に存在するタンパク質を単離精製したものであってもよい。 【0050】 なお、本発明に係るタンパク質は、アミノ酸がペプチド結合しているタンパク質であればよいが、これに限定されるものではなく、タンパク質以外の構造を含む複合タンパク質であってもよい。本明細書中で使用される場合、「タンパク質以外の構造」としては、糖鎖やイソプレノイド基等を挙げることができるが、特に限定されるものではない。 【0051】 また、本発明に係るタンパク質は、付加的なタンパク質を含むものであってもよい。付加的なタンパク質としては、例えば、HisやMyc、Flag等のエピトープ標識タンパク質が挙げられる。 【0052】 ところで、花のホメオティック遺伝子は、シロイヌナズナやキンギョソウなどから単離されており、双子葉植物のみならず単子葉植物でも同様に機能すると考えられている。そのため、AG遺伝子がコードする転写因子等の、雌しべの形成に関与する転写因子のアミノ酸配列は、種の異なる数多くの植物間において、保存性が高いものと考えられる。したがって、八重咲き植物体の形成を行う個々の植物体において、雌しべの形成に関与する転写因子やその遺伝子を必ずしも単離する必要はない。すなわち、後述する実施例で示す、シロイヌナズナで構築したキメラタンパク質を、他の植物に導入することで、さまざまな種の植物において八重咲き植物体を生産することができる。 【0053】 本発明で用いられるキメラタンパク質を生産する際には、後述するように、公知の遺伝子組換え技術を好適に用いることができる。そこで、本発明にかかる植物体の生産方法には、上記転写因子をコードする遺伝子(ポリヌクレオチド)も好適に用いることができる。 【0054】 上記転写因子をコードする遺伝子は、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖であっても一本鎖であってもよい。一本鎖DNAまたはRNAは、コード鎖(センス鎖としても知られる)であっても、非コード鎖(アンチセンス鎖としても知られる)であってもよい。 【0055】 上記転写因子をコードする遺伝子はさらに、雌しべの形成に関与する転写因子をコードする遺伝子の変異体であってもよい。変異体は、天然の対立遺伝子変異体のように、天然に生じ得る。「対立遺伝子変異体」によって、生物の染色体上の所定の遺伝子座を占める遺伝子のいくつかの交換可能な形態の1つが意図される。天然に存在しない変異体は、例えば当該分野で周知の変異誘発技術を用いて生成され得る。 【0056】 このような変異体としては、上記転写因子をコードするポリヌクレオチドの塩基配列において1または数個の塩基が欠失、置換、または付加した変異体が挙げられる。変異体は、コードもしくは非コード領域、またはその両方において変異され得る。コード領域における変異は、保存的もしくは非保存的なアミノ酸欠失、置換、または付加を生成し得る。 【0057】 上記転写因子をコードする遺伝子は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、上記転写因子をコードする遺伝子または当該遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む。 【0058】 一実施形態において、上記転写因子をコードする遺伝子は、以下の(c)または(d)記載のポリヌクレオチドであることが好ましい。 (c)配列番号135に示される塩基配列をオープンリーディングフレーム領域として有する遺伝子。 (d)配列番号135に示される塩基配列からなる遺伝子と相補的な塩基配列からなる遺伝子とストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ、雌しべの形成に関与するタンパク質をコードする遺伝子。 【0059】 なお、上記「ストリンジェントな条件」とは、少なくとも90%以上の同一性、好ましくは少なくとも95%以上の同一性、最も好ましくは97%の同一性が配列間に存在する時にのみハイブリダイゼーションが起こることを意味する。 【0060】 上記ハイブリダイゼーションは、Sambrookら、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory(1989)に記載されている方法のような周知の方法で行うことができる。通常、温度が高いほど、塩濃度が低いほどストリンジェンシーは高くなり(ハイブリダイズし難くなる)、より相同なポリヌクレオチドを取得することができる。ハイブリダイゼーションの条件としては、従来公知の条件を好適に用いることができ、特に限定しないが、例えば、42℃、6×SSPE、50%ホルムアミド、1%SDS、100μg/ml サケ精子DNA、5×デンハルト液(ただし、1×SSPE;0.18M 塩化ナトリウム、10mMリン酸ナトリウム、pH7.7、1mM EDTA。5×デンハルト液;0.1% 牛血清アルブミン、0.1% フィコール、0.1% ポリビニルピロリドン)が挙げられる。 【0061】 上記転写因子をコードする遺伝子を取得する方法は特に限定されるものではなく、公知の技術により、上記転写因子をコードするポリヌクレオチドを含むDNA断片を単離し、クローニングする方法を用いることができる。例えば、上記転写因子をコードする遺伝子の塩基配列の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゲノムDNAライブラリーやcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。このようなプローブとしては、上記転写因子をコードする遺伝子の塩基配列またはその相補配列の少なくとも一部に特異的にハイブリダイズするプローブであれば、いずれの配列および/または長さのものを用いてもよい。 【0062】 あるいは、上記転写因子をコードする遺伝子を取得する方法として、PCR等の増幅手段を用いる方法を挙げることができる。例えば、上記転写因子をコードするポリヌクレオチドのcDNAのうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNA(またはcDNA)等を鋳型にしてPCR等を行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅することで、上記転写因子をコードするポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。 【0063】 (I−2)任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチド 本発明で用いられる、任意の転写因子を転写抑制因子に転換する機能性ペプチド(説明の便宜上、転写抑制転換ペプチドと称する)としては、特に限定されるものではなく、転写因子と融合させたキメラタンパク質を形成させることにより、当該転写因子により制御される標的遺伝子の転写を抑制することができるペプチドであればよい。具体的には、例えば、本発明者によって見出された転写抑制転換ペプチド(特許文献1〜7、非特許文献2、3等参照)を挙げることができる。 【0064】 本発明者は、Class II ERF遺伝子群の一つであるシロイヌナズナ由来のAtERF3タンパク質、AtERF4タンパク質、AtERF7タンパク質、AtERF8タンパク質を転写因子に結合させたタンパク質が、遺伝子の転写を顕著に抑制するとの知見を得た。そこで、上記タンパク質をそれぞれコードする遺伝子及びこれから切り出したDNAを含むエフェクタープラスミドを構築し、これを植物細胞に導入することにより、実際に遺伝子の転写を抑制することに成功した(例えば特許文献1〜4参照)。また、Class II ERF遺伝子群の一つであるタバコERF3タンパク質(例えば特許文献5参照)、イネOsERF3タンパク質(例えば特許文献6参照)をコードする遺伝子、及び、ジンクフィンガータンパク質の遺伝子群の一つであるシロイヌナズナZAT10、同ZAT11をコードする遺伝子についても上記と同様な試験を行ったところ、遺伝子の転写を抑制することを見出している。さらに本発明者は、これらタンパク質は、カルボキシル基末端領域に、アスパラギン酸−ロイシン−アスパラギン(DLN)を含む共通のモチーフを有することを明らかにした。そして、この共通モチーフを有するタンパク質について検討した結果、遺伝子の転写を抑制するタンパク質は極めて単純な構造のペプチドであってもよく、これら単純な構造を有するペプチドが、任意の転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有することを見出している。 【0065】 また、本発明者は、シロイヌナズナSUPERMANタンパク質は、上記の共通のモチーフと一致しないモチーフを有するが、任意の転写因子を転写抑制因子に変換する機能を有すること、また該SUPERMANタンパク質をコードする遺伝子を、転写因子のDNA結合ドメインまたは転写因子をコードする遺伝子に結合させたキメラ遺伝子は、強力な転写抑制能を有するタンパク質を産生することも見出している。 【0066】 したがって、本発明において用いられる転写抑制転換ペプチドの一例として、本実施の形態では、Class II ERFタンパク質であるシロイヌナズナ由来のAtERF3タンパク質、同AtERF4タンパク質、同AtERF7タンパク質、同AtERF8タンパク質、タバコERF3タンパク質、イネOsERF3タンパク質、ジンクフィンガータンパク質の一つであるシロイヌナズナZAT10タンパク質、同ZAT11タンパク質等のタンパク質、同SUPERMANタンパク質、これらから切り出したペプチドや、上記機能を有する合成ペプチド等を挙げることができる。 【0067】 上記転写抑制転換ペプチドの一例の具体的な構造は、下記式(1)〜(4)の何れかで表されるアミノ酸配列となっている。 (1)X1−Leu−Asp−Leu−X2−Leu−X3 (但し、式中、X1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、X2はAsnまたはGluを示し、X3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。) (2)Y1−Phe−Asp−Leu−Asn−Y2−Y3 (但し、式中、Y1は0〜10個のアミノ酸残基を示し、Y2はPheまたはIleを示し、Y3は少なくとも6個のアミノ酸残基を示す。) (3)Z1−Asp−Leu−Z2−Leu−Arg−Leu−Z3 (但し、式中、Z1はLeu、Asp−LeuまたはLeu−Asp−Leuを示し、Z2はGlu、GlnまたはAspを示し、Z3は0〜10個のアミノ酸残基を示す。) (4)Asp−Leu−Z4−Leu−Arg−Leu (但し、式中、Z4はGlu、GlnまたはAspを示す。) (I−2−1)式(1)の転写抑制転換ペプチド 上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記X1で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、X1で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、N末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。 【0068】 このX1で表されるアミノ酸残基は、式(1)の転写抑制転換ペプチドを合成するときの容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。 【0069】 同様に、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記X3で表されるアミノ酸残基の数は少なくとも6個であればよい。また、X3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいては、C末端側には、6個以上の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていればよい。上記X3で表されるアミノ酸残基は、最低6個あれば上記機能を示すことができる。 【0070】 上記式(1)の転写抑制転換ペプチドにおいて、X1及びX3を除いた5個のアミノ酸残基からなるペンタマー(5mer)の具体的な配列は、配列番号41、42に示す。なお、上記X2がAsnの場合のアミノ酸配列が配列番号41に示すアミノ酸配列であり、上記X2がGluの場合のアミノ酸配列が配列番号42に示すアミノ酸配列である。 【0071】 (I−2−2)式(2)の転写抑制転換ペプチド 上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX1と同様、上記Y1で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、Y1で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドと同様、N末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。 【0072】 このY1で表されるアミノ酸残基は、式(2)の転写抑制転換ペプチドを合成するときの容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。 【0073】 同様に、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX3と同様、上記Y3で表されるアミノ酸残基の数は少なくとも6個であればよい。また、Y3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドと同様、C末端側には、6個以上の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていればよい。上記Y3で表されるアミノ酸残基は、最低6個あれば上記機能を示すことができる。 【0074】 上記式(2)の転写抑制転換ペプチドにおいて、Y1及びY3を除いた5個のアミノ酸残基からなるペンタマー(5mer)の具体的な配列は、配列番号43、44に示す。なお、上記Y2がPheの場合のアミノ酸配列が配列番号43に示すアミノ酸配列であり、上記Y2がIleの場合のアミノ酸配列が配列番号44に示すアミノ酸配列である。また、Y2を除いた4個のアミノ酸残基からなるテトラマー(4mer)の具体的な配列は、配列番号45に示す。 【0075】 (I−2−3)式(3)の転写抑制転換ペプチド 上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記Z1で表されるアミノ酸残基は、1〜3個の範囲内でLeuを含むものとなっている。アミノ酸1個の場合は、Leuであり、アミノ酸2個の場合は、Asp−Leuとなっており、アミノ酸3個の場合はLeu−Asp−Leuとなっている。 【0076】 一方、上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、上記式(1)の転写抑制転換ペプチドのX1等と同様、上記Z3で表されるアミノ酸残基の数は0〜10個の範囲内であればよい。また、Z3で表されるアミノ酸残基を構成する具体的なアミノ酸の種類は特に限定されるものではなく、どのようなものであってもよい。換言すれば、上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいては、C末端側には、1個の任意のアミノ酸または2〜10個の任意のアミノ酸残基からなるオリゴマーが付加されていてもよいし、アミノ酸が何も付加されていなくてもよい。 【0077】 このZ3で表されるアミノ酸残基は、式(3)の転写抑制転換ペプチドを合成するときに容易さからみれば、できるだけ短いほうがよい。具体的には、10個以下であることが好ましく、5個以下であることがより好ましい。Z3で表されるアミノ酸残基の具体的な例としては、Gly、Gly−Phe−Phe、Gly−Phe−Ala、Gly−Tyr−Tyr、Ala−Ala−Ala等が挙げられるが、もちろんこれらに限定される物ではない。 【0078】 また、この式(3)で表される転写抑制転換ペプチド全体のアミノ酸残基の数は、特に限定されるものではないが、合成するときに容易さからみれば、20アミノ酸以下であることが好ましい。 【0079】 上記式(3)の転写抑制転換ペプチドにおいて、Z3を除いた7〜10個のアミノ酸残基からなるオリゴマーの具体的な配列は、配列番号46〜54に示す。なお、上記Z1がLeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号46、47または48に示すアミノ酸配列であり、上記Z1がAsp−LeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号49、50または51に示すアミノ酸配列であり、上記Z1がLeu−Asp−LeuかつZ2がGlu、GlnまたはAspの場合のアミノ酸配列が、それぞれ配列番号52、53または54に示すアミノ酸配列である。 【0080】 (I−2−4)式(4)の転写抑制転換ペプチド 上記式(4)の転写抑制転換ペプチドは、6個のアミノ酸残基からなるヘキサマー(6mer)であり、その具体的な配列は、配列番号5、14、55に示す。なお、上記Z4がGluの場合のアミノ酸配列が配列番号5に示すアミノ酸配列であり、上記Z4がAspの場合のアミノ酸配列が配列番号14に示すアミノ酸配列であり、上記Z4がGlnの場合のアミノ酸配列が配列番号55に示すアミノ酸配列である。 【0081】 特に、本発明において用いられる転写抑制転換ペプチドは、上記式(4)で表されるヘキサマーのような最小配列を有するペプチドであってもよい。例えば、配列番号5に示すアミノ酸配列は、シロイヌナズナSUPERMANタンパク質(SUPタンパク質)の196〜201番目のアミノ酸配列に相当し、上述したように、本発明者が新たに上記転写抑制転換ペプチドとして見出したものである。 【0082】 (I−2−5)転写抑制転換ペプチドのより具体的な例 上述した各式で表される転写抑制転換ペプチドのより具体的な例としては、例えば、配列番号1〜17のいずれかに示されるアミノ酸配列を有するぺプチドを挙げることができる。これらオリゴペプチドは、本発明者が上記転写抑制転換ペプチドであることを見出したものである(例えば、特許文献7参照)。 【0083】 さらに、上記転写抑制転換ペプチドの他の具体的な例として、次に示す(e)または(f)記載のオリゴペプチドを挙げることができる。 (e)配列番号18または19に示されるいずれかのアミノ酸配列からなるペプチド。 (f)配列番号18または19に示されるいずれかのアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列からなるペプチド。 【0084】 上記配列番号18に示されるアミノ酸配列からなるペプチドは、SUPタンパク質である。また、上記の「配列番号18または19に示されるいずれかのアミノ酸配列において、1個または数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、及び/または付加されたアミノ酸配列」における「1個または数個」の範囲は特に限定されないが、例えば、1から20個、好ましくは1から10個、より好ましくは1から7個、さらに好ましくは1個から5個、特に好ましくは1個から3個を意味する。 【0085】 上記アミノ酸の欠失、置換若しくは付加は、上記ペプチドをコードする塩基配列を、当該技術分野で公知の手法によって改変することによって行うことができる。塩基配列に変異を導入するには、Kunkel法またはGapped duplex法等の公知手法またはこれに準ずる方法により行うことができ、例えば部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant−KやMutant−G(何れも商品名、TAKARA社製))等を用いて、あるいはLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキット(商品名、TAKARA社製)を用いて異変が導入される。 【0086】 また、上記機能性ペプチドは、配列番号18に示されるアミノ酸配列の全長配列を有するペプチドに限られず、その部分配列を有するペプチドであってもよい。 【0087】 その部分配列を有するペプチドとしては、例えば、配列番号19に示されるアミノ酸配列(SUPタンパク質の175から204番目のアミノ酸配列)を有するペプチドが挙げられ、その部分配列を有するペプチドとしては、上記(3)で表されるペプチドが挙げられる。 【0088】 (I−3)転写抑制転換ペプチドの他の例 本発明者は、さらに、上記モチーフの構造について検討した結果、新たに6つのアミノ酸からなるモチーフを見出した。このモチーフは、具体的には、次に示す一般式(5)で表されるアミノ酸配列を有するペプチドである。これらのペプチドも、上記転写抑制転換ペプチドに含まれる。 (5)α1−Leu−β1−Leu−γ1−Leu 但し、上記式(5)中α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示し、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、SerまたはHisを示し、γ1は、Arg、Gln、Asn、Thr、Ser、His、LysまたはAspを示す。 【0089】 なお、上記一般式(5)で表されるペプチドを、便宜上、次に示す一般式(6)、(7)、(8)または(9)で表されるアミノ酸配列を有しているペプチドに分類する。 (6)α1−Leu−β1−Leu−γ2−Leu (7)α1−Leu−β2−Leu−Arg−Leu (8)α2−Leu−β1−Leu−Arg−Leu (9)Asp−Leu−β3−Leu−Arg−Leu 但し、上記各式中、α1は、Asp、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示し、α2は、Asn、Glu、Gln、ThrまたはSerを示す。また、β1は、Asp、Gln、Asn、Arg、Glu、Thr、SerまたはHisを示し、β2はAsn、Arg、Thr、SerまたはHisを示し、β3は、Glu、AspまたはGlnを示す。さらに、γ2は、Gln、Asn、Thr、Ser、His、LysまたはAspを示す。 【0090】 上記式(5)〜(9)で表されるアミノ酸配列を有する転写抑制転換ペプチドのより具体的な例としては、配列番号20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、38、39、または40で表されるアミノ酸配列を有するペプチドを挙げることができる。このうち、配列番号27、28、30、32、38,39、または40のペプチドは、一般式(6)に示されるペプチドに相当し、配列番号20、23、33、34または35のペプチドは、一般式(7)に示されるペプチドに相当し、配列番号24、25、26、29、または31のペプチドは、一般式(8)に示されるペプチドに相当し、配列番号21または22のペプチドは、一般式(9)に示されるペプチドに相当する。 【0091】 また、上記一般式(5)〜(9)に示されるペプチド以外にも配列番号36または37で表されるアミノ酸配列を有する転写抑制転換ペプチドを用いることもできる。 【0092】 (I−4)キメラタンパク質の生産方法 上記(I−2)および(I−3)で説明した各種転写抑制転換ペプチドは、上記(I−1)で説明した転写因子と融合してキメラタンパク質とすることにより、当該転写因子を転写抑制因子とすることができる。したがって、本発明では、上記転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチドを用いて、転写因子をコードするポリヌクレオチドとのキメラ遺伝子を得れば、キメラタンパク質を生産させることができる。 【0093】 具体的には、上記転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチド(説明の便宜上、転写抑制転換ポリヌクレオチドと称する)と上記転写因子をコードするポリヌクレオチドとを連結することによりキメラ遺伝子を構築して、植物細胞に導入する。これによりキメラタンパク質を生産させることができる。なお、キメラ遺伝子を植物細胞に導入する具体的な方法については、後述する(II)の項で詳細に説明する。 【0094】 上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの具体的な塩基配列は特に限定されるものではなく、遺伝暗号に基づいて、上記転写抑制転換ペプチドのアミノ酸配列に対応する塩基配列を含んでいればよい。また、必要に応じて、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドは、転写因子をコードするポリヌクレオチドと連結するための連結部位となる塩基配列を含んでいてもよい。さらに、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドのアミノ酸読み枠と転写因子をコードするポリヌクレオチドの読み枠とが一致しないような場合に、これらを一致させるための付加的な塩基配列を含んでいてもよい。 【0095】 上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの具体例としては、例えば、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、92、94、96、98、100、102、104、106、108、110、112、114、116、118、120、122、124、126、128、130、または132に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。また、配列番号57、59、61、63、65、67、69、71、73、75、77、79、81、83、85、87、89、93、95、97、99、101、103、105、107、109、111、113、115、117、119、121、123、125、127、129、131、または133に示されるポリヌクレオチドは、それぞれ、上記例示されたポリヌクレオチドと相補的なポリヌクレオチドである。また、上記転写抑制転換ポリヌクレオチドの他の具体例としては、例えば、配列番号90、91に示されるポリヌクレオチドを挙げることができる。これらのポリヌクレオチドは、以下の表1に示すように配列番号1〜40に示されるアミノ酸配列に対応するものである。 【0096】 【表1】
【0097】 本発明で用いられるキメラタンパク質は、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結した上記キメラ遺伝子から得ることができる。したがって、上記キメラタンパク質には、上記転写因子の部位と、上記転写抑制転換ペプチドの部位とが含まれていればよく、その構成は特に限定されるものではない。例えば、転写因子と転写抑制転換ペプチドとの間をつなぐためのリンカー機能を有するポリペプチドや、HisやMyc、Flag等のようにキメラタンパク質をエピトープ標識するためのポリペプチド等、各種の付加的なポリペプチドが含まれていてもよい。さらに上記キメラタンパク質には、必要に応じて、ポリペプチド以外の構造、例えば、糖鎖やイソプレノイド基等が含まれていてもよい。 【0098】 (II)本発明にかかる八重咲き植物体の生産方法の一例 本発明にかかる植物体の生産方法は、上記(I)で説明したキメラタンパク質を植物体に導入し、八重咲き植物体を生産する過程を含んでいれば特に限定されるものではないが、本発明にかかる植物体の生産方法を具体的な工程で示せば、例えば、発現ベクター構築工程、形質転換工程、選抜工程等の工程を含む生産方法として挙げることができる。このうち、本発明では、少なくとも形質転換工程が含まれていればよい。以下、各工程について具体的に説明する。 【0099】 (II−1)発現ベクター構築工程 本発明において行われる発現ベクター構築工程は、上記(I−1)で説明した転写因子をコードするポリヌクレオチドと、上記(I−4)で説明した転写抑制転換ポリヌクレオチドと、プロモーターとを含む組換え発現ベクターを構築する工程であれば特に限定されるものではない。 【0100】 上記組換え発現ベクターの母体となるベクターとしては、従来公知の種々のベクターを用いることができる。例えば、プラスミド、ファージ、またはコスミド等を用いることができ、導入される植物細胞や導入方法に応じて適宜選択することができる。具体的には、例えば、pBR322、pBR325、pUC19、pUC119、pBluescript、pBluescriptSK、pBI系のベクター等を挙げることができる。特に、植物体へのベクターの導入法がアグロバクテリウムを用いる方法である場合には、pBI系のバイナリーベクターを用いることが好ましい。pBI系のバイナリーベクターとしては、具体的には、例えば、pBIG、pBIN19、pBI101、pBI121、pBI221等を挙げることができる。 【0101】 上記プロモーターは、植物体内で遺伝子を発現させることが可能なプロモーターであれば特に限定されるものではなく、公知のプロモーターを好適に用いることができる。かかるプロモーターとしては、例えば、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(CaMV35S)、アクチンプロモーター、ノパリン合成酵素のプロモーター、タバコのPR1a遺伝子プロモーター、トマトのリブロース1,5−二リン酸カルボキシラーゼ・オキシダーゼ小サブユニットプロモーター等を挙げることができる。この中でも、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターまたはアクチンプロモーターをより好ましく用いることができる。上記各プロモーターを用いれば、得られる組換え発現ベクターでは、植物細胞内に導入されたときに任意の遺伝子を強く発現させることが可能となる。 【0102】 上記プロモーターは、転写因子をコードする遺伝子と転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結したキメラ遺伝子を発現しうるように連結され、ベクター内に導入されていればよく、組換え発現ベクターとしての具体的な構造は特に限定されるものではない。 【0103】 上記組換え発現ベクターは、上記プロモーターおよび上記キメラ遺伝子に加えて、さらに他のDNAセグメントを含んでいてもよい。当該他のDNAセグメントは特に限定されるものではないが、ターミネーター、選別マーカー、エンハンサー、翻訳効率を高めるための塩基配列等を挙げることができる。また、上記組換え発現ベクターは、さらにT−DNA領域を有していてもよい。T−DNA領域は特にアグロバクテリウムを用いて上記組換え発現ベクターを植物体に導入する場合に遺伝子導入の効率を高めることができる。 【0104】 ターミネーターは転写終結部位としての機能を有していれば特に限定されるものではなく、公知のものであってもよい。例えば、具体的には、ノパリン合成酵素遺伝子の転写終結領域(Nosターミネーター)、カリフラワーモザイクウイルス35Sの転写終結領域(CaMV35Sターミネーター)等を好ましく用いることができる。この中でもNosターミネーターをより好ましく用いることできる。 【0105】 上記形質転換ベクターにおいては、ターミネーターを適当な位置に配置することにより、植物細胞に導入された後に、不必要に長い転写物を合成したり、強力なプロモーターがプラスミドのコピー数の減少させたりするような現象の発生を防止することができる。 【0106】 上記選別マーカーとしては、例えば薬剤耐性遺伝子を用いることができる。かかる薬剤耐性遺伝子の具体的な一例としては、例えば、ハイグロマイシン、ブレオマイシン、カナマイシン、ゲンタマイシン、クロラムフェニコール等に対する薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。これにより、上記抗生物質を含む培地中で生育する植物体を選択することによって、形質転換された植物体を容易に選別することができる。 【0107】 上記翻訳効率を高めるための塩基配列としては、例えばタバコモザイクウイルス由来のomega配列を挙げることができる。このomega配列をプロモーターの非翻訳領域(5’UTR)に配置させることによって、上記キメラ遺伝子の翻訳効率を高めることができる。このように、上記形質転換ベクターには、その目的に応じて、さまざまなDNAセグメントを含ませることができる。 【0108】 上記組換え発現ベクターの構築方法についても特に限定されるものではなく、適宜選択された母体となるベクターに、上記プロモーター、転写因子をコードする遺伝子、および転写抑制転換ポリヌクレオチド、並びに必要に応じて上記他のDNAセグメントを所定の順序となるように導入すればよい。例えば、転写因子をコードするポリヌクレオチドと転写抑制転換ポリヌクレオチドとを連結してキメラ遺伝子を構築し、次に、このキメラ遺伝子とプロモーターと(必要に応じてターミネーター等)とを連結して発現カセットを構築し、これをベクターに導入すればよい。 【0109】 キメラ遺伝子の構築および発現カセットの構築では、例えば、各DNAセグメントの切断部位を互いに相補的な突出末端としておき、ライゲーション酵素で反応させることで、当該DNAセグメントの順序を規定することが可能となる。なお、発現カセットにターミネーターが含まれる場合には、上流から、プロモーター、上記キメラ遺伝子、ターミネーターの順となっていればよい。また、組換え発現ベクターを構築するための試薬類、すなわち制限酵素やライゲーション酵素等の種類についても特に限定されるものではなく、市販のものを適宜選択して用いればよい。 【0110】 また、上記組換え発現ベクターの増殖方法(生産方法)も特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いることができる。一般的には大腸菌をホストとして当該大腸菌内で増殖させればよい。このとき、ベクターの種類に応じて、好ましい大腸菌の種類を選択してもよい。 【0111】 (II−2)形質転換工程 本発明において行われる形質転換工程は、上記(II−1)で説明した組換え発現ベクターを植物細胞に導入して、上記(I)で説明したキメラタンパク質を生産させるようになっていればよい。 【0112】 上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入する方法(形質転換方法)は特に限定されるものではなく、植物細胞に応じた適切な従来公知の方法を用いることができる。具体的には、例えば、アグロバクテリウムを用いる方法や直接植物細胞に導入する方法を用いることができる。アグロバクテリウムを用いる方法としては、例えば、Transformation of Arabidopsis thaliana by vacuum infiltration(http://www.bch.msu.edu/pamgreen/protocol.htm)を用いることができる。 【0113】 組換え発現ベクターを直接植物細胞に導入する方法としては、例えば、マイクロインジェクション法、エレクトロポレーション法(電気穿孔法)、ポリエチレングリコール法、パーティクルガン法、プロトプラスト融合法、リン酸カルシウム法等を用いることができる。 【0114】 上記組換え発現ベクターが導入される植物細胞としては、例えば、花、葉、根等の植物器官における各組織の細胞、カルス、懸濁培養細胞等を挙げることができる。 【0115】 ここで、本発明にかかる植物体の生産方法においては、上記組換え発現ベクターは、生産しようとする種類の植物体に合わせて適切なものを適宜構築してもよいが、汎用的な組換え発現ベクターを予め構築しておき、それを植物細胞に導入してもよい。すなわち、本発明にかかる植物体の生産方法においては、上記(II−1)で説明した組換え発現ベクター構築工程が含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。 【0116】 (II−3)その他の工程、その他の方法 本発明にかかる八重咲き植物体の生産方法においては、上記形質転換工程が含まれていればよく、さらに上記組換え発現ベクター構築工程が含まれていてもよいが、さらに他の工程が含まれていてもよい。具体的には、形質転換後の植物体から適切な形質転換体を選抜する選抜工程等を挙げることができる。 【0117】 選抜の方法は特に限定されるものではなく、例えば、ハイグロマイシン耐性等の薬剤耐性を基準として選抜してもよいし、形質転換体を育成した後に、植物体そのものの花の形態から選抜してもよい。例えば、花の形態から選抜する例としては、形質転換体の花の形態を、形質転換していない植物体の花の形態と比較する方法を挙げることができる(後述の実施例参照)。特に花の形態は、単に比較するだけでも選抜が可能になるとともに、八重咲き植物体の生産という本発明の効果そのものも確認することができる。 【0118】 本発明にかかる八重咲き植物体の生産方法では、上記キメラ遺伝子を植物体に導入するため、該植物体から、有性生殖または無性生殖により花の形態が八重咲きとなる子孫を得ることが可能となる。また、該植物体やその子孫から植物細胞や、種子、果実、株、カルス、塊茎、切穂、塊等の繁殖材料を得て、これらを基に該植物体を量産することも可能となる。したがって、本発明にかかる植物体の生産方法では、選抜後の植物体を繁殖させる繁殖工程(量産工程)が含まれていてもよい。 【0119】 なお、本発明における植物体とは、成育した植物個体、植物細胞、植物組織、カルス、種子の少なくとも何れかが含まれる。つまり、本発明では、最終的に植物個体まで成育させることができる状態のものであれば、全て植物体と見なす。また、上記植物細胞には、種々の形態の植物細胞が含まれる。かかる植物細胞としては、例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片等が含まれる。これらの植物細胞を増殖・分化させることにより植物体を得ることができる。なお、植物細胞からの植物体の再生は、植物細胞の種類に応じて、従来公知の方法を用いて行うことができる。したがって、本発明にかかる植物体の生産方法では、植物細胞から植物体を再生させる再生工程が含まれていてもよい。 【0120】 (III)本発明にかかる不稔性植物体の生産方法 本発明にかかる不稔性植物体の生産方法は、上記(I)で説明したキメラタンパク質を発現する遺伝子を植物体に導入し、不稔性植物体を生産する過程を含んでいれば、特に限定されるものではない。 【0121】 本発明において「不稔性植物体」には、雄しべおよび雌しべが形成されない完全不稔植物体の他、不和合性を持つ植物体、すなわち、雄しべおよび雌しべが形成されているが種子を形成できない植物体も含まれる。また、不完全な雄しべ様器官および/または雌しべ様器官を持つが、種子を形成できない植物体も含まれる。さらに、例えば、雄しべの形成が阻害され、花粉が全く形成されない不稔性植物体、雄しべは形成されるが、葯が形成されないために花粉が形成されない不稔性植物体、雄しべも葯も形成されるが、形成される花粉の量が少なく、葯の開裂に至らない不稔性植物体、形成された花粉が肥大化して互いにくっついてしまい、全く飛散しない不稔性植物体などの、いわゆる雄性不稔植物体も含まれる。 【0122】 上記キメラタンパク質をコードするキメラ遺伝子で目的の植物を形質転換すれば、複雑な遺伝子組み替え技術を利用することなく、非常に簡便に不稔性植物体を得ることができる。 【0123】 上記不稔性植物体は種子を形成することができない。また、完全不稔性植物体、雄性不稔植物体では、花粉の離散が生じない。したがって、遺伝子組み換え植物の環境への拡散を防止することができる。 【0124】 また、上記雄性不稔植物体は、自家受粉することができないが、異なった品種間での交配は可能である。したがって、雑種強勢を利用した交配に好適に用いることができ、優れた形質を有する雑種第一代の育種を効率的に行うことができる。 【0125】 また、雄性不稔は、確実に交雑種となるので、交配のために雄しべを除く必要がなく、多大な労力が軽減される。したがって、交配実験の効率化に適している。 【0126】 (2)本発明により得られる植物体とその有用性、並びにその利用 本発明にかかる八重咲き植物体の生産方法は、上記キメラタンパク質を植物体で発現させることによる。当該キメラタンパク質における転写因子由来のDNA結合ドメインが、標的遺伝子に結合する。転写因子は転写抑制因子に転換され、標的遺伝子の転写が抑制される。その結果、得られる植物体の葉の形状を改変することができる。したがって、本発明には、上記植物体の生産方法により得られる植物体も含まれる。 【0127】 (2−1)本発明にかかる植物体の具体例 ここで、本発明にかかる八重咲き植物体の具体的な種類は特に限定されるものではなく、花の形態を八重咲きとすることによりその有用性が高まる植物を挙げることができる。かかる植物は、被子植物であってもよいし裸子植物であってもよい。また、被子植物としては、単子葉植物であってもよいし、双子葉植物であってもよいが、双子葉植物であることがより好ましい。双子葉植物としては、離弁花亜綱であってもよいし、合弁花亜綱であってもよい。合弁花亜綱としては、例えば、リンドウ目、ナス目、シソ目、アワゴケ目、オオバコ目、キキョウ目、ゴマノハグサ目、アカネ目、マツムシソウ目、キク目を挙げることができる。また、離弁花亜綱としては、例えば、ビワモドキ目、ツバキ目、アオイ目、サガリバナ目、ウツボカズラ目、スミレ目、ヤナギ目、フウチョウソウ目、ツツジ目、イワウメ目、カキノキ目、サクラソウ目等を挙げることができる。 【0128】 (2−2)本発明の有用性 本発明によれば、八重咲き植物体を生産することができるが、本発明の有用性は特に限定されるものではなく、八重咲き植物体の生産により効果がある分野であればよい。かかる分野としては、新規な園芸品種の創出への応用等を挙げることができる。 【0129】 まず、新規な園芸品種の創出への応用例について説明すると、本発明に係る植物体の生産方法を用いることにより、上記機能性ペプチドが付加されたカセットベクターに転写因子の遺伝子を組み込み、植物細胞に導入するだけで、上記キメラタンパク質を植物細胞内で発現させることができ、転写因子の標的遺伝子の転写を容易に抑制することができる。また、上記転写因子の標的遺伝子の転写を抑制するという形質は、ドミナントであるので、交配やRNAi法等の従来技術で作製した変異体のように、劣勢ホモ個体を単離する必要がない。したがって、短期間に簡便、確実に八重咲き植物体を作出することができ、園芸上非常に有用である。 【0130】 また、本発明により生産された八重咲き植物体または不稔性植物体では、種子の形成が行われず、さらに、完全不稔性植物体、雄性不稔植物体では花粉の離散が起こらないので、遺伝子組み換え植物の環境への拡散を防ぐことができ、非常に安全である。 【0131】 さらに、本発明により生産された八重咲き植物体または不稔性植物体は、雑種強勢を利用した交配に好適に用いることができ、優れた形質を有する雑種第一代の育種を効率的に行うことができるため、農業上非常に有用である。 【0132】 (2−3)本発明の利用の一例 本発明の利用分野、利用方法は特に限定されるものではないが、一例として、本発明にかかる植物体の生産方法を行うためのキット、すなわち八重咲き植物体生産キットを挙げることができる。 【0133】 この八重咲き植物体生産キットの具体例としては、上記転写因子をコードするポリヌクレオチドと上記転写抑制転換ポリヌクレオチドとからなるキメラ遺伝子を含む組換え発現ベクターを少なくとも含んでいればよく、上記組換え発現ベクターを植物細胞に導入するための試薬群を含んでいればより好ましい。上記試薬群としては、形質転換の種類に応じた酵素やバッファー等を挙げることができる。その他、必要に応じてマイクロ遠心チューブ等の実験用素材を添付してもよい。 【実施例】 【0134】 以下、実施例及び図1ないし図7に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。 【0135】 〔実施例1〕 以下の実施例1においては、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターと、ノパリン合成酵素遺伝子の転写終止領域との間に、転写抑制転換ペプチドのひとつである12アミノ酸ペプチドLDLDLELRLGFA(SRDX)(配列番号17)をコードするポリヌクレオチドをAG遺伝子の下流に結合したポリヌクレオチドを組み込んだ組換え発現ベクターを構築し、これをシロイヌナズナにアグロバクテリウム法を用いて導入することにより、シロイヌナズナを形質転換した。 【0136】 <形質転換用ベクター構築用ベクターの構築> 形質転換用ベクター構築用ベクターであるp35SGを、図1に示すように、以下の工程(1)〜(4)のとおりに構築した。 【0137】 (1)インビトロジェン社製pENTRベクター上のattL1、attL2のそれぞれの領域をプライマーattL1−F(配列番号136)、attL1−R(配列番号137)、attL2−F(配列番号138)、attL2−R(配列番号139)を用いてPCRにて増幅した。得られたattL1断片を制限酵素HindIII、attL2断片をEcoRIで消化し、精製した。PCR反応の条件は、変性反応94℃1分、アニール反応47℃2分、伸長反応74℃1分を1サイクルとして、25サイクル行った。以下すべてのPCR反応は同じ条件で行った。 【0138】 (2)クローンテック社製(Clontech社、USA)のプラスミドpBI221を制限酵素XbaIとSacIで切断した後、アガロースゲル電気泳動でGUS遺伝子を除き、カリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーター(以下の説明では、便宜上、CaMV35Sと称する)とノパリン合成酵素遺伝子の転写終止領域(以下の説明では、便宜上、Nos−terと称する)を含む35S−Nosプラスミド断片DNAを得た。 【0139】 (3)以下の配列番号140、141の配列を有するDNA断片を合成し、90℃で2分間加熱した後、60℃で1時間加熱し、その後室温(25℃)で2時間静置してアニーリングさせ2本鎖を形成させた。これを上記35S−Nosプラスミド断片DNAのXbaI−SacI領域にライゲーションし、p35S−Nosプラスミドを完成させた。配列番号140、141の配列を有するDNA断片には、5’末端にBamHI制限酵素部位、翻訳効率を高めるタバコモザイクウイルス由来のomega配列、及び制限酵素部位SmaI、SalI、SstIがこの順に含まれる。 5'−ctagaggatccacaattaccaacaacaacaaacaacaaacaacattacaattacagatcccgggggtaccgtcgacgagctc−3'(配列番号140) 5'−cgtcgacggtacccccgggatctgtaattgtaatgttgtttgttgtttgttgttgttggtaattgtggatcct−3'(配列番号141) (4)このp35S−Nosプラスミドを制限酵素HindIIIで消化し、上記attL1断片を挿入した。さらにこれをEcoRIで消化し、attL2断片を挿入して、ベクターp35SGを完成させた。 【0140】 <転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ構築用ベクターの構築> 転写抑制転換ペプチドをコードするポリヌクレオチドを組み込んだ構築用ベクターであるp35SSRDXGを、図2に示すように、以下の工程(1)〜(2)のとおりに構築した。 【0141】 (1)12アミノ酸転写抑制転換ペプチドLDLDLELRLGFA(SRDX)をコードし、3’末端に終止コドンTAAを持つように設計した、以下の配列を有するDNAをそれぞれ合成し、70℃で10分加温した後、自然冷却によりアニールさせて2本鎖DNAとした。 5'−gggcttgatctggatctagaactccgtttgggtttcgcttaag−3'(配列番号142) 5'−tcgacttaagcgaaacccaaacggagttctagatccagatcaagccc−3'(配列番号143) (2)p35SGを制限酵素SmaI、SalIで消化し、この領域に上記のSRDXをコードする2本鎖DNAを挿入して、p35SSRDXGを構築した。 【0142】 <形質転換用ベクターの構築> 構築用ベクターのatt部位で挟まれたDNA断片と組換えるための、2つのatt部位を有する植物形質転換用ベクターであるpBIGCKHを、図3に示すように、以下の工程(1)から(3)のとおりに構築した。 【0143】 (1)米国ミシガン州立大学より譲渡されたpBIG(Becker, D. Nucleic Acids Res. 18:203,1990)を制限酵素HindIII、EcoRIで消化し、GUS、Nos領域を電気泳動で除いた。 【0144】 (2)インビトロジェン社から購入したGateway(登録商標)ベクターコンバージョンシステムのFragmentAをプラスミドpBluscriptのEcoRVサ イトに挿入した。これをHindIII−EcoRIで消化し、FragmentA断片を回収した。 【0145】 (3)回収したFragmentA断片を上記のpBIGプラスミド断片とライゲーションを行い、pBIGCKHを構築した。これらは大腸菌DB3.1(インビトロジェン社)でのみ増殖可能で、クロラムフェニコール耐性、カナマイシン耐性である。 【0146】 <構築用ベクターへのAGコード領域の組み込み> 上記構築用ベクターp35SSRDXGにシロイヌナズナ由来の転写因子AGタンパク質をコードするDNA配列または遺伝子を以下の工程(1)〜(3)のとおりに組み込んだ。 【0147】 (1)シロイヌナズナ完全長cDNA pda01673を鋳型として、以下のプライマーを用いて、終止コドンを除くAGポリヌクレオチド(At4g18960)のコード領域のみを含むDNA断片をPCRにて増幅した。 プライマー1 5'−atgaccgcgtaccaatcggagctaggagg−3'(配列番号144) プライマー2 5'− cactaactggagagcggtttggtcttggcg −3'(配列番号145) AGポリヌクレオチドのコードするアミノ酸配列およびAGポリヌクレオチドのcDNAをそれぞれ配列番号134および135に示す。 【0148】 (2)得られたAGコード領域のDNA断片を、図2に示すように、予め制限酵素SmaIで消化しておいた構築用ベクターp35SSRDXGのSmaI部位にライゲーションした。 【0149】 (3)このプラスミドで大腸菌を形質転換し、プラスミドを調整して、塩基配列を決定し、順方向に挿入されたクローンを単離し、SRDXとのキメラ遺伝子となったものを得た。 【0150】 <組換え発現ベクターの構築> 上記構築用ベクター上にあるCaMV35Sプロモーター、キメラ遺伝子、Nos−ter等を含むDNA断片を、植物形質転換用ベクターpBIGCKHに組換えることにより、植物を宿主とする発現ベクターを構築した。組換え反応はインビトロジェン社のGateway(登録商標)LR clonase(登録商標)を用いて以下の工程(1)〜(3)のとおりに行った。 【0151】 (1)まず、p35SSRDXG1.5μL(約300ng)とpBIGCKH4.0μL(約600ng)に5倍希釈したLR buffer 4.0μLとTE緩衝液(10mM TrisCl pH7.0、1mM EDTA)5.5μLを加えた。 【0152】 (2)この溶液にLR clonase4.0μLを加えて25℃で60分間インキュベートした。続いて、proteinaseK2μLを加えて37℃で10分間インキュベートした。 【0153】 (3)その後、この溶液1〜2μLを大腸菌(DH5a等)に形質転換し、カナマイシンで選択した。 【0154】 <組換え発現ベクターにより形質転換した植物体の生産> 次に、以下の工程(1)〜(3)に示すように、上記キメラ遺伝子を含むDNA断片をpBIGCKHに組み込んだプラスミドであるpBIG−AGSRDXで、シロイヌナズナの形質転換を行い、形質転換植物体を生産した。シロイヌナズナ植物の形質転換は、Transformation of Arabidopsis thaliana by vacuum infiltration(http://www.bch.msu.edu/pamgreen/protocol.htm)に従った。ただし、感染させるのにバキュウムは用いないで、浸すだけにした。 【0155】 (1)まず得られたプラスミド、pBIG−AGSRDXを、土壌細菌((Agrobacterium tumefaciens strain GV3101(C58C1Rifr)pMP90(Gmr)(koncz and Sahell 1986))株にエレクトロポレーション法で導入した。導入した菌を1リットルの、抗生物質(カナマイシン(Km)50μg/ml、ゲンタマイシン(Gm)25μg/ml、リファンピシリン(Rif)50μg/ml)を含むYEP培地でOD600が1になるまで培養した。次いで、培養液から菌体を回収し、1リットルの感染用培地(Infiltration medium、下表2)に懸濁した。 【0156】 【表2】
【0157】 (2)この溶液に、14日間育成したシロイヌナズナを1分間浸し感染させた後、再び育成させ結種させた。回収した種子を25%ブリーチ、0.02%Triton X−100溶液で7分間滅菌した後、滅菌水で3回リンスし、滅菌したハイグロマイシン選択培地(下表3)に蒔種した。 【0158】 【表3】
【0159】 (3)蒔種した約5000粒の種子から平均して50個体のハイグロマイシン耐性植物である形質転換植物体を得た。これらの植物から全RNAを調整し、RT−PCRを用いてAGSRDXの遺伝子が導入されていることを確認した。 【0160】 次に、pBIG−AGSRDXで形質転換した植物体について、図4から図7に基づいて説明する。図4(a)は、pBIG−AGSRDXで形質転換し、完全な八重咲きとなったシロイヌナズナの花を示し、図4(b)は、花の形態が八重咲きとなったシロイヌナズナの全体を表す図である。pBIG−AGSRDXで形質転換したシロイヌナズナの花は、供試した28個体のうち16個体において、図4(a)に示すように、完全な八重咲き植物体が形成された。図5(a)は、野生型のシロイヌナズナの花を示し、図5(b)は、AG変異体のシロイヌナズナの花を示す図である。野生型のシロイヌナズナが4つのがく、4つの花弁、6つの雄しべ、1つの雌しべを有するのに対し、本発明に係る方法で形質転換したシロイヌナズナは、雄しべが花弁に変化し、雌しべとなるwhorl4に新たな花が形成された。AG変異体も同様の構成となるが、本発明に係る方法で形質転換したシロイヌナズナは、AG変異体と比較して、花弁同士の間隔が狭く、均整の取れた美しい八重咲き植物体を形成した。図6は、pBIG−AGSRDXで形質転換した28個体中10個体の、シロイヌナズナの花を示す。上記10個体では、不完全ながら八重咲き植物体が形成された。図7は、pBIG−AGSRDXで形質転換した28個体中2個体のシロイヌナズナの花を示す。上記2個体では、野生型に近い形態の花が形成された。 【0161】 また、上記16個体は、雄しべも雌しべも形成されない完全不稔性植物体となった。上記10個体では、不完全な雄しべ様、雌しべ様器官が形成されたものの、種子は形成されなかった。すなわち、不稔性植物体が形成された。また、上記2個体においては雄しべおよび雌しべが形成されたが、種子形成数はきわめて少なかった。このように、pBIG−AGSRDXで形質転換された植物体は、すべて不稔性植物体となった。 【産業上の利用可能性】 【0162】 このように、本発明では、AG転写因子が標的とする遺伝子の転写を抑制することによって八重咲き植物体または不稔性植物体を得ることができる。それゆえ、本発明は、各種農業、園芸業、造園業、アグリビジネス等に利用可能であり、しかも非常に有用であると考えられる。 【図面の簡単な説明】 【0163】 【図1】実施例において用いる組換え発現ベクターを構築するための構築用ベクターの構築方法を示す工程図である。 【図2】実施例において用いる構築用ベクターp35SGに、転写抑制転換ペプチドSRDXをコードする遺伝子とAG遺伝子とを組み込む工程図である。 【図3】形質転換用ベクターpBIGCKHの構築方法を示す工程図である。 【図4】図4(a)は、pBIG−AGSRDXで形質転換し、完全な八重咲きとなったシロイヌナズナの花を示し、図4(b)は、花の形態が八重咲きとなったシロイヌナズナの全体を表す図である。 【図5】図5(a)は、野生型のシロイヌナズナの花を示し、図5(b)はAG変異体のシロイヌナズナの花を示す図である。 【図6】組換え発現ベクターpBIG−AGSRDXにより形質転換され、不完全な八重咲きとなったシロイヌナズナ花を示す図である。 【図7】組換え発現ベクターpBIG−AGSRDXにより形質転換され、野生型に近い形態となったシロイヌナズナの花を示す図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】503360115 【氏名又は名称】独立行政法人科学技術振興機構 【識別番号】301021533 【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
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| 【出願日】 |
平成16年8月6日(2004.8.6) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100080034 【弁理士】 【氏名又は名称】原 謙三
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| 【公開番号】 |
特開2006−42729(P2006−42729A) |
| 【公開日】 |
平成18年2月16日(2006.2.16) |
| 【出願番号】 |
特願2004−231544(P2004−231544) |
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