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【発明の名称】 葉菜類の栽培方法および装置
【発明者】 【氏名】庄子 和博

【氏名】羽生 広道

【要約】 【課題】低日照条件下で葉菜類を栽培しても徒長を起こさない葉菜類の栽培方法および装置を提供する。

【解決手段】徒長を伴う低日照条件下での葉菜類の栽培において、低日照条件の太陽光から波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を減らし、夜間に波長400〜500nmの青色光を照射する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
徒長を伴う低日照条件下での葉菜類の栽培において、低日照条件の太陽光から波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を減らし、夜間に波長400〜500nmの青色光を照射する葉菜類の栽培方法。
【請求項2】
完全人工光型の栽培施設での葉菜類の栽培において、昼間に相当する時間帯に波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を含まないか減らした照明光を照射し、夜間に相当する時間帯に波長400〜500nmの青色光を照射する葉菜類の栽培方法。
【請求項3】
遠赤色光遮蔽素材を用いて、昼間もしくは昼間に相当する時間帯に照射される光から波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を減らす請求項1もしくは2記載の葉菜類の栽培方法。
【請求項4】
前記青色光の光合成有効光量子束密度が80μmolm−2−1以上であり、該青色光の照射時間を一夜に少なくとも4時間以上とすることを特徴とする請求項1〜3いずれか1つに記載の葉菜類の栽培方法。
【請求項5】
前記青色光の照射時間帯は明け方に近い夜間である請求項1〜4に記載の葉菜類の栽培方法。
【請求項6】
葉菜類がアブラナ科である請求項1〜5いずれか1つに記載の葉菜類の栽培方法。
【請求項7】
太陽光併用型の栽培装置において、徒長を伴う低日照条件下では、昼間の太陽光から波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を減らすための遠赤色光遮蔽素材と、夜間に波長400〜500nmの青色光を照射するための光源を備える葉菜類の栽培装置。
【請求項8】
完全人工光型の栽培施設での葉菜類の栽培において、昼間に相当する時間帯に波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を含まないか減らした光を照射する光源と、夜間に相当する時間帯に波長400〜500nmの青色光を照射する光源を備える葉菜類の栽培装置。
【請求項9】
前記光源は、白色光光源と波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光成分の透過を抑制する遠赤色光遮蔽素材とから成るものである請求項8記載の葉菜類の栽培装置。
【請求項10】
前記光源は、波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を実質的に含まないものである請求項8記載の葉菜類の栽培装置。
【請求項11】
前記青色光の光合成有効光量子束密度が80μmolm−2−1以上であり、該青色光の照射時間を一夜に少なくとも4時間以上とすることを特徴とする請求項7〜10いずれか1つに記載の葉菜類の栽培装置。
【請求項12】
前記青色光の照射時間帯は明け方に近い夜間である請求項7〜11いずれか1つに記載の葉菜類の栽培装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、葉菜類の栽培方法および装置に関する。さらに詳述すると、本発明は、徒長を伴う低日照条件下での葉菜類の栽培に適した栽培方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
葉菜類の栽培は日照の影響を大きく受け、季節的な長雨や悪天候の連続による低日照条件下では、葉柄が過剰に伸長し、葉の厚さが薄くなる徒長現象を起こすことがある。このため、冬季に曇天が続く北陸地方のような低日照地域では、徒長を起こさずに葉菜類の栽培が困難なのが現状である。
【0003】
このような問題を解決できるものとして、例えば完全人工光型の栽培施設がある。このような施設においては、人工光を生育不良が発生しない強度に維持できるので、徒長を起こさず、商品価値の良好な葉菜類を栽培することが可能である。
【0004】
また、照明光を調整することにより、徒長を抑制することが提案されている(特許文献1)。この栽培方法は、完全人工光型もしくは太陽光併用型の栽培施設において栽培中のレタス、サラダナ、ホウレンソウ等の葉菜類に対して、光半導体を光源としてピーク波長600〜700nmの赤色光のみを成長ステージに合わせて光量を調節して照射することで徒長の抑制を図るものである。
【特許文献1】特開平09−37648号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、完全人工光型栽培装置において、人工光を生育不良が発生しない強度に維持するためには多大な電力コストがかかるため、商品価値の良好な葉菜類を栽培しても採算があわない。
【0006】
また、引用文献1の栽培技術において、徒長を抑制すると言われている波長600〜700nmの赤色光は、低日照条件下における太陽光にも当然含まれているが、徒長が発生してしまう。
【0007】
そこで、本発明は、低日照条件下においても徒長抑制と可食部乾物重の増加を導くことができる葉菜類の栽培方法および装置を提供すること、また低電力コストでも実現可能な完全人工光型栽培施設による葉菜類の栽培方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、低日照条件下における徒長現象については、徒長を抑制すると言われている波長600〜700nmの赤色光の照射強度が足りないか、もしくは、該赤色光成分以外に、徒長の抑制ではなくむしろ徒長を促進する光成分が存在するために徒長が起こるのではないかと考えた。
【0009】
かかる知見に基づいて本願発明者が鋭意研究を重ねた結果、昼間に照射される光から、波長700〜800nmの遠赤色光を減らすことで、低日照条件下においても徒長を抑制することが可能であることを見出した。さらに、夜間に波長400〜500nmの青色光を照射することで、徒長抑制と可食部乾物重の増加を同時に達成することが可能であることを見出した。
【0010】
請求項1記載の葉菜類の栽培方法は、低日照条件の太陽光から波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を減らすことで、徒長を抑制し、夜間に波長400〜500nmの青色光を照射することで、可食部乾物重の増加および葉の厚さの増加が起こるようにしている。
【0011】
遠赤色光を減らす方法としては、請求項3に記載したように、遠赤色光遮蔽素材を用いればよく、具体的には、市販の遠赤色光カットフィルムを用いればよい。遠赤色光は栽培中の葉菜類に対して、徒長を促すためのシグナルとしての役割を持っていると考えられる。よって、少なくとも徒長が促されない程度に昼間に照射される太陽光成分中から遠赤色光を遮蔽すればよく、50%程度遮蔽できればよいが、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは86%以上、最も好ましくは完全遮蔽である。
【0012】
請求項2記載の葉菜類の栽培方法は、完全人工光下での栽培方法である。完全人工光下においては、昼間に相当する時間帯に照射される光から遠赤色光を減らす方法として、光源として白色発光体を用いた場合には、該発光体と栽培中の葉菜類との間に遠赤色光遮蔽素材を用いればよいが、波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光成分を実質的に含まないような光源を用いても良く、例えば、青(400〜500nm)、緑(500〜600nm)、赤(600〜700nm)の発光体を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
白色発光体と栽培中の葉菜類との間に遠赤色光遮蔽素材を用いて、白色発光体中の遠赤色光成分を減らす場合においては、上述した場合と同様、遠赤色光遮蔽素材として具体的には、市販の遠赤色光カットフィルムを用いて、少なくとも徒長が促されない程度に昼間に相当する時間帯に照射される光成分中から遠赤色光を遮蔽すればよく、50%程度遮蔽できればよいが、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは86%以上、最も好ましくは完全遮蔽である。
【0014】
光源として、青(400〜500nm)、緑(500〜600nm)、赤(600〜700nm)の発光体を組み合わせて用い、波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を実質的に含まないようにする場合においては、波長700nmより長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を含まないことが理想的である。しかしながら、一般的に発光体には波長分布が存在するため、遠赤色光成分を若干含んでしまうことも有り得る。従って、赤色の発光体の波長分布が700nmより長波長の範囲まで広がっているときは、700nmより長波長の光成分におけるPPFDは少なくとも徒長が促されない程度の強さであればよく、600nm〜700nmの赤色光成分のPPFDに対して、700〜800nmの遠赤色光のPPFDが50%程度であればよいが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは14%以下、最も好ましくは0%である。
【0015】
尚、人工光源において、700nmより長波長の波長成分における光合成有効光量子束密度(以下、PPFDと略記する。)を徒長が促されない程度の強さにできないような場合には、これら発光体と栽培中の葉菜類との間に遠赤色光遮蔽素材を用いてもよい。
【0016】
本発明で用いる発光体は、例えば、蛍光ランプ、LED、有機ELであるがこれらに限定されるものではない。
【0017】
完全人工光下における昼に相当する時間は作物種によって変動するが、一般的には10〜14時間程度であればよく、それ以外の時間は夜に相当する時間としてもよい。
【0018】
さらに、請求項4に記載したように、夜間もしくは夜間に相当する時間帯における波長400〜500nmの青色光照射時間は少なくとも4時間以上であれば良い。また、そのPPFDは少なくとも80μmolm−2−1以上であればよい。PPFDを大きくして、より長時間青色光を照射すれば本発明の効果はより顕著に現れるが、電力コストの面から考えた場合には、PPFDを大きく設定することは望ましくない。
【0019】
前記青色光照射は、栽培中の葉菜類に対して、可食部乾物重の増加、葉の厚さの増加に作用し、その作用を促すことができる程度の青色光を照射すれば良い。本発明者等の実験によれば、照射の光エネルギー量は一夜に1.15molm−2程度以上確保されれば十分であることが確認された。従って、たとえ照射時間が短時間であっても一夜に1.15molm−2以上のエネルギーの確保が可能であれば、夜間における青色光照射の効果は得られると考えられる。
【0020】
ただし、PPFDが60μmolm−2−1以上、80μmolm−2−1未満では、植物によっては本発明の効果が顕著に現れない可能性があり、PPFDが40μmolm−2−1以上、60μmolm−2−1未満では、植物によっては、葉が照射中の光子を効率よく吸収しようとして葉の表面積を大きくしようとするために葉が広がってしまい、葉の厚い葉菜類を栽培することが困難になる可能性がある。
【0021】
よって、PPFDは少なくとも80μmolm−2−1以上とするのが好ましく、かつ葉菜類に照射されるエネルギー量が一夜に1.15molm−2程度以上となるようにすることが好ましい。
【0022】
また、請求項5に記載したように、青色光照射は明け方に近い夜間におこなうことでその効果が現れやすくなる。すなわち、青色光を明け方に近い夜間に照射することで、青色光照射のために投入されたエネルギーに対する見返りが大きくなる。
【0023】
なお、本発明における葉菜類に関しては特に限定はないが、具体例としてはアブラナ科、アカザ科、キク科の葉菜類が挙げられ、特にアブラナ科の葉菜類が好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、遠赤色光を減らすための遠赤色光遮蔽素材と青色光の照射装置を導入することで、低日照条件下でも徒長を起こさない葉菜類の周年栽培が可能となる。また、完全人工光栽培において本発明を適用する場合には、通常では徒長が起こるようなPPFDまで昼間の照明を減光しても、徒長を起こさない葉菜類の栽培が可能となり、電力コスト削減が実現可能となる。
【0025】
また、本発明の栽培方法は、PPFDを徒長が発生してしまうような低照度条件まで減光しても徒長を起こすことなく、可食部乾物重および葉の厚さが増加した葉菜類を得ることが可能である。完全人工光栽培施設では、徒長を起こさないようにするためにPPFDを300μmolm−2−1程度にしているところが多いが、本発明の栽培方法によれば、徒長が発生するようなPPFDでも可食部乾物重および葉の厚さが増加した葉菜類を得ることが可能であるため、従来と比べて照明コストのダウンが可能である。また、徒長が発生する照度条件は作物種および温度条件により異なり、例えば、栽培環境が高温でなければ、150μmolm−2−1程度のPPFDでも徒長を起こさない作物種も存在する。このような場合にも、本発明の栽培方法を適用すれば、さらにPPFDを低照度条件下にしても徒長を起こすことなく、可食部乾物重および葉の厚さが増加した葉菜類を得ることが可能となる。また、尚、昼間のPPFDを徒長を起こさないようなPPFDに設定し、夜間に青色補光することで、より商品価値の高い葉菜類を得ることも可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態例に基づいて詳細に説明する。
【0027】
図16に示した本発明の葉菜類の栽培方法を実施する太陽光併用型栽培装置の一実施形態を示す。この太陽光併用型栽培装置1は、昼間は自然光を取り入れ、夜間には人工光で補光を行うものであり、昼間の低日照条件下においては、太陽光から波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を遮蔽して徒長を抑制し、夜間に青色光を照射して可食部乾物重と葉の厚さを増加させるものである。太陽光併用型栽培装置1は、太陽光を透過可能な屋根2と、太陽光から波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を遮蔽するための遠赤色光遮蔽素材3と、葉菜類を覆うために遠赤色光遮蔽素材を送り出し、巻き取るための遠赤色光遮蔽素材供給装置4と、波長400〜500nmの青色光を照射するための青色光源5と、前記光源を調光するための調光装置8から成る。本実施形態においては、葉菜類6は栽培装置内にて栽培架台7に定植されて水耕栽培される。
【0028】
屋根2は、太陽光を透過可能な材質により形成し、少なくとも400nm以上の光成分を透過できる素材を用いればよい。例えば、通常温室で用いられているような塩化ビニル等を用いればよいが、これらに限定されるものではなく、上記条件を満たす素材であればよい。あるいは、完全に開閉可能にしておき、自然光を直接採取可能なようにしても良い。
【0029】
遠赤色光遮蔽素材3は、徒長が促されない程度に昼間に太陽光から波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を遮蔽することができればよく、50%程度遮蔽できればよいが、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは86%以上、最も好ましくは完全遮蔽である。尚、前記条件を満たすような遠赤色光遮蔽素材は市販されており、例えば三井プラテック株式会社製熱線遮蔽フィルム(YXE-5)を用いればよい。また、図16に示すように、遠赤色光遮蔽素材は屋根2の内側に設けられているが、太陽光から前記遠赤色光成分を遮蔽した光を葉菜類6に照射できる位置に配置されていれば良く、前記位置に限定されるものではない。
【0030】
遠赤色光遮蔽素材供給装置4は、葉菜類を覆うために遠赤色光遮蔽素材を送り出し、巻き取るための装置である。この装置はローラーを備えており、ローラーに遠赤色光遮蔽素材を巻き付けておき、ローラーを一方向に回転させることで前記遠赤色光遮蔽素材を送り出し、逆方向に回転させることで前記遠赤色光遮蔽素材を巻き取るようにすればよい。ローラーの駆動は、手動で行うようにしても良いし、モーター等により駆動させるようにしても良い。
【0031】
このように、遠赤色光遮蔽素材を送り出し、巻き取り可能にすることで、例えば、太陽光の照射強度が強く、低日照条件下とはならない場合には遠赤色光を遮蔽しなくても栽培中の葉菜類6は徒長は起こさないので、前記遠赤色光遮蔽素材を巻き取っておき、太陽光にさらさないことで、前記遠赤色光遮蔽素材の劣化等を防ぐことが可能となる。
【0032】
尚、図16中では、前記遠赤色光遮蔽素材を屋根2の内側にのみ設けてあるが、これだけでは遠赤色光を十分に遮蔽できない場合には、さらに側壁に遠赤色光遮蔽素材を用いても良い。
【0033】
青色光源5は波長400〜500nmの青色光を照射するための光源である。光源の光量調整は調光装置により行うことが好ましいが、ランプの本数、葉菜類6と前記白色蛍光ランプの間隔により調整しても良い。
【0034】
栽培中の葉菜類6には、青色光源5により、少なくともPPFDが80μmolm−2−1以上の青色光を一夜に少なくとも4時間以上照射するようにしておく。
【0035】
また、前記青色光の照射時間帯は明け方に近い夜間とすることで、青色光照射のために投入されたエネルギーに対して本発明の効果が顕著に現れるようにしている。
【0036】
以上により、栽培施設を利用した水耕栽培により栽培された葉菜類6が徒長を起こさずに、栽培される。尚、栽培方法は水耕栽培に限られるものではなく、例えば、土耕栽培により栽培しても良い。
【0037】
本発明の葉菜類の栽培方法はアブラナ科、アカザ科、キク科の葉菜類に適用可能であり、中でもアブラナ科の葉菜類への適用が効果的である。
【0038】
図17に本発明の葉菜類の完全人工光型栽培装置9の実施形態を示す。この完全人工光型栽培装置9と図16の太陽光併用型栽培装置1との相違点は、昼間に照射する光が太陽光ではなく人工光であるということと、外部からの光を遮断する屋根11を備えている点であり、それ以外の装置構成はすべて同様である。
【0039】
屋根11は、太陽光および外部から入射される光を遮断可能な素材を用いればよい。
【0040】
光源10は、白色蛍光ランプを用いる場合と、青色蛍光ランプ、緑色蛍光ランプおよび赤色蛍光ランプを組み合わせて用いる場合がある。
【0041】
白色蛍光ランプには遠赤色光成分が含まれているため、該遠赤色光成分を遮蔽する必要がある。遮蔽方法は上記の太陽光併用型栽培装置と同様に行えばよい。
【0042】
尚、前記白色蛍光ランプの光量は葉菜類が徒長を起こすような光量でもよい。これにより、低電力コストを実現することが可能である。ランプの光量の調整は調光装置により行うことが好ましいが、ランプの本数、葉菜類6と前記白色蛍光ランプの間隔により調整しても良い。
【0043】
尚、光源10として、波長700nmよりも長波長の光のうち、少なくとも波長700〜800nmの遠赤色光を実質的に含まない光源を用いても良い。具体的には、青色(出力波長域400〜500nm)、緑色(出力波長域500〜600nm)、赤色蛍光ランプ(出力波長域600〜700nm)を使用し、各光源10は調光装置により光量を調整可能とすればよい。尚、光量は、葉菜類6と光源10の間隔を調整することによって、また、青色、緑色、赤色蛍光ランプの本数によっても調整可能である。
【0044】
ここで、実質的に含まないとは、700nmより長波長の光成分のPPFDが少なくとも徒長が促されない程度の強さであることを意味しており、600nm〜700nmの赤色光成分のPPFDに対して、700〜800nmの遠赤色光のPPFDが50%程度であればよいが、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは14%以下、最も好ましくは0%である。
【0045】
また、青色、緑色および赤色蛍光ランプそれぞれの強度比は、太陽光に近い組成を達成できるような強度比にすればよいが、徒長を抑制しつつ成長可能な組成比であればよい。
【0046】
尚、光源10の配置位置は図17中の位置に限定されるものではなく、栽培装置9の側面にも配置しておき、葉菜類6に対してより効率的に光を照射するようにしてもよい。この場合、白色蛍光ランプを用いる際には、照射される光成分から遠赤色光成分を減らすように、葉菜類6と前記白色蛍光ランプの間に遠赤色光遮蔽素材を用いればよく、例えば前記遠赤色光遮蔽素材を栽培装置の側壁に配置すればよい。
【0047】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、図17における完全人工光型栽培装置の屋根11を太陽光透過可能なものにしておき、光源10には白色蛍光ランプを用いて、昼間に太陽光と人工光を併用するようにしてもよい。また、1年のうちに低照度の時期には本発明の栽培装置を利用するようにして、低照度ではない時期、すなわち徒長を起こさないような時期には、遠赤色光遮蔽素材を巻き取っておき、補光を行うことなく、通常通り栽培するようにしても良い。
【0048】
アブラナ科の葉菜類であるチンゲンサイ、ベカナ、コマツナを以下の方法で育成し、昼間に光質変換をした場合、夜間に光質変換をした場合、それらを併用した場合について、これら葉菜類に対する成長への影響を実験した。
【0049】
(実験装置)
人工光型グロースチャンバーを4台用意し、それぞれの空調室内には調光照明装置を設置した調光照明装置の光源は青色、緑色、赤色及び遠赤外の単色蛍光ランプ(FLR1250T6型、ニッポ電機)を組み合わせて用い、実験処理ごとにパワーユニットにて単色蛍光ランプの出力調整をおこなった。蛍光ランプのスペクトル光量子分布は分光放射計(MSR7000、オプトリサーチ)で測定し、PPFDは光量子センサー(LI−190B、Li−Cor Inc.)で計測し、栽培パネル上の9点の平均値として求めた。
【0050】
(植物材料の栽培方法)
上述した供試植物の種子をウレタンキューブに播種して発芽させ、白色蛍光ランプ(FLR110HW/A/100;三菱電機)のPPFDを110μmolm−2−1に設定してそれらに照射し、気温を23〜25℃に保って7日間育成した後に、最初の2枚の葉がほぼ同じサイズに展開した苗を選別して下記人工光型グロースチャンバー内に設置した湛液式水耕栽培ベッド(1000×600×200 mm)上の栽培パネルに苗を移動して21日間にわたり栽培した。水耕栽培液は大塚ハウス肥料A処方(大塚化学)を用いて作製し、電気伝導度を1.2dSm−1、pHを5.0〜6.5に調整して栽培をおこなった。また、栽培期間中のチャンバー内の気温は25℃一定とした。
【0051】
(光処理)
本実験で設定されたPPFDは青色光(B)、緑色光(G)および赤色光(R)のPPFDの和とし、基本条件(Control)における可視光成分の組成はBを30%、Gを40%、Rを30%とした。また、赤色光と遠赤色光の比率(R/FR)は1.0に設定した。遠赤色光カット(−FR)では基本条件から遠赤色光成分のみを86%削減させ、青色光プラス(+B)では、基本条件から青色光成分のみを67%増加させ、その増加分、緑色光を減少させた。
【0052】
(比較例1)昼間の光質変換
グロースチャンバー内のPPFDを曇雨天時近い値である100および150μmolm−2−1の2段階に設定し、昼間(6:00〜18:00、12hrs)に光質変換を行った場合の育成に及ぼす影響を調べた。表1に光処理条件を示す。表中の数字はPPFD(単位:μmolm−2−1)を示し、Bは青色光、Gは緑色光、Rは赤色光、FRは遠赤色光を示し、PPFDの値を維持するようにして、自然光に近いスペクトル組成のControl区(基本条件)、青色光を増やした+B区(青色光プラス)、遠赤色光を減らした−FR区(遠赤色光カット)、青色光を増やして遠赤色光を減らした+B−FR区の8処理区を設定した。
【0053】
【表1】


【0054】
(比較例2)夜間補光における光質変換
グロースチャンバー内のPPFDを35、100、150μmolm−2−1の3段階に設定し、夜間補光における光質変換の影響の有無を検討した。表2に光処理条件を示す。昼間は6:00〜16:00(10hrs)の時間帯とし、すべて自然光に近い光質に設定した。夜間補光は2:00〜6:00(4hrs)の時間帯に行い、その際のPPFDは昼間と同じレベルとした。夜間補光における光質は自然光に近いスペクトル組成のControl区、青色光を増やした+B区(青色光プラス)、遠赤色光を減らした−FR区(遠赤色光カット)、青色光を増やして遠赤色光を減らした+B−FR区の12処理区を設定した。
【0055】
【表2】


【0056】
(実施例1)夜間の青色補光と昼間の遠赤色光カット
夜間の青色補光と昼間の遠赤色光カットの併用効果について検討した。表3に光処理条件を示す。昼間(6:00〜16:00、10hrs)のPPFDは150μmolm−1に設定し、夜間(2:00〜6:00、4hrs)の青色補光におけるPPFDは80μmolm−2−1に設定した。自然光に近いスペクトル組成のControl区、+nB区(昼はControlと同様で夜間の青色補光を実施)、−FR+nB区(昼に遠赤色光を減らした組成で夜間の青色補光を実施)、+B−FR区の4処理区を設定した。
【0057】
【表3】


【0058】
(a)チンゲンサイ、ベカナへの昼間の光質変換:比較例1
昼間を6:00〜18:00の12時間、夜間を18:00〜6:00の12時間とした。昼間の光質変換については、PPFDを100または150μmolm−2−1とし、自然光に近いスペクトル組成をもつ光質にておこなった光処理を対照区とし、青色光の増やすか、遠赤色光を減らすか、もしくはこれらを併用しておこなった光処理を21日間おこなった。
【0059】
(b)チンゲンサイ、ベカナ、コマツナへの夜間補光における光質変換:比較例2
昼間を6:00〜16:00の10時間、夜間を16:00〜6:00の14時間とした。PPFDを35、100、150μmolm−2−1とし、昼間は自然光に近いスペクトル組成をもつ光質で光処理した。夜間補光は2:00〜6:00の4時間とし、その際のPPFDは昼間と同じレベルとした。自然光に近いスペクトル組成をもつ光質にておこなった光処理を対照区とし、青色光の増やすか、遠赤色光を減らすか、もしくはこれらを併用しておこなった光処理を21日間おこなった。
【0060】
(c)チンゲンサイ、ベカナ、コマツナへの夜間の青色補光と昼間の遠赤色光カット:実施例1
昼間を10時間(6:00〜16:00)、夜間を14時間(16:00〜6:00)とした。昼間のPPFDは150μmolm−2−1とし、夜間の青色補光におけるPPFDは80μmolm−2−1に設定した。夜間補光は4時間(2:00〜6:00)とし、その際のPPFDは昼間と同じレベルとした。昼間に自然光に近いスペクトル組成で光処理して夜間に青色補光をおこなわないものを対照区とし、昼間に自然光に近いスペクトル組成で光処理して夜間に青色補光をおこなうもの、昼間に遠赤色光を遮蔽して光処理し夜間に青色補光をおこなうもの、昼間に遠赤色光をカットして光処理し夜間に青色補光をおこなうもので21日間処理した。
【0061】
(植物の生長測定及び解析)
供試植物は光処理終了後に各区8株又は10株ずつ収穫し、草丈を測定してから葉(葉身)、茎(茎+葉柄)および根に分けた。総葉面積は画像処理装置を用いて測定した。また、葉の形態の違いを比較するために比葉面積(葉面積/葉乾物重)を計算した。最大葉については、葉長、葉幅および葉柄長を測定した。分別された材料は、通風乾燥機を用いて7日間60℃で乾燥し、葉(葉身)、茎(茎+葉柄)、根の乾物重を求めた。生育パラメータはTukeyの多重比較(p<0.05)により平均値間の有意差を検定した。
【0062】
(供試植物含有成分の分析)
光処理を開始して22日目に各区4株ずつ収穫し、株ごとに可食部(葉と茎)を細断してから新鮮重で2.0gずつ量り取り、直ちにアスコルビン酸(ビタミンC)およびβ−カロテン(ビタミンA)の定量用の抽出溶媒(20ml)に浸漬した。
【0063】
(β−カロテンの定量)
2.0gの細断試料を2%のピロガロールを含むアセトン溶液20mlに浸漬し、ポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA)を用いて氷中にて破砕した。その溶液をガラス濾紙(GF/A Whatman)で吸引濾過した後、アセトンを加えて100mlに定容してHPLCにて定量分析した。
HPLCカラムにはInertsil ODS−3(5μm、4.6×150mm;GL Sciences)を用い、移動相にはメタノールとクロロフォルムを4:1(v/v)に混合してから十分に脱気した溶液を使用した。ポンプ(L−7100、日立製作所)流量は1.5ml min−、カラム温度は30℃とし、UV検出器(SPD−6AV 島津製作所)を用いて波長450nmでピークを検出し、HPLC分析ソフト(D−7000型アドバンスドHPLCシステムマネージャー、日立製作所)にてクロマトグラム解析し、標品による検量線との比較により定量した。ここで、検量線とは、β−カロテンを種々の濃度でアセトンに溶かした溶液をクロマトグラムし、β−カロテン濃度に対してクロマトグラム強度をプロットして得た近似関数である。
【0064】
(アスコルビン酸の定量)
2.0gの細断試料を5%のメタリン酸を含む水溶液20mlに浸漬し、ポリトロンホモジナイザー(KINEMATICA)を用いて氷中にて破砕した。その溶液1.5mlをマイクロチューブに分取して10,000rpmで1分間遠心分離をして残渣を沈殿させた後、上澄み液に試験紙(リフレクトクァントアスコルビン酸テスト:Cat. No.16981−1M、関東科学)を浸し、小型反射式光度計(RQflex plus、Merck KGaA)を用いて定量した。
【0065】
(実験結果)
a.チンゲンサイおよびベカナへの昼間の光質変換による影響(比較例1)
昼間の光質変換が草丈、葉柄長、葉幅および葉長に及ぼす影響について調べた結果を図1に示す。チンゲンサイでは、PPFD150とPPFD100の両条件でControl区と+B区の間に有意な変化は認められなかったが、−FR区と+B−FR区においては、草丈、葉柄長および葉長が有意に減少した(図1A、1B)。尚、PPFD150とPPFD100はそれぞれPPFD150μmolm−2−1、PPFD100μmolm−2−1をそれぞれ意味しており、以降、単位を省略する。葉幅については、他の測定項目よりも減少の割合が小さい傾向にあった。最も減少した試験区は+B−FR区であり、Control区と比較して、PPFD150のとき、草丈が76%、葉柄長が75%、葉幅が83%、葉長が78%であった。PPFD100においても、草丈が73%、葉柄長が63%、葉幅が81%、葉長が78%であった。ベカナにおいても、PPFD150とPPFD100の両条件とも+B区では変化が認められなかった(図1C、1D)。PPFD150の場合には−FR区で葉柄長のみが減少し、+B−FR区では草丈、葉柄長および葉幅が減少した(図1C)。PPFD100の場合には、−FR区において草丈と葉柄長が減少し、+B−FR区では草丈、葉柄長、葉幅および葉長のすべてが減少した(図1D)。チンゲンサイの場合と同様に、ベカナにおいても+B−FR処理が最も変化が大きく、PPFD150ではControl区と比較して草丈が85%、葉柄長が59%、葉幅が90%であり、PPFD100では、草丈が77%、葉柄長が64%、葉幅が78%、葉長が82%であった。
次に昼間の光質変換が葉、茎および根の乾物重に及ぼす影響について調べた結果を図2に示す。チンゲンサイとベカナの両方において、葉の乾物重はPPFDの強さに関わらず、すべての処理においてControl区との有意差は認められなかった。また、根と茎の乾物重についても、+B区ではControl区との有意差は認められなかった。しかし、チンゲンサイでは、PPFD150の場合は−FR区で茎の乾物重が減少し、+B−FR区では茎と根の乾物重が減少した(図2A)。PPDF100の場合は、−FR区と+B−FR区の両方で茎と根の乾物重が減少した(図2B)。ベカナにおいても根の乾物重に変化は無かったが、茎の乾物重は、PPFD150の+B−FR区、PPFD100の−FR区と+B−FR区において減少した(図2C,2D)。チンゲンサイとベカナともに+B−FR処理による茎の乾物重の変化が大きく、Control区と比較してチンゲンサイではPPFD150の場合に50%、PPFD100の場合に39%に減少し、ベカナではPPFD150の場合に57%、PPFD100の場合に47%に減少した。 さらに、昼間の光質変換が比葉面積(葉の厚さ)に及ぼす影響について図3に示す。チンゲンサイではPPFD150の場合は+B−FR区のみで比葉面積の有意な減少が認められたが、PPFD100では、−FR区と+B−FR区の両方で減少した。一方、ベカナでは、PPFD100の場合にはいずれにおいても減少は認められなかったが、PPFD150の場合には−FR区と+B−FR区で減少した。
徒長抑制効果を判定するためのパラメータとして、葉柄長と葉の厚さ(比葉面積)を選び、チンゲンサイとベカナで比較したところ、両作物ともに昼間に遠赤外光を減らす処理をおこなうと、葉柄の伸長が抑制され(図12A)、葉の厚さが増加することがわかった(図12B)。この効果は青色光のみを増やす処理をおこなっても認められなかったが、2つの光処理を同時に施した場合には遠赤色光カットの単独処理よりも葉柄の伸長を抑制する効果が強く表れることが明らかになった。次に、可食部の乾物生産に及ぼす影響を比較してみたところ、+B−FR区では、両作物ともに可食部の乾物重がControl区よりも減少することが明らかになった(図13)。また、乾物重の減少が起こるのは主に葉柄・茎の部分であり、葉身の部分はあまり変化しないことも明らかになった。低日照条件下での栽培を想定した場合、可食部の乾物生産を減らすことは避けるべきであるので、昼間の光質変換による徒長抑制方法としては、遠赤色光の遮蔽を採用するのが良いと考えられる。また、これら結果から、PPFDが少なくとも100であれば、徒長抑制効果が認められることが明らかとなった。
【0066】
b.チンゲンサイ、ベカナおよびコマツナへの夜間補光における光質変換の影響(比較例2)
夜間補光の光質変換が草丈、葉柄長、葉幅、葉長に及ぼす影響について調べた結果を図4に示す。PPFD150の場合は、チンゲンサイの+B区において草丈、葉幅および葉長が減少し、−FR区では草丈、葉柄長、葉長が減少し、+B−FR区では草丈と葉長が減少した(図4A)。一方、ベカナとコマツナでは有意な変化は認められなかった(図4B、4C)。PPFD100の場合は+B−FR区だけに変化が認められ、チンゲンサイは草丈、葉柄長および葉長が減少し(図4D)、ベカナは草丈と葉長が減少し(図4E)、コマツナは草丈が減少した(図4F)。PPFD35の場合は、チンゲンサイでは、+B区において葉長が減少し、−FR区と+B−FR区では草丈、葉柄長、葉幅および葉長のすべてが減少した(図4G)。ベカナとコマツナでは+B−FR区だけに変化が認められ、草丈、葉柄長、葉幅および葉長のすべてが減少した(図4H、図4I)。次に、夜間補光の光質変換が葉、茎および根の乾物重に及ぼす影響について調べた結果を図5に示す。PPFD150とPPFD100の条件では、チンゲンサイ、ベカナおよびコマツナともに葉、茎および根の乾物重に変化は認められなかった(図5A〜5F)。PPFD35の場合、チンゲンサイでは−FR区において茎と根の乾物重が減少し、+B−FR区では茎の乾物重が減少した(図5G)。ベカナでは+B−FR区で根の乾物重が減少した(図5I)。さらに、夜間補光の光質変換とPPFDレベルが比葉面積に及ぼす影響について図6に示す。チンゲンサイでは、PPFD150とPPFD100の条件では変化が認められなかったが、PPFD35の場合は−FR区と+B−FR区において比葉面積が低下した。また、ベカナで変化が認められたのはPPFD150の場合だけであり、−FR区と+B−FR区で比葉面積が低下した。一方、コマツナではPPFDや夜間補光の光質変換に応じた比葉面積の変化はなかった。
夜間補光の光質変換とPPFDレベルが供試した葉菜類の主要な栄養成分であるβ−カロテンとアスコルビン酸(ビタミンC)の含量に影響を与えるかどうか調べたところ、Control区との比較において、チンゲンサイとコマツナでは夜間補光の光質に関わらずβ−カロテン含量に変化は認められなかった(図7A、7C)。ベカナでは、PPFD150の場合の−FR区においてのみβ−カロテン含量の増加が認められた(図7B)。一方、アスコルビン酸含量は、チンゲンサイとベカナでは夜間補光の光質に関わらず変化は認められなかったが(図8A、8B)、コマツナではPPFD150の場合に+B区と+B−FR区で減少し、PPFD100の場合は+B−FR区で減少した(図8C)。
チンゲンサイでは、PPFD150の夜間補光において、+B区、−FR区、+B−FR区ともにControl区よりも草丈が短くなったが、その原因は、+B区においては葉長の減少、−FR区においては葉柄長の減少によるものである(図4A)。PPFD100では、青色光プラスと遠赤色光カットの単独影響は示されなかったが(図4D)、PPFD35の場合では、+B区では葉長が減少し、−FR区では葉長と葉柄長が減少した(図4G)。基本的には、青色光プラスの影響は高PPFDで現れやすいものと考えられるが、青色光プラスの影響が中間のPPFD100では認められず、PPFD35で認められた理由については不明である。ベカナとコマツナにおいて、草丈に夜間補光の光質変換の効果が認められたのは+B−FR区だけであり、低PPFD条件でのみ伸長抑制効果が現れた(図4H、4I)。乾物重についても、ベカナでは全く影響が認められず、コマツナではPPFD35の+B−FR区においてのみ減少した(図5)。このようにベカナとコマツナでは伸長生長と乾物重に対する青色光プラスと遠赤色光遮蔽の単独影響が認められなかったことから、ベカナとコマツナは、チンゲンサイよりも夜間補光時の光質の影響を受けにくいものと考えられる。夜間補光の光質とPPFDレベルがβ−カロテンとアスコルビン酸の含量に影響を与えるか調べたところ、チンゲンサイとコマツナでは夜間補光の光質に関わらずβ−カロテン含量に変化はなく、ベカナの−FR区(PPFD150)においてのみβ−カロテン含量の増加が認められた。しかしながら、β−カロテン含量をPPFDレベルで比較した場合には、チンゲンサイ、ベカナ、コマツナともにPPFDが強いほどβ−カロテン含量が高まった。従って、チンゲンサイ、ベカナ、コマツナのβ−カロテン含量は夜間補光の光質には影響されないが、夜間補光のPPFDが高い方が多くなることが明らかになった。さらに、アスコルビン酸含量についても影響を調べたが、チンゲンサイとベカナでは夜間補光の光質による影響は認められず、コマツナで観察されたその含量の減少についてもそれほど大きな変化ではなかった。このことから、チンゲンサイ、ベカナ、コマツナのアスコルビン酸含量は夜間補光の光質変換にはあまり影響されないものと考えられる。
【0067】
c.チンゲンサイ、ベカナおよびコマツナへの夜間の青色補光と昼間の遠赤色光カットの影響(実施例1)
夜間の青色光補光と昼間の光質変換が草丈、葉柄長、葉幅、葉長に及ぼす影響について調べた結果を図9に示す。チンゲンサイでは、+nB区においては草丈、葉柄長、葉幅、葉長のすべてがControl区よりも増加した。一方、−FR+nB区では草丈と葉柄長が減少し、葉長と葉幅には変化が認められなかったが、−FR区では草丈、葉柄長、葉幅および葉長のすべてが減少した(図9A)。ベカナでは、+nB区において草丈、葉柄長、葉幅および葉長のすべてがControl区よりも増加した。−FR+nB区では葉幅と葉長が増加し、葉柄長は減少したが、草丈に変化は認められなかった。一方、−FR区ではControl区との有意差は認められなかった(図9B)。コマツナでは、+nB区において草丈、葉幅、葉長がControl区よりも増加した。コマツナの−FR+nB区ではチンゲンサイの場合と同様に、草丈と葉柄長が減少したが、葉長と葉幅には変化が認められなかった。−FR区では草丈、葉幅および葉柄長に減少が認められた(図9C)。次に、夜間の青色光補光と昼間の光質変換が、葉、茎、根の乾物重に及ぼす影響について調べた結果を図10に示す。チンゲンサイとコマツナではすべての処理区の葉、茎および根で同様の変化を示した(図10A、10C)。チンゲンサイの+nB区では、Control区よりも葉(126%)、茎(163%)、根(142%)の乾物重が増加し、コマツナの+nB区でも葉(134%)、茎(155%)、根(130%)の乾物重が増加した。−FR+nB区では葉の乾物重は増加したが(チンゲンサイ123%、コマツナ115%)、根の乾物重では変化が認められず、茎の乾物重は減少した(チンゲンサイ85%、コマツナ76%)、−FR区では葉の乾物重に変化は認められなかったが、茎の乾物重(チンゲンサイ67%、コマツナ65%)と根の乾物重(チンゲンサイ77%、コマツナ67%)は減少した。ベカナでは、+nB区で葉、茎、根の乾物重(それぞれ154%、193%、200%)が増加し、−FR+nB区においても葉、茎、根の乾物重(それぞれ163%、124%、211%)が増加した(図10B)。−FR区では葉、茎、根ともに変化が認められなかった。比葉面積に及ぼす影響を調べたところ(図11)、チンゲンサイでは、すべての光処理区において比葉面積が低下した。一方、ベカナとコマツナでは、−FR区で有意差は認められなかったが、+nB区と−FR+nB区において比葉面積の低下(葉の厚さの増加)が認められた。
葉柄長と葉の厚さ(比葉面積)および可食部乾物重について、チンゲンサイとベカナで比較したところ、両作物ともに夜間に青色光のみを照射したところ、地上部の乾物重と葉の厚さが増加するが(図15、図14B)、葉柄が伸びる徒長傾向も認められた(図14A)。そこで、昼間の遠赤色光カットを併用したところ、両作物ともに葉柄の伸長抑制(図14A)、葉の厚さの増加(図14B)、および地上部乾物重の増加(図15)が起こり、徒長の抑制と、可食部乾物重の増加が共に達成可能であることが明らかになった。
【0068】
以上の比較例1、2および実施例1の結果から、低日照条件におけるアブラナ科葉菜類の徒長抑制と可食部乾物重増加に有効な光質制御方法は、昼間に太陽光もしくは人工光から遠赤色光を減らし、夜間に青色光を照射することであることが明らかになった。尚、今回の実験条件下では、ベカナ、コマツナおよびチンゲンサイに関しては花芽は形成されないことがわかった。施設栽培の現場に遠赤色光を減らすための遠赤外光遮蔽素材と青色光の照射装置を導入すれば、このような光質制御が可能になると考えられる。なお、実施例にて検討対象としたチンゲンサイ、ベカナおよびコマツナは、一般家庭での消費量も比較的多いため、市場ニーズが高いが、本発明方法により栽培することで、冬季に曇天が続く北陸地方のような低日照地域における太陽光併用型栽培施設や、照明コストの問題から弱光にせざるを得ない完全人工光型植物工場の栽培品目としても期待できる作物である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】昼間の光質変換が草丈、葉柄長、葉幅および葉長に及ぼす影響について示すグラフである。
【図2】昼間の光質変換が葉、茎、根の乾物重に及ぼす影響について示すグラフである。
【図3】昼間の光質変換が比葉面積(葉の厚さ)に及ぼす影響について示すグラフである。
【図4】夜間補光の光質変換が草丈、葉柄長、葉幅および葉長に及ぼす影響について示すグラフである。
【図5】夜間補光の光質変換が葉、茎、根の乾物重に及ぼす影響について示すグラフである。
【図6】夜間補光の光質変換が比葉面積(葉の厚さ)に及ぼす影響について示すグラフである。
【図7】夜間補光の光質変換がβ−カロテン含量に及ぼす影響について示すグラフである。
【図8】夜間補光の光質変換がビタミンC含量に及ぼす影響について示すグラフである。
【図9】夜間の青色光補光と昼間の光質変換が草丈、葉柄長、葉幅および葉長に及ぼす影響について示すグラフである。
【図10】夜間の青色光補光と昼間の光質変換が葉、茎、根の乾物重に及ぼす影響について示すグラフである。
【図11】夜間の青色光補光と昼間の光質変換が比葉面積に及ぼす影響について示すグラフである。
【図12】昼間の遠赤色光カットと青色光プラスが徒長抑制に及ぼす影響(PPFD150)について示すグラフである。
【図13】昼間の遠赤色光カットと青色光プラスが可食部の乾物生産に及ぼす影響(PPFD150)について示すグラフである。
【図14】夜間の青色光補光と昼間の光質変換が徒長抑制に及ぼす影響(PPFD150)について示すグラフである。
【図15】夜間の青色光補光と昼間の光質変換が可食部の乾物生産に及ぼす影響(PPFD150)について示すグラフである。
【図16】太陽光併用型栽培装置の一例を示す図である。
【図17】完全人工光型栽培装置の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1 太陽光併用型栽培装置
3 遠赤色光遮蔽素材
5 青色光源
6 葉菜類
9 完全人工光型栽培装置
10 光源
【出願人】 【識別番号】000173809
【氏名又は名称】財団法人電力中央研究所
【出願日】 平成17年6月10日(2005.6.10)
【代理人】 【識別番号】100087468
【弁理士】
【氏名又は名称】村瀬 一美

【公開番号】 特開2006−340689(P2006−340689A)
【公開日】 平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願番号】 特願2005−171308(P2005−171308)