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【発明の名称】 樹木の損傷空洞部の補修構造
【発明者】 【氏名】森岡 泰彦

【要約】 【課題】樹木の損傷空洞部の補修において、補修後の浸水と腐食が防止でき、且つ外観の整った補修を成すことのできる補修構造の提供。

【解決手段】樹木の損傷空洞部内の腐食の除去と殺菌処理後に用いる補修材が、空洞内に充填する発泡性樹脂と該発泡性樹脂の固化後の整形面に順次塗布するFRPと塗料及び必要に応じて用いる硬質樹脂である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食の除去と殺菌処理を施した樹木の損傷空洞部内に発泡性樹脂を充填し、該発泡性樹脂の固化後に整形を施して成る整形面に、FRPをライニング(塗着)して成る樹木の損傷空洞部の補修構造。
【請求項2】
腐食の除去と殺菌処理を施した樹木の損傷空洞部内に発泡性樹脂を充填し、該発泡性樹脂の固化後に整形を施して成る整形面に、FRPをライニング(塗着)し、該FRPの固化後、その表面に当該樹木の樹皮色塗料を塗布してなる樹木の損傷空洞部の補修構造。
【請求項3】
腐食の除去と殺菌処理を施した樹木の損傷空洞部内に発泡性樹脂を充填し、該発泡性樹脂の固化後に整形を施して成る整形面に、FRPをライニング(塗着)し、該FRPの固化後、その表面にFRPを保護する硬質樹脂を塗布して成る樹木の損傷空洞部の補修構造。
【請求項4】
腐食の除去と殺菌処理を施した樹木の損傷空洞部内に発泡性樹脂を充填し、該発泡性樹脂の固化後に整形を施して成る整形面に、FRPをライニング(塗着)し、該FRPの固化後、その表面にFRPを保護する硬質樹脂を塗布し、更に、前述の硬質樹脂の表面に、当該樹木の樹皮色塗料を塗布して成る樹木の損傷空洞部の補修構造。
【請求項5】
発泡性樹脂が、発砲ウレタンである請求項1〜4に記載の樹木の損傷空洞部の補修構造。
【請求項6】
請求項5に記載の発泡ウレタンが、その表面に凸部をもつ補強骨材を所要数内包している樹木の損傷空洞部の補修構造。
【請求項7】
硬質樹脂が、ゲル状コーテング樹脂である請求項3、4記載の樹木の損傷空洞部の補修構造。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木の幹や枝等に生じた損傷空洞部を補修する補修構造に関する。
【背景技術】
【0002】
初期の損傷空洞部補修では、空洞部内の腐食部分の除去と防腐(殺菌)処理後に、セメントを主体とするモルタルを充填する方法が多く用いられていた。しかし、その後では、合成樹脂や繊維類を混合したモルタルや発泡性樹脂の混合材を空洞内に充填する技術が見られるようになった。また、補修材の空洞内への充填は行わず、空洞内壁に前記補修材を塗布(塗着)する技術や空洞開口部を前記補修材や板状部材で閉塞する技術を用いているものもある。
【0003】
文献では、樹木の損傷空洞部内の腐食の除去と防腐処理後、空洞部内に充填又は空洞内面に塗布する補修材として、セメントを主体に硬化促進剤とアクリル系ポリマーを配合したモルタルを用いたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また、エポキシ系樹脂を主成分に、発泡性ポリマー、粘調材、無機鉱物等を混合した補修材を用い、損傷空洞部の状況により、充填か開口部の閉塞かを選択しているものもある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】 特許第3208565号公報
【特許文献2】 特開平9−107819号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来技術では、補修の形態の如何を問わず、樹木の木部と補修面とが略同一面となるように補修し、その後、補修面に樹皮が被覆するのを待つものである。しかし、その完了までの期間が長いため、自然の力や人為的所業(いたずら等)によっては、意図する補修結果にならないことも多い。
【0006】
即ち、セメントを主体に他の材料も混合した補修材では、空洞内に補修材の充填しない空隙部分が生じやすく、またモルタル自身にも、ひび割れや剥離等が発生し、これが水の浸水を許し、外部からは分からない腐食が起こることとなる。
また、発泡性樹脂やその他の合成樹脂が配合された補修材では、その混合に均一性がないので、硬化に斑が生じ、ひびや剥離ができやすい。これも、前述同様、水の浸水と腐食を許すこととなる。
【0007】
前述の従来技術では、補修材及び補修構造の強度も劣るので、人の集まる公園、神社、学校等の樹木では、補修しても、人為的所業(いたずら等の人力)による損壊が発生しやすい。従って、本発明においては、補修の外側となる補修材は、空洞内の密閉性と共にその対候性や強靭性を重視したい。また、補修後の樹幹等の外観(美観)にも配慮したい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述の課題を解決する本発明の補修構造は、いくつかの補修材を混合又は配合して成すものとはせず、単一の補修材を順次充填又は塗布(ライニング、塗着)する補修構造をもつものとする。即ち、樹木の損傷空洞部の全てに充填ができ、且つ、その内面に確実に付着する発泡性樹脂と、その発泡性樹脂の固化後に成した整形面にライニング(塗着)するFRP(ガラス繊維強化プラスチック)とを補修構造の主体(核)と成し、更に、必要に応じ、補修後の外観を整える該樹木の樹皮色塗料や前記FRPを保護する硬質樹脂を塗布する補修構造を採用する。なお、本発明の実施にあたっては、どの形態でも、事前に、損傷空洞部の腐食の除去と防腐処理をなすことは言うまでもない。
【0009】
充填材として使用可能な発泡性樹脂は多くあるが、充填時に高い発泡圧(発泡倍率)が得られ、且つ、空洞内に空隙(充填しないところ)を生じさせない樹脂がよい。発泡性樹脂の固化後、樹皮表面に似せて整形し、その整形面にFRPをライニング(塗着)する。これにより、先に充填した発泡性樹脂は保護されることになる。
【0010】
また、樹木の損傷空洞部の補修構造が、損傷空洞部内に充填する発泡性樹脂と、その固化後の整形面にライニングするFRPで構成される外、該FRPのライニング面に、該樹木の樹皮色塗料を塗布する構造のものとしてもよい。
【0011】
更に、補修構造を形成する補修材として、損傷空洞部内に充填する発泡性樹脂と、その固化後の整形面にライニングするFRPの外、該FRPのライニング面に塗布(上塗り)してFRPを保護する硬化樹脂を用いた構成のものであってもよい。
また、前記硬質樹脂の塗布面に、更に、当該樹木の樹皮色塗料を塗布(上塗り)した構造のものとしてもよい。なお、塗料は、つや消し機能に優れた水性塗料がのぞましい。
【0012】
更に、本発明では、前述の発泡性樹脂として、発泡性や付着性に優れた発泡ウレタンを用いることを可とする。
【0013】
また、樹木の幹又は枝等の損傷空洞部に、広がり(空洞の長さと径が大)があるとき、充填する発泡ウレタン中に、強靭な金属又は木材等による補強骨材を所要数内包させた補修構造にすることも可とする。補強骨材は、凹凸又は突起等を、その表面に有することが望ましい。これにより強風や積雪時における樹木の倒木(折損)等が防止できる。
【0014】
更に、本発明では、前述の硬質樹脂が、ゲル状コーテング樹脂であることを可とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の効果を請求項毎に説明する。
請求項1では、腐食部分の除去と防腐処理後の損傷空洞部内に、発泡性樹脂を他の補修材と混合することなく単一で発泡させながら充填するので、他とは異なり、空洞部内への充填性と付着性にすぐれ、ひびや剥離の発生が少ない利点がある。従って、水の浸入と腐食の防止ができる効果は大である。また、充填後(固化後)の整形も、手持ちの刃物で、簡易にできる利点がある。この効果は、発泡性樹脂が発泡ウレタンであるとき、更にたしかなものとなる。
【0016】
また、整形された発泡性樹脂の整形面にライニングされるFRPは、樹脂中で衝撃強度が最大と言われ、自然や人為的所業(人力によるいたずら等)による衝撃から補修箇所を守る効果は大きい。これは、FRPによる他に類のない大きな効果である。
【0017】
なお、発泡性樹脂(発泡ウレタン)とFRPによる上述の補修構造とその効果は、請求項2以下でも同様であるので、これらに関する説明は、以下(請求項2以下の効果)では省略する。
【0018】
請求項2で示す補修構造におけるFRPの表面に塗布する当該樹木の樹皮色塗料はFRPへの着色性もよく、樹皮の被覆が完了するまでの期間におけるFRPの表面風化の防止と補修後の樹幹を違和感なく自然に見せる効果がある。この効果は、ツヤ消し機能を有する水性塗料が有効である。
【0019】
請求項3の補修構造におけるFRPに塗布する硬質樹脂は、硬化すると石のような硬さになり、これにより、樹皮の被覆完了までのFRPの表面風化の防止と補修箇所を強化する効果を発揮する。また、硬化樹脂を塗布すると、その表面が平滑になるので、被覆する樹皮の進行もスムーズになる。
【0020】
請求項4で示す補修構造は、請求項3で示す補修構造の効果の外に、硬質樹脂の塗布による効果で、塗料の着色性が向上し、補修後の外観(美観)を高めることができる。
また、請求項4の補修構造は、樹幹等の損傷が著しく、且つ樹勢が弱いため、補修を成しても、その後の樹皮の被覆が十分に期待できない(回復困難)と判断される損傷部の補修と模造樹皮の形成に有効である。
【0021】
本発明に用いる発泡性樹脂として、請求項5に記載のように発泡ウレタンを用いると、その発泡調整によって発生する発泡圧の高さから、空洞内の小さな空隙にも充填ができる利点があり、また、付着力も他に比べて高く、剥離しない利点がある。従って、長年月にわたり防水と防腐が可能となるその効果は大きい。
【0022】
また、発泡ウレタンに、所要数の補強骨材を内包させた請求項6で示す補修構造は、単に損傷空洞部の補修にとどまらず、強風や積雪等の外圧(重さ)によって起こる倒木や折損等を防止する効果がある。即ち、発泡ウレタンは、補強骨材を内包したまま、損傷空洞部内の小さな空隙にまで、きっちり充填されているので、強風や積雪の外圧(重さ)に負けない強さをもってこれに対峙することができる。
【0023】
また、請求項7で示すように、硬質樹脂がゲル状コーテング樹脂であるときは、石のように硬く硬化するので、補修後のFRPの風化を防止する効果が大きい。また、塗料の上塗りがしやすい上に、発色性を高める効果がある。
【0024】
本発明では、いくつかの補修材を混合又は、配合して充填又は塗布する先行の補修技術は採らず、補修材は、全て単一材のままで順次充填又はライニングあるいは塗布する形態を採るので、従来みられたトラブルからは解放されたものとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の補修構造における構成とその作用等について、以下図を参照して説明する。なお、本発明において、その核になる補修材である発泡性樹脂(発泡ウレタン)とFRPは本発明の全ての形態で登場するので、重複説明を避けるため、その説明は、図1で示す形態でのみとし、他の形態での説明は省略する。また、説明の必要性から、図の部分によって、大きな厚みがないにもかかわらず、寸法を大きくして記しているところがある。(例えば、樹皮4や塗料7及び硬質樹脂8など)。また、図において、同じ機能をもつ部分、材料等には、同じ符号をつけている。
【0026】
図1は、請求項1で示す樹木1の損傷空洞部2の補修材として、発泡性樹脂5とFRP6を用いて実施した場合の補修構造を示す縦断面図であるが、その実施にあたっては、事前に、樹木1の損傷空洞部2内の腐食の除去と防腐処理をすることは、言うまでもない。
【0027】
図1における損傷空洞部2内への発泡性樹脂5の充填と、その次の作業となるFRP6のライニングに際しては、発泡中の発泡性樹脂5と、その後ライニングするFRP6から樹皮4(形成層も含む)を守るために、空洞開口部周縁の樹皮4に、マスキングテープを粘着することがあってもよい(図は省略)。
また、発泡性樹脂5は各種あるが、本発明では、その中でも発泡ウレタン5aを最適とし、以下では、これを用いた場合を例に説明する。
【0028】
発泡ウレタン5aは、A液(主剤のウレタン樹脂)とB液(硬化剤)を混合して損傷空洞部2内に注入し発泡させ、その発泡圧によって損傷空洞部2内の空隙の細部まで充填させ、その後の固化を待つ。固化後、樹皮4面より外方に突出した発泡ウレタン5aは、樹木1の木部面11よりも3mm程度凹む位置まで刃物で削除しながら樹皮4に似せて整形し、次に、その整形面10に約3mmの厚さでFRP6のライニング(塗着)を行い、補修面12を形成する。FRP6のライニングは、布状ガラス繊維2枚を不飽和ポリエステルで塗り固めた形状のものとする。
以上が、図1における補修構造(構成)であるが、その後は、樹皮4の形成層の細胞分裂による樹皮4の補修面12への被覆を待つものとなる。
【0029】
なお、発泡性樹脂5としての発泡ウレタン5aは、その発泡倍率が気温25℃で約50倍、3〜5℃で約25倍で、硬化(固化)時間も夏場15分、冬場30分程度で、空洞内面への付着力が大きい上に、固化後の剥離が少ない特徴がある。
【0030】
また、発泡ウレタン5aの保護のために、ライニングするFRP6は、合成樹脂中で最大の衝撃強度を持つと言われ、若干表面風化は生じるものの、人為的所業(人力によるいたずら)等から補修部を守る強靭な皮膚の役目を果たしている。
【0031】
図2は、図1で示す発泡性樹脂5の充填とFRP6のライニング後、更に、FRP6表面の風化防止と補修面の外観(美観)確保のために、当該樹木の樹皮色に似た塗料7を塗布する補修構造を示している。塗料7は、つや消し機能が生かせる水性塗料がのぞましく、これにより、補修後の樹木表面を違和感のないものにすることができる。なお、塗料の塗布には、毛筆又は刷毛を用いる。
【0032】
図3は、図1で示す補修構造におけるFRP6の表面に、補修材として硬質樹脂8を塗着(上塗り)する補修構造を示したものである。ここでは、硬質樹脂8としてゲル状コーテング樹脂8aの使用がのぞましく、これにより、その塗着面は平滑で、石のように硬くなる。また、耐酸性が大きく、酸性雨や風化からFRP6を守るはたらきをする。
【0033】
図4は、図3で示す補修構造における硬質樹脂8の表面に、更に、補修材として、当該樹木の樹皮色の塗料7を前記同様に塗布した補修構造を示したものである。塗料7は、水性塗料が望ましく、この塗布により、補修後の外観に違和感を感じさせないものにすることができる。
【0034】
図5は、図1〜4で示す補修構造における発泡性樹脂5が、付着力にすぐれ剥離の生じにくい発泡ウレタン5aである場合を図1を例に示した図である。
【0035】
図6は、樹木の損傷空洞部2内に充填する発泡ウレタン5a中に、例えば、凸部をもつ金属又は木材等から成る補強骨材9を所要数内包させ、強風や積雪等の圧力や重さによる樹木の倒木や折損を防止する補修構造である。この補修構造は、損傷空洞部2が、長く且つ広い空洞であるときに有効であるが、その実施に当たっては損傷空洞部2内に、事前に、所要数の補強骨材9を配設し、これに発泡ウレタン5aを注入発泡させ、補強骨材9を内包させる。
これにより、発泡ウレタン5aは、補強骨材9をしっかりと内包しながら、損傷空洞部2内の細かな空隙にまで充填し、硬化しているので、強風や積雪等による外圧(重さ)にも対峙し、倒木や折損から樹木を守ることとなる。
【0036】
図7は、図3、4で示す補修構造における硬質樹脂8がゲル状コーテング樹脂8aである場合を図3を例にしめしたものである。ゲル状コーテング樹脂8aは、簡易に筆塗りができる上に、化学的にも性質が安定しているので、FRP6に対するコーテング材として最適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の補修材による補修構造を示す縦断面図である。
【図2】本発明の補修材による補修構造を示す縦断面図である。
【図3】本発明の補修材による補修構造を示す縦断面図である。
【図4】本発明の補修材による補修構造を示す縦断面図である。
【図5】図1を例に、本発明の補修構造を示す縦断面図である。
【図6】本発明の補修材による補修構造を示す縦断面図である。
【図7】図3を例に、本発明の補修構造を示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 樹木
2 損傷空洞部
3 木部
4 樹皮
5 発泡性樹脂
6 FRP
7 塗料
8 硬質樹脂
9 補強骨材
10 整形面
11 木部面
12 補修面
5a 発泡ウレタン
8a ゲル状コーテング樹脂
【出願人】 【識別番号】505232058
【氏名又は名称】森岡 泰彦
【出願日】 平成17年5月24日(2005.5.24)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−325568(P2006−325568A)
【公開日】 平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願番号】 特願2005−179844(P2005−179844)