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【発明の名称】 イチゴの周年栽培方法
【発明者】 【氏名】村井 亨雄
【住所又は居所】栃木県下都賀郡国分寺町柴262−10 株式会社誠和小金井工場内

【氏名】杉山 淳哉
【住所又は居所】栃木県下都賀郡国分寺町柴262−10 株式会社誠和小金井工場内

【要約】 【課題】イチゴの周年に亘る収穫を可能にする。

【解決手段】本圃において低温短日環境を継続することにより、子株の花芽分化を本圃において継続的に誘導させることができる。このため、秋季の後半から春季にかけてはもとより、夏季や秋季前半においても連続出蕾が可能となり、周年に亘り果実を収穫することができる。また、親株から切り離した子株を直接本圃に定植して低温短日環境におくことにより、仮植作業が不要となり、栽培作業、栽培設備の簡素化に資する。また、仮植床から本圃へ移植する従来の栽培方法と比較し、植え替えによる根のストレスもなくなる。なお、仮植することなく本圃に定植する場合には、子株を、所定長のランナーを付随させた状態で親株から切り離し、このランナーの先端を本圃の培地に差し込んで定植することが望ましい。これにより、ランナーを介して養水分が補給されるため、仮植しなくても高い活着率を期待できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
温室内で一季成り性品種のイチゴを栽培する方法であって、
本圃に定植した子株を継続的に低温短日環境におき、本圃定植後において花芽分化を継続的に誘導させ、周年に亘り果実を収穫可能としたことを特徴とするイチゴの周年栽培方法。
【請求項2】
温室内で一季成り性品種のイチゴを栽培する方法であって、
親株から切り離した子株を、仮植することなく、直接、本圃に定植すると共に、本圃に定植した前記子株を継続的に低温短日環境におき、本圃定植後において花芽分化を継続的に誘導させ、周年に亘り果実を収穫可能としたことを特徴とするイチゴの周年栽培方法。
【請求項3】
温室内で一季成り性品種のイチゴを栽培する方法であって、
所定長のランナーを付随させた状態で親株から切り離し、付随するランナーの先端を本圃の培地に差し込んで、仮植することなく、直接、本圃に定植すると共に、本圃に定植した前記子株を、継続的に低温短日環境におき、本圃定植後において花芽分化を継続的に誘導させ、周年に亘り果実を収穫可能としたことを特徴とするイチゴの周年栽培方法。
【請求項4】
前記子株は、実質的に未発根の状態で採苗されたものであることを特徴とする請求項3記載のイチゴの周年栽培方法。
【請求項5】
前記子株には、10cm以上の長さのランナーを付随させた状態で採苗されたものであることを特徴とする請求項4記載のイチゴの周年栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、イチゴの栽培方法に関し、より詳しくは、一季成り性品種のイチゴを周年に亘り収穫するのに適するイチゴの周年栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、一季成り性品種のイチゴ栽培は、3〜4月頃に親株を定植し、6〜7月頃までランナー(子株)を増殖させて採苗し、仮植床に移植して約1ヶ月育苗し、7月下旬から8月にかけて低温短日処理して花芽分化させ、9月上旬頃本圃に定植し、11月中旬〜5月下旬にかけて果実を収穫している。イチゴの生理上、一季成り性品種のイチゴは、6月〜11月の初夏から秋にかけてはほとんど栽培されておらず出荷されていない。この間の需要の多くは、四季成り性品種か、あるいは外国産の輸入に頼っているのが現状であるが、これらのイチゴは味覚に劣る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記に鑑みなされたものであり、一季成り性品種のイチゴを周年に亘り収穫可能なイチゴの周年栽培方法を提供することを課題とする。また、一季成り性品種のイチゴを周年に亘り収穫可能であると共に、仮植床を用いる必要がなく、育苗に必要なスペースを削減でき、本圃の栽培面積の拡大が可能であると共に、栽培コストの低減を図ることができるイチゴの周年栽培方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明では、温室内で一季成り性品種のイチゴを栽培する方法であって、
本圃に定植した子株を継続的に低温短日環境におき、本圃定植後において花芽分化を継続的に誘導させ、周年に亘り果実を収穫可能としたことを特徴とするイチゴの周年栽培方法を提供する。
請求項2記載の本発明では、温室内で一季成り性品種のイチゴを栽培する方法であって、
親株から切り離した子株を、仮植することなく、直接、本圃に定植すると共に、本圃に定植した前記子株を継続的に低温短日環境におき、本圃定植後において花芽分化を継続的に誘導させ、周年に亘り果実を収穫可能としたことを特徴とするイチゴの周年栽培方法を提供する。
請求項3記載の本発明では、温室内で一季成り性品種のイチゴを栽培する方法であって、
所定長のランナーを付随させた状態で親株から切り離し、付随するランナーの先端を本圃の培地に差し込んで、仮植することなく、直接、本圃に定植すると共に、本圃に定植した前記子株を、継続的に低温短日環境におき、本圃定植後において花芽分化を継続的に誘導させ、周年に亘り果実を収穫可能としたことを特徴とするイチゴの周年栽培方法を提供する。
請求項4記載の本発明では、前記子株は、実質的に未発根の状態で採苗されたものであることを特徴とする請求項3記載のイチゴの周年栽培方法を提供する。
請求項5記載の本発明では、前記子株には、10cm以上の長さのランナーを付随させた状態で採苗されたものであることを特徴とする請求項4記載のイチゴの周年栽培方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明のイチゴの栽培方法は、本圃において低温短日環境を継続することにより、子株の花芽分化を本圃において継続的に誘導させることができる。このため、秋季の後半から春季にかけてはもとより、夏季や秋季前半においても連続出蕾が可能となり、周年に亘り果実を収穫することができる。また、親株から切り離した子株を直接本圃に定植して低温短日環境におくことにより、仮植作業が不要となり、栽培作業、栽培設備の簡素化に資する。また、仮植床から本圃へ移植する従来の栽培方法と比較し、植え替えによる根のストレスもなくなる。なお、仮植することなく本圃に定植する場合には、子株を、所定長のランナーを付随させた状態で親株から切り離し、このランナーの先端を本圃の培地に差し込んで定植することが望ましい。これにより、ランナーを介して養水分が補給されるため、仮植しなくても高い活着率を期待できる。また、ランナーを介しての養水分の補給を可能とすることにより、子株を実質的に未発根の状態で親株から切り離しても高い活着率が期待でき、育苗期間をさらに短くすることができ、育苗作業の省力化にも寄与する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、実施形態に基づき本発明をさらに詳細に説明する。図1は、栽培工程の一例を示す図であり、親株から子株を採苗して定植した後、高温季節に最初の収穫を行う場合の栽培工程例を示している。なお、以下において「自然条件下における高温季節」とは、日本の6月〜11月、すなわち、夏から秋にかけての季節を指し、「自然条件下における低温季節」とは、12月〜5月、すなわち、冬から春にかけての季節を指す。また、高温季節又は低温季節における「前期」は各季節の最初の2月間を、「中期」は中間の2月間を、後期は最後の2月間を指すものと定義する。
【0007】
(親株の植え付け)
まず、本実施形態では、親株は、自然条件下における高温季節の中期、好ましくは8月上旬から8月下旬に親株床に植える。これは、高温季節での果実の収穫を可能にするに当たって、低温季節の中期から後期にかけて、好ましくは翌年2月から3月にかけて採苗するためであり、上記時期より早く親株を植えた場合には老化苗が多くなり、遅く植えた場合には、十分な苗数を確保できないからである。親株として用いる苗は、ランナーの発生が旺盛で発生する子株数が多く、また、休眠を打破させるための低温処理作業が不要であるメリクロン苗を用いることが省力化の点から好ましい。もちろん、所定の低温処理を行って休眠打破させた他の一季成り性品種の苗を用いることも可能である。
【0008】
(増殖工程)
親株を植え付けた後は、高温長日環境を維持し、ランナー(子株)を増殖させる。高温長日環境を維持することにより、ランナーの発生が盛んになる。高温長日環境とは、親株を植え付けた付近の温度を、日中、最低20℃以上、好ましくは20〜30℃、夜間、最低5℃以上、好ましくは10〜20℃に保ち、日長時間を最低10時間以上、好ましくは12〜15時間に保った環境であり、これを自然条件下における低温季節前期(12〜1月)を経過するまで保つか、若しくは低温季節中期前半(2月)を経過するまで保つ。なお、長日環境は、必要に応じて夜間に2〜3時間の電照を行うことによる光中断を行って保つこともできる。この際、必要に応じて、例えば、10月〜2月中旬までの間、温室に備え付けの暖房機、あるいは、特開平6−90614号に示されているように培地内や培地上面にパイプを設け、このパイプに所定温度の水(湯)を供給する手段等の保温設備を稼働させて高温環境を維持する。同じく、必要に応じて親株床の上方に配置した電照設備を稼働させ、長日環境を維持する。このようにして所定期間、高温長日環境を保つことにより、低温季節に突入した後も樹勢を維持し、ランナーの発生を盛んにする。
【0009】
ここで、親株床1としては、本出願人の特開平6−284826号公報に開示されているような所定の高さに設置される栽培容器2を用いることが好ましい(図2参照)。このような高設の栽培容器2に培地22を充填して親株床1として用いることにより、栽培容器2内の培地22に植え付けられた親株10から発生するランナー11を該栽培容器2の外方に突出させて下方に伸長させることができる。これにより、土耕でランナー(子株)を平面的に増殖させる場合と比較し、親株床1の栽培面積を小さくでき、温室内の限られたスペースを有効利用でき、本圃の栽培面積を増加することが可能である。
【0010】
このような高設の親株床1を用いた場合、伸長するランナー11に着生する子株12は土壌が付着していないため根が活着しにくい。このため、本出願人は、特開平9−23741号公報に開示されているように、子株12を受ける子株用培地(図示せず)を適宜の高さで複数段に設け、着生した子株12を該子株用培地に植え、根の活着率を上げる手段を提案している。しかしながら、本実施形態では、採苗工程において、後述のように実質的に未発根状態で子株を採苗すればよいため、上記のような子株用培地を設ける必要がなく、図2に示したような簡易な構造のものを有効活用することができる。なお、特開平6−284826号公報では、図2に示したように、活着率を上げるため、子株12の根圏付近に透水性シート4を配設しているが、本実施形態では、このような透水性シート4をも有しない、より簡易な構成のものであってもよい。この結果、本実施形態では、親株床1の設備(増殖用設備)に要するコストも少なくて済む。
【0011】
(採苗工程)
増殖工程終了後、すなわち、低温季節前期(12〜1月)若しくは中期前半(2月)を過ぎた後、子株を採苗する。この際、図3に示したように、子株12が実質的に未発根の状態で採苗することが好ましい。「実質的に未発根」とは、子株12から突出する根の原基13が1〜30カ所までの若苗をいう。一方、このような若苗状態の子株12を直接本圃に定植するだけでは生長させることが困難であるため、本実施形態では、子株12に所定長のランナー11を付随させた状態で採苗し、後述のように、このランナー11の先端を、切り口を含めて本圃の培地に差し込む手段を採用している。
【0012】
図3に示したように、付随させるランナー11の長さは、10cm以上であることが好ましく、さらには、15〜40cmの範囲であることより好ましい。付随させるランナー11の長さを10cm以上と長くすることにより、定植直後においては、子株12がランナー内に残留している養水分を即座に利用でき、原基13の生長、根の伸長が促されると共に、やがては培地中の養水分がランナー11の切り口を介して子株12に吸収されるため、上記のように実質的に未発根の状態で採苗した子株12の生長を可能とする。付随させるランナー11の長さが10cm未満、特に、5cm未満になると、ランナー11に残留している養水分量が少なく、ランナー11を介して培地から円滑に養水分を吸い上げ始めるまでの間に、子株12のしおれが発生し、活着率を低下させる。また、子株12に付随させるランナー11は、当該子株12の前段側、すなわち、より親株に近い側のランナー11とすることが、養水分の移動が通常行われる方向であることから、好ましい。なお、採苗工程において、子株12の展開葉は、1.5〜2枚になるように、古葉を付け根から除去しておくことが好ましい。
【0013】
(定植工程)
採苗した子株12は、育苗用の仮植床に仮植するのではなく、図4に示したように、本圃100の培地110に直接定植する。この際、本実施形態では、付随するランナー11は、採苗時の切り口を含む先端を培地に差し込んで定植する。上記のように、子株12を実質的に未発根の状態で採苗するため、ランナー11を差し込むことにより、ランナー11に残留する養水分及びランナー11を介しての培地110からの養水分の吸収作用が行われ、活着率が上がる。また、子株12を本圃100の培地110に直接定植することにより、子株12から発生した新根が本圃100の培地110に繁茂する。新根は養水分の吸収機能が高いため、子株12の生長を促すことができる。また、仮植床が不要となるなど、育苗に必要な設備コストの低減を図ることができる。なお、子株12の定植直後の2〜7日間は、堪液状態を維持することが好ましい。これにより、活着率がさらに向上する。
【0014】
また、採苗した子株12を直接本圃100に定植するため、定植時期は、低温季節前期(12〜1月)若しくは低温季節中期前半(2月)を過ぎた低温季節の中期から後期(2月〜5月)となる。好ましくは、2月下旬から4月中旬に上記採苗を実施すると共に定植する。そして、子株12を本圃100に定植した後、低温短日環境下におき、花芽分化を促進する。この際、本実施形態では、低温季節中期に定植するため、室外の気温が低く、特別な冷却手段を用いることなく、花芽分化を促進できる。もちろん、栽培地によっては、花芽分化を促進するための低温環境を、温室に付設した冷房機、あるいは、培地中や培地上に設けたパイプに水を通水する手段などの冷却設備を稼働して付与することもできる。なお、ここでいう低温短日環境とは、子株を植え付けた付近の温度を、日中、最高30℃以下、好ましくは15〜25℃に、夜間、最高で20℃以下、好ましくは5〜15℃に保ち、日長時間を、最高13時間以下、好ましくは8〜13時間に保った環境である。
【0015】
これにより、自然条件下における高温季節である6月〜11月、特に、通常時期のイチゴ栽培では収穫できない6月下旬から10月にかけて果実が結実し、最初の収穫が可能となる。一方、低温季節後期以降、高温季節に近づいてくると、上記した低温短日環境を自然条件下では維持できなくなる。そこで、本実施形態においては、高温季節に近づいてきたならば、上記した各種冷房設備や遮光シートなどを稼働させるなどして、本圃における低温短日環境を継続させる。この結果、高温季節においても花芽分化が継続的に誘導され、同じ株から連続的に出蕾する。さらに、高温季節後期以降、低温季節が近づいてくると、次第に、冷房設備等を稼働させなくても、自然条件下で低温短日環境が維持され、同じ株からの出蕾がさらに継続される。この結果、高温季節も含め、周年に亘り果実が結実することになる。従って、本実施形態によれば、本圃に定植した同じ株から複数年に亘って果実を収穫することが可能となり、育苗の手間、時間、費用を大幅に削減することができる。
【0016】
なお、上記実施形態においては、自然条件下における高温季節に果実を最初に収穫する場合を例に挙げ説明しているが、本発明は周年に亘り果実を収穫することを目的としているため、最初に果実を収穫する時期はいつでもよい。すなわち、本圃へ定植した後に低温短日環境を継続できる限り、育苗時期は任意に設定できる。例えば、3〜4月に親株を植えて子株を増殖させ、9月頃に子株を本圃に定植し、低温短日環境となるように制御して、11月中旬〜5月下旬にかけて最初の果実を収穫し、その間も、また、その後も、さらに低温短日環境を継続して連続的に果実を収穫するようにしてもよい。また、上記実施形態では、実質的に未発根の状態でかつランナーを付随させた子株を使用しているが、このような子株ではなく、ある程度活着するまで育苗した子株を用いることもできる。この場合、ランナーを培地に差し込む作業を行わずに定植することも可能である。但し、育苗の手間や期間を軽減するためには、実質的に未発根の子株を使用して、ランナーを培地に差し込んで定植することが好ましいことは上記したとおりである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るイチゴの栽培方法の栽培工程を説明するための図である。
【図2】図2は、親株床の構成の一例を示す概略斜視図である。
【図3】図3は、子株及びランナーを示す図である。
【図4】図4は、子株を本圃に定植した状態を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
1 親株床
2 栽培容器
10 親株
11 ランナー
12 子株
22 親株床の培地
100 本圃
110 本圃の培地
【出願人】 【識別番号】390010814
【氏名又は名称】株式会社誠和
【住所又は居所】東京都中央区八丁堀1−6−1
【出願日】 平成17年4月15日(2005.4.15)
【代理人】 【識別番号】100101742
【弁理士】
【氏名又は名称】麦島 隆

【公開番号】 特開2006−296202(P2006−296202A)
【公開日】 平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願番号】 特願2005−117749(P2005−117749)