| 【発明の名称】 |
水稲出穂遅延防止装置および水稲出穂遅延防止方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】笹岡 元信 【住所又は居所】奈良県大和高田市東三倉堂町7番13号 三晃精機株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】水稲の出穂遅延を防止することができる水稲出穂遅延防止方法および水稲出穂
【解決手段】自然の太陽光が照射される前に水稲に対して近赤外線光を照射する。この |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも自然の太陽光が照射されるまで水稲に対して近赤外線光を照射することを特徴とする水稲出穂遅延防止方法。 【請求項2】 自然の太陽光が照射される直前に水稲に対して近赤外線光を照射することを特徴とする水稲出穂遅延防止方法。 【請求項3】 前記自然の太陽光が照射される直前は、 午前0時から自然の太陽光が照射されるまでであることを特徴とする請求項2記載の水稲出穂遅延防止方法。 【請求項4】 前記自然の太陽光が照射される直前は、 午前2時から自然の太陽光が照射されるまでであることを特徴とする請求項2記載の水稲出穂遅延防止方法。 【請求項5】 前記自然の太陽光が照射される直前は、 午前4時から自然の太陽光が照射されるまでであることを特徴とする請求項2記載の水稲出穂遅延防止方法。 【請求項6】 前記近赤外線光は、波長700nm以上1500nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水稲出穂遅延防止方法。 【請求項7】 前記近赤外線光は、波長720nm以上850nm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水稲出穂遅延防止方法。 【請求項8】 近赤外線光を水稲に照射可能な照明装置と、 前記照明装置のオンオフを制御する制御装置とを含むことを特徴とする水稲出穂遅延防止装置。 【請求項9】 前記照明装置から照射される近赤外線光は、波長が700nm以上1500nm以下であることを特徴とする請求項8記載の水稲出穂遅延防止装置。 【請求項10】 前記照明装置から照射される近赤外線光は、波長が720nm以上850nm以下であることを特徴とする請求項8記載の水稲出穂遅延防止装置。 【請求項11】 周囲の輝度を検出する検出装置と、 所定の時間を計測する計測装置とをさらに含み、 前記制御装置は、前記検出装置からの検出信号に応じて前記照明装置により近赤外線光を照射し、前記計測装置により所定の時間が経過したと判定した場合に前記照明装置による近赤外線光の照射を停止することを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の水稲出穂遅延防止装置。 【請求項12】 照明灯をさらに含み、 前記制御装置は、 前記照明灯および前記照明装置のオンオフを切換可能な切換装置を含むことを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の水稲出穂遅延防止装置。 【請求項13】 自然の太陽光から光エネルギを電気エネルギに変換可能な太陽電池装置をさらに含み、 前記太陽電池装置からの電気的エネルギを用いて前記近赤外線光の照射を行うことを特徴とする請求項8〜12のいずれかに記載の水稲出穂遅延防止装置。 【請求項14】 前記照明装置は、近赤外線光を照射可能な複数の発光ダイオード装置からなることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の水稲出穂遅延防止装置。 【請求項15】 前記照明装置は、近赤外線光を照射可能な蛍光灯を光源とすることを特徴とする請求項8〜13のいずれかに記載の水稲出穂遅延防止装置。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、植物、特に水稲の出穂の遅延防止に関する。 【背景技術】 【0002】 日本においては、多くの水稲栽培が行われている。現在、水稲栽培は、日本のみならず、世界的に見ても重要な食物となっている。従来においては、稲の苗育成促進、または病害防除に対して品種改良や様々な手法が開示されている。 【0003】 例えば、特許文献1においては、水稲病害防除方法が開示されている。この水稲病害防除方法においては、殺菌性化合物と吸水性ポリマーとから成るシート状殺菌成型物を、苗箱底面に敷き該成型物より殺菌性化合物を溶出させることにより、育苗中の稚苗並びに、移植後の稲の病害を防除することができる。 【0004】 【特許文献1】特開平7−242504号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 しかしながら、近年、コンビニエンスストアまたは高速道路等の周辺に存在する水稲地区において、水稲の出穂効率が極端に低いことが明らかとなっている。これらの水稲は、病害になっている状態でもなく、単に出穂しない状態または出穂しても遅延して出穂し、充分に実を付けない状態となっていた。 【0006】 本発明の目的は、水稲の出穂遅延を防止することができる水稲出穂遅延防止方法および水稲出穂遅延防止装置を提供することである。 【課題を解決するための手段及び効果】 【0007】 本願発明者は、水稲の出穂効率の低下現象が発生している地域が特にコンビニエンスストアまたは高速道路等の周囲に存在することから、原因がコンビニエンスストアまたは高速道路等の照明に原因があるのではという考察を抱き、それに対する実験を行った。その結果、水稲の出穂遅延の原因が、それらの照明のうち、赤色光に依存していることがほぼ特定された。そして、本願発明者は、24時間照射される照明の光を変化させることなく、水稲の出穂遅延を防止することができる水稲出穂遅延防止方法および水稲出穂遅延防止装置について見出した。 【0008】 (1) 本発明に係る水稲出穂遅延防止方法は、少なくとも自然の太陽光が照射されるまで水稲に対して近赤外線光を照射するものである。 【0009】 本発明に係る水稲出穂遅延防止方法においては、少なくとも自然の太陽光が照射されるまで水稲に対して近赤外線光を照射することができる。 【0010】 通常、24時間赤色光を含む白色光が照射され続けた場合、水稲内部の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムが変化しないため、太陽光による昼夜の区別を付けることができず、出穂遅延または出穂しない状態となる。 【0011】 この場合でも、少なくとも自然の太陽光が照射されるまで水稲に対して近赤外線光を照射することにより水稲内の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムを赤色光吸収型(Pr)として存在させていたと擬似させることができ、その後、太陽光によって、近赤外線光吸収型(Pfr)に変化させることができる。すなわち、水稲の出穂は、フィトクロムの赤色光吸収型(Pr)から近赤外線光吸収型(Pfr)に変化への変換に依存すると考えられるので、近赤外線光を照射することにより水稲の出穂を促進させることができる。したがって、水稲の出穂遅延を防止することができる。なお、少なくとも自然の太陽光が照射されるまでとは、日入り後に近赤外線光の照射を開始し、日の出後に、近赤外線光の照射を停止させるものであってもよい。 【0012】 (2) 本発明に係る水稲出穂遅延防止方法は、自然の太陽光が照射される直前に水稲に対して近赤外線光を照射するものである。 【0013】 本発明に係る水稲出穂遅延防止方法においては、自然の太陽光が照射される直前に水稲に対して近赤外線光を照射することができる。 【0014】 通常、24時間赤色光を含む白色光が照射され続けた場合、水稲内部の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムが変化しないため、太陽光による昼夜の区別を付けることができず、出穂遅延または出穂しない状態となる。 【0015】 この場合でも、自然の太陽光が照射される直前に水稲に対して近赤外線光を照射することにより水稲内の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムを赤色光吸収型(Pr)として存在させていたと擬似させることができ、その後、太陽光によって、近赤外線光吸収型(Pfr)に変化させることができる。すなわち、水稲の出穂は、フィトクロムの赤色光吸収型(Pr)から近赤外線光吸収型(Pfr)に変化への変換に依存すると考えられるので、近赤外線光を照射することにより水稲の出穂を促進させることができる。したがって、水稲の出穂遅延を防止することができる。 【0016】 (3) 自然の太陽光が照射される直前は、午前0時から自然の太陽光が照射されるまでであることが好ましい。 【0017】 この場合、太陽光が照射される前に確実に水稲に対して近赤外線光を照射することができ、フィトクロムの相互変換を確実に行わせることができる。その結果、水稲の出穂遅延を防止することができる。なお、自然の太陽光が照射される直前とは、自然の太陽光が照射される前のことを意味し、晴天で太陽光の遮りがない場合には、夜明けまたは日の出等の前であることを意味する。また、地域によって夜明け時間または日の出時間が異なるため、その地域における夜明けまたは日の出等の前であることを意味する。なお、午前6時に自然の太陽光が照射されると仮定した場合で考慮すれば、自然の太陽光が照射される6時間前に近赤外線光の照射を開始させてもよい。 【0018】 (4) 自然の太陽光が照射される直前は、午前2時から自然の太陽光が照射されるまでであることが好ましい。 【0019】 この場合、太陽光が照射される前に確実に水稲に対して近赤外線光を照射することができ、フィトクロムの相互変換を確実に行わせることができる。その結果、水稲の出穂遅延を防止することができる。なお、午前6時に自然の太陽光が照射されると仮定した場合で考慮すれば、自然の太陽光が照射される4時間前に近赤外線光の照射を開始させてもよい。 【0020】 (5) 自然の太陽光が照射される直前は、午前4時から自然の太陽光が照射されるまでであることが好ましい。 【0021】 この場合、太陽光が照射される前に確実に水稲に対して近赤外線光を照射することができ、フィトクロムの相互変換を確実に行わせることができる。その結果、水稲の出穂遅延を防止することができる。なお、午前6時に自然の太陽光が照射されると仮定した場合で考慮すれば、自然の太陽光が照射される2時間前に近赤外線光の照射を開始させてもよい。 【0022】 (6) 近赤外線光は、波長700nm以上1500nm以下であることが好ましい。 【0023】 この場合、波長が700nm以上1500nm以下であるため、水稲の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムの変換が確実に行われる。 【0024】 (7) 近赤外線光は、波長720nm以上850nm以下であることがより好ましい。 【0025】 この場合、波長が720nm以上850nm以下であるため、水稲の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムの変換がより確実に行われる。 【0026】 (8) 第2の発明に係る水稲出穂遅延防止装置は、近赤外線光を水稲に照射可能な照明装置と、照明装置のオンオフを制御する制御装置とを含むものである。 【0027】 第2の発明に係る水稲出穂遅延防止装置においては、制御装置により照明装置のオンオフが制御され、照明装置がオンの場合に近赤外線光を水稲に照射することができる。 【0028】 通常、24時間赤色光を含む白色光が照射され続けた場合、水稲内部の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムが変化しないため、太陽光による昼夜の区別を付けることができず、出穂遅延または出穂しない状態となる。 【0029】 この場合でも、自然の太陽光が照射される直前に水稲に対して近赤外線光を照射することにより水稲内の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムを赤色光吸収型(Pr)として存在させていたと擬似させることができ、その後、太陽光によって、近赤外線光吸収型(Pfr)に変化させることができる。すなわち、水稲の出穂は、フィトクロムの赤色光吸収型(Pr)から近赤外線光吸収型(Pfr)に変化への変換に依存すると考えられるので、近赤外線光を照射することにより水稲の出穂を促進させることができる。したがって、水稲の出穂遅延を防止することができる。 【0030】 (9) 照明装置から照射される近赤外線光は、波長が700nm以上1500nm以下であることが好ましい。 【0031】 この場合、波長が700nm以上1500nm以下であるため、水稲の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムの変換が確実に行われる。 【0032】 (10) 照明装置から照射される近赤外線光は、波長が720nm以上850nm以下であることがより好ましい。 【0033】 この場合、波長が720nm以上850nm以下であるため、水稲の開花ホルモンフロリゲンに含まれる蛋白色素であるフィトクロムの変換がより確実に行われる。 【0034】 (11) 周囲の輝度を検出する検出装置と、所定の時間を計測する計測装置とをさらに含み、制御装置は、検出装置からの検出信号に応じて照明装置により近赤外線光を照射し、計測装置により所定の時間が経過したと判定した場合に照明装置による近赤外線光の照射を停止してもよい。 【0035】 この場合、検出装置により周囲の輝度が検出され、輝度の値が上昇傾向を示した場合、照明装置から近赤外線光が照射され、所定の時間経過後、近赤外線光の照射が停止される。その結果、夜明け前の状態を検出装置により検出し、所定の時間近赤外線光を照射することができ、所定時間経過後に照明装置による近赤外線光の照射が停止されるので、自然の太陽光を照射する直前に水稲に近赤外線光を照射することができる。 【0036】 (12) 照明灯をさらに含み、制御装置は、照明灯および照明装置のオンオフを切換可能な切換装置を含んでもよい。 【0037】 この場合、夜間において照明灯により歩道または道路等を照らすことができ、切換装置の働きにより照明装置を稼動させて、近赤外線光を水稲に照射することができる。 【0038】 (13) 太陽光から光エネルギを電気エネルギに変換可能な太陽電池装置をさらに含み、太陽電池装置からの電気的エネルギを用いて近赤外線光の照射を行ってもよい。 【0039】 この場合、太陽電池装置からの電気的エネルギを用いて水稲に近赤外線光を照射することができるので、消費電力の低減を図ることができる。特に、複数の水稲出穂遅延防止装置を用いる場合、多くの消費電力の低減を図ることができる。 【0040】 (14) 照明装置は、近赤外線光を照射可能な複数の発光ダイオード(light emitting diode;以下、単にLEDと呼ぶ。)装置からなってもよい。 【0041】 この場合、照明装置が消費電力の少ないLED装置から構成されているため、さらに多くの消費電力の低減を図ることができる。 【0042】 (15) 照明装置は、近赤外線光を照射可能な蛍光灯を光源としてもよい。この場合、照明装置が消費電力の少ない蛍光灯を光源とするため、さらに多くの消費電力の低減を図ることができる。また、従来の照明装置の蛍光灯と容易に交換するのみで、水稲の出穂防止装置として用いることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0043】 以下、本発明に係る実施の形態について説明する。 (第1の実施の形態) 【0044】 図1は、本発明に係る一実施の形態に係る水稲出穂遅延防止装置100の一例を示す模式図である。 【0045】 図1に示すように、水稲出穂遅延防止装置100は、支柱10、照明装置20、太陽電池パネル30および制御装置40を含む。なお、図1においては、水稲出穂遅延防止装置100を一個しか表示していないが、これに限定されず、任意の数の水稲出穂遅延防止装置100を設けてもよい。 【0046】 図1に示すように、水稲出穂遅延防止装置100は、支柱10の先端に太陽電池パネル30が設けられ、その下方に照明装置20が設けられる。照明装置20の詳細については後述する。 【0047】 支柱10の下方には、制御装置40が備えられる。この制御装置40は、タイマ(時計)を内蔵するとともに、太陽電池パネル30による電力を蓄積装置に蓄積し、照明装置20へ点灯支持および消灯指示を与える。 【0048】 続いて、本実施の形態にかかる水稲出穂遅延防止方法について説明する。図1に示すように、太陽が出ている時間帯、例えば、11時〜16時において、太陽パネル30は、自然エネルギである太陽光を電気的エネルギに変換して、制御装置40内の蓄積装置に貯える。 【0049】 また、この場合、水稲出穂遅延防止装置100の照明装置20の動作にかかわらず、水稲50に対してコンビニエンスストアまたは高速道路における照明光が水稲に照射される。 【0050】 続いて、制御装置40は、夜明け直前、例えば、午前4時から午前6時までの間、照明装置20に点灯指示を与え、近赤外線光を水稲に照射させる。この場合、制御装置40は、内部の蓄積装置から照明装置20に電気的エネルギを供給する。なお、本実施の形態においては、蓄積装置の電気的エネルギを利用することとしたが、これに限定されず、他の電源供給口または電池等を用いてもよい。 【0051】 また、上記実施の形態においては、制御装置40内のタイマ(時計)によって時刻を計測し、近赤外線光を照射させることとしたが、これに限定されず、他に輝度検出装置を設けて、その輝度検出装置により夜明け直前に近赤外線光を水稲に照射させるように設けてもよく、輝度検出装置を新たに設けず、太陽電池パネル30からの電気的エネルギの信号を輝度検出装置の代わりに用いてもよい。 【0052】 次に、図2は、図1に示す水稲出穂遅延防止装置100の他の例を示す模式図である。 図2に示す水稲出穂遅延防止装置100aは、図1に示す水稲出穂遅延防止装置100の照明装置20に、さらに蛍光灯280を備え、制御装置40の代わりに制御装置40aを備える。この制御装置40aは、照明装置20および蛍光灯280の切換えを行う切換え装置49をさらに含む。 【0053】 以下、水稲出穂遅延防止装置100aが図1の水稲出穂遅延防止装置100の動作と異なる箇所について説明する。 【0054】 日没後、水稲出穂遅延防止装置100aは、蛍光灯280から通常の光を照射する。この蛍光灯280の光は、水稲の育成場所(水田)を照らすのではなく、道路または歩道等を照らし、事故または事件の発生を防止するためのものである。 【0055】 次いで、タイマの働きにより、午前4時になると、切換え装置49の働きにより蛍光灯280への電気エネルギの供給を停止し、照明装置20に電気的エネルギの供給を開始する。それにより、照明装置20は、午前4時から午前6時までの間(自然の太陽光が照射される直前まで)、近赤外線光を水稲に照射することができる。なお、図2においては、道路等を照らす照明灯として蛍光灯280を用いることとしたが、これに限定されず、白色LED、他の任意のLED照明等、他の任意の照明装置を用いてもよい。 【0056】 続いて、図3は、照明装置20の詳細を説明するための模式図である。 図3(a)は、照明装置20の外観を示し、図3(b)は発光体200を示し、図3(c)はLED装置210の側断面を示す。 【0057】 図3(a)に示すように、照明装置20は、複数の発光体200および筐体201からなる。図3(b)に示すように、発光体200は、さらに複数のLED装置210および筐体211からなる。 【0058】 図3(c)に示すように、LED装置210は、近赤外線光を発光するLED220、透過ガラス250および反射筐体251を含む。本実施の形態におけるLED220として、波長が、850nmの近赤外線光ダイオード(アルワン電子株式会社)を用いた。 【0059】 LED220より発せられた近赤外線光が、透過ガラス250から照射される。このLED装置210が、発光体200に等間隔で配設される。図3(b)においては、円形からなる発光体200の中心にLED装置210を配置し、周囲を6分割してそれぞれにLED装置210が設けられる。 【0060】 そして、図3(a)に示すように、この発光体200が10個等間隔で照明装置20に設けられる。それにより、近赤外線光を確実に水稲に照射することができる。 【0061】 以上のように、本発明に係る水稲出穂遅延防止装置および水稲出穂遅延防止方法においては、夜間においても通常の光が照射されることにより出穂遅延が生じる、または出穂しない水稲に対して、自然の太陽光が照射される前に近赤外線光を照射することにより、出穂遅延を防止し、出穂の促進を図ることができる。 【0062】 この理由の説明として、水稲は、短日植物であるため、夜間の時間の変化に対して出穂を行うものと考えられている。したがって、コンビニエンスストアまたは高速道路等の24時間、常に照明が照射された水稲は、暗闇の時間が全くなくなり出穂遅延が生じるものと推測される。すなわち、出穂遅延に関しては、以下のことが必要と考えられる。 【0063】 一般に植物は、光合成および光感覚という効果を有する。光合成とは、既知のようにエマーソン効果等の作用により光エネルギを科学エネルギに変換するものである。一方、光感覚とは、あまり知られていないが、光形態形成、光周性、光屈性、偏光性、光走性等と呼ばれる習性がある。例えば、光屈性とは水稲やひまわりが太陽の方向に沿って移動する現象をいう。本願発明においては、この光感覚と水稲の出穂とが関係しているものと推測している。 【0064】 光感覚においては、開花ホルモンフロリゲンに含まれるフィトクロムと呼ばれる蛋白色素の働きによって赤色光または近赤外線光の可逆反応を示す作用が含まれている。フィトクロムは所定の吸収スペクトルを有し、暗所において赤色光吸収型(Pr)として存在し、赤色光を与えると、近赤外線光吸収型(Pfr)に変化する。また、近赤外線光吸収型(Pfr)を暗所に放置すると、赤色光吸収型(Pr)に変化する。本来、日中の明るさと夜間の暗さとによりこれらの型が交互に変化するものと考えられるが、本課題のように、24時間照明が照射されている水稲においては、この型の変化が生じていないと考えられる。そこで、近赤外線光を照射することにより、近赤外線光吸収型(Pfr)を赤色光吸収型(Pr)に変化させ、その後に太陽光を照射することによりフィトクロムの変化が発生し、水稲の出穂が促進されると考えられる。 【0065】 したがって、本願発明のように、光が照射され続けているため近赤外線光吸収型(pfr)に変化しない水稲に対して、あたかも近赤外線光吸収型(pfr)から赤色光吸収型(Pr)に変化させたと錯覚させるように、近赤外線光を自然の太陽光を照射させる前に照射することで、水稲の出穂遅延を確実に防止することができる。 【0066】 上記実施の形態においては、照明装置20が照明装置に相当し、制御装置40,40aが制御装置に相当し、水稲出穂遅延防止装置100が水稲出穂遅延防止装置に相当し、太陽電池パネル30が太陽電池装置および検出装置に相当し、タイマ(時計)が計測装置に相当し、蛍光灯280が照明灯に相当し、切換え装置49が切換装置に相当し、LED装置210が複数の発光ダイオード装置に相当する。 【0067】 なお、本発明は、上記の好ましい第1および第2の実施の形態に記載されているが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。 【0068】 以下、その効果について各品種の水稲を用いて実験を行った。 (実施例1) 以下、上記の水稲出穂遅延防止装置100を用いて、実際に水稲の出穂遅延に対する実験を行った。以下、詳細に説明する。 【0069】 図4は、実施例における水稲出穂遅延防止装置100と水稲の配置を示す上面図である。東西南北の方角は図中に示す方向であり、実施例として、照明装置20から赤色光、緑色光、青色光および白色光の4種類と、比較例として照明装置20を用いずに自然光を照射する計5種類で実験を行った。照明装置20は、北側に配置した。 【0070】 本実施例および比較例における水稲として、主に国内で主に育成されているコシヒカリ、あきたこまち、ヒノヒカリ、キヌヒカリ、ひとめぼれ、の5品種を用いた。なお、1ポットに各同じ品種の水稲を5株ずつ入れた。図4に示すポット番号1、10、14、18、22にコシヒカリのポットを配置し、ポット番号2、6、15、19、23にあきたこまちのポットを配置し、ポット番号3、7、11、20、24にヒノヒカリのポットを配置し、ポット番号4、8、12、16、25にキヌヒカリのポットを配置し、ポット番号5、9、13、17、21にひとめぼれのポットを配置した。 【0071】 図5はコシヒカリの出穂の推移を示す図であり、図6はあきたこまちの出穂の推移を示す図であり、図7はヒノヒカリの出穂の推移を示す図であり、図8はキヌヒカリの出穂の推移を示す図であり、図9はひとめぼれの出穂の推移を示す図である。図5〜図9の縦軸は、出穂率を示し、横軸は日を示す。 【0072】 図5に示すように、コシヒカリにおいては、自然光下における水稲が最も早期に出穂し、8月30日において100%の出穂が得られた。一方、青色光、緑色光、白色光下における水稲は、順に出穂しているが、90%の出穂率しか得られなかった。また、赤色光下においては、9月3日において初めて出穂が確認され、最終的に30%の出穂率までしか上がらなかった。 【0073】 次に、図6に示すように、あきたこまちにおいては、自然光下における水稲がもっとも早期に出穂し、8月30日において100%の出穂が得られた。一方、青色光、緑色光、白色光、赤色光下における水稲は、順に出穂しているが、80%以上90%以下の出穂率しか得られなかった。 【0074】 次いで、図7に示すように、ヒノヒカリにおいては、自然光下における水稲が9月5日において100%となった。一方、緑色光は9月7日において100%の出穂率が得られたが、青色光下においては95%、白色光下においては80%前後の出穂率しか得られなかった。また、赤色光下においては、9月3日において初めて出穂が確認され、最終的に30%の出穂率までしか上がらなかった。 【0075】 続いて、図8に示すように、キヌヒカリにおいては、自然光下における水稲は順調に出穂したが、青色光、緑色光、白色光の順で遅延しながらも100%の出穂率を得ることができたが、赤色光においては、出穂が遅延しつつ60%の出穂率しか得られなかった。 【0076】 最後に、図9に示すように、ひとめぼれにおいては、自然光下は早期に出穂し、青色光、緑色光、白色光、赤色光の順で遅延しつつも100%の出穂率を得ることができた。 【0077】 (評価) 以上のことから、水稲に対して赤色光を照射することにより水稲の出穂率が極端に低下することが分かった。この赤色光は、一般に白色光の三元素の一つであるため、白色光においても多く含まれている。また、高速道路等においては、赤色光を多く含むオレンジ色等の光が多いことも既知の事実である。 【0078】 次いで、上記実施例1において出穂していない水稲を用いて本願発明にかかる水稲出穂遅延防止装置100を用いて近赤外線光を照射する実験を行った。以下、詳細を説明する。 【0079】 (実施例2) まず、実施例1において出穂しなかった水稲に対して、4種類の実験を行った。なお、以下の各実験に対して18本〜20本の水稲を1株として用いた。まず、A実験として1株の水稲を用意し、午後6時から午前6時まで、水稲に赤色光のみを照射した。B実験として1株の水稲を用意し、午後6時から午前4時まで赤色光を照射し、午前4時から午後6時まで近赤外線光(波長950nm)を照射した。C実験として1株の水稲を用意し、午後6時から午前4時まで赤色光を照射し、午前4時から午後6時まで近赤外線光(波長850nm)を照射した。D実験として1株の水稲を用意し、午後6時から午前4時まで白色光を照射し、午前4時から午後6時まで近赤外線光(波長850nm)を照射した。 【0080】 図10はA実験〜D実験の測定結果を示す図である。図10の縦軸は出穂数を示し、横軸は日数を示す。 【0081】 (評価) 図10に示すように、A実験における水稲は、出穂数が悪いことが分かった。すなわち、近赤外線光を照射せずに、赤色光を照射し続けたとしても、出穂率は向上しないことが分かる。 【0082】 また、B実験における水稲とC実験における水稲とを比較すると、赤色光の後に照射する近赤外線光の中でも短い波長(850nm)において出穂が促進されることが分かった。さらに、白色光の後に近赤外線光を照射することにより、出穂遅延の生じた水稲であっても、出穂させることができることがわかった。さらに、D実験の結果からは、赤色光を白色光に変えるのみで、水稲の出穂率が向上することがわかった。 【0083】 (実施例3) 以下、実施例1と同様に、上記の水稲出穂遅延防止装置100を用いて、実際に水稲の出穂遅延に対する実験を行った。以下、詳細に説明する。 【0084】 図4に示す装置と同様の環境で、コシヒカリ、ヒノヒカリの2品種を用いて実験を行った。出穂遅延に対する効果を確認するため、上記2品種の稲穂に対して以下の実施例および比較例を行った。 (実施例3−1)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長735nmの光を夜明けまでの2時間照射を行った。 (実施例3−2)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長735nmの光を夜明けまでの4時間照射を行った。 (実施例3−3)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長735nmの光を夜明けまでの6時間照射を行った。 (実施例4−1)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長770nmの光を夜明けまでの2時間照射を行った。 (実施例4−2)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長770nmの光を夜明けまでの4時間照射を行った。 (実施例4−3)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長770nmの光を夜明けまでの6時間照射を行った。 (実施例5−1)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長810nmの光を夜明けまでの2時間照射を行った。 (実施例5−2)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長810nmの光を夜明けまでの4時間照射を行った。 (実施例5−3)日没から蛍光灯(C1)を照射させるとともに波長810nmの光を夜明けまでの6時間照射を行った。 比較例として (比較例1)日没から夜明けまで常に蛍光灯による光(C1)の照射のみを行った。 (比較例2)自然光による太陽光のみの照射を行った。 の実施例9種類、比較例2種類の計11種類の状態について実験した。また、図11に実施例3から実施例5または比較例1に用いた蛍光灯(C1)の波長を示す。さらに夜明けまで2時間、4時間、6時間とは、稲穂に対して自然光が差し込んだ後までの時間である。 【0085】 図12は、実施例3から実施例5および比較例1、比較例2におけるコシヒカリ、ヒノヒカリの品種に対して近赤外線ヒカリの照射時間と出穂遅延日数との測定結果を示す図である。なお、毎日午前8時に出穂の有無の確認を行った。 【0086】 (比較例1結果) 比較例1において自然光のみを照射させた場合、コシヒカリは、8月29日に出穂が確認され、ヒノヒカリは9月6日に出穂が確認された。 【0087】 (比較例2結果) 比較例2において蛍光灯(C1)のみを常時照射させた場合、コシヒカリは、8月29日から10日後の9月8日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日から8日後の9月14日に出穂が確認された。 【0088】 (実施例3結果) 実施例3−1において夜明けまでの2時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日から10日後の9月8日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日から12日後の9月18日に出穂が確認された。実施例3−2において夜明けまでの4時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日から10日後の9月8日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日から10日後の9月16日に出穂が確認された。実施例3−3において夜明けまでの6時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日から8日後の9月6日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日から8日後の9月14日に出穂が確認された。 【0089】 (実施例4結果) 実施例4−1において夜明けまでの2時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日と同日の8月29日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日よりも1日早い9月5日に出穂が確認された。実施例4−2において夜明けまでの4時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日よりも1日早い8月28日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日よりも1日早い9月5日に出穂が確認された。実施例4−3において夜明けまでの6時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日から1日後の8月30日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日よりも2日早い9月4日に出穂が確認された。 【0090】 (実施例5結果) 実施例5−1において夜明けまでの2時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日から2日後の8月31日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日から4日後の9月10日に出穂が確認された。実施例5−2において夜明けまでの4時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日から1日後の8月30日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日から2日後の9月8日に出穂が確認された。実施例5−3において夜明けまでの6時間照射を行った場合、コシヒカリは、8月29日から2日後の8月31日に出穂が確認され、ヒノヒカリは、9月6日から3日後の9月9日に出穂が確認された。 【0091】 (評価) 実施例3および実施例5を比較することにより、近赤外線光の波長735nmよりも波長810nmの方が出穂遅延の解消に有効であり、実施例4および実施例5を比較することにより近赤外線光の波長810nmよりも波長770nmの方が出穂遅延の解消に有効であることがわかった。したがって、波長720nm以上850nm以下がより好ましいことの裏付けが得られた。 【0092】 また、実施例4の結果から、夜明けまで4時間照射することが出穂遅延の防止に最も有効であることがわかった。 【0093】 さらに比較例1および比較例2と、実施例4とを比較すると、コシヒカリの比較例1との比較して約10日前後の出穂遅延を防止することができ、自然光のみを照射させた比較例2とほぼ同じであることがわかった。また、ヒノヒカリにおいても比較例1に対して約8日前後の出穂遅延を防止でき、自然光のみを照射させた比較例2とほぼ同じであることがわかった。したがって、蛍光灯(C1)の光を照射された状態であっても、近赤外線光を照射させることにより出穂遅延を防止できることがわかった。 【図面の簡単な説明】 【0094】 【図1】本発明に係る一実施の形態に係る水稲出穂遅延防止装置の一例を示す模式図 【図2】図1に示す水稲出穂遅延防止装置の他の例を示す模式図 【図3】照明装置の詳細を説明するための模式図 【図4】実施例における水稲出穂遅延防止装置と水稲の配置を示す上面図 【図5】コシヒカリの出穂の推移を示す図 【図6】あきたこまちの出穂の推移を示す図 【図7】ヒノヒカリの出穂の推移を示す図 【図8】キヌヒカリの出穂の推移を示す図 【図9】ひとめぼれの出穂の推移を示す図 【図10】A実験〜D実験の測定結果を示す図 【図11】実施例3から実施例5または比較例1に用いた蛍光灯(C1)の波長を示す図 【図12】コシヒカリ、ヒノヒカリの品種に対して近赤外線ヒカリの照射時間と出穂遅延日数との測定結果を示す図 【符号の説明】 【0095】 20 照明装置 30 太陽電池パネル 40,40a 制御装置 49 切換え装置 100 水稲出穂遅延防止装置 210 LED装置 280 蛍光灯
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| 【出願人】 |
【識別番号】592081483 【氏名又は名称】三晃精機株式会社 【住所又は居所】奈良県大和高田市東三倉堂町7番13号
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| 【出願日】 |
平成18年2月14日(2006.2.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089196 【弁理士】 【氏名又は名称】梶 良之
【識別番号】100104226 【弁理士】 【氏名又は名称】須原 誠
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| 【公開番号】 |
特開2006−271374(P2006−271374A) |
| 【公開日】 |
平成18年10月12日(2006.10.12) |
| 【出願番号】 |
特願2006−36671(P2006−36671) |
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