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【発明の名称】 硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法
【発明者】 【氏名】原田 茂吉

【氏名】川野 光政

【氏名】小嶋 敬吾

【氏名】西田 昌弘

【要約】 【課題】品質・収穫量を落とすことなく、硝酸態窒素の含有量を著しく低減できる、自然環境や人体にやさしい野菜類を提供する。

【解決手段】化学肥料を施肥する野菜類の栽培において、木質及び/又はバークを主原料とし発酵助剤を加えて発酵させて得られた木質系土壌改良剤を、栽培土壌中に配合することを特徴とする、硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学肥料を施肥する野菜類の栽培において、木質及び/又はバークを主原料とし発酵助剤を加えて発酵させて得られた木質系土壌改良剤を、栽培土壌中に配合することを特徴とする、硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法。
【請求項2】
発酵助剤が、窒素、リン酸、カリウムを含むものである、請求項1記載の硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法。
【請求項3】
土壌改良剤の配合割合が、10a当たり1〜50tである、請求項1乃至2記載の硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法。
【請求項4】
野菜類が、葉菜類又は根菜類である、請求項1乃至3のいずれか1項記載の硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、化学肥料を施肥して栽培した野菜中に多く含有される硝酸態窒素を、収穫期に、顕著に低減させる、野菜類の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麦藁、稲藁、木質、木皮の繊維を利用した堆肥は、穀物、野菜を栽培する際に生育を良くし、病虫害や気候の変化に強くする為に昔から広く使用されてきた。しかしながら 最近は堆肥の生産に時間を要すること、農業に携わる人の高齢化に伴ないその堆肥を田畑に敷きこむ煩雑さ等から、堆肥の使用が少なくなり、変わって化学肥料が多用される傾向にある。
【0003】
ところで、化学肥料を多用すると収穫量は増大するものの、野菜類は一般に窒素源として硝酸塩を好むため、野菜中の硝酸根濃度も、野菜の種類、生育ステージ、生育環境等によって異なるが、他の農作物に比較しても高くなると言われている。これら硝酸根濃度の高い野菜を摂取すると、例えば、生体内で亜硝酸に返還され悪影響を及ぼす等、人体に有害であるとの報告がなされている。かかる観点から、野菜類の硝酸根濃度を減少させるため、化学肥料の使用量を低減させる方法、硝酸態窒素にかえてアンモニア態窒素を使用する方法、等が検討されているが、生育に限度がでる、あるいは成長不良を招きやすい、ことから、収穫量の低下をまねき、現実的な方法とは言い難い。
【0004】
そこで、栽培の少なくとも末期に酢酸あるいは酢酸塩を施用する方法(特許文献1)、水溶性チタンを葉面散布あるいは施用する方法(特許文献2)等が報告されている。しかしながら、これらの方法によっても、野菜中の硝酸態窒素の含有量の低減は十分とはいえず、また、場合によっては酢酸、酸化チタン等により野菜類の生育障害がでる、という欠点もあった。
【特許文献1】特開2001−190154号公報
【特許文献2】特開2003−192513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、化学肥料を施肥して野菜類を栽培する方法において、野菜類の品質、収穫量を落とすことなく、収穫時の野菜中の硝酸態窒素の含有量を低減させる栽培方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の土壌改良剤を土壌中に配合することにより、かかる課題を解決できることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)化学肥料を施肥する野菜類の栽培において、木質及び/又はバークを主原料とし発酵助剤を加えて発酵させて得られた木質系土壌改良剤を、栽培土壌中に配合することを特徴とする、硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法、
(2)発酵助剤が、窒素、リン酸、カリウムを含むものである、上記(1)記載の硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法、
(3)土壌改良剤の配合割合が、10a当たり1〜50tである、上記(1)乃至(2)記載の硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法、
(4)野菜類が、葉菜類又は根菜類である、上記(1)乃至(3)のいずれか一に記載の硝酸態窒素の含有量が低減された野菜類の栽培方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の栽培方法は、従来、野菜の生育を促進させ収穫時期を速め、更に収穫増量を目的に化学肥料を単独で多量施肥していたのと異なり、特定の土壌改善剤を化学肥料と併用することにより、また、栽培途中で化学肥料を追肥しても、野菜の品質・収穫量を落とすことなく、硝酸態窒素の含有量を著しく低減できる為、自然環境や人体にやさしい野菜を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、化学肥料を施肥して野菜類を栽培する方法に関し、木質系土壌改善剤を、栽培土壌中に配合して栽培するものである。
本発明に用いられる木質系土壌改良剤は、木質あるいはバークを主原料とし、これに発酵助剤を混合し、堆積・切替しを繰り返し6ヶ月以上、好ましくは10ヶ月から15ヶ月間発酵させて得られるものであり、具体的には、バーク堆肥、木質系の堆肥等を例示することができる。
【0009】
発酵助剤としては、公知のものが用いられるが、窒素、リン酸、カリウムを含むものが好ましく、具体的には、鶏糞、バイオスラリー、焼酎粕、等が好ましい。ここで、バイオスラリーとは、酵母、特にキャンディダ・ユティリス、培養上澄液に水酸化カルシウム、凝集剤を添加し得られるスラリーである。
発酵助剤は単独で、あるいは混合して用いることができ、木質あるいはバーク(乾燥重量)に対して、10〜50重量%(乾燥重量)添加される。
【0010】
木質系土壌改良剤の土壌への配合は、土壌と混ぜ合わせることにより実施されるが、特に、野菜類の根部の周辺にそのまま固形で配合・被覆することが望ましく、又液状(懸濁状)にして散布することもできる。
木質系土壌改良剤は、土壌10a(1反)に対して好ましくは1〜50t、更に好ましくは5〜20t添加される。添加量がこれ未満では本発明の効果が発現しにくく、一方、添加量がこれを超えても効果の発現が更に増加するわけでなく、コストアップを招く。
【0011】
用いられる化学肥料は、通常、野菜類を栽培する時に用いられるものであれば特に制限はない。
化学肥料は、栽培期間の当初から土壌に施肥してもよく、追肥することもできるが、好ましくは、栽培前に土壌に木質系土壌改良剤と共に施肥し、その後、追肥すること、例えば収穫1〜3週間前、が望ましい。
【0012】
栽培できる野菜類は、葉菜類、根菜類のいずれでも良く、例えば、葉菜類としては、ホウレンソウ、チンゲンサイ、コマツナ、シュンギク、ハクサイ等を、根菜類としては、大根、サツマイモ、タマネギ等を例示することができる。これら野菜類では、硝酸態窒素の蓄積が過剰に認められる葉菜類が特に好ましい。
野菜の栽培は、野菜の種類の応じて、公知の方法に準じて行うことができる。
【実施例】
【0013】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。
なお、実施例における測定は、以下の方法によった。
1.野菜中の硝酸態窒素測定法
野菜の1/2株または1株を秤量後、小型ミキサ−で切り刻み、これを濾布で搾り取り、絞り汁を試料液とした。
試料液をリフレクトクァント試験紙(硝酸テスト用No3標準試験紙)に浸し、 関東化学社製RQフレックスプラス(高感度反射式光度計)測定器により、硝酸態窒素を測定した。
2.野菜の重量及び草丈の測定法
(1)重量は、根部を切除した葉部を秤量した。
(2)草丈は、根部を切除した葉部を測定した。
【0014】
製造例
トルラ酵母培養液を遠心分離で菌体を除去し、得られた上澄液(COD:280ppm、PO−P:69ppm、NH−N:34ppm、pH4.9)134kLに、水酸化カルシウムを添加してpH12.2とした後、凝集剤としてモスナイト(クラスター社製)を対液182ppm添加し、沈降槽で沈降させることによりスラリー4.8kLを得た。これを、タンクに静置後上排し、培養液上澄中の固形分を含むバイオスラリー2.04kLを得た(固形分含量(絶乾%)、炭素:22.1%、T−N:3%、T−P:6%、T−Ca:38%、T−K:0.8%)。
杉バーク3300kg(乾燥重量1200kg)又は庭木の剪定材をチップ化したもの2800kg(乾燥重量1200kg)に、それぞれ、鶏糞684kg(乾燥重量340kg)、焼酎滓171kg(乾燥重量12kg)及びバイオスラリー600kg(乾燥重量24kg)を添加し堆積した。堆積後約1ヶ月ごとに切り返し9ヶ月堆積した後、そのまま約3ヶ月堆積し、木質系土壌改良剤を得た。
杉バークを使用したものをバイオミクスB、剪定材を使用したものをバイオミクスWとした。
バイオミクスB…窒素全量:1.64%、石灰全量:4.22%、有機炭素:45.1%、有機物:87.2%、リン酸:1.08%、カリウム:0.77%、(以上、乾物)、C/N:27.5
バイオミクスW…窒素全量:1.87%、石灰全量:5.11%、有機炭素:44.2%、有機物:85.4%、リン酸:1.60%、カリウム:0.90%、(以上、乾物)、C/N:23.6
【0015】
実施例1
木質系土壌改良剤として、製造例で製造したバイオミクスB及びバイオミクスWを使用した。
4個の15L容プランター(横58cm×タテ18cm×高さ15cm)に、基本土壌(グリーンファーム社製、花と野菜の土)、木質系土壌改良剤及び化学肥料(日産アグリ社製、みずほ8・8・8)を下記に示す混合比で調整した。
(A)基本土壌11.7L:バイオミクスB1.3L:化学肥料30g
(B)基本土壌11.7L:バイオミクスW1.3L:化学肥料30g
(C)基本土壌13L:木質系土壌改良剤なし:化学肥料30g
(D)基本土壌13L:木質系土壌改良剤なし:化学肥料なし
各プランターに小松菜の種を播種し、発芽後に生育の揃った8株を選抜し、他は間引いた。
発芽後33日目に、前記化学肥料300gを10Lの水に溶解し、各プランターに各1Lを追肥した。その後、発芽後45、54、57、64日目に各2株ずつ採取し、重量、草丈、硝酸態窒素を測定した。(栽培時期:平成16年7月24日〜9月10日、場所:興人佐伯工場内)
結果を表1に示す。
【0016】
【表1】


【0017】
表1に示されるように、木質系土壌改良剤配合区(A、B)は化学肥料区(C)と同様の生育状況を示した。硝酸態窒素の蓄積については、化学肥料区(C)が高位で横ばいであるのに対して木質系土壌改良剤配合区(A、B)では、栽培後半に激減する事が分かる。なお、小松菜の出荷サイズは、通常、80〜100g程度であり、栽培に数は50〜60日である。
【0018】
実施例2
実施例1において、基本土壌として畑土(大分県佐伯市で採取)を用い、下記配合で、実施例1と同様にして小松菜を栽培した。
(A)基本土壌11.7L:バイオミクスB1.3L:化学肥料30g
(B)基本土壌11.7L:バイオミクスW1.3L:化学肥料30g
(C)基本土壌11.7L:木質系土壌改良剤なし:化学肥料30g
各プランターに小松菜の種を播種し、発芽後に生育の揃った8株を選抜し、他は間引いた。
発芽後15日目に、前記化学肥料300gを10Lの水に溶解し、各プランターに各1Lを追肥した。その後、発芽後30、35、40、45日目に各2株ずつ採取し、重量、硝酸態窒素を測定した。(栽培時期:平成16年11月19日〜平成17年1月7日、場所:興人佐伯工場内ハウス棟)
結果を表2に示す。
【0019】
【表2】


【0020】
表2に示されるように、畑土を用いても同様に硝酸態窒素の蓄積が栽培後半に激減することが分かる。
【0021】
実施例3
実施例2において、小松菜の他にチンゲンサイ、ほうれん草を用い、下記配合で、実施例2と同様に栽培した。
・基本土壌11.7L:バイオミクスW1.3L:化学肥料30g
各プランターに小松菜、チンゲンサイ、ほうれん草の種をそれぞれ播種し、発芽後に生育の揃った8株を選抜し、他は間引いた。
発芽後20日目に、前記化学肥料300gを10Lの水に溶解し、各プランターに各1Lを追肥した。その後、発芽後34、41、49日目に各2株ずつ採取し、重量、草丈、硝酸態窒素を測定した。(栽培時期:平成17年1月6日〜平成17年2月28日、場所:興人佐伯工場内ハウス棟)
結果を表3に示す。
【0022】
【表3】


【0023】
表3に示されるように、栽培時期によるものか、全体に硝酸態窒素の蓄積量は低いものの、チンゲンサイ、ほうれん草においても硝酸態窒素は栽培後半に減少することが分かる。
【0024】
実施例4
実施例2の配合(A)において、バイオミクスBの配合を基本土壌の2%〜20%にかえて、実施例2と同様に栽培した。
すなわち、各プランターに小松菜の種を播種し、発芽後に生育の揃った8株を選抜し、他は間引いた。
発芽後20日目に、前記化学肥料300gを10Lの水に溶解し、各プランターに各1Lを追肥した。その後、発芽後31、36、43、50日目に各2株ずつ採取し、重量、硝酸態窒素を測定した。(栽培時期:平成16年12月14日〜平成17年1月31日、場所:興人佐伯工場内ハウス棟)
結果を表4に示す。
【0025】
【表4】


【0026】
表4に示されるように、木質系土壌改質剤の配合比が2〜20%の範囲では、野菜類の生育状況に大きな差はみられず、かつ、硝酸態窒素の蓄積量は大きく減少することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上述べてきたように、本発明によると、木質あるいはバークを主原料とし発酵させた木質系土壌改良剤を用いるため、品質・収穫量を落とすことなく、硝酸態窒素の含有量を著しく低減できる為、自然環境や人体にやさしい野菜類を提供する事が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000142252
【氏名又は名称】株式会社興人
【出願日】 平成17年3月29日(2005.3.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−271237(P2006−271237A)
【公開日】 平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願番号】 特願2005−93487(P2005−93487)