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【発明の名称】 呈味強化発酵茶葉および該茶葉を利用した濃厚呈味烏龍茶飲料
【発明者】 【氏名】松井 陽吉

【要約】 【課題】

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
茶葉の摘採日直前20日間の内の合計で5日から20日間、遮光率60〜95%の通気性を有する覆いで陽光を遮光して茶木を生育させ、該茶木から茶葉を摘採し、摘採した茶葉を半発酵または完全発酵処理して得られ、遮光しないことを除けば同じ条件で生育させたものに比べて呈味成分が強化されていることを特徴とする半発酵もしくは発酵茶葉。
【請求項2】
遮光を、遮光率60〜95%の寒冷紗またはそれに類するもので茶木を覆うことにより行ったことを特徴とする請求項1記載の茶葉。
【請求項3】
茶葉が夏茶または暑茶であることを特徴とする請求項1または2記載の茶葉。
【請求項4】
茶葉3gを120mlの水で5分間抽出した抽出液を水で3倍に希釈して測定したとき、テアニンを50μM以上含有する、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の茶葉。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の茶葉又は該茶葉から得られる茶抽出物を含有する飲食物。
【請求項6】
烏龍茶である請求項5記載の飲食物。
【請求項7】
茶葉の摘採日直前20日間の内の合計で5日から20日間、遮光率60〜95%の通気性を有する覆いで陽光を遮光して茶木を生育させ、該茶木から茶葉を摘採し、摘採した茶葉を半発酵または完全発酵処理することを特徴とする半発酵もしくは発酵茶葉の製造方法。
【請求項8】
遮光を、遮光率60〜95%の寒冷紗またはそれに類するもので茶木を覆うことにより行う請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
茶葉が夏茶または暑茶であることを特徴とする請求項8記載の製造方法。
【請求項10】
夏茶または暑茶の茶葉の摘採日直前20日間の内の合計で5日から20日間、遮光率60〜95%の通気性を有する覆いで陽光を遮光して茶木を生育させることを特徴とする夏茶又は暑茶の生育方法。
【請求項11】
遮光を、遮光率60〜95%の寒冷紗またはそれに類するもので茶木を覆うことにより行う請求項10記載の生育方法。
【請求項12】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の茶葉から得られる茶抽出物(以下、第1の茶抽出物という)と、茶生葉に含まれるカテキン100%に対して発酵工程を経て生成したカテキン重合体量が50%より多くなるまで発酵させた茶葉から得られる茶抽出物(以下、第2の茶抽出物という)とを含有することを特徴とする飲食物。
【請求項13】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の茶葉から得られる茶抽出物(第1の茶抽出物)と、総カテキン量に対しカテキン重合体の量が50%以上の高濃度のカテキン重合体を含有する茶抽出物(以下、第2’の茶抽出物という)とを含有することを特徴とする飲食物。
【請求項14】
茶葉由来のテアニンを5mg/100ml以上含有する茶抽出物(以下、第1’の茶抽出物という)と、茶生葉に含まれるカテキン100%に対して発酵工程を経て生成したカテキン重合体量が50%より多くなるまで発酵させた茶葉から得られる抽出物(第2の茶抽出物)とを含有することを特徴とする飲食物。
【請求項15】
茶葉由来のテアニンを5mg/100ml以上含有する茶抽出物(第1’の茶抽出物)と、総カテキン量に対しカテキン重合体の量が50%以上の高濃度のカテキン重合体を含有する茶抽出物(第2’の茶抽出物)とを含有することを特徴とする飲食物。
【請求項16】
第1または第1’の茶抽出物と、第2または第2’の茶抽出物との含有比率が9:1〜2:8であることを特徴とする請求項12ないし15のいずれか1項に記載の飲食物。
【請求項17】
烏龍茶飲料である請求項16記載の飲食物。
【発明の詳細な説明】【発明の分野】
【0001】
本発明は、呈味強化された発酵もしくは半発酵茶葉およびその製造方法、並びに該茶葉の茶抽出物を原料の一部に用いて製造された濃厚な呈味と香味をあわせ持つ烏龍茶飲料および該飲料の製造方法に関する。
【従来の技術】
【0002】
烏龍茶葉は中国福建省、広東省の東部一帯及び台湾で生産されていた半発酵茶を起源とするものであるが、発酵を行わない緑茶に近いものから紅茶に近い十分な発酵を多く行うタイプがある。
【0003】
烏龍茶の茶葉は温暖な地域、例えば中国南部では年4〜5回の摘採を行うが、冬期に休眠したあとの春の一番茶は栄養分の蓄積もあり香りと味が上で評価も高いが、二番茶や三番茶になると気温も上がり太陽光線が強くなるため生育が盛んになり、香りが薄く味も薄くて渋い茶葉になるため香味が悪くなる。太陽光線の強い時期は葉が硬くなるのも早く揉捻のかかりが悪く、結果として味の薄い、渋みの強い茶葉となってしまう。硬い葉で作った烏龍茶は香味も薄く渋味が強いため高い温度や強い抽出を行うと香味の優れた烏龍茶飲料を作ることができないため、利用の価値が限定されたりまた価値の低いものであった。
【0004】
また、中国では経済発展による茶葉需要の拡大で烏龍茶が人気を博しているが、従来緑茶を飲んでいた人々に烏龍茶を売り込むため、従来よりも発酵の少ない緑茶タイプの茶葉が生産されている。つまり、最近の傾向はより発酵を抑えて香りを強くすることに重点が移ってきている。しかしながら、烏龍茶が緑茶に比べてアミノ酸が少量にもかかわらず濃厚な香味を出せる秘訣は、茶葉を半発酵させるため茶葉中のカテキンが重合して烏龍茶独特の烏龍茶ポリフェノールという分子量の1000から4000程度のポリフェノールを生成させ、烏龍茶独特のコクを生じさせる必要がある。したがって、発酵を十分に行わないと、香りは強いが味が薄い烏龍茶しか得られないという問題があった。実際、中国ではそのような製品が多く出回っている。
【0005】
また、中国では上記のとおり、烏龍茶の消費量が急速に拡大しているため、温暖な地域の茶園では多い場合年5回の茶摘みが実施されている。このことも、発酵を抑える傾向とあいまって、香りはあるが味が極めて薄い烏龍茶しか得られなくなるという問題の原因である。すなわち、春の一番茶は味が濃厚で香りもよいが、二番茶と三番茶にあたる5月末から7月にかけてのお茶(夏茶・暑茶と呼ばれる)、さらには四番茶、五番茶と、徐々に渋みの強い味の薄いお茶で価値の低いお茶となるという問題がある。
〔発明が解決しようとする課題〕
【0006】
本発明は、原料とする茶葉の栽培時点から特別の工夫をして、一番茶のみならず、二番茶以後の時期の茶葉についても、茶類の呈味成分(特に旨味成分を呈するアミノ酸類、特にテアニン)を多く含む茶葉の製法を確立することを目的とする。
【0007】
本発明はまた、上記製法で得られた茶葉を半発酵ないし発酵させたものから得られる茶抽出物からなる、うま味が強く濃厚な味わいで渋味も少ない飲料、および該飲料を含む飲食物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明はまた、味わいに濃厚さとコクを有し、香味に軽やかさと華やかさを有する、新規な烏龍茶飲料を提供する。
〔課題を解決するための手段〕
【0009】
第一の観点において、本発明は、茶葉の摘採日直前約20日間の内の合計で5日から20日間、遮光率60〜95%の通気性を有する覆いにより陽光を遮光して茶木を生育させる方法、および該方法で生育させた茶木から茶葉を摘採し摘採した茶葉を半発酵または完全発酵処理して得られたことを特徴とする茶葉の製造方法、および該方法で得られる、遮光しないことを除けば同じ条件で生育させたものに比べて呈味成分が強化されていることを特徴とする茶葉である。
【0010】
上記時期に太陽光線を遮蔽すると、茶葉を瑞々しくやわらかく保ち、うまみ成分が多くて渋みの少ない葉を得ることができる。この効果は、遮光率が60%より小さくては発揮されないが、遮光率が95%より大きいと茶木の生育が阻害される。好ましい遮光度は、70〜90%で6〜15日、特に好ましくは75〜85%で8〜12日である。遮光は継続的に行っても断続的に行ってもよい。遮光に用いる好ましい材料は寒冷紗等の布類であり、この布で茶木を覆って都合よく遮光することができるが、茶木の生育に影響なく遮光できる材料であれば、任意のものが使用可能である。
【0011】
遮光して生育することにより、茶葉の呈味成分を強化するのに適する茶の種類として、発酵または半発酵茶及び弱発酵茶の製造用の、烏龍茶、紅茶、白茶、黄茶やジャスミン茶を代表とする花茶類の原料茶である炒青やホンチン(▲共▼青)した緑茶が例示される。
【0012】
上記のようにして遮光して生育させた茶木からの茶葉の摘採は、好ましくは開面採で行う。すなわち、2〜5枚、好ましくは3枚か4枚の葉が開き、芽が無くなった時点で摘み取りを行う。したがって、この時点の直前20日間が本発明において遮光処理を行う期間てある。当該時点の直前約20日以内であるかどうかは、例年の製茶実績と芽の生育状況で判断でき、当業者であればその精度は±2日の範囲である。芽の段階で摘採しない理由は、芽は摘み取っても烏龍茶の製造工程ではやわらかいため脱落してなくなってしまうため、かなり茶葉がしっかり開いた時点で摘採を行うほうが好都合であるためであり、芽の段階で摘採しても烏龍茶としての品質自体には何らさしつかえない。
【0013】
遮光して生育させた茶木から摘採した茶葉は、茶類の呈味成分、特に旨味成分を呈するアミノ酸類、例えば特にテアニンを多く含むため、そのままであるいは発酵ないし半発酵させて抽出したとき濃厚な味わいの茶抽出物を与える。したがって、本発明における好ましい態様においては、原料茶葉として夏茶または暑茶、さらには三番茶〜五番茶を使用する場合に、上記のようにして茶木を遮光して生育させることにより、一番茶に比べ呈味成分が劣るといわれる夏茶又は暑茶等の呈味を改善し、一番茶同等の品質を持つ発酵茶葉を与えることができる。
【0014】
本発明において、遮光して生育させた茶木から摘採した茶葉は発酵ないし半発酵させて用いる。摘採から発酵ないし半発酵茶を製造するまでの方法には特別な制限はなく、烏龍茶の製造のための任意の方法を用いてよい。典型的な方法を例示すると、以下のように行う:
摘採→天日干し(晒青:サイチン)→日陰干し(涼青:リャンチン)→作青(ツォチン)→炒青(チャオチン)→揉捻(ローニェン)→包揉(パオロー)→乾燥(▲共▼焙:ホンペイ)。
【0015】
天日干しと日陰干しは萎凋(いちょう)ともいわれ、発酵に入る前に酵素類の励起を促すもので加水分解酵素や酸化酵素の活性化を行う。作青は発酵工程で一定の温度下で攪拌を行う揺青(ヤオチン)と涼青を繰り返し行い、烏龍茶特有の香りの発生を促す。十分な香り成分が発生した時点で熱をかけて(炒青)酵素の働きを完全に無くならない程度に抑えてから揉捻を行う。揉捻は茶葉の細胞を潰して出てくるエキス内のカテキン類を空気に触れさせることで発酵を行い香味を作り上げる。場合によっては、さらに、布に包んで球状にして機械で転がしながらの包揉を繰り返し茶葉を丸い形状に仕上げてもよい。最後に乾燥を行い粗茶(荒茶)が出来上がる。その後茶葉の柄や茎、外観の悪いものや破砕されたものを除去してから乾燥を主体とした火入れを行い、本発明の発酵ないし半発酵茶葉とする。ここで、本明細書における、半発酵処理とは茶葉自体の酵素類を部分的に作用させて茶葉の香りや呈味を変化させることを意味し、完全発酵処理とは茶葉自体の酵素類を全面的に作用させて茶葉の香りや呈味を変化させることを意味する。
【0016】
本発明は本発明の半発酵もしくは発酵茶葉から得られた茶抽出物を利用した飲食物にも関する。茶抽出物を得るには茶葉を約15〜150倍量の水、温水または熱水で、場合によりアルカリ塩の存在下に1分〜10時間抽出して得られる抽出液を意味する。本発明の茶葉を通常の抽出方法で抽出した場合、最低でも5mg/100ml以上のテアニンを含有し、抽出方法によってはテアニンをさらに高含有させることもできる。茶抽出物を飲食物に利用するためには、本発明の茶抽出物そのものを用いてもよく、またはその濃縮物(濃縮エキス)もしくは乾燥物を用いてもよい。したがって、本明細書中で、茶抽出物というときは、文意により濃縮したものおよび乾燥物も包含する。本発明の茶抽出物を利用した飲食物は、茶抽出物自体からなる飲食物でもよく、さらには、茶抽出物を飲食物に添加した飲食物でもよい。本発明の茶抽出物を利用した好ましい飲食物は、烏龍茶または烏龍茶飲料である。烏龍茶飲料とは、烏龍茶抽出物またはその濃縮物もしくは乾燥物を添加もしくは配合して製造された飲料を意味する。

新規タイプの烏龍茶飲料
本発明は、第二の観点において、本発明の茶抽出物を別の茶抽出物と混合して含む、新規な烏龍茶飲料を提供する。すなわち、本発明の上記発酵もしくは半発酵茶葉から得られる、テアニン分を多く含みより濃厚な呈味を有する茶抽出物(以下、第1の茶抽出物と呼ぶ)と、茶生葉に含まれるカテキン100%に対して発酵工程を経て生成したカテキン重合体量が50%より多くなるまで発酵させた茶葉から得られる、茶類のコク成分である重合体カテキンを高濃度に含有する香味の濃厚な茶抽出物(以下、第2の茶抽出物と呼ぶ)とを含有することを特徴とする、濃厚な旨味とコクを有し、香味に軽やかさがあり、渋味も少ない飲食物である(以下、本発明の第二の観点における飲食品を、第二の飲食品ということがある)。
【0017】
第1の茶抽出物は、上記第一の観点の発明において得られる茶であり、テアニンを最低で5mg/100ml以上含むが、抽出方法によってはより高含有させることができ、好ましくは10mg/100ml以上、さらに好ましくは15mg/100ml以上含有する。なお、本発明の遮光方法で生育した茶葉以外の原料から抽出した茶抽出物であっても、テアニンを上記の量で含むものは、同様に第1の茶抽出物として使用可能である。茶抽出物にテアニンが上記の量で含まれることは、HPLC(液体クロマトグラフィー)で確認することができる。
【0018】
第2の茶抽出物は、茶生葉に含まれるカテキン100%に対して発酵工程を経て生成したカテキン重合体量が50%より多くなるまで発酵させた茶葉から得られる抽出物である。当該50%より多くなるまで発酵させた茶葉とは、本来、茶生葉に含まれるカテキン総量を100とした場合に、発酵や酸化を受けてカテキン類の一部が重合体や酸化体に変化し、その変化した量がカテキン総量のうち50%以上になったものをいう。一般的に、発酵度合いが強くなると、カテキン総量自体には変化はなく、重合体の比率が増すことになる。ここで、カテキン重合体とは、重合カテキンとも呼ばれ、高分子ポリフェノールと同じ意味に使用され、二量体以上のカテキン重合体を包含する用語である。したがって、カテキン重合体が上記値より多く含まれる茶抽出物は、発酵に用いられる茶葉、例えば色種烏龍茶用本山茶の茶葉を適当な発酵条件で比較的長期間発酵させることにより容易に得られる。茶抽出物に含まれるカテキン重合体の量は、HPLC(液体クロマトグラフィー)で確認することができる。
【0019】
好ましい態様において、本発明の第二の飲食物は、第1の茶抽出物と第2の茶抽出物との含有比率が9:1〜2:8、より好ましくは7:3〜4:6である。当該含有比率は、テアニン分を多く含む第一の茶抽出物のみの場合又は重合体カテキンを多く含む第二の茶抽出物のみの場合に比して、旨味とコク味の双方を併せ持ち、発酵茶特有の渋みをもたず、且つ好ましい香味を有するに最適な比率である。すなわち、テアニン豊富分に対して重合体豊富分が9:1以下である場合、重合体豊富分のコク味が十分に付与されないものとなってしまう。また、テアニン豊富分に対して重合体豊富分が2:8以上である場合、重合体豊富分の異質の香味成分が強くなり濃厚な香味であるが良好な香味を持つものとはいえなくなってしまうので、この最適範囲で配合されるのが好ましい。
【0020】
第1の茶抽出物と第2の茶抽出物との混合または配合方法に特別の制限はなく、両者を液体状態で上記配合比率で混合することができる。あるいは、一方または双方の茶抽出物を濃縮エキスまたは乾燥粉末にしてから配合に用いることも可能である。
【0021】
本発明の第二の飲食物の好ましい態様は烏龍茶飲料である。これは、第1の茶抽出物と第2の茶抽出部を上記比率で配合した水性の飲料である。この飲料は新規タイプの烏龍茶であり、従来の烏龍茶と比べたとき、コクの点では同等であるが、旨味の濃厚さ、香りの軽やかさ・華やかさ、苦みの少なさ、色の澄み具合等の点で明らかに区別できるため、本明細書において烏龍茶飲料と呼ばれる。従来は、茶葉のテアニン含有量が増加すると発酵時の香味の生成が抑制されるため、発酵茶用の茶木を遮光して育成することは避けられてきた。これに対して、本発明の烏龍茶飲料は、茶木を遮光して育成して得られた、テアニンを始めとする呈味成分を多く含む発酵もしくは半発酵茶葉からの茶抽出物を、重合カテキンを多く含むよう十分に発酵させた茶葉からの茶抽出物と、所定の比率で混合することにより、本発明の新規タイプの烏龍茶飲料を製造することができたのである。
【実施例】
【0022】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。

実施例1
(1) 安溪県龍涓鎮の茶園において、烏龍茶用の茶木を用いて、7月20日〜7月31日までの期間に実験を行った。摘採日と予想される日の直前15、10、5または0日の間茶木を遮光率40、60または80%の寒冷紗で覆って育成し、摘採した茶葉の呈味を遮光率0%の対照と比較した。比較は3名の専門家が官能評価して行った。遮光率60および80%の場合、5〜15日の遮光処理により茶葉の呈味が有意に向上した。80%以上の遮光では処理を終わったあと遮光をやめたあと日焼けしてしまうため実施はできなかった。遮光率80%の場合に得られた茶葉の呈味向上の結果を表1に示す。表1中、「やや濃い」は、少し効果ありを、「濃い」は効果ありを、空欄は対照との差がなかったことを示す。
【0023】
【表1】


【0024】
(2) (1) の各条件で生育した茶葉に含まれるアミノ酸のテアニンやアスパラギン酸、グルタミン酸の分析を行った。表2に80%遮光条件の茶葉試料の分析値を示す。茶葉の抽出は3g/120ccで5分間 85℃で行い、抽出液を3倍希釈してアミノ酸を測定した。テアニン、アスパラギン酸、グルタミン酸といったアミノ酸は発芽のタイミングにもよるが60%または80%遮光を5日以上施した茶葉で増加していた。80%遮光での結果を表2に示す。
【0025】
【表2】


【0026】
(3) カテキン類では10日くらいでカテキンの生成が抑制されたが遮光が長くなると再び生成量が多くなった。カテキンの中でも渋みに大きく影響するEGCgやECgなどのカテキン(吸着カテキンともいう)も同様で10日以降はまた渋みが増してくることがわかった。苦味に影響するカフェインはカテキンとは逆に遮光すれば生成量が増加した。ただし、テアニンが増えてくる分甘さが増してくるし味が濃くなっていくのでカフェインの影響は呈味には大きく影響しないと考えられる。
【0027】
【表3】


【0028】
(4) 上記の遮光率80%で製造した烏龍茶葉を用いて烏龍茶を作り、従来の茶葉で作ったものと比較した。烏龍茶の製造は以下の方法で行った。
茶葉の計量 → 抽出(70℃〜90℃の熱水で抽出) → 固液分離 → ろ過 → 冷却 → 調合 → 加熱殺菌 → 充填(ペットボトル) → 冷却 → 箱詰め

茶葉は遮光80%で10日覆いをかけて製造したかぶせ茶と同じ茶園のまったく遮光を行わないで製茶を行った茶葉の両方を用いて抽出の温度水準を3水準設けて試作した。茶葉の使用量は各群15g/1000mlとし、ペットボトルに充填した。
【0029】
試作1週間後香味の評価を専門の評価者が行った。評価の結果を表4に示す。
なお、抽出条件は70℃、80℃、90℃とし保温をしながら5分間の抽出を行った。温度以外はほぼ同じ抽出条件を用いた。
【0030】
【表4】


【0031】
遮光をしない茶葉は夏茶であったため硬い葉が多くエキス分の出は一般的なものよりやや悪い傾向であった。一方の遮光処理を行った茶葉は柔らかくエキスの抽出も良くなされておりねらいの品質が得られた。この実験により遮光を行った場合の烏龍茶飲料は濃厚な呈味になると共に渋味が低減して抽出の温度を上げても良好な飲料が得られることがわかった。また、60〜95%の遮光をすることによって茶の茎や葉を柔らかくして烏龍茶の製造時の揉捻をしやすくし、さらに仕上げの包揉も強くかかるようにすることでうま味を強くすることが出来た。

実施例2
実施例1と同じ茶木により、9月16日〜9月30日までの間、遮光率40%、60%、80%で5日、10日、15日処理を行い、得られた茶葉の呈味を実施例1と同様に評価した。結果を表5に示す。
【0032】
【表5】


【0033】
アミノ酸のテアニンの分析も実施例1と同様に行い、同様の結果が得られた。結果を表6に示す。テアニンなどのアミノ酸は80%遮光では歴然と効果が出たが60%遮光でも80%と同じ傾向が出ており60%遮光5日でぎりぎりの効果が出た。(80%の結果は実施例1表1からもわかる通り60%よりもテアニンなどのアミノ酸を高含有していることが明らかのため割愛する。5日の場合は時期や場所に影響されたが40%遮光よりも効果はあると考えられる。)
【0034】
【表6】


【0035】
実施例3
新規タイプの烏龍茶飲料の開発を目的として、上記実施例でテアニン含量が5mg/100ml以上であると分析されたテアニン豊富茶抽出物と、総カテキン量に対して重合体カテキン量が50%以上となった重合体カテキン豊富茶抽出物とを用意した。
【0036】
ここで、テアニン豊富茶抽出物は、未発酵茶葉からの抽出物である。未発酵茶葉から抽出した理由は、テアニンの多い茶葉は発酵させても加水分解酵素が働かないため香りが出にくいことと発酵により重合カテキンを作ってしまうとテアニンを作った意味が薄れてしまうためである。テアニンはまったり感で重合カテキンはこくであるので感じ方は異なる。テアニンが多いと柔らかな香味になるが重合カテキンが多いと硬い香味になるのである。さらに、カテキンは重合すると分子量に応じて色が濃くなっていくが、未発酵茶葉の抽出物は液重合カテキンの量が少ないので淡い色を有している。
【0037】
上記重合体カテキン豊富茶抽出物は、以下の製法で製造した茶葉:摘採→天日干し(晒青:サイチン)→日陰干し(涼青:リャンチン)→長時間の発酵(作青:ツォチン)→炒青(チャオチン)→揉捻(ローニェン)→乾燥(▲共▼焙:ホンペイ)、を約15〜150倍量の水、温水または熱水で、場合によりアルカリ塩の存在下に1分〜10時間抽出して得られた抽出液である。
【0038】
これらの性格の異なる茶抽出液をそれぞれ以下の比率にして配合させた茶飲料の呈味および香味の評価を専門評価者が行った。評価の基準は5.0〜1.0とした。その結果、評点4.0以上が付与された、旨味且つコク味を有する濃厚な呈味と、軽やかで渋みを含まないが烏龍茶特有の香味とを有する茶飲料を得ることができた。テアニン豊富茶抽出物のみの場合は旨味はあるが、コク味を更に付与するためには10〜80%程度の重合体豊富茶抽出物を配合させることにより、旨味及びコク味に優れた濃厚な呈味を感じることができた。また、重合体豊富茶抽出物をこの比率にすることで、一般的な烏龍茶としての色調を呈すことができ、透明の容器詰め飲料に供する際に外観上も好ましい烏龍茶飲料となった。
【0039】
【表7】


【出願人】 【識別番号】000001904
【氏名又は名称】サントリー株式会社
【出願日】 平成17年3月8日(2005.3.8)
【代理人】 【識別番号】100089705
【弁理士】
【氏名又は名称】社本 一夫

【識別番号】100076691
【弁理士】
【氏名又は名称】増井 忠弐

【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰

【識別番号】100080137
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 昭男

【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行

【識別番号】100092886
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 清

【公開番号】 特開2006−246714(P2006−246714A)
【公開日】 平成18年9月21日(2006.9.21)
【出願番号】 特願2005−63883(P2005−63883)