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【発明の名称】 粒状肥料入り育苗培地
【発明者】 【氏名】木元 成年

【氏名】大上 進

【氏名】原田 典明

【氏名】坂本 淳

【要約】 【課題】本圃等へ移植後の苗の活着に必要な肥料成分が十分に供給でき、含有する肥料成分が経時変化しにくく、かつ育苗時の生育障害が起きにくい育苗培地、及びそれを用いる植物の栽培方法を提供する。

【解決手段】肥料成分として尿素−脂肪族アルデヒド縮合物を含有する粒状肥料を用い、該粒状肥料の粒子径を特定の範囲にして、培地基材(保水材)に混合し含有させた育苗培地、及びそれを用いる植物の栽培方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状肥料と培地基材とを含有する育苗培地であり、該粒状肥料が、肥料成分として尿素−脂肪族アルデヒド縮合物を含有し、粒子径1.0mm以上の粒子を70重量%以上含有し、かつ該粒状肥料の最大粒子径が2.0mm以下である育苗培地。
【請求項2】
粒状肥料の水溶性窒素成分含有率が10重量%以下である請求項1記載の育苗培地。
【請求項3】
育苗培地が、水溶性肥料成分として、窒素(N)、リン酸(P)、及び加里(KO)をそれぞれ10mg/L〜10g/L含有する請求項1または2記載の育苗培地。
【請求項4】
尿素−脂肪族アルデヒド縮合物が、アセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、グリオキサール縮合尿素、メチロール尿素重合肥料、及びホルムアルデヒド加工尿素肥料の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項記載の育苗培地。
【請求項5】
粒状肥料が、難水溶性リン酸肥料及び/または撥水性物質を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の育苗培地。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の育苗培地を用いる植物の栽培方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は育苗培地に関する。詳しくは、本圃等へ移植後の苗の活着に必要な肥料成分が十分に供給でき、かつ育苗時の生育障害が起きにくい育苗培地、及びそれを用いる植物の栽培方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新しい農業技術が開発され、それに伴って農業機械、農業資材等の技術革新が進んだ結果、農作業の大幅な省力化が実現されている。育苗分野でも、種々の育苗技術とそれらに用いられる各種各様の資材が開発されている(例えば、非特許文献1参照)。
特に、近年急速に普及している「セル育苗」は、農家における育苗の煩雑さとリスクを軽減すると共に、苗生産を工場化、分業化できる等の利点を有している。セル育苗は、例えば、連結型プラスチックトレーや連結型ペーパーポット等の育苗用連結型容器を用いて実施されている。
【0003】
セル育苗に使用する培地・培土(以下、培地という)としては特定の粒度分布を持つ原料を混合した基材と界面活性剤を特定の割合で配合した培地(例えば、特許文献1参照)が開示されている。また、塩基交換容量が50〜200meq/100gの範囲である無機素材、非木質系繊維有機素材、肥料成分、及び硝化抑制剤からなる培地(例えば、特許文献2参照)、肥料成分の粒子径が1mm以下であり、かつ緩効性窒素源化合物を窒素換算で10mg/L〜10g/Lの割合で含有する植物育苗培地(例えば、特許文献3参照)等が開示されている。
【0004】
しかし、上記の育苗用連結型容器は1鉢当たりの容量が小さいため、培地の充填量が限定され、育苗用容器から本圃等へ移植後の苗の活着に必要な肥料成分が、培地から十分に得にくいという問題がある。
更に、上記培地のように、粒子径が1mm以下の粉粒状緩効性窒素肥料を用いると、緩効性窒素肥料といえども保管条件によっては時間の経過と共に分解や無機化が生じてし、培地の理化学性や肥料成分量が変動するという問題がある。工業製品として培地を生産する上で、このような経時変化は品質管理上の大きな課題の一つである。
また、粒子径の小さい粒状肥料の表面を樹脂等で被覆した被覆肥料の開発されているが、被覆加工時に芯の粒状肥料が割れたり、粒子同士が結合して団粒化する等、大量生産しにくく、通常の粒子径の被覆肥料と比べてかなりコスト高である。
【0005】
【特許文献1】特開平8−37924号公報
【特許文献2】特開平8−56478号公報
【特許文献3】特開平10−19号公報
【非特許文献1】「園芸用育苗資材・装置利用の手引」社団法人日本施設園芸協会発行、1991年3月発行、30−73頁。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、本圃等へ移植後の苗の活着に必要な肥料成分が十分に供給でき、かつ育苗時の生育障害が起きにくい育苗培地、及びそれを用いる植物の栽培方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、前述の課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、肥料成分として尿素−脂肪族アルデヒド縮合物を含有する粒状肥料を用い、該粒状肥料の粒子径を特定の範囲にして、培地基材(保水材)に混合し含有させた育苗培地、及びそれを用いる植物の栽培方法によって、前記課題が解決されることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成した。
【0008】
本発明は、以下によって構成される。
(1)粒状肥料と培地基材とを含有する育苗培地であり、該粒状肥料が、肥料成分として尿素−脂肪族アルデヒド縮合物を含有し、粒子径1.0mm以上の粒子を70重量%以上含有し、かつ該粒状肥料の最大粒子径が2.0mm以下である育苗培地。
【0009】
(2)粒状肥料の水溶性窒素成分含有率が10重量%以下である前記(1)項記載の育苗培地。
【0010】
(3)育苗培地が、水溶性肥料成分として、窒素(N)、リン酸(P)、及び加里(KO)をそれぞれ10mg/L〜10g/L含有する前記(1)または(2)項記載の育苗培地。
【0011】
(4) 尿素−脂肪族アルデヒド縮合物が、アセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、グリオキサール縮合尿素、メチロール尿素重合肥料、及びホルムアルデヒド加工尿素肥料の群から選ばれた少なくとも1種である前記(1)〜(3)項のいずれか1項記載の育苗培地。
【0012】
(5) 粒状肥料が、難水溶性リン酸肥料及び/または撥水性物質を含有する前記(1)〜(4)項のいずれか1項記載の育苗培地。
【0013】
(6)前記(1)〜(5)項のいずれか1項記載の育苗培地を用いる植物の栽培方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の育苗培地であれば、保管中の培地の物理性や化学性、及び肥料成分量の変動が抑えられ、更に、培地に含有される粒状肥料が小粒でも肥効を長時間制御できる。また、本発明の育苗培地は、苗の生育に必要な肥料成分を均一にしかも十分に含有し、かつ培地の塩類濃度が発芽や苗の生育に悪影響を与えないように制御された植物育苗培地であり、育苗時の生育障害が発生しにくく、特に育苗用連結型容器を用いた栽培に好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の育苗培地は、培地基材(保水材)と粒状肥料とを含有する。該粒状肥料は、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物を、育苗培地中の窒素肥料の主成分(最も多い成分)として含有する。該粒状肥料は、粒子径1.0mm以上の粒子を70重量%以上、好ましくは90重量%以上含有し、かつ該粒状肥料の最大粒子径が2.0mm以下、好ましくは1.5mm以下である。粒子径が上記の範囲であれば、肥料成分である尿素−脂肪族アルデヒド縮合物が適度の速度で溶出して緩効性肥料として機能し、比較的小粒で均一であるため、育苗容器1鉢当たりの施肥粒数が確保できて施肥量のばらつきも少ない。
【0016】
本発明で用いられる粒状肥料は、苗を本圃等へ移植する時に株の根元に1株当たり1粒以上含有されて、肥料成分の吸収利用効率を上げ、高い肥効を発揮できるようにするため、粒状肥料1粒当たりの重量が0.1〜5mg、好ましくは1〜3mgであることが望ましい。粒状肥料1粒当たりの重量が上記の範囲であれば、粉状でないため肥効制御が容易で、植物体1株(または種子1粒)当たり適度の施用粒数が確保できるため、施肥量にばらつきが出にくく、均一で安定した肥効が発揮される。ここで、粒状肥料1粒当りの重量は1粒づつ計量しても良いが、100粒の重量を計量して求めた平均値でも構わない。
【0017】
本発明で用いられる粒状肥料の水溶性窒素成分含有率は、10重量%以下、好ましくは1〜7重量%であることが好ましい。肥料成分としての水溶性窒素成分の含有率が上記の範囲であれば、粒状肥料入り育苗培地をセル育苗に用いた場合に、生育の遅れ、葉色異常、枯死等の生育障害を起こすことなく、緩効性窒素肥料である尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の特徴を補うことができる。尿素−脂肪族アルデヒド縮合物のみの肥料を得ようとした場合、精製工程を介する分コスト高になり実用的でない。
本発明において水溶性窒素成分とは、含有成分が既知のものにおいてはアンモニア態窒素、硝酸態窒素、尿素態窒素等の水溶性窒素成分の分析値の和であり、肥料分析法に準拠して測定することができる(例えば、農林水産省農業環境技術研究所著,「肥料分析法(1992年版)」,(財)日本肥糧検定協会発行,1992年12月,p.26−p.27)。
【0018】
本発明で使用される尿素−脂肪族アルデヒド縮合物は、特に限定されず、直鎖状、分岐のある鎖状、環状等の何れの分子構造を持つ尿素−脂肪族アルデヒド縮合物であっても使用することができる。具体的には、肥料取締法(普通肥料の公定規格、肥料の種類)に記載のアセトアルデヒド縮合尿素、イソブチルアルデヒド縮合尿素、グリオキサール縮合尿素、メチロール尿素重合肥料、ホルムアルデヒド加工尿素肥料、オキサミド等を挙げることができる。本発明においてはそれらのうち1種以上を任意に選択し使用すればよい。
【0019】
本発明で用いられる粒状肥料には、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の無機化を促進して肥効を十分発揮させるため、更に難水溶性リン酸肥料を加えることが好ましい。
本発明で使用される難水溶性リン酸肥料は、水に難溶性で、植物に対してその正常な発育のために必要なリン酸成分を供給することが可能なものであれば特に限定されない。難水溶性リン酸肥料は、溶解度の低いリン酸化合物を主成分とするものであっても良いが、水溶性のリン酸成分を固定化し難水溶性にしたもの、粒子状のリン酸肥料の表面を水不溶性あるいは疎水性の物質で被覆したもの、更には、リン酸肥料の微粉末と該リン酸肥料以外の水不溶性あるいは疎水性の微粉末とを混合・造粒したもの等も挙げられる。
【0020】
その中でも、溶解度の低いリン酸化合物は、比較的簡便に用いることができるので好ましい。具体的には、20℃の水に対する溶解度が5g/100mL以下の物質が望ましく、例えば、熔成リン肥、加工リン酸肥料、腐植酸混合リン肥、焼成リン肥、レナニアリン肥、副産リン酸二石灰、副産リン酸三石灰、トーマスリン肥、メタリン酸加里、メタリン酸石灰、メタリン酸苦土、メタリン酸加里苦土、リン鉱石等を挙げることができる。この中でも、熔成リン肥、焼成リン肥、リン鉱石は、特に水に対する溶解度が低いため、本発明に好ましく使用することができる。リン酸1アンモニウムやリン酸2アンモニウム等の水溶性リン酸化合物は、本発明の効果を損なう場合がある。
【0021】
また、本発明に使用される難水溶性リン酸肥料は、その難水溶性リン酸肥料を下記式で示される重量比で30℃の2重量%クエン酸水溶液に浸漬後、含有するリン酸成分の80重量%が該クエン酸水溶液に溶出するのに要する時間が0.1〜2000分の範囲である溶出特性を有するものであることが特に好ましい。
式:難水溶性リン酸肥料/2重量%クエン酸水溶液(重量比)=0.013
【0022】
該溶出時間は具体的には次のような方法で測定することができる。300mL容のポリ瓶に難水溶性リン酸肥料2gと30℃に加熱した2重量%クエン酸水溶液150mLを入れ、30℃の振とう恒温槽で振とうする。経時的に該クエン酸水溶液の上澄みを少量ずつ取り、水で希釈後、希釈液中のリン酸成分をイオンクロマトグラフィーによって定量後、溶出曲線を作成することにより、該難水溶性リン酸肥料が含有するリン酸成分の80重量%が溶出するまでに要した時間を求めることができる。
【0023】
該溶出時間が0.1〜2000分の範囲であれば、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の無機化速度を容易に制御することが可能である。
【0024】
難水溶性リン酸肥料の該溶出時間が0.1〜2000分の範囲であるためには、該難水溶性リン酸肥料は水に対する溶解度が低く、単一の結晶で構成されていることが好ましい。更に、形状が粒子状である場合には粒子内に空隙が少ないものであることが好ましい。
【0025】
本発明に使用される難水溶性リン酸肥料の溶出時間を0.1〜2000分の範囲に調節する方法は、特に限定されないが、例えば、難水溶性リン酸肥料を粒子状としその粒子径を調節する方法、粒子状の難水溶性リン酸肥料の表面を水不溶性あるいは疎水性の物質で被覆する方法、及び、難水溶性リン酸肥料の微粉末と該リン酸肥料以外の水不溶性あるいは疎水性の微粉末とを混合・造粒する方法等を挙げることができる。
【0026】
そのうち、難水溶性リン酸肥料を粒子状としその粒子径を調節する方法は、比較的簡便に実施可能であり好ましい。その際の粒子径は使用する難水溶性リン酸肥料の種類や、要求される溶出時間によって異なるが、製造面、或いは尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の無機化速度調節の面から0.01〜0.5mmの範囲であることが好ましい。
【0027】
本発明において難水溶性リン酸肥料の添加割合は、特に限定されないが、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物に対しP換算で0.01〜5重量%の範囲であることが好ましい。難水溶性リン酸肥料の添加割合がこの範囲内であれば、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の無機化速度の制御を効果的に行うことが可能である。
【0028】
前述の尿素−脂肪族アルデヒド縮合物のうち、土壌中での無機化速度の制御が特に難しいアセトアルデヒド縮合尿素である2−オキソ−4−メチル−6−ウレイドヘキサヒドロピリミジン(以下、「CDU」という)、グリオキサール縮合尿素、メチロール尿素重合肥料、及びホルムアルデヒド加工尿素肥料において、本発明の効果がより顕著である。
【0029】
尚、本発明の効果をより安定して得るためには、粒状肥料に含まれる水溶性リン酸成分の含有割合は、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物に対して、P換算で0.5重量%以下であることが好ましい。この観点から、本発明に使用する難水溶性リン酸肥料は、リン鉱石及び/または熔成リン肥であることが好ましい。また、水溶性肥料としてリン酸肥料、普通化成肥料、二成分複合化成肥料、高度化成肥料、有機質肥料等のリン酸成分を含有する肥料を用いるときは、含有するリン酸成分の溶出時間と含有量を考慮して使用することが好ましい。
【0030】
また、本発明で用いられる粒状肥料に撥水性物質を含有させることにより、難水溶性リン酸肥料と該尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の土壌中における溶解を抑制し、該尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の肥効を更に広い範囲で制御することが可能となる。
粒状肥料で使用される撥水性物質は、防湿性、防水性を有する撥水性物質であれば特に限定されないが、その中でも融点が60〜130℃の範囲、好ましくは60〜100℃の範囲である撥水性物質は、本発明に好ましく使用することができる。撥水性物質の融点が60℃以上であれば、粒状肥料の夏季における保存性が安定し、該融点が130℃以下であれば、粒状肥料の製造時に粒状肥料の温度が130℃を超えるような熱処理を行う必要がなく、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の製造時における分解が生じにくい。
【0031】
本発明においては、撥水性物質として天然ワックス、合成ワックスから選ばれた1種以上を適宜使用するのが好ましい。天然ワックスとしては、キャデリンワックス、カルナウバワックス、ライスワックス、木ろう、ホホバ油等の植物系ワックス、みつろう、ラノリン、鯨ろう等の動物系ワックス、モンタンワックス、オゾケライト、セレシン等の鉱物系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム等の石油ワックスが挙げられ、合成ワックスとしては、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等の合成炭化水素、モンタンワックス誘導体、パラフィンワックス誘導体、マイクロクリスタリンワックス誘導体等の変性ワックス、硬化ひまし油、硬化ひまし油誘導体等の水素化ワックス、12−ヒドロキシステアリン酸、ステアリン酸アミド、無水フタル酸イミド、塩素化炭化水素等が挙げられる。この中でも、硬化ひまし油及びその誘導体が尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の無機化速度を制御するのに効果的である。
【0032】
本発明において撥水性物質の含有割合は、粒状肥料中の難水溶性リン酸肥料、撥水性物質、水溶性肥料及び尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の総量に対して好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは1〜15重量%の範囲である。撥水性物質の含有割合が上記の範囲であれば、撥水性物質の効果が十分で製造コストの上昇が少ない。
【0033】
本発明においては、本発明の効果を損なわない範囲であれば、粒状肥料の成分である尿素−脂肪族アルデヒド縮合物や水溶性窒素成分、難水溶性リン酸肥料、撥水性物質以外の成分を、粒状肥料の原料として使用することができる。該成分としては難水溶性リン酸肥料と水溶性窒素以外の肥料、各種造粒助剤、結合材等を挙げることができる。該成分は、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物、水溶性窒素、難水溶性リン酸肥料、撥水性物質を混合する際に添加するのが望ましい。
【0034】
難水溶性リン酸肥料と水溶性窒素成分以外の肥料としては、20℃の純水に対する溶解度が5g/100mL未満の水溶性肥料であり、リン酸(P)成分や加里(KO)成分を含有するもののほか、硫酸グアニル尿素等の化学合成系緩効性肥料、骨粉、油かす、肉かす等の有機質肥料、石灰質肥料、苦土質肥料、ケイ酸質肥料、及び微量要素肥料等を挙げることができる。本発明においては必要に応じてそれら肥料の中から1種以上を選択して用いればよい。
【0035】
造粒助剤としては、ベントナイト、クレイ、カオリン、セリサイト、タルク、酸性白土、軽石、珪砂、珪石、ゼオライト、パーライト、バーミキュライト等の鉱物質、モミガラ、オガクズ、木質粉、パルプフロック、大豆粉等の植物質等を挙げることができる。本発明においては必要に応じてそれら造粒助剤の中から1種以上を選択して用いればよい。
【0036】
結合材としては、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム、グリセリン、ゼラチン、糖蜜、微結晶セルロース、ピッチ、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、アルミナゾル、セメント、ポリリン酸ナトリウム、リグニンスルホン酸塩、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、界面活性剤、デンプン、熱硬化性樹脂原料等を挙げることができる。本発明においては必要に応じてそれら結合剤の中から1種以上を選択して用いればよい。
【0037】
本発明の育苗培地は、上記粒状肥料等の他に、培地基材(保水材)を含有しており、育苗に要する水分を保持し得るものであれば何れの材料であっても使用することができる。具体的には、土壌、軽量かつ保水性に優れる植物性繊維材料や、鉱物系材料を挙げることができる。
【0038】
土壌としては、沖積土、洪積土、火山性土、鹿沼土、ボラ土(日向土)、及び腐植土等の天然の土壌を挙げることができる。本発明においては、これらを熱等により殺菌した乾燥殺菌土が好ましい。このような殺菌土としては、赤玉土((株)ソイール製、赤土系殺菌土)や黒玉土((株)ソイール製、黒土系殺菌土)、殺菌ボラ土を挙げることができる。
【0039】
植物性繊維材料としては、ピートモスやヤシガラ(ヤシの果皮から外果皮及び内果皮を除去し取り出された中果皮から更に剛長繊維及び中短繊維を取り出した残滓物等)、樹皮、木材パルプ、もみ殻、大鋸屑等が挙げられる。鉱物系材料としては、例えば、焼成バ−ミキュライト、ベントナイト、ゼオライト等が挙げられる。また、バーミキュライトを焼成する際に残存する焼成残砂を用いても構わない。更に、これらの混合物でも構わない。
また、本発明の育苗培地には、必要に応じて粒状綿等の人工繊維、木炭、くん炭等の有機物の炭化物、パーライト、尿素樹脂発泡体等の土壌改良材を配合することもできる。
【0040】
本発明の育苗培地に含まれる培地基材(保水材)の割合は、育苗培地に対して、10〜70重量%の範囲であることが好ましい。尚、本発明の育苗培地の比重は、0.2〜0.7g/cmであることが好ましい。
【0041】
本発明の育苗培地中に含有される窒素肥料成分は、粒状肥料含有の水溶性窒素成分量と培地基材(保水材)中の水溶性窒素成分量との合計量が植物体に悪影響を及ぼさない範囲で育苗培地全体の含有量を任意に調整すればよい。その目安としては、育苗培地における水溶性窒素成分が10mg/L〜10g/Lの割合で育苗培地に含有させることが好ましい。
また、本発明育苗培地における水溶性窒素成分が上記の範囲であれば、水溶性窒素成分により育苗時必要な窒素成分を確保しながら、移植以降に必要な窒素成分を尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の肥効を制御することによって、苗に供給することができる。
【0042】
本発明の育苗培地に含まれる培地基材(保水材)には必要に応じてリン酸(P)、加里(KO)等の成分を含有するの肥料を添加することができる。リン酸(P)、及び加里(KO)としての添加量の目安は、育苗培地における含有量がそれぞれ10mg/L〜10g/Lの範囲である。
前記に用いられる肥料としては、具体的には、尿素、硫安、塩安、硝安等の水溶性窒素肥料、熔リン、リン酸1アンモニウム、リン酸2アンモニウム、過リン酸石灰、重過リン酸石灰、重焼リン、苦土重焼リン等のリン酸肥料、硫酸加里、塩化加里、重炭酸加里、腐植酸加里等の加里肥料、微量要素肥料これらの混合物等を挙げることができる。
【0043】
この他、本発明の育苗培地には、必要に応じて殺菌剤、殺虫剤、植物成長調節剤、界面活性剤等を本発明の効果を阻害しない範囲において適量含有させることもできる。
【0044】
本発明の育苗培地を用いた植物の栽培方法は、対象作物、肥培管理方法等は特に限定されない。特に本発明の育苗培地は、水溶性肥料と尿素−脂肪族アルデヒド縮合物とを併用することにより従来用いることが困難とされた、水稲、野菜、花卉、果樹、樹木等の育苗時においても培地中に含まれる肥料量を増やすことができ、被覆肥料でなくても根に肥料やけを起こさない特長を有する。また、本発明の効果を損なわない範囲であれば、水溶性肥料を少量足してもかまわない。
【0045】
本発明の育苗培地の使用によって、水溶性肥料成分で速効分を過不足なく供給しながら、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の肥効を長期間制御することにより追肥の省略化ができ、かつ粒子径が小さいため単位面積や植物体当たりの粒数を多くすることができる。そのため、本発明の育苗培地は、食用作物、園芸作物、鑑賞作物等苗を育苗して栽培する植物の栽培に適しており、特に、育苗用連結型容器を用いるセル育苗に好適である。
【実施例】
【0046】
以下実施例によって本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。尚、以下の実施例における「%」は特に断りがない限り「重量%」である。
【0047】
実施例、比較例で用いられた試験方法は下記の通りである。
(1)肥料成分(窒素、リン酸、加里)
窒素(N):培地50gに窒素成分抽出用調製液(KCl−HCl液;特級塩化カリウム315gを純水3Lに溶かし、塩酸150mLを加えて調製する)300mlを加え1時間攪拌・ろ過して得た抽出液を調製し、無機態窒素量をアンモニア態、亜硝酸態、硝酸態窒素の同時浸出測定法(「土壌養分分析法」、養賢堂、1970年12月発行、p.197−p.200に記載の方法)で測定し(測定値1)、CDU窒素量をジメチルアミノベンズアルデヒド法(「改訂詳解肥料分析法」、養賢堂、1973年1月発行、p.69−p.72に記載の方法)で測定し(測定値2)、測定値1と測定値2の和を窒素の測定値とし、培地の見かけ比重(kg/L)より窒素成分(mg/L)を算出した。
リン酸(P):農林水産省農業環境技術研究所「肥料分析法(一九九二年版)」((財)日本肥糧検定協会、1992年12月発行)に従い、クエン酸2%水溶液で抽出されたリン酸成分を測定し、前記窒素と同様に算出した。
加里(KO):土壌標準分析・測定法委員会編「土壌標準分析・測定法」(博友社、1986年11月発行)に従い、水溶性陽イオンの項によって加里成分を測定し、前記窒素と同様に算出した。
(2)培地の見かけ比重
山中式容積重測定器を使用し、測定容器中の培地重量(kg)の数値を測定容器容積(L)の数値で除して求めた。
(3)pH、EC、水分
土壌標準分析・測定法委員会編「土壌標準分析・測定法」(博友社、1986年11月発行)に従い、pHはガラス電極法、EC(電気伝導度)は1:5水浸出法、水分は乾熱法によって測定した。
【0048】
尿素−脂肪族アルデヒド縮合物(CDU)の合成例
尿素60gを水60mLに溶解し、濃塩酸8.5mLを加え、氷冷下にアセトアルデヒド30gを滴下し、50℃で4時間攪拌しながら反応させ析出した結晶を濾過し、水で洗浄した後に減圧乾燥してCDU(純度99.9重量%以上)を得た。得られたCDUを篩い、目開き150μmの篩いの目をパスした粉粒体を以下の試験に用いた。尚、CDU粉粒体の尿素等水溶性肥料含有率は、0.05重量%以下であった(薄層クロマトグラフ法による)。
【0049】
粒状肥料の製造例(粒状肥料1〜5)
前記のCDU粉粒体、及び尿素(20℃の純水に対する溶解度が107.7g/100mL)を表1に示した割合で投入量の合計が20kgとなるように、容量50Lの球形混合機に投入し5分間混合して、混合物を得た。
次に、該混合物1kgを直径120cmの回転皿型パン造粒機に入れ、40rpmの回転速度で該混合物を転動させながら水及び混合物を少量ずつ添加し、平均粒子径が1.3mm程度になるまで造粒した。造粒後、熱風循環乾燥機を用い120℃の条件下で6時間乾燥し、更に、振動篩で分級して粒子径が1.18〜1.40mmの粒状肥料1を得た。また、粒状肥料1の場合と同様に、表1の割合で投入量の合計が20kgとなるようにして粒状肥料2〜4を得た。
更に、粒状肥料3の製造時に、振動篩で分級して粒子径が1.18mm未満の粒状肥料5、及び粒子径が2.5〜4.1mmの粒状肥料6を同時に得た。粒状肥料5は、篩い目開き1mmパス品の割合が40重量%であった。
【0050】
実施例1
培地基材(保水材)の焼成バ−ミキュライト(2mm篩パス品、見かけ比重0.11[kg/L]、pH(重量比1:5水)8.1)、ピ−トモス(3mm篩パス品、見かけ比重0.11[kg/L]、pH(重量比1:5水)4.2)、殺菌ボラ土(4mm篩パス品、見かけ比重0.85[kg/L]、pH(重量比1:5水)5.5)を容量比70:23:7の割合で混合し、保水材混合物を得た。該混合物に、肥料成分として粒状肥料1、重焼リン、リン酸溶液(32%)、硫酸加里を含む水溶液を重量比633:367割合で、回転容器型混合装置(容量;1m3、回転数;12rpm)で均一になるまで十分に混合し、本発明の育苗培地を得た。
該育苗培地の製造直後の物理性及び化学性は、見かけ比重0.38[kg/L]、pH(重量比1:5水)5.2、EC(重量比1:5水)0.7mS/cm、水分35重量%であり、肥料成分は窒素156mg/L、リン酸1120mg/L、加里 154mg/Lであった。
【0051】
実施例2〜4
粒状肥料1を粒状肥料2〜4に変えた以外は実施例1と同様にして、育苗培地を得た。
実施例2の育苗培地の製造直後の物理性及び化学性は、見かけ比重0.38[kg/L]、pH(重量比1:5水)5.2、EC(重量比1:5水)0.7mS/cm、水分35重量%であり、肥料成分は窒素155mg/L、リン酸1125mg/L、加里 153mg/Lであった。
実施例3の育苗培地の製造直後の物理性及び化学性は、見かけ比重0.38[kg/L]、pH(重量比1:5水)5.3、EC(重量比1:5水)0.7mS/cm、水分36重量%であり、肥料成分は窒素157mg/L、リン酸1119mg/L、加里 156mg/Lであった。
実施例4の育苗培地の製造直後の物理性及び化学性は、見かけ比重0.38[kg/L]、pH(重量比1:5水)5.2、EC(重量比1:5水)0.7mS/cm、水分35重量%であり、肥料成分は窒素155mg/L、リン酸1121mg/L、加里 155mg/Lであった。
【0052】
【表1】


窒素成分含有率は肥料分析法(デバルダ合金−硫酸法)による測定値。
水溶性窒素成分は尿素態窒素及びアンモニア態窒素の測定値の和より算出。
熔成リン肥:南九州化学工業(株)製、くみあい熔リン20−15−20(商品名)の篩 分品(180μmの篩いを通り、150μmの篩いを通らないもの)。
尿素:関東化学(株)製、試薬特級。
撥水性物質:カスターワックスFP(商品名)、小倉合成工業(株)製、硬化ひまし油、 融点81℃。
【0053】
比較例1〜3
これとは別に、粒状肥料1をくみあい31.0CDU窒素粉品(チッソ旭肥料(株)製、粒度1.00mm篩パス)、粒状肥料5、粒状肥料6に換えるほかは実施例1と同様に育苗培地を製造し、それぞれ比較例1、2、3とした。
比較例1の育苗培地の物理性及び化学性は、見かけ比重0.38[kg/L]、pH(重量比1:5水)5.2、EC(重量比1:5水)0.7mS/cm、水分35重量%であり、肥料成分は窒素154mg/L、リン酸1122mg/L、加里 156mg/Lであり、比較例2、3の育苗培地の物理性及び化学性は、実施例3とほぼ同様であった。
【0054】
比較例4〜5
粒状肥料7として市販のホルムアルデヒド加工尿素肥料(商品名「オーガナイト」、三井東圧肥料(株)製)、粒状肥料8としてホルムアルデヒド加工尿素肥料(商品名「ホルム窒素2号」、三井東圧肥料(株)製)を用い、それぞれ振動篩(目開き1.0mm)により粉状の肥料を除去した。粒状肥料7の窒素成分含有率は39.5%、内水溶性窒素成分17.0%、粒状肥料8の窒素成分含有率は41.3%、内水溶性窒素成分28.9%であった(水溶性窒素成分は公定分析法の測定値)。
粒状肥料1を粒状肥料7、粒状肥料8に換えるほかは実施例1と同様に育苗培地を製造し、それぞれ比較例4、5とした。比較例4、5の育苗培地の物理性及び化学性は、実施例1と同等であった。
【0055】
保存安定性試験(無機化量の測定)
実施例1〜4及び比較例1〜3の育苗培地を縦83cm×横53cmのポリエチレン製袋に15kg充填後、密封した。封入されたサンプルは常温で保管した。三ヶ月後に開封後、各サンプル育苗培地をそれぞれよく混合した後、そのうち10gを採取した。採取した育苗培地中の無機態窒素量をアンモニア態、亜硝酸態、硝酸態窒素の同時浸出測定法(「土壌養分分析法」、養賢堂、1970年12月発行、p.197−p.200に記載の方法)で測定し測定値Aとした。
試験は全て3反復制とした。また、粒状肥料を含有していない育苗培地の試験区(上記3.の保水材混合物)を設け、供試土壌に元来含まれていた無機態窒素量を測定し測定値Bとした。上記測定値Aと測定値Bの差から添加した肥料由来の無機態窒素量を算出し、三ヶ月後の肥料由来無機態窒素量と製造直後の肥料由来無機態窒素量の差から得られる無機化量を保存安定性の指標として用いた。供試育苗培地中の無機化量測定結果を表2に示す。
【0056】
【表2】


無機化量[mg/L]=三ヶ月後の無機態窒素量−製造直後の無機態窒素量
【0057】
表2の結果からも明らかな通り、実施例1〜4、比較例3では保存後も製造直後とほぼ同等の品質であったのに対し、比較例1〜2では時間の経過と共に変化しており、品質保持が困難であることがわかる。これは、尿素−脂肪族アルデヒド縮合物が分解したことが原因であり、このまま使用すると、分解産物のアンモニア態窒素、硝酸態窒素による理化学性(例えば、pH、EC等)の変動による生育不良が懸念される。
【0058】
栽培試験1
実施例1〜4、比較例1〜5で製造した育苗培地を用いて育苗を行い、その様子を調査した。ヤンマートレイ20−288穴(商品名、ヤンマー農機(株)製、セル容量20mm角×深さ40mm、288穴)に育苗培地を充填後ネギ(品種「長悦葱」、協和種苗(株)製)を播種後、該育苗培地で覆土した。その他は慣行法に従って育苗を行った。
移植前に、肥料2を用い、1トレイずつ1穴当たり窒素(N)成分で0.1gとなるようにセルトレイの上から施肥(トップドレッシング)を行い、本圃に移植した。以降は慣行法に従い栽培を行った。
【0059】
栽培試験2
栽培試験1と同様に実施例1〜3、比較例1で製造した育苗培地を用いて育苗を行い、その様子を調査した。
ヤンマートレイ45−55穴(商品名、ヤンマー農機(株)製、セル容量45mm角×深さ45mm、55穴)に育苗培地を充填後、トマト(品種「強力米寿」、タキイ種苗(株)製)を播種し、十分な量の潅水を行った。以後は慣行法に従って育苗を行った。
【0060】
栽培試験1、2の結果、本発明の育苗培地を用いて育苗を行った苗は生育、根張りとも良好であり、本圃に容易に移植できた。また、移植後も長期間の肥効を持続した。これは、本発明の育苗培地が苗の生育に必要な肥料成分を均一にそして十分に含有し、かつ育苗培地の水溶性肥料成分濃度が種子の発芽や苗の生育に悪影響を与えないように、含有している尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の分解(無機化)が制御されたことを示す。
比較例1、2、4、5の育苗培地を用いて育苗した試験区は生育障害が発生した。比較例1、4、5の場合は、水溶性肥料成分(水溶性窒素)の濃度障害、比較例2は尿素−脂肪族アルデヒド縮合物の無機化による培地pH及び水溶性肥料成分の影響が原因と推測される。
比較例3の場合は、セル間のばらつきが多く生育が不揃いな苗が育成された。育苗培地に含まれる粒状肥料の粒子径が大きくて、セルトレイのセル容量が小さいために育苗培地中で粒状肥料が局在化し、セル当たりの粒状肥料含有量のばらつきを反映しているものと思われる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
特に育苗用連結型容器を用いたセル育苗による植物栽培に好適である。
【出願人】 【識別番号】000002071
【氏名又は名称】チッソ株式会社
【出願日】 平成17年8月25日(2005.8.25)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−187273(P2006−187273A)
【公開日】 平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願番号】 特願2005−244322(P2005−244322)