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【発明の名称】 屋上緑化工法および屋上緑化システム
【発明者】 【氏名】東川久孝

【氏名】田瀬理夫

【氏名】佐藤良信

【要約】 【課題】植物の植生間隔を密にすることなく、設置面積を超えた緑化面積を確保できる低コストで付加価値の高い屋上緑化技術を提供すること。

【解決手段】設置面積に対して緑化面積が卓越した複数の多面緑化体10を使用し、前記多面緑化体10を相互に間隔を隔てて屋上に点在させて、緑化面を立体的に形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋上に緑化面を形成する屋上緑化工法であって、
設置面積に対して緑化面積が卓越した複数の多面緑化体を使用し、
前記多面緑化体を屋上に点在させて設置したことを特徴とする、
屋上緑化工法。
【請求項2】
請求項1において、複数の多面緑化体を均一間隔、または不均一間隔で点在させたことを特徴とする、屋上緑化工法。
【請求項3】
請求項2において、文字、図形または模様の形態となるように前記複数の多面緑化体を屋上に点在させたことを特徴とする、屋上緑化工法。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかにおいて、前記多面緑化体が有孔構造の箱体と、前記箱体に収容した植生基盤と、前記容器の少なくとも側面に立体的に植生した植物とにより構成することを特徴とする、屋上緑化工法。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかにおいて、前記各多面緑化体にスカートを付設したことを特徴とする、屋上緑化工法。
【請求項6】
屋上に緑化面を形成した屋上緑化システムであって、
屋上に点在させて設置し、設置面積に対して緑化面積が卓越した複数の多面緑化体と、
前記各多面緑化体の間に形成した通風と採光用の空間とにより構成することを特徴とする、
屋上緑化システム。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はビルやマンション等の各種建造物、或いはダムや大型オブジェ等の各種構造物の上面を緑化する技術に関し、より詳細には複数の緑化面を具備する多面緑化体を用いた屋上緑化工法および屋上緑化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ヒートアイランド化及びCO2の抑制、建物の空調エネルギーの削減等を図る目的で建造物や構造物の屋上或いは天端面等(以下「屋上」という)を緑化するさまざまな提案がされている。
建物の屋上緑化については、環境の整った場所で栽培した緑化プランターや緑化マット状物を隙間なく多数並べて配置したり、層状に形成した植生基盤材に種子を蒔いたり植物の苗を植え付けたりすることで所望の緑化面積を確保している。
【0003】
【特許文献1】特開2004−275067号公報
【特許文献2】特開平9−322651号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のこの種の緑化技術にはつぎのような課題がある。
(1)従来の緑化技術は植生形態が平面的であるため、緑化プランターや緑化マット状物等の設置面積を超えた範囲で植生をすることが技術的に難しい。
殊に、建物を建てる場合も各自治体が制定した緑化条例の適用を受けて一定以上の緑化面積の確保が求められることから、必要な緑化面積に対して建物の屋上面積が満たないときは、建物そのものの計画の見直しを迫られる。
(2)屋上緑化には特殊組成の植生基盤を大量に使用したり、大型の潅水施設の設置を必要としたりするために設置コストやメンテナンスコストが嵩み、近時のトータルコストの低廉化に対応し難い。
(3)限られた屋上面積の下で植生面積を広げるためには、必然的に植生間隔を密にすることとなって、採光性や通風性が悪化して生育環境として好ましくない。
(4)植物の生育環境の観点に立てば客土等の植生基盤の層厚は厚くすることが望ましいが、その反面、植生基盤の層厚に比例して建物の荷重負担が増すために建物の補強対策が必要となる。そのために、従来の屋上緑化技術にあっては、植生基盤を薄く敷き詰めると共に、薄層の植生基盤に耐え得る品種の植物を選定して植生している。
このように従来は、植物の生育環境に必要なだけの植生基盤の層厚を確保することが技術的に困難であったという問題と、屋上緑化に適応可能な植物がセダム系植物等の特定の品種、乾燥地域に適した草本類や、コケ類に限られてしまい、植生可能な植物の選択幅が非常に狭いといった問題がある。
(5)複数の緑化プランターを設置して緑化する方法は古くから知られているが、部分的な小面積の緑化には適するが、設置面積を超えた大規模面積の緑化には対応することができない。
【0005】
本発明は以上の点に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、少なくともつぎのひとつの屋上緑化技術を提供することにある。
(1)植物の植生間隔を密にすることなく、設置面積を超えた緑化面積を確保できること。
(2)簡易な施工と低コスト化の両立を図ること。
(3)屋上緑化に付加価値を付与すること。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の第1本発明に係る屋上緑化工法は、屋上に緑化面を形成する屋上緑化工法であって、設置面積に対して緑化面積が卓越した複数の多面緑化体を使用し、前記多面緑化体を屋上に点在させたことを特徴とするものである。
本願の第2発明に係る屋上緑化工法は、前記した第1発明において、複数の多面緑化体を均一間隔、または不均一間隔で点在させたことを特徴とするものである。
本願の第3発明に係る屋上緑化工法は、前記した第2発明において、文字、図形または模様の形態となるように前記複数の多面緑化体を屋上に点在させたことを特徴とするものである。
本願の第4発明に係る屋上緑化工法は、前記した第1乃至第3発明の何れかにおいて、前記多面緑化体が有孔構造の箱体と、前記箱体に収容した植生基盤と、前記容器の少なくとも側面に立体的に植生した植物とにより構成することを特徴とするものである。
本願の第5発明に係る屋上緑化工法は、前記した第1乃至第4発明の何れかにおいて、前記各多面緑化体にスカートを付設したことを特徴とするものである。
【0007】
本願の第6発明は、屋上に緑化面を形成した屋上緑化システムであって、屋上に点在させて設置し、設置面積に対して緑化面積が卓越した複数の多面緑化体と、前記各多面緑化体の間に形成した通風と採光用の空間とにより構成することを特徴とするものである。
前記した第6発明において、複数の多面緑化体を均一間隔、または不均一間隔で点在させてもよい。
前記した第6発明において、文字、図形または模様の形態となるように前記複数の多面緑化体を屋上に点在させてもよい。
本願の第6発明において、前記多面緑化体が有孔構造の箱体と、前記箱体に収容した植生基盤と、前記容器の少なくとも側面に立体的に植生した植物とにより構成してもよい。
前記した第6発明において、前記各多面緑化体にスカートを付設してもよいし、また必要に応じて前記各多面緑化体に潅水装置を付設してもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明は少なくともつぎのひとつの効果を得ることができる。
(1)設置面積に対して緑化面積が卓越した多面緑化体を屋上に点在させることで、限られた屋上面積の下で、全緑化体の総設置面積を越えた緑化面積を確保することができ、場合によっては屋上面積を超えた緑化面積を確保することも可能である。
(2)全多面緑化体の総設置面積を越えた面積の緑化面を立体的に形成できることから、各自治体が制定した緑化条例の適用対象である建物の屋上緑化を実現し易くなる。
(3)本発明は複数の多面緑化体をドット配置すると共に、建物の荷重負担を増大させることなく、一つの多面緑化体に植物の生育に十分な植生基盤の量を確保し得るものであるから、従来の屋上緑化技術が内包する緑化面積の確保の問題と、植生基盤による建物の荷重負担の問題と、植物の生育環境の整備の問題と、植物の選択肢の問題のすべての問題点を解消できて、良好な屋上緑化の実現が可能となる。
殊に、層状に形成した客土等の植生基盤に平面的に植生した従来の緑化技術と比較して、緑化面積に対する多面緑化体中の植生基盤の重量を著しく軽量化することができる。
(4)本発明は安価な多面緑化体を点在させるだけで多くの緑化面積を確保できる利点を有しつつ、従来の屋上緑化システムと比べて単位面積当たりの緑化コストと維持管理コストを大幅に低減することが可能となる。
(5)各多面緑化体の間に形成される空間を通風空間、採光空間として活用できるだけでなく、植物の成長に伴う将来の緑化領域として、或いはメンテナンススペースや散策通路スペースとしても有効活用することができる。
(6)各多面緑化体による遮熱作用と蓄水作用、および緑化体の影を活用した遮熱作用によって、既設構造物のヒートアップ現象の優れた抑止効果を達成できる。
(7)各多面緑化体にスカートを付設すると、屋上の遮熱と太陽光の照り返しの防止と落葉受けとして機能させることができる。照り返しの防止や落葉受けを図ることが可能となる。
(8)各多面緑化体の配置形態(ドット配置)を任意に選択することで文字や図形等を表示して、屋上緑化の付加価値を高めることができる。
(9)多面緑化体の箱体を金属製カゴで構成する場合は、金属屋根へクランプ金物での固定が容易であること等、建築物の屋根へ固定することになじみやすい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に図面を参照しながら本発明の最良の形態について説明する。
まず、屋上緑化システムに使用する多面緑化体について説明する。
【0010】
(1)屋上緑化システムの概要
図1に一部を省略した既設構造物の屋上50に複数の多面緑化体10を既設の建造物や構造物の水平または傾斜した屋上50に点在させて設置した屋上緑化システムを示す。
本発明では緑化体として設置面積に対して緑化面積が卓越した多面緑化体10を使用するものである。
【0011】
(2)多面緑化体
図2,3示すように、多面緑化体10は縦横の複数の面に各種の植物を立体的に植生したもので、有孔構造の箱体20と、箱体20に収容した植生基盤と、箱体20の底面を除いた側面21に上面を加えた複数の面に各種の植物4とにより構成し、植物4を植生した多面緑化体10の少なくとも複数の側面21が緑化面となる。
多面緑化体10の大きさは運搬性や取扱性を考慮した適宜の寸法でよい。
【0012】
植生基盤は一般土壌等の公知の基盤材料を使用できるが、本例では植生基盤が箱体20の各側面21の内側に設置した複数の植生ブロックマット5と、植生ブロックマット5の内方の囲繞空間に充填した貧栄養の植生基盤30との複合材で構成する場合について示す。
以降に多面緑化体10の主要な構成部材について詳述する。
【0013】
[箱体]
箱体20は図2に示すように方形を呈する複数の側面21と、一枚の底面22とよりなる有孔構造の箱で、各側面21の両側を互いに突合せて囲繞し、突合せ箇所を連結コイル等の連結具23で接続して立方形に形成する。
【0014】
箱体20の側面21を構成する素材として、図3に示すような縦横線の一方の線材を連続して凹凸形状に屈曲して形成し、この屈曲した複数の屈曲線材と複数の直線状線材とを交差させ、各交差部を溶接した溶接金網が使用可能である。
箱体20の素材はその他に、凹凸のない溶接金網、一般金網、エキスパンドメタル、有孔板等が使用可能である。箱体20の形状は図示したキューブ形に限定されるものではなく、それ以外の多角形状体、球体等であってもよい。
【0015】
[植生ブロックマット]
薄厚の植生ブロックマット5は、ハウスや路地を問わず生育環境の整った場所で時間を十分にかけて生育したもので、植物の生育に適した土壌や公知の植生基盤を含む植生基盤を成形予定の平面四角形を呈する薄鉢のトレー容器に充填し、この植生基盤に播種または苗を植栽して各種の植物4を育成する。
植生ブロックマット5を育成する際に、通気性と通水性を有し、かつ、植物の根系の透過を阻止する性状のシートをトレー容器内に予め敷設して植生すると、伸張を規制されて植生基盤の全体に広がった植物の根系が土粒を保持するために植生基盤が安定化するので、崩れ難く取り扱いに便利である。
また植生ブロックマット6の使用に代わり、内張りシートに植生した形態を採用することも可能である。
【0016】
[植物]
箱体20内の植生基盤30にボリュームがあるので、公知の広範囲に亘る植物を植生するのに適して、植物4としては草本類、木本類、竹類などの公知の植物のいずれか一種または複数種を組み合わせたもので、例えば貧栄養で厳しい環境に適応できる性質の野草、ツタ植物、コケ類等や低木等を採用できる。
【0017】
[貧栄養の植生基盤]
これまでの植生基盤は、農作物の栽培と同様に成長量を重視する考えに基づきたくさんの栄養素を含む富栄養のものであったが、本発明では多面緑化体10の大半を占める植生基盤30に貧栄養のものを使用する。
本発明でいう貧栄養とは、植物4の枯死に直結する過度の養分不足の環境を意味するものではなく、例えば鉱物イオン物質をバランス良く混入した無機質主体の基盤で、植物4の過度の成長を抑制して長く生育させる性質の基盤状態を意味する。
また必要に応じて植生基盤30に保水材を混入しておく場合もある。
【0018】
(3)多面緑化体の製造方法
図3に基づいて多面緑化体10の製造方法について説明すると、まず箱体20内に植生ブロックマット5を縦向きにして収容し、各側面21の内側に、植物4の繁茂面を外向きにして植生ブロックマット5を配置する。側面21全面を植生ブロックマット5で囲ったら、その内側に貧栄養の植生基盤30を大量に投入する。
【0019】
箱体20の各側面21に設置する複数の植生ブロックマット5の組み合わせは、同種植物の組み合わせ、または異種植物の組み合わせの何れでもよい。
箱体20の上面には、貧栄養の植生基盤30に植物4を直接植生するか、または植生ブロックマット5を水平に設置して、箱体20の複数の面に植物4を立体的に生やした多面緑化体10を得る。
【0020】
(4)多面緑化体の点在配置
据付面に対して緑化面積が卓越する多面緑化体10を使用し、前記複数の多面緑化体10を所定の間隔を隔てて屋上50に設置する。
【0021】
設置にあたり、既設構造物の屋上50に多面緑化体10を直接載置してもよいが、屋上50の上面に設置したベースブロック51上に載置することが望ましい。
また屋根50に勾配がついていたり、強風が予想される環境下においては、図4に示すようにアングル材製の据え付け枠52を予め屋根50に取り付けて置き、この据え付け枠52に多面緑化体10の底部を収容して固定するとよい。多面緑化体10の固定手段は設置現場に応じて適宜公知の手段を適用することができる。
【0022】
このようにして設置した各多面緑化体10は植物4の根系が貧栄養の植生基盤30に徐々に進入し時間をかけてゆっくりと生育する。
屋外に露出した各多面緑化体10は、自然降雨により植生基盤30に保水されて人工的な散水は不要であり、植物4の生育環境の管理を特別行わなくて済む。
【0023】
本発明は、屋上50に設置面積(据付面積)に対して緑化面積が卓越した多面緑化体10を均一間隔、または不均一間隔で点在させたものである。
したがって、多面緑化体10の設置面積に対して、多面緑化体10の側面部分も緑化面積となることから、隣り合う多面緑化体10の間の植物の存在しない面も実質的に緑化した場合と同様の緑化面積を確保することができる。そのため、多面緑化体10を点在させるだけで、全ての多面緑化体10の総設置面積(設置面積)に対して倍加した大規模な緑化面積を提供することが可能となる。
【0024】
しかも、各多面緑化体10の間の空間は通風空間や採光空間となって植物の良好な生育環境を作り出せるだけでなく、植物4の成長に伴う将来の緑化領域としても有効活用することができる。
さらに、多数の多面緑化体10による蓄水作用と、多数の多面緑化体10の据付面と立体的な多面緑化体10の影による遮熱作用との相乗作用により、屋根50のヒートアップ現象に対し優れた抑止効果を発揮する。
【0025】
(5)その他の実施の形態1
多面緑化体10を屋根50に点在させる配置形態としては、つぎの配列が可能である。
a)複数の多面緑化体10を直線状、曲線状、方形状または円形状、同心多重状、またはこれらを組み合わせた形状に配置する。
b)複数の多面緑化体10を均一、不均一の間隔を隔てて配置する。
c)複数の多面緑化体10を隣接させて列状に配置する。
d)上記したa〜cを適宜組み合わせて配置する。
【0026】
また本発明は多面緑化体10をドット的に配置するので、上記した設置形態を選択して、或いは適宜組み合わせることで文字、図形、模様或いは絵柄等を表現すれば、単なる緑化作用だけでなく装飾作用や広告作用を付与できるので、屋上緑化の付加価値を格段に高めることができる。
【0027】
(6)その他の実施の形態2
図4に示すように多面緑化体10の裾部の周囲にスカート60を付設すると、屋上50の遮熱と太陽光の照り返しの防止と落葉受けとして機能させることができる。スカート60としては、板体の他に網状物や布等を使用できる。
また図示を省略するが、必要に応じて前記各多面緑化体10に公知の潅水装置を追加して付設してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る屋上緑化システムの概要説明図
【図2】多面緑化体の斜視図
【図3】多面緑化体の縦断面図
【図4】多面緑化体にスカートを敷設した他の実施の形態の説明図
【符号の説明】
【0029】
4・・・植物
5・・・植生ブロックマット
10・・・多面緑化体
20・・・箱体
21・・・側面
22・・・底面
30・・・貧栄養の植生基盤
50・・・屋上
51・・・ベースブロック
52・・・据え付け枠
60・・・スカート
【出願人】 【識別番号】303019271
【氏名又は名称】日本郵政公社
【識別番号】504244405
【氏名又は名称】株式会社プランタゴ
【識別番号】390019323
【氏名又は名称】小岩金網株式会社
【出願日】 平成16年12月7日(2004.12.7)
【代理人】 【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生

【公開番号】 特開2006−158294(P2006−158294A)
【公開日】 平成18年6月22日(2006.6.22)
【出願番号】 特願2004−354379(P2004−354379)