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【発明の名称】 蘚苔類植物担持体
【発明者】 【氏名】山本 喜正
【住所又は居所】滋賀県蒲生郡竜王町大字鏡字谷田731−1 積水樹脂株式会社内

【氏名】野口 和裕
【住所又は居所】滋賀県蒲生郡竜王町大字鏡字谷田731−1 積水樹脂株式会社内

【要約】 【課題】建造物の屋上や壁面、法面等の緑化に好適に用いることができ、発育や生育を促した緑化用の蘚苔類植物担持体を提供する。

【解決手段】蘚苔類植物が繊維の集合体に保持されてシート状になされており、その蘚苔類植物保持シート2が通気を遮断する支持体1に取り付けられて、設置面より嵩上げされていることにより、降雨等で大量の水分が供給された場合でも蘚苔類植物が水没するのを防ぐことができる。更に、設置面に凹みがある場合、その凹みに溜まった雨水等の水分が太陽光によって温められ温水となり、その温水が気化した場合においても、通気を遮断する支持体の機能により、気化した温水が支持体上面にまで到達することは無いので、気化した温水が蘚苔類植物の育成に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維集合体に蘚苔類植物を保持させた蘚苔類植物保持シートが、通気を遮断する支持体の上面に取り付けられたことを特徴とする蘚苔類植物担持体。
【請求項2】
通気を遮断する支持体は、少なくとも上面側に排水溝部を有することを特徴とする請求項1に記載の蘚苔類植物担持体。
【請求項3】
通気を遮断する支持体は、他の支持体と連結可能となされた連結部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の蘚苔類植物担持体。
【請求項4】
通気を遮断する支持体の少なくとも上面側に設けられた排水溝部は、碁盤目状に設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の蘚苔類植物担持体。
【請求項5】
通気を遮断する支持体は、蘚苔類植物保持シートの周囲全てにおいてはみ出して取り付けられたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の蘚苔類植物担持体。
【請求項6】
蘚苔類植物保持シートと支持体の間に保水体が設けられると共に、該保水体は保水体を複数の区画域に仕切る溝部が設けられたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の蘚苔類植物担持体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の屋上や壁面、道路構造物や道路周辺の法面等を蘚苔類植物により緑化するのに好適に用いることができる蘚苔類植物担持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
夏場において、とりわけ大都市においては、都心の温度が郊外と比べ4〜6度も高くなる、いわゆるヒートアイランド現象が問題視されており、例えば東京都においては、既に条例により建造物の占める面積に対し、一定の割合で緑化を義務づける条例が施工されている区も出てきている。
【0003】
建造物において、緑化を行うのであれば、緑化が可能な部位は、屋上か壁面に限られる。これらの箇所に樹木や芝生等の土壌を必要とする植物を適用する場合、まず問題となるのがその重量であり、土壌の重量を建造物が支えることが出来ない場合には、それらを用いて緑化を行うことは困難である。また、壁面に緑化を施す場合においては植栽枡を設ける等、複雑な機構を必要とするものとなる。また、灌漑設備が必要である場合も多く、設備が複雑となるとともにメンテナンスが必要である。植物自体も定期的な手入れを行う必要もあり、壁面等は非常に手間がかかる作業となる。
【0004】
これらの解決方法として、蘚苔類植物を用いて緑化を行う提案が近年なされてきている。蘚苔類植物を用いることで、従来用いられてきた例えば樹木や芝生、セダム等の多肉植物等とは異なり、殆ど土壌を必要とすることなく生育させて構造物の屋上や壁面等を緑地とすることができる、また、蘚苔類植物は、保水性が高く、自重の10〜20倍の水分を保水することができ、保持した水分や、その水分の蒸散により、建造物の温度を下げてヒートアイランド現象の軽減を好適に図ることができる。
【0005】
また蘚苔類植物は乾燥状態が続いても仮死状態となるだけで枯死することがなく、降雨等により再度水が与えられると再生することから潅水する必要がなく、従って潅水にかかわる設備も必要としない。さらには、光合成の効率も樹木や芝生と大差ないものであるから、炭酸ガスの固定化にも高いレベルで貢献できるものである。
【0006】
これらの蘚苔類植物の特性を活用し、緑化に用いるべく種々の発明が提案されてきており、シート状やマット状に蘚苔類植物担持体を形成し、それらを屋上や壁面に取り付けたり、また蘚苔類植物を含有した塗物を、壁面や法面に吹き付けるといった方法が提案されてきている。
【0007】
例えば特許文献1には、粘着シート状に蘚苔類植物を接着させたものが開示されている。これらのシート状の緑化用固定物や緑化用シートは、対象物に貼着等により固定しておくことで容易に緑化が可能なものであり、屋上や壁面、法面等に好適に用いることができるものである。
【0008】
【特許文献1】特開2001―234132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前記文献に示されるシート状の蘚苔類植物担持体は緑化部位に配置するだけで簡単に緑化が可能である。しかしながら、それらのシート状の蘚苔類植物担持体を直接屋上やベランダ等の緑化部位に敷設すると、大量の雨が降った場合に流されたり浸水して根腐れをおこす危険性がある。また、シートを直接貼り付けているので、蘚苔類植物全体に十分な空気の循環が行われず発育に差が発生したり、空気循環不足で常時多湿の状態が続くとカビや菌が発生、繁殖して、最悪の場合は蘚苔類植物が枯渇する可能性もある。また、屋上やベランダの熱が直接植物に伝導してしまい、蘚苔類植物の生育に影響を及ぼす懸念があった。
【0010】
特に、夏季における夕立等、激しい雨が短時間で降って蘚苔類植物担持体が浸水し、太陽光等でその水が温水となった場合や、屋上駆体にある凹みに水が溜まり、その水が太陽光で温められて温水となった場合等は、蘚苔類の生育に甚大な悪影響を及ぼし、枯渇してしまう可能性もある。また、冬季においては、屋上駆体にある凹みに溜まった水が夜間に凍結し、続いて昼間の太陽光により凍結した水が溶解する状況が繰り返された場合、蘚苔類植物の生育に甚大な影響を及ぼし枯渇してしまう可能性もある。
【0011】
また、シート状の蘚苔類植物担持体は、特に屋上や屋根等に設置した場合、吹き抜ける風によりシートごと吹き飛ばされることがあった。
【0012】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、建造物の屋上や壁面、法面等の緑化に好適に用いることができ、発育や生育を促した緑化用の蘚苔類植物担持体を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は次のような構成としている。すなわち、繊維集合体に蘚苔類植物を保持させた蘚苔類植物保持シートが、通気を遮断する支持体の上面に取り付けられたことを特徴とするものである。
【0014】
また、通気を遮断する支持体は、少なくとも上面側に排水溝部を有することを特徴とするものである。
【0015】
また、通気を遮断する支持体は、他の支持体と連結可能となされた連結部を有することを特徴とするものである。
【0016】
また、通気を遮断する支持体の少なくとも上面側に設けられた排水溝部は、碁盤目状に設けられていることを特徴とするものである。
【0017】
また、通気を遮断する支持体は、蘚苔類植物保持シートの周囲全てにおいてはみ出して取り付けられたことを特徴とするものである。
【0018】
さらに、蘚苔類植物保持シートと支持体の間に保水体が設けられると共に、該保水体は保水体を複数の区画域に仕切る溝部が設けられたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、蘚苔類植物が繊維の集合体に保持されてシート状になされており、その蘚苔類植物保持シートが通気を遮断する支持体に取り付けられて、設置面より嵩上げされていることにより、降雨等で大量の水分が供給された場合でも蘚苔類植物が水没するのを防ぐことができる。更に、設置面に凹みがある場合、その凹みに溜まった雨水等の水分が太陽光によって温められ温水となり、その温水が気化した場合においても、通気を遮断する支持体の機能により、気化した温水が支持体上面にまで到達することは無いので、気化した温水が蘚苔類植物の育成に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0020】
また、通気を遮断する支持体の少なくとも上面側に排水溝部を設けるようにすれば、降雨等による過剰な水分は繊維集合体に蘚苔類植物を保持させた蘚苔類植物保持シートを通過し、当該支持体の排水溝部を伝って排水されるので、蘚苔類植物が過剰な水分に浸されることを防ぐことができ、根腐れ等を回避することができる。また、冬季においては、屋上駆体にある凹みに溜まった水が夜間に凍結し、続いて昼間の太陽光により凍結した水が溶解する状況が繰り返された場合でも、過剰な水分は排水溝部を伝って排水されるため、凍結融解の繰り返しを低減でき、蘚苔類植物の生育を良好なものとなすことができる。
【0021】
また、通気を遮断する支持体に、他の支持体と連結可能となされた連結部を設けるようにすれば、施工が非常に容易となり、さらに必要に応じて増設や張り替え、移し替えが容易である。また、屋上等に設置した場合に、複数の支持体を連結することにより、シート状のものに比べ、吹き抜ける風により蘇苔類植物担持体が吹き飛ばされるのを好適に防ぐことができる。
【0022】
また、前記排水溝部を碁盤目状に設けるようにすれば、複数の支持体を連結する場合、ランダムに排水溝部を設けるものに比べ、雨水等の水分の排水性を向上させることができ、好ましい。
【0023】
また、排水を考慮し勾配を設けてある場所に、複数の支持体を連結し蘇苔類植物担持体を設置する場合、前記支持体を蘚苔類植物保持シートの周囲全てにおいて、はみ出して取り付けるようにすれば、隣接する蘇苔類植物担持体の1個単位毎に蘚苔類植物保持シートは縁切りされているため、蘚苔類植物保持シートを伝って低い側に設置された蘇苔類植物担持体に水分が伝わらず、蘇苔類植物担持体の1個単位毎で略均一に雨水が保水され、蘇苔類植物の発芽状態を略均一なものとなすことができる。これにより、広い面積に設置した蘇苔類植物担持体全体を略同様の発芽状態となすことができるため、どこの部位でも温度を下げる効果を略均一となすことができ、更に緑化時の見栄えを良好なものとなすことができる。逆に、蘇苔類植物担持体の1個単位毎に蘚苔類植物保持シートは縁切りされていない場合には、高い位置に設置された蘇苔類植物担持体には水分が蓄えられず、低い位置に設置された蘇苔類植物担持体には十分な水分が供給されることになり、蘇苔類植物担持体の1個単位毎に蘇苔類植物の発芽状態が大きく違ってくるため、上述の効果が得られ難くなる。
【0024】
さらに、排水を考慮し勾配を設けてある場所に、複数の支持体を連結し蘇苔類植物担持体を設置する場合、蘚苔類植物保持シートと支持体の間に保水体を設けると共に、該保水体には保水体を複数の区画域に仕切る溝部を設けるようにすれば、複数の蘇苔類植物担持体の側面を突き合わせて広い面積に設置した時であっても、各々の保水体内で溝部により仕切られた区画域に保持された水分の相互の流通を防ぐことができるため、複数の蘇苔類植物担持体間に目地を設けることなく略均一に蘇苔類植物の発芽状態となすことができ、複数の蘇苔類植物担持体間に目地を設けなくても、前項で述べた効果を得ることができるため、温度を下げる効果を保持させながら、更に見栄えをよくなすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明に係わる実施の形態について、図面に基づき以下に具体的に説明する。
図1は、本発明の蘚苔類植物担持体の、実施の一形態を示す斜視図である。1は通気を遮断する支持体であって、矩形の支持体1の上面に、後述する蘚苔類植物を保持した繊維集合体からなる蘚苔類植物保持シート2が取り付けられて、一体化されている。蘚苔類植物保持シート2には、人工芝葉状体23が植設されている。また、支持体1の外周には、蘚苔類植物担持体10を複数連結できるように、連結部11が設けられている。連結部11は、支持体1の各辺に2個ずつ形成され、支持体1の側面から突出した部分と、支持体1の側面内側に凹んだ部分からなり、突出した部分と凹んだ部分が嵌合することにより、隣接する蘚苔類植物担持体10を連結するようになされている。
【0026】
係る支持体1によって、蘚苔類植物は蘚苔類植物担持体10を設置する設置面より嵩上げされていることにより、降雨等で大量の水分が供給された場合でも蘚苔類植物が水没するのを防ぐことができる。更に、設置面に凹みがある場合、その凹みに溜まった雨水等の水分が太陽光によって温められ温水となり、その温水が気化した場合においても、通気を遮断する支持体1の機能により、気化した温水が支持体1上面にまで到達することは無いので、気化した温水が蘚苔類植物の育成に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【0027】
蘚苔類植物担持体10を複数連結できるように支持体1の外周に連結部11を設けることにより、使用者が自由に複数連結できるため、施工が非常に容易であり、さらに必要に応じて増設や張り替え、移し替えが容易である。また、蘚苔類植物担持体10を複数連結することにより、屋上等に設置した場合に、シート状のものに比べ、風等によって蘚苔類植物担持体10が吹き飛ばされるのを好適に防ぐことができる。
【0028】
次に図2には、支持体1と蘚苔類植物保持シート2とを一体化する時の分解斜視図を示す。3は排水溝部であって、支持体1の上面には、凹んだ排水溝部3が碁盤目状に設けられており、排水溝部3以外の支持体1上面は高さは揃えられており、支持体1上面に蘚苔類保持シート2を取り付けやすくなされている。降雨等により蘚苔類植物保持シート2の上面から降り注ぐ水分のうち、蘚苔類植物保持シート2が吸収しきれない過剰な水分は蘚苔類植物保持シート2を透過し、支持体1の排水溝部3に到達し、排水溝部3を通って蘚苔類植物担持体10の側面側に流れていく。よって、蘚苔類植物が過度の水分に浸されることを防ぐことができ、根腐れ等を回避することができる。
【0029】
本発明に用いる支持体1は、図1、2に示されるものに限定されるものではなく、蘚苔類植物を安定に保持できるだけの十分な剛性と、傾斜面や若干の曲面でも設置可能であるように柔軟性のある支持体で、且つ通気を遮断する構造であればよい。また、その材質は耐水性、耐アルカリ性、耐候性、耐薬品性等を有するものであれば、特に限定されるものではないが、成形性、柔軟性に優れ、且つ屋上等に設置する場合には軽量なものが望ましいため、軽量であるポリスチレン発泡体が好適に用いられる。
【0030】
また、図3に支持体1の変形実施例を示す。支持体1の上面側のみならず下面側にも、凹んだ排水溝部3´が碁盤目状に設けられている。蘚苔類植物担持体10を設置する設置面と支持体1の間に、降雨等による水分が侵入した場合にも、支持体1の下面側に設けた排水溝部3´を伝って水分は排水されるため、浸入した水分により蘚苔類植物担持体10が浮き上がるのを防ぐことができる。
【0031】
次に図4は、蘚苔類植物担持体10に用いる蘚苔類植物保持シート2の実施例を示す断面図である。2つの繊維集合体21a、21bとの間に蘚苔類植物22が挟み込まれて、後述する機械的絡合手段により繊維同士が絡まり合い積層一体化されてシート化されている。また、蘚苔類植物保持シート2表面には、機械的絡合手段により主に繊維集合体21bを表面に突出させた部分cが平行に複数本設けられ、更に、主に繊維集合体21bを表面に突出させた部分cと垂直に交わるように人工芝葉状体23が植設されている。この人工芝葉状体23は、蘚苔類植物保持シート2を貫くように植設されており、人工芝葉状体23が抜け落ちないように裏面シート24が取り付けられている。このようにすれば、接着剤や粘着剤等を用いる必要なく、また別の糸を用いて縫製等により固定することもなく、蘚苔類植物22が均一に分散した積層体を形成することができる。接着剤等を用いる必要がないため、薬剤から出る成分が蘚苔類植物に悪影響を及ぼす心配もなく、接着剤自身が立体的障害となったり植物同士が接着されたりして生育が阻害される懸念もない。また、繊維以外に植物を留める糸等も必要ないことから工程が簡略となる。
【0032】
更に、主に繊維集合体21bを表面に突出させた部分cは、繊維が表面より突出しているために蘇苔類植物22を外部から保護すると同時に蘇苔類植物22が蘚苔類植物保持シート2側面からこぼれ出るのを防ぐことができ、また、植物が植生されているかのように見えるため、外観も向上させることもできる。特に、蘇苔類植物担持体10の設置初期においては、蘇苔類植物22は、生育が十分でないため蘇苔類植物担持体10の中に埋没している。ヒートアイランド現象の緩和や二酸化炭素の固定化という植物の作用は発揮されるものの、外観上の緑化が不足している。繊維を表面に突出させて絡ませた部分cが表面より突出していることによって、設置初期から外観上も植物様に見え、見栄えのよい緑化資材を提供することができる。また、このとき、蘚苔類植物22と下側の繊維集合体21bのシートとの間に比較的伸縮の少ない繊維シート25を挟持しておくと、蘚苔類植物保持シート2の寸法安定性が高くなり好ましい。
【0033】
前記蘚苔類保持シート2は、次のように形成されている。まず、予め蘚苔類植物22を5〜50mm程度の大きさに裁断しておき、繊維集合体21a上に均等になるように置く。その上から、もう一方の繊維集合体21bを載せて、2つの繊維集合体21a、21bとの両側から、機械的絡合手段であるニードルパンチを行う。蘚苔類植物22を繊維集合体21a上に均等に置く場合、裁断した蘚苔類植物22をばら撒くようにしても良いし、予め蘚苔類植物22をポリビニルアルコール等の生育に影響のない材料で接着してシート化したものを繊維集合体上に置き、その上から別の繊維集合体を載せても良い。蘚苔類植物22を予めシート化しておけば、均一に蘚苔類植物22を挟み込むことができるとともに、ニードルパンチで繊維集合体21a、21bと一体化した後も蘚苔類植物22の脱落を好適に防ぐことができる。そして、この蘚苔類保持シート2を貫くように、人工芝葉状体23を植設すればよい。
【0034】
また、本発明の蘚苔類植物担持体10の設置場所によっては、風雨が非常に強い場所も想定される。例えば、高層建築物の屋上や道路近傍の垂直壁面等は強い風や雨等が直接吹き付ける。この様な場所に設置された場合にも、繊維が表面より突出していることで、繊維を表面に突出させて絡ませた部分cにより、風雨等から蘚苔類植物22を保護する効果があり、また踏み付け等からの保護にもなる。さらに、蘚苔類植物22の上面に繊維集合体21b及び繊維を表面に突出させて絡ませた部分cが林立しているので、蘚苔類植物22の上面の空気を滞留させ、水分の蒸発を抑えて乾燥を遅くすることができたり、降雨による水を効率よく受け止めたり、水を保持することもでき、蘚苔類植物の生育を助ける効果もある。
【0035】
機械的絡合手段であるニードルパンチの針は、通常のニードルパンチ用の針でもよいが、先端がU字型に凹みを有する針を用いると、一度にニードルパンチで押し込むことのできる繊維数が増え、表面で絡ませた繊維であるパイルを太く、効率的に作成することができ、蘚苔類植物担持体10を強く接合させることができる。また、このように一度のニードルの嵌入で、押し込む繊維の量を増やすことができるので、ニードルパンチの回数を減らすことができ、効率が良くなるとともに挟み込む蘚苔類植物22へ与える損傷も少なくすることができる。
【0036】
本発明に係る蘚苔類植物担持体10に用いる蘚苔類植物22の種類は、設置場所によって選定することができる。蘚苔類植物22には大きく分けて、好日性、半日陰性、日陰性のものがあり、それぞれ生育に太陽光が必要なもの、太陽光があまり必要でないもの、太陽光が不要なものがある。例えば、設置方向の関係で太陽光が当たらない場所や、当たりにくい場所には、日陰性、半日陰性の蘚苔類植物22を用いると良い。例えば、スナゴケ、ハイスナゴケ、ハイゴケ等は、太陽光が当たるところで用いるとよく、シッポゴケ、カモジゴケ、トヤマシノブゴケ、ヒノキゴケ等は、日陰で用いるのがよい。
【0037】
また、2つの繊維集合体21a、21bに蘚苔類植物22を挟み込むときに、蘚苔類植物22とともに他の機能性材料を加えてもよく、例えば保水性を有する材料や、蘚苔類植物22の成長を助ける材料等が挙げられる。この時加える材料は、シート状に一体化しやすいように、蘚苔類植物22と絡み合いやすいものがよい。具体的には、例えばミズゴケを加熱して死滅させたものを加えてもよく、保水効果が高く、蘚苔類植物22との絡み合いもしやすい。また、植物どうしであるので蘚苔類植物22の生育に悪影響を及ぼすこともない。
【0038】
また、繊維集合体21a、21bの材質や形態は、繊維からなるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、アクリル、セルロース、ポリウレタン、芳香族ナイロン、ポリベンズイミダゾール、ノボロイド等の合成繊維やそれらの複合繊維、アセテート等の半合成繊維、キュプラ、レーヨン等の再生繊維、絹、綿、羊毛等の天然繊維、またはそれらの混合繊維等からなる織布や不織布等のシート状のもの、繊維ウェッブ状のものを組み合わせて用いることができる。例えば、下側の繊維集合体21aには不織布シートを用い、上側の繊維集合体21bには、繊維ウェブを用いるとよい。また、生分解性の樹脂繊維を用いてもよく、上記繊維に混合して用いても良い。
【0039】
前項で記述した繊維ウェッブ状のものは、ワタ状の繊維のかたまりであって、繊維と繊維のすき間が多い。この繊維ウェッブ状のものをニードルパンチのような機械的絡合手段で押し込めば、繊維の一本一本が内部に侵入しやすく、また絡まりやすいため、比較的少ない量で好適に蘚苔類植物22を固定することができる。また、すき間が大きく、繊維の使用量も比較的少ないので、蘚苔類植物22の生育を阻害しにくいとともに、生育に必要な太陽光も内部の蘚苔類植物22まで行き届く。
【0040】
繊維集合体21a、21bの繊維の太さは、機械的絡合手段により蘚苔類植物22や繊維集合体に入り込んで一体化できる太さであれば、特に限定されるものではないが、0.1〜50デニール程度が好ましい。これ以上細いと、繊維は抜けやすくなりまた、接合強度が弱くなってしまう。また、絡合の密度は1平方センチメートルあたり10〜80回程度が好ましい。これ以上絡合点が多いと、接合の強度は大きくなるが、植物の自由度が下がり生育が阻害される可能性がある。また逆に絡合点が少ないと十分に固定されなく、蘚苔類植物22や繊維が脱落する恐れがある。
【0041】
また、繊維集合体21a、21bの繊維には水溶性繊維と非水溶性繊維を混合して用いてもよい。その配合量は、繊維量の20〜90パーセント程度が好ましく、さらには、50〜80パーセントが好ましい。水溶性繊維の配合量が大きすぎると、水溶性繊維が溶解した後に、蘚苔類植物22を担持する繊維が少なくなるため、蘚苔類植物22が脱落しやすくなる。また、配合量が小さいと、溶解した後の繊維の間隙が少なく、蘚苔類植物22が生育するスペースが限られ、生育を阻害する可能性がある。また、水溶性繊維の配合量が少ないとその粘着性が十分に発現しない。
【0042】
水溶性繊維は特に限定されるものではないが、ポリビニルアルコールが好適である。ポリビニルアルコールは、水溶したときに中性を示し、蘚苔類植物22の生育に害を与えることが無いため、好適である。また、非水溶性繊維は、特に限定されるものではなく、前記の繊維集合体に用いることのできる繊維で示したものを用いればよい。繊維に水溶性繊維を混合する際は、上下両方の繊維集合体21a、21bに入れてもよいが、上側の繊維集合体21bにのみ水溶性繊維を混合するだけでもよい。上側の繊維集合体21bに水溶性繊維を添加していれば、蘚苔類植物22は上方に向かって生育するので、繊維の溶解後、繊維密度が小さくなり植物の生育を阻害しない。また、粘着成分が蘚苔類植物22の上部から覆い被さり、十分に粘着性を発現できる。
【0043】
繊維集合体21b側の表面に突出させた人工芝葉状体23の長さは、突出部分が3〜20mm程度が好適である。これ以上長すぎると太陽光の入射を妨げたり、蘚苔類植物22の生育を立体的に阻害してしまう可能性があり、逆に短すぎると保湿性や保護性能が小さくなり、また抜けやすくなるため、上記の範囲が好ましい。
【0044】
また、繊維を表面に突出させた人工芝葉状体23のピッチは、10〜20mm程度が好ましい。この間隔以下になると蘚苔類植物22の生育できる有効スペースが小さくなるため好ましくない。また逆に間隔が20mmより大きいと蘚苔類植物22の保持性や保護性が低下し、生育を促進させる保水性や保湿性も低下するため、好ましくなく上記の範囲内とするのがよい。
【0045】
また、植設する人工芝葉状体23を生分解性としてもよい。このようにすれば、蘚苔類植物22が十分に発育したときに、人工芝葉状体23が消滅するようにすることもできる。植物が十分に発育すれば、人工芝葉状体23の役割である美観性の維持や植物の保護、担持等が不要になるため、このように生分解性を保持させておくとよい。
【0046】
また、蘚苔類保持シート2の、下側の繊維集合体21aと、蘚苔類植物22との間に比較的伸縮の少ない繊維シート25を挟んでもよく、この比較的伸縮の少ない繊維シート25としてはスパンボンドを好適に用いることができる。また、このとき繊維集合体21aと比較的伸縮の少ない繊維シート25は予めニードルパンチ法で一体化しておくとよい。
【0047】
また図5は、蘚苔類植物担持体10に用いる蘚苔類植物保持シート2の別の実施例を示す断面図である。非水溶性繊維の不織布の繊維シート26と水溶性物質と非水溶性繊維が混合された不織布繊維シート27との間に、5〜50mm程度の適度に裁断された蘚苔類植物22を介装する。その後、蘚苔類植物22が介装されたシートを貫くように、人工芝葉状体23が植設されている。
【0048】
水溶性物質と非水溶性繊維が混合された不織布繊維シート27に含まれる水溶性物質は、ポリビニルアルコールが好適であり、水をかけると粘接着性が発現し、蘚苔類植物22を好適に担持できる。蘚苔類植物22を二枚のシートに介装したあとに、少量の水をかけることによって、ポリビニルアルコールの一部が溶解して粘接着性を示し、蘚苔類植物22を強固にシートに担持することができる。
【0049】
蘚苔類植物22は、屋上や壁面、法面等へ配置された直後の設置初期段階において、シートから脱落し易いが、ポリビニルアルコールを含んだシートを用いることによって、その粘着性により脱落を防止することができる。また、ポリビニルアルコールは降雨等で漸進的に溶出し、消滅するので、蘚苔類植物22の生育を妨げない。また、ポリビニルアルコールは溶解しても中性を示すため、アルカリ成分等で蘚苔類植物22の生育を妨げることもない。
【0050】
水溶性物質と非水溶性繊維が混合された不織布繊維シート27は、非水溶性繊維の割合が5〜30%程度が好ましく、さらに言及すれば10%〜30%程度が好ましい。非水溶性繊維の割合が多いと、水溶性物質が溶解したあとに苔植物上部に残存する繊維が多くなり、苔植物を覆ってしまう。そのため苔植物の生育を妨げることもあり、また均一に成長しないため、美観上も好ましくない。逆に、非水溶性繊維の配合量が少ないと、水溶成分が溶出したあとに、蘚苔類植物22を覆う繊維成分が少なく、蘚苔類植物22が脱落し易くなる。
【0051】
非水溶性繊維は特に限定されるものではなく、合成繊維や天然繊維、もしくはそれらの混合繊維が用いられる。また、非水溶性繊維の不織布の繊維シート26に用いられる繊維と、水溶性物質と非水溶性繊維が混合された不織布に用いられる繊維は、異なっていてもよい。水溶性物質と非水溶性繊維が混合された不織布27に用いられる非水溶性繊維としては、例えば合成繊維であるレーヨン等が好適に用いられる。
【0052】
また、蘚苔類植物22を介装した2枚のシート、非水溶性繊維の不織布の繊維シート26及び水溶性物質と非水溶性繊維が混合された不織布繊維シート27を貫くように人工芝葉状体23を植設している。このようにすることで、蘚苔類植物22を介装している2枚のシート同士を強固に固定することもでき、2枚のシートが剥がれ落ちることがなく、蘚苔類植物22の保護等にもなる。また、美観性も向上する。
【0053】
また、上記のシートの下面に保水性を有するシートを取り付けても良く、一定期間水分を溜め込んでおくことができ、降雨の無い期間でも、植物に水分を補給することことができ、生育を促進することができる。その保水性を有するシートの材質は、水分を吸収するとともに水分を維持することのできるものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタラート樹脂系保湿材やグラスウール、ロックウール等の合繊繊維等と言った繊維状物質、砂利や砂等の粒子状物質、シリカゲルや活性炭やゼオライト等のような多孔質体、吸水性ポリマー、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ゴム製スポンジ、等が好適に用いられる。
【0054】
上記のように作成したシート状の様々な形態の蘚苔類保持シート2は、接着剤や両面テープ等で貼り付けたり、ビス止め等の物理的結合手段を用いる等の既存の方法により支持体1の上面に取り付けるようになされている。
【0055】
また、このようにして形成された蘚苔類植物担持体10は屋上やベランダ、バルコニー、壁面、道路に設置される防音壁や壁高欄、高架道路の橋脚、中央分離帯、歩車道分離帯、法面等、様々なところへ設置することができる。このとき、担持体は、複数が連結可能になっているので所望の面積を容易に施工でき、また、張り替え等も可能である。
【0056】
次に、図6a)、b)は2個の蘚苔類植物担持体10の設置状態を示す概略側面図である。4は保水材であり、その上下面は蘚苔類保持シート2と略同一形状となされている。支持体1は、その周囲全体が蘚苔類植物保持シート2及び保水材4からはみ出してなされており、当該支持体1の上に保水材4が取り付けられ、更にその上に蘚苔類植物保持シート2が取り付けられている。図6a)とb)における支持体1の形状の違いは、その周縁部が上方に突出してなされているか、凹んでなされているかである。いずれの場合も、隣接する蘚苔類植物担持体10の間に目地が設けられ、保水材4が縁切りされている。これにより、蘚苔類植物保持シート2を伝って低い側に設置された蘇苔類植物担持体10には水分が浸透せず、蘇苔類植物担持体10の1個単位毎で略均一に蘇苔類植物22の発芽状態となすことができる。よって、複数設置した蘇苔類植物担持体10全体を略同様の発芽状態となすことができるため、どこの部位でも温度を下げる効果を略均一となすことができ、更に緑化時の見栄えを良好なものとなすことができる。3個以上の蘚苔類植物担持体10を連結して設置する場合も、上述と同様の状態となすことができることは言うまでもない。
【0057】
保水材4は、一定期間水分を溜め込んでおくことができ、降雨の無い期間でも、植物に水分を補給することことができ、生育を促進することができる。その保水性を有するシートの材質は、水分を吸収するとともに水分を維持することのできるものであれば特に限定されるものではなく、例えばポリエチレンテレフタラート樹脂系保湿材やグラスウール、ロックウール等の合繊繊維等と言った繊維状物質、砂利や砂等の粒子状物質、シリカゲルや活性炭やゼオライト等のような多孔質体、吸水性ポリマー、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ゴム製スポンジ、等が好適に用いられる。
【0058】
更に、図7は蘚苔類植物担持体10の別の実施例を示す分解斜視図である。蘚苔類保持シート2の下面には、それと略同一形状の保水材4が取り付けられ、保水材4の下面には、それと略同一外形の支持体1が取り付けられる。保水材4の下面側から逆V字型の溝部5が、保水材4の略中心を通り十文字状に設けられており、当該溝部5により、保水材4は複数の区画域に仕切られている。排水を考慮し勾配を設けてある場所に、この蘚苔類植物担持体10を複数、その側面を突き合わせて設置する場合、保水体4に設けた逆V字型の溝部5により、保水体4は複数の区画域に縁切りされているため、降水等による水分が低い方へ浸透するのを防ぐことができ、複数の蘇苔類植物担持体10間に目地を設ける必要しに、蘇苔類植物22を略均一な発芽状態となすことができ、どこの部位でも温度を下げる効果を略均一となすことができ、更に緑化時の見栄えを良好なものとなすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明に係わる蘚苔類植物担持体の実施の一形態を示す斜視図である。
【図2】図1の蘚苔類植物担持体の構成を示す分解斜視図である。
【図3】支持体の変形実施例を示す平面図及び側面図である。
【図4】本発明に係わる蘚苔類植物保持シートの実施の一形態を示す断面図である。
【図5】本発明に係わる蘚苔類植物保持シートの他の実施形態を示す断面図である。
【図6】本発明に係わる蘚苔類植物担持体の設置状態を示す側面図である。
【図7】本発明に係わる蘚苔類植物担持体の別の実施例を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0060】
1 支持体
2 蘚苔類植物保持シート
21a繊維集合体
21b繊維集合体
22 蘚苔類植物
23 人工芝葉状体
24 裏面シート
25 伸縮の少ない繊維シート
26 非水溶性繊維の不織布の繊維シート
27 水溶性物質と非水溶性繊維が混合された不織布繊維シート
3 排水溝部
3’ 排水溝部
4 保水体
5 溝部
10 蘚苔植物担持体
11 連結部
c 繊維を表面に突出させた部分
【出願人】 【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区西天満2丁目4番4号
【出願日】 平成16年11月10日(2004.11.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−136214(P2006−136214A)
【公開日】 平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願番号】 特願2004−326501(P2004−326501)