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【発明の名称】 緑化基盤材、緑化を行う方法および緑化基盤
【発明者】 【氏名】川手 美富
【住所又は居所】山梨県甲府市東光寺一丁目4番10号 株式会社早野組内

【要約】 【課題】硬質急斜面さらには岩場といった、本来、植物が繁茂しにくい場所において広く利用することができる緑化基盤材、当該緑化基盤材により緑化を行う方法、および、当該緑化基盤材により形成された緑化基盤を提供する。

【解決手段】緑化基盤材は、無水石膏粉砕物と、家畜糞炭化物粉と、土と、団粒形成剤と、水とを含んで構成され、前記無水石膏粉砕物は、廃石膏ボードを粉砕し、焼成処理を施して得られたものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緑化基盤材であって、
無水石膏粉砕物と、家畜糞炭化物粉と、土と、団粒形成剤と、水とを含み、
前記無水石膏粉砕物は、廃石膏ボードを粉砕し、焼成処理を施して得られたものであることを特徴とする緑化基盤材。
【請求項2】
請求項1に記載の緑化基盤材において、
前記家畜糞炭化物粉は、鶏舎残渣炭化物粉であることを特徴とする緑化基盤材。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の緑化基盤材において、
前記土は、現地の土であることを特徴とする緑化基盤材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載の緑化基盤材において、
前記団粒形成剤は、アニオン系高分子化合物であることを特徴とする緑化基盤材。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の緑化基盤材を、法面および/またはその他の場所に吹き付け施工して緑化を行う方法。
【請求項6】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の緑化基盤材を用いて形成された緑化基盤。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、緑化基盤材、緑化を行う方法および緑化基盤に関する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボードは、石膏を芯材とし両面をボード用原紙で被覆成型したものであって、建築内装材として広く利用されている。この石膏ボードは、防火性、遮音性、断熱性等に優れ、しかも低廉であるため使用量も多く、それ故、廃材量も年々多くなる傾向にある。近年、環境問題や資源エネルギー問題等に鑑み、このような廃石膏ボードの処理が問題視され、その有効利用が検討されている。
【0003】
例えば、廃石膏ボードを、石膏と、ボード用原紙とに分離回収し、回収した石膏を、石膏ボード、地盤改良材、セメント原料等に再利用する方法や、回収した原紙を、一部は再利用に、残りをエネルギー源として焼却する方法等が提案され、一部実施されている。しかし、この廃石膏ボードの分離回収には、多大な費用や設備を要すると共に、その分離回収した石膏の純度等によっては、必ずしも全てが再利用できるとは限らない。従って、容易に再利用できる製品の開発が望まれている。
【0004】
一方、今世紀は、人口の爆発的増加に伴う深刻な食糧不足が世界的に問題視されつつある。また、環境問題等から緑地の確保も望まれている。このため、更なる農業用地や緑地等の確保、並びに現在の農業用地や緑地における植物の成長のための土壌改良等が必須である。しかし、土壌の質や地形、環境等によっては、如何なる場所も農業用地や緑地にできるというものではない。
そこで、廃石膏ボードの加熱処理物に木質廃材木炭を混合して土壌の改良を行う技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2004−182767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された土壌改良材は、その土地における土壌を改良するものであって、土壌のpH制御や、土壌微生物の育成には適しているが、雨が大量に降った場合等に安定な緑化基盤を提供するものではない。
本発明の目的は、廃石膏ボードを有効に活用して、硬質急斜面さらには岩場といった、本来、植物が繁茂しにくい場所において好適に使用できる緑化基盤材、当該緑化基盤材により緑化を行う方法、および、当該緑化基盤材により形成された緑化基盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の緑化基盤材は、無水石膏粉砕物と、家畜糞炭化物粉と、土と、団粒形成剤と、水とを含み、前記無水石膏粉砕物は、廃石膏ボードを粉砕し、焼成処理を施して得られたものであることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、単なる石膏粉砕物ではなく、廃石膏ボードを粉砕し、焼成処理により無水石膏粉砕物としたため、吸水特性・保水特性に優れる緑化基盤材を形成できる。さらに、家畜糞炭化物粉と団粒形成剤とを含んでいるため、土との親和性に優れ、雨水にも流れにくい、極めて安定した緑化基盤を形成できる。
また、必要に応じて、種子および肥料を上述の緑化基盤材に混合しておけば、単に吹き付け施工するだけで、容易に、植物の生育に適した緑化基盤を形成することができる。
特に、急斜面への吹き付け施工においても、形成された緑化基盤が構造的に安定しており型崩れしないため好適である。また、この斜面が、岩やコンクリートであっても、本発明の緑化基盤材は、植物の生育に必要な土壌としての構成を備えているため、好適に緑化基盤を形成できる。
なお、粉砕時には廃石膏ボードに含まれる原紙類が分離しやすくなるが、この原紙類は除去することが好ましい。石膏粉砕物を焼成処理する際に、原紙が燃焼してしまい排出ガス等の処理が必要となるからである。ただし、少量の混入であれば問題ない。
【0009】
本発明では、前記家畜糞炭化物は、鶏舎残渣炭化物粉であることが好ましい。
鶏舎残渣は鶏の糞を多く含んでおり、その炭化物は、窒素、りん酸、カリウムなどの肥料成分を多く含む。それ故、本発明は、土壌安定化効果と植物育成効果の双方に優れている。
【0010】
本発明では、前記土は、現地の土であることが好ましい。
緑化基盤材用の土として、吹き付け施工する場所の土を用いることで、その地域の土壌に適して繁茂する植物を好適に生育する緑化基盤とすることができる。
【0011】
本発明では、前記団粒形成剤は、アニオン系線状高分子化合物であることが好ましい。
団粒形成剤は土壌を強固に結合して、斜面において緑化基盤が崩れることを防止するが、特にアニオン系線状高分子化合物が結合効果の点で優れる。アニオン系線状高分子化合物としては、アクリル酸系高分子化合物が好適である。
【0012】
本発明の緑化を行う方法は、上述の緑化基盤材を、法面および/またはその他の場所に吹き付け施工して緑化を行う方法であることを特徴とする。
吹き付け施工であるため、どのような場所であっても、非常に容易に緑化基盤を形成できる。特に、硬質急斜面や岩盤のような、緑化困難な場所であっても、上述の緑化基盤材を吹き付けるという簡便な作業だけで緑化を行うことが可能となる。
【0013】
本発明の緑化基盤は、上述の緑化基盤材を用いて形成された緑化基盤であることを特徴とする。
本発明は、上述の緑化基盤材により形成されているため、上述の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
〔無水石膏粉砕物の製造〕
廃石膏ボードを、粉砕機(例えば、(株)細田企画製 石膏ボード分別処理機 HIプラスターボ)により、およそ小豆粒子以下の径になるまで粉砕する。石膏の粒径は、小さいほど土との親和性が向上する。また、団粒形成剤は微細粒子との結合により団粒構造を形成するため、その点からも石膏の粒径は小さいほどよい。それ故、石膏粉砕物の粒径は、およそ5mm以下が好ましい。また、粉砕時には、廃石膏ボードを構成する原紙を分離する。
次に、得られた石膏粉砕物をロータリーキルンにより500℃〜800℃で焼成し、無水石膏粉砕物とする。なお、粉砕を先に行うほうが、団粒効果(団粒形成剤により土壌が固くなる効果)の点で好ましい。
【0015】
〔鶏舎残渣炭化物粉の製造〕
鶏舎から得られた、鶏糞を主とする鶏舎残渣から鶏舎残渣炭化物粉を製造する。この場合、上述の無水石膏粉砕物と同時に製造することが好ましい。すなわち、鶏舎残渣を上述の石膏粉砕物と混合してロータリーキルンにより500〜800℃で焼成することで、無水石膏粉砕物と鶏舎残渣炭化物粉を同時に製造することができる。
これらの混合割合は、最終的に緑化基盤として好適な性質を示すよう適宜決定される。鶏舎残渣炭化物粉の割合が多くなると、含まれる窒素、リン酸、カリウムの割合も多くなり肥料としての効果が向上するが、多すぎると、肥料効果が強すぎて植物の育成上好ましくない。それ故、およそ、焼成前の石膏粉砕物8に対して鶏舎残渣1の割合が好適である。この割合は、焼成後におよそ、無水石膏粉砕物100質量部に対して鶏舎残渣炭化物粉9質量部となる。
【0016】
〔緑化基盤材の調製〕
図1は、本発明の一実施形態に係る緑化基盤材製造装置、および緑化基盤材による吹き付け作業のフローシートを示したものである。
緑化基盤材製造装置1は、混合攪拌槽11と、団粒形成剤攪拌槽12と、噴射ノズル13とを含んで構成される。
【0017】
混合攪拌槽11には、水源111から延びる給水管112および、混合後の石膏・土スラリーを排出するための排出管113が接続されている。給水管112および排出管113は、それぞれ、給水ポンプ112Aおよびスラリーポンプ113Aを備えている。
混合攪拌槽11の内部には攪拌翼114が設けられており、上部には開口部115が形成されている。開口部115には、開閉可能な蓋115Aが設けられている。
開口部115の上部空間には、本発明の緑化基盤材の主材料である無水石膏粉砕物および鶏舎残渣炭化物粉の入った主材料タンク116、補助材料である土が入っている補助材料タンク117、および配合種子の入った種子タンク118が移動可能に配設されている。
排出管113には、内面にビニールライニングが施された布製ホース119が接続されており、上述の方法で得られた石膏・土スラリーを輸送排出できるようになっている。
【0018】
団粒形成剤攪拌槽12の内部には、攪拌翼121が設けられており、上部には開口部122が形成されている。開口部122には、開閉可能な蓋(図示せず)が設けられている。
開口部122の上部空間には、団粒形成剤の入った団粒形成剤タンク123が移動可能に配設されている。
団粒形成剤攪拌槽12には、排出管124、ギヤポンプ125および、耐圧ゴムホース126が接続されており、団粒形成剤分散液を輸送排出できるようになっている。
【0019】
以下に、緑化基盤材の調製方法について説明する。
はじめに、石膏・土スラリーを調製する。
無水石膏粉砕物100質量部に対して、土を20〜50質量部、水を110〜130質量部の割合で加え、これに、必要量の配合種子を添加して上述の混合攪拌槽11により混合する。ここで、土が20質量部未満では団粒効果が強すぎて土壌(緑化基盤)が固くなり植物の育成に悪影響を及ぼす。逆に、土が50質量部を超えると緑化基盤が雨水で流れやすくなる。また、水は、110質量部未満では、混合物の粘度が高すぎてホースによる圧送が困難となり、130質量部を超えると急斜面への付着力が減少する。
必要に応じて、別途肥料も添加する。なお、鶏舎残渣炭化物粉は主材料タンク116に無水石膏粉砕物と一緒に充填されており、その割合は、無水石膏粉砕物100質量部に対して5〜15質量部である。
【0020】
次に、団粒形成剤分散液を調製する。
水100質量部に団粒形成剤0.1〜0.6質量部を添加して、団粒形成剤攪拌槽12により混合する。団粒形成剤としては、アニオン系線状高分子化合物が土壌凝集効果の点で好ましい。
【0021】
〔緑化基盤の施工〕
布製ホース119、耐圧ゴムホース126、および、コンプレッサ127からのエアホース128は噴射ノズル13で合流しており、上述の石膏・土スラリーと団粒形成剤分散液は所定の割合で混合され、緑化基盤材として外部の法面2等に噴射される。噴射された緑化基盤材は、余分の水分が流れあるいは蒸発した後、緑化基盤を形成する。
ここで、石膏・土スラリーと団粒形成剤分散液との体積比は、団粒効果の点より、100:5〜15の範囲であることが好ましい。特に、100:10程度の割合が好ましい。
なお、通常の法面程度であれば、金網等による補強は不要であるが、極めて急勾配の斜面やコンクリート建築物等の側壁への施工であれば、金網で補強することが好ましい。
【0022】
上述のような本実施形態によれば、次のような効果がある。
(1)緑化基盤材として、廃石膏ボードを粉砕・焼成処理を施して得られた無水石膏粉砕物と、家畜糞炭化物粉と、土と、団粒形成剤と、水とを含んで構成されているため、雨水等の浸食に対して非常に安定な緑化基盤を形成できる。例えば、モルタル吹き付け斜面のような硬質急斜面や岩場、さらにはコンクリート製建築物の壁面といった、本来、植物が繁茂しにくい場所において広く利用することができる。
【0023】
(2)家畜糞炭化物粉として、鶏舎残渣炭化物粉を用いているため、無水石膏粉砕物や土との親和性に優れ、安定した緑化基盤を構成できる。さらに、鶏舎残渣炭化物粉は、窒素、リン酸、カリウムを多く含んでおり、肥料効果に優れた緑化基盤を提供できる。
(3)土として、現地の土を用いているため、その土地の風土にあった植物の生育を好適に行う緑化基盤を提供できる。
(4)団粒形成剤として、アニオン系高分子化合物を用いているため、緑化基盤を安定に保つことができ、雨水による土壌成分の流出を防ぐことができる。
(5)本実施形態の緑化基盤材は、噴射ノズルにより吹き付けるだけで緑化基盤を形成することができるため、法面や硬質急斜面等、任意の場所で容易に緑化作業を行うことが可能となる。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例の内容に何ら制約されるものではない。
前記した実施形態において、具体的条件を設定して緑化基盤材を調製し、緑化基盤を施工した。緑化基盤材の調製に関して前述した条件の他の具体的条件としては以下の通りである。
【0025】
〔緑化基盤材の調製〕
以下のように、石膏・土スラリー成分と団粒形成剤分散液を処方し、前述の混合攪拌槽11、団粒形成剤攪拌槽12において攪拌を行い、緑化基盤材吹き付け準備を行った。
(1)石膏・土スラリー
無水石膏粉砕物:130kgw(100質量部)
鶏舎残渣炭化物粉:12kgw(9質量部)
土(現地土):43kgw(33質量部)
水道水:146kgw(112質量部)
配合種子:ヤマハギ、コマツナギ、ウィーピングラブクラス、およびホワイトクローバの4種類
【0026】
(2)団粒形成剤分散液
水道水(団粒形成剤分散用):20kgw(100質量部)
ポリアクリル酸系高分子化合物(団粒形成剤):0.06kgw(0.3質量部)
((株)彩光社製 ソイルフロック)
【0027】
〔緑化基盤材による吹き付け施工〕
緑化基盤材を吹き付け施工する対象としてコンクリートブロック(基盤厚さ3cm)の板を選定し、これに木枠を取り付けて、傾斜角83度に立てかけた(図2)。
石膏・土スラリーを毎分50リットル、団粒形成剤分散液を毎分5リットルの割合で混合して緑化基盤材とし、実施形態に記載した方法で上述のコンクリートブロックに吹き付け、緑化基盤を形成した。
【0028】
〔結 果〕
施工後、4日経過すると配合種子4種とも発芽が見られた(図3)。
この時点で、水道水をホースにて直接散水したが(1000mm/hに相当)、緑化基盤の崩れ・流出は事実上認められなかった。
10日経過後、各植物は約5mmの丈まで成長した(図4)。水道水をホースにて直接散水したが(1000mm/hに相当)、緑化基盤の崩れ・流出は事実上認められなかった。
2ヶ月経過後、ハギ類は25cmの高さに成長し、ウィーピンググラスは30cm、ホワイトクローバは15cmの高さにまで成長した。緑化基盤の崩れ・流出は事実上認められなかった。
【0029】
上述の結果からわかるように、本発明の緑化基盤材は、事実上、植物の生育が不可能なコンクリート製急斜面上であっても、安定した緑化基盤を形成することができ、さらに植物の生育にとって好適であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、緑化基盤材、当該緑化基盤材により緑化を行う方法、および、当該緑化基盤材により形成された緑化基盤として利用できる。例えば、モルタル吹き付け斜面のような硬質急斜面や岩場、さらにはコンクリート製建築物の壁面といった、本来、植物が繁茂しにくい場所において広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本実施形態に係る緑化基盤材製造装置を示す図。
【図2】実施例において使用したコンクリートブロックの斜視図。
【図3】前記実施例におけるコンクリートブロックに緑化基盤を形成した後、4日経過後の斜視図。
【図4】前記実施例におけるコンクリートブロックに緑化基盤を形成した後、10日経過後の斜視図。
【符号の説明】
【0032】
1・・・緑化基盤材製造装置、2・・・法面、11・・・混合攪拌槽、12・・・団粒形成剤攪拌槽、13・・・緑化基盤材噴射ノズル、21・・・コンクリートブロック、22・・・緑化基盤
【出願人】 【識別番号】393025909
【氏名又は名称】株式会社早野組
【住所又は居所】山梨県甲府市東光寺一丁目4番10号
【出願日】 平成16年10月18日(2004.10.18)
【代理人】 【識別番号】100079083
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 實三

【識別番号】100094075
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 寛二

【識別番号】100106390
【弁理士】
【氏名又は名称】石崎 剛

【公開番号】 特開2006−109800(P2006−109800A)
【公開日】 平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願番号】 特願2004−302981(P2004−302981)