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【発明の名称】 樹木の樹勢回復方法
【発明者】 【氏名】浅田 素之
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設株式会社内

【氏名】堀内 澄夫
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番3号 清水建設株式会社内

【氏名】林 好治
【住所又は居所】東京都八王子市横川町1096−3 有限会社林庭園設計事務所内

【要約】 【課題】土壌が堅密化し、樹木の根の張り具合が悪くなって樹勢が衰えた樹木の樹勢を効果的に回復させることができる樹木の樹勢回復方法を提供することを目的としている。

【解決手段】樹勢の衰えた樹木1を回復させる樹木1の樹勢回復方法であって、樹木1を土壌Gから掘り出し、掘り出された樹木1の根2の周りに湿潤状態の泥炭4を巻き付け、その後、泥炭4が埋設されるように樹木1を土壌Gに植え付ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹勢の衰えた樹木を回復させる樹木の樹勢回復方法であって、
樹木を土壌から掘り出し、掘り出された樹木の根の周りに湿潤状態の泥炭を巻き付け、その後、泥炭が埋設されるように樹木を土壌に植え付けることを特徴とする樹木の樹勢回復方法。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、樹勢が衰えた樹木の樹勢回復方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹木が植えられた土壌が踏み固められて堅密化すると、樹木の根の張り具合が悪くなって樹勢が衰える。また、樹木の老朽化によって幹部に空洞が生じた樹木、或いは幹部に樹皮の一部が大きく剥がれ落ちることで其の被傷部位から腐朽が進行した樹木は、倒木の虞がある。このような樹木は、一般に樹勢回復が難しいとされ、廃棄されることが多い。
しかし、寺や公園、個人邸等で大切に育てられた樹木については、樹勢回復措置を施して樹木を残したいという要望が多い。そこで、従来、樹勢回復を行う方法として、堅密化した土壌をほぐして土壌改良を行う方法や、幹部の被傷(空洞)箇所に不定根を生やさせる方法等がある。
【0003】
土壌改良を行う方法は、土壌をほぐすとともに、植物根の成長を促すピートモスを土壌に混ぜ込み、樹勢回復を図る方法である。ピートモスは堆積した水苔が地中で炭化したものであり、植物根を特異的に成長させる性質がある。
また、不定根を生やさせる方法は、例えば、幹部の被傷箇所に水分を十分に吸い込ませた繊維質のピート(泥炭)を埋め込み、その後、被傷箇所を遮光性及び防水性のシートで覆う方法である。ピートは、有機質が多く含まれた土質であって、植物成長に適したものである(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−315435号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した前者(土壌改良を行う方法)の従来の樹勢回復方法では、程度の軽い症状の樹木を回復させることはできるものの、一旦樹勢が衰えた樹木を樹勢回復させることは困難であるという問題が存在する。また、上記した後者(不定根を生やさせる方法)では、幹部の空洞化や被傷等によって枯れかけている樹木に対しては有効であるが、土壌が堅密化し、樹木の根の張り具合が悪くなって樹勢が衰えた樹木に対しては効果が小さい。
【0005】
本発明は、上記した従来の問題が考慮されたものであり、土壌が堅密化し、樹木の根の張り具合が悪くなって樹勢が衰えた樹木の樹勢を効果的に回復させることができる樹木の樹勢回復方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明は、樹勢の衰えた樹木を回復させる樹木の樹勢回復方法であって、樹木を土壌から掘り出し、掘り出された樹木の根の周りに湿潤状態の泥炭を巻き付け、その後、泥炭が埋設されるように樹木を土壌に植え付けることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、樹勢の衰えた樹木には、泥炭の養分が根から直接的に取り入れられる。また、一旦掘り出すことで、泥炭が巻き付けられた根の周りの土壌はほぐされた状態となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る樹木の樹勢回復方法によれば、樹木を土壌から掘り出し、掘り出された樹木の根の周りに湿潤状態の泥炭を巻き付け、その後泥炭が埋設されるように樹木を土壌に植え付けることによって、泥炭の養分が根から直接的に樹勢の衰えた樹木に取り入れられるとともに、樹木を一旦掘り出すことで根の周りの土壌がほぐされ、新たな根が張り巡らされるため、樹木の樹勢を効果的に回復させることができ、回復した樹木の幹部から多数の若芽が生えてくる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明に係る樹木の樹勢回復方法の実施の形態について、図面に基いて説明する。
【0010】
図1に示す樹木1は、一旦衰弱すると再生が難しく、且つ成木の移植も難しいといわれる樹木であり、例えば柿の木等である。この樹木1には、土壌Gの中に伸びる複数の根2が有り、この根2は、土壌Gが踏み固められて堅密化しているために張り具合が悪くなっている。このように、根2の張り具合が悪い樹木1は樹勢が衰える。
以下、上記したように樹勢の衰えた樹木1を効果的に回復させる方法について説明する。
【0011】
まず、図2に示すように、根2の周りの土壌Gを掘削して、樹木1を掘り出す工程を行う。具体的には、根2の周りの土壌Gを全て掘削する必要はなく、樹木1の幹部3の下方の土壌Gを一定範囲だけ掘削する。掘削範囲の広さは、基本的には樹木1の根元部の直径D1の4倍程度の直径D2の範囲を目安とし、樹木1の種類や根2の状態によって多少広く或いは狭くしてもよい。このとき、少なくとも、根2の太い部分は露出させて、できる限り、枝分れした部分も露出されていることが望ましい。そして、露出された根2を切断し、樹木1を土壌G内に埋設されている根2の先端部と切り離し、樹木本体1´を掘削穴Hから取り出す。また、必要に応じて、樹木1の幹部3の上部を切り取っておく。
【0012】
次に、図3に示すように、掘り出された樹木本体1´の根2の周りに泥炭4を巻き付ける工程を行う。具体的には、切断された複数の根2の周りにそれぞれ泥炭4を貼り付け、藁縄や麻縄等の縄5によって縛り、根2を覆う泥炭4を固定する。このとき、泥炭4は、根2の外周面に覆い被されているだけでなく、切断された根2の切断面にも覆い被さるように貼り付ける。また、泥炭4には、乾燥ピートを湿潤化したもの、或いは湿潤状態のものを使用する。また、幹部3の上部を切り取った場合、切断された幹部3に養生フィルム6を被せて切断面を保護する。養生フィルム6は、切断面を保護するとともに、切断面から発芽した際に破れる程度の脆弱性を有するものであり、例えばパラフィルムPM−992等が使用される。
【0013】
次に、図4に示すように、根2に泥炭4が巻き付けられた樹木本体1´を土壌Gに埋める工程を行う。具体的には、泥炭4が巻き付いた根2が掘削穴Hの中に配置されるように樹木本体1´を設置し、掘削穴Hに埋戻土G´を入れて樹木本体1´を水ぎめしつつ埋め戻して植え付けする。泥炭4は光が当らない条件下で、より高い樹勢回復能力を発揮するため、埋戻土G´によって遮光させるべく、泥炭4が巻き付いた根2が完全に埋戻土G´の中に埋設されるように埋め戻する。また、埋め戻された埋戻土G´は固く締め固めずに、根2が張り巡り易くなるように軽く踏み固める。また、埋め戻された埋戻土G´を囲うように土を盛り、水鉢7をきっておくことが望ましい。
【0014】
上記した構成からなる樹木の樹勢回復方法によれば、樹木1を土壌Gから掘り出し、掘り出された樹木本体1´の根2の周りに湿潤状態の泥炭4を巻き付け、その後再び樹木本体1´を土壌Gに水ぎめしつつ埋め戻して植え付けるため、泥炭4の養分が根2から直接的に樹勢の衰えた樹木本体1´に取り入れられるとともに、一旦掘り出すことで根2の周りの土壌G(埋戻土G´)がほぐされる。これによって、泥炭4の養分が樹木本体1´を回復させ、また、ほぐされた埋戻土G´に新たな根2を張り巡らさせ、樹木本体1´の樹勢を効果的に回復させることができる。そして、回復した樹木´の幹部から多数の若芽が生え、枯れかかっていた樹木1は生き返ることができる。
【0015】
次に、参考例として、幹部51が老朽化し、空洞が生じている場合の樹木50の樹勢回復方法について説明する。
【0016】
まず、図5に示すように、老朽化して空洞が生じている箇所(空洞箇所52)と老朽化していない箇所(非枯化箇所58)との境界部分を削り、非枯化箇所58の形成層を削り出す工程を行う。具体的には、空洞箇所52と非枯化箇所58との境界線に沿って削り、形成層に達する深さの溝59を形成していく。これによって、発根を阻害するものが無くなり、非枯化箇所58の形成層から不定根が発根される。また、このとき、空洞箇所52のうち著しく枯化した部分52aも削り取る。
【0017】
次に、図6に示すように、空洞箇所52の周りに泥炭53を巻き付ける工程を行う。具体的には、空洞箇所52の外周面に湿潤状態の泥炭53を貼り付け、藁縄や麻縄等の縄54によって縛り、空洞箇所52を覆う泥炭53を固定する。
【0018】
次に、図7に示すように、空洞箇所52に貼り付けられた図6に示す泥炭53を黒色ビニール等の遮光材55で覆う工程を行う。具体的には、泥炭53の周りに遮光材55を巻き付け、縄やテープ等によって固定する。
最後に、図8に示すように、図6に示す泥炭53や図7に示す遮光材55で覆われた空洞箇所52を保護材56で覆い、縄57等によって縛り、固定する。
【0019】
上記した樹木の樹勢回復方法によれば、溝59に不定根が生え、この不定根が成長して土壌Gに至って再生幹となり、この再生幹が土壌Gと空洞箇所52の上方の幹部51aとを結ぶ。これによって、再生幹を介して土壌Gの栄養分が上方の幹部51aに伝えられ、樹勢を回復させることができるとともに、再生幹によって腐朽化した樹木50が支えられ、倒木を防止することができる。
【0020】
なお、上述した工程と同時に、樹木50廻りの土壌に堆肥やピートモスを混合して土壌改良を行ってもよい。これによって、空洞箇所52に生えた不定根が成長して土壌Gに至る際、土壌Gがほぐされた状態となるため、より根2が張り巡らされ、樹木本体1´の樹勢を効果的に回復させることができる。
【0021】
以上、本発明に係る樹木の樹勢回復方法の実施の形態について説明したが、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、上記した実施の形態では、樹木本体1´を掘り出す際に、根2を切断しているが、本発明は、根を切断せずに、広範囲にわたって掘削して樹木を掘り出してもよい。また、上記した実施の形態では、幹部3の上部を切断しているが、本発明は、幹部を切断しなくてもよい。
【0022】
また、上記した実施の形態では、根2の一本毎に泥炭4を巻き付けているが、本発明は、近接する複数の根を一纏めにして泥炭を巻き付けてもよい。また、上記した実施の形態では、泥炭4は縄5によって縛られて固定されているが、本発明は、泥炭を根に貼り付けた状態で固定できれば縄でなくてもよく、例えば、麻製のカバー等を被せてもよい。
【0023】
また、上記した実施の形態では、掘り出された樹木本体1´は、もとの掘削穴Hに埋め戻しているが、本発明は、必ずしも同じ場所に埋め戻す必要はなく、違う場所に植え替えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る樹木の樹勢回復方法の実施の形態を説明するための施工前の状況を表す図である。
【図2】本発明に係る樹木の樹勢回復方法の実施の形態を説明するための樹木掘出工程の状況を表す図である。
【図3】本発明に係る樹木の樹勢回復方法の実施の形態を説明するための泥炭巻付工程の状況を表す図である。
【図4】本発明に係る樹木の樹勢回復方法の実施の形態を説明するための樹木埋戻工程の状況を表す図である。
【図5】本発明に係る樹木の樹勢回復方法の参考例を説明するための形成層削出工程の状況を表す図である。
【図6】本発明に係る樹木の樹勢回復方法の参考例を説明するための泥炭巻付工程の状況を表す図である。
【図7】本発明に係る樹木の樹勢回復方法の参考例を説明するための遮光材巻付工程の状況を表す図である。
【図8】本発明に係る樹木の樹勢回復方法の参考例を説明するための保護材巻付工程の状況を表す図である。
【符号の説明】
【0025】
1 樹木
1´ 樹木本体(樹木)
4 泥炭
G 土壌
G´ 埋戻土(土壌)

【出願人】 【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番3号
【識別番号】504385801
【氏名又は名称】有限会社林庭園設計事務所
【住所又は居所】東京都八王子市横川町1096−3
【出願日】 平成16年10月15日(2004.10.15)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男

【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【公開番号】 特開2006−109771(P2006−109771A)
【公開日】 平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願番号】 特願2004−301636(P2004−301636)