| 【発明の名称】 |
マルチングモア |
| 【発明者】 |
【氏名】安藤 智之 【住所又は居所】愛知県豊川市美幸町1丁目26番地 株式会社共栄社内
|
| 【要約】 |
【課題】ハウジング内に刈芝誘導板を備えたマルチングモアにおいて、下方への刈芝の排出をスムーズにして、芝刈性能を高める。
【解決手段】刈芝を滞留させるためのハウジングHと、外周部が互いに逆方向の羽根状に屈曲されて、ハウジングH内に縦軸を中心に回転可能に配設されたバーブレードB1 と、ハウジングHの天板部10に、ハウジングHの周壁体(周壁部)12からその中心側に向け、しかも半径方向に対して傾斜した方向に沿って取付けられた刈芝誘導板Pとを備え、バーブレードB1 により切断された刈芝をハウジングB内に滞留させることにより、バーブレードB1 による切断機会を増やして細断して、そのまま刈芝跡に残しておく構成のマルチングモアMにおいて、進行方向Qに沿ってハンジングHを前後に二分したほぼ前半部に、複数個の刈芝誘導板Pが周方向に沿って配置された構成とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 刈芝を滞留させるための逆碗状をしたハウジングと、 回転により外周端部には上昇気流が発生すると共に、その内側には下降気流が発生するように外周部が互いに逆方向の羽根状に屈曲されて、前記ハウジング内に縦軸を中心に回転可能に配設されたバーブレードと、 前記ハウジングの天板部に、前記バーブレードとの上下方向及び半径方向の双方の干渉を避けて、前記ハウジングの周壁部からその中心側に向け、しかも半径方向に対して傾斜した方向に沿って取付けられた刈芝誘導板とを備え、 前記バーブレードにより切断された刈芝をハウジング内に滞留させることにより、バーブレードによる切断機会を増やして細断して、そのまま刈芝跡に残しておく構成のマルチングモアにおいて、 進行方向に沿って前記ハウジングを前後に二分したほぼ前半部に、複数個の刈芝誘導板が周方向に沿って配置されていることを特徴とするマルチングモア。 【請求項2】 前記バーブレードの回転方向を基準にして、前記ハウジングの天板部裏面における刈芝誘導板の上流側であって、ハウジングの周壁部と刈芝誘導板とで囲まれる空間部は、前記バーブレードの外周端から全方向に向けて肉厚が徐々に薄くなっていて、底面視が略扇形の刈芝付着防止部材で閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載のマルチングモア。 【請求項3】 前記バーブレードにおける刈芝誘導板の内端よりも内側に形成される内側羽根部の部分を上方に向けて大きく屈曲されて、その高さを高くしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のマルチングモア。 【請求項4】 前記バーブレードの上方には、これとほぼ直角に交差して、別の補助バーブレードが設けられていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のマルチングモア。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、逆碗状をしたハウジング内に縦軸を中心に回転するバーブレードが配設され、ハウジング内に滞留した刈芝を細断してそのまま刈芝跡に落下して残しておく構成のマルチングモアに関するものである。 【背景技術】 【0002】 上記した構成のマルチングモアとしては、特許文献1に記載のものが知られている。このモアの基本構成は、刈芝を滞留させるための逆碗状をしたハウジングと、回転により外周端部には上昇気流が発生すると共に、その内側には下降気流が発生するように外周部が互いに逆方向の羽根状に屈曲されて、前記ハウジング内に縦軸を中心に回転可能に配設されたバーブレードと、前記ハウジングの天井板部に、前記バーブレードとの上下方向及び半径方向の双方の干渉を避けて、前記ハウジングの外周壁部からその中心側に向け、しかも半径方向に対して傾斜した方向に沿って取付けられた刈芝誘導板とを備え、前記バーブレードにより切断された刈芝をハウジング内に滞留させることにより、バーブレードによる切断機会を増やして細断して、そのまま刈芝跡に残しておくものである。 【0003】 しかし、特許文献1に開示のマルチングモアは、ハウジング内に周方向に沿った特定位置に刈芝誘導板が単に一つ設けられているのみであるので、この刈芝誘導板を有効に作用させるには、ハウジングの半径方向に沿った長さを長くする必要があって、一つの刈芝誘導板に全ての刈芝誘導負荷が作用する。よって、バーブレードの回転中において、刈芝誘導板の部分において局所的に大きな回転負荷が1回転毎に作用することになって、スムーズな芝刈作業を期待できない。また、芝生の刈取作業は、芝生が湿っていたり、或いは水分が付着している状態で行わざるを得ない場合もある。このような状態で芝刈作業を行うと、特許文献1に開示のマルチングモアにおいては、刈芝誘導板に芝生が付着して、その付着量が多くなると、そのまま落下する「ボタ落ち」の発生が考えられ、またバーブレードの回転の妨げとなって、刈取作業への支障が考えられる。前記「ボタ落ち」が発生すると、刈り取った芝生面に刈芝塊がそのまま存在するために、芝生面の外観が害されることになる。 【0004】 また、特許文献2に開示のマルチングモアには、ハウジングの全周に亘って複数個の刈芝誘導板が所定間隔をおいて配設されたものである。即ち、図11の原理図に示されるように、マルチングモアM’の進行方向Qを基準にして、ハウジングH’の後半部にも刈芝誘導板P’が配設されるため、前半部に配置された刈芝誘導板P’は、刈芝を進行方向後方に沿った速度成分を有するように誘導すると共に、後半部に配置された刈芝誘導板P’は、上記とは逆に刈芝を進行方向前方に沿った速度成分を有するように誘導する。更に、ハウジングH’の両側部に配置される刈芝誘導板P’は、進行方向前方又は後方に刈芝を誘導する速度成分が少ないため、刈芝が引っ掛かり易くなる。この結果、ハウジングH’内に滞留している刈芝がスムーズに下方に排出されなくなって滞留量が増して、バーブレードB’の回転抵抗が増し、甚だしい場合には、バーブレードB’を駆動回転させているエンジンの停止を招く。なお、図11において、Rは、それぞれバーブレードB’の回転方向を示す。 【特許文献1】特許第2777021号公報 【特許文献2】実公平6−42430号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明は、ハウジング内に刈芝誘導板を備えたマルチングモアにおいて、バーブレードの回転を円滑に保った状態で、下方への刈芝の排出をスムーズにして、芝刈性能を高めることである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記課題を解決するための請求項1の発明は、刈芝を滞留させるための逆碗状をしたハウジングと、回転により外周端部には上昇気流が発生すると共に、その内側には下降気流が発生するように外周部が互いに逆方向の羽根状に屈曲されて、前記ハウジング内に縦軸を中心に回転可能に配設されたバーブレードと、前記ハウジングの天板部に、前記バーブレードとの上下方向及び半径方向の双方の干渉を避けて、前記ハウジングの周壁部からその中心側に向け、しかも半径方向に対して傾斜した方向に沿って取付けられた刈芝誘導板とを備え、前記バーブレードにより切断された刈芝をハウジング内に滞留させることにより、バーブレードによる切断機会を増やして細断して、そのまま刈芝跡に残しておく構成のマルチングモアにおいて、進行方向に沿って前記ハウジングを前後に二分したほぼ前半部に、複数個の刈芝誘導板が周方向に沿って配置されていることを特徴としている。 【0007】 バーブレードの回転により切断された刈芝は、ハウジング内に滞留されたままでバーブレードの回転により周方向に連れ廻される間に、刈芝誘導板に当たって略半径方向に沿ってハウジングの外周側から中心部に向けて誘導される。刈芝誘導板によって、遠心力の作用によりハウジングの外周側に滞留しようとする刈芝は、その中心部に誘導されることにより、バーブレードの回転方向内側に設けられた刃部による切断機会が増加して小片化されると共に、バーブレードの回転により生ずる下降気流により下方に向けて効率よく排出されて、そのまま刈芝跡に落下して残る。 【0008】 ここで、請求項1の発明においては、複数個の刈芝誘導板が周方向に沿って配置されているために、刈芝誘導板が単に一つの場合に比較して、刈芝をハウジングの外周壁部の側から中心部に向けて誘導する負荷が分割されるため、複数のうち一つの刈芝誘導板の負担負荷が少なくなると共に、処理する刈芝の分量も分割されるために、刈芝誘導板の長さを短くできる。また、バーブレードは上下の各気流が生ずるように屈曲されていて、バーブレードの回転により発生する下降気流によって、ハウジング内の刈芝は下方に排出される。この場合において、刈芝誘導板が単に一つの場合に比較して、周方向に沿って複数個の刈芝誘導板が配設されていると、刈芝の下方への排出作用も各刈芝誘導板により分割して生ずるために、刈芝の下方への排出がスムーズとなって、処理能力が増す。 【0009】 また、ハウジングを進行方向に沿って前後二分したほぼ前半部に複数個の刈芝誘導板を周方向に沿って所定間隔をおいて配置したのは、複数個の刈芝誘導板を全周に亘って配置することにより生ずる不具合を解消するためである。即ち、複数個の刈芝誘導板を全周に亘って配置すると、後半部に配置された刈芝誘導板は、刈芝を進行方向前方に誘導し、刈芝が下方排出されるべき刈面は、マルチングモアに対して相対的に後方に移動する。これにより、ハウジング内に滞留している刈芝がスムーズに下方に排出されなくなってハウジング内の刈芝の滞留量が増えて、バーブレードの回転抵抗が増し、最悪の場合には、バーブレードの回転動力を発生させているエンジンの停止を来す。 【0010】 このように、請求項1の発明では、複数の刈芝誘導板が全体としての負荷を分割して負担する構成であるために、刈芝誘導板が単に一つの場合に比較して、バーブレードの回転中に周方向の特定位置において負荷が急激に増して、バーブレードの回転が不安定になる不具合も併せて解消できる。この結果、バーブレードによる芝生の刈取作業が安定化する。 【0011】 また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記バーブレードの回転方向を基準にして、前記ハウジングの天板部裏面における刈芝誘導板の上流側であって、ハウジングの周壁部と刈芝誘導板とで囲まれる空間部は、前記バーブレードの外周端から全方向に向けて肉厚が徐々に薄くなっていて、底面視が略扇形の刈芝付着防止部材で閉塞されていることを特徴としている。 【0012】 請求項2の発明によれば、刈芝が湿っていたり、雨水等が付着していると、バーブレードにより連れ廻された刈芝は、刈芝誘導板の側面に付着して、その付着量が多くなると、そのまま落下する「ボタ落ち」が発生する。しかし、上記構成によって、刈芝付着防止部材の下面はバーブレードの回転方向(周方向)に沿って傾斜面に形成され、湿っていたり、或いは雨水等が付着した刈芝は、バーブレードの回転により前記傾斜面に沿って連れ廻されるため、刈芝誘導板の側面、特に刈芝誘導板の外周端に近い部分の側面に付着するのを防止できる。この結果、ハウジング内において刈芝は、刈芝誘導板の外周端部に引っ掛かってそのまま堆積しなくなると共に、刈芝誘導板の外周端部が刈芝の連れ廻り時における抵抗にもならないので、ハウジング内における刈芝の連れ廻り回転がスムーズとなる。 【0013】 また、請求項3の発明は、請求項1又は2の発明において、前記バーブレードにおける刈芝誘導板の内端よりも内側に形成される内側羽根部の部分を上方に向けて大きく屈曲されて、その高さを高くしたことを特徴としている。 【0014】 請求項3の発明によれば、請求項1の発明によって、刈芝誘導板が単に一つの場合に比較して、刈芝誘導板の長さを短くできるので、バーブレードにおける刈芝誘導板の内端部よりも内側の部分に形成される空間部の半径が大きくなって、バーブレードの内側羽根部を上方に向けて大きく屈曲させられる。このように内側羽根部を上方に大きく屈曲させることにより、バーブレードの全刃長が長くなって、芝生の切断効率が高められる。また、バーブレードの内側羽根部の高さを高くすることにより、当該内側羽根部のドーナツ状の回転軌跡部の容積、即ち、刈芝排出部の排出容積が大きくなって、刈芝を効率よく下方に排出できる。 【0015】 また、請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記バーブレードの上方の空間部には、これとほぼ直角に交差して、別の補助バーブレードが設けられていることを特徴としている。 【0016】 請求項4の発明によれば、刈芝誘導板が単に一つの場合に比較して、刈芝誘導板の長さを短くできるので、ハウジングの中心から各刈芝誘導板の内端に至る半径方向に沿って長さが長くなる。このため、バーブレードの上方には、半径の大きな空間部が発生するので、当該空間部に別の補助バーブレードが配置可能となる。また、バーブレードに対してほぼ直交して前記空間部に補助バーブレードを配置することにより、刈芝誘導板によりハウジングの中心部に向けて誘導されて、該刈芝誘導板の内端部から開放された刈芝は、当該位置に両端が配置されている補助バーブレードと本来のバーブレードとの二本のバーブレードによって、効果的に再切断されるので、細断効率(刈芝を小片化させる効率)が高められる。 【発明の効果】 【0017】 本発明に係るマルチングモアは、ハウジンク内に複数個の刈芝誘導板が周方向に沿って配置されているために、刈芝誘導板が単に一つの場合に比較して、刈芝をハウジングの外周壁部の側から中心部に向けて誘導する負荷が分割されるため、複数のうち一つの刈芝誘導板の負担負荷が少なくなると共に、処理する刈芝の分量も分割されるために、刈芝誘導板の長さを短くできる。また、刈芝の下方への排出作用も各刈芝誘導板により分割して生ずるために、刈芝の下方への排出がスムーズとなって、マルチングモアとしての処理能力が増す。 【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 以下、本発明を実施するための複数の最良形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。 【実施例1】 【0019】 図1は、乗用型の作業車Aの機体1の下部に本発明に係る三連式のマルチングモアMを装着した状態の平面図、図2は、同じく側面図、図3は、本発明に係る三連式のマルチングモアMを斜下方から見た斜視図であり、図4は、三連式のマルチングモアMの側面断面図であり、図5は、マルチングモア単体M0 を斜上方から見た斜視図であり、図6は、図5のX矢視図であり、図7は、マルチングモア単体M0 を刈芝誘導板Pの部分で破断した平面断面図であり、図8は、図7のY−Y線矢視断面図である。なお、図面の表示の基準に関しては、本来の刈取状態の図示を主体にすべく、複数の刈芝誘導板の図示に関しては、原則として「平面図(平面断面図)」で行う。図1及び図2において、乗用型の作業車Aの機体1の下部における前輪2と後輪3との間には、三連式のマルチングモアMがリンク機構(図示せず)を介して昇降可能に装着されている。 【0020】 三連式のマルチングモアMは、周壁部11aを有する本体フレーム11の天板部11bの裏面に三個のリング状の周壁体12が、図1に示されるように配置されて、本体フレーム11の天板部11bに溶接等により固着されて、マルチングモア単体M0 のハウジングHが構成されている。即ち、ハウジングHは、本体フレーム11の天板部11bの一部で構成される天板部10とリング状の周壁体12とで構成されることにより逆碗状となっていて、各ハウジングHを構成するリング状の周壁体12は、中央に配置されるものがマルチングモアM(作業車A)の進行方向Qに沿って他の二つのハウジングHの周壁体12よりも約半径分だけ前方に配置され、しかも横方向に沿って各周壁体12は僅かに交差する関係となるように配置され、隣接する周壁体12の交差部においては、各周壁体12は欠落されている。これにより、隣接するマルチングモア単体M0 内に配置される各バーブレードB1 のうち隣接するもの同士が所定量重複して、隣接するマルチングモア単体M0 の間で刈り残しが生じないようにしてある。本体フレーム11の前辺は平面視において緩やかな山形状に形成され、本体フレーム11の前部には、その幅方向に沿った中央部と両端部とに、それぞれ接地ローラ13、14、14がブラケット13a,14a,14aを介して取付けられ、本体フレーム11の後部には、一対のブラケット15aを介して鎮圧ローラ15が取付けられている。 【0021】 図1及び図3において、各マルチングモア単体M0 の中心部には、軸受ユニット16を介して駆動軸17がそれぞれ垂直に支持されて、前記駆動軸17の下端部は、軸受ユニット16の下端から僅かに下方に突出していて、駆動軸17の前記下方突出部にバーブレードB1 が水平に取付けられている。なお、各マルチングモア単体M0 の駆動軸17の上端部は上方に大きく突出していて、前記上方突出部にプーリー18が取付けられていて、三つの各プーリー18には無端ベルト19が掛装されていると共に、特定の駆動軸17には、別のプーリー21が上下して取付けられていて、前記プーリー21が取付けられた駆動軸17に伝達された動力は、三つのプーリー18及び無端ベルト19を介して残りの二つの駆動軸17に伝達される構成となっている。なお、図1において、22は、プーリー21に掛装された無端ベルトを示す。 【0022】 また、バーブレードB1 は、金属材により帯板状に形成されて、長手方向及び幅方向の双方に沿って屈曲した形状となっている。即ち、バーブレードB1 の両端部は、図5に示されるように、回転により上昇気流が発生するように、後述の刃部33の側が低くなるように幅方向に屈曲されて外側羽根部31が形成されていると共に、該外側羽根部31の内側には、前記刃部33の側が高くなるように幅方向に大きく屈曲して形成された内側羽根部32が連続して形成されている。また、外側羽根部31及び内側羽根部32には、回転方向に沿って下流側の端面に刃部33が連続して形成されている。バーブレードB1 の中央部は、水平な取付板部34となっていて、駆動軸17の下端部を挿通させる挿通孔35が形成されており、該取付板部34の外側には、両端に向かうに従って低くなる傾斜板部36がそれぞれ形成され、各傾斜板部36の外側に前記内側羽根部32が連続して形成されている。このため、作業車Aのエンジン(図示せず)の動力がマルチングモア単体M0 の各駆動軸17に伝達されて、各バーブレードB1 が同一方向Rに回転すると、外側羽根部31の部分において上昇気流が発生すると共に、その内側の内側羽根部32の部分において下降気流が発生し、この下降気流は、バーブレードB1 の刃部33により切断されてハウジングH内に滞留する刈芝を下方の刈芝跡に排出させる作用を奏する。また、上記上昇気流と下降気流とバーブレードB1 の回転により生ずる気流とは、乱雑に混合してハウジングH内において旋回乱気流を生じさせて、ハウジングH内における刈芝の滞留時間を長くさせて、バーブレードB1 による刈芝の切断機会を増加させ、この結果、刈芝は、更に短く切断されて小片状となる。 【0023】 また、図1、図5及び図7に示されるように、ハウジングHの天板部を構成する本体フレーム11の天板部11bには、マルチングモアMの進行方向に沿って前後二分した略前半部の部分に複数個(実施例では3個)の緩やかにわん曲した帯板から成る刈芝誘導板PがバーブレードB1 の回転方向に沿って所定間隔をおいて一体に取付けられている。即ち、各刈芝誘導板Pの外端P1 は、ハウジングHを構成する周壁体12の内周面に接していて、ハウジングHの中心Cと刈芝誘導板Pの外端P1 とを結ぶ半径方向に沿った線分L1 に対してバーブレードB1 の回転方向に対して所定角度(θ)だけ傾斜して配置されている。本実施例では、図8に示されるように、バーブレードB1 の全体が刈芝誘導板Pの下端よりも下方に配置されていて、僅かにわん曲した刈芝誘導板Pの内端P2 は、内側羽根部32の刃部33のうち最も高い部分に位置する水平部の外端33aの部分にほぼ位置している。 【0024】 また、図3、図5及び図6に示されるように、前記バーブレードB1 の回転方向Rを基準にして、前記ハウジングHの天板部10の裏面における刈芝誘導板Pの上流側であって、ハウジングHの周壁体12と刈芝誘導板Pとで囲まれる空間部は、前記刈芝誘導板Pの外端P1 から全方向に向けて肉厚が徐々に薄くなっていて、底面視が略扇形の刈芝付着防止部材Dで閉塞されている。この刈芝付着防止部材Dは、中実材に限られず、板部材をハウジングHの天板部10に対して上記したように傾斜させて固定配置して構成することも可能である。この結果、刈芝誘導板Pの下端面P3 (図6参照)と、刈芝付着防止部材Dの下面(裏面)との間の長さは、刈芝誘導板Pの外端P1 から内端P2 に至るに従って長くなって、刈芝誘導板Pの内端P2 においては、本来の高さをそのまま有している。なお、図1及び図2において、4は、作業車Aの運転席を示し、図3、図4、図8、図9及び図10において、23は、軸受ユニット16で支持された駆動軸17の下方突出部にバーブレードB1 (B2 ,B3 )を固定しているボルトを示す。 【0025】 そして、作業車Aの進行によりこれと一緒にマルチングモアMが同方向Qに進行すると、バーブレードB1 の回転により切断された刈芝は、ハウジングH内に滞留されたままバーブレードB1 の回転により周方向に連れ廻される間に、一回転において複数回だけ刈芝誘導板Pに当たって、ハウジングHの半径方向に対して傾斜した方向S(図7参照)に沿ってハウジングHの外周側から中心部に向けて誘導される。遠心力の作用によりハウジングHの外周側に滞留しようとする刈芝は、前記刈芝誘導板Pの作用によって、ハウジングHの中心部に誘導されることにより、バーブレードB1 の刃部33による切断機会が増して更に細断されて小片化される。また、ハウジングH内においては、バーブレードB1 の外側羽根部31及び内側羽根部32によって、それぞれ上昇気流及び下降気流が発生させられると共に、バーブレードB1 の回転自体によっても気流が発生し、これらの気流が相乗することにより、ハウジングH内においては旋回乱気流が発生している。この旋回乱気流によって、ハウジングH内に滞留されている刈芝は、ハウジングH内において攪乱されることにより、更にバーブレードB1 による切断機会が増やされる。そして、ハウジングH内で細断された刈芝は、バーブレードB1 の回転により発生する下降気流の作用によってそのまま下方に排出されて、刈芝跡に落下されて芝面にそのまま残る。 【0026】 また、バーブレードB1 の回転方向Rを基準にして各刈芝誘導板Pの上流側には、それぞれ刈芝付着防止部材Dが固定配置されて、各刈芝誘導板Pの上流側の天板面は、周方向に沿って傾斜面となっていると共に、各刈芝誘導板Pの外端部と天板部10とで形成される凹部が解消されている。このため、刈芝が湿っていたり、或いは刈芝に雨水等が付着していても、これらの刈芝は、各刈芝誘導板Pの直前においては、周方向に沿って傾斜した天板面に沿って連れ廻されるので、刈芝誘導板Pの側面に上記した刈芝が付着しなくなる。この結果、上記した刈芝塊の「ボタ落ち」がなくなると共に、刈芝誘導板Pに刈芝が付着しなくなるために、バーブレードB1 の回転時における抵抗もなくなって、ハウジングH内における刈芝の連れ廻り回転がスムーズとなって、ハウジングH内における刈芝の細断が効率よく行われる。 【0027】 このように、複数個(実施例では3個)の刈芝誘導板Pが周方向に沿って配置されているために、刈芝誘導板Pが単に一つの場合に比較して、刈芝をハウジングHの周壁部の側から中心部に向けて誘導する負荷が分割される。このため、複数のうち一つの刈芝誘導板Pの負担負荷が少なくなると共に、処理する刈芝の分量も分割されるために、刈芝誘導板の長さを短くできる。また、上記したようにバーブレードB1 は、その回転によって上下の各気流が生ずるように屈曲されていて、バーブレードB1 の回転により発生する下降気流によって、ハウジング内の刈芝は下方に排出される。この場合において、刈芝誘導板Pが単に一つの場合に比較して、周方向に沿って複数個の刈芝誘導板Pが配設されていると、刈芝の下方への排出作用も各刈芝誘導板Pにより分割して生ずるために、刈芝の下方への排出がスムーズとなって、処理能力が増す。更に、バーブレードB1 の一回転における負荷増大部も複数に分割されて、個々の負荷増大部の負荷増大分は、刈芝誘導板が一つの場合に比較して小さくなっているために、バーブレードB1 の回転もスムーズとなって、芝刈状態が安定する。 【0028】 また、ハウジングHをマルチングモアMの進行方向Qに沿って前後二分したほぼ前半部のみに複数個の刈芝誘導板Pを周方向に沿って所定間隔をおいて配置してあって、各刈芝誘導板Pは、全て進行方向後方にのみ刈芝を誘導するので、「背景技術」の項目で説明した不具合(ハウジングH内の刈芝の滞留量が無駄に増えて、バーブレードB1 の回転抵抗を増加させる)が解消される。 【0029】 なお、上記実施例では、ハウジングHをマルチングモアMの進行方向Qに沿って前後二分したほぼ前半部のみに3個の刈芝誘導板Pを配置した例であるが、3個に限定されず、2個、或いは刈芝の誘導機能を果たす範囲において4個以上配置することも理論上は可能である。 【実施例2】 【0030】 次に、本発明の別の実施例について説明する。図9(イ),(ロ)は、それぞれ内側羽根部32の高さが普通の場合(前記実施例の場合)、及び高くした場合の部分断面図である。本発明においては、上記したように、複数の刈芝誘導板Pを周方向に沿って所定間隔をおいて配置しているために、各刈芝誘導板Pの長さを、単に一個の刈芝誘導板を使用する場合に比較して短くできる。このことは、ハウジングHの大きさが一定であるとして、ハウジングHの中心Cから各刈芝誘導板Pの内端P2 に至る半径方向の長さ(L2 )〔図10参照〕が長くなることを意味し、その結果、バーブレードB1 における刈芝誘導板Pの内端P2 よりも内側の部分に形成される空間部Tの半径が大きくなって、内側羽根部32’を上方に向けて大きく屈曲させたバーブレードB2 を配置することができる。このように内側羽根部32’を上方に大きく屈曲させることにより、バーブレードB1 の刃部33の全刃長が長くなって、芝生の切断効率が高められる。また、内側羽根部32’の高さの高いバーブレードB2 の使用により、当該内側羽根部32’のドーナツ状の回転軌跡部の容積、即ち、刈芝排出部の排出容積が大きくなって、刈芝を効率よく下方に排出できる。 【実施例3】 【0031】 図10(イ)は、補助バーブレードB3 を取付けた状態のマルチングモアM0 の平面断面図であり、同(ロ)は、同(イ)のZ−Z線断面図である。上記したように、バーブレードB1 の上方には、大きな半径の空間部Tが形成されるので、この空間部Tに別の補助バーブレードB3 が配置可能となる。本実施例では、バーブレードB1 の上方に別の平板状の補助バーブレードB3 が、下方のバーブレードB1 の最も高い内側羽根部32との間に僅かの隙間を有して、かつ下方のバーブレードB2 に対してほぼ直交して配置されている。このため、各刈芝誘導板PによりハウジングHの中心部の側に誘導された刈芝は、上下二枚の各バーブレードB1 ,B3 によって周方向の位相がずれた状態で個別に再度切断されるために、ハウジングH内に取り込まれて滞留している刈芝の切断機会が倍増する。このため、刈芝の細断効率が一層に高められる利点がある。なお、図7及び図10において、二点鎖線で示される円Eは、駆動軸17を中心として刈芝誘導板Pの内端P2 を通る円を示し、前記空間部Tの外形となる。 【0032】 また、上記各実施例では、マルチングモアMの本体フレーム11の天体部11bの裏面にリング状の周壁体12を固着して、逆碗状をしたハウジングHを構成しているが、逆碗状をしたハウジングを別途製作しておいて、この逆碗状をしたハウジングを前記本体フレーム11の天体部11bの裏面に固着する構成にしてもよい。 【0033】 また、上記各実施例は、複数個(実施例では2個)のマルチングモア単体M0 を組み合わせてなる多連構造のマルチングモアMであるが、マルチングモア単体M0 のみで構成した「単モア」に対しても実施可能である。 【0034】 なお、本発明に係るマルチングモアの刈取対象の主体は、芝生であるが、背丈が比較的低い一般の雑草の刈り取りも可能である。 【図面の簡単な説明】 【0035】 【図1】乗用型の作業車Aの機体1の下部に本発明に係る三連式のマルチングモアMを装着した状態の平面図である。 【図2】同じく側面図である。 【図3】本発明に係る三連式のマルチングモアMを斜下方から見た斜視図である。 【図4】三連式のマルチングモアMの側面断面図である。 【図5】マルチングモア単体M0 を斜上方から見た斜視図である。 【図6】図5のX矢視図である。 【図7】マルチングモア単体M0 を刈芝誘導板Pの部分で破断した平面断面図である。 【図8】図7のY−Y線矢視断面図である。 【図9】(イ),(ロ)は、それぞれ内側羽根部32の高さが普通の場合、及び高くした場合の部分断面図である。 【図10】(イ)は、補助バーブレードB3 を取付けた状態のマルチングモアM0 の平面断面図、同(ロ)は、同(イ)のZ−Z線断面図である。 【図11】複数の刈芝誘導板P’を全周に亘って配置した状態の平面断面図(原理図)である。 【符号の説明】 【0036】 B1 ,B2 :バーブレード B3 :補助バーブレード D:刈芝付着防止部材 H:ハウジング M:マルチングモア M0 :マルチングモア単体 P:刈芝誘導板 Q:マルチングモアの進行方向 T:空間部 10:ハウジングの天板部 12:周壁体(周壁部) 31:外側羽根部 32:内側羽根部 33:刃部
|
| 【出願人】 |
【識別番号】591187841 【氏名又は名称】株式会社共栄社 【住所又は居所】愛知県豊川市美幸町1丁目26番地
|
| 【出願日】 |
平成16年10月15日(2004.10.15) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100083655 【弁理士】 【氏名又は名称】内藤 哲寛
|
| 【公開番号】 |
特開2006−109763(P2006−109763A) |
| 【公開日】 |
平成18年4月27日(2006.4.27) |
| 【出願番号】 |
特願2004−300924(P2004−300924) |
|