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【発明の名称】 モーア用のブレード
【発明者】 【氏名】中川 新市
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【要約】 【課題】起風機能の機能低下を極力抑えつつも、騒音を低減できるモーアのブレードを提供すること。

【解決手段】平板状のブレード本体30における先端側箇所の回転方向前縁に切刃31を形成するとともに、ブレード本体30における先端側箇所に回転方向後方および上方に向けて起風片32を延出し、この起風片32の上面に、溝33,33a,33b,34,34a,34b,35又はフィンをブレード本体30の回転方向に略沿って形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーアデッキの内部に縦軸心周りに駆動回転可能に配備されるブレードであって、
平板状のブレード本体における先端側箇所の回転方向前縁に切刃を形成するとともに、ブレード本体における先端側箇所に回転方向後方および上方に向けて起風片を延出し、この起風片の上面に、溝又はフィンをブレード本体の回転方向に略沿って形成してあることを特徴とするモーア用のブレード。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、モーアに使用されるブレードで、特には、モーアデッキ内に縦軸心周りに回転駆動可能に軸支装着されるフラットバー型のブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
フラットバー型のブレードは、一般に、先端側の回転方向前方の側縁に切刃が形成されて、先端側の回転方向後方部位に斜め上方に向かう起風片が屈曲形成され、ブレードの高速回転に伴って起風片で発生させた風によって刈草をデッキ外に搬出するとともに、起風片によって地上から吸い上げられる風によって倒れた草を吸引起立させるように構成されたものが多用されている。また、ブレードの先端側の回転方向後方に大型の起風片を突設して風力搬送機能および草の吸引起立機能を高めるようにしたブレードも開発されている。
【0003】
しかし、大型の起風片を突設すると風力搬送機能および草の吸引起立機能が高まる反面、起風片によって発生する渦流によって騒音も増大することになり、この騒音を低減するために、起風片に複数の通気孔を並列形成することで、起風片の背部での気流を整流することが提案されている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【特許文献1】実用新案登録公報第2519253号
【特許文献2】米国特許第6655119号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、起風片に複数の通気孔を並列形成した上記構造によると、起風片の背部での整流が良好に行われるのであるが、草の状況によっては通気孔に刈草が引っ掛かったり、詰まったりすることがあった。また、起風片に通気孔を設けることで、起風片の有効面積が減少し、気風片の大きさの割には風力搬送機能および草の吸引起立機能が十分に得られない状態であった。
そこで、本発明は上記事情に鑑み、起風機能の機能低下を極力抑えつつも、騒音を低減できるモーアのブレードを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[I]
(構成)
本発明の特徴は、モーアデッキの内部に縦軸心周りに駆動回転可能に配備されるブレードにおいて次のように構成することにある。
平板状のブレード本体における先端側箇所の回転方向前縁に切刃を形成するとともに、ブレード本体における先端側箇所に回転方向後方および上方に向けて起風片を延出し、この起風片の上面に、溝又はフィンをブレード本体の回転方向に略沿って形成してある。
【0006】
(作用)
本発明の特徴によると、ブレード本体における先端側箇所に回転方向後方および上方に向けて起風片を延出してあるので、ブレードの高速回転に伴って起風片で発生させた風によって刈草をデッキ外に搬出するとともに、起風片によって地上から吸い上げられる風によって倒れた草を吸引起立させる。
【0007】
このとき、ブレードの回転により、起風片の上面及び下面と周辺の空気とが接する境界層内に気流の渦が発生し、回転面の上面側において渦度をもつ気流が巻き込みにより大きな塊となり、 それが回転面の下面側の渦領域との相互作用によって交互に後方へ放出されて、起風片の背後には気流の剥離による渦流が発生する。このようにして発生する渦流が存在すると、渦の生成、渦の消滅、渦の加速度運動に起因して、起風片表面において空気の圧力変動即ち音が生じることになり、この音が結果として騒音となる。
【0008】
この点、本発明の特徴によると、起風片の上面に溝又はフィンをブレード本体の回転方向に略沿って形成してあるので、起風片の上面に接する境界層空間が細分化され、その境界層空間内で発生する渦の成長が抑制される。したがって、境界層内で発生する渦は小さなものとなり、上述の渦流は小さな渦により構成されることになる。渦流における渦の生成、消滅、加速度運動が小さな渦によるものであると、これらに起因する空気の圧力変動の変動幅も小さくなるので、結果として、音も小さくなる。
また、起風片の表面を加工するので、起風片の表裏の境界層空間が連通することはなく、起風片の有効作用面積は維持されるので、起風機能の低下を抑制できる。
【0009】
(効果)
本発明の特徴によると、起風片の上面に溝又はフィンを形成することで、起風片の起風機能の低下を極力抑えつつも、起風片の上面に発生する渦流による空気の圧力変動の変動幅を小さくすることができ、ブレードの回転により生じる騒音を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1に、モーアMを装着した乗用型草刈り機の全体側面が、また、図2にその平面がそれぞれ示されている。この草刈り機は、キャスタ輪に構成された左右一対の前輪1と左右一対の後輪2を備えた走行機体3における前後輪間の下腹部に、モーアMが四連リンク構造のリンク機構4を介して吊り下げ支持された構造となっており、リンク機構4を油圧シリンダ5によって昇降操作することで、モーアMを略平行に昇降できるよう構成されている。また、走行機体3の後部にエンジン6が搭載されるとともに、その前部に運転座席7および門形の転倒保護フレーム(ROPS)8が配備されている。
【0011】
詳細な構造の説明は省略するが、前記エンジン6の出力はカウンターケース9に入力されて走行系と作業系とに分岐され、走行系の動力はカウンターケース9の左右両側に配備された図示されない左右一対の静油圧式の無段変速装置(HST)に入力され、その変速出力が減速ケース10を介して左右の後輪2に各別伝達されるようになっている。そして、左右の後輪2を駆動する無段変速装置は、運転座席7の左右両脇に前後揺動操作可能に配備された左右一対の走行レバー11を各別に変速操作することで、左右の後輪2をそれぞれ独立して無段階に前後進変速するよう構成されており、左右の走行レバー11の操作具合によって直進前後進、ピボットターン、および、スピンターンを任意に行うことができるようになっている。また、分岐された作業系の動力は、カウンターケース9の前面下部に突設されたPTO軸12から前方に向けて出力され、後述するようにモーアMに伝達されるようになっている。
【0012】
図3および図4に示すように、モーアMは、下向きに開放されたモーアデッキ15の内部に、縦軸心周りに回転駆動される3枚のブレード16が、中央のものが少し前方に偏位するよう平面視で三角配置されて軸支された構造となっており、モーアデッキ15は、天板高さが全体的に同高さに設定されたフラットデッキに構成されるとともに、その右端部には、飛散防止用の出口カバー17を供えた排出口dが形成されている。
【0013】
また、モーアデッキ15の内部前側には、各ブレード16における先端回動軌跡の前側部分に沿って屈曲された前部バッフルプレート18と、前記先端回動軌跡の後側部分に沿って屈曲された後部バッフルプレート19とが垂設され、各ブレード16の細断空間が互いに連通した左右に長い一連の細断室がデッキ内に形成されている。
【0014】
そして、図3および図5に示すように、前記PTO軸12から取り出された作業用動力が、モーアデッキ15の中央上面に配備されたベベルギヤケース21に屈曲および伸縮自在な軸伝動機構22を介して伝達され、ベベルギヤケース21で縦軸回転に変換された回転動力が中央のブレード16の回転軸23に伝達されるとともに、この回転軸23と左右のブレード16の回転軸23とがベルト24によって巻き掛け連動され、各ブレード16における回転軌跡の前半部が排出口d側に向かうように、全ブレード16が同方向(上面視で時計回り方向)に等速で回転駆動されるようになっている。なお、モーアデッキ15の周囲には障害物乗り越え用の遊転輪(アンチスキャルプローラ)25が配備されており、上方への移動融通をもってリンク機構4に吊り下げ支持されたモーアMに地上の斜面や隆起部などに接近すると、遊転輪25のいずれかが隆起部などに乗り上がることでモーアMが相対的に持ち上げられて、モーアデッキ15が直接に接触して地面を削ることが回避されるようになっている。
【0015】
本発明では、前記ブレード16が以下のように構成されている。図5および図6に示すように、前記ブレード16は鋼板を打ち抜き加工して形成されており、平板状のブレード本体30における先端側箇所の回転方向前縁に径方向所定長さに亘って切刃31が切削形成されるとともに、ブレード本体30における先端側箇所に回転方向後方および上方に向けて起風片32が屈曲延出されている。起風片32は、弾性変形できる程度の厚みを有しており、その上面には、ブレード本体30の回転方向に略沿って、断面視矩形状(図8(イ)参照)の溝33,34,35を形成してある。
【0016】
溝33及び溝34は、ブレード本体30の切り刃31から起風片32の回転方向後方に向けて設けられている。溝33は起風片32の先端部付近で回転内側へ向う溝33a及び溝33bに枝分かれし、溝34は起風片32の先端部付近で回転外側に向う溝34a及び溝34bに枝分かれしている。溝35は、溝33及び溝34が枝分かれする位置の中間箇所付近から起風片32の先端に亘って、溝33bと溝34bとに挟まれるように、起風片32の先端部に設けられている。
【0017】
このように、起風片32に溝33,34,35を設けることで、起風片32の上面における気流との接触領域である境界層空間が細分化されるので、境界層空間内で発生する渦の成長が抑制される。したがって、境界層内で発生する渦は小さなものとなる。起風片32の背後に発生する気流の剥離による渦流は、これらの渦により構成されることになる。渦流における渦の生成、消滅、加速度運動が小さな渦によるものであると、これらに起因する空気の圧力変動の変動幅も小さくなるので、結果として、騒音も小さくなる。
【0018】
また、渦流の発生箇所に比較的近い部分である起風片32の先端部では、溝33a,33b,34a,34b,35がそれぞれ異なる方向をもって設けられている。このように各溝を構成すると、起風片32の後方に向う気流を拡散させることができ、渦流が形成される空間領域が拡大するので、渦流における渦の生成、消滅、加速度運動による空間の圧力変動が分散する。したがって、単位空間あたりに含まれる空間の圧力変動よるエネルギーを低減させることができ、騒音の低減が図られる。
【0019】
また、上記構成によると、走行機体3を前進移動させて草刈作業を行うと、モーアデッキ15の前壁15aおよび前部バッフルプレート18をくぐって各細断室に導入された草は、各ブレード16の回転軌跡の前半において切断され、起風片32によって起こされた風によって刈草が排出口dに向けて搬送される。
【0020】
この場合、地上に植立している草はデッキ前壁15aおよび前部バッフルプレート18で前方に押し倒されながらこれらの下端をくぐり抜けて細断室に導入されることになるが、起風片32によって上方へ向かう気流によって吸い上げられて起立し、ブレード16の切刃31で切断される。
【0021】
また、先述のように、起風片32に形成した溝33〜35により騒音の発生が抑制される一方で、起風効果を生む起風片32の有効面積は、溝を設けても変更されないので、溝を備えない従来の起風片と同様の起風能力を維持できる。
【0022】
なお、起風片32は、弾性変形できる程度の厚みを有しているので、以下のような作用を有する。走行機体3を前進移動させて草刈作業を行う際に、作業地の勾配状態によってはエンジン回転数を上げる場合がある。こうした場合、PTO軸12の回転速度が上昇するので、各ブレード16の回転速度が上昇することになり、作業地の勾配の影響により必要以上の起風力を得ることになり、これに伴い、騒音の増大が予想される。
【0023】
この場合、ブレード16の回転速度が上昇すると、起風片32が受ける空気抵抗力が回転面32の上面から下面に起風片32を押さえつける作用が増大する。本実施例の起風片32は弾性変形できる程度の厚みであるので、空気抵抗力が起風片32を押さえつける作用により、起風片32の起立角度θ(図7参照)が減少する。起立角度θが減少すると、起風片32が受ける空気抵抗力も減少する。こうして、起風片32の起立角度θが変化して、起風片32の弾性力と起風片32が受ける空気抵抗力とのバランスが取れた状態で、ブレード16が回転することになる。
【0024】
このように、エンジン回転数の上昇によりブレード16の回転速度が上昇しても、起立角度θが小さくなることで起風作用が抑制されるので、ブレード16の回転数が増加しても騒音の増大をある程度抑えることができる。
【0025】
〔発明の実施の別形態〕以下に本発明の別実施形態を列記する。
(1)起風片32に設ける溝の断面形状は図8(イ)に示す矩形の他、図8(ロ)に示すV字形、図8(ハ)に示す円弧形などであってもよい。
(2)起風片32の溝に代えて、図9に示すように、起風片32の上面に垂直なフィン36をブレード本体30の回転方向に略沿って設けてもよい。
(3)起風片32の裏面に溝又はフィンを設けてもよい。
(4)起風片32は、空気抵抗による弾性変形をしないようにブレード本体と同じ剛性で構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】草刈り機の全体側面図
【図2】草刈り機の全体平面図
【図3】モーアの平面図
【図4】上下反転したモーアの平面図
【図5】モーアの縦断側面図
【図6】ブレードの先端側箇所の平面図
【図7】ブレードの先端側箇所の断面図
【図8】(イ)〔発明を実施するための最良の形態〕におけるブレードに備えた溝の断面図 (ロ)及び(ハ)〔発明の実施の別形態〕(1)におけるブレードに備えた溝の断面図
【図9】〔発明の実施の別形態〕(2)におけるブレードに備えたフィンの断面図
【符号の説明】
【0027】
15 モーアデッキ
16 ブレード
23 縦軸芯
30 ブレード本体
31 切刃
32 起風片
33 溝
33a 溝
33b 溝
34 溝
34a 溝
34b 溝
35 溝
36 フィン
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【住所又は居所】大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号
【出願日】 平成16年7月6日(2004.7.6)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎

【公開番号】 特開2006−20531(P2006−20531A)
【公開日】 平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願番号】 特願2004−199451(P2004−199451)