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【発明の名称】 移植機
【発明者】 【氏名】石飛 芳夫
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1 三菱農機株式会社内

【要約】 【課題】疎植作業時に植付爪の駆動速度を必要以上に増加させないように走行速度が規制される移植機を提供することを課題としている。

【解決手段】走行機体3に連結された作業機6に回転駆動自在に設けられたロータリケース23の駆動速度を等速又は不等速のいずれかに切り換える速度切換え機構51の操作用の切換レバー29の不等速側への切換えに伴い走行機体3の走行速度変速操作を行う変速レバー12の所定以上の高速側への操作を規制する規制手段72を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(3)に作業機(6)を連結し、作業機(6)が、苗の移植用に回転駆動されるロータリケース(23)を備え、ロータリケース(23)に苗を圃場に移植する移植爪(26)を、ロータリケースに対して予め定められた不等速回転するように取り付け、ロータリケース(23)を回転駆動させるロータリ駆動部に、ロータリケース(23)の駆動速度を等速又は不等速のいずれかに切り換える速度切換え機構(51)を設け、走行機体(3)の走行速度変速操作を行う変速レバー(12)と速度切換え機構(51)の操作用の切換レバー(29)を設け、速度切換え機構(51)の不等速側への切り換えによって、走行機体(3)の所定以上の高速走行を規制する規制手段を設けた移植機において、規制手段(72)が、切換レバー(29)の不等速側への切換えに伴い変速レバー(12)の所定以上の高速側への操作を規制する手段からなる移植機。
【請求項2】
走行用のトランスミッションケース(13)の一方の側面側に、走行変速用の油圧無段変速装置(14)と、変速レバー(12)による変速操作部と、切換レバー(29)と、規制手段(72)とを集中して配置した請求項1の移植機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、疎植作業を行うことができる移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来圃場への苗の移植作業において、苗の株間距離を慣行より長くし、単位面積あたりの株数を慣行より少なく植え付ける疎植という農法が公知となっている。一方走行機体に苗の植付(移植)を行う植付作業機が連結され、該植付作業機によって圃場に苗を植え付ける乗用田植機が公知となっている。
【0003】
上記乗用田植機の植付作業機は、回転駆動されるロータリケースに、ロータリケースに対して不等速に回転駆動されるプランタアームが取り付けられた植付部を備え、プランタアームに設けられたビークによって苗載せ台から苗を掻き取り圃場に植え付けるものが一般的である。プランタアームは1つのロータリケースに対して2つ設けられ、ロータリケースの回転中心を挟んで180度対称に設けられている。
【0004】
ロータリケース及びプランタアームは、上記ビークの先端が、苗載せ台に対して上下に長い軌跡を描くように、ロータリケースが等速回転し、プランターアームがロータリケースに対して不等速に回転する。このためビークは、移動軌跡における上部の苗掻き取り位置近傍から下部の苗植え付け位置近傍に移動する範囲及び苗植え付け位置近傍から苗掻き取り位置近傍に移動する範囲おいて、他の部分より高速となるように、プランタアームに対して不等速で回転する。
【0005】
上記構造の乗用田植機には、疎植を行うことができる機種もある。疎植を行うことができる乗用田植機は、走行機体の走行速度に対して相対的にロータリケースの回転速度を低下させることによって植え付ける苗の株間距離を長くする。ただしロータリケースの相対的な回転速度を低下させると、走行時にビークの回転軌跡が前後方向に延び、ビークによって圃場面に空けられる穴が前後(走行方向)に拡大したり、ビークが苗に当たることがある等の問題が発生する。
【0006】
上記問題に対応して、疎植作業を行う場合、ロータリケースを不等速で回転させ、通常植付時と同様に苗載せ台に対してビークに上下に長い軌跡を描かせることができる乗用田植機が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【0007】
上記乗用田植機は、ロータリケースを、ビークが移動軌跡における苗掻き取り位置近傍及び苗植え付け位置近傍に位置している部分において、他の部分より高速回転させる。これにより通常の植付作業時と同様の軌跡でビークが移動し、疎植作業において上記問題を解決することができる。
【特許文献1】特開2004−313039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のようにプランタアームは、ロータリケースに対して、ビークの苗掻き取り位置近傍及び苗植え付け位置近傍において他の部分より相対的に低速で回転するため、ロータリケースをビークが苗掻き取り位置近傍及び苗植え付け位置近傍に位置している部分で高速回転させると、2つの異なる不等速運動(ロータリケースとプランターアームのそれぞれ異なる不等速運動)によって、ビークがギクシャクした動作を行う。
【0009】
走行機体の走行速度が高速になると、ロータリケースの平均回転速度は上昇するため、上記のようにビークのギクシャクした動作は、特に走行機体の走行速度が高速になるほどロータリケースの平均回転速度が高速となり顕著になる。このため走行機体の高速走行時に疎植作業を行うと、ビークに把持された苗の乱れが大きくなり、苗の植付姿勢に乱れが生じて、苗の生育上のバラツキにつながるという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するための本発明の移植機は、走行機体3に作業機6を連結し、作業機6が、苗の移植用に回転駆動されるロータリケース23を備え、ロータリケース23に苗を圃場に移植する移植爪26を、ロータリケースに対して予め定められた不等速回転するように取り付け、ロータリケース23を回転駆動させるロータリ駆動部に、ロータリケース23の駆動速度を等速又は不等速のいずれかに切り換える速度切換え機構51を設け、走行機体3の走行速度変速操作を行う変速レバー12と速度切換え機構51の操作用の切換レバー29を設け、速度切換え機構51の不等速側への切り換えによって、走行機体3の所定以上の高速走行を規制する規制手段を設けた移植機において、規制手段72が、切換レバー29の不等速側への切換えに伴い変速レバー12の所定以上の高速側への操作を規制する手段からなることを第1の特徴としている。
【0011】
第2に走行用のトランスミッションケース13の一方の側面側に、走行変速用の油圧無段変速装置14と、変速レバー12による変速操作部と、切換レバー29と、規制手段72とを集中して配置したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように構成される本発明の構造によると、疎植作業等のためにロータリケースを不等速に回転させると、自動的に変速レバーを所定以上の高速側に操作することが規制される。これによりロータリケースの不等速回転時には、走行機体が所定以上に高速走行することはなく、ロータリケースの所定以上の高速作動が規制され、ロータリケースの不等速回転と植付爪の不等速回転とにより発生する植付爪のギクシャクした動作が軽減され、苗の把持姿勢を大きく崩すことなく植付作業を行うことができ、苗の植付姿勢の乱れを抑制し、植付精度の向上を図ることができるという効果がある。
【0013】
特に規制手段が、変速レバーの所定以上の高速側への操作を規制する手段からなるため、トランスミッション側に規制機構等を設ける必要がなく、規制手段を簡単に構成することができるという利点がある。
【0014】
そして走行用のトランスミッションケースの一方の側面側に、走行変速用の油圧無段変速装置と、変速レバーによる変速操作部と、切換レバーと、規制手段とを集中して配置することによって、変速レバーによる変速操作部周辺に規制機構を簡単に且つコンパクトに構成して配置することができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は本発明を採用した移植機である乗用田植機の側面図である。該乗用田植機は、前輪1及び後輪2を備えた走行機体3の後方に昇降リンク機構4を介して植付作業機6が昇降自在に連結されている。走行機体6の前方にボンネット7が設けられている。ボンネット7内にはエンジンが搭載されている。
【0016】
ボンネット7の後方には、運転席8が設けられている。運転席8内には座席9が設けられている。座席9の前方にステアリングハンドル11が設けられている。ステアリングハンドル11の左側方には主変速レバー12が前後及び左右揺動自在に設けられている。図2に示されるように、主変速レバー12はレバーガイド10に挿通されている。主変速レバー12の下方にはミッションケース13が設けられている。
【0017】
図2,図3に示されるように、該ミッションケース13の左側面には油圧無段変速装置(HST)14が取り付けられている。エンジンからの駆動力はHST14に入力され、無段階に変速されてミッションケース13内に構成されるトランスミッションに入力される。トランスミッションに入力された駆動力は前輪1及び後輪2に出力される。
【0018】
これにより前後輪1,2が駆動され走行機体3が走行する。上記主変速レバー12はHST14の操作アーム16にロッド17を介して連係されている。主変速レバー12はレバーガイド10のガイド溝10aに沿った前後及び左右揺動によってHST14の変速操作を行う。主変速レバー12によりHST14を操作することで、走行機体3の走行速度及び走行方向(前進又は後進)を設定調節することができる。
【0019】
上記植付作業機6には、作業機フレーム18の上方に左右往復移動する苗載せ台19が設けられている。苗載せ台19の下方には左右に複数のプランタケース21が設けられている。該プランタケース21の下方にフロート22が設けられている。上記プランタケース21の側方には回転駆動されるロータリケース23が設けられている。
【0020】
該ロータリケース23には、ロータリケース23に対して回転駆動されるプランタアーム24が2つ設けられている。プランタアーム24はロータリケース23の回転軸心を挟んで180度対称に配置されている。プランタアーム24には植付爪26が設けられている。ロータリケース23と2つのプランタアーム24と植付爪26によって植付部が構成され、植付部がプランターケース21の側方に配置されている。
【0021】
図4に示されるように、上記ミッションケース13からはロータリケース23を駆動するための植付PTO軸27が突出している。該植付PTO軸27の駆動力が各プランタケース21に伝動され、ロータリケース23が回転駆動される。プランタアーム24はロータリケース23に入力される回転駆動力によって駆動される。
【0022】
このためプランタアーム24の平均回転速度はロータリケース23の回転速度に依存して増減する。ロータリケース23とプランタアーム24の回転によって植付爪26の先端が回転軌跡を描く。これにより本乗用田植機は、植付爪26が回転軌跡に沿ってに苗載せ台19に載置された苗を掻き取り、圃場に植え付ける。
【0023】
ただしプランタアーム24は、ロータリケース23内に構成された不等速伝動機構を介して不等速で回転駆動される。プランタアーム24の上記不等速な回転によって、植付爪26の先端は、苗載せ台19に対して上下に長い従来公知の軌跡を描く。植付爪26に該軌跡を描かせるために、プランタアーム24は、植付爪26が移動軌跡における上部の苗掻き取り位置近傍から下部の苗植え付け位置近傍に移動する範囲及び苗植え付け位置近傍から苗掻き取り位置近傍に移動する範囲おいて、他の部分より高速となるように、不等速回転する。
【0024】
プランタアーム24の作動速度は、植付PTO軸27の駆動速度によって決まる。植付PTO軸27の駆動力はHST14による変速後にトランスミッションから出力されるものであるため、走行機体3の走行速度に連動し、苗の植付間隔(株間)は、走行機体3の走行速度に対する植付PTO軸27の相対的な速度によって決まる。
【0025】
本乗用田植機は、走行機体3の走行速度に対する植付PTO軸27の相対的な速度を変速することが可能となっており、植付株間を調節することができるように構成されている。植付PTO軸27の変速(植付株間の調節)は、運転席8のフロアから突出した2つの株間変速レバー28,29によって行うことができる。
【0026】
両株間変速レバー28,29は左右揺動自在に取り付けられている。両株間変速レバー28,29を左右に揺動操作することによって植付PTO軸27の変速を行うことができる。特に一方の株間変速レバー(第2株間変速レバー)29は、疎植(従来の技術参照)を行うために植付PTO軸27の速度を低下させるとともに、植付PTO軸27を不等速駆動させるように切り換えるレバーとなっている。
【0027】
このため第2株間変速レバー29を「疎植(大)」側に切り換えることによって、植付PTO軸27の平均回転速度が、疎植作業ではない通常の株間の植付作業(通常作業)を行うための「通常(小)」での回転速度に比較して低下し、植付爪26が移動軌跡における苗掻き取り位置近傍及び苗植え付け位置近傍に位置している部分において、ロータリケース23が他の部分より高速回転し、疎植作業を行うことができる。なお標準作業状態ではロータリケース23は等速回転する。
【0028】
他方の株間変速レバー(第1株間変速レバー)28は、疎植作業又は通常の植付作業の範囲内で植付株間を大,中,小の3段階に変更するように、植付PTO軸27を3段に変速するレバーとなっている。以上のように2つの株間変速レバー28,29によって植付PTO軸は6段に変速され、植付株間は6段階に調節が可能となっている。
【0029】
上記トランスミッションは、図4に示されるように、HST14の出力軸31から入力軸32に駆動力が入力されている。入力軸32には回転自在に筒軸33が外装されている。入力軸32と筒軸33との間には主クラッチ34が設けられている。該主クラッチ34によって、入力軸32から筒軸33に断接自在に駆動力が伝動される。
【0030】
上記筒軸33には、ギヤ36が設けられている。該ギヤ36には走行出力軸37のギヤ38と、筒軸33に並列する中間伝動軸39のギヤ41とが噛合している。これにより主クラッチ34を入り作動すると走行出力軸37と中間伝動軸39とに駆動力が伝動される。
【0031】
上記中間伝動軸39に並列して株間変速軸42が軸支されている。中間伝動軸39と株間変速軸42との間には後述する株間変速機構43が構成されている。株間変速軸42には回転自在に筒軸44が外装されている。該筒軸44にはベベルギヤ46が自由回転自在に設けられている。ベベルギヤ46には株間変速機構43を介して駆動力が入力される。
【0032】
ベベルギヤ46は植付PTO軸27に自由回転自在に軸支されたベベルギヤ47と噛合している。ベベルギヤ47と植付PTO軸27との間には植付クラッチ48が設けられている。植付クラッチ48を介して上記ベベルギヤ46,47から植付PTO軸27に駆動力が断接自在に伝動される。
【0033】
株間変速機構43は、株間を大,中,小の3段階に切り換えるための3段の第1変速部49と、疎植作業と通常作業とを切り換えるための2段の第2変速部51とからなる。図4,図5に示されるように、第1変速部49は、中間伝動軸39に一体的に設けられる2つのギヤ52,53と、株間変速軸42にスライド自在にスプライン嵌合される変速ギヤ54とからなる。
【0034】
変速ギヤ54は、3つのギヤ部54a,54b,54cを有する。各ギヤ部54a,54b,54cが前述のギヤ52又は53に選択的に噛み合うことによって、中間伝動軸39から株間変速軸42に駆動力が3段に変速されて伝動される。第1変速部49の変速操作は第1シフタ軸56の左右移動によって行われる。
【0035】
第1シフタ軸は図2,3に示される第1株間変速レバー28の左右揺動操作によって移動させられる。これによって第1株間変速レバー28の左右揺動により第1変速部49の変速を行うことができる。
【0036】
第2変速部51は、筒軸44に一体的に設けられたギヤ57と、中間伝動軸39に自由回転自在に設けられたギヤ58と、中間伝動軸39に自由回転自在に軸支された筒軸59と、該筒軸59にスライド自在にスプライン嵌合される変速ギヤ61と、ギヤ58のボス62に自由回転自在に設けられた偏心ギヤ63と、上記筒軸44に自由回転自在に軸支された変速ギヤ64とからなる。
【0037】
ギヤ58のボス62と筒軸59とは噛合歯によって噛合している。偏心ギヤ63は変速ギヤ64に設けられた偏心ギヤ部64aと常時噛合している。ギヤ61はスライドによって変速ギヤ64に設けられたギヤ部64bとの噛合と噛合解除に切り換えられる。
【0038】
図6(a),(b)に示されるように、ギヤ61と偏心ギヤ63には、噛合歯61a,63aが設けられている。ギヤ61とギヤ部64bとの噛合が解除されると、ギヤ61の噛合歯61aと偏心ギヤ63の噛合歯63aとが噛み合う。
【0039】
図5に示されるように、株間変速軸42と筒軸44との間にはトクルリミッタ66が設けられており、通常時には株間変速軸42から筒軸44に駆動力が伝動される。このため過負荷時には該トルクリミッタ66が作用し、株間変速軸42と筒軸44との間の駆動力の伝動が断たれる。
【0040】
第1変速部49によって変速されて株間変速軸42に入力される駆動力は、トクルリミッタ66を介して筒軸44に伝動される。筒軸44に伝動された駆動力はギヤ57,ギヤ58を介して筒軸59に伝動される。
【0041】
図6(a)に示されるように、ギヤ61と変速ギヤ64のギヤ部64bとの噛合状態では、筒軸59に伝動された駆動力はギヤ61とギヤ部64bを介して変速ギヤ64に伝動される。図6(b)に示されるように、ギヤ61の噛合歯61aと偏心ギヤ63の噛合歯63aとの噛合状態では、偏心ギヤ63と偏心ギヤ部64aを介して、筒軸59に伝動された駆動力が変速ギヤ64に伝動される。
【0042】
第2変速部51の変速は、ギヤ61をスライドさせ、ギヤ61をギヤ部64bに噛合させるか、噛合歯61a,63aを介して偏心ギヤ63に噛み合わせるかを選択的に切り換えることによって行われる。第2変速部52の変速操作(ギヤ61のスライド操作)は、第2シフタ軸67の左右移動によって行われる。
【0043】
第2シフタ軸67は図2,3に示される第2株間変速レバー29の左右揺動操作によって移動させられる。これによって第2株間変速レバー29の左右揺動により第2変速部51の変速(疎植作業と標準作業の切り換え)を行うことができる。
【0044】
偏心ギヤ63と偏心ギヤ部64aとを介して変速ギヤ64に駆動力が伝動されると、ギヤ61とギヤ部64bとを介して変速ギヤ64に駆動力が伝動された場合に比較して、変速ギヤ64は低速で回転し、且つギヤの偏心によって不等速で駆動される。変速ギヤ64に設けられた噛合歯64cと上記ベベルギア46に設けられた噛合歯とが噛み合っている。
【0045】
第2株間変速レバー29によってギヤ61をギヤ部64bに噛合させることにより標準株間での標準作業を行うことができ、噛合歯61a,63aを介してギヤ61を偏心ギヤ63に噛み合わせることによって、疎植作業を行うことができる。
【0046】
標準作業及び疎植作業のいずれの場合も第1株間変速レバー28によって3段階に株間を調節することができる(合計6段階)。ただし疎植作業時には後述するように第1株間変速レバー28による植付PTO軸27の最高速度への変速、つまり疎植作業時における最小株間での植え付け作業が規制され、第1株間変速レバー28によって2段階に株間を調節することができる。
【0047】
図2,図3に示されるように、上記第1シフタ軸56及び第2シフタ軸67はミッションケース13の左側方に近接して前後に並んで突出している。このため第1株間変速レバー28及び第2株間変速レバー29もミッションケース13の左側方に、第1シフタ軸56及び第2シフタ軸67に対応して近接して前後に並んで配置されている。
【0048】
第1株間変速レバー28及び第2株間変速レバー29はミッションケース13側に左右揺動自在に軸支されている。第2シフタ軸67は第1シフタ軸56より前方に位置し、このため第2株間変速レバー29が第1株間変速レバー28より前方に位置する。
【0049】
両株間変速レバー28,29の基端部には各レバー28,29と一体的に揺動するブラケット68,69が設けられている。各株間変速レバー28,29はブラケット68,69を介して第1シフタ軸56又は第2シフタ軸67に連結されている。これにより第1株間変速レバー28の左右揺動によって第1シフタ軸56が操作され、第1変速部49が変速操作され、第2株間変速レバー29の左右揺動によって第2シフタ軸67が操作され、第2変速部51が変速操作される。
【0050】
HST14は第2株間変速レバー29より前方に位置してミッションケース13に取り付けられている。HST14の背面に、HST14の操作アーム16がミッションケース13側に向かって突出している。操作アーム16は上下揺動してHST14を変速する。操作アーム16の下端縁は先端(ミッションケース13側)に向かって上昇傾斜している。
【0051】
主変速レバー12の基端部側に設けられ、主変速レバー12と一体的に前後揺動するアーム71と上記操作アーム16の先端側とが前述のロッド17によって連結されている。これにより主変速レバー12の前方への揺動操作により、操作アーム16が下方に揺動され、HST14が前進方向に増速変速され、主変速レバー12の後方への揺動操作により、操作アーム16が上方に揺動され、HST14が後進方向に増速変速される。
【0052】
第2株間変速レバー29に設けられたブラケット69の下端は前方側に曲げられている。曲げの先端側に上方に突出するボルト72が取り付けられている。該ボルト72のボルトヘッド72aは上記操作アーム16の鉛直下方に位置する。該ボルト72は、第2株間変速レバー29の左右揺動に伴って上記操作アーム16の下方において左右に移動する。
【0053】
疎植作業を行わせるために第2株間変速レバー29を右側に揺動操作するとボルト72が左側に移動し、標準作業を行わせるために第2株間変速レバー29を左側に揺動操作するとボルト72が右側に移動する。ボルト72が左側に移動すると、ボルトヘッド72aが操作アーム16の回動支点に近接し、ボルト72が右側に移動すると、ボルトヘッド72aが操作アーム16の回動支点から離反する。
【0054】
上記のように操作アーム16の下端縁は先端に向かって上昇傾斜しているため、ボルト72が操作アーム16の回動支点に近接するとボルトヘッド72aが操作アーム16の下端縁に近接し、ボルト72が操作アーム16の回動支点から離反するとボルトヘッド72aが操作アーム16の下端縁から離反する。
【0055】
これにより標準作業時には主変速レバー12の全揺動に対して操作アーム16が自由に揺動し、主変速レバー12により全ての領域での変速操作を行うことができ、任意の走行速度で標準株間での植付作業を行うことができる。
【0056】
対して疎植作業時には主変速レバー12を前方に揺動させ、前進高速側に変速操作すると、主変速レバー12の操作途中で操作アーム16がボルトヘッド72aと当接し、所定の速度以上の変速操作が規制される。つまり上記ボルト72が規制手段をなし、ボルト72(規制手段)によって疎植作業時の走行機体3の所定の速度以上の高速走行が規制される。なおボルト72のブラケット69からの突出量をねじ込み具合によって調節することによって、規制される主変速レバー12による速度領域を容易に調節することができる。
【0057】
これによりロータリケース23が不等速回転する疎植作業時に、走行機体3が所定以上に高速走行することはなく、ロータリケース23の所定以上の高速作動が規制される。このためロータリケース23の不等速回転とプランタアーム24の不等速回転とにより発生する植付爪26のギクシャクした動作が軽減され、苗の把持姿勢を大きく崩すことなく植付作業を行うことができ、苗の植付姿勢の乱れを抑制し、植付精度の向上が図られる。
【0058】
特に規制手段が、第2株間変速レバー29と一体揺動するボルト72からなり、主変速レバー12の所定以上の高速側への操作を操作アーム16との直接的な当接によって規制するという簡単な構造であるため、トランスミッション側に規制機構等を設ける必要がなく、規制手段を簡単に且つローコストで設けることができる。また操作アーム16に近接する位置で操作アーム16の揺動を規制するため、規制作動を正確に且つ確実に行わせることができる。
【0059】
そしてHST14と主変速レバー12との間に形成される変速操作機構(アーム71,ロッド17,操作アーム16等)、HST14、第1株間変速レバー28及び第2株間変速レバー29、ボルト72が、ミッションケース13の左側面側に集中して配置されているため、上記ボルト72による主変速の規制機構をコンパクトに構成して配置することができる。
【0060】
図2,図7(a),(b)に示されるように、第1株間変速レバー28及び第2株間変速レバー29はそれぞれに左右方向のガイド溝73a,73bを備えたレバーガイド73に挿通されている。各株間変速レバー28,29はガイド溝73a,73bに沿って左右揺動される。レバーガイド73には、ガイド溝73a,73bの一部を塞ぎ、第1株間変速レバー28又は第2株間変速レバー29の一部の変速操作を規制する規制板74が設けられている。
【0061】
規制板74はレバーガイド73に反転回動自在に取り付けられている。規制板74は平面視で長方形の先端左側が切り欠けられた形状をなしている。規制板74を図7(a)に示されるように、先端が前方に向かうように倒伏させると、規制板74の回動基端部側の幅広部74aが第2株間変速レバー29のガイド溝73bの右側を塞ぎ、規制板74は第2レバー規制姿勢Xとなる。
【0062】
これにより上記幅広部74aが第2株間変速レバー29の規制部として機能し、第2株間変速レバー29は疎植作業側への変速操作が規制される。この第2レバー規制姿勢Xでは第1株間変速レバー28のガイド溝73aの規制は行われないため、標準作業状態においては、第1株間変速レバー28によって3段階に自由に株間を調節することができる。
【0063】
規制板74を図7(b)に示されるように、先端が後方に向かうように倒伏させると、規制板74の先端側の幅狭部74bのみが第1株間変速レバー28のガイド溝73aの右側を塞ぎ、規制板74は第1レバー規制姿勢Yとなる。第1株間変速レバー28は右側への変速操作によって、植付PTO軸27の駆動速度を段々と上昇させる。
【0064】
このため、上記幅狭部74bが第1株間変速レバー28の規制部として機能し、第1レバー規制姿勢Yにおいては、第1株間変速レバー28による植付PTO軸27の最高速度への変速操作が規制される。第1レバー規制姿勢Yでは第2株間変速レバー29の規制は行われないため、第2株間変速レバー29によって標準作業と疎植作業とに自由に切り換え操作を行うことができる。
【0065】
規制板74によって、第2株間変速レバー29により標準作業と疎植作業とを自由に切り換えることができる状態とした場合は、第1株間変速レバー28による植付PTO軸27の変速の最高速(最小株間)への変速操作を規制し、第1株間変速レバー28により植付PTO軸27の変速を自由に行うことができる状態とした場合は、第2株間変速レバー29による疎植作業への切り換えを規制する。
【0066】
これにより疎植作業時には、規制板74を第1レバー規制姿勢Yとすることによって、植付PTO軸27の最高速度への変速操作、つまり疎植作業時の最小株間切り換えが規制され、疎植作業時の植付PTO軸27の最高速度駆動による植付爪26のギクシャクした動作が軽減され、苗の把持姿勢を大きく崩すことなく植付作業を行うことができ、苗の植付姿勢の乱れを抑制し、植付精度の向上が図られる。
【0067】
そして上記疎植作業時の植付PTO軸27の高速回転規制が両株間変速レバー28,29の変速操作を規制する規制板74によって簡単に且つローコストで構成され、適正な株間と該株間に対応する植付PTO軸27の回転速度(植付爪の駆動速度)を得ることができる。
【0068】
なお規制板74は、第1レバー規制姿勢Yと第2レバー規制姿勢Xとでは、表裏反対となる。このため上記幅狭部74bの表裏両面には、標準作業時に切り換え可能な株間の寸法を表示する標準株間ラベル76と、疎植作業時に切り換え可能な株間の寸法を表示する疎植株間ラベル77が貼設されている。
【0069】
規制板74を第1レバー規制姿勢Yとすると標準株間ラベルが76が表面となり、第2レバー規制姿勢Xとすると疎植株間ラベル77が表面となる。これにより作業者は標準作業時及び疎植作業時に、規制板74によって各株間変速レバー28,29の規制と共に、切り換えが可能な株間を容易に確認することができ、誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】乗用田植機の側面図である。
【図2】ミッションケース上部の要部側面図である。
【図3】主変速レバー,HST,ミッションケース部分を示す要部斜視図である。
【図4】ミッションケースの展開図である。
【図5】第1変速部及び第2変速部を示すミッションケースの要部平面図である。
【図6】(a)は通常作業時の第1変速部及び第2変速部を示すミッションケースの要部平面図、(b)は疎植作業時の第1変速部及び第2変速部を示すミッションケースの要部平面図である。
【図7】第1及び第2株間変速レバーとレバーガイドと規制板を示し、(a)が規制板が第2レバー規制姿勢X時の要部斜視図、(b)が第1レバー規制姿勢Y時の要部斜視図である。
【符号の説明】
【0071】
3 走行機体
6 植付作業機(作業機)
12 変速レバー
13 トランスミッションケース
14 HST(油圧無段変速装置)
23 ロータリケース
26 植付爪(移植爪)
29 第2株間変速レバー(切換レバー)
51 速度切換え機構
72 ボルト(規制手段)
【出願人】 【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱農機株式会社
【住所又は居所】島根県八束郡東出雲町大字揖屋町667番地1
【出願日】 平成17年2月23日(2005.2.23)
【代理人】 【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠

【公開番号】 特開2006−230244(P2006−230244A)
【公開日】 平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願番号】 特願2005−47469(P2005−47469)