| 【発明の名称】 |
ゲル被覆種子 |
| 【発明者】 |
【氏名】両角 智徳
【氏名】林田 信明
【氏名】田中 幸利
|
| 【要約】 |
【課題】
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 植物体種子を水性ゲルカプセル内に封入して成るゲル被覆種子において、水性ゲルカプセルの生成過程における水性ゲル水溶液に、水に不溶であって導水性のある粉状体を混入し、その後、凝固させてなることを特徴とするゲル被覆種子。 【請求項2】 凝固させた後のものを、催芽処理をした請求項1記載のゲル被覆種子。 【請求項3】 凝固させた後のものを、催芽処理をした後に乾燥させた請求項1記載のゲル被覆種子。 【請求項4】 種子のみを催芽処理をした後に、粉状体を混入した水性ゲル水溶液に包埋して凝固させた請求項1記載のゲル被覆種子。 【請求項5】 種子のみを催芽処理をした後に、粉状体を混入した水性ゲル水溶液に包埋して凝固させた後に乾燥させた請求項1記載のゲル被覆種子。 【請求項6】 粉状体を、培養土とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のゲル被覆種子。 【請求項7】 培養土の混入率を0.1〜10重量%として、水性ゲル水溶液であるアルギン酸ナトリウム水溶液に混入し、凝固剤である金属イオンを含む溶液にはカルシウム塩水溶液を用いた請求項6に記載のゲル被覆種子。 【請求項8】 ゲル被覆用材に、ゲル被覆の分解能力を有する微生物及び/又は分解する酵素を混入した請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のゲル被覆種子。 【請求項9】 ゲル被覆用材に、ゲル被覆の分解能力を有する微生物及び/又は分解する酵素を混入したゲル被覆種子。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 この発明は、野菜や花卉等の植物体種子の発芽促進と、播種後の発育不良防止及び発育促進を、より一層効果あるように開発したゲル被覆種子の改良に関するものである。 【背景技術】 【0002】 近年、植物体種子の発芽促進のための前処理として、低温・保温・光照射・ジベレリン等の処理、更には種皮に傷を付けたり、透過度を上げる化学的処理をするなど所謂「催芽処理」が多用されている。これは、結果として出芽率の向上と発芽時期を揃える効果としても期待されている。 ところが、この催芽処理は、冷蔵中に催芽種子が水に浸漬された状態になる場合もあるので、この処理を実施した後の播種作業は、種子が濡れていて困難なものである。 【0003】 特に花卉種子では、トルコギキョウのように種子径が0.3mmという微小の場合は、乾燥状態でも播種し難いのだから非常に困難な作業になってしまう。 また、これら微小種子を播種しやすいように、ペレット加工を施して大粒化したものがあるが、水を加えると加工が崩れてしまい催芽処理には適さない。 【0004】 このような問題に対して、植物体種子(以下「種子」という。)を水性ゲルカプセル内に封入し、種子が発芽に必要な水分や酸素は水性ゲルカプセル中に含ませ、かつ大形化して扱い良くさせ、該種子が発芽しない条件下で催芽処理した後に播種する通称「ゲル被覆種子」と称されている方法が提案されて来た。 【0005】 これは、アルギン酸やゼラチンなどのハイドロゲル材によるカプセル化で、水に不溶だが水の吸収性があるゲル被覆を生成させるもので、例えばアルギン酸ナトリウムの1%水溶液を塩化カルシウム1%水溶液中へ滴落させると表面張力で液滴となり、この液滴の表面からCaイオンが速やかに反応を始め、表面から内部へと徐々に浸透し、やがて液滴全体がゲル状となる。この反応は、一価のアルカリ金属のアルギン酸塩のみが水に溶け、それ以外の金属のアルギン酸塩は水に不溶であることを利用したものである。つまり、「ゲル被覆種子」はこの反応を応用して種子をカプセル化したものである。 【0006】 ところが、現実には播種後において、ゲル被覆が収縮硬化を起こして、栽培条件によっては発芽できない種子を生じているのが実状である。 特に、種子がゲル被覆体の中心部に位置して封入された場合は、子葉展開がゲル被覆内となるために、その後の発育が停止するか若しくは発育が極端に遅れて播種後の生育に不揃いを生ずる問題もあった。 なお、ゲル被覆を生成させる際に、周知の硝酸カリ・燐酸水素アンモニウム等の植物の生育に必要な栄養物や殺菌剤等を適量添加しているものも多い。 【0007】 この「ゲル被覆種子」に関する先行技術には、多々見受けられるので幾つかを示す。例えば、小さい種子であっても容易かつ確実に播種できるように、種子を水性ゲルカプセル内に封入し、該種子が発芽しない条件下で冷蔵処理した後に播種するようにした発明の名称「植物の発芽・発育不良防止方法」というのがある(例えば、特許文献1参照。)。 【0008】 また、幼植物の徒長やカビの発生防止のために、ゲル被覆にはジベレリンを含ませないで、ジベレリンを種子に吸収させたものとするゲル被覆種子としたカビの発生防止と発芽促進・鳥害防止効果の高い催芽処理等を目的とする発明の名称「催芽処理およびカプセル化された種子とその方法」というものがある(例えば、特許文献2参照。)。 【0009】 更に、水性ゲル被覆層の硬さに関して、水性ゲル被覆層形成時、金属イオンによって水に対して不溶化処理された水性ゲル被覆層を、その不溶化作用を金属イオン封鎖剤にて封鎖させるようにした発明の名称「ゲル被覆種子のゲル層易崩壊処理方法」というものがある(例えば、特許文献3参照。)。 【0010】 また、根の成長に害ある過酸化水素を分解させるために、含有量を0.1〜1.2%が適量とする活性炭や、二酸化珪素のような過酸化水素分解剤を、予めゲル被覆層に含有させて、ゲル被覆種子に富酸素化処理を行う発根促進方法とした発明の名称「ゲル被膜種子、及びその発根促進方法」というものがある(例えば、特許文献4参照。)。 【0011】 更に、長期保存を可能とし、体積を減少して移送コストも減少できるように、ゲル被覆種子としてから催芽させた後に乾燥した発明の名称「ゲルに被膜された催芽種子」というものがある(例えば、特許文献5参照。)。 【特許文献1】特開2002−11号公報(2頁) 【特許文献2】特開平8−9711号公報(0018〜0025) 【特許文献3】特開平9−15号公報(2頁) 【特許文献4】特開平9−135608号公報(0013〜0015、表1) 【特許文献5】特開平11−9016号公報(0015〜0016) 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0012】 上記の各特許文献におけるゲル被覆種子の共通する最大の目的は、小さい種子であっても容易で確実に播種できるように種子を水性ゲルカプセル内に封入したことにある。 また、特許文献2乃至特許文献4は、種子と共に含有するジベレリン・金属イオン封鎖剤・過酸化水素分解剤とかの含有物の効果をも得られるように工夫したものである。 したがって、それなりの効果を生じてはいるが、これらでも種子の発芽促進と、その後の発育不良防止及び発育促進を一層効果あるようにするには不十分である。 【0013】 また、特許文献5は、乾燥させた効果はあるとしても、ゲル被覆種子を室温下で数十時間から数日放置して、ゲル内にて芽及び初根が数mm伸びゲル被覆を破らない程度に催芽状態にしてから30〜95%に乾燥させるもので、芽の出ない種子をこの時点で選別して省くことができて、出芽率を向上させることができるとある。 【0014】 しかしながら、この乾燥処理を行うとゲル被覆表面が、ことさらに硬質化してしまい、たとえ再吸水をさせようとも植物種によっては、発芽した植物体がこの被膜を突き破ることができず、発育の遅れ、停止或は枯死を引き起こしてしまっていた。 同様に、播種後のゲル被覆が、或る期間は水分保持状態でないと収縮硬化して栽培条件によっては発芽できない種子も生ずる。この点、単にゲル被覆のみでは不十分である。 【0015】 従来、このことを解決しようと、播種後にゲル被覆を分解促進させるための薬品散布を行う煩わしさがあったし、また、薬品の過剰散布による失敗を生じていた。 そこで、発明者達は、ゲル被覆の長所を損なうことなく、播種後の植物の発育促進を、より一層効果あるようにゲル被覆の軟化と崩壊を促進しようと試みたのである。 【0016】 そこで、種子の成長に悪影響を与えぬもので、水に不溶であって導水性のある粉状体として、パン粉やノンフライ麺等の加工小麦粉、麩の粉のような多孔性グルテンを採用したところ、ゲル被覆としては比較的軟らかく好ましいのだが、パン・麺類など食用となる材料はカビが発生するので採用できなかった。 【0017】 また、軟らかなゲル被覆となる紙粘土を試したところ、防腐剤が入っていて種子が死んでしまい中止した。更に、微粉状セルロース(Sigma社製、商品名「Avicel」)や、微細セルロース片であるトイレットペーパーを粉状にしたセルロース粉体を用いたところ、逆にゲル被覆として硬めになり好ましいものとは言えなかった。 また、活性炭(和光社製の商品名「活性炭」)を採用したところゲル被覆は硬めとなり好ましいとは言えなかった。それでも、これらの中には種子の種類によっては効果があると言えるものもあった。 【0018】 更に、ゲル状物質に微生物類を介在させた先願は多数あるが、いずれも微生物を長期間安定的にゲル内又はゲル上に固定化することによる排水処理等の公害防止が主なる目的であって、汚濁物質に対して分解能力を有する微生物類を混在させたものであり、ゲルを直接分解する目的、特にゲル被覆種子に関するものは一つも見当たらなかった。すなわち、発明者等はこの点にも着目してゲル被覆の軟化と崩壊の促進を工夫したのである。 【0019】 この発明は、上記した欠点を解決すべくなされたものであり、発明者達は水性ゲル材と共に、様々な種子について、その成長に悪影響を与えぬような水に不溶であって導水性のある各種粉状体を水性ゲル材に混入し、そのゲル被覆の軟化と崩壊性の向上について試験したところ、粉状体として結局は「土」が最良であることを見出したのである。 【課題を解決するための手段】 【0020】 この発明の基本構成は、植物体種子を水性ゲルカプセル内に封入して成るゲル被覆種子において、水性ゲルカプセル内の水性ゲル水溶液に、「水に不溶であって導水性のある粉状体(以下「粉状体」という。)」を混入させたことを特徴とする粉状体入りのゲル被覆種子であるとした。 更には、この粉状体入りゲル被覆種子の粉状体を「土壌」としたものである。 なお、粉状体として前述したセルロース粉体や活性炭であっても、種子の種類によっては、この発明の目的を達成することができる。 【0021】 次に、粉状体として土壌を採用した場合について説明する。土には山域・火山灰・田畑等の「天然土」と、天然土に加熱殺菌処理等を行って土壌を介して病害を受けぬようにした例えば焼成赤玉土・パーライト・バーミキュライト等の「人工土」がある。 また、ピートモス・腐葉土や黒土は、バクテリアの供給源として利用され、赤土や鹿沼土等も、培土としてよく知られる天然土である。これらは培養土として、用途に応じて適宜に混合して用いられることも多い。 【0022】 一般に、土に水を加えてけん濁液状態にするとゲルかゾル状態となる。したがって、前出の水性ゲルに混入することは相性が良く至極容易である。 発明者達は近在の天然土を各所から採取して来て、シャーレの中に入れ、その天然土の上に水性ゲル材を滴下させたところ10日程で軟化したが、人工土ではそのようにはならなかった。つまり、各種の人工土よりも天然土の方が水性ゲル材の軟化が早いことを見出したのである。 【0023】 寒天を始めアルギン酸やジェランガム等は、生物が作り出した天然素材であるから、それらを分解する微生物が自然界にいるのは至極当然なことである。 また、天然土は組成が複雑で、Caイオンの吸着等、様々な影響があるだろうし、その効果であることも考えられる。 【0024】 これら天然土中に存在している微生物などの力を利用すれば、播種後のゲル被覆の軟化と崩壊を促進できるのではないかと考えたのである。 すなわち、上記の人工土よりも天然土の方が水性ゲル材の軟化が早いことを応用して、低温保管中或は乾燥保管中では、バクテリア等の微生物の活動、或は土とゲル材間の化学反応が抑えられているものが、播種条件下に置かれることにより活動が活発化して、ゲル被覆の分解が加速度的に進むに違いないと思料し、更には、従来はゲルの収縮硬化を起こして発芽できない種子が生じていることを防止できるものと期待したのである。 【0025】 組成が比較的均一化していて、しかも植物種子に栄養等を与える微量要素入りの各種培養土が市販されている現在は、それら市販品を利用できる。 そこで、次に市販の培養土を採用したものについて説明する。 水性ゲル水溶液として一般的に用いるアルギン酸ナトリウム水溶液を、凝固剤である2価の金属イオンを含む溶液にはカルシウム塩水溶液を採用し、粉状体を培養土として、その混入率を0.1〜10重量%とした粉状体入りのゲル被覆種子とする。 また、これらの場合の培養土には、後出するゲル材分解微生物又はゲル材分解酵素を強化したものを用いることも有用である。 【0026】 ここで、培養土の混入率が10重量%を超えると、ゲル被覆が軟らかくなり過ぎてゲル液滴の形が偏平、酷くは崩れてしまい、0.1重量%未満だと育苗土を混入した効果を生じない。一般的な種子用として好ましくは1〜5重量%程度だと言えよう。また、ゲル材を分解する微生物及び分解する酵素を混入強化した場合は、その効果との分別が困難となるので、上述のゲル材と培養土の濃度や混入率はその数値に限るものではない。 なお、光発芽性種子の場合は、ゲル被覆部分の光透過性を落とさぬように0.1重量%に近い方が好ましい。このことは、粉状体として培養土を採用した場合であって、他の粉状体の場合の混入率は当然異なる。なお、粉状体が透明なものなら問題ない。 【0027】 ここで透明とは、光を種子に与えたいということである。乱反射して回り込んでも光が種子に届けばよいので、粉状体は透明物でなくとも白い物なら何でもよいと言える。これに対して考えられるものは、親水性が強い素材を多孔性加工した上で細かくしたもの、例えば植物素材から作ったポリ乳酸樹脂がある。 また、コンニャク粉末や寒天粉末なり、絹糸粉末とか、海老や蟹の甲羅が原料のキトサンの粉末などがある。その他、魚の鱗や白い毛の粉なども考えられ、半透明だが種類によっては木材のおが屑もよいだろう。 【0028】 また、上記培養土混入のものは、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度が1重量%以下でもゲル被覆が可能であり、その培養土の混入率が高いほど軟化しやすい。 なお、従来のものよりも凝固し難くなるので、カルシウム塩水溶液への接触時間は長くする必要があり、特に後から催芽処理を行う場合には7分以上を要したい。 【0029】 また、発明者達は、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を0.5%、0.7%、1%、1.5%毎に、培養土の混入率を3%、5%にて実施したところ、アルギン酸ナトリウム濃度が高くなるにつれて強粘度となって来て、ゲル液滴の径が増すと共に変形するなど製造性が悪くなることが分かった。 【0030】 更に、製造コストは掛るが、ゲル被覆を2重構造にしても良い。すなわち、種子の周囲に薄い膜状に最初のゲル被覆を形成し、それとは異なる組成のゲル被覆をその上から被せるものである。内側に光透過性が高くなるよう培養土の混入率を0〜0.5%程度まで下げた被膜を採用し、外側は3重量%程度の混入で崩壊性を促進した構造や、逆に種子周囲を5重量%以上の培養土混入ゲルで覆っておいて、その周囲を薄い低混入率ゲルで補強する構造などである。 【0031】 次に水性ゲル被覆形成材料について付記しておく。一般的に、種子を内包するために形成する受け皿体なり液滴体は、材料として水性ゲル水溶液を上記の如くアルギン酸ナトリウム水溶液とし、これを凝固させる作用の金属イオンを含む溶液としてカルシウム塩水溶液が用いられている。このような水性ゲルを形成する水溶液としては、他にポリアクリル酸ナトリウム、ジェランガム等、幾つかの公知のものがあるし、金属イオンにも2価金属のバリウムやアルミニウム等があるが、植物への悪影響を配慮する必要がある。 また、水性ゲル水溶液として、凝固剤を用いず天然の寒天などと水とによって形成されるものでもよく、要は種子に最適な公知材料を採用すればよいのであって、そのゲル材料の種類によってこの発明が限定されるものではない。 【0032】 次に、ゲル被覆の軟化性について実験の結果を簡単に述べると、アルギン酸ナトリウム水溶液は低濃度ほど被覆が軟らかくなって培養土の混入量を増やせる傾向になることは前述した。アルギン酸ナトリウムが1重量%以下だと、カルシウム塩水溶液であるアスコルビン酸カルシウム1重量%に接触した時点で崩壊してしまうし、また、アスコルビン酸カルシウムへの接触時間が短いほど軟化しやすく、2分以下だと柔らか過ぎて取扱い難く数時間で崩壊してしまった。 その外、ゲル液滴体の中央部まで固める必要はないが3分強で中まで固まった。 【0033】 ところで、粉状体として天然土を採用すると、微生物の作用でゲル被覆の軟化や崩壊が早まると述べた。したがって、同様の効果を得るべく直接、ゲル被覆用材に、ゲル被覆の分解能力を有する微生物若しくは分解する酵素を、又は微生物及び酵素を混入した粉状体入りゲル被覆種子とするもよい。勿論、合成高分子ゲルの内部には微生物の棲息が難しい場合もあるが、天然系ゲルは全く問題ないし、少なくとも微生物のいる粉状体と併用すれば効果は大きいものとなる。更に微生物の生存率と増殖率を向上するために、粉状体に土を採用すれば最も好ましいものと言える。 【0034】 ゲル被覆の成分であるアルギン酸を分解する微生物は、自然界に広く分布しており、一般土壌中にも見いだされる。そのような微生物( Alteromonas macleodii, Flavobacterium maltivolum, Pseudomonas, Xanthomonas,或はこれ以外に土壌より分離した新規の微生物)の培養液からは、アルギン酸を分解する酵素が得られる。代表的な物として、グリコシド結合を切断するアルギン酸リアーゼが何種類も知られており、その内の幾つかは既に商品化されており、食品添加物としても認可されている。 また、ポリ(β―Dマンヌロネート)リアーゼもアルギン酸リアーゼの一種である。 更に、アルギン酸を低分子化したアルギン酸オリゴ糖は植物の発芽生育促進効果があると報じられている 【0035】 そこで、具体的にはこれら菌の培養液から抽出した酵素を、アルギン酸溶液1gに対して0.1〜10Uぐらいを適当として混合するのである。 なお、アルギン酸リアーゼ1Uは、終濃度1%のアルギン酸溶液の上清の235nmの吸光度をアルギン酸分解に伴い1分間に0.01上昇させる酵素量と定義する。 【0036】 勿論、微生物(胞子)として、上記の細菌の培養液を、アルギン酸溶液1に対して1/100000〜1/10(容量対容量)ぐらいを適当として、なかんずく1/1000程度を用いて混合しても同様の効果が得られる。また同様に、他のゲル材、例えばカラギーナン、ペクチン、ジェランガム等に対しても各々分解菌がいるから、その菌が分解酵素を含んでいて、その使い方はほぼ同様であるから記載を省略する。 ところで、上記の微生物類は、増殖により数量が変動するから混入率を幾らにすると定めること自体にあまり意味が無いので、大凡の検討値で構わない。 【0037】 なお、前記の水性ゲル水溶液に粉状体を混入する際は、極普通に撹拌すればそれで十分だが、凝固用の金属イオンを含む溶液を接触させる場合は、そのゲル状以前の液滴の形状とか、液滴の形成手段によっては、その接触手段として従来行われている単に金属イオンを含む溶液の入っている容器内に液滴を落下させる方法が難しい場合がある。 したがって、そのような場合は、ゲル状以前の液滴に、少し濃度を高めた金属イオンを含む溶液を、霧吹き等で吹き付ける方法を採用すればよい。 【0038】 ゲル被覆した後は、一定期間冷蔵処理をする。このとき種子発芽が起らない条件で催芽処理である冷蔵処理を行うことが必要である。 また、冷蔵処理期間中に水分が失われ、乾燥してキセロゲル化しないまでも、ゲル被覆が硬化しないような加湿条件下で冷蔵処理を行うことが必要である。この時の加湿はゲル被覆が乾かない程度とし、過度の加湿はゲル被覆を軟らかくしてしまう虞がある。 また、光発芽性植物に対しては、種子発芽が起らない照度以下で冷蔵処理を行うことが必要であり暗黒下が望ましいことは従来と同じである。 【0039】 また、種子の種類によっては、保管期間の長期化を図るためと体積を減少して移送コストも減少できるように、乾燥して更に小粒軽量化する工程を付加するもよい。 従来の乾燥法で問題となっていた硬質皮膜も、本法を用いれば、乾燥したものを水で戻す時に短時間で軟化・崩壊をさせられるようになる。 すなわち、ゲル被覆種子状態としたものを、催芽処理をした後に乾燥させるか、種子のみを催芽処理をした後に、これを、粉状体を混入した水性ゲル水溶液に包埋してゲル被覆種子状態とした後に乾燥させる場合の2通りがあり、どちらかを実施すればよい。 勿論、乾燥手段は冷風・温風・シリカゲル等の慣用手段でよい。 【0040】 なお、従来のゲル被覆種子の形成手段について述べておくと、先ず適当な装置を用いて水性ゲルを受け皿形にして、その受け皿の中央に種子を落し入れた後、受け皿が供給ゲルと切り離されて自然落下中に表面張力で液滴を形成させているものが一般的である。 この方法は、種子がゲル被覆内の中央部に埋没されるので、子葉展開がゲル被覆内部で起り、水分保持状態で発芽してもゲル被覆が軟化せず、その後の発育の停止や発育が極端に遅れてしまう欠点を生じがちであった。 【0041】 そこで、可能な限り種子は、ゲル被覆の表面近くに封入する方が好ましく、この点を考慮して、発明者達は最近、ゲル材が液滴状態となっている表面に、種子を押接して僅か侵入させて、種子を液滴の表面近くに植え付ける方法とその装置を提案している。 【発明の効果】 【0042】 公知である「ゲル被覆種子」としての特長、すなわち微小な種子でも大粒となって扱いやすくなることは当然この発明においても有するが、その他として、粉状体の混入の無いゲル被覆剤のみで種子を被覆した状態では、ゲル被覆の収縮硬化は種子に接した部分迄起り得る。それに対し、水に不溶の粉状体を混入することにより粉状体も種子を覆っていることから、ゲル被覆の収縮硬化が、混在している粉状体と粉状体とを繋いでいるゲル被覆材が収縮硬化するために、小さい細かな隙間を生じた微空間散在状態での収縮硬化となって、あたかも微小な気泡をも含んだゲル被覆種子となる。 【0043】 したがって、種子への酸素の供給が充足される効果も生ずることになったし、この微空間に再び水分が与えられると、多数の粉状体の微小隙間よりスムーズに種子へ水分供給が可能となったのである。特に、粉状体が培養土の場合の効果が大きい。 更に、粉状体自体が適度な保湿効果を有しているから、播種後直ぐにゲル被覆が収縮硬化するようなことはなく、しかも播種後数日でゲル被覆は軟化するから、種子の発育不良を防止できるようになった。 【0044】 また、種子ごとに水性ゲル水溶液の濃度や粉状体の混入率及び金属イオンを含む溶液の接触時間を選択する必要があるとしても、従来は水性ゲル水溶液の濃度によっては凝固しなかったものが、粉状体を混入することで粘度が増し、混入率が高いほどゲル被覆が軟化しやすいことが判明した上、比重の大きい粉状体を採用することによって重量が増して扱いやすく、しかも、催芽処理と合わせて幅広い種子に適用できるようになった。 【0045】 更に、粉状体として培養土を採用すると、その種子に最も適した養分を含んだ培養土を混入することもでき、発育促進の効果を発揮するようになるし、ゲル被覆を分解して軟化や崩壊をさせる微生物等の生息する土類を採用すれば、より早くゲル被覆が崩れて播種後の植物の発育促進の効果が一層大きくなり好ましいものとなる。 加えて、直接、ゲル被覆用材に、ゲル被覆の分解能力を有する微生物なり酵素を混入したものとすると、より効果は大きいものとなる。特に天然土を含む培養土混入と併用すれば最も好ましいものと言える。 【0046】 更に、粉状体を混入させたものを、前述した工程にて乾燥すれば、種子の長期保存を可能とし、体積を減少して移送コストも減少できるようになる。 なお、この発明を適用するのに最も相応しい種子は、小さい種子で、発芽期間の長いものと言える。それらは、観賞用植物である花卉に多く、例えば蘭・菊・芝・芥子・リンドウ・カンパネラ・トルコギキョウ等であり、野菜は大根・白菜・春菊等がこれに当たる。 【0047】 以上詳記したように、この発明は微小種子でも容易に播種できることは当然ながら、発芽日数を要する種子の発芽促進や、播種後の発育不良防止と発育促進によって、全体の育苗効率もよくなるという副次的効果も得られ、今後、微生物等の研究が進むに連れて、その効果は更に向上するものと考えられ、この発明の奏する期待は益々増大するものと思われるのである。 【発明を実施するための最良の形態】 【0048】 この発明の基本的な最良の形態は、採用する種子の種類によってゲル被覆を形成する諸材料や、粉状体の種類が異なることもあるから、ここでは比較的栽培が面倒な花卉栽培、なかんずく微小な花卉種子のトルコギキョウの例で説明する。先ず、水性ゲル水溶液として1重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液を用い、これに粉状体として培養土の一種である花卉育苗土の3重量%を撹拌混入した水性ゲル水溶液とする。 【0049】 この水性ゲル水溶液を、適当な手段や装置でトルコギキョウの種子1粒を包んで液滴とするか、又は、先に水性ゲル水溶液の液滴を作って、その液滴に種子1粒を導入させる。 いずれの方法でもよいが、その際に種子が液滴の中心部まで行かぬようにしたい。 次に、金属イオンを含む溶液である1重量%のアスコルビン酸カルシウム水溶液に液滴を落下させ、5〜7分間浸漬して凝固させる。 【0050】 凝固した液滴を、アスコルビン酸カルシウム水溶液中から引き上げて攪拌などして水洗し、その余分な水分を除去して、10℃で35日間の冷蔵処理を暗黒下で行い粉状体入りゲル被覆種子を完成させる。 なお、上記において花卉育苗土の混入率を3重量%とした理由は、トルコギキョウの場合は3重量%未満だとゲル被覆の水分保持状態が十分でないのでゲルの収縮硬化を止め難く、超えるとゲル被覆の軟化は早いが形成自体が不十分となりがちだからである。 【0051】 トルコギキョウは光発芽性植物なので、播種後の覆土はしないことから、花卉育苗土の混入により光透過性が悪くなり軟化しても発芽しないと思っていたが、比較した従来のゲル被覆種子が10日目頃から軟化し始めたのに対し、4日目頃から軟化し始めて10日目頃にはピンセットの先で触れると崩壊するまで進んでいたし、心配していた発芽も、最終の子葉展開も順調であった。 なお、これらの結果も含め、前述のシャーレ内の実験でも述べた天然土の方がゲル被膜の崩壊が早まる筈であり、以後の実施例にてそれらの結果を示そう。 【実施例1】 【0052】 実施例1として、1重量%のアルギン酸ナトリウム水溶液に、粉状体として花卉育苗土(大塚産業株式会社製、商品名「プリティーソイルGOLD花」)の3重量%を、普通に行うように攪拌混入したものを水性ゲル水溶液として、約5〜6mm径の球状の液滴を得た。それに種子としてトルコギキョウ種子(タキイ種苗株式会社製、商品名「京の鈴」、種子径:約0.3mm)を1粒ずつ液滴の表面近くに導入した。 これら液滴を、金属イオンを含む溶液である1重量%のアスコルビン酸カルシウム水溶液(株式会社サカタのタネ製、商品名「エスカル」)中にて7分間保持して凝固させ5mm大のゲル被膜種子を200粒形成した。 【0053】 このゲル被膜種子を、ろ紙を敷いたシャーレ内に置き、乾燥しない程度に注水して缶に入れ、10℃で35日間の冷蔵処理を暗黒下で行ったゲル被覆種子を、トレーに播種し、低温恒温恒湿器内条件(温度20℃、湿度50%、蛍光灯照明100Luxの12時間と12時間消灯)で経過させ完成した。 【0054】 また、従来例として、培養土を混入しない他は実施例1と同じ方法にて200粒を形成した。更にまた、ゲル被覆も冷蔵処理もしない裸種子200粒を、同じトレーに播種し、同じ低温恒恒湿器内条件で経過を観察した。なお、灌水は乾燥状態を見て適宜行った。 これら夫々の内容を示したのが表1である。 【0055】 【表1】
その結果は、実施例1を本発明とし、裸種子と従来例を夫々区別して表2以下にて示す。 【0056】 なお、各表の理解のために用語の説明をしておこう。 「発芽」:発芽とは種皮が割れ、僅かでも植物体が出て来た状態をいうが、ここでいう発芽とは、植物体がゲル被覆内に留まっている状態も含まれることに注意する必要がある。 すなわち、本発明では粉状体として不透明な培養土を採用しているからゲル被覆内の発芽が見え難いのである。それ故、実際の発芽率はもっと高いものと思われる。 「子葉展開」:子葉展開とは空中に子葉が展開した状態である。 【0057】 【表2】
表2にて分かるように、冷蔵処理した従来例と本発明は、裸種子に比べて発芽が早く、裸種子の発芽する7日目には70%以上の発芽率となった。また、発芽揃日も早い上、最終発芽率も向上しており冷蔵処理の採用が優れていることが表れている。 【0058】 【表3】
表3に示すように培養土(花卉育苗土)を混入した本発明は、従来例に比べて子葉展開が早く発育促進性が認められ、裸種子が子葉展開日した14日目には100%となり確実に効果が表れた。すなわち、従来例は成長がストップしたのに対し、実質的な成長は本発明の方が優れていることを意味している。 【0059】 また、表3の最終子葉展開率欄において、従来例では計179粒の中で、ゲル被覆内での子葉展開が40粒あるから22%も発生したことになるが、本発明は発芽した全てがゲル被覆外の子葉展開となったことから、花卉育苗土の存在によってゲル被覆が軟化しないことによる発育不良が見事に解消され、培養土を混入するこの発明の製法が優れていることが証明されている。 【実施例2】 【0060】 当然ながら、種子にはゲル被覆種子には適さないものがある。それは、種子径の大きなものと、発芽までに日数を要さず発芽力が弱い種子である。それらのことを含めて、次に種子の種類が異なる夫々に、混入する培養土の種類が異なるものの結果を示そう。種子は花卉のカンパニュラ・メジュームと、野菜のレタス、キャベツである。 【0061】 また、アスコルビン酸カルシウム水溶液への接触時間とその洗浄時間を7分と統一し、発芽促進のための催芽処理(10℃、35日冷蔵処理)は実施しないこととして、それ以外は、いずれも実施例1と同じである。 また、裸種子と従来例も同様に列記した。 なお、アルギン酸ナトリウム1重量%の水溶液に、粉状体としての培養土の混入率は、全て3重量%とした。また、導水性粉状体入りゲル被覆種子としての種子径は、4〜5mmである。 【0062】 次に、表4以降に記載の培養土の商品名別の詳細を示しておく。 A.プリティーソイルGOLD花:大塚産業株式会社製、花卉育苗土 B.プロフィットサマーN−100:笠原工業株式会社製 C.花と野菜の培養土:株式会社カインズホーム製 D.みまき花用育苗培土:大塚産業株式会社製、花卉育苗土 E.坂城町花卉ハウス土:トルコギキョウ直播用栽培土 F.東御市畑土:作物栽培一般土 【0063】 次に、種子の商品名別の詳細を示す。 A.グレートレーク366:日本農産種苗株式会社製、野菜種子レタス B.富士早生甘藍:日本農産種苗株式会社製、野菜種子キャベツ C.つりがね草:株式会社トーホク製、カンパニュラ・メジューム花種子 【0064】 【表4】
【0065】 先ず具体的な実施例2として、野菜のレタスについて表5及び表6に示す。 【表5】
【0066】 表5にて分かるように、本発明の中には、播種後1日で発芽が確認され、早いものでは2日で発芽が揃ってしまった。 発芽率が低い数値だが種子が劣っていたと考えられる。 ゲル被覆の軟化は東御市畑土や坂城町花卉ハウス土といった人工土でない方が早いことが分かる。 【0067】 表6から分かるように、6日目から展葉となり、8日目から10日目で発芽した全てで展葉となった。本発明の培養土入りは、ゲル被覆の軟化は早いが、発芽から展葉日までについて、従来例との差はないと思われる。 発芽まで日数を要さないレタスについては、特に培養土を混入したことによる効果を奏するとは言えないようだ。 【0068】 更に、表5に続いたその後の結果を表6に示す。 【表6】
【実施例3】 【0069】 次に、実施例3として、野菜のキャベツについて表7及び表8に示す。 【表7】
【0070】 表7から、裸種子は2日目で80%の発芽率に対して、ゲル被覆種子は50%にも満たなかった。原因は、ゲル被覆が発芽の前段の表皮割れを阻害するためと思われ、また、発芽してもゲル被覆の軟化前であり、ゲル被覆膜に沿って芽が湾曲して、なかなかゲル被覆から突出できず、その後の茎の伸長が裸種子に比べるとかなり劣った。 【0071】 表8から分かるように、裸種子は5日目の展葉に対し、ゲル被覆種子は全て0%であり発芽の遅れは展葉日も遅らせた。展葉揃日の茎の伸長は、裸種子の半分しかなかった。 このことから、レタスやキャベツのような発芽まで日数を要しない性質の種子には効果は期待できないようである。 勿論、播種しやすくなるという効果はある。 【0072】 更に、表7に続いたその後の結果を表8に示す。 【表8】
【実施例4】 【0073】 次に、実施例4として、花のカンパニュラ・メジュームについて表9及び表10に示す。 【表9】
【0074】 表9から、発芽は7日目には殆どが発芽し、最終発芽率もほぼ100%となった。野菜種子の時と同様に、培養土入りの軟化は、3日目頃より始まるが、やはり天然土の方が早く、従来例のものは10日目頃から軟化した。 なお、本発明の場合は、ゲル被覆が透明でないから、発芽が90%であっても見え切れないので、事実はもっと高い数値であろうと思われる。また、光発芽性植物であっても、最終発芽率がほぼ100%であることから、混入する培養土は選ばないものと思われる。 【0075】 表10から分かるように、13〜17日目で発芽が揃った。発芽揃いに4日の差があるが、光発芽性植物にもかかわらず、ゲル被覆種子も裸種子と同様に揃って発芽していることと、ゲル被覆種子のサヤを持上げた状態で茎が伸長するが、展葉と共にゲル被覆種子のサヤが落下することから、サヤの硬化によって展葉が阻害されたとは考えられない。 また、裸種子よりも展葉揃日が早いゲル被覆種子があることから、播種した種子自体が劣っていたと考えられる。しかし、従来例はゲル被覆の軟化が遅いせいか、サヤが落下するまで日数が掛った。 【0076】 更に、表9に続いたその後の結果を、表10に示す 【表10】
【0077】 以上詳記したように、プリティーソイルGOLD花以外の培養土でもゲル被覆の軟化を示した。特に天然土は数日で効果が表れた。また、光発芽性植物であっても混入する培養土を選ぶことなく発芽すること、ゲル被覆種子のサヤの硬化によって展葉が阻害されないことから考えると、ゲル被覆種子の効果は期待できる。 この発明は、微小種子を播種しやすい効果もあり、催芽処理と合わせて幅広い種子に適用でき、今後、微生物等の研究が進むに連れて、その効果は更に期待できると考えられ、この発明の奏する期待は益々増大するものと思われる産業上大変優れた発明である
|
| 【出願人】 |
【識別番号】504180239 【氏名又は名称】国立大学法人信州大学 【識別番号】000125462 【氏名又は名称】笠原工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成16年12月28日(2004.12.28) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2006−180791(P2006−180791A) |
| 【公開日】 |
平成18年7月13日(2006.7.13) |
| 【出願番号】 |
特願2004−378501(P2004−378501) |
|