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【発明の名称】 苗植付け装置の伝動構造
【発明者】 【氏名】牧原 邦充
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【氏名】安田 真
【住所又は居所】大阪府堺市石津北町64番地 株式会社クボタ堺製造所内

【要約】 【課題】フィードケースに入力された動力を横向きの出力軸を介して植付けケースに伝達し、植付けケースに装備した植付け機構を駆動するよう構成した苗植付け装置の伝動構造において、トルクリミッタを合理的に節減することで、部品点数の増大および苗植付け装置の重量の増大を抑制する。

【解決手段】フィードケース11に左右一対の出力軸13を突合せ状態に横架支承し、各出力軸13への伝達トルクを一対のトルクリミッタ37によって独立して制限するよう構成してある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィードケースに入力された動力を横向きの出力軸を介して植付けケースに伝達し、植付けケースに装備した植付け機構を駆動するよう構成した苗植付け装置の伝動構造において、
前記フィードケースに左右一対の前記出力軸を突合せ状態に横架支承し、各出力軸への伝達トルクを一対のトルクリミッタによって独立して制限するよう構成してあることを特徴とする苗植付け装置の伝動構造。
【請求項2】
前記植付け機構を、定速で回転駆動される回転ケースの両端に、ケース内装の不等速ギヤ伝動機構によって不等速自転される植付け爪を装備した回転式植付け機構で構成し、前記回転ケースを回転自在に支持するとともに、不等速ギヤ伝動機構における中心ギヤを植付けケース側に固定するボス部材をインサート成型によって植付けケースに埋設固定してある請求項1記載の苗植付け装置の伝動構造。
【請求項3】
前記回転ケースと前記ボス部材との間にシール部材を介装するとともに、このシール部材装着部を小間隔をもって囲繞する筒状リブを植付けケースに設けてある請求項2記載の苗植付け装置の伝動構造。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機に装備された苗植付け装置の伝動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
苗植付け装置の伝動構造としては、フィードケースに入力された動力を横向きの出力軸を介して植付けケースに伝達し、植付けケースに装備した植付け機構を駆動するよう構成したものが多用されている。そして、このような伝動構造においては、植付け機構に過負荷が作用した場合に伝動系が損傷するのを防止するために、トルクリミッタが導入されており、植付け条数が比較的少ない仕様(例えば4条植え)の苗植え付け装置では、走行機体側にトルクリミッタが1個装備され、また、植付け条数の多い仕様の苗植え付け装置では、例えば特許文献1に示されるように、植付けケースごとにトルクリミッタ装備されている。
【特許文献1】特開2000−270622号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記植付けケースは基本的に2条分の植付け機構を備えており、6条植え仕様では3個、8条植え仕様では4個、10条植え仕様では5個の植付けケースが装備されており、植付けケースの数だけトルクリミッタが組込まれることになって、部品点数の増大および苗植付け装置の重量の増大を招いている。
【0004】
本発明は、このような点に着目してなされたものであって、トルクリミッタを合理的に節減することで、部品点数の増大および苗植付け装置の重量の増大を抑制しようとしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、フィードケースに入力された動力を横向きの出力軸を介して植付けケースに伝達し、植付けケースに装備した植付け機構を駆動するよう構成した苗植付け装置の伝動構造において、
前記フィードケースに左右一対の前記出力軸を突合せ状態に横架支承し、各出力軸への伝達トルクを一対のトルクリミッタによって独立して制限するよう構成してあることを特徴とする。
【0006】
上記構成によると、植付けケースの数に関係なくトルクリミッタは一対備えられることになり、各トルクリミッタが負担する条数はフィードケースと植付けケースの位置関係によって任意に設定することができる。
【0007】
従って、第1の発明によると、植付け負荷を一対のトルクリミッタに分散負担させることができるものでありながら、各植付けケースにトルクリミッタを装備するものに比べて部品点数の増大および苗植付け装置の重量の増大を抑制することができ、苗植付け装置の軽量化やコスト低減に有効となる。
【0008】
第2の発明は、上記第1の発明において、
前記植付け機構を、定速で回転駆動される回転ケースの両端に、ケース内装の不等速ギヤ伝動機構によって不等速自転される植付け爪を装備した回転式植付け機構で構成し、前記回転ケースを回転自在に支持するとともに、不等速ギヤ伝動機構における中心ギヤを植付けケース側に固定するボス部材をインサート成型によって植付けケースに埋設固定してあるものである。
【0009】
上記構成によると、ボス部材を植付けケースにボルト連結する場合に比べて部品点数およびボス部材の組付け手数を節減することができ、第1の発明の上記効果を助長する。
【0010】
第3の発明は、上記第2の発明において、
前記回転ケースと前記ボス部材との間にシール部材を介装するとともに、このシール部材装着部を小間隔をもって囲繞する筒状リブを植付けケースに設けてあるものである。
【0011】
上記構成によると、回転ケースの回転によって圃場の雑草やワラ屑が回転中心部に巻きつくことが筒状リブによって阻止されることになり、シール部材の損傷を防止して回転ケースを常に好適に作動させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1に、乗用田植機の後部に装備される8条植え仕様の苗植付け装置1の側面が示されている。この苗植付け装置1は、図外左方の走行機体に駆動昇降可能に備えられた昇降リンク機構2の後端下部にローリング自在に連結されており、8条分のマット苗を載置して一定ストロークで往復横移動される苗のせ台3、この苗のせ台3の下端から1株分づつ苗を切り出して田面Tに植え付けてゆく8組の回転式の植付け機構4、田面Tの植付け箇所を均平化するよう並列配備された3つの整地フロート5、等が備えられている。
【0013】
苗植付け装置1の前部には角筒状の横フレーム10が装備され、この横フレーム10が前記昇降リンク機構2の後端下部にローリング自在に連結されている。そして、図2に示すように、横フレーム10の左右中間部にフィードケース11が連結されるとともに、横フレーム10における中央側の左右2箇所と左右両端に4つの植付けケース12が後向き片持ち状に連結され、各植付けケース12における後部の左右に前記植付け機構4が2組づつ装備されている。
【0014】
前記フィードケース11には走行機体から取り出された作業用動力が伝動軸7介して伝達され、このフィードケース11に伝達された動力で苗のせ台3が横送り駆動されるとともに、そのストロークエンドごとに苗のせ台3に備えた苗送りベルト6が一定ピッチづつ送り駆動され、また、フィードケース11の後部左右の横架した出力軸13から取り出された動力が、各植付けケース12の前部に軸伝達されて前記植付け機構4が2条単位で駆動されるようになっている。
【0015】
図3に、フィードケース11の内部構造が示されている。このフィードケース11には、機体側からの動力を受ける入力軸14が前方に向けて突設されるとともに、入力軸14にベベルギヤG1,G2を介して連動された横向きの中間軸15、苗のせ台横送り用の横送り駆動軸16、中間軸15と同心に配備された苗送りベルト駆動用の苗送り駆動軸17、および、植付け機構駆動用の前記出力軸13が装備されており、中間軸15と横送り駆動軸16とがギヤ変速機構18を介して連動連結されるとともに、横送り駆動軸15と苗送り駆動軸17とがギヤG3,G4を介して連動され、更に、中間軸15と出力軸13とがチェーン19を介して連動されている。
【0016】
横送り駆動軸16の外端部には外周に往復螺旋溝21を備えネジ軸20が連結され、往復螺旋溝21に係合されたスライダ23が横スライド可能にネジ軸20に外嵌装着され、このスライダ23に苗のせ台3が連結部材24を介して連結されている。従って、横送り駆動軸16が一定方向に回転することでスライダ23がネジ軸20に沿って一定ストロークで往復ネジ送り移動され、これに連れて苗のせ台3が往復横移動されるのである。
【0017】
前記ギヤ変速機構18は苗のせ台横移動速度を切換え変更するためのものであり、中間軸15に3つの駆動側ギヤG5,G6,G7が遊嵌されるとともに、これら駆動側ギヤG5,G6,G7に咬合する3つの従動側ギヤG8,G9,G10が横送り駆動軸16に固着され、また、中間軸15に形成されたキー溝25に軸心方向にシフト可能かつ半径方向に揺動変位可能な伝動キー26と、この伝動キー26を半径方向外方に押し出し付勢するバネ27が組込まれており、伝動キー26をシフトさせて、駆動側ギヤG5,G6,G7のいずれか一つに内周より選択係合させることで、選択された一つの駆動側ギヤG5,G6,G7とこれに咬合する従動側ギヤG8,G9,G10とのギヤ比で横送り駆動軸16が変速駆動されるようになっている。このように、中間軸15の回転速度に対して横送り駆動軸16の回転速度を3段に変速することで、苗のせ台3の横移動ストロークに対する植付け機構4の作動回数、換言すると、1横移動ストローク当たりの苗取り回数が変更されて、切り出される1株の横幅が3段階に選択できるようになっているのである。
【0018】
なお、伝動キー26の後端部は、フィードケース11に挿通された変速操作軸28のケース内端部に備えたシフト部材29に係合支持されており、変速操作軸28を左右に押し引き操作することで伝動キー26をシフト操作するよう構成されている。また、伝動キー26の内向き辺にはデテント用の凹部30が形成されており、前記バネ27の端部に備えた係合片31がいずれかの凹部30に付勢係合されることで、伝動キー26が3つの変速位置にそれぞれ安定保持されるようになっている。
【0019】
苗送り駆動軸17の外端には、左右一対の駆動アーム33を備えた苗送り軸32が連結されており、苗のせ台3が横移動ストロークエンドに到達するたびに、苗のせ台3の背部に備えられた図示されない駆動機構の受動レバーが、一定方向に連続回転している駆動アーム33の回動軌跡内に侵入して接当揺動され、これによって苗送りベルト6が所定量づつ回動されるようになっている。
【0020】
フィードケース11の後部左右から突設された出力軸13は、内端部が同心に突合わされた独立した回転軸で構成されており、その突合せ部に遊嵌した従動スプロケット35と前記中間軸15に固着された駆動スプロケット36とに亘って前記チェーン19が巻回張設されている。そして、この従動スプロケット35に伝達された動力が左右の出力軸13にそれぞれトルクリミッタ37を介して伝達されるようになっている。
【0021】
前記トルクリミッタ37には爪咬合式のジャンプクラッチ構造が採用されており、従動スプロケット35の左右に連設された駆動爪38と、出力軸13にスライド自在にスプライン装着した従動側伝動ボス39の従動爪40とが軸心方向から咬合離脱されることで、従動スプロケット35から出力軸13への動力伝達が断続されるようになっている。また、従動側伝動ボス39はバネ41によって係合側に向けてスライド付勢され、通常は駆動爪38と従動爪40とが咬合する動力伝達状態に維持されているが、出力軸13の負荷トルクが設定以上になると、駆動爪38と従動爪40との咬合斜面におけるカム作用によって従動側伝動ボス39がバネ41に抗して後退スライドされて動力伝達が遮断されるようになっている。
【0022】
図4に示すように、植付けケース12の基部には入力軸42が横架支承されており、各植付けケース12の入力軸42と前記出力軸13とが伝動軸43を介して順次連動連結されており、左右の各トルクリミッタ37はそれぞれ2つの植付けケース12に働く負荷トルクを制限するようになっている。
【0023】
各植付けケース12の後部には、左右の植付け機構4を駆動する植付け駆動軸44が貫通横架され、この植付け駆動軸44に遊嵌したスプロケッ45と前記入力軸42に固着したスプロケット46とに亘ってチェーン47が巻回張設されるとともに、従動側のスプロケット45と植付け駆動軸44との間には畦際クラッチ48が介在されている。
【0024】
畦際クラッチ48は、各植付けケース12の植付け駆動軸44を各別に停止して植付け機構4を2条単位で休止させて6条植え、4条植え、および、2条植え、等の少数条植えを行うためのものであり、植付け駆動軸44にスライド可能にスプライン装着されたクラッチ部材49を、スプロケット45におけるボス部45aの端部に軸心方向から係合離脱させることで、ボス部45aから植付け駆動軸44への動力伝達を断続する爪クラッチとして構成されており、クラッチ部材49はバネ50によって咬合方向にスライド付勢されて「クラッチ入り」状態に保持されている。
【0025】
前記クラッチ部材49の側面には乗上がりカム51が備えられており、植付けケース12に貫通装着した操作ピン52をクラッチ入り位置で回転している乗上がりカム51の回動軌跡内に突入させると、位置固定の操作ピン52と乗上がりカム51との相対回転によるカム作用によってクラッチ部材49がバネ50に抗してクラッチ切り方向に強制シフトされ、植付け駆動軸44が所定の回転位相において停止されるようになっている。
【0026】
図5に示すように、前記植付け機構4には、前記植付け駆動軸44の端部にキー連結された回転ケース55と、この回転ケース55における両端部の横側面に横軸心回りに自転可能に軸支された爪ケース56と、各爪ケース56に取り付けられた植付け爪57および苗押し出し具58とが備えられており、回転ケース55が植付け駆動軸44によって前進回転方向(図1において反時計方向)に定速で1回転されるのに連動して爪ケース56が逆方向に不等速で1回転自転することで、植付け爪57の先端が、苗のせ台3の下端取り出し口と田面Tとに亘る縦長の回動軌跡Sを描いて循環移動するとともに、植付け爪57が苗のせ台下端から切り出した苗を田面Tに持ち込む時点で苗押し出し具58が爪先側に突出作動して切り出し苗を植付け爪57から分離して地中に押込むように構成されており、その詳細な構成および作動を以下に説明する。
【0027】
回転ケース55の両端部には爪ケース56をフランジ連結した爪支軸60が回転自在に支承され、回転ケース55の内部には回転ケース55の公転に連動して爪支軸60を公転方向と逆向きに不等速自転させる不等速ギヤ伝動機構61が組み込まれている。この不等速ギヤ伝動機構61は、回転ケース55の中心に配備された中心ギヤG11、中間支軸62に遊嵌された中間ギヤG12、および、各爪支軸60に固着された最終ギヤG13を順次咬合連動させて構成されており、中心ギG11は植付け駆動軸44に遊嵌支持されるとともに、植付け駆動44の軸支部に固定配備されたボス部材63の端部に係合されて中心ギG11の回転が阻止されている。
【0028】
ここで、回転ケース55に組み込まれた各ギヤG11〜G13はすべて同歯数の非円形ギヤで構成されており、回転ケース55が前進回転方向に定速で回転されると、不等速ギヤ伝動機構61によって爪支軸60が回転ケース55の回転方向と逆方向に所定の不等速特性で自転駆動される。このように、回転ケース55が前進回転方向に定速で1回転されると、これに同調して爪ケース46が逆方向に不等速で1回自転され、回転ケース45の両端に備えられた一対の植付け爪57がそれぞれ縦長の回動軌跡Sをもって循環回動して2回の植付けが行われることになるのである。
【0029】
ここで、不等速ギヤ伝動機構61における中心ギヤG11の回転を阻止するボス部材63は、インサート成型によって植付けケース12に埋設固定されている。また、回転ケース55の回転中心部には前記ボス部材63の外周に摺接するシール部材64が内嵌装着されて、回転ケース55の内部への泥水の浸入が阻止されるとともに、植付けケース12の外側面には、シール部材64が嵌入装着されたシール部を小間隔をもって囲繞する筒状リブ65が突設されており、圃場に混在するわら屑や雑草がシール部に巻き付いてシール部材64を損傷することが防止されている。
【0030】
〔他の実施例〕
【0031】
(1)上記実施例ではフィードケ−ス11の左右にそれぞれ2個づつ植付けケース12が配備された8条上仕様であるために、左右のトルクリミッタ37の各々が4条分づつの植付け負荷を分担しているが、フィードケ−ス11の位置によっては、(2条:6条)、あるいは、(3条:5条)の分配で負荷を分担するようにすることもでき、植付け乗数とフィードケ−ス11の位置によって各種の負荷分担の組合わせを設定することができる。
【0032】
例えば、10条植え仕様の場合には左右のトルクリミッタ37の分担条数を(5条:5条),(6条:4条),(7条:3条)のいずれかとし、9条植え仕様の場合には左右のトルクリミッタ37の分担条数を(5条:4条),(6条:3条),(7条:2条)のいずれかとし、7条植え仕様の場合には左右のトルクリミッタ37の分担条数を(5条:2条),(4条:3条)のいずれかとし、6条植え仕様の場合には左右のトルクリミッタ37の分担条数を(4条:2条),(3条:3条)のいずれかとし、また、5条植え仕様の場合には左右のトルクリミッタ37の分担条数を(3条:2条)とすることができる。
【0033】
(2)植付け機構4としてクランク式のものを利用することもできる。
【0034】
(3)左右の出力軸13の伝達トルクを制限するトルクリミッタ37として、駆動側クラッチ部材と従動側クラッチ部材との間に伝動ボールを介在したボール式のジャンプクラッチ構造を利用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】苗植付け装置の側面図
【図2】苗植付け装置の伝動構造を示す平面図
【図3】フィードケースの縦断背面図
【図4】植付けケースの横断平面図
【図5】植付け機構の横断平面図
【符号の説明】
【0036】
4 植付け機構
11 フィードケース
12 植付けケース
13 出力軸
37 トルクリミッタ
55 回転ケース
57 植付け爪
61 不等速ギヤ伝動機構
63 ボス部材
64 シール部材
65 筒状リブ
【出願人】 【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
【住所又は居所】大阪府大阪市浪速区敷津東一丁目2番47号
【出願日】 平成16年11月15日(2004.11.15)
【代理人】 【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎

【公開番号】 特開2006−136288(P2006−136288A)
【公開日】 平成18年6月1日(2006.6.1)
【出願番号】 特願2004−330868(P2004−330868)