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【発明の名称】 乗用トラクタの走行速度制御装置
【発明者】 【氏名】石橋 文雄
【住所又は居所】大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマー農機株式会社内

【氏名】久保田 幸雄
【住所又は居所】大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマー農機株式会社内

【氏名】黒田 晃史
【住所又は居所】大阪府大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマー株式会社内

【要約】 【課題】乗用トラクタや田植機等といった農作業機の車体後部に作業機を連結して農作業を行う場合、圃場端部で旋回する際に該作業機の引き摺りを防止するために、該作業機を所定高さの非作業位置まで上昇させている。例えば乗用トラクタで耕耘作業を行うときに、乗用トラクタが旋回する部分は枕地と称されて未耕耘部分が残り、最終段階で乗用トラクタが枕地を往復して未耕耘部分をなくしている。解決しようとする課題は農作業機において、シンプルな制御装置で枕地耕耘処理の簡略化を可能にすることである。

【解決手段】エンジン5と伝動装置として無段変速装置22と前後進切換装置と作業機の昇降装置とを備えた乗用トラクタ20において、該作業機の昇降装置が最上昇したこと又は該前後進の切換装置が前進から後進に切り替わったことにより、予め設定できる所定速度に減速する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、無段変速装置と、前後進の切換装置と、作業機の昇降装置とを備えたトラクタにおいて、
枕地走行速度設定器と、前記前後進切換装置の切換位置を検知する手段と、作業機の位置を検出する手段と、前記無段変速装置の変速位置変更手段を制御手段と接続し、作業時に、作業機の昇降装置が上昇し又は該前後進の切換装置が前進から後進に切り替わり枕地走行開始を検知すると、無段変速装置を設定した変速位置に変更するトラクタの走行速度制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の乗用トラクタにおいて、
前記制御手段に原動機回転を制御する原動機コントローラと接続し、枕地走行開始を検知すると、原動機回転数を前記予め設定した回転数に変更するトラクタの走行速度制御装置。
【請求項3】
請求項2記載の乗用トラクタにおいて、
前記原動機回転数を減少させる場合には、昇降装置が最上昇位置を検知してから原動機の回転数を減少することを特徴とする走行速度制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、乗用トラクタの走行速度制御装置、詳しくは枕地における走行速度制御装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用トラクタや田植機等といった農作業機の車体後部に作業機を連結して農作業を行う場合、圃場端部で旋回する際に該作業機の引き摺りを防止するために、該作業機を所定高さの非作業位置まで上昇させている。例えば乗用トラクタで耕耘作業を行うときに、乗用トラクタが圃場端に至ると、旋回するために作業機を上昇させて作業せずに方向転換する。この部分は枕地と称されて未耕耘部分として残り、最終段階で乗用トラクタが枕地を往復して未耕耘部分をなくしている。
【0003】
ここで、車体前方の畦を感知する畦感知手段を備えた前記農作業機が特許文献1で公知となっている。該農作業機は、畦を畦感知手段である赤外線にて感知すると、作業機を上昇させ、所定距離又は所定時間だけ後進することを特徴としている。このように畦の際まで作業することは、枕地を最小にすることを可能としている。
しかし、赤外線を用いた該畦感知手段はコストや製作工数が嵩み生産性がよくないことは周知である。また、後進することで作業時間が長くなる。
【0004】
さらに、操行ハンドルの切り角検出結果によって走行速度を減速させる切換手段を備えた耕耘装置が、特許文献2で公知となっている。該耕耘装置は、圃場枕地に乗用トラクタが到達したときに操行ハンドルによって旋回操作を行うことにより、操行ハンドルの旋回操作をセンサが検出し、切換手段によって乗用トラクタ走行速度を自動的に減速させる。つまり、往復走行による耕耘作業を行う圃場枕地での方向転換時、ハンドルの切角が設定回転以上となると、作業機を上昇させて走行速度を減少させるようにして、方向転換毎に略同一タイミングで乗用トラクタ走行速度が減速され、高速耕耘作業での方向転換操作の簡略化並びに枕地耕耘処理の簡略化などを容易に行い得る。
しかし、高速耕耘作業の場合には有効であっても、作業速度は作業の種類やオペレータの能力や好み等によって異なるものであり、高速耕耘の作業時でも比較的速い速度で旋回したい場合もあり、その他の高速作業時にも減速したい場合があり、逆に、低速作業時に枕地で速く旋回したい場合もある。
【特許文献1】特開2002−51607号公報
【特許文献2】特開2003−225004号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述の背景技術を踏まえ、解決しようとする課題は農作業機において、作業の種類が異なっても、枕地で求められる旋回速度はオペレータの個々で略決まっており、低速での作業であっても、高速での作業であっても、枕地では略一定の速度で旋回することが通常であるため、この枕地速度及び枕地エンジン回転数を設定できるようにして、枕地で旋回する度に走行速度の変速や回転数変更をすることなく、設定した速度で旋回できるようにして、効率良く作業ができるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
即ち、請求項1においては、原動機と、伝動装置として無段変速機と、前後進の切換装置と、作業機の昇降装置とを備えた乗用トラクタにおいて、該作業機の昇降装置が最上昇したこと又は該前後進の切換装置が前進から後進に切り替わったことにより、予め設定できる所定速度に変速するような走行速度制御装置を備えた乗用トラクタである。
【0008】
請求項2においては、請求項1記載の乗用トラクタにおいて、前記原動機回転数を前記予め設定できる所定速度に出力可能な最低原動機回転数とした走行速度制御装置を備えた乗用トラクタである。
【0009】
請求項3においては、請求項2記載の乗用トラクタにおいて、前記昇降装置が上昇を終えてから、前記最低原動機回転数への減速を実施することを特徴とした走行速度制御装置を備えた乗用トラクタである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0011】
請求項1においては、乗用トラクタが枕地を走行する際に、オペレータが変速操作をせずに予め設定した枕地速度に自動走行を行うことができる。つまり、旋回操作に加えて変速操作をする必要がなくオペレータの運転負荷を低減し、高能率作業を実現することができる。
【0012】
請求項2においては、請求項1の効果に加えて、旋回操作時にアクセル操作をする必要かなく操作性を向上し、原動機騒音の低減並びに燃費を減少できる。
【0013】
請求項3においては、作業機の上昇時に原動機回転数が減少して上昇速度が遅くなる、又は条合わせのために昇降を繰り返す度に枕地旋回モードになって原動機回転数が下がることを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施形態に係る乗用トラクタを示した側面図、図2は同じく制御ブロック回路を示した図、図3は本発明の実施例に係る制御フローチャートを示した図である。
【0015】
本発明の実施形態に係る乗用トラクタ20の全体構成について、図1を用いて説明する。
ここで、乗用トラクタ20は、機体の前部に支承される前輪1と、機体の後部に支承される後輪2とを有している。さらに、前部のボンネット6内部には原動機となるエンジン5を配置し、該ボンネット6の後方にはステアリングハンドル10を設けており、該ステアリングハンドル10の後方にはシート11を配設している。また、シート11の側部には主変速レバー3、副変速レバー4などが突設され、ステアリングハンドル10のハンドルコラム側部に前後進切換レバー7が配置されている。これらステアリングハンドル10やシート11やレバー類等は、キャビン12内の運転部に配置されている。
【0016】
また、エンジン5の後部に伝動ハウジングが配置され、該伝動ハウジング後部に無段変速装置22を収納したミッションケース9を配設し、エンジン5からの動力を変速した後に後輪2に伝達して駆動し、4輪駆動切換機構を介して前輪1にも同時に駆動力を伝達することを可能としている。さらに、エンジン5の駆動力はミッションケース9後端から突出したPTО軸15に伝達されて、該PTО軸15から図示しないユニバーサルジョイント等を介して機体後端に作業機装着装置を介して装着した作業機を駆動するように構成している。そして、前記シート11前下方のステップ上にはブレーキペダルや主クラッチペダルやデフロックペダル等が配設されている。
【0017】
さらに、本発明の実施形態に係る制御装置について、図2を用いて説明する。
前記図示しない前後進切換レバー7には前後進切換検出手段26として、例えば前後進切換レバー位置センサが備えられ制御手段となるコントローラ21に接続されている。また、装着する作業機の非作業状態を検出する作業機位置検出手段25は、例えば昇降装置としての油圧リフトの位置を検出する位置センサ等を用いて、同じくコントローラ21に接続されている。さらに、本発明の実施例である枕地にて走行速度設定を実施するか否かを設定するスイッチやダイヤル等で構成した枕地モード設定器23と、該枕地走行速度を任意に設定できる枕地走行速度設定器24が、同じくコントローラ21に接続されている。また、コントローラ21に走行速度を検知するための車速検知手段28が接続され、該車速検知手段28は回転数センサ等を用いて後輪の車軸の回転数等を検知して車速を検出できるようにしている。
なお、前記エンジンコントローラ27には図示しない回転数センサが接続されて前記エンジン5回転数を検知可能であるとし、該コントローラ21にはエンジンコントローラ27と接続して、該エンジンコントローラ27はラック位置等を変更してエンジン回転を制御可能としている。さらに、前記コントローラ21には、無段変速装置22の変速位置変更手段と接続し、前記枕地走行速度設定器24より設定された走行速度に適した無段変速を可能としている。該変速手段は主変速レバーを回動操作しても、変速装置に設けられる変速アーム等を回動しても良く限定するものではない。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1を、図3を用いて説明する。
前記乗用トラクタ20は、通常の耕耘作業をしているとする。ここで、運転状態が前記枕地モード設定器23にて枕地設定モードに入っているか否か判断する(S1)。ステップS1にて、枕地設定モードに入っていない、つまり、枕地モード設定器23がOFFであれば通常のオペレータが変速操作及びアクセルレバーでエンジン回転数操作を行い、枕地設定モードであれば、前記枕地走行速度設定器24より設定された走行速度をコントローラが取得する(S2)。次に、前記前後進切換検出手段26にて乗用トラクタが後進する又は前記作業機位置検出手段25にて作業機が非作業状態、つまり車体から最も上昇した位置であるか否かを判断する(S3)。前述の判断は、言い換えれば、枕地走行開始であるか否かの判断である。ここで枕地走行開始でなければ、通常耕耘作業であるので作業を続行する。
【0019】
前記ステップS3にて枕地走行開始であると判断された場合、現在のエンジン5の回転速度と、前記枕地走行速度設定器24より設定された走行速度に適したエンジン5の回転速度Xを比較する(S4)。現在のエンジン5の回転速度が、X以上であれば回転数を下げ、Xに固定し、設定車速に変速する(S5)。逆に現在のエンジン5の回転速度がX以下であれば、回転数をそのままとし、走行速度を無段変速装置22にて前記枕地走行速度設定器24の速度とする。なお、エンジン5の回転数を減少させる場合には、作業機が最上昇位置を検知した後に減少するようにしている。これは、作業機が上昇途中で枕地走行開始と判断すると、エンジン回転数が減少して走行及び作業機の上昇を行うので、負荷が大きくなりエンストのおそれがあり、また、旋回後に条(位置)合わせを行うときに昇降を繰り返すときに枕地走行開始と判断してエンジン回転数が減少することを防止している。
こうして設定された速度で枕地旋回を行う。旋回が終了して作業機が下降されると、枕地旋回は終了したと判断して、エンジン回転数及び変速位置を元の位置に戻し、作業が再開される。以上が、本発明の一実施例を示す制御である。
また更に枕地旋回速度はハンドルの旋回角度に応じて走行速度を更に詳細に設定することも可能である。即ち、旋回初期は比較的速く走行し、旋回終期では条合わせを行う必要があるため、速度を落として容易に補正できるようにすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る乗用トラクタを示した側面図。
【図2】同じく制御ブロック回路を示した図。
【図3】本発明の実施例に係る制御フローチャートを示した図。
【符号の説明】
【0021】
20 乗用トラクタ
21 コントローラ
23 枕地モード設定器
24 枕地走行速度設定器
【出願人】 【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区茶屋町1番32号
【出願日】 平成17年5月19日(2005.5.19)
【代理人】 【識別番号】100080621
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 寿一郎

【公開番号】 特開2006−320252(P2006−320252A)
【公開日】 平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願番号】 特願2005−146558(P2005−146558)