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【発明の名称】 作業車両の姿勢制御装置
【発明者】 【氏名】山口 雄司
【住所又は居所】大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマー株式会社内

【氏名】三輪 敏之
【住所又は居所】大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマー株式会社内

【氏名】丹生 秀和
【住所又は居所】大阪市北区茶屋町1番32号 ヤンマー株式会社内

【要約】 【課題】農作業機を用いた農作業が簡単な運転操作で実行できるものでありながら、作業車両の転倒を防止する制御を容易にできる作業車両の姿勢制御装置を提供する。

【解決手段】リンク機構を介して昇降可能に装着した農作業機に、車両の傾斜角を検出する傾斜センサ120,131と、走行速度を検出する車速センサ127とによる検出結果に基づき作業車両の姿勢制御装置において、総合転倒角を、前記農作業機を前記作業車両に連結した場合の前記作業車両の転倒角とするとき、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに、オペレータに警報するための警報手段134と、前記傾斜センサの検出値が前記総合転倒角より一定角度小さく且つ前記警報値より大きくなったときに、前記作業車両のエンジンの回転数を強制的に低下させるエンジン回転制御手段114とを備えた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前車輪及び後車輪にて走行自在に支持された作業車両に、農作業機をリンク機構を介して昇降可能に装着し、
前記農作業機を昇降動する昇降制御アクチュエータと、前記作業車両の水平に対する左右または前後方向の傾斜角を検出する傾斜センサと、前記作業車両の走行速度を検出する車速センサと、前記傾斜センサの検出結果に基づき前記昇降制御アクチュエータを作動する姿勢制御手段とを備えてなる作業車両の姿勢制御装置において、
総合転倒角を、前記農作業機を前記作業車両に連結した場合の前記作業車両の転倒角とするとき、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに、オペレータに警報するための警報手段と、
前記傾斜センサの検出値が前記総合転倒角より一定角度小さく且つ前記警報値より大きくなったときに、前記作業車両のエンジンの回転数を強制的に低下させるエンジン回転制御手段とを備えたことを特徴とする作業車両の姿勢制御装置。
【請求項2】
前記総合転倒角と、前記農作業機を前記作業車両に連結していない場合の前記作業車両の単独転倒角とをそれぞれ演算して、
前記農作業機を前記作業車両に連結したときには、前記傾斜センサの検出値が、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに警報し、 前記農作業機を前記作業車両に連結していないときには、前記傾斜センサの検出値が、前記単独転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに警報するように制御することを特徴とする請求項1に記載の作業車両の姿勢制御装置。
【請求項3】
前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、
前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータをオペレータが前記姿勢制御手段に入力する設定手段を設けて、
前記農作業機を装着したときには、オペレータにて設定された当該農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両の姿勢制御装置。
【請求項4】
前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、
前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記姿勢制御手段に送る通信手段を設けて、
前記農作業機を装着したときには、前記通信手段から送られた当該農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両の姿勢制御装置。
【請求項5】
前記農作業機の重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、
前記農作業機の重量または重心位置を計測する計測手段を設けて、
前記農作業機を装着したときには、前記計測手段から読み込んだ当該農作業機の重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したことを特徴とする請求項1または2に記載の作業車両の姿勢制御装置。
【請求項6】
前記作業車両の傾斜角が総合転倒角に近づいたときには、前記昇降制御アクチュエータが作動して前記農作業機を下降作動させ、その農作業機の下降速度を、地面に接近させるに従い減速させるように制御することを特徴とする請求項1ないし5に記載の作業車両の姿勢制御装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリ耕耘機等の農作業機を牽引するトラクタ等の作業車両の姿勢を制御するための装置に係り、より詳しくは、作業車両の左右方向または前後方向の傾斜角度を検出して、作業車両の転倒を未然に防止する姿勢制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の作業車両は、ロータリ耕耘機の耕耘深さを調節するため、前記ロータリ耕耘機が前記作業車両に昇降動可能に連結される。また、前記ロータリ耕耘機は、左右傾斜を調節するため、前記作業車両に左右傾斜動可能に連結される。前記ロータリ耕耘機における耕耘爪の回転軌跡の上側を耕耘カバーにて覆う。耕耘カバーの後端部にはリヤカバーを連結している。そして、特許文献1に示されているように、前記ロータリ耕耘機の耕耘深さを検出して、この検出値が目標耕耘深さと一致するように、前記ロータリ耕耘機の耕耘深さを自動制御する一方、前記ロータリ耕耘機の水平に対する左右方向の傾斜角度を検出して、この検出値が目標傾斜角度と一致するように、前記ロータリ耕耘機の傾斜角度を自動制御し、耕耘作業を実行していた。前記リヤカバーを上下回動可能に接地して、前記ロータリ耕耘機の耕耘深さの検出手段として利用することも公知である。
【0003】
また、特許文献2では、田植機などの作業車両に、当該作業車両の水平に対する前後方向及び左右方向の傾斜程度を感知する全方位傾斜センサを搭載し、その作業車両が実際に転倒する傾斜角度になる前に、ブザーを作動させてオペレータに警報していた。
【0004】
また、特許文献3では、移動農機としてのコンバインにおいて、機体の転倒を防止するため、機体の一定以上の傾きが一定時間以上検出されたときに、エンジンが停止する自動制御を実行していた。
【特許文献1】特開平8−205609号公報
【特許文献2】特開平10−164927号公報
【特許文献3】特開平10−151963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ロータリ耕耘機等の農作業機を牽引するトラクタ等の作業車両では、圃場を往復走行して耕耘する場合、前記作業車両が圃場の枕地に到達して方向転換するときに、前記農作業機を地上に持上げて農作業機が畦または土手などに当接するのを回避する必要があるが、前記農作業機を上昇させたときに前記作業車両の重心位置が高くなる。そのため、傾斜地を往復走行する耕耘作業において、前記農作業機を上昇させたときに前記作業車両の重心位置が大きく移動して転倒事故が発生する等の問題がある。
【0006】
そこで、前記特許文献2のように、前記作業車両が実際に転倒する前に、ブザーを作動させてオペレータに警報しても、オペレータがそれに対処する操作を適正に行わなければ、前記作業車両の転倒を回避できない等の問題がある。
【0007】
また、ロータリ耕耘機等の農作業機を牽引するトラクタ等の作業車両は、例えば機体が比較的大きく傾斜し易い傾斜地での農作業において、前記作業車両が左右または前後方向に設定以上の傾斜角度に傾斜したときに、前記特許文献3のように、エンジンを自動的に停止させた場合、前記作業車両がさらに傾斜する方向に惰性(動慣性力)にて移動して、作業車両の転倒を回避できない等の問題がある。例えば、路面抵抗が大きいコンバイン等の作業車両では、エンジンが停止した場所に作業車両が停止し易いが、それに比べて路面抵抗が小さい前車輪及び後車輪を有する作業車両では、前記作業車両の傾斜角度を検出してエンジンが停止したときに、エンジンが停止した場所から作業車両が惰性にて移動する等の運転操作上の問題がある。
【0008】
本発明の目的は、前記農作業機を用いた農作業が簡単な運転操作で実行できるものでありながら、前記作業車両の転倒を防止する制御を容易にできる作業車両の姿勢制御装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の作業車両の姿勢制御装置は、前車輪及び後車輪にて走行自在に支持された作業車両に、農作業機をリンク機構を介して昇降可能に装着し、前記農作業機を昇降動する昇降制御アクチュエータと、前記作業車両の水平に対する左右または前後方向の傾斜角を検出する傾斜センサと、前記作業車両の走行速度を検出する車速センサと、前記傾斜センサの検出結果に基づき前記昇降制御アクチュエータを作動する姿勢制御手段とを備えてなる作業車両の姿勢制御装置において、総合転倒角を、前記農作業機を前記作業車両に連結した場合の前記作業車両の転倒角とするとき、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに、オペレータに警報するための警報手段と、前記傾斜センサの検出値が前記総合転倒角より一定角度小さく且つ前記警報値より大きくなったときに、前記作業車両のエンジンの回転数を強制的に低下させるエンジン回転制御手段とを備えたものである。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の作業車両の姿勢制御装置において、前記総合転倒角と、前記農作業機を前記作業車両に連結していない場合の前記作業車両の単独転倒角とをそれぞれ演算して、前記農作業機を前記作業車両に連結したときには、前記傾斜センサの検出値が、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに警報し、前記農作業機を前記作業車両に連結していないときには、前記傾斜センサの検出値が、前記単独転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに警報するように制御するものである。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の作業車両の姿勢制御装置において、前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータをオペレータが前記姿勢制御手段に入力する設定手段を設けて、前記農作業機を装着したときには、オペレータにて設定された当該農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものである。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2に記載の作業車両の姿勢制御装置において、前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記姿勢制御手段に送る通信手段を設けて、前記農作業機を装着したときには、前記通信手段から送られた当該農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものである。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1または2に記載の作業車両の姿勢制御装置において、前記農作業機の重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機の重量または重心位置を計測する計測手段を設けて、前記農作業機を装着したときには、前記計測手段から読み込んだ当該農作業機の重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものである。
【0014】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5に記載の作業車両の姿勢制御装置において、前記作業車両の傾斜角が総合転倒角に近づいたときには、前記昇降制御アクチュエータが作動して前記農作業機を下降作動させ、その農作業機の下降速度を、地面に接近させるに従い減速させるように制御するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、前車輪及び後車輪にて走行自在に支持された作業車両に、農作業機をリンク機構を介して昇降可能に装着し、前記農作業機を昇降動する昇降制御アクチュエータと、前記作業車両の水平に対する左右または前後方向の傾斜角を検出する傾斜センサと、前記作業車両の走行速度を検出する車速センサと、前記傾斜センサの検出結果に基づき前記昇降制御アクチュエータを作動する姿勢制御手段とを備えてなる作業車両の姿勢制御装置において、総合転倒角を、前記農作業機を前記作業車両に連結した場合の前記作業車両の転倒角とするとき、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに、オペレータに警報するための警報手段と、前記傾斜センサの検出値が前記総合転倒角より一定角度小さく且つ前記警報値より大きくなったときに、前記作業車両のエンジンの回転数を強制的に低下させるエンジン回転制御手段とを備えたものであるから、前記作業車両の傾斜角度がこの転倒角度に近づいたときに、前記作業車両の転倒を警報手段にてオペレータに認識させた後、前記エンジンの回転数を強制的に低下して前記作業車両の移動速度を遅くし、前記作業車両の姿勢を緩やかに変化させる。そのため、前記警報手段からの転倒警報に対してオペレータの対処が遅くなっても、前記作業車両が転倒する前に、オペレータが、前記作業車両の転倒を回避する運転操作を簡単にでき、前記作業車両の転倒を回避できる。
【0016】
また、前記作業車両の転倒を警報手段にてオペレータが認識しなかった場合でも、オペレータが設定した速度よりも前記作業車両の移動速度が自動的に遅くなるから、前記作業車両の転倒の警報を、その減速作動(エンジンの回転低下)にてオペレータが認識できる。
【0017】
なお、前記エンジンの回転数を強制的に低下させたときには、前記エンジンが停止しない程度の低速域の回転数を維持させ、前記エンジンの停止を防ぐものである。
【0018】
請求項2に係る発明によれば、前記総合転倒角と、前記農作業機を前記作業車両に連結していない場合の前記作業車両の単独転倒角とをそれぞれ演算して、前記農作業機を前記作業車両に連結したときには、前記傾斜センサの検出値が、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに警報し、前記農作業機を前記作業車両に連結していないときには、前記傾斜センサの検出値が、前記単独転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに警報するように制御するものであるから、前記農作業機が未装着であっても装着されていても、それぞれのときの前記作業車両の重心位置に基づき、オペレータに警報するための前記作業車両の転倒角度の基準値をそれぞれ演算できる。そのため、前記農作業機が未装着または装着のいずれの場合でも、前記作業車両の転倒を、オペレータに対して適正な時期に予告できるものである。
【0019】
請求項3に係る発明によれば、前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータをオペレータが前記姿勢制御手段に入力する設定手段を設けて、前記農作業機を装着したときには、オペレータにて設定された当該農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものであるから、前記農作業機の種類または重量または重心位置が変化しても、それぞれのときの前記作業車両の重心位置に基づき、オペレータに警報するための前記作業車両の転倒角度の基準値をそれぞれ設定できる。そのため、前記農作業機の種類または重量または重心位置が変更されても、前記作業車両の転倒を、オペレータに対して適正な時期に予告できるものである。
【0020】
請求項4に係る発明によれば、前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記姿勢制御手段に送る通信手段を設けて、前記農作業機を装着したときには、前記通信手段から送られた当該農作業機の種類または重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものであるから、前記農作業機の種類または重量または重心位置が変化しても、それぞれのときの前記作業車両の重心位置に基づき、オペレータに警報するための前記作業車両の転倒角度の基準値をそれぞれ設定できる。そのため、前記農作業機の種類または重量または重心位置が変更されても、前記作業車両の転倒を、オペレータに対して適正な時期に予告できるものである。
【0021】
請求項5に係る発明によれば、前記農作業機の重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機の重量または重心位置を計測する計測手段を設けて、前記農作業機を装着したときには、前記計測手段から読み込んだ当該農作業機の重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものであるから、前記農作業機の種類または重量または重心位置が変化しても、それぞれのときの前記作業車両の重心位置に基づき、オペレータに警報するための前記作業車両の転倒角度の基準値をそれぞれ設定できる。そのため、前記農作業機の種類または重量または重心位置が変更されても、前記作業車両の転倒を、オペレータに対して適正な時期に予告できるものである。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、前記作業車両の傾斜角が総合転倒角に近づいたときには、前記昇降制御アクチュエータが作動して前記農作業機を下降作動させ、その農作業機の下降速度を、地面に接近させるに従い減速させるように制御するものであるから、前記農作業機を緩やかに下降させて、前記作業車両の転倒の反力として前記農作業機の重量を利用できる。前記作業車両の傾斜角度が前記総合転倒角度に近づいたときには、前記総合転倒角度が大きくなるように、前記昇降制御アクチュエータが作動して前記農作業機を下降させて、前記作業車両の転倒を自動的に回避でき、オペレータの操作ミス等を低減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、作業車両としての農作業用トラクタに適用した場合の図面について説明する。図1はトラクタ及びロータリ耕耘機の側面図、図2は同平面図、図3は油圧式の作業機用昇降機構の側面図、図4は同平面図、図5は図2のロータリ耕耘機のV−V線矢視側断面図、図6はロータリ耕耘機の背面図、図7はトラクタの油圧回路図、図8は制御手段の機能ブロック図、図9は姿勢適応制御のフローチャート、図10は転倒角演算制御のフローチャート、図11は転倒角演算制御のフローチャート、図12は転倒角演算制御のフローチャート、図13は転倒防止制御のフローチャート、図14は作業姿勢制御のフローチャートである。
【0024】
図1乃至図4に示す如く、作業車両としてのトラクタ1における走行機体2は左右一対の前車輪3と同じく左右一対の後車輪4とで支持されている。前記走行機体2の前部に搭載したエンジン5にて後車輪4及び前車輪3を駆動することにより、トラクタ1は前後進走行するように構成される。エンジン5はボンネット6にて覆われる。また、前記走行機体2の上面にはキャビン7が設置され、該キャビン7の内部には、操縦座席8と、かじ取りすることによって前車輪3の操向方向を左右に動かすようにした操縦ハンドル(丸ハンドル)9とが設置されている。キャビン7の外側部には、オペレータが乗降するステップ10が設けられ、該ステップ10より内側で且つキャビン7の底部より下側には、エンジン5に燃料を供給する燃料タンク11が設けられている。
【0025】
また、図1乃至図4に示されるように、前記走行機体2は、前バンパ12及び前車軸ケース13を有するエンジンフレーム14と、エンジンフレーム14の後部にボルトにて着脱自在に固定する左右の機体フレーム16とにより構成される。機体フレーム16の後部には、前記エンジン5の回転を適宜変速して後車輪4及び前車輪3に伝達するためのミッションケース17が連結されている。この場合、後車輪4は、ミッションケース17の外側面から外向きに突出するように装着された後車軸ケース18を介して取付けられている。
【0026】
図3及び図4に示されるように、前記ミッションケース17の後部における上面には、作業機としてのロータリ耕耘機24を昇降動するための油圧式の作業機用昇降機構20が着脱可能に取付けられている。ロータリ耕耘機24は、ミッションケース17の後部に、一対の左右ロワーリンク21及びトップリンク22からなる3点リンク機構を介して連結される。左右ロワーリンク21の前端側は、ミッションケース17の後部の左右側面にロワーリンクピン25を介して回動可能に連結されている。トップリンク22の前端側は、作業機用昇降機構20の後部のトップリンクヒッチ26にトップリンクピン27を介して連結されている。さらに、ミッションケース17の後側面に、前記ロータリ耕耘機24にPTO駆動力を伝達するためのPTO軸23が後向きに突出するように設けられている。
【0027】
図3及び図4及び図7に示されるように、油圧式の作業機用昇降機構20には、後述する単動形の昇降制御油圧シリンダ28にて回動させるための1対の左右リフトアーム29が設置されている。進行方向に向かって左側のロワーリンク21とリフトアーム29とが、左リフトロッド30を介して連結されている。進行方向に向かって右側のロワーリンク21とリフトアーム29とは、右リフトロッド31、及びそのロッド31の一部を形成する複動形の傾斜制御油圧シリンダ32、及びそのシリンダ32のピストンロッド33とを介して連結されている。
【0028】
図1に示すように、ロータリ耕耘機24における下リンクフレーム34の前端と左右一対のロワーリンク21とが、下ヒッチピン35aを介して連結され、トップリンク22の各後端側と上リンクフレーム34の前端側とが、上ヒッチピン34aを介して連結されている。
【0029】
図1、図2、図5及び図6に示すように、ロータリ耕耘機24は、横長筒状のメインビーム36と、メインビーム36の左右側端部にそれぞれ上端側が連結されたチェンケース37及び軸受板38と、チェンケース37及び軸受板38の下端側に左右両端部が回転自在に軸支された耕耘爪軸39と、耕耘爪軸39に放射状にて着脱可能に取付く複数の耕耘爪40と、耕耘爪40の回転軌跡の上方を覆うように配置された耕耘上面カバー41と、耕耘爪40の回転軌跡の左右側方を覆うように配置された左右耕耘サイドカバー42と、耕耘爪40の回転軌跡の後方を覆うように配置された耕耘リヤカバー43と、メインビーム36に前端側が取付けられて後方に長く伸びる耕深調節フレーム44と、上リンクフレーム34の後端側と耕深調節フレーム44の前後方向の中間部とに連結された伸縮調節可能な耕深調節軸45等からなる。
【0030】
なお、下リンクフレーム35はメインビーム36に一体的に連結されている(図2及び図6参照)。トップリンク22は、ターンバックル22aの回転にて伸縮させて、そのリンク22の長さを変更調節可能となるように構成されている(図3及び図4参照)。上リンクフレーム34の前後方向の中間部は、耕深調節支点軸34bを介してメインビーム36に回動可能に連結されている(図1参照)。耕深調節フレーム44の前端側をメインビーム36に一体的に連結する。耕深調節ハンドル45aの回転操作にて耕深調節軸45を伸縮させたときには、ロワーリンク21及びトップリンク22にて支持されるロータリ耕耘機24が前傾姿勢または後傾姿勢に変化して、耕耘爪40による耕耘深さが変更可能に構成されている。
【0031】
図1、図5及び図6に示されるように、メインビーム36の左右中央部には、PTO軸23からの駆動力を入力するためのギヤケース46が配置されている。PTO軸23と、ギヤケース46の前面側のPTO入力軸46aとを、両端に自在継手が備えられた伸縮自在な伝動軸46bを介して連結する。PTO軸23からの動力が、ギヤケース46に内臓したベベルギヤ(図示省略)、メインビーム36に内臓した回転軸(図示省略)、チェンケース37に内臓したスプロケット及びチェン(図示省略)等を介して耕耘爪軸39に伝えられ、耕耘爪40を図1及び図5において反時計方向に回転させることになる。
【0032】
図5及び図6に示されるように、耕耘上面カバー41の後端部には、枢着軸47を介して耕耘リヤカバー43の前端側が連結されている。走行機体1の幅方向に長い耕耘上面カバー41の上面の後部には、後傾姿勢の一対の左右ハンガーフレーム48が立設されている。耕耘リヤカバー43の上面の後端側と左右ハンガーフレーム48とは1対の左右ハンガー機構49を介して上下動可能に連結されている。各ハンガーフレーム48の上端部には、受圧軸体48aが水平軸線(中心線)回りに回動可能に配置されている。
【0033】
各ハンガー機構49における細長い丸棒形のハンガーロッド50は、受圧軸体48aに水平軸線(中心線)と直交する方向に摺動可能に貫通しており、図5に示されるように、ハンガーロッド50の下端部は、支軸53を介して、耕耘リヤカバー43の後部上面のブラケット54に回動自在に連結されている。ハンガーロッド50の上端側には、下降規制ピン51が設けられ、受圧軸体48aと下降規制ピン51の間のハンガーロッド50には、ドーナツ形の下降規制板52がハンガーロッド50の軸線方向に摺動可能に被嵌されている。また、ハンガーロッド50の下部側(支軸53より上側)には、上昇規制ピン55が配置され、受圧軸体48aと上昇規制ピン55との間のハンガーロッド50には、ドーナツ形の上下座板56,57を介して、耕耘リヤカバー43に鎮圧力を付与するための鎮圧用圧縮バネ58が被嵌されている。
【0034】
この構成により、ロータリ耕耘機24が地表面から離れた高さに持上げられたときには、耕耘リヤカバー43の後端側が枢着軸47回りに下方側に回動し、下降規制ピン51が下降規制板52に当接し、下降規制板52が受圧軸体49に当接し、耕耘リヤカバー43がこの後端側を最下降させた姿勢に維持されることになる。一方、ロータリ耕耘機24が耕地上面に降ろされて、耕耘爪40が着地しているときや、耕耘作業中では、耕耘リヤカバー43の後端側が、耕耘された耕土との接地圧にて枢着軸47回りに上方に回動することになる。また、耕耘リヤカバー43の後端側が枢着軸47回りに上方に回動したときには、上昇規制ピン55及び下座板57を介して鎮圧用圧縮バネ58が圧縮されて、耕耘リヤカバー43の後端側の上方への回動が鎮圧用圧縮バネ58の付勢力にて規制されることになる。そのため、耕耘爪40から耕耘リヤカバー43の後方に排出される耕土量が制限されたり、耕土表面が耕耘リヤカバー43の移動にて均平に均されることになる。
【0035】
図7は本実施形態のトラクタ1の油圧回路100を示し、エンジン5の回転力により作動する作業機用油圧ポンプ101を備える。作業機用油圧ポンプ101は、作業機用昇降機構20における昇降制御油圧シリンダ28に作動油を供給制御するための上昇制御電磁弁102及び下降制御電磁弁103と、傾斜制御油圧シリンダ32に作動油を供給制御するための傾斜制御電磁弁104とに、分流弁105を介して接続している。昇降制御油圧シリンダ28の作動油の圧力を電気的信号に変換して検出するためのダイヤフラム式油圧センサ106と、昇降制御油圧シリンダ28の作動油の温度を電気的信号に変換して検出するための熱電対式油温センサ107とを備える。この油圧回路100には、図7に示すように、リリーフ弁や流量調整弁、チェック弁、オイルクーラ、オイルフィルタ等を備えている。
【0036】
次に、本実施形態のトラクタ1及びロータリ耕耘機24の姿勢制御について説明する。図8は、トラクタ1及びロータリ耕耘機24の姿勢制御手段の機能ブロック図であり、制御プログラムを記憶したROMと各種データを記憶したRAMとを備えたマイクロコンピュータ等の姿勢制御コントローラ110は、電源印加用キースイッチ111を介してバッテリ112に接続される。キースイッチ111は、エンジン5を始動するためのスタータ113に接続される。
【0037】
また、図8に示されるように、姿勢制御コントローラ110には、エンジン5の回転を制御する電子ガバナコントローラ114が接続されている。電子ガバナコントローラ114には、エンジン5の燃料を調節するガバナ115と、エンジン5の回転数を検出するエンジン回転センサ116とが接続される。ガバナ115に設けた燃料調節ラック(図示省略)が、手動操作するスロットルレバー117の回動位置をスロットルポテンショメータ118にて検出し、その検出値に基づいて、エンジン5の回転数が設定されたとき、電子ガバナコントローラ114からの信号にてスロットルレバー117の設定回転数とエンジン5の回転数が一致するように、燃料調節ラック駆動用のスロットルソレノイド119を介して燃料調節ラックが自動的に位置調節され、負荷変動などによってエンジン5の回転が変化するのを防ぐ、換言すると、負荷の変動に拘らずエンジン5の回転数が略一定回転を保持するように構成されている。
【0038】
さらに、姿勢制御コントローラ110には、図8に示すように、入力系の各種センサ及びスイッチ類、即ち、トラクタ1及びロータリ耕耘機24の左右方向の傾斜角度を検出する振子式のローリングセンサ120と、トラクタ1及びロータリ耕耘機24の左右方向の傾斜角速度を検出するガスレート式のローリングジャイロセンサ121と、トラクタ1に対するロータリ耕耘機24の相対的な左右方向の傾斜角度を検出するポテンショメータ型の作業機ポジションセンサ122と、トラクタ1に対するロータリ耕耘機24の相対的な左右方向の傾斜角度をオペレータが設定する傾斜設定ダイヤル123と、耕耘爪40の耕耘深さ変動にて変化する耕耘リヤカバー43の回動角度を検出するポテンショメータ型のリヤカバーセンサ124と、リヤカバーセンサ124の出力から限定された帯域の信号出力を取出すローパスフィルタまたはノッチフィルタ等のフィルタ125と、耕耘爪40の耕耘深さをオペレータが設定する耕深設定ダイヤル126と、前後車輪3,4の回転速度(走行速度)を検出する車速センサ127と、リフトアーム29の回動角度を検出するポテンショメータ型のリフト角センサ129とが接続されている。
【0039】
また、姿勢制御コントローラ110には、図8に示すように、トラクタ1の前後方向の傾斜角を検出する振子式のピッチングセンサ131と、ロータリ耕耘機24の作業機情報(重量及び重心位置など)をCAN通信にて入力する作業機情報センサ132と、オペレータがロータリ耕耘機24の作業機情報(重量及び重心位置など)を入力する作業機情報設定器133と、油圧センサ106とが接続されている。作業機情報センサ132は、バーコード読取り器(図示省略)などを有していて、トラクタ1に連結したロータリ耕耘機24の設定位置にセットする。作業機情報設定器133は、機種選定スイッチ(図示省略)などを有していて、図1及び図2に示す運転部(キャビン)7内の操縦座席8の右側コラム上に配置されている。
【0040】
姿勢制御コントローラ110には、図8に示すように、出力系の各種電磁弁、即ち、上昇制御電磁弁102と、下降制御電磁弁103と、傾斜制御電磁弁104と、ブザー等の警報器134とが接続されている。この構成により、リヤカバーセンサ124の耕耘深さの検出値に基づき、上昇制御電磁弁102または下降制御電磁弁103を切換えて、昇降制御油圧シリンダ28を作動させ、耕耘爪40の耕耘深さが耕深設定ダイヤル126の設定耕深値になるように自動制御することになる。
【0041】
また、ローリングセンサ120及びローリングジャイロセンサ121のトラクタ1の左右傾斜の検出値に基づき、傾斜制御電磁弁104を切換えて、傾斜制御油圧シリンダ32を作動させ、ロータリ耕耘機24の左右方向の傾斜角度が傾斜設定ダイヤル123の設定傾斜角になるように自動制御することになる。
【0042】
一方、ローリングセンサ120のトラクタ1の左右傾斜の検出値と、ピッチングセンサ131のトラクタ1の前後傾斜の検出値と、作業機情報センサ132の検出値と、作業機情報設定器133の設定値とに基づき、トラクタ1の重心位置及び転倒角度を演算して、トラクタ1の前後または左右方向の傾斜角が、演算された転倒角に近づいたか否かを判断し、トラクタ1の傾斜角が転倒を警報する警報角度になったときに、警報器134を作動させてトラクタ1の転倒をオペレータに警報することになる。
【0043】
また、トラクタ1の傾斜角が転倒角に近づいたときに、上昇制御電磁弁102または下降制御電磁弁103を切換えて、昇降制御油圧シリンダ28を作動させ、ロータリ耕耘機24の支持高さを地面に接地しない程度の高さに維持し、トラクタ1の実際の転倒角を、ロータリ耕耘機24を上昇させた枕地旋回姿勢のときの現在の転倒角より大きくし、例えばトラクタ1を往復移動させる傾斜地の耕耘作業などにおいて、トラクタ1を圃場の枕地にて方向転換させて次工程位置に移動することになる。
【0044】
本実施形態では、図1及び図2に示す運転部(キャビン)7内の操縦座席8の前方の床板59から突出する操縦コラム60上に丸ハンドル型の操縦ハンドル9が配置され、操縦コラム60より右方にスロットルレバー117と左右ブレーキペダル61とが配置されている。また、操縦コラム60より左方にクラッチペダル62が配置されている。操縦座席8の右側コラム上には、作業機昇降レバー63と、PTO変速レバー64と、傾斜設定ダイヤル123と、耕深設定ダイヤル126とが配置されている。操縦座席8の左側コラム上には走行変速レバー65が配置されている。操縦座席8の左側コラムの前にはデフロックペダル66が配置されている。操縦座席8の後方側で、作業機用昇降機構20の上面側には、ローリングセンサ120と、ローリングジャイロセンサ121とが配置されている。また、図2及び図5に示されるように、耕耘上面カバー41の後部の上面には、リヤカバーセンサ124が配置されている。耕耘リヤカバー43と、リヤカバーセンサ124とを、センサアーム67及びセンサリンク68等を介して連結する。
【0045】
次に、姿勢適応制御のフローチャート(図9)を参照しながら姿勢適応制御態様を説明する。ロータリ耕耘機24を、ロワーリンク21及びトップリンク22を介してトラクタ1の後側に昇降可能に連結し、作業機情報センサ132をロータリ耕耘機24にセットし、トラクタ1のエンジン5が始動された場合、図10乃至図12に示す転倒角演算制御が実行される(S1)。転倒角演算制御では、ロータリ耕耘機24の種類及び重量及び重心位置などの作業機情報データを読み込み、その作業機情報データと、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結した場合のトラクタ1の転倒角としての総合転倒角との関係を、マップ(または演算式)にて作成する。ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結した場合の総合転倒角と、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結していない場合のトラクタ1の単独転倒角とを、姿勢制御コントローラ110のRAM(随時読み書き可能メモリ)に記憶させる。
【0046】
オペレータが作業機昇降レバー63及びPTO変速レバー64を操作し、耕耘爪40を回転させながらロータリ耕耘機24を下降させ、耕耘爪40を着地させて圃場の耕土を耕起する耕耘作業が開始された場合、ローリングセンサ120の左右傾斜角度検出値と、ローリングジャイロセンサ121の角加速度検出値と、ピッチングセンサ131の前後傾斜角度検出値と、車速センサ127の車速検出値(後車輪4の回転速度)を読み込む(S2)。そして、作業車両としてのトラクタ1の傾斜角が警報値(A角度)以上か否かが判断される(S3)。トラクタ1の傾斜角が警報値(A角度)以上のときには(S3;yes)、図13に示す転倒防止制御が実行される(S4)。トラクタ1の傾斜角が警報値(A角度)以上でないときには(S3;no)、図14に示す作業姿勢制御が実行される(S5)。
【0047】
図10に示す転倒角演算制御では、ロータリ耕耘機24(農作業機)をトラクタ1(作業車両)に装着したか否かを判断して(S6)、トラクタ1の転倒角を演算する。ロータリ耕耘機24をトラクタ1に装着していないときには(S6;no)、トラクタ1の転倒を警報する基準値(A角度)、及びトラクタ1の転倒を防止する基準値(B角度、C角度)として、トラクタ1単体の単独転倒角を記憶する(S7)。一方、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に装着したときには(S6;yes)、オペレータが選択・決定したロータリ耕耘機24(農作業機)の種類及び重量及び重心位置を作業機情報設定器133から読み込む(S8)。そして、ロータリ耕耘機24の種類及び重量及び重心位置などの作業機情報データに基づき、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結した場合のトラクタ1の転倒角としての総合転倒角を演算する(S9)。その作業機情報データと、総合転倒角との関係を、マップ(または演算式)にて作成する。ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結した場合の総合転倒角を、トラクタ1の転倒を警報する基準値(A角度)、及びトラクタ1の転倒を防止する基準値(B角度、C角度)として、姿勢制御コントローラ110のRAM(随時読み書き可能メモリ)に記憶させる(S10)。
【0048】
一方、図11に示す転倒角演算制御では、ロータリ耕耘機24(農作業機)をトラクタ1(作業車両)に装着したか否かを判断し(S11)、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に装着していないときには(S11;no)、ステップ7と同じく、トラクタ1の単独転倒角を記憶する(S12)。一方、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に装着したときには(S11;yes)、ロータリ耕耘機24(農作業機)の種類及び重量及び重心位置を作業機情報センサ132からCAN通信にて読み込む(S13)。そして、ロータリ耕耘機24の種類及び重量及び重心位置などの作業機情報データに基づき、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結した場合のトラクタ1の転倒角としての総合転倒角を演算する(S14)。その作業機情報データと、総合転倒角との関係を、マップ(または演算式)にて作成する。ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結した場合の総合転倒角を、トラクタ1の転倒を警報する基準値(A角度)、及びトラクタ1の転倒を防止する基準値(B角度、C角度)として、姿勢制御コントローラ110のRAM(随時読み書き可能メモリ)に記憶させる(S15)。
【0049】
他方、図12に示す転倒角演算制御では、ロータリ耕耘機24(農作業機)をトラクタ1(作業車両)に装着したか否かを判断し(S16)、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に装着していないときには(S16;no)、ステップ7と同じく、トラクタ1の単独転倒角を記憶する(S17)。一方、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に装着したときには(S16;yes)、ロータリ耕耘機24(農作業機)の種類及び重量及び重心位置を作業機情報センサ132からCAN通信にて読み込む(S18)。そして、ロータリ耕耘機24の種類及び重量及び重心位置などの作業機情報データに基づき、ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結した場合のトラクタ1の転倒角としての総合転倒角を演算する(S19)。その作業機情報データと、総合転倒角との関係を、マップ(または演算式)にて作成する。ロータリ耕耘機24をトラクタ1に連結した場合の総合転倒角を、トラクタ1の転倒を警報する基準値(A角度)、及びトラクタ1の転倒を防止する基準値(B角度、C角度)として、姿勢制御コントローラ110のRAM(随時読み書き可能メモリ)に記憶させる(S20)。
【0050】
図10ないし図12に示されるように、農作業機としてのロータリ耕耘機24がトラクタ1に装着されたか否かは、作業機情報設定器133、または作業機情報センサ132、または油圧センサ106のいずれかの入力にて判断される。ロータリ耕耘機24がトラクタ1に装着されたときは、ロータリ耕耘機24の重量などの作業機情報を読み込み、例えばロータリ作業機24の重量などをトラクタ1の重量に加算して、ロータリ作業機24のデータとトラクタ1のデータとからトラクタ1の重心位置を演算にて求める。トラクタ1の重心位置と、車速センサ127の車速検出値とから、トラクタ1の左右及び前後方向の総合転倒角が演算される。図10ないし図12において演算されたトラクタ1の総合転倒角は、それらの総合転倒角の平均値、またはそれらの総合転倒角の平均値に最も近似した総合転倒角、またはオペレータの設定を優先した図10の制御から求められた総合転倒角のいずれかを、後述する図13の転倒防止制御に採用する。
【0051】
図10ないし図12において演算されたトラクタ1の総合転倒角に基づき、ロータリ耕耘機24が装着されたトラクタ1の転倒をオペレータに警報するためのA角度と、エンジン5の回転を低下させるためのB角度と、昇降機構20を作動してロータリ耕耘機24を昇降させるためのC角度とを演算して記憶する。なお、C角度は、トラクタ1の転倒角度に最も近い傾斜角度である。B角度は、C角度より小さい傾斜角度である。A角度は、B角度より小さい傾斜角度であり、トラクタが安定した姿勢にて移動可能な最大傾斜角度である。
【0052】
次に、図13に示されるように、ロータリ耕耘機24を装着したトラクタ1の転倒を未然に防ぐための転倒防止制御について説明する。オペレータが作業機昇降レバー63及びPTO変速レバー64を操作し、耕耘爪40を回転させながらロータリ耕耘機24を下降させ、耕耘爪40を着地させて圃場の耕土を耕起する耕耘作業が開始された場合、ローリングセンサ120の左右傾斜角度検出値と、ローリングジャイロセンサ121の角加速度検出値と、ピッチングセンサ131の前後傾斜角度検出値と、車速センサ127の車速検出値(後車輪4の回転速度)を読み込む(S21)。トラクタ1の左右または前後方向のいずれか一方または両方の傾斜角度が警報A角度以上になったときには(S22;yes)、警報器134を作動させ(S23)、トラクタ1の傾斜角度が警報角度に達したことを、オペレータに知らせる。
【0053】
トラクタ1が警報A角度からさらに傾斜した場合、トラクタ1の左右または前後方向のいずれか一方または両方の傾斜角度が、上述した総合転倒角より小さく警報A角度より大きいB角度(エンジン5の回転を低下する角度)になったときには(S24;yes)、スロットルソレノイド119を、電子ガバナコントローラ114を介して、エンジン5の回転が低下するように作動させる(S25)。電子ガバナコントローラ114にて演算された作業負荷(走行負荷及び耕耘負荷)に対して、エンジン5が出力不足により停止しないように、エンジン5を低速回転にて作動する。また、ステップ17のエンジン5の回転を低下する制御と略同時に、上昇制御電磁弁102または下降制御電磁弁103を切換えて、ロータリ耕耘機24を下降させるように、昇降機構20を作動する(S26)。トラクタ1の総合転倒角度が大きくなるように、ロータリ耕耘機24を含むトラクタ1の機体重心を移動させる。
【0054】
さらに、トラクタ1の左右または前後方向のいずれか一方または両方の傾斜角度が、総合転倒角と略等しいC角度(トラクタ1の転倒角度より若干小さい角度)に近づいたときには(S27;yes)、耕耘爪40が接地しない程度に、ロータリ耕耘機24を下降させて低位置に移動させることにより、転倒方向のモーメントに対する反力(機体の復元力)がトラクタ1に発生するように、昇降機構20を作動する(S28)。
【0055】
次に、図14に示されるように、トラクタ1に装着したロータリ耕耘機24の耕耘姿勢(ロータリ耕耘機の左右方向の傾斜、及び耕耘爪40の耕耘深さ)を制御する作業姿勢制御について説明する。
【0056】
耕耘爪40を着地させて圃場の耕土を耕起する耕耘作業を実行している場合、ローリングセンサ120の左右傾斜角度検出値と、ローリングジャイロセンサ121の角加速度検出値と、ピッチングセンサ131の前後傾斜角度検出値と、車速センサ127の車速検出値(後車輪4の回転速度)を読み込む(S21)。トラクタ1の左右及び前後方向の傾斜角が、上述した総合転倒角よりも小さく、しかも図13の転倒防止制御の角度(A角度、B角度、C角度)よりも小さいとき、即ち、トラクタ1の左右及び前後方向の傾斜角が警報A角度より小さいときには(S30;yes)、オペレータが設定した傾斜設定ダイヤル123の傾斜角度の設定値と、トラクタ1に対するロータリ耕耘機24の現在の左右方向の傾斜角度を検出した作業機ポジションセンサ122の検出値とを読み込む(S31)。ローリングセンサ120及びローリングジャイロセンサ121にて検出する左右傾斜角度が、傾斜設定ダイヤル123の設定値と一致するか否かを判断する(S32)。
【0057】
トラクタ1の傾斜角度が左右いずれかの方向に変化したときには(S32;no)、傾斜制御電磁弁104がローリングジャイロセンサ121値に基づいて作動して(S33)、トラクタ1の傾斜方向と逆の方向にロータリ耕耘機24を傾斜させるように、傾斜制御油圧シリンダ32を作動させ、ロータリ耕耘機24の水平に対する傾斜角度を維持し、傾斜制御電磁弁104がローリングセンサ120値に基づいて中立に復帰して、傾斜制御油圧シリンダ32を停止させ、ロータリ耕耘機24の傾斜自動制御を完了する。トラクタ1の傾斜角度が左右いずれの方向にも変化しないときは(S32;yes)、ロータリ耕耘機24の水平に対する現在の傾斜角度が維持される(S34)。
【0058】
また、耕耘爪40を着地させて耕土を耕起している場合、オペレータが設定した耕深設定ダイヤル126の耕耘深さの設定値と、耕耘リヤカバー43の現在の回動角度を検出したリヤカバーセンサ124の検出値とを読み込む(S35)。耕耘爪40の耕耘深さが変化したときには(S36;no)、上昇制御電磁弁102または下降制御電磁弁103が作動する(S37)。耕耘爪40の耕耘深さが、耕深設定ダイヤル126値より深くなったときには、上昇制御電磁弁102が作動してロータリ耕耘機24を上昇させる。耕耘爪40の耕耘深さが、耕深設定ダイヤル126値より浅くなったときには、下降制御電磁弁103が作動してロータリ耕耘機24を下降させる。耕耘爪40の耕耘深さを耕深設定ダイヤル126値に一致させ、ロータリ耕耘機24の耕深自動制御を完了する。リヤカバーセンサ124の耕耘深さ検出値が深浅いずれの方向にも変化しないときは(S12;yes)、耕耘爪40の現在の耕耘深さが維持される(S38)。
【0059】
上記の記載並びに図8などから明らかなように、前車輪3及び後車輪4にて走行自在に支持された作業車両としてのトラクタ1に、農作業機としてのロータリ耕耘機24を、ロワーリンク21及びトップリンク22などのリンク機構を介して昇降可能に装着し、前記農作業機24を昇降動する昇降制御アクチュエータとしての昇降制御油圧シリンダ28と、前記作業車両1の水平に対する左右または前後方向の傾斜角度を検出する傾斜センサとしてのローリングセンサ120及びピッチングセンサ131と、前記作業車両1の走行速度を検出する車速センサ127と、前記傾斜センサ120,131の検出結果に基づき前記昇降制御アクチュエータ28を作動する姿勢制御手段としての姿勢制御コントローラ110とを備えてなる作業車両の姿勢制御装置において、総合転倒角を、前記農作業機24を前記作業車両1に連結した場合の前記作業車両1の転倒角とするとき、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに、オペレータに警報するための警報手段としての警報器134と、前記傾斜センサ120,131の検出値が前記総合転倒角より一定角度小さく且つ前記警報値より大きくなったときに、前記作業車両1のエンジン5の回転数を強制的に低下させるエンジン回転制御手段としての電子ガバナコントローラ114とを備えている。
【0060】
そのため、前記作業車両1の傾斜角度がこの転倒角度に近づいたときに、前記作業車両1の転倒を警報手段134にてオペレータに認識させた後、前記エンジン5の回転数を強制的に低下して前記作業車両1の移動速度を遅くし、前記作業車両1の姿勢を緩やかに変化させる。したがって、前記警報手段134からの転倒警報に対してオペレータの対処が遅くなっても、前記作業車両1が転倒する前に、オペレータが、前記作業車両1の転倒を回避する運転操作を簡単にでき、前記作業車両1の転倒を回避できる。
【0061】
また、前記作業車両1の転倒を警報手段134にてオペレータが認識しなかった場合でも、オペレータが設定した速度よりも前記作業車両1の移動速度が自動的に遅くなるから、前記作業車両1の転倒の警報を、その減速作動(エンジン5の回転低下)にてオペレータが認識できる。
【0062】
なお、前記エンジン5の回転数を強制的に低下させたときには、前記エンジン5が停止しない程度の低速域の回転数を維持させ、前記エンジン5の停止を防ぐものである。
【0063】
また、上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記総合転倒角と、前記農作業機24を前記作業車両1に連結していない場合の前記作業車両1の単独転倒角とをそれぞれ演算して、前記農作業機24を前記作業車両1に連結したときには、前記傾斜センサ120,131の検出値が、前記総合転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに警報し、前記農作業機224を前記作業車両1に連結していないときには、前記傾斜センサ120,131の検出値が、前記単独転倒角よりも所定角度だけ小さい警報値以上になったときに警報するように制御するものであるから、前記農作業機24が未装着であっても装着されていても、それぞれのときの前記作業車両1の重心位置に基づき、オペレータに警報するための前記作業車両1の転倒角度の基準値をそれぞれ演算できる。そのため、前記農作業機24が未装着または装着のいずれの場合でも、前記作業車両1の転倒を、オペレータに対して適正な時期に予告できるものである。
【0064】
また、上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記農作業機24の種類または重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機24の種類または重量または重心位置のデータをオペレータが前記姿勢制御手段110に入力する設定手段としての作業機情報設定器133を設けて、前記農作業機24を装着したときには、オペレータにて設定された当該農作業機24の種類または重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものであるから、前記農作業機24の種類または重量または重心位置が変化しても、それぞれのときの前記作業車両1の重心位置に基づき、オペレータに警報するための前記作業車両1の転倒角度の基準値をそれぞれ設定できる。そのため、前記農作業機24の種類または重量または重心位置が変更されても、前記作業車両1の転倒を、オペレータに対して適正な時期に予告できるものである。
【0065】
また、上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記農作業機24の種類または重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機24の種類または重量または重心位置のデータを前記姿勢制御手段110に送る通信手段としての作業機情報センサ132を設けて、前記農作業機24を装着したときには、前記通信手段132から送られた当該農作業機24の種類または重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものであるから、前記農作業機24の種類または重量または重心位置が変化しても、それぞれのときの前記作業車両1の重心位置に基づき、オペレータに警報するための前記作業車両1の転倒角度の基準値をそれぞれ設定できる。そのため、前記農作業機24の種類または重量または重心位置が変更されても、前記作業車両1の転倒を、オペレータに対して適正な時期に予告できるものである。
【0066】
また、上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記農作業機24の重量または重心位置のデータと、前記総合転倒角との関係を、マップまたは演算式にて作成し、前記農作業機24の重量または重心位置を計測する計測手段としての油圧センサ106を設けて、前記農作業機24を装着したときには、前記計測手段106から読み込んだ当該農作業機24の重量または重心位置のデータを前記マップまたは演算式に当てはめ、前記総合転倒角を演算したものであるから、前記農作業機24の種類または重量または重心位置が変化しても、それぞれのときの前記作業車両1の重心位置に基づき、オペレータに警報するための前記作業車両1の転倒角度の基準値をそれぞれ設定できる。そのため、前記農作業機24の種類または重量または重心位置が変更されても、前記作業車両1の転倒を、オペレータに対して適正な時期に予告できるものである。
【0067】
また、上記の記載並びに図8などから明らかなように、前記作業車両1の傾斜角が総合転倒角に近づいたときには、前記昇降制御アクチュエータとしての昇降制御油圧シリンダ28が作動して前記農作業機24を下降作動させ、その農作業機24の下降速度を、地面に接近させるに従い減速させるように制御するものであるから、前記農作業機24を緩やかに下降させて、前記作業車両1の転倒の反力として前記農作業機24の重量を利用できる。前記作業車両1の傾斜角度が前記総合転倒角度に近づいたときには、前記総合転倒角度が大きくなるように、前記昇降制御アクチュエータ28が作動して前記農作業機24を下降させて、前記作業車両1の転倒を自動的に回避でき、オペレータの操作ミス等を低減できる。なお、前記農作業機24が接地したときのこの支持高さを、前記昇降制御アクチュエータ28の油圧力の検出値(油圧センサ106値)と、前記農作業機24の位置の検出値(リフト角センサ129値)とから予め演算でき、そのときの前記農作業機24の支持高さを記憶しておくことにより、前記農作業機24を下降させて前記作業車両1の転倒を回避するときに、前記農作業機24の高さを、地面に接触しない高さに維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】トラクタの側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】油圧式の作業機用昇降機構の側面説明図である。
【図4】同平面説明図である。
【図5】図2のロータリ耕耘機のV−V線矢視側断面図である。
【図6】ロータリ耕耘機の背面図である。
【図7】トラクタの油圧回路図である。
【図8】制御手段の機能ブロック図である。
【図9】姿勢適応制御のフローチャートである。
【図10】転倒角演算制御のフローチャートである。
【図11】転倒角演算制御のフローチャートである。
【図12】転倒角演算制御のフローチャートである。
【図13】転倒防止制御のフローチャートである。
【図14】作業姿勢制御のフローチャートである。
【符号の説明】
【0069】
1トラクタ(作業車両)
3前車輪
4後車輪
5エンジン
21ロワーリンク(リンク機構)
22トップリンク(リンク機構)
24ロータリ耕耘機(農作業機)
28昇降制御油圧シリンダ(昇降制御アクチュエータ)
106油圧センサ(計測手段)
110姿勢制御コントローラ(姿勢制御手段)
114電子ガバナコントローラ(エンジン回転制御手段)
120ローリングセンサ(傾斜センサ)
127車速センサ
131ピッチングセンサ(傾斜センサ)
132作業機情報センサ(通信手段)
133作業機情報設定器(設定手段)
134警報器(警報手段)
【出願人】 【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマー株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市北区茶屋町1番32号
【出願日】 平成17年5月2日(2005.5.2)
【代理人】 【識別番号】100079131
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 暁夫

【識別番号】100096747
【弁理士】
【氏名又は名称】東野 正

【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸

【公開番号】 特開2006−304737(P2006−304737A)
【公開日】 平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願番号】 特願2005−134150(P2005−134150)