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【発明の名称】 走行車体
【発明者】 【氏名】佐伯 正文
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】浅野 士郎
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【氏名】山口 亮
【住所又は居所】愛媛県伊予郡砥部町八倉1番地 井関農機株式会社技術部内

【要約】 【課題】機体の端部に昇降アクチュエ−タにより上下に回動する昇降リンクを設け、該昇降リンクの先端部に作業機を着脱可能な着脱ヒッチを設けた走行車体において、作業機の着脱作業を容易に且つ安全に行えるようにすることを課題とする。

【解決手段】上記構成の走行車体において、昇降リンク14が配置される機体の端部近傍に昇降リンク14を上方へ回動させるための上昇スイッチ90と前記昇降リンク14を下方へ回動させるための下降スイッチ91とを設け、該上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させる制御手段と、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作している間だけ昇降リンク14を連続的に回動させる制御手段とを備える制御装置を設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の端部に昇降アクチュエ−タ(17)により上下に回動する昇降リンク(14)を設け、該昇降リンク(14)の先端部に作業機(3)を着脱可能な着脱ヒッチ(16)を設けた走行車体において、昇降リンク(14)が配置される機体の端部近傍に昇降リンク(14)を上方へ回動させるための上昇スイッチ(90)と前記昇降リンク(14)を下方へ回動させるための下降スイッチ(91)とを設け、該上昇スイッチ(90)又は下降スイッチ(91)を操作する毎に昇降リンク(14)を所定量づつ回動させる制御手段と、上昇スイッチ(90)又は下降スイッチ(91)を操作している間だけ昇降リンク(14)を連続的に回動させる制御手段とを備える制御装置を設けた走行車体。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば農作業機や建設機械等の走行車体の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
農作業機の走行車体において、機体の端部(後部)に昇降アクチュエ−タ(油圧シリンダ)により上下に回動する昇降リンクを設け、該昇降リンクの先端部に作業機を着脱可能に設け、座席の近傍に昇降リンクを上下方向へ回動させるための昇降スイッチとポジション操作レバ−とを設け、前記昇降スイッチをONに操作すると昇降リンクを上昇側の設定高さまで回動させ、昇降スイッチをOFFに操作すると昇降リンクを下降側の設定高さまで回動させる制御装置を設けると共に、前記ポジション操作レバ−の操作により昇降リンクを任意の高さに回動できる構成としたものがある(特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開平5−49306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の昇降スイッチは、その操作により昇降リンクを上昇側又は下降側の設定高さまで回動させるものであるから、昇降リンクの先端部に作業機を着脱する際に昇降リンクを任意の高さに回動させて作業機との上下位置関係を調整することができず、作業機の着脱作業において使用すると昇降リンクが大きく回動して危険であり使用することができない。また、上記のポジション操作レバ−は、その操作により昇降リンクの高さを設定して該昇降リンクを設定高さまで回動させるものであるから、その操作ストロ−クと昇降リンクの回動量との関係から昇降リンクを微小量だけ回動させることが困難であり、作業機の着脱作業において昇降リンクを所望の高さに回動させることが困難である。更に、これらの昇降スイッチ及びポジション操作レバ−は、作業機の着脱部から離れた座席の近傍に設けられているので、その操作をする作業者が昇降リンクと作業機との位置関係を認識しにくく、作業機の着脱作業において昇降リンクを所望の高さに回動させることが困難であるばかりでなく、作業機の着脱が不完全であることを判断しにくいため、着脱作業時に作業機を脱落させてしまう等の危険を招くおそれがある。
【0004】
そこで、作業機の着脱作業を容易に且つ安全に行えるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、上記課題を解決すべく次のような技術的手段を講じた。
すなわち、請求項1に係る発明は、機体の端部に昇降アクチュエ−タ17により上下に回動する昇降リンク14を設け、該昇降リンク14の先端部に作業機3を着脱可能な着脱ヒッチ16を設けた走行車体において、昇降リンク14が配置される機体の端部近傍に昇降リンク14を上方へ回動させるための上昇スイッチ90と前記昇降リンク14を下方へ回動させるための下降スイッチ91とを設け、該上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させる制御手段と、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作している間だけ昇降リンク14を連続的に回動させる制御手段とを備える制御装置を設けた走行車体とした。
【0006】
従って、この走行車体は、昇降リンク14の先端部に設けた着脱ヒッチ16を介して作業機3を装着し、必要に応じて昇降アクチュエ−タ17の駆動で昇降リンク14を上下に回動させて作業機3を昇降させることにより、走行しながら作業を行うことができ、着脱ヒッチ16を介して装着される作業機の種類を換えることにより、各種作業を行うことができる。そして、作業機3の着脱時には、作業者が昇降リンク14ひいては着脱ヒッチ16の近傍で上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作することにより、昇降リンク14と作業機3との位置関係を容易に認識できるため、昇降リンク14を所望の高さに容易に回動させることができると共に、作業機3の着脱状態を確実に判断できて安全に作業機の着脱作業が行える。更に、前記着脱作業において昇降リンク14を微小量だけ回動させたいときは、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させることにより、昇降リンク14を所望の高さに容易に回動させることができる。しかも、前記着脱作業において昇降リンク14を大きく回動させる必要があるときは、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91の操作により昇降リンク14を連続的に回動させることもできるため、すみやかに昇降リンク14を所望の高さに回動させることができて着脱作業の作業性が向上し、このとき走行車体や作業機3等が移動する等の不慮により作業者が上昇スイッチ90又は下降スイッチ91から離れても、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91が操作されない限り昇降リンク14が回動しないので安全である。また、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91のように単純な操作具により昇降リンク14を回動させる構成としたため、着脱作業における昇降リンク14の回動中、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を見ないで回動する昇降リンク14、着脱ヒッチ16並びに作業機3を集中的に見ながら作業することができ、作業機3を脱落させてしまう等の不慮の事故を未然に防止できて安全に作業が行える。
【発明の効果】
【0007】
よって、この走行車体は、作業機の着脱作業を容易に且つ安全に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1及び図2は湛水直播機1を示すものであり、この湛水直播機1は走行車体2の後部に播種機3を装着して構成されている。前記播種機3は、種子タンク4、繰出装置5、移送管6、播種用作溝器7、その他、起風翼車8やエアチャンバ9等の付属装置から構成され、圃場に筋状に同時に8条分の播種を行うようになっている。
【0009】
そして、走行車体2は、操舵用の前輪10と推進用の後輪11とを設け、中央のエンジンル−ム12上に操縦座席13、該操縦座席13の前側に前輪10を操舵するためのステアリングハンドル55を設けている。前記エンジンル−ム12内の略中央に配置されたエンジン56の動力がエンジン出力ベルト57を介して中継軸58へ伝動され、該中継軸58の回転により油圧ポンプ59が駆動する。そして、中継軸58からベルト式の変速装置である主変速装置60を介してミッションケース61内へ伝動され、該ミッションケース61内の伝動ギヤの切替により路上走行速、作業速、中立及び後進速の4段階に走行速度を切り替えできる副変速装置(図示せず)を介して前輪10及び後輪11へ伝動され、水田の耕盤上を走行できる構成としている。また、ミッションケース61からの動力が後方へ延びる第一伝動軸63を介して後述する播種機3の繰出装置5の駆動を入切する繰出クラッチを内蔵する繰出クラッチケース62内へ伝動され、該繰出クラッチケース62のPTO軸から着脱可能な連結伝動軸64を介して播種機3へ伝動される構成となっている。尚、エンジン56の回転数を検出するエンジン回転数センサ56aの信号が操縦座席13の右側に設けた制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。また、ステアリングハンドル55の右側の側方には前記主変速装置60を操作するための主変速レバー66、ステアリングハンドル55の左側の側方には前記副変速装置を操作するための副変速レバー67を設けており、該副変速レバー67の操作位置を検出する副変速レバーセンサ67aの信号が制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。また、ミッションケース61の後方となる走行車体2の前後左右略中央位置には走行車体2の前後及び左右方向の傾斜を検出する傾斜センサ68を設け、該傾斜センサ68の信号が前記制御部65aへ入力される。
【0010】
昇降リンク14は、左右一対の上側リンク14aと下側リンク14bとからなり、前部が前記走行車体2の後部機枠15に枢着連結し、後部に連結用のヒッチ16を取り付け、車体2側の油圧シリンダ17によって昇降する構成としている。前記油圧シリンダ17は、単動式の油圧シリンダであり、前記油圧ポンプ59からの油圧が車体2側に設けた電磁油圧バルブ69による油路の切替で供給されて昇降リンク14を上方に回動させる。また、電磁油圧バルブ69による油路の切替で油圧シリンダ17内の油圧が油圧タンクを兼用する前記ミッションケース61へ戻されると、昇降リンク14が下方に回動する。
【0011】
前記ヒッチ16には上方へ開放する上係止溝70及び後方へ開放する下係止溝71を上下に設けており、前記上係止溝70に播種機3側の取付枠72の上部に設けた上部軸73
を係合させ、そのまま昇降リンク14を上方に回動させることにより播種機3の自重で取付枠72を前記上部軸73回りに前側へ回動させて前記下係止溝71に取付枠72の下部に設けた下部軸74を係合させ、ヒッチ16に播種機3を取り付けて支持する構成となっている。尚、前記下係止溝71に前記下部軸74が係合すると、該下部軸74が下係止溝71から外れないように固定する固定具75を設けている。この固定具75は、ヒッチ16に設けた左右方向の軸回りに回動自在なボス76に挿通され、ボス76に対して摺動するのを規制する規制溝77を上下に備えている。ボス76に設けたスプリング78に付勢されたスチールボール79が前記該規制溝77に係合し、下側の規制溝77がスチールボール79に係合して固定具75が上側に大きく突出するとき下部軸74が下係止溝71に対して係脱可能な固定解除状態となり、下側の規制溝77がスチールボール79に係合して固定具75が下側に押し込まれるとき下部軸74が下係止溝71に固定される固定状態となる。尚、前記固定状態のとき、ヒッチ16の下端部に設けた穴80に固定具75の下端部が挿入され、ボス75が回動せず固定具75がヒッチ16に対して回動しないようになる。尚、固定具75の上端部には昇降リンク14より右側にまで突出する把持部75a設けており、該把持部75aにより昇降リンク14の右側で固定具75の操作が行える。また、ヒッチ16の下部には下係止溝71に係合された下部軸74を検出する下部軸センサ82、ヒッチ16の下端部には前記穴80に挿入された固定具75を検出する固定具センサ81を設け、該下部軸センサ82及び固定具センサ81が共にオンのときヒッチ16に取付枠72ひいては播種機3が装着されたと判断するようになっている。従って、下部軸センサ82及び固定具センサ81により、作業機の着脱を検出する作業機着脱センサ83が構成されている。この作業機着脱センサ83の信号が制御ボックス65内の制御部65aへ入力される。尚、このヒッチ16により、苗移植機や除草機や薬剤散布機等、播種機3以外の他の作業機に交換して走行車体2に装着することもできる。
【0012】
ところで、操縦座席13の右側に設けた播種昇降レバ−18を操作すると、播種昇降レバ−センサ18aからの入力により制御ボックス65内の制御部65aを介して電磁油圧バルブ69へ出力され、油圧シリンダ17の作動により昇降リンク14を回動させて走行車体2に対して播種機3を昇降させるようになっている。また、前記播種昇降レバ−18により播種機3を下降させると、播種機3の下部に設けたフロ−ト19が圃場面に接地したことを該フロ−ト19の前後傾斜角を検出するフロートセンサ84で検出し、該フロートセンサ84の検出値が所定値となるよう電磁油圧バルブ69が制御されて播種機3の対地高さが維持される構成となっている。尚、操縦座席13の左側に設けた感度設定レバー85の操作により、前記フロートセンサ84の制御目標を変更して圃場の硬軟に応じて播種機3の昇降制御における制御感度を変更できる構成となっている。そして、圃場の畦際での旋回時には、前記播種昇降レバ−18の操作により播種機3を上昇させて機体を旋回させるようになっている。また、播種昇降レバ−18の操作により、繰出クラッチケース62内の繰出クラッチを操作して後述する播種機3の繰出装置5の駆動を入切できる構成となっている。
【0013】
つぎに、播種機の構成を、図面に基づいて具体的に述べる。
まず、繰出装置5は、図5及び図6に示すように、外周に多数の種子溝21を形成した繰り出しロ−ル22を種子タンク4の下側に臨ませて伝動可能に軸架して設け、その下方には種子を搬送する移送管6の始端部を臨ませて設けた構成としている。なお、種子溝21は、図5に示すように、側部の調節具23を回転調節輪24の回転調節操作によって軸に沿わせて左右に摺動し、種子の貯留容積を大小調節できる構成としている。25は繰出駆動の入力ギヤである。
【0014】
そして、ブラシ26は、前記した繰り出しロ−ル22の表面に接触して均す働きをして、種子溝21の種子量を均一にするために設けている。
種子タンク4は、走行車体2の後部に連結した取付枠72に設けられ、播種機3の構成部材の一つとして搭載している。尚、前記種子タンク4の前側には籾を入れた籾袋を載置するための載置台27を設けており、作業者が該載置台27に前記籾袋を載せた状態で籾袋内の籾を種子タンク4内へ供給することができ、種子タンク4ヘの種子(籾)の供給作
業を容易に行える。尚、前記載置台27は、エアチャンバ9から支持フレ−ム28を介して支持されている。また、前記載置台27は、種子タンク4の上端よりも上側に設けられているので、上側から種子タンク4へ種子を容易に供給できる。
【0015】
つぎに、エアチャンバ9は、図4乃至図6に示すように、円筒形状で前記繰出装置5の下側の後に横向きに配置して設け、一端に電動の起風翼車8を連結し、他端を蓋で密封して起風された空気を貯留できる構成としている。そして、移送管6は、その搬送始端部を開口して前記エアチャンバ9に連通して設け、高圧状態で貯留した空気(送風)が送り込まれ、前述のように上方から供給されてくる所定量の種子を空気搬送するように構成している。
【0016】
このようにして、移送管6は、その始端部をエアチャンバ9に連通し、終端部側を圃場面に近い側に向けて延長し、播種位置に設けている播種用作溝器7の上部の種子供給口に向けて設けられている。そして、播種用作溝器7は、接地面に設けて表土を均しながら滑走する接地体であるフロ−ト19に取り付け、前進に伴って整地された圃場面に噴出、播種する構成としている。尚、前記移送管6は中途部で2経路に分岐した構成となっており、1個の繰出装置5から2条分の播種を行うようになっている。
【0017】
そして、覆土板29は、図7に示すように、前述した播種用作溝器7を設けている播種条の後方にそれぞれ配置して設け、圃場面の硬軟を検出する硬軟センサ86から連動ワイヤ−31及び連杆30を介して角度を変更できる構成となっており、圃場の硬軟に拘らず圃場の播種位置において適正量の覆土が行える構成となっている。尚、前記硬軟センサ86は、土壌に突入する回転部86aが上下することにより圃場の硬軟を検出する構成となっている。
【0018】
また、複数個設けたフロ−ト19の間には排水用の作溝器33を設けており、この排水用の作溝器33は前上方の左右方向の機枠34に左右方向の回動軸35a回りに回動自在に設けたアーム35の回動先端部に固着して設けている。前記排水用の作溝器33は、走行車体2の前進に伴って圃場面に排水溝を形成するように構成している。この排水用の作溝器33により、播種作業と同時に播種条の側方に沿わせて排水溝を形成することができ、播種後の圃場において迅速に排水(落水)や湛水を行うことができる。従来、湛水直播による水稲の栽培は、播種後そのまま水を溜めて発芽、育苗するのが慣行であり、湛水の保温効果によって寒さに弱い幼苗を寒さから護り健苗として育苗することができると知られていたが、近年、播種後落水して土壌を酸化状態におく方が出芽、育苗により効果的であることが発表されている。試験結果によると、播種後の土壌は、亀裂が入るくらい強く乾かした方が、成育後の倒伏防止や、鳥害を少なくすることに役立つと発表されている。尚、前記排水用作溝器33は、図6に示すように、後輪11の通過した車輪跡を追うように進行して排水溝を形成する関係位置に構成している。尚、前記排水用作溝器33と前記後輪11との間には、幾分か後輪11の車輪跡を均すレーキ36を設けている。
【0019】
前記排水用作溝器33は、背面視V字型に折り曲げられたプレートにより構成され、該排水用作溝器33や前記アーム35の自重及び後述する作溝器押圧スプリング87により該アーム35が下側に回動して下端が圃場の土壌内に沈下して突入し、その状態で機体を進行させることにより、土壌を左右に押しのけながら作溝していく構成となっている。尚、排水用作溝器33は、下端部が後側へいくほど圃場面に対して下位となるように取り付けられている。
【0020】
そして、感度設定レバー85と左右の前記排水用作溝器33のアーム35とをワイヤ38及び作溝器押圧スプリング87を介して連繋している。従って、感度設定レバー85による播種部3の昇降制御における制御感度に連動して、圃場内の土壌が硬いときには、前記作溝器押圧スプリング87の付勢力が強くなって排水用作溝器33の土壌への押し付け力が強くなる。逆に、圃場内の土壌が軟かいときには、前記作溝器押圧スプリング87の付勢力が弱くなって排水用作溝器33の土壌への押し付け力が弱くなる。これにより、圃場内の土壌の硬軟に連動して排水用作溝器33の土壌への押し付け力を変更する機構を備えているので、圃場内の土壌の硬軟に拘らず排水用作溝器33により所定深さに作溝することができる。従来は、排水用作溝器の押し付け力が一定であったので、土壌が硬い圃場では排水用作溝器の作溝深さが浅くなり、土壌が軟かい圃場では排水用作溝器が土壌内に深く入り過ぎて溝が崩れてしまうおそれがある。尚、上述では感度設定レバー85の操作に連動して排水用作溝器33の押し付け力を変更する構成としたが、前記硬軟センサ86の検出に連動して排水用作溝器33の押し付け力を変更する構成としてもよい。また、主変速レバー66等と連繋することにより走行速度に連動して排水用作溝器33の押し付け力を変更し、走行速度が速いときには排水用作溝器33の押し付け力を強くし、逆に走行速度が遅いときには排水用作溝器33の押し付け力を弱くする構成としてもよい。これにより、走行速度が速いときに排水用作溝器33が浮き上がり気味になるのを防止でき、走行速度に拘らず排水用作溝器33により所定深さに作溝することができる。
【0021】
また、アーム35を上側へ起立するように回動させることにより、排水用作溝器33を対地浮上させると共にフロ−ト19の後端より前側に収納することができる。これにより、路上走行時、機体をトラック等へ積載しての運搬時あるいは機体の格納等、排水用作溝器33が機体の後側に突出しないため、機体のコンパクト化が図れると共に、衝突による排水用作溝器33ひいてはア−ム35の回動軸35a等を含めた各部の破損を抑えることができる。尚、排水性の良い水田で播種作業を行うときや畦際で機体を旋回させるときには、排水用作溝器33が対地浮上するようアーム35を上側へ回動させて排水溝を作らないようにし、排水溝の作溝により押しのけられた土壌や発生する水流が栽培に悪影響を与えるのを防止するようにしてもよい。特に、畦際での機体の旋回時に連動して排水用作溝器33を収納する構成とすれば、排水用作溝器33を畦に衝突させるようなことを防止できる。尚、図1及び図2に示すように、走行車体2の前端の取付軸88に、ア−ム35が起立姿勢となるように該ア−ム35と共に排水用作溝器33を取り付けて収納することができる。これにより、ア−ム35及び排水用作溝器33がウエイト代わりになって、後部に播種機3が装着される機体の前後重量バランスが向上する。
【0022】
尚、左右方向の機枠34から後側に延びるステ−39の後端部には、排水用作溝器33の下側への移動を規制するストッパ40を設けている。これにより、排水用作溝器33が必要以上に下動しないため、該排水用作溝器33、ア−ム35の回動軸35a等を含めた各部の破損を抑えることができる。そして、前記ストッパ40で規制される排水用作溝器33の下限位置で、該排水用作溝器33の前端(前下端)がフロ−ト19後部の上面より上側に位置するので、フロ−ト19の上面を流れる泥流が排水用作溝器33の上側を通過しないようにして排水用作溝器33で作った溝を前記泥流で埋め戻さないようにできる。尚、排水用作溝器33と播種用作溝器7とは、前記播種用作溝器7が通過した後に、播種条の側方に沿わせて略平行に排水溝を形成する関係位置に配置して構成すればよい。
【0023】
尚、この湛水直播機1には施肥機45を設けており、該施肥機45は走行車体2の後部に設けた肥料タンク46並びに繰出装置47と肥料移送管48とフロ−ト19に取り付けた施肥用作溝器49と電動の起風翼車50とエアチャンバ51とを播種機と同様に備えている。前記施肥機45は、圃場への播種の側方に施肥する構成となっており、播種機3と同様に圃場に筋状に同時に8条分の施肥を行うようになっている。
【0024】
従って、図7に示すように、フロ−ト19には播種用作溝器7と施肥用作溝器49とが互いに近い位置に設けられ、播種用作溝器7より前側に施肥用作溝器49が配置されている。そして、これらの作溝器7,49は、下方から後方にかけて種子又は肥料の吐出口が設けられている。よって、種子の移送管6と播種用作溝器7との間に隙間sがあるため、前側にある施肥用作溝器49から後方に噴き出る圧力風ひいては該圧力風で吹き飛ばされる泥水が前記隙間sに作用し、種子の移送管6から播種用作溝器7へ適正に種子が供給されなかったり、場合によっては播種用作溝器7に前記泥水が入って種子が播種用作溝器7内で詰まりやすくなったりして、播種精度が低下するおそれがある。特に、施肥用作溝器49からの粉粒体の吐出量が播種用作溝器7からの粉粒体の吐出量より多い上、肥料移送管48の方が種子の移送管6より前後に長いため、肥料移送管48へ強い圧力風が供給されるように設定しているので、施肥用作溝器49から噴き出る圧力風は極めて強く、上記の播種精度の低下を誘引しやすい。そこで、図9に示すように、両作溝器7,49間で前記隙間の高さ位置にわたる遮蔽板89を設けてもよい。これにより、施肥用作溝器49か
ら噴き出る圧力風ひいては該圧力風で吹き飛ばされる泥水が前記隙間sに作用するのを防止でき、播種精度を良好に維持できる。また、前記遮蔽板89を播種用作溝器7からより施肥用作溝器49に近い位置(施肥用作溝器49寄り)に配置することにより、施肥用作溝器49から噴き出る圧力風ひいては該圧力風で吹き飛ばされる泥水を遮蔽板89で確実に阻止でき、更なる播種精度の向上を図ることができる。また、図10に示すように、施肥用作溝器49より前側に播種用作溝器7を配置した構成としてもよい。これにより、施肥用作溝器49から噴き出る圧力風ひいては該圧力風で吹き飛ばされる泥水が前記隙間sに作用せず、播種精度を良好に維持できる。
【0025】
このように構成した播種機3を、整地作業が終わって湛水状態にした圃場に入れて肥料タンク46に肥料を充填し、種子タンク4には種子を充填して前進させて播種作業を開始する。すると、種子タンク4内の種子は、図5に示すように、下方の回転している繰り出しロ−ル22に達し、繰り出しロ−ル22の外周の種子溝21にそれぞれ供給されて溜り回転方向に送られる。そのとき、種子溝21内の種子は、回転下手側にあるブラシ26に達して表面が均平に均されて定量となり、繰り出しロ−ル22の回転に伴って下方の移送管6の搬送始端部に落下する。そのとき、エアチャンバ9は、起風翼車8によって起風された圧縮空気が貯留されており、連通している各移送管6に流入することになる。
【0026】
このようにして、種子は、エアチャンバ9から吹き込まれてくる圧風によって移送管6内を空気搬送されて先端側の播種用作溝器7に達し、フロ−ト19によって整地された後の圃場に噴出、播種される。そして、覆土板29は、表土を掻き寄せ、種子が播かれている播種溝の上に覆土を行い、播種作業を完了する。
【0027】
このようにして、播種機3は、走行車体2の前進に伴って湛水した圃場面に播種作業を行なうが、同時に、機枠34に取り付けられている排水用作溝器33が、播種用作溝器7によって播種される播種条の側方に沿って略平行状に排水溝を作溝しながら前進している。この場合、排水用作溝器33は、後輪11の通過した跡上を前進しながら排水溝を作溝していくから比較的土壌抵抗が小さく、少ない消費馬力によって作溝することができる。この排水用作溝器33によって作溝した排水溝は、一端部を圃場における水の取入れ口に、他端部を圃場の排水口にそれぞれ鍬等で溝切りをして水が流れ易いように接続し、入水、排水が容易にできるように事後処理を行なうことが肝要である。一般的に、水田は土壌表面を充分均平に均すことが最低の必要条件であるが、これにより水田へ排水、入水を迅速に行うことができる。
【0028】
施肥機45の肥料タンク46の左右方向の側端部(右後端部)には、昇降リンク14を上方へ回動させるための上昇スイッチ90と前記昇降リンク14を下方へ回動させるための下降スイッチ91とを備えるスイッチボックス92を設けている。この上昇スイッチ90及び下降スイッチ91は、押しボタン式のスイッチであり、機体の右側に向けて設けられ、昇降リンク14ひいてはヒッチ16が配置される走行車体2の端部(後端部)近傍に配置される。上昇スイッチ90を押し操作すると、該上昇スイッチ90からの信号が制御ボックス65内の制御部65aに入力され、該制御部65aから昇降リンク14を上方へ回動させるべく電磁油圧バルブ69へ出力される。同様に、下降スイッチ91を押し操作すると、該下降スイッチ91からの信号が前記制御部65aに入力され、該制御部65aから昇降リンク14を下方へ回動させるべく電磁油圧バルブ69へ出力される。尚、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91の押し操作が所定時間(1秒)以内であれば、その押し操作時間に拘らず昇降リンク14を所定の若干量だけ回動させる構成となっている。また、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91の押し操作が所定時間(1秒)を超過すれば、その押し操作している間だけ電磁油圧バルブ69を切り替えて昇降リンク14を連続的に回動させる構成となっている。
【0029】
以上により、走行車体2は、後端部に昇降アクチュエ−タとなる油圧シリンダ17により上下に回動する昇降リンク14を設け、該昇降リンク14の先端部(後端部)に作業機3を着脱可能な着脱ヒッチ16を設け、昇降リンク14が配置される後端部近傍に昇降リンク14を上方へ回動させるための上昇スイッチ90と前記昇降リンク14を下方へ回動させるための下降スイッチ91とを設け、該上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操
作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させる制御手段と、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作している間だけ昇降リンク14を連続的に回動させる制御手段とを備える制御装置を設けている。
【0030】
従って、昇降リンク14の先端部に設けた着脱ヒッチ16を介して作業機3を装着し、必要に応じて油圧シリンダ17の駆動で昇降リンク14を上下に回動させて作業機3を昇降させることにより、走行しながら作業を行うことができ、着脱ヒッチ16を介して装着される作業機の種類を換えることにより、各種作業を行うことができる。そして、作業機3の着脱時には、作業者が昇降リンク14ひいては着脱ヒッチ16の近傍で上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を操作することにより、昇降リンク14ひいてはヒッチ16と作業機3ひいては取付枠72との位置関係を機体の側方(右側)から容易に視認できるため、昇降リンク14を所望の高さに容易に回動させることができると共に、作業機3の着脱状態を確実に判断できて安全に作業機3の着脱作業が行える。更に、前記着脱作業において昇降リンク14を微小量だけ回動させたいときは、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作する毎に昇降リンク14を所定量づつ回動させることにより、昇降リンク14を所望の高さに容易に回動させることができる。しかも、昇降リンク14と作業機3との位置関係が大きく異なり前記着脱作業において昇降リンク14を大きく回動させる必要があるときは、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91の操作により昇降リンク14を連続的に回動させることもできるため、すみやかに昇降リンク14を作業機3の高さに回動させることができて着脱作業の作業性が向上し、このときヒッチ16と取付枠72との連結が不完全で走行車体2や作業機3等が移動する等の不慮により、危険を回避するべく作業者が上昇スイッチ90又は下降スイッチ91から離れても、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91が操作されない限り昇降リンク14が回動しないので安全である。また、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91のように単純な押しボタン式の操作具により昇降リンク14を回動させる構成としたため、着脱作業における昇降リンク14の回動中、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を見ないで回動する昇降リンク14、着脱ヒッチ16、取付枠72並びに作業機3を集中的に見ながら作業することができ、作業機3を脱落させてしまう等の不慮の事故を未然に防止できて安全に作業が行える。
【0031】
また、昇降リンク14の右側には、播種機3側の電装品(電動の起風翼車8等)への電気配線のコネクタ94、連結伝動軸64及び固定具75の把持部75aを配置している。従って、前記電気配線のコネクタ94、連結伝動軸64及び固定具75の把持部75aが上昇スイッチ90及び下降スイッチ91と機体の左右方向で同じ側(右側)に配置されているので、作業機3を着脱する際に作業者が機体の左右一方(右側)から電気配線のコネクタ94並びに連結伝動軸64の着脱並びに固定具75の固定/解除操作及び昇降リンク14の回動操作が行え、作業機3の着脱作業が容易になる。尚、走行車体2から播種機3側へ接続される操作ワイヤがあるときは、該操作ワイヤを昇降リンク14近くで分割可能に設けると共に上述と同様に昇降リンク14の右側に配索すれば、作業機3の着脱作業が容易になる。更に、昇降リンク14の左側すなわち上昇スイッチ90及び下降スイッチ91と機体の左右方向で反対側(左側)にエンジン56の排気を行うマフラー95を配置しており、前記機体の左右一方(右側)で作業を行う作業者がマフラー95からの排気を吸ったり該作業者にマフラー95からの熱が伝わったりすることが抑えられ、安全に且つ快適に着脱作業が行える。
【0032】
尚、上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作したときは、電磁油圧バルブ69がパルス制御されるようにする等して播種昇降レバー18を操作したときよりも遅い速度で昇降リンク14が回動あるいは作業機3が昇降作動するように構成できる。これにより、作業機3の着脱作業を容易に行えると共に、不慮の事故を未然に防止できて安全に作業が行える。尚、前記電気配線のコネクタ94を外した状態で上昇スイッチ90又は下降スイッチ91を操作したときに作業機3の着脱作業中と判断して、遅い速度で昇降リンク14が回動あるいは作業機3が昇降作動するようにしてもよい。また、作業機着脱センサ83により作業機3が完全に装着されたことを検出すると、制御部65aを介してブザ−96(告知装置)を作動させる構成とすることができる。これにより、作業者が作業機3の装着状態を容易に認識でき、着脱作業の安全性が向上する。
【0033】
また、走行車体2の制御装置には、傾斜センサ68により機体が傾斜していることを検出するか、副変速レバーセンサ67aにより副変速レバー67を中立以外の走行可能な位置に操作していることを検出するか、前記電気配線のコネクタ94が接続されていることを制御部65aが判断するか、エンジン回転数センサ56aによりエンジン56(原動機)が駆動していることを検出するか、又は播種昇降レバーセンサ18aにより播種昇降レバー18を播種機3を駆動する位置あるいは播種機3を昇降作動させる位置に操作していることを検出すると、上昇スイッチ90及び下降スイッチ91を操作しても電磁油圧バルブ69への出力を禁止し、昇降リンク14が回動するのを牽制する牽制手段を備えている。これにより、走行車体2が移動したり着脱する連結伝動軸64が駆動したり作業機3が不意に昇降したりするおそれのあるとき、作業機3の着脱作業を牽制でき、作業者が作業機3を含む機体や駆動する連結伝動軸64に巻き込まれるようなことを防止でき、危険を回避できる。また、電気配線のコネクタ94が接続されたままで作業機3の着脱作業をすることによる電気配線の損傷を防止できる。
【0034】
また、ヒッチ16側に識別用センサ97、取付枠72側にバ−コ−ド等の識別要素を設け、該識別要素を前記識別用センサ97が検出することにより作業機の種類を判別できるように構成している。これにより、各種作業機に対応して作業機側のセンサからの情報を自動的に補正して制御に利用でき、作業機の着脱でわざわざ各センサの初期設定値を作業者が設定し直す必要がない。尚、前記センサの例としては、作業機3の昇降制御に使用するフロ−トセンサ84の他、ロ−リングシリンダ98による作業機3の左右ロ−リング制御に使用するべく作業機の左右傾斜角度を検出する作業機左右傾斜角センサ99等が考えられる。尚、異なる作業機で同種のセンサを使用している場合でも、各々の作業機が備えるセンサ自体の個体差があるため、上述の構成は有用である。尚、装着された作業機においてセンサの初期設定がなされていない場合は、ブザ−96(告知装置)を作動させて作業者に告知する構成とすればよい。尚、識別要素としてバ−コ−ドを使用すれば多数の作業機に対応させることができ、走行車体2の汎用性が高まる。
【0035】
ところで、この発明の実施の形態における直播機1は走行車体2の後側に着脱可能な播種機3を設け該播種機3の前側で走行車体2の後部に施肥機45を設けた構成としたが、施肥機を走行車体2の後側に着脱可能に設け該施肥機の前側で走行車体2の後部に播種機を設けた構成とし、播種機と施肥機との配置を入れ替えた構成としてもよい。このとき、粉粒体の吐出量(繰出量)の多い施肥機の肥料移送管の方が播種機の種子移送管より前後方向で短くなって鉛直方向に近くなるため、肥料移送管内で吐出量(繰出量)の多い肥料が詰まりにくくなり、作業性を向上させることができる。
【0036】
尚、この発明の実施の形態は圃場に筋状に施肥及び播種を行う条播機1について記述したが、圃場の所定間隔おきに粉粒体を吐出して間歇的に施肥又は播種を行う点播機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】湛水直播機を示す側面図
【図2】湛水直播機を示す平面図
【図3】(a)スチ−ルボ−ル及び規制溝を示す断面図、(b)上下の規制溝を示す図、(c)取付枠の一部を示す斜視図、(d)ヒッチと取付枠とが連結された状態を示す側面図
【図4】播種機の一部を示す背面図
【図5】種子タンク及び繰出装置を示す断面側面図
【図6】繰出装置を示す断面背面図
【図7】播種部の下部を判りやすく示す平面図
【図8】排水用作溝器を示す側面図
【図9】フロ−ト及びその周辺を示す背面図
【図10】フロ−ト及びその周辺を示す平面図
【図11】ブロック図
【符号の説明】
【0038】
2…走行車体、3…播種機(作業機)、14…昇降リンク、16…着脱ヒッチ、17…油圧シリンダ(昇降アクチュエ−タ)、65a…制御部、90…上昇スイッチ、91…下
降スイッチ
【出願人】 【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
【住所又は居所】愛媛県松山市馬木町700番地
【出願日】 平成16年12月24日(2004.12.24)
【代理人】
【公開番号】 特開2006−174794(P2006−174794A)
【公開日】 平成18年7月6日(2006.7.6)
【出願番号】 特願2004−373675(P2004−373675)