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【発明の名称】 フロントロータリ式作業機
【発明者】 【氏名】大窪 晋
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】太田 能司
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】永岡 政俊
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【氏名】佐藤 貴之
【住所又は居所】埼玉県和光市中央1丁目4番1号 株式会社本田技術研究所内

【要約】 【課題】大重量の動力源を搭載した場合でも、ロータリ作業部に掛かる重量を適切にでき、耕耘の良好な仕上がり性を確保できること。

【解決手段】フロントロータリ式作業機10は、動力源11の下方にトランスミッションケース12を配置し、このトランスミッションケースに前部の作業駆動軸13、カウンタ軸43、中間部の動力伝達軸42並びに後部の走行駆動軸14を前からこの順に互いに平行に配列して一括収納し、作業駆動軸にロータリ作業部15を設け、走行駆動軸に走行輪16を設けた耕耘機である。動力源の動力を動力伝達軸からカウンタ軸を介して、回転方向を正転並びに逆転に転換しつつ作業駆動軸へ伝達する。動力源の動力を動力伝達軸から走行駆動軸へ伝達して走行輪を駆動する。カウンタ軸は、動力伝達軸と作業駆動軸とを通る直線Si1よりも上位にある。トランスミッションケースは、ケース下面12aのうち、カウンタ軸と作業駆動軸との間に凹部12bを設けた。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力源の下方にトランスミッションケースを配置し、このトランスミッションケースに前部の作業駆動軸、カウンタ軸、中間部の動力伝達軸並びに後部の走行駆動軸を前からこの順に互いに平行に配列して一括収納し、前記作業駆動軸にロータリ作業部を設け、前記走行駆動軸に走行輪を設けることで、動力源の動力を動力伝達軸からカウンタ軸を介して、回転方向を正転並びに逆転に転換しつつ作業駆動軸へ伝達し、一方、動力源の動力を動力伝達軸から走行駆動軸へ伝達して走行輪を駆動するようにしたフロントロータリ式作業機であって、前記カウンタ軸は、前記動力伝達軸と前記作業駆動軸とを通る直線よりも上位に配置したことを特徴とするフロントロータリ式作業機。
【請求項2】
前記トランスミッションケースは、ケース下面のうち、前記カウンタ軸と前記作業駆動軸との間に凹部を設けたことを特徴とする請求項1記載のフロントロータリ式作業機。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、動力源の下部にトランスミッションケースを設け、このトランスミッションケースに前部のロータリ作業部及び後部の走行輪を設けたフロントロータリ式作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、走行輪を備えた機体の前方に耕耘爪を配置するようにした、フロントロータリ式作業機の開発が進められている。フロントロータリ式作業機は耕耘爪を機体の前方に備えるので、枕地での耕耘が容易であるとともに作業者の作業目線が前になるので作業性が良く、注目されている。なお、「枕地」とは、圃場の作業を、例えば一辺に平行に往復して行う場合、その両端での旋回などで一時作業を中断するためにできる、部分的な一種の空地のことである。
このようなフロントロータリ式作業機は各種知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2001−186801公報(図1)
【0003】
特許文献1に示す従来のフロントロータリ式作業機を、次の図6に基づいて説明する。
図6は従来のフロントロータリ式作業機(第1従来技術)の概要図である。図6に示す第1従来技術のフロントロータリ式作業機200は、エンジン201の下方にトランスミッションケース202を配置し、このトランスミッションケース202に前部の作業駆動軸203、中間部の動力伝達軸204並びに後部の走行駆動軸205を収納し、さらにトランスミッションケース202の後部から後上方にハンドル206を延ばした歩行型耕耘機である。エンジン201の動力を、動力伝達軸204から作業駆動軸203を介してロータリ作業部207へ伝達するとともに、動力伝達軸204から走行駆動軸205を介して走行輪208へ伝達することができる。なお、ロータリ作業部207は複数の耕耘爪209・・・からなる。
【0004】
エンジン201の中心から作業駆動軸203までの水平距離L21は、エンジン201の中心から走行駆動軸205までの水平距離L22よりも大きい。
ところで、このようなフロントロータリ式作業機200には、複数の耕耘爪209・・・のうち一部だけを正転させるとともに残りを逆転させるようにした機種がある。このような従来のフロントロータリ式作業機を、次の図7に基づいて説明する。
【0005】
図7は従来のフロントロータリ式作業機(第2従来技術)の概要図である。図7に示す第2従来技術のフロントロータリ式作業機300は、エンジン301の下方にトランスミッションケース302を配置し、このトランスミッションケース302に前部の作業駆動軸303、カウンタ軸304、中間部の動力伝達軸305並びに後部の走行駆動軸306を収納した歩行型耕耘機である。
【0006】
エンジン301の動力を動力伝達軸305からカウンタ軸304を介して、回転方向を正転並びに逆転に転換しつつ作業駆動軸303へ伝達することで、ロータリ作業部307を駆動することができる。また、エンジン301の動力を動力伝達軸305から走行駆動軸306へ伝達し、走行輪308を駆動することができる。なお、ロータリ作業部307は正転する複数の正転爪及び逆転する複数の逆転爪からなる。
311は、動力伝達軸305からカウンタ軸304へ動力を伝達する第1チェーン伝動機構である。312は、カウンタ軸304から作業駆動軸303へ動力を伝達する第2チェーン伝動機構である。
【0007】
動力伝達軸305に対して、作業駆動軸303は前下方にある。カウンタ軸304は、作業駆動軸303と動力伝達軸305とを通る直線Si2上に配置している。このようなことから、トランスミッションケース302は、作業駆動軸303から前下方へ延びる、前下がりの構成である。
動力伝達軸305から作業駆動軸303までの水平距離L31は、動力伝達軸305から走行駆動軸306までの距離L32よりも大きい。なお、水平距離L31は上記図6に示す水平距離L21と同一であり、水平距離L32は上記図6に示す水平距離L22と同一である。
【0008】
フロントロータリ式作業機300の重心の位置は、重量物であるエンジン301の重心G2の影響が大きい。エンジン301の重心G2は、動力伝達軸305を通る鉛直線Vr上、すなわち、作業駆動軸303と走行駆動軸306との間にある。フロントロータリ式作業機300の性能を確保するには、前のロータリ作業部307に掛かる重量W21と、後の走行輪308に掛かる重量W22との配分、すなわち前後の重量配分を適切に設定する必要がある。
【0009】
前部のロータリ作業部307に適度な重量W21を掛けることで、耕耘作業時に土中にロータリ作業部307が食い込み易くなり、この結果、耕耘性を高めることができる。また、後部の走行輪308に適度な重量W22を掛けることで、走行輪308の駆動力を確保でき、この結果、走行性を確保することができる。
前後の重量配分を設定するには、重量物であるエンジン301の中心、すなわち鉛直線Vrから作業駆動軸303までの水平距離L31と、鉛直線Vrから走行駆動軸306までの距離L32とを適切に設定すればよい。
【0010】
ところで、フロントロータリ式作業機300の性能をより高めるためには、エンジン301の動力を増大させることが考えられる。しかし、高出力のエンジン301は重量が大きい。このままの重量配分では、エンジン301の重量が増加した分だけ、ロータリ作業部307に過大な重量W21が掛かってしまう。
これに対し、水平距離L31を大きく設定することにより、ロータリ作業部307に掛かる重量W21を適切な値に設定することができる。この結果、ロータリ作業部307の最適な耕耘性能を維持することはできる。
【0011】
しかし、水平距離L31を大きくした場合には、トランスミッションケース302の前部を、前下方へ更に延ばす必要がある。この結果、図7に示すように水平線Hrに対して、トランスミッションケース302前部における下面302aの傾斜角θ2は、小さくなる。これでは、耕耘時において、トランスミッションケース302の前部が土Erの中へ入り込む範囲A2(図7においてハッチングした範囲A2)は、大きくならざるを得ない。
【0012】
このため、ロータリ作業部307で耕耘して掻き上げられた後の土が、トランスミッションケース302の真下部分に堆積することなく平坦になってしまう。また、ロータリ作業部307で耕耘した後の土の表面を、トランスミッションケース302の下面302aで削り取ってしまうので、掻き取り溝や掻き取り凹部Scができる。このようなことから、耕耘の良好な仕上がり性を確保するには改良の余地がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、フロントロータリ式作業機において、重量が大きい動力源を搭載した場合であっても、ロータリ作業部に掛かる重量を適切な値に設定することができるとともに、耕耘の良好な仕上がり性を十分に確保できる技術を、提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
請求項1に係る発明は、動力源の下方にトランスミッションケースを配置し、このトランスミッションケースに前部の作業駆動軸、カウンタ軸、中間部の動力伝達軸並びに後部の走行駆動軸を前からこの順に互いに平行に配列して一括収納し、作業駆動軸にロータリ作業部を設け、走行駆動軸に走行輪を設けることで、動力源の動力を動力伝達軸からカウンタ軸を介して、回転方向を正転並びに逆転に転換しつつ作業駆動軸へ伝達し、一方、動力源の動力を動力伝達軸から走行駆動軸へ伝達して走行輪を駆動するようにしたフロントロータリ式作業機であって、カウンタ軸を、動力伝達軸と作業駆動軸とを通る直線よりも上位に配置したことを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る発明は、トランスミッションケースのケース下面のうち、カウンタ軸と作業駆動軸との間に凹部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明では、トランスミッションケースに前部の作業駆動軸、カウンタ軸、中間部の動力伝達軸並びに後部の走行駆動軸を前からこの順に互いに平行に配列して一括収納し、カウンタ軸を、前部の動力伝達軸と中間部の作業駆動軸とを通る直線よりも上位に配置したので、トランスミッションケースを側方から見たときに、作業駆動軸、カウンタ軸、及び動力伝達軸の配列は略「へ」の字状の配列になる。従って、これらの軸の配列に合わせて、トランスミッションケースを側面視略「へ」の字状に構成することができる。この結果、水平線に対して、トランスミッションケース前部におけるケース下面の傾斜角は、大きくなる。
【0017】
ケース下面の傾斜角が大きいので、耕耘時において、トランスミッションケースの前部が土の中へ入り込む範囲は、減少する。このため、ロータリ作業部で耕耘して掻き上げられた後の土は、トランスミッションケースの真下部分に堆積し易くなる。また、ロータリ作業部で耕耘した後の土の表面を、トランスミッションケースの下面で削り取らないので、掻き取り溝や掻き取り凹部ができない。従って、耕耘の良好な仕上がり性を十分に確保することができる。
【0018】
このようなことから、フロントロータリ式作業機に高出力で大重量の動力源を搭載した場合であっても、作業駆動軸から作業駆動軸までの距離を大きく設定し、前後の重量配分を適切にすることによって、ロータリ作業部に掛かる重量を適切な値に設定することができる。この結果、ロータリ作業部の最適な耕耘性能を確保することができる。しかも、トランスミッションケース自体を側面視略「へ」の字状に構成することによって、耕耘の良好な仕上がり性を十分に確保することができる。
【0019】
請求項2に係る発明では、トランスミッションケースのケース下面のうち、カウンタ軸と作業駆動軸との間に凹部を設けたので、耕耘時にロータリ作業部で後上方へ跳ね上がられた土が、凹部に当たって真下に落下する。このため、跳ね上がられた土を、耕耘された土の上に且つトランスミッションケースの真下位置に供給して、堆積させることができる。従って、耕耘の仕上がり性をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、「前」、「後」、「左」、「右」、「上」、「下」は作業者から見た方向に従い、Frは前側、Rrは後側、Lは左側、Rは右側、CLは機幅中心(機体中心)を示す。
【0021】
図1は本発明に係るフロントロータリ式作業機の左側面図である。図2は本発明に係るフロントロータリ式作業機の平面図である。
図1に示すように、フロントロータリ式作業機10は、エンジン11の下部にトランスミッションケース12を取付け、トランスミッションケース12に前部の作業駆動軸13及び後部の走行駆動軸14を回転可能に取付け、作業駆動軸13にロータリ作業部15を取付け、走行駆動軸14に走行輪16を取付けることで、エンジン11にてロータリ作業部15及び走行輪16を駆動する小型の歩行型自走式農作業機、すなわち耕耘機(管理機)である。
【0022】
このようにフロントロータリ式作業機10(以下、単に「作業機10」と言う。)は、エンジン11の下方に機体を兼ねたトランスミッションケース12を配置し、さらにトランスミッションケース12の前部から前方へ延ばした支持機構21を介して走行補助輪22を上下に位置調整可能に取付け、トランスミッションケース12の後部から後上方にハンドル23を延ばしたものである。
動力源としてのエンジン11はクランク軸11aを略垂直に延ばした、いわゆるバーチカルエンジンである。走行輪16は、図2に示すように左右2個ある。
【0023】
なお、図1において、24はエアクリーナ、25は燃料タンク、26は燃料タンク給油口用キャップ、27はエンジン11の上方を覆うエンジンカバー、28はトランスミッションケース12の前部及びロータリ作業部15の上方を覆うフェンダ、29は機体ガードである。また、図2において、31は電源スイッチ、32はクラッチレバー、33はシフトレバー、34はエンジン11を手動にて始動させるリコイルスタータ用ノブ、35はエンジン11用スロットルレバー、36はデフロック用レバーである。
【0024】
図3は本発明に係るトランスミッションケース周りを左側方から見た断面図であり、左右二分割構造であるトランスミッションケース12の右半分を示す。
図4は本発明に係るトランスミッションケース及び動力伝達機構を上から見た断面図であり、トランスミッションケース12及びトランスミッション40を前後に展開して表した。
【0025】
図3及び図4に示すように、トランスミッションケース12は前後に細長い左右二分割構造のケースであって、トランスミッション40を収納したものである。
トランスミッション40は、エンジン11の駆動力をロータリ作業部15並びに走行輪16(図4参照)に伝達する動力伝達機構であって、作業用伝動機構50及び走行用伝動機構80からなる。このようなトランスミッション40は、エンジン11のクランク軸11aに同心の垂直な入力軸41、それぞれ機体幅方向に水平な動力伝達軸42、カウンタ軸43、中間軸44及び作業駆動軸13、走行駆動軸14を備える。
【0026】
トランスミッションケース12に対して、ケース前部の作業駆動軸13、カウンタ軸43、ケース中間部の動力伝達軸42、中間軸44並びにケース後部の走行駆動軸14を、前から後へこの順に、互いに平行に配列することで、これらの軸13,14,42〜44をトランスミッションケース12に回転可能に支持し且つ一括収納することができる。
【0027】
図3に示すように入力軸41は、クランク軸11aの下端部に主クラッチ45を介して連結したものである。入力軸41の下端部に設けた駆動ベベルギヤ46と、動力伝達軸42に設けた従動ベベルギヤ47とを噛み合わせることにより、入力軸41から動力伝達軸42へ動力を伝達することができる。主クラッチ45は、クラッチレバー32(図2参照)の操作によってオン・オフ切り換えするものであって、ドラムブレーキ及び遊星歯車の組合せ構造からなる。
【0028】
図4に示すように作業用伝動機構50は、動力伝達軸42から作業駆動軸13へ動力を伝達する機構であって、動力伝達軸42から作業用クラッチ51を介してカウンタ軸43へ動力を伝達するチェーン伝動機構52と、カウンタ軸43から作業駆動軸13へ回転方向を正転並びに逆転に転換しつつ動力を伝達する回転方向転換機構70とからなる。
【0029】
チェーン伝動機構52は、動力伝達軸42に相対回転可能に取付けた駆動スプロケット53と、カウンタ軸43に取付けた従動スプロケット54と、これら駆動・従動スプロケット53,54間に掛けたチェーン55とからなる。
作業用クラッチ51は、シフトレバー33(図1参照)の操作によって動力伝達軸42と駆動スプロケット53との間をオン・オフ切り換えする機構である。
【0030】
作業駆動軸13は、機体幅方向へ水平に延びた長い逆転駆動軸61と、逆転駆動軸61の長手途中に相対回転可能に取付けた左右の正転軸62,62(想像線にて示す。)と、逆転駆動軸61の左右両端に取付けた左右の逆転軸63,63(想像線にて示す。)とからなる。逆転駆動軸61は中実軸であり、正転軸62,62及び逆転軸63,63は筒状の軸である。なお、逆転駆動軸61、正転軸62,62及び逆転軸63,63は互いに同一心上(作業中心線Pc上)に配列することになる。121〜125はロータリ作業部15の耕耘爪である。
【0031】
回転方向転換機構70は、カウンタ軸43に取付けた逆転用駆動スプロケット71と、逆転駆動軸61に取付けた逆転用従動スプロケット72と、これら逆転用駆動・従動スプロケット71,72間に掛けたチェーン73と、カウンタ軸43の両端に取付けた左右の正転用駆動ギヤ74,74と、これらの正転用駆動ギヤ74,74に噛み合うように左右の正転軸62,62に個別に取付けた左右の正転用従動ギヤ75,75とからなる。
【0032】
一方、走行駆動軸14は、左の走行輪16を取付けた左車軸17Lと、右の走行輪16を取付けた右車軸17Rとからなる。左車軸17L及び右車軸17Rは互いに同心上(走行中心線Pd上)に配列することになる。
【0033】
走行用伝動機構80は、動力伝達軸42から走行駆動軸14へ動力を伝達する機構であって、動力伝達軸42から中間軸44へ変速切り換えしつつ動力を伝達する変速機構81と、中間軸44からチェーン伝動機構82を介して左車軸17L及び右車軸17Rへ動力を伝達する差動装置83(デファレンシャルギヤ装置83)と、差動装置83の差動作用を規制するデフロック機構84とからなる。
【0034】
変速機構81は、シフトレバー33(図1参照)の操作によって、前進の走行速度を3段階に切り換え且つ後進走行に切り換え可能な機構である。差動装置83は、作業機10が旋回するときに左の走行輪16と右の走行輪16との回転差を吸収し、円滑な旋回性を確保する機構である。デフロック機構84は、デフロック用レバー36(図1参照)の操作に応じて差動装置83の機能を停止させ、この結果、左車軸17Lと右車軸17Rとを一体的に回転させる機構である。
【0035】
以上の説明から明らかなように、シフトレバー33にて変速機構81及び作業用クラッチ51を操作することにより、(1)ロータリ作業部15及び走行輪16,16を共に停止状態、(2)走行輪16,16を3段階の走行速度で前進又は後進状態、(3)走行輪16,16を2段階の走行速度で前進させつつ、ロータリ作業部15を回転状態に切り換えることができる。
【0036】
ところで、図4に示すように、トランスミッションケース12のうち、(1)作業駆動軸13、カウンタ軸43及び回転方向転換機構70の組合わせからなる、作業動力分配部77を収納した前部の幅広の収納部分を前部収納部91と言い、(2)走行駆動軸14、動力伝達軸42、中間軸44、駆動・従動ベベルギヤ46,47及び走行用伝動機構80等を収納した後部の幅広の収納部分を後部収納部92と言い、(3)前部収納部91と後部収納部92との間でチェーン55を通した幅狭の部分を中間収納部93と言うことにする。前部収納部91の幅Wi1は、中間収納部93の幅Wi2よりも3〜4倍程度大きい(Wi1>Wi2)。同様に、後部収納部92の幅も中間収納部93の幅Wi2より大きい。
【0037】
ここで、図3に基づき作業駆動軸13、動力伝達軸42、カウンタ軸43、中間軸44及び走行駆動軸14の配置関係について詳しく説明する。
動力伝達軸42に対して、作業駆動軸13は前下方へ下がった位置にある。カウンタ軸43は、動力伝達軸42よりも下位で且つ作業駆動軸13よりも上位にある。この結果、カウンタ軸43は、動力伝達軸42と作業駆動軸13とを通る直線Si1よりも上位にある。
一方、動力伝達軸42に対して中間軸44は若干下位にあり、中間軸44に対して走行駆動軸14は若干下位にある。この結果、動力伝達軸42、中間軸44及び走行駆動軸14は若干後下がりに配列、すなわち概ね同じ高さにある。
【0038】
ここで、動力伝達軸42の中心線を駆動中心線Paとし、カウンタ軸43の中心線をカウンタ中心線Pbとする。作業駆動軸13の中心線を作業中心線Pcとし、走行駆動軸14の中心線を走行中心線Pdとする。各中心線Pa,Pb,Pc,Pdは互いに平行な水平線である。駆動中心線Paは、クランク軸11aの中心及び入力軸41の中心を通る鉛直線Pe(エンジン中心Pe)に直交する。
また、駆動中心線Paから作業中心線Pcまでの水平距離を作業側距離L11とし、駆動中心線Paから走行中心線Pdまでの水平距離を走行側距離L12とする。作業側距離L1は走行側距離L2よりも大きい(L11>L12)。
【0039】
このように作業駆動軸13、カウンタ軸43、動力伝達軸42、中間軸44及び走行駆動軸14を配列したので、トランスミッションケース12を図3に示すように側面視略「へ」の字状を呈した形状にすることができる。すなわち、トランスミッションケース12は、機体幅中心CL上(図4参照)を前後に延びるものであって、前後に長く且つ車幅方向に狭いケースであり、前半部分が前下がりに傾斜し、後半部分が略水平である。
【0040】
さらにトランスミッションケース12は、ケース下面12aのうち、カウンタ軸43と作業駆動軸13との間に凹部12bを設けたことを特徴とする。より具体的には、前半部分と後半部分との境に凹部12bを形成した。凹部12bは前後に円弧状を呈する。
【0041】
以上の構成からなるフロントロータリ式作業機10の作用について、図5に基づき説明する。図5はフロントロータリ式作業機の作用図であり、図3に対応させて表した。
フロントロータリ式作業機10に高出力で大重量のエンジン11を搭載した場合に、作業駆動軸13から作業駆動軸13までの距離L11を大きく設定し、前後の重量配分を適切にすることによって、ロータリ作業部15に掛かる重量を適切な値に設定することができる。この結果、ロータリ作業部15の最適な耕耘性能を確保することができる。
【0042】
さらには、上述のようにフロントロータリ式作業機10は、トランスミッションケース12に作業駆動軸13、カウンタ軸43、動力伝達軸42並びに走行駆動軸14を前からこの順に互いに平行に配列して一括収納し、カウンタ軸43を、前部の動力伝達軸42と中間部の作業駆動軸13とを通る直線Si1よりも上位に配置したものである。
このため、トランスミッションケース12を側方から見たときに、作業駆動軸13、カウンタ軸43、及び動力伝達軸42の配列は略「へ」の字状の配列になる。従って、これらの軸13,43,42,14の配列に合わせて、トランスミッションケース12を側面視略「へ」の字状に構成することができる。
【0043】
ここで、水平線Hrに対して、トランスミッションケース12の前部におけるケース下面12aの傾斜角はθ1である。カウンタ軸43を、直線Si1よりも上位に配置したので、直線Si1に配置した場合に比べて、ケース下面12aの傾斜角θ1を大きくすることができる。
ケース下面12aの傾斜角θ1が大きいので、耕耘時において、トランスミッションケース12の前部が土Erの中へ入り込む範囲A1(図5においてハッチングした範囲A1)は、減少する。このため、ロータリ作業部15で耕耘して掻き上げられた後の土は、トランスミッションケース12の真下部分に堆積し易くなる。また、ロータリ作業部15で耕耘した後の土の表面を、トランスミッションケース12の下面で削り取らないので、掻き取り溝や掻き取り凹部ができない。従って、耕耘の良好な仕上がり性を十分に確保することができる。
【0044】
このように、大重量のエンジン11を搭載し、距離L11を大きく設定した場合であっても、トランスミッションケース12自体を側面視略「へ」の字状に構成することによって、耕耘の良好な仕上がり性を十分に確保することができる。
【0045】
さらには、耕耘時において、トランスミッションケース12の前部が土Erの中へ入り込む範囲A1(図5においてハッチングした範囲A1)が少ないので、その分、耕耘時に土中の影響(例えば、土中に埋もれた石などの硬い部分の影響)を受け難い。このため、耕耘時に作業者が操縦するハンドル23が、ふらつき難い。従って、フロントロータリ式作業機10をより適切に且つ容易に操縦しつつ、耕耘作業を行うことができる。
【0046】
さらには、トランスミッションケース12のケース下面12aのうち、カウンタ軸43と作業駆動軸13との間に凹部12bを設けたので、耕耘時にロータリ作業部15で後上方へ跳ね上がられた土Esは、凹部12bに当たって真下に落下する。つまり、凹部12bに当たった土Esは、トランスミッションケース12の側方や後方へ跳ね返ることなく、下方へ落下する。このため、跳ね上がられた土Esを、耕耘された土の上に且つトランスミッションケース12の真下位置に供給して、堆積させることができる。従って、耕耘の仕上がり性をより高めることができる。
【0047】
なお、本発明は実施の形態では、動力源はエンジン11に限定されるものではなく、例えば電動モータであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のフロントロータリ式作業機10は、動力源11の下方にトランスミッションケース12を配置し、トランスミッションケース12の前部に耕耘爪121〜125からなるロータリ作業部15を設け、トランスミッションケース12の後部に左右の走行輪16,16を設けた耕耘機に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】発明に係るフロントロータリ式作業機の左側面図である。
【図2】本発明に係るフロントロータリ式作業機の平面図である。
【図3】本発明に係るトランスミッションケース周りを左側方から見た断面図である。
【図4】本発明に係るトランスミッションケース及び動力伝達機構を上から見た断面図である。
【図5】フロントロータリ式作業機の作用図である。
【図6】従来のフロントロータリ式作業機(第1従来技術)の概要図である。
【図7】従来のフロントロータリ式作業機(第2従来技術)の概要図である。
【符号の説明】
【0050】
10…フロントロータリ式作業機、11…動力源、12…トランスミッションケース、12a…ケース下面、12b…凹部、13…作業駆動軸、14…走行駆動軸、15…ロータリ作業部、16…走行輪、42…動力伝達軸、43…カウンタ軸、Si1…動力伝達軸と作業駆動軸とを通る直線。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区南青山二丁目1番1号
【出願日】 平成16年8月23日(2004.8.23)
【代理人】 【識別番号】100067356
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 容一郎

【識別番号】100094020
【弁理士】
【氏名又は名称】田宮 寛祉

【公開番号】 特開2006−55123(P2006−55123A)
【公開日】 平成18年3月2日(2006.3.2)
【出願番号】 特願2004−242549(P2004−242549)