| 【発明の名称】 |
電子機器 |
| 【発明者】 |
【氏名】鈴木 達哉 【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリンパス株式会社内
|
| 【要約】 |
【課題】圧縮木材を外装材として用いた電子機器における摺動部の安価、かつ、良好な潤滑対策を提供すること。
【解決手段】圧縮木材からなる外装材10の摺動部11eに潤滑剤Lcが含浸されている。摺動部11eは、圧縮木材の木材繊維11dの断面が露出している。含浸された潤滑剤Lcが摺動部11eから適量、経時的に染み出し、摺動部以外の部分に漏れ出ることがないため、電子機器が絶縁不良を起こしたり、光学系に曇りを生じさせたりする等の不具合を発生させない、安価、かつ、良好な潤滑対策とすることができる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧縮木材からなる外装材の摺動部に潤滑剤が含浸されていることを特徴とする電子機器。 【請求項2】 前記摺動部は、前記圧縮木材の木材繊維の断面が露出していることを特徴とする請求項1に記載の電子機器。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、圧縮木材からなる外装材を有する電子機器に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来、カメラ,携帯通信機器(主に携帯電話機),ICレコーダ,PDA(Personal Digital Assistant),携帯テレビ,携帯ラジオ或いは各種家電製品のリモコン等の携帯型電子機器は、大量生産性,成形性,堅牢性或いは耐腐食性等の観点から、外装材にABS,ポリカーボネート,アクリル等の合成樹脂やアルミニウム,ステンレス,チタン,マグネシウム合金等の金属が多用されている。 【0003】 電子機器は、機械的な構成上、種々の摺動部を有しており、その潤滑対策として潤滑剤を適用することが一般的に行われている。しかし、合成樹脂や金属からなる外装材は、潤滑剤を吸収しないため、潤滑剤が思わぬところに漏れ出したり飛散したりして、収納した電子部品が絶縁不良を起こし、特に、電子機器がカメラである場合には、光学系に曇りを生じさせたりする等の不具合を招来してしまう。 【0004】 これに対して、電子機器の外装材として、独特の風合いを有し、人体に馴染み易く、また環境に優しい素材である木材や木材を加工処理した木質材料を使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、外装材表面に露出した木材繊維が潤滑剤を吸収するため、外装材に潤滑剤を適用した場合でも、上記のような不具合を抑制することができる。 【0005】 【特許文献1】特開2004−64021号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 しかしながら、特許文献1に記載の電子機器によれば、木材繊維の空間が大きいために潤滑剤の吸収が顕著であり、摺動部のみの部分的な潤滑のために多量の潤滑剤を要する、木材繊維を経由して摺動部を形成していない木材繊維の他断面から潤滑剤が染み出して電子機器が汚染される等の、別の不具合を生じてしまう。 【0007】 本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、圧縮木材を外装材として用いた電子機器における摺動部の安価、かつ、良好な潤滑対策を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に係る電子機器は、圧縮木材からなる外装材の摺動部に潤滑剤が含浸されていることを特徴とする。 【0009】 また、請求項2に係る電子機器は、上記の発明において、前記摺動部は、前記圧縮木材の木材繊維の断面が露出していることを特徴とする。 【0010】 本明細書において、外装材の摺動部とは、回転部材や摺動部材が係合する外装材の部分、外装材と係合する回転部材や摺動部材の部分の双方をいうものとする。また、圧縮木材の木材繊維とは、広葉樹の場合には主に導管をいい、針葉樹の場合には主に仮導管をいうものとする。ここで、図8は、圧縮前の木材(針葉樹)の断面を拡大して細胞壁Wに囲まれた仮導管Tの断面を模式的に示した参考図である。また、図9は、圧縮後の木材(針葉樹)の断面を拡大して潰れた仮導管Tを模式的に示した参考図である。図8,図9より、圧縮前には略均一形状で大きな空間を有する仮導管Tが、圧縮後には空間が不規則に潰されて大きく減少している。そして、細胞壁Wは、図9に示すように、その厚さを略維持した状態で潰された仮導管Tの間に繋がった状態で存在していることが分かる。本発明は、圧縮木材における潰された導管や仮導管を含む木材繊維の部分を利用して潤滑剤を含浸させ、摺動部の潤滑に利用している。 【発明の効果】 【0011】 本発明にかかる電子機器は、圧縮木材からなる外装材の摺動部に潤滑剤を含浸することにより、圧縮された木材繊維の内部に適量含浸された潤滑剤が摺動部から経時的に沁み出すので、多量の潤滑剤を用いなくても摺動部を潤滑することができるうえ、過剰な潤滑剤による電子機器の絶縁不良や光学系の曇りの発生を招かないため、安価かつ良好な潤滑対策とすることができる。この結果、電子機器を長期に亘って使用することができる。 【0012】 また、請求項2の電子機器によれば、摺動部は、圧縮木材の木材繊維の断面が露出しているので、毛細管現象によって木材繊維内に吸引,保持された適量の潤滑剤が、摺動部に染み出して潤滑することができる。この際、木材繊維は圧縮されて空間が減少しているので、木材繊維の断面のうち摺動部を形成していない断面から潤滑剤がもれ出ることがないため、電子機器内部の汚染を招くおそれがないという効果を奏する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、本発明の電子機器にかかる実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明の電子機器にかかる一例としてレンズバリアが閉じた状態のデジタルカメラを示す斜視図である。図2は、図1のデジタルカメラにおいて、レンズバリアを開いた撮影モードの状態を示す斜視図である。図3は、図1のデジタルカメラを撮像レンズの部分に沿って水平に切断した断面図である。 【0014】 デジタルカメラ1は、図1乃至図3に示すように、圧縮木材からなる外装材10の内部に内部機構14及び撮像レンズ15が収納され、外装材10の上部にはダイヤルスイッチ17が設けられている。 【0015】 外装材10は、板目が前面或いは後面となるように木取りした前カバー11及び後カバー12を有している。外装材10は、レンズバリア13を取り付けた前カバー11を後カバー12と嵌合させてデジタルカメラ1の筐体を形成する。ここで、前カバー11及び後カバー12を構成する圧縮木材は、檜,檜葉,桐,杉,松,桜,チーク,マホガニー等の無垢材をそれぞれの形状に合わせて切り出し、所定の圧縮加工を施したものである。以下、圧縮木材として針葉樹を用いた場合について説明する。 【0016】 前カバー11は、図3に示すように、撮像レンズ15を突出させるレンズ孔11aが中央に設けられ、外縁部には嵌合凹部11bが後述する蓋12b及び切欠きの部分を除いて全周に亘って設けられている。また、前カバー11は、半円形の切欠きが上縁に形成されている。前記切欠きは、回転部材である後述するダイヤルスイッチ17が回動に伴って摺動する摺動部であり、前カバー11と後カバー12とを嵌合したときに、後カバー12の対応する位置に形成された半円形の切欠き12d(図5参照)と共にダイヤルスイッチ17を挿通する貫通孔を形成し、圧縮された仮導管11d(図4参照)の断面が露出している。また、前カバー11は、前部の上下にガイドレール11eが設けられている。ガイドレール11eは、レンズバリア13が摺動する摺動部であり、図4に示すように、予め潤滑剤Lcが含浸されている。ここで、図3は、外装材10の内部構造を示すためレンズバリア13は省略している。 【0017】 後カバー12は、液晶モニタ16を取り付ける装着口12a(図3参照)が略中央に設けられ、側部には接続端子14eに接続される接続ケーブルを抜き差しする接続口を開閉自在に覆う蓋12bが設けられている(図1,図2参照)。後カバー12は、図3及び図5に示すように、外縁部に前カバー11の嵌合凹部11bと嵌め合わされる嵌合突条12cが蓋12b及び切欠き12dの部分を除いて全周に亘って設けられている。ここで、後カバー12は、ダイヤルスイッチ17を挿通する貫通孔を形成する半円形の切欠き12dが上縁に形成され、切欠き12dには圧縮された仮導管12e(図4,図6参照)の断面が露出している。切欠き12dは、回転部材である後述するダイヤルスイッチ17が回動に伴って摺動する摺動部であり、前カバー11の前記切欠きと共に予め潤滑剤が含浸されている。ここで、前カバー11及び後カバー12は、圧縮木材として針葉樹を用いたことから切欠き12dの端面に仮導管11d,12eの断面が露出している。但し、前カバー11及び後カバー12は、圧縮木材として広葉樹を用いた場合には、導管の断面が切欠き12dに露出することになる。 【0018】 レンズバリア13は、前カバー11の前部を部分的に覆うと共に、前カバー11に左右方向へスライド自在に取り付けられる。レンズバリア13は、図2に示すように、ダイヤルスイッチ17側へ移動させると撮影モードがオンとなり、撮像レンズ15がレンズ孔11aから突出する。一方、レンズバリア13は、図1に示す中央に戻すと撮影モードがオフとなり、撮像レンズ15がレンズ孔11aから外装材10内へ収納される。レンズバリア13は、図4に示すように、前カバー11の前部上下に設けたガイドレール11eと係合する係合片13aが上下の縁部に設けられている。 【0019】 内部機構14は、図3に示すように、CCD等の撮像素子14a、撮像素子14aの駆動回路14b、液晶モニタ16の駆動回路14c、画像記録媒体への記録装置14d及び外部パソコンとの接続端子14e等を有している。ここで、内部機構14は、後述する基板18(図5参照)に搭載されている。 【0020】 ダイヤルスイッチ17は、図1及び図2に示すように、矢印方向に回転してマニュアル,オート,セルフタイマ等の撮影モードを切り替えるスイッチを兼ねる回転部材であり、図1及び図2に示すように、外装材10の上部に設けられている。ダイヤルスイッチ17は、図5に示すように、軸部17aの上部に操作ダイヤル17bが、下部に係合部17cが、それぞれ設けられている。ダイヤルスイッチ17は、外装材10の内部に設けた可動接片19と係合される。即ち、可動接片19は、本体19aに係合孔19bが形成されると共に、複数の切替接片19cを有しており、係合孔19bに係合部17cを係合させることによってダイヤルスイッチ17によって回動操作される。このとき、複数の切替接片19cは、基板18に形成された複数の導電回路18aの対応する導電回路18aと当接することにより、デジタルカメラ1を種々の撮影モードに切り替える。 【0021】 以上のように構成されるデジタルカメラ1は、外装材10の内部に内部機構14及び撮像レンズ15を収納すると共に、ダイヤルスイッチ17と可動接片19とを係合させ、レンズバリア13を取り付けた前カバー11を後カバー12と嵌合させて組み立てられる。このとき、前カバー11及び後カバー12は、摺動部となるガイドレール11eや切欠き12dに潤滑剤Lcが含浸されている。このため、前カバー11及び後カバー12は、圧縮された仮導管11d,12e内に毛細管現象によって吸引されて染み込んだ潤滑剤Lcが保持されている。 【0022】 従って、デジタルカメラ1は、撮影に伴ってレンズバリア13を開閉すると、仮導管11d,12e内に染み込んだ潤滑剤Lcが経時的に適量染み出し、係合片13aとの間を潤滑する。このため、デジタルカメラ1は、レンズバリア13を上下のガイドレール11eに沿って円滑に移動させることができる。また、デジタルカメラ1は、前カバー11の図示しない切欠き及び後カバー12の切欠き12dによって形成された貫通孔に仮導管11d,12eに保持された潤滑剤Lcが経時的に適量染み出し、軸部17aとの間を潤滑するので、ダイヤルスイッチ17を回動操作したときに、ダイヤルスイッチ17を滑らかに回動操作することができる。これにより、デジタルカメラ1は、圧縮木材からなる外装材を前カバー11や後カバー12に使用していても、摺動部となるガイドレール11eや切欠き12dの磨耗が抑えられる結果、長期に亘って使用することができる。このとき、仮導管11d,12e内への吸引や仮導管11d,12eからの染み出しを考慮すると、使用する潤滑剤は、シリコーングリース等の液状の潤滑剤であって粘性係数が小さいものを使用することが好ましい。 【0023】 一方、デジタルカメラ1は、例えば、図7に示すように、前カバー11に仮導管11dの断面が露出し、回転部材Sの端部が係合する凹部11fを有するときには、凹部11fに潤滑剤を含浸させておく。このようにすると、潤滑剤Lcが圧縮された仮導管11d内に毛細管現象によって吸引されて保持される。このため、デジタルカメラ1は、回転部材Sが回転したときに、保持された潤滑剤Lcが仮導管11dから染み出し、回転部材Sとの間を潤滑するので、回転部材Sを円滑に回転させることができる。 【0024】 尚、上記の実施の形態は、電子機器としてデジタルカメラの場合について説明した。しかし、本発明の電子機器は、圧縮木材からなる外装材の摺動部に潤滑剤が含浸されている構成であれば、携帯通信機器(主に携帯電話機),ICレコーダ,PDA,携帯テレビ,携帯ラジオ或いは各種家電製品のリモコン等の携帯型電子機器が対象となる。 【0025】 また、潤滑剤は、液状であれば、シリコーングリース等の潤滑剤の他、フッ素系樹脂(例えば、四フッ化エチレン樹脂(PTFE))や二硫化モリブデン(MoS2)等の固体潤滑剤の微粒子を有機溶剤等に分散させたもの等を使用することができる。 【産業上の利用可能性】 【0026】 以上のように、本発明にかかる電子機器は、外装材として用いた圧縮木材と摺動部材等との間における潤滑に有用であり、特に、安価、かつ、良好な潤滑対策を施すのに適している。 【図面の簡単な説明】 【0027】 【図1】本発明の電子機器にかかる一例としてレンズバリアが閉じた状態のデジタルカメラを示す斜視図である。 【図2】図1のデジタルカメラにおいて、レンズバリアを開いた撮影モードの状態を示す斜視図である。 【図3】図1のデジタルカメラを撮像レンズの部分に沿って水平に切断した断面図である。 【図4】前カバーとレンズバリアとの係合状態を示す断面図である。 【図5】回転部材であるダイヤルスイッチの取り付け構造を示す斜視図である。 【図6】後カバーに含浸された潤滑剤によるダイヤルスイッチの潤滑状態を示す断面図である。 【図7】回転部材の潤滑の他の態様を示す断面図である。 【図8】木材を圧縮する前の仮導管の断面を拡大して模式的に示す参考図である。 【図9】木材を圧縮した後の仮導管の断面を拡大して模式的に示す参考図である。 【符号の説明】 【0028】 1 デジタルカメラ 10 外装材 11 前カバー 11a レンズ孔 11b 嵌合凹部 12 後カバー 12a 装着口 12b 蓋 12c 嵌合突条 12d 切欠き 12e 仮導管 13 レンズバリア 13a 係合片 14 内部機構 14a 撮像素子 14b,14c 駆動回路 14d 記録装置 14e 接続端子 15 撮像レンズ 16 液晶モニタ 17 ダイヤルスイッチ 17a 軸部 17b 操作ダイヤル 17c 係合部 18 基板 18a 導電回路 19 可動接片 19a 本体 19b 係合孔 19c 切替接片
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000000376 【氏名又は名称】オリンパス株式会社 【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号
|
| 【出願日】 |
平成16年6月14日(2004.6.14) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100089118 【弁理士】 【氏名又は名称】酒井 宏明
|
| 【公開番号】 |
特開2005−353934(P2005−353934A) |
| 【公開日】 |
平成17年12月22日(2005.12.22) |
| 【出願番号】 |
特願2004−174971(P2004−174971) |
|