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【発明の名称】 密閉構造体用放熱装置
【発明者】 【氏名】金子 範義

【氏名】町田 政広

【氏名】小板橋 雄也

【氏名】出牛 雄一

【氏名】清水 光一郎

【要約】 【課題】大型化を回避しつつ、放熱の効率化を達成すること。

【解決手段】放熱装置は、CPU10の外周が筐体14で囲繞された密閉構造体16に適用される。放熱装置は、第1放熱膜18と、第2放熱膜20と、第3放熱膜22とを備えている。第1放熱膜18は、発熱体であるCPU10の外表面の一部である上面に形成されている。第2放熱膜20は、第1放熱膜18と対向するように、筐体14の内面に形成されている。第3放熱膜22は、筐体14の全周外表面に形成されている。第1放熱膜18は、CPU10が放出する熱を吸収して、遠赤外線に変換して、第2放射膜20に向けて放熱する。第2放熱膜20は、遠赤外線を受けて、これを吸収して、熱伝導性の筐体14に伝導させる。筐体14は、第2放熱膜20から伝導された熱を、第3放熱膜22に伝導し、これを受けた第3放熱膜22は、遠赤外線に変換して、外部に放熱する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CPUや集積回路などの発熱体の外周を熱伝導体性の筐体で囲繞した密閉構造体の放熱装置において、
前記発熱体の外表面に形成される第1放熱膜と、
前記第1放熱膜と対向するようにして、前記筐体の内面に形成される第2放熱膜とを備え、
前記発熱体が放出する熱は、前記第1放熱膜で遠赤外線に変換して、前記第2放熱膜に放熱され、
前記第2放熱膜は、前記遠赤外線を吸収して、前記筐体に伝導させ、
前記筐体は、前記第2放熱膜から受けた熱を外部に放熱することを特徴とする密閉構造体用放熱装置。
【請求項2】
前記筐体の外表面に、当該筐体を伝導する熱を吸収して、遠赤外線に変換して外部に放熱する第3放熱膜を設けたことを特徴とする請求項1記載の密閉構造体用放熱装置。
【請求項3】
前記第1から第3放熱膜は、内部の蓄熱を、高い放射率で遠赤外線として放射する同一組成の薄膜から構成することを特徴とする請求項2記載の密閉構造体用放熱装置。
【請求項4】
前記薄膜は、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物から形成することを特徴とする請求項3記載の密閉構造体。
【請求項5】
前記アルコキシシランが、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの少なくとも一種を含有することを特徴とする請求項4記載の密閉構造体用放熱装置。
【請求項6】
前記混合物は、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを更に混合することを特徴とする請求項4または5記載の密閉構造体用放熱装置。
【請求項7】
前記薄膜は、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの水溶液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末並びにカオリン粉末との混合物製の薄膜から形成することを特徴とする請求項3記載の密閉構造体用放熱装置。
【請求項8】
前記薄膜は、シリコーン樹脂を含むエマルジョン、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物から形成することを特徴とする請求項3記載の密閉構造体用放熱装置。
【請求項9】
前記第1から第3放熱膜は、厚みを10〜100μmにすることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項記載の密閉構造体用放熱装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、密閉構造体用の放熱装置に関し、特に、発熱体を内蔵した密閉構造体における放熱の改良技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンや携帯電話器などの電子機器において、これらの機器に用いられる電子部品の小型化が促進されている。このような機器に用いられる電子部品のうち、例えば、CPUなどの電子部品には、これらが外部からの電磁波の影響を受けないようにするために、金属製の筐体で外周を囲繞して、電磁シールドを設ける場合がある。
【0003】
また、例えば、携帯電話器の場合には、携帯電話器に搭載されている電子部品から発生する電磁波の影響を人体に及ぼさないために、電磁波を発射する電子部品を金属製の筐体で囲繞することも行われている。
【0004】
ところが、このような電子部品は、通常、電力を供給して作動させると熱が発生し、電磁波の内外への透過を防止すべく、金属製の筐体でこれらの電子機器を密閉すると、発生した熱の放熱が大きな問題となる。
【0005】
ここで、CPUなどの電子機器の放熱手段としては、例えば、特許文献1や特許文献2に開示されているものが知られている。特許文献1に開示されている放熱手段は、CPUの上に配置された放熱器と、放熱器に冷却風を送るファンとを備えている。
【0006】
また、特許文献2に開示されている放熱手段は、CPUなどの発熱素子の上面に配置されるものであって、熱伝導性の良好な部材で形成され、複数の放熱フィンを立設したベースプレートと、扁平管内に熱伝導作動液を収容したヒートレートに複数の放熱フィンを固定した構造を備えている。
【0007】
しかしながら、このような構造の放熱手段は、特に、発熱体を筐体で密閉した構造に採用する際には、以下に説明する技術的な課題があった。
【特許文献1】特開2002−190562号公報
【特許文献2】特開2003−46040号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、特許文献1,2に開示されている放熱手段は、いずれもCPUなどの発熱体に放熱フィンを直接取り付ける構造なので、発熱体を筐体で密閉する構造に採用すると、発熱体を囲繞する筐体が大きくなるとともに、放熱フィンで放熱された熱は、一部が筐体を介して外部に放出されるものの、その多くが筐体の内部に留まることになり、十分な放熱効果が得られないという問題があった。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、全体の大型化を回避しつつ、十分な放熱効果が得られるを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、CPUや集積回路などの発熱体の外周を熱伝導体性の筐体で囲繞した密閉構造体の放熱装置において、前記発熱体の外表面に形成される第1放熱膜と、前記第1放熱膜と対向するようにして、前記筐体の内面に形成される第2放熱膜とを備え、前記発熱体が放出する熱は、前記第1放熱膜で遠赤外線に変換して、前記第2放熱膜に放熱され、前記第2放熱膜は、前記遠赤外線を吸収して、前記筐体に伝導させ、前記筐体は、前記第2放熱膜から受けた熱を外部に放熱するようにした。
【0011】
このように構成した密閉構造体用放熱装置によれば、外周を熱伝導体性の筐体で囲繞した発熱体から放出する熱は、第1放熱膜で遠赤外線に変換して、第2放熱膜に放熱され、第2放熱膜は、遠赤外線を吸収して、筐体に伝導させ、筐体は、第2放熱膜から受けた熱を外部に放熱する。
【0012】
この際に、熱の伝達を行う第1〜第2放熱膜は、薄い膜状に形成されているので、発熱体を筐体で囲繞する密封構造に殆ど影響を及ぼすことがないので、全体の大型化が回避され、かつ、筐体で密閉した発熱体の熱を外部に放熱することができる。
【0013】
前記筐体の外表面に、当該筐体を伝導する熱を吸収して、遠赤外線に変換して外部に放熱する第3放熱膜を設けることができる。
【0014】
前記第1から第3放熱膜は、内部の蓄熱を、高い放射率で遠赤外線として放射する同一組成の薄膜から構成することができる。
【0015】
前記薄膜は、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物から形成することができる。
【0016】
前記アルコキシシランが、ジアルコキシシラン、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシランの少なくとも一種を含有することができる。
【0017】
前記混合物は、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを更に混合することができる。
【0018】
前記薄膜は、珪酸ナトリウム及び珪酸カリウムの水溶液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末並びにカオリン粉末との混合物製の薄膜から形成することができる。
【0019】
前記薄膜は、シリコーン樹脂を含むエマルジョン、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物から形成することができる。
【0020】
前記第1から第3放熱膜は、厚みを10〜100μmにすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明にかかる密閉構造体用放熱装置によれば、全体の大型化を回避しつつ、効率的に放熱を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好適な実施の形態について、添付図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0023】
図1は、本発明にかかる密閉構造体用の放熱装置の一実施例を示している。この図に示した実施例は、発熱体として、CPU10の放熱用に本発明を適用した場合を例示しており、CPU10は、基板12に搭載され、これらの外周は、熱伝導性、例えば、アルミニウム合金などで形成された筐体14で四周を囲繞され、この構成により、四周が外部と隔成された密閉構造体16となっている。
【0024】
本実施例の放熱装置は、このような密閉構造体16に適用されるものであって、第1放熱膜18と、第2放熱膜20と、第3放熱膜22とを備えている。第1放熱膜18は、発熱体であるCPU10の外表面の一部である上面に形成されている。なお、図1に示した実施例では、CPU10の上面だけに第1放熱膜18を形成しているが、CPU10の側面などの他の外表面に形成してもよい。
【0025】
第2放熱膜20は、第1放熱膜18と対向するように、筐体14の内面に形成されている。なお、図1に示した実施例では、第2放熱膜20は、筐体14の基板12から右側の内面に形成しているが、例えば、第1放熱膜18と対向する面だけに設けてもいいし、また、筐体14の内面の全周面に設けても良い。第3放熱膜22は、筐体14の全周外表面に形成されている。
【0026】
第1放熱膜18は、CPU10が放出する熱を吸収して、遠赤外線に変換して、対向する第2放射膜20に向けて放熱する。第2放熱膜20は、第1放熱膜18からの遠赤外線を受けて、これを吸収して、熱伝導性の筐体14に伝導させる。
【0027】
筐体14は、第2放熱膜20から伝導された熱を、第3放熱膜22に伝導し、これを受けた第3放熱膜22は、遠赤外線に変換して、外部に放熱する。第1から第3放熱膜18〜22は、内部の蓄熱を、高い放射率で遠赤外線として放射する同一組成の薄膜から構成することができ、このような性状を備えた第1〜第3放熱膜18〜22は、以下に詳述する薄膜で構成することができる。
【0028】
すなわち、本実施例の第1〜第3放熱膜18〜22は、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる薄膜、珪酸ナトリウムの水溶液、珪酸カリウムの水溶液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物からなる薄膜、または、シリコーン樹脂を含むエマルジョン、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物殻なる薄膜のいずれか1つから選択することができる。
【0029】
この場合、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末をアルコキシシランを含むバインダー、珪酸ナトリウム水溶液と珪酸カリウム水溶液を含むバインダー又はシリコーンエマルジョンを含むバインダーに分散させ懸濁液となし、この懸濁液をCPU10や筐体14の内外面に塗布して、薄膜を形成する。
【0030】
薄膜の構成成分として、酸化珪素、酸化アルミニウム及びカオリンの他にも、各種の金属酸化物や窒化物を使用することができ、例えば、金属酸化物としては酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化錫、酸化銅、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マグネシウム、酸化マンガン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化アンチモン、酸化硼素、酸化バリウム、酸化ビスマス、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム等の金属酸化物の少なくとも1種を含有することができる。
【0031】
金属酸化物以外に、窒化硼素、窒化アルミニウム、窒化ジルコニウム、窒化錫、窒化ストロンチウム、窒化チタン、窒化バリウムや窒化珪素等の窒化物を含有することができる。
【0032】
また、薄膜中に含有させる金属酸化物、カオリンや窒化物等は、その粒径を15μm〜100nmとするのがよい。より好ましくは、10μm〜80nmの粒径のものを使用する。この粒径のものを使用することにより、薄膜の表面が滑らかで綺麗になるとともに放熱の効率が高まる。
【0033】
カオリンは、重量でアルコキシシラン、珪酸ナトリウムと珪酸カリウムを合わせたもの又はシリコーン樹脂1に対して0.1〜20添加することが好ましい。また、金属酸化物の添加量は、重量でアルコキシシラン、珪酸ナトリウムと珪酸カリウムとを併せたもの又はシリコーン樹脂1に対して0.5〜70添加することが好ましい。これは、薄膜形成性を維持しながら、高い放熱性能を保持するためである。
【0034】
薄膜形成用の懸濁液の粘度が高くなるようであれば、必要に応じて、溶剤や水を添加して、粘度を調整する。このようにして得た懸濁液を対象物に塗布することにより、薄膜を得ることができる。
【0035】
懸濁液を対象物に筆塗り、スプレー、ローラー、印刷等により塗布し、常温又は加温にて乾燥後、更に、必要に応じて、80℃〜300℃で熱処理することにより、筐体14などに対する密着度の高い薄膜を得ることができる。
【0036】
第1〜第3放熱膜18〜22の膜厚は、或る程度の厚さがないと放熱効果は充分に発現しないが、逆に厚さが大きすぎると皮膜に蓄熱作用が起こり、放熱効果が不十分になる。本発明者らの実験によると膜厚は100μm以下が好ましく、更に好ましくは10μm〜100μm、特に好ましくは30μm〜80μmである。
【0037】
上記構成の薄膜は、蓄熱したエネルギーを遠赤外線として空気中に放射する能力が高く、放射率0.95という高い数値を示す。内部に蓄積した熱を遠赤外線という電磁波に変換して効率よく放射し、物体の温度上昇を抑えることができる。効率良く遠赤外線を放射するということは、内部に蓄積した熱を遠赤外線という電磁波に変換して効率よく放熱することを意味し、結果として温度上昇を抑える効果をもたらす。
【0038】
この場合、本実施例のような密閉構造体16に適用すると非常に好適な結果をもたらし、空気流の対流を用いずに効率よく放熱するという結果を導く。従来遠赤外線の放射能力が高いとされている物質(例えば、ゼオライト、コージェライト、アパタイト、ドロマイト等)の放射特性を見ると、4ミクロン乃至14ミクロンの波長全ての領域にわたって高い遠赤外線の放射特性をもつわけではなく、波長によって放射率に相違がある。
【0039】
多くの場合、9ミクロン波長前後の鎮域で放射率が下がる傾向が見られる。一方、本実施例の上述した組成物の放射する遠赤外線は4ミクロン乃至14ミクロン波長の全ての領域にわたって0.9以上の放射率を維持し、非常に放射効率の高いものとなっている。
【0040】
アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素、酸化アルミニウム、カオリン等の混合物から形成せしめた薄膜は、基本的には、アルコキシシランの加水分解・縮合により形成されるものである。即ち、アルコキシシランが加水分解をしてコロイダルシリカの表面に存在するシラン基とも結合しながら、薄膜を形成する。
【0041】
アルコキシシランは、水が存在すると加水分解・縮合が起こるので、使用直前までは水の存在しない状態に保つのがよい。即ち、水溶性溶媒の溶液として保存しておくのである。
【0042】
使用時に、アルコキシシランの水溶性溶媒溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素、酸化アルミニウム、カオリン等を混合し、筐体14などに塗布し皮膜を形成せしめる。コロイダルシリカの水分散液に存在する水の作用を受けて、アルコキシシランが加水分解・縮合し薄膜を形成する。
【0043】
アルコキシシラン溶液は、使用直前に、コロイダルシリカの水分散液と金属酸化物粉末等と混合される。アルコキシシラン溶液とコロイダルシリカの水分散液との混合割合は、コロイダルシリカ(固形分)が、アルコキシシランに対して重量比で、0.01〜1となるように混合することが好ましい。
【0044】
コロイダルシリカ水分散液の水は、アルコキシシランの加水分解に寄与する。同時に、アルコキシシランがその加水分解の過程でコロイダルシリカのシラノール基と反応しコロイダルシリカを抱き込んだ形で薄膜を形成することができる。コロイダルシリカは、膜形性、膜の保持性及び放熱性、遮熱性に寄与する。
【0045】
また、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを混合させることができる。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、単体として使用してもよいし、溶液として使用することもできる。
【0046】
溶液として使用する場合には、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドの有機溶媒の溶液状態で使用してもよいし、アルコキシシランの溶液に更にチタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドを混合してもよい。
【0047】
そして、チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、アルコキシシランの珪素原子に対してチタン及び/又はアルミニウム原子が0.01〜0.5の割合で添加されることが好ましい。チタンアルコキシド及び/又はアルミニウムアルコキシドは、水によりアルコキシシランとともに共加水分解し、チタン及び又はアルミニウムを主鎖に含む薄膜を形成する。
【0048】
アルコキシシランとしては、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン(モノ有機基置換アルコキシシラン)、ジアルコキシシラン(ジ有機基置換アルキシシラン)等を使用することができる。これらアルコキシシランを適宜混合して使用することもできる。
【0049】
アルコキシシランは、使用直前までは、水の存在しない状態、即ち、水を含まない溶液の状態に保持する。溶液に使用する溶媒は、水の溶解する水溶性の溶媒を使用する。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホオキシド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド等の溶媒である。中でも、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル、N−メチルピロリドン、メチルフォルムアミド、メチルアセトアミド、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド等の溶媒が好適に使用できる。
【0050】
アルコキシシランの具体的な例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、ジチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、更には、エポキシ基を有する有機基を有していてもよい。チタンアルコキシドの具体的な例としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、アルミニウムアルコキシドの具体的な例としては、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムトリエトキシド等を使用することができる。但し、これらに限定されるものではない。
【0051】
コロイダルシリカは、周知技術に基づきテトラアルコキシシラン(テトラアルキルシリケート)を加水分解することにより容易に得ることができる。市販もされている。
【0052】
例えば、テトラエチルシリケートを塩酸、硝酸、アンモニア等の触媒の存在するエチルアルコールと水の混合液中に滴下し加水分解し、加水分解後エチルアルコールと触媒を、例えば、真空下に除去することにより、コロイダルシリカの水分散液を得る。このコロイダルシリカの粒径は、ミクロンオーダーないしそれ以下の小さいものである。コロイダルシリカは表面にシラノール基を有している。コロイダルシリカの水分散液中のコロイダルシリカの量は、10〜60重量%程度である。この量は、加水分解時に使用する水の量で適宜調製することができる。シリケートの加水分解後、水を加えて調製することもできる。
【0053】
アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液及び金属酸化物等との混合物を塗布して薄膜を形成する際には、直前に、アルコキシシランの溶液とコロイダルシリカの水分散液を先ず混合し、この混合液に金属酸化物粉末等を加えて懸濁液を得る。
【0054】
同時に、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液及び金属酸化物等を混合してもよい。これらの混合物は懸濁液となる。この懸濁液をCPU10や筐体14に塗布して薄膜を形成して、これを放熱膜18〜22とする。
【0055】
第1〜第3放熱膜18〜22の薄膜形成には、上述したアルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液に替えて、珪酸のアルカリ金属塩の水溶液を使用することができる。珪酸のアルカリ金属塩としては、具体的には、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムや珪酸リチウムを使用することができる。
【0056】
珪酸ナトリウム、珪酸カリウムや珪酸リチウム等の珪酸塩は、水溶液として供給されるので、珪酸のアルカリ金属塩の水溶液に金属酸化物、カオリンや窒化物を添加、混合し、更に、必要に応じて水を加えて懸濁液となし、この懸濁液を対象物に塗布することにより、薄膜を得ることができる。
【0057】
珪酸のアルカリ金属塩は、具体的には、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムや珪酸リチウムを使用しうるが、珪酸ナトリウム、珪酸カリウムの両者を混合使用するのがよい。
【0058】
混合使用する際、珪酸ナトリウムと珪酸カリウムの割合は重量で、珪酸カリウム1に対して珪酸ナトリウム0.5〜7(固形分ベース)が好ましい。これは、珪酸ナトリウムの量が多いと、皮膜の水除去、即ち、乾燥が困難で皮膜形成が難しく、また、珪酸カリウムの量が多いと膜形性能が低下するので、適量の珪酸ナトリウムと珪酸カリウムを併用使用するのが好ましい。
【0059】
また、第1〜第3放熱膜18〜22の薄膜形成には、シリコーン樹脂を含むエマルジョンを使用することができる。即ち、シリコーン樹脂を含むエマルジョンに酸化珪素、酸化アルミニウム及びカオリン等を混合し、更に、必要に応じて水を加えて懸濁液となし、この懸濁液をCPU10などに塗布し薄膜を形成する。
【0060】
シリコーン樹脂を含むエマルジョンに酸化珪素、酸化アルミニウム及びカオリン等を混合して得た懸濁液において、シリコーン樹脂エマルジョンがこの懸濁液に占める割合は30〜70重量%であることが好ましい。
【0061】
それは、シリコーン樹脂エマルジョンの量が少ないと、薄膜の安定性が低下し、同時に、膜のCPU10などへの接着性が低くなるからである。シリコーン樹脂エマルジョンの量が多すぎると、金属酸化物等の量が相対的に少なくなり、放熱効果が小さくなる。
シリコーン樹脂のエマルジョンは、非水溶性のシリコーン樹脂を主として水に分散させたエマルジョン状態のものである。シリコーン樹脂エマルジョンは、大別すると以下の5つの方法で得ることができる。
【0062】
すなわち、1)アルキルシリケート化合物又はその部分加水分解・縮合物を各種界面活性剤を用いて乳化し、水性エマルジョンとする方法(特開昭58−213046号公報)。このエマルジョンに、更に重合性ビニルモノマーを乳化重合したエマルジョンを混合することもできる(特開平6−344665号公報)、2)界面活性剤を使用せずにアルキルシリケート化合物を水中で加水分解して得られる水溶性ポリマーの存在下、ラジカル重合可能なビニルモノマーを乳化重合する方法(特開平8−60098号公報)、3)ビニル重合性アルキルシリケートを含有するアルキルシリケート混合物を加水分解・縮合することにより、固形のシリコーン樹脂を含む水性エマルジョンとし、更にラジカル重合性ビニルモノマーを加え、乳化重合することにより、グラフト共重合体微粒子(固形)エマルジョンを得る方法(特開平5−209149号、特開平7−196750号公報)、4)ラジカル重合性官能基を乳化重合したエマルジョンにアルキルシリケート化合物を添加し、加水分解・縮合させ、エマルジョン粒子中にシリコーン樹脂を導入する方法(特開平3−45628号、特開平8−3409号公報)、5)ビニル重合性官能基含有アルキルシリケートを、ラジカル重合性ビニルモノマーと共に乳化重合し、エマルジョンを作成する方法(特開昭61−9463号、特開平8−27347号公報)等の方法で得ることができる。また、市販品として入手することもできる。
【0063】
エマルジョンにするシリコーン樹脂は、耐熱性、接着性、電気的性質に優れるものである。エマルジョン状態のシリコーン樹脂は、金属酸化物や窒化物のバインダーとなるとともに、これら金属酸化物や窒化物を塗膜面に接着させ、安定した、強固な塗膜を形成する役割を担うものである。
【0064】
上記いずれかの方法で得たシリコーン樹脂を含むエマルジョンに、金属酸化物を含有させる。シリコーン樹脂を含むエマルジョンに金属酸化物等の粉末を添加混合して、エマルジョン性の懸濁液を得る。シリコーン樹脂を含むエマルジョンには、元々水が存在するので、この水に金属酸化物等が懸濁状態で混合され、シリコーン樹脂と金属酸化物等とを含むエマルジョン性の懸濁液を得ることができる。
【0065】
このエマルジョン性懸濁液に加える金属酸化物等の量が相対的に多くなると、エマルジョン性懸濁液の粘度が高くなる場合がある。このような場合には、適宜水を加えてエマルジョン性懸濁液の粘度を調節するのがよい。また、逆に、シリコーン樹脂を含むエマルジョンの水分量が多くて、金属酸化物等を含有させたエマルジョン性懸濁液の粘度が小さい場合もある。このように粘度の小さい場合は、適宜増粘剤を加えて粘度を調整することができる。
【0066】
さて、以上のように構成した密閉構造体用放熱装置によれば、外周を熱伝導体性の筐体14で囲繞した発熱体(CPU10)から放出する熱は、第1放熱膜18で遠赤外線に変換して、第2放熱膜20に放熱され、第2放熱膜20は、遠赤外線を吸収して、筐体14に伝導させ、筐体14は、第2放熱膜20から受けた熱を第3放熱膜22に伝導し、第3放熱膜22は、伝導された熱を遠赤外線に変換して、外部に放熱する。
【0067】
この際に、熱の伝達を行う第1〜第3放熱膜18〜22は、薄い膜状に形成されているので、発熱体(CPU10)を筐体14で囲繞する密封構造体16に殆ど影響を及ぼすことがないので、全体の大型化が回避され、かつ、筐体14で密閉した発熱体(CPU10)の熱を外部に放熱することができる。
【0068】
この場合、第1〜第3放熱膜18〜22として、上述したような薄膜、例えば、アルコキシシランの溶液、コロイダルシリカの水分散液、酸化珪素粉末、酸化アルミニウム粉末及びカオリン粉末との混合物から形成すると、遠赤外線への変換効率が高くなるので、より一層放熱効率を高くすることができる。
【0069】
図2は、本発明の作用効果を確認するために、本発明者らが行った実験装置の概要を示している。同図に示した実験装置は、発熱体としてヒーターH(外形が40×40×15mmで、表面がステンレス製、印加電力8W)を準備し、このヒーターHの外周をアルミニウム製の筐体B(外形が100×100×16mmで、厚みが1.0mm)で囲繞して、密閉構造体とした。
【0070】
そして、ヒーターHの外周全面と、筐体Bの内外周の全面に放熱膜aを形成した。この放熱膜aは、重量比でシリコーン樹脂エマルジョン50.8に、カリオン12、酸化珪素8.2、酸化アルミニウム12.3、酸化チタン6.2および酸化ジルコニウム10.5を添加混合して得られたエマルジョン性組成物を、100μの厚みにスプレーで塗布し、120℃で15分間乾燥させて、塗膜を形成した。
【0071】
実験条件は、ヒーターHに印加電力8Wを供給して、室温25℃の下で、ヒーターHの表面温度、筐体Bの内部温度、筐体Bの外壁温度をそれぞれ測定した。このときの測定結果を図3に示している。
【0072】
図3に示した測定結果では、グラフの下にブランクとして示した部分が、放熱膜aを形成していない個所の温度測定値であり、放熱膜aで示した部分が、これを形成した個所の温度測定値である。
【0073】
図3に示した測定結果から明らかなように、放熱膜aを形成すると、ヒーターHの表面温度が、142℃から109.4℃に低下し、約23%の温度低減効果が得られる。
【0074】
また、筐体Bの内部温度も58.7℃から50.1℃に低下することがわかるとともに、筐体Bの外壁温度は、殆ど変わらない。以上の実験から、明らかなように、本発明にかかる放熱装置では、筐体Bで密閉した発熱体(ヒーターH)の熱を外部に効率よく放熱することができる。
【0075】
なお、上記実施例では、筐体14の外表面に第3放熱膜22を形成した場合を例示したが、本発明の実施は、これに限る必要はなく、筐体14だけで十分な放熱効果が見込める場合には、第3放熱膜22は、必ずしも必要としない。また、筐体14で囲繞する発熱体は、CPU10に限る必要はなく、他の発熱体であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明にかかる密閉構造体用放熱装置によれば、大型化を回避しつつ、効果的に放熱することができるので、例えば、携帯電話やパソコンのCPUなどの放熱に適用して、広く活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明にかかる密閉構造体用放熱装置の一1実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の放熱装置の作用効果を確認するために行った実験装置の線断面図である。
【図3】図2に示した実験装置での実験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0078】
10 CPU
12 基板
14 筐体
16 密閉構造体
18 第1放熱膜
20 第2放熱膜
22 第3放熱膜
【出願人】 【識別番号】502135587
【氏名又は名称】セラミッション株式会社
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
【出願日】 平成16年4月28日(2004.4.28)
【代理人】 【識別番号】100088214
【弁理士】
【氏名又は名称】生田 哲郎

【公開番号】 特開2005−317742(P2005−317742A)
【公開日】 平成17年11月10日(2005.11.10)
【出願番号】 特願2004−133479(P2004−133479)