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【発明の名称】 黒色導電性メッシュ織物およびその製造方法
【発明者】 【氏名】後藤 昌利
【住所又は居所】福井県福井市毛矢1丁目10番1号 セーレン株式会社内

【氏名】水田 和宏
【住所又は居所】福井県福井市毛矢1丁目10番1号 セーレン株式会社内

【氏名】高橋 俊之
【住所又は居所】福井県福井市毛矢1丁目10番1号 セーレン株式会社内

【氏名】高木 進
【住所又は居所】福井県福井市毛矢1丁目10番1号 セーレン株式会社内

【要約】 【課題】表面導電性、黒色度、湿熱耐久性、防眩性に優れ、電子表示機器用の電磁波遮蔽材として適する黒色導電性メッシュ織物を提供する。

【解決手段】導電性金属層を有する長繊維糸条からなるメッシュ織物の表面に微細凹凸が形成され、該凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜が形成されていることを特徴とする黒色導電性メッシュ織物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性金属層を有する長繊維糸条からなるメッシュ織物の表面に微細凹凸が形成され、該凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜が形成されていることを特徴とする黒色導電性メッシュ織物。
【請求項2】
微細凹凸の深さが0.1〜1μmであることを特徴とする請求項1記載の黒色導電性メッシュ織物。
【請求項3】
101010表色系におけるY10値が3以下であることを特徴とする請求項1または2記載の黒色導電性メッシュ織物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の黒色導電性メッシュ織物からなる電磁波遮蔽材。
【請求項5】
導電性金属層を有する長繊維糸条からなるメッシュ織物の表面に微細凹凸を形成し、該凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜を形成することを特徴とする黒色導電性メッシュ織物の製造方法。
【請求項6】
微細凹凸を形成する方法が、エッチングもしくは凹凸めっきであることを特徴とする請求項4記載の黒色導電性メッシュ織物の製造方法。
【請求項7】
微細凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜を形成する方法が、無電解ニッケル亜鉛めっきであることを特徴とする請求項5または6記載の黒色導電性メッシュ織物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス板、透明樹脂板と積層され、テレビジョン、コンピュータ、プラズマディスプレイなどの電子表示機器の前面フィルタとして用いられる、電子表示機器から放射される電磁波を遮蔽し、且つ、電子表示機器画面に防眩性を与える黒色導電性メッシュ織物、およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
黒色導電性メッシュ織物は、繊維表面に金属被膜を有するメッシュ織物または金属繊維メッシュ織物の金属表面を黒色化することによって製造される。
【0003】
金属を黒色化する方法としては、(1)特許文献1に記載のように、銅被膜を有する物品を高温の酸化性アルカリ溶液に浸漬し、銅の表面に黒色酸化銅を形成させる方法、(2)特許文献2に記載のように、銅層を有する物品を、硫化物イオンを含有する水溶液に浸漬し、銅の表面に黒色硫化銅を形成させる方法、(3)特許文献3に記載のように、金属層を有する物品を、カーボンなどの黒色微粒子を含有するカチオン性懸濁液に浸漬し、金属層を有する物品を陰極として黒色微粒子を電気的に積層させる方法、(4)特許文献4に記載のように、亜鉛系合金層を有する物品に黒色クロメート処理を行う方法、(5)特許文献5に記載のように、金属被膜を有する物品を、ニッケルイオン、錫イオンを含有するめっき液に浸漬し、金属被膜を有する物品を陰極として黒色ニッケル錫合金めっきを電気的に析出させる方法、(6)特許文献6に記載のように、金属層を有する物品を、ニッケルイオン、亜鉛イオン、および硫黄含有化合物を含有するめっき液に浸漬し、金属層を有する物品を陰極として黒色ニッケル亜鉛合金めっきを電気的に析出させる方法、(7)特許文献7に記載のように、無電解めっきのための前処理が施された物品を、ニッケルイオン、亜鉛イオン、還元剤、および硫黄含有化合物を含有する無電解めっき液に浸漬し、黒色ニッケル亜鉛めっきを無電解的に析出させる方法などがある。
【0004】
【特許文献1】実公平5−8619号公報
【特許文献2】特開平11−330772号公報
【特許文献3】特開2000−281945号公報
【特許文献4】特開平5−156498号公報
【特許文献5】実用新案登録第3020121号公報
【特許文献6】特開2004−68138号公報
【特許文献7】特開平9−49085号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の方法には、以下の問題点があった。(1)、(2)の場合、形成される黒色酸化銅や黒色硫化銅は導電性がないため十分な表面導電性が得られない、かつ黒色酸化銅や黒色硫化銅の針状結晶がもろいため耐磨耗性が低い。(3)の場合、黒色微粒子の導電性が不十分であるため十分な表面導電性が得られない。(4)の場合、黒色クロメート処理液に6価クロムが含まれるため廃液処理が困難である。(5)の場合、ニッケル錫合金めっきの黒色度が不十分である。(6)の場合、ニッケル亜鉛合金めっきの亜鉛含有率が極端に高いため、湿熱環境下において白錆が発生する。(7)の場合、十分な黒色度を有するニッケル亜鉛めっきを達成するためには、高温で長時間のめっき処理が必要で、生産性の面で不利である。
【0006】
本発明の目的は、表面導電性、黒色度、湿熱耐久性、防眩性に優れ、電子表示機器用の電磁波遮蔽材として適する黒色導電性メッシュ織物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1に、導電性金属層を有する長繊維糸条からなるメッシュ織物の表面に微細凹凸が形成され、該凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜が形成されていることを特徴とする黒色導電性メッシュ織物である。
【0008】
本発明は、第2に、導電性金属層を有する長繊維糸条からなるメッシュ織物の表面に微細凹凸を形成し、該凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜を形成することを特徴とする黒色導電性メッシュ織物の製造方法である。
【0009】
本発明の黒色導電性メッシュ織物における上記の微細凹凸の深さは0.1〜1μmであることが好ましく、メッシュ織物の導電性金属層をエッチング処理または凹凸めっき処理することで好ましく形成される。
【0010】
また上記の微細凹凸上に設ける黒色導電性金属被膜はさらに微細な表面状態の黒色導電性金属被膜からなることが好ましく、黒色導電性金属を無電解めっきすることによって好ましく形成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の黒色導電性メッシュ織物は表面導電性、黒色度、湿熱耐久性、防眩性に優れており、電子表示機器用の電磁波遮蔽材として好適に用いられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明においてメッシュ織物とは、衣料用などに通常用いられる織物に比べ、糸条間隔が大きく、光透過性のものをいう。織物が遮光性であると、電子表示機器の前面フィルタに適用することができない。可視光透過率は50〜80%であることが好ましく、より好ましくは55〜75%である。可視光透過率が50%未満であると画面が暗く認識しにくくなり、また、可視光透過率が80%を越えると、製織及び加工性が悪くなる。
【0013】
メッシュ織物の組織としては、特に限定されるものでなく、平織り、朱子織り、綾織りなどを挙げることができる。なかでも、平織りは、経糸と緯糸が1本ずつ交互に交錯し合うので、経糸と緯糸の交点における拘束力が高く、形態安定性が増し、取り扱いに優れるので、好ましく用いられる。
【0014】
メッシュ織物を構成する糸条は、毛羽などの発生をおさえるために、長繊維(フィラメント)からなる糸条であることが要求される。その形態は、モノフィラメント糸条やマルチフィラメント糸条のいずれであってもよく、特に限定されない。
【0015】
繊維素材は、長繊維糸条をなし得るものであれば特に限定されるものでなく、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、無機繊維、金属繊維など特に限定されない。また、天然の長繊維である絹を用いることもできる。なかでも加工性や耐久性を考慮すると、合成繊維が好ましく用いられる。合成繊維として具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系繊維、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系繊維、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維などを挙げることができ、これらが2種類以上組み合わされていてもよい。本発明では、ポリエステル系繊維またはポリアミド系繊維がより好ましく用いられる。
【0016】
上記、長繊維糸条の線径(直径)は20〜50μmであることが好ましく、糸密度は、経糸密度、緯糸密度とも50〜300本/インチであることが好ましい。
【0017】
長繊維糸条の線径が20μm未満であると、製織が困難で加工性が悪くなる。線径が50μmを越えると、画面のモワレが発生しやすくなる。より好ましい線径は20〜40μmである。線径が20〜50μmである長繊維糸条の繊度は、その繊維素材によっても異なるが、通常4〜30dtex(デシテックス)に相当する。
【0018】
また、糸密度が50本/インチ未満であると、十分な電磁波遮蔽効果が得られない。糸密度が300本/インチを越えると、可視光透過率が低下し、前面フィルタとして電子表示機器画面の前面に用いたとき画面が暗くなる。より好ましい糸密度は100〜200本/インチである。
【0019】
長繊維糸条の線径、および糸密度が上記の数値範囲内にあるとき、糸条間に形成される孔1個あたりの面積は、通常、3600〜100000μmであり、開口率は通常50〜80%である。
【0020】
本発明において、導電性金属層を有する長繊維糸状からなるメッシュ織物とは、上記合成繊維、半合成繊維、再生繊維、無機繊維、または天然繊維からなる長繊維糸条を用いて構成されるメッシュ織物の繊維表面に金属被膜を形成したメッシュ織物(以下、金属被覆メッシュ織物と称する)、または金属繊維からなる長繊維糸条を用いて構成されるメッシュ織物(以下、金属繊維メッシュ織物と称する)をいう。
【0021】
金属被膜の形成に用いられる金属、および金属繊維の原料となる金属は、導電性、電磁波シールド性を有するものであれば特に限定されることはなく、例えば、金、銀、銅、ニッケル、クロムなどを用いることができるが、コスト、加工性、シールド性の点から銅が好ましい。
【0022】
メッシュ織物の繊維表面に金属被膜を形成するには、蒸着法、スパッタリング法、電気めっき法、無電解めっき法など従来公知の方法を採用することができる。なかでも、形成される被膜の均一性、および生産性を考慮すると、無電解めっき法、或いは無電解めっき法と電気めっき法の併用が好ましい。
【0023】
メッシュ織物の繊維表面に形成される金属被膜の定着を確実にするためには、予め、繊維表面に付着している糊剤、油剤、ゴミなどの不純物を、精練により除去しておくことが好ましい。精練は従来公知の方法を採用することができ、特に限定されない。
【0024】
さらに、表面電位の調整や、精練後に残留している油剤の除去を目的に、コンディショニングが行なわれる。コンディショニングは従来公知の方法を採用することができ、特に限定されない。例えば、表面電位の調整には、カチオン性界面活性剤が用いられ、アニオン性の触媒の吸着を促進している。また、油剤の除去には、非イオン性界面活性剤が用いられる。
【0025】
無電解めっきは、周知のように、触媒を付与した後、化学めっきすることにより行なわれる。触媒を付与するには、塩化錫溶液による感受性化の後、塩化パラジウム溶液による活性化を行う方法、錫パラジウムコロイドによる一液性触媒を付与した後、コロイド表面層の錫イオンを除去し触媒として有効なパラジウムを露出させる方法など、特に限定されない。次いで、金属塩、還元剤、緩衝剤、pH調整剤などからなる化学めっき浴で処理して、金属を析出させる。
【0026】
本発明の黒色導電性メッシュ織物は、上記金属被覆メッシュ織物、または金属繊維メッシュ織物の金属表面に微細凹凸が形成され、該凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜が形成された構成を有するものである。金属被覆メッシュ織物、または金属繊維メッシュ織物の金属表面に微細凹凸が形成されることにより、該メッシュ織物が積層されたテレビジョン、コンピュータ、プラズマディスプレイなどの画面に光が入射したとき、その反射光が乱反射光となり、ディスプレイへ防眩性を与えることができる。また、微細凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜が形成されることにより、黒色導電性メッシュ織物の黒色度がアップし、画面の色再現域をアップすることができる。
【0027】
黒色導電性金属被膜の表面状態は、先に形成された微細凹凸よりも、さらに微細な凹凸状(微粒子状)であることが好ましく、このように形成されることにより、乱反射がより一層促進され、防眩性に有効である。
【0028】
金属被覆メッシュ織物、または金属繊維メッシュ織物の金属表面に形成される微細凹凸の深さは、0.1〜1μmであることが好ましい。深さが0.1μm未満であると、十分な乱反射性能が得られず、画面へ防眩性を与えることができない。深さが1μmを越えると、金属被膜の強度が低下し、耐摩耗性が低下する。より好ましい深さは0.2〜0.8μmである。
【0029】
黒色導電性メッシュ織物の黒色度は、X101010表色系におけるY10値を指標として表すことができる。ここでX101010表色系とは、国際証明委員会(Commission Internationale de l’Eclairage)で1964年に採択した等色関数x(λ)、y10(λ)、z10(λ)に基づく3色表色系であり、Y10値は以下の式によって求められる。
【0030】
【数1】


【0031】
本発明においてX101010表色系におけるY10値は3以下であることが好ましく、より好ましくは2以下、さらに好ましくは0に限りなく近いことである。Y10値が3を越えると、灰色を帯びるようになり、黒色度が不十分になる。Y10値0は完全無反射体、例えばブラックホールでのみ達成することができ、現実的には存在しない。
【0032】
本発明の黒色導電性メッシュ織物は、金属被覆メッシュ織物、または金属繊維メッシュ織物の金属表面に微細凹凸を形成し、該凹凸上にさらに黒色導電性金属被膜を形成することにより製造することができる。
【0033】
より具体的には、金属被覆メッシュ織物、または金属繊維メッシュ織物の金属表面をエッチング処理、あるいは凹凸めっき処理することにより、表面に0.1〜1μmの深さを有する微細凹凸を形成する。次いで、微細凹凸の上に、さらに黒色導電性金属被膜を、めっき処理により形成する。
【0034】
本発明におけるエッチング処理は、従来公知の方法で実施することができ、金属層の種類によって適宜決定することができる。例えば、金属が銅の場合、亜塩素酸ナトリウム、水酸化ナトリウムからなる混合溶液に浸漬することにより実施することができる。
【0035】
エッチング液に含まれる亜塩素酸ナトリウムの濃度は、5〜15%が好ましく、8〜12%がより好ましい。亜塩素酸ナトリウムの濃度が5%未満であると、十分な深さを有する微細凹凸が形成されない。一方、亜塩素酸ナトリウムの濃度が15%を越えると、金属層の厚みが激しく減少し導電性が低下する。
【0036】
エッチング液に含まれる水酸化ナトリウムの濃度は、1〜5%が好ましく、2〜3%がより好ましい。水酸化ナトリウムの濃度が1%未満であると、十分な深さを有する微細凹凸が形成されない。一方、水酸化ナトリウムの濃度が5%を越えると、金属層の厚みが激しく減少し導電性が低下する。
【0037】
エッチング処理における浸漬時間、温度は、微細凹凸の深さを考慮して適宜決定することができるが、好ましくは、浸漬時間が30〜300秒(より好ましくは60〜200秒)であり、温度が50〜90℃(より好ましくは60〜80℃)である。浸漬時間が30秒未満であると十分な深さを有する微細凹凸が形成されない。一方、浸漬時間が300秒を越えると金属層の厚みが激しく減少し導電性が低下する。温度が50℃未満であると十分な深さを有する微細凹凸が形成されない。一方、温度が90℃を越えると金属層の厚みが激しく減少し導電性が低下する。
【0038】
こうして銅被膜の表面がエッチングされ微細凹凸が形成されるが、その表層には導電性のない酸化銅が存在するため、1〜10%の塩酸でこれを溶解除去する。
【0039】
また、金属がニッケルの場合のエッチング処理としては、塩化銅二水和物5〜15%、塩酸1%からなる、温度20〜50℃の混合溶液に1〜60秒間浸漬することにより実施することができる。
【0040】
本発明における凹凸めっき処理は、従来公知の方法で実施することができ、その方法は特に限定されないが、0.1〜1μmの深さの凹凸を形成し易いという理由により、電気めっきが好ましく採用される。用いる金属も特に限定されないが、黒色金属が析出されるという理由により、ニッケル亜鉛合金が好ましく用いられる。
【0041】
電気ニッケル亜鉛合金凹凸めっき処理は、ニッケルイオン、亜鉛イオン、錯化剤からなる混合溶液に、金属被覆メッシュ織物、または金属繊維メッシュ織物を浸漬し、メッシュ織物を陰極、ニッケル板を陽極として、電気めっきすることにより実施することができる。
【0042】
電気めっき液に含まれるニッケルイオンは、例えば、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウムなどを溶解することにより作製することができる。これらの化合物は1種または2種以上含まれていても良い。ニッケルイオンの濃度は、5〜60g/Lが好ましく、10〜40g/Lがより好ましい。ニッケルイオンの濃度が5g/L未満であると、めっき被膜が正常に形成されないし、かつ十分な凹凸を有するめっき被膜が形成されない。一方、ニッケルイオンの濃度が60g/Lを越えても特に問題はないが、リール to リール方式による導電性メッシュの連続めっきを行った場合、液の持ち出しによる生産コストのアップにつながる。
【0043】
電気めっき液に含まれる亜鉛イオンは、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛アンモニウム、硫酸亜鉛などを溶解することにより作製することができる。これらの化合物は1種または2種以上含まれていても良い。亜鉛イオンの濃度は、5〜50g/Lが好ましく、10〜20g/Lがより好ましい。亜鉛イオンの濃度が5g/L未満であると、めっき被膜が正常に形成されないし、かつ十分な凹凸を有するめっき被膜が形成されない。一方、亜鉛イオンの濃度が60g/Lを越えても特に問題はないが、リール to リール方式による導電性メッシュの連続めっきを行った場合、液の持ち出しによる生産コストのアップにつながる。
【0044】
電気めっき液に含まれる錯化剤は、例えば、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、酪酸、酢酸、蟻酸、酒石酸などのカルボン酸類、およびその塩、あるいはアンモニア、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸などのアミン類、およびその塩を挙げることができる。
【0045】
錯化剤の濃度は、1〜50g/Lが好ましく、5〜20g/Lがより好ましい。錯化剤の濃度が1g/L未満であると、めっき液の安定性が低下し、かつ耐摩耗性が低下する。錯化剤の濃度が50g/Lを越えると十分な凹凸を有するめっき被膜が形成されない。
【0046】
電気めっきにおける浸漬時間、温度、陰極電流密度は、黒色めっきの色相、膜厚を考慮して適宜決定することができる。好ましくは、浸漬時間が10〜600秒(より好ましくは30〜200秒)であり、温度が10〜80℃(より好ましくは15〜50℃)であり、陰極電流密度が0.1〜2A/dm(より好ましくは0.3〜1A/dm)である。
【0047】
浸漬時間が10秒未満であると十分な凹凸を有するめっき被膜が形成されない。一方、浸漬時間が600秒を越えると十分な密着性を有するめっき被膜が得られない。温度が10℃未満であると金属イオンの溶解度が減少し、限界電流密度が低下する。一方、温度が80℃を越えるとめっきムラになる。陰極電流密度は0.1A/dm未満であると十分な凹凸を有するめっき被膜が得られないし、めっきに時間がかかる。一方、陰極電流密度が2A/dmを越えると、限界電流密度を越え、水素が発生する。
【0048】
エッチング処理、あるいは凹凸めっき単独では十分な黒色度を有する導電性メッシュ織物が得られない。そこでさらに黒色めっき処理を行い、X101010表色系におけるY10値が3以下の黒色導電性メッシュ織物を作製する。
【0049】
本発明における黒色めっき処理は、従来公知の方法で実施することができ、その方法は特に限定されないが、十分な黒色度を得やすいという理由により、無電解ニッケル亜鉛合金めっきが好ましく採用される。
【0050】
無電解ニッケル亜鉛合金めっき処理は、ニッケルイオン、亜鉛イオン、還元剤、錯化剤、pH調整剤からなる混合溶液に、エッチング処理、あるいは凹凸めっき処理されたメッシュ織物を浸漬することにより実施することができる。
【0051】
無電解めっき液に含まれるニッケルイオンは、例えば、塩化ニッケル、酢酸ニッケル、クエン酸ニッケル、硫酸ニッケル、硫酸ニッケルアンモニウムなどを溶解することにより作製することができる。これらの化合物は1種または2種以上含まれていてもよい。ニッケルイオンの濃度は、1〜10g/Lが好ましく、2〜6g/Lがより好ましい。ニッケルイオンの濃度が1g/L未満であると、めっき被膜が正常に形成されない。一方、ニッケルイオンの濃度が10g/Lを越えると、めっき液の安定性が低下し、めっき槽壁への析出が発生する。
【0052】
無電解めっき液に含まれる亜鉛イオンは、例えば、塩化亜鉛、塩化亜鉛アンモニウム、硫酸亜鉛などを溶解することにより作製することができる。これらの化合物は1種または2種以上含まれていてもよい。亜鉛イオンの濃度は、0.2〜5g/Lが好ましく、0.6〜2.5g/Lがより好ましい。亜鉛イオンの濃度が0.2g/L未満であると、めっき被膜が正常に形成されないし、十分な黒色度が得られない。一方、亜鉛イオンの濃度が5g/Lを越えると、めっき液の安定性が低下してめっき槽壁への析出が発生するし、めっきの色相が茶色になる。
【0053】
無電解めっき液に含まれる還元剤は、例えば、次亜りん酸ナトリウム、次亜りん酸カリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ジメチルアミノボラン、ジエチルアミノボラン、ヒドラジンなどを挙げることができる。これらの化合物は1種または2種以上含まれていてもよい。還元剤の濃度は、0.1〜100g/Lが好ましく、10〜40g/Lがより好ましい。還元剤の濃度が0.1g/L未満であると、十分な黒色度を有するめっき被膜が得られない。一方、還元剤の濃度が100g/Lを越えると、めっき浴が不安定になり、分解したり、槽内析出が発生したりする。
【0054】
無電解めっき液に含まれる錯化剤は、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、マロン酸、マレイン酸、グリコール酸、乳酸、サリチル酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グリシンなどのカルボン酸類、およびその塩、あるいはアンモニア、エチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸などのアミン類、およびその塩を挙げることができる。錯化剤の濃度は、1〜200g/Lが好ましく、10〜40g/Lがより好ましい。錯化剤の濃度が1g/L未満であると、液の安定性が低下し、槽壁への析出が発生する。一方、錯化剤の濃度が200g/Lを越えると、金属イオンの還元に要する活性化エネルギーが増大し、析出速度が低下する。
【0055】
なお、上記錯化剤は、pH緩衝剤としても作用し得るものである。
【0056】
無電解めっき液に含まれるpH調整剤は、例えば、硫酸、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニアを挙げることができる。無電解めっき液のpHは7〜11が好ましく、8〜10がより好ましい。pHが7未満であると、無電解反応が進行せず、十分な黒色度を有するめっき被膜が得られない。一方、pHが11を越えると、めっき液が分解したり、槽内析出が発生したりする。
【0057】
無電解めっきにおける浸漬時間、温度は、黒色めっきの色相、膜厚を考慮して適宜決定することができるが、好ましくは浸漬時間が10〜600秒(より好ましくは30〜200秒)であり、温度が30〜80℃(より好ましくは40〜60℃)である。浸漬時間が10秒未満であると、十分な黒色度を有するめっき被膜が得られない。一方、浸漬時間が600秒を越えると、めっき膜厚が厚くなり、テレビジョン、コンピュータ、プラズマディスプレイなどの前面フィルタとして使用したときの光透過率が低下する。温度が30℃未満であると、無電解反応が進行せず、十分な黒色度を有するめっき被膜が得られない。一方、めっき温度が80℃を越えるとめっき液が分解したり、槽内析出が発生したりする。
【0058】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0059】
実施例1:
100×100cmのポリエステルメッシュ(ポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント糸条、線径30μm、糸密度135本/インチ、可視光透過率70%)を常法により精練、熱処理(プレセット)後、表1に示すコンディショニング、触媒付与、活性化を行い、次いで表2に示す無電解銅めっき処理を行った。
【0060】
さらに表3に示すエッチング処理を行った。形成された微細凹凸の深さは0.7μmであった。さらに1mol/L塩酸に30秒間浸漬して酸化銅を溶解除去後、表4に示す無電解ニッケル亜鉛めっき処理を行った。なお、無電解ニッケル亜鉛めっき処理を行う際には、めっき核づけのために、陰極電流密度0.5A/dmの電流を30秒間印加した。
【0061】
【表1】


【0062】
【表2】


【0063】
【表3】


【0064】
【表4】


【0065】
実施例2:
100×100cmのポリエステルメッシュ(ポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント糸条、線径30μm、糸密度135本/インチ、可視光透過率70%)を常法により精練、熱処理(プレセット)後、表1に示すコンディショニング、触媒付与、活性化を行い、次いで表2に示す無電解銅めっき処理を行った。
【0066】
さらに表5に示す電気ニッケル亜鉛めっき処理を行った。陽極にはニッケル板を使用した。形成された微細凹凸の深さは0.5μmであった。さらに表6に示す無電解ニッケル亜鉛めっき処理を行った。
【0067】
【表5】


【0068】
【表6】


【0069】
実施例3:
100×100cmのポリエステルメッシュ(ポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント糸条、線径30μm、糸密度135本/インチ、可視光透過率70%)を常法により精練、熱処理(プレセット)後、表1に示すコンディショニング、触媒付与、活性化を行い、次いで表2に示す無電解銅めっき処理を行った。
【0070】
さらに表7に示す電気亜鉛めっき処理を行った。陽極には亜鉛板を使用した。形成された微細凹凸の深さは0.05μmであった。さらに表4に示す無電解ニッケル亜鉛めっき処理を行った。
【0071】
【表7】


【0072】
比較例1:
100×100cmのポリエステルメッシュ(ポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント糸条、線径30μm、糸密度135本/インチ、可視光透過率70%)を常法により精練、熱処理(プレセット)後、表1に示すコンディショニング、触媒付与、活性化を行い、次いで表2に示す無電解銅めっき処理を行った。
【0073】
さらに表3に示すエッチング処理を行った。形成された微細凹凸の深さは0.7μmであった。
【0074】
比較例2:
100×100cmのポリエステルメッシュ(ポリエチレンテレフタレート製モノフィラメント糸条、線径30μm、糸密度135本/インチ、可視光透過率70%)を常法により精練、熱処理(プレセット)後、表1に示すコンディショニング、触媒付与、活性化を行い、次いで表2に示す無電解銅めっき処理を行った。
【0075】
さらに表5に示す電気ニッケル亜鉛めっき処理を行った。陽極にはニッケル板を使用した。形成された微細凹凸の深さは0.5μmであった。
【0076】
実施例1、2、3および比較例1、2の方法で作製した黒色導電性メッシュ織物の表面導電性、およびX101010表色系におけるY10値、および湿熱環境下における白錆発生状況を、表8に示す。表面導電性は、黒色導電性メッシュの表面抵抗値を低抵抗計ロレスターEP MCP−T360(三菱化学株式会社製)で100回測定し、導通性を確認できた割合により評価した。また、X101010表色系におけるY10値は、分光色測計(Gretag Macbeth製Color−Eye 3000)により測定した。また、湿熱環境下における白錆発生状況は、60℃、90%の湿熱環境下に1000時間静置したときの状態により判断した。
【0077】
【表8】


【0078】
実施例1、2の方法で作製した黒色導電性メッシュ織物は、十分な表面導電性、および黒色度を有し、湿熱環境下における白錆発生もなかった。また、実施例3の方法で作製した黒色導電性メッシュ織物は、微細凹凸の深さが0.1μm以下であったため、十分な乱反射性能が得られず、Y10値が実施例1、2に比較し若干大きくなった。比較例1の方法で作製した黒色導電性メッシュ織物は、十分な黒色度を有したものの、表面が酸化銅で覆われているため、十分な表面導電性が得られなかった。また、比較例2の方法で作製した黒色導電性メッシュ織物は、十分な表面導電性を有したものの、めっき被膜がグレー色であり、十分な黒色度が得られなかった。また白錆も発生した。
【出願人】 【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
【住所又は居所】福井県福井市毛矢1丁目10番1号
【出願日】 平成16年4月23日(2004.4.23)
【代理人】 【識別番号】100071755
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 武彦

【識別番号】100070530
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 泰之

【公開番号】 特開2005−311189(P2005−311189A)
【公開日】 平成17年11月4日(2005.11.4)
【出願番号】 特願2004−128620(P2004−128620)