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【発明の名称】 多層基板
【発明者】 【氏名】浅井 康富
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内

【氏名】長坂 崇
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地 株式会社デンソー内

【要約】 【課題】半導体素子等、パワー素子による発熱を効率的に放熱する。

【解決手段】多層基板2は、アルミナよりなる3つの絶縁層1a,1b,1cを重ねて形成されている。多層基板2の絶縁層1aには熱伝達用導体としての充填金属4aからなるヒートシンクS1が形成され、その下方の絶縁層1bには熱伝達用導体としての充填金属4bからなるヒートシンクS2が形成されている。ヒートシンクS1,S2は、多層基板2の表層に対して平行となる図の横方向に延設されている。このうちヒートシンクS2の横方向の長さはヒートシンクS1の横方向の長さよりも大きく、ヒートシンクS1,S2はピラミッド状に形成されている。ヒートシンクS1の上にはパワー素子6が搭載されている。パワー素子6で発生した熱はヒートシンクS1,S2を伝わって約45°下方の方向に放熱される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層からなり基板表層にパワー素子が搭載されると共に、パワー素子下部領域の絶縁層に熱伝達用導体からなるヒートシンクを設けた多層基板であって、
前記ヒートシンクは、前記パワー素子下方の絶縁層に設けられた第1のヒートシンク部と、その第1のヒートシンク部よりも下方の絶縁層に設けられ、前記基板表層に平行となる方向に延びる第2のヒートシンク部とを有し、
前記第2のヒートシンク部の面積を前記第1のヒートシンク部の面積よりも大きくするとともに、前記第1のヒートシンク部及び第2のヒートシンク部の中心を同一にして両ヒートシンク部を配置したことを特徴とする多層基板。
【請求項2】
複数の絶縁層からなり基板表層にパワー素子が搭載されると共に、パワー素子下部領域の絶縁層に熱伝達用導体からなるヒートシンクを設けた多層基板であって、
前記ヒートシンクは、前記パワー素子下方の絶縁層に設けられた第1のヒートシンク部と、その第1のヒートシンク部よりも下方の絶縁層に設けられ、前記基板表層に平行となる方向に延びる第2のヒートシンク部とを有し、
前記第1のヒートシンク部及び第2のヒートシンク部は、一部が上下に重なった状態で、かつ前記パワー素子を制御するための制御回路から離れる方向にずらして配置される多層基板。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多層基板において、
前記ヒートシンクとパワー素子とが対向配置されている多層基板。
【請求項4】
請求項3に記載の多層基板において、
前記ヒートシンクにおける対向面の面積を、前記パワー素子における対向面の面積よりも大きくした多層基板。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の多層基板において、前記パワー素子下部領域の絶縁層には充填金属収納用貫通部が形成され、該充填金属収納用貫通部内に前記熱伝達用導体からなるヒートシンクが充填されている多層基板。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の多層基板において、前記多層基板はアルミナ基板であるとともに、前記熱伝達用導体からなるヒートシンクは少なくともアルミナを含む多層基板。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1つに記載の多層基板において、前記多層基板はアルミナ基板であるとともに、前記熱伝達用導体からなるヒートシンクは少なくともモリブデンを含む多層基板。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の多層基板において、前記第2のヒートシンク部の一端は前記基板表層の反対側の基板裏面に露出するとともに、前記第2のヒートシンク部には多数のホールが形成されている多層基板。
【請求項9】
請求項1乃至7の何れか1つに記載の多層基板において、前記基板表層の反対側の基板裏面には放熱板が接合される多層基板。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1つに記載の多層基板において、前記第1のヒートシンク部が設けられた絶縁層と前記第2のヒートシンク部が設けられた絶縁層との間には、熱伝達用導体からなるヒートシンクが設けられていない絶縁層が介在し、前記第1のヒートシンク部と前記第2のヒートシンク部とは電気的に絶縁されている多層基板。
【請求項11】
請求項10に記載の多層基板において、前記第1のヒートシンク部の一端は前記基板表層に露出するととともに、前記第2のヒートシンク部の一端は前記基板表層の反対側の基板裏面に露出している多層基板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は多層基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、多層基板においては、例えば図14に示すように、多層よりなるセラミック基板31上にCuやAgよりなる厚膜導体32が印刷焼成にて形成され、その上に半田33を介してMoやCuよりなるヒートシンク34が配置され、さらにその上に半田35を介してパワー素子36が実装されている。尚、図中、37はワイヤであり、38はチップターミナルである。
【0003】
ところが、上記の如くセラミック基板31上にヒートシンク34を配置する構造では、過渡的な熱抵抗を下げ、且つヒートシンク34のコストダウン及び実装容積の縮小を実現することは困難であった。そこで、従来、半導体素子直下の多層基板にスルーホールを形成し、そこに金属ペーストを充填してヒートシンクとして用いた多層基板が提案されている(例えば、特開平3−286590号公報)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術(上記公報)では、ヒートシンクが半導体素子に対して垂直方向にしか形成されておらず、放熱性においては垂直方向のみにその効果が得られるだけであり、ヒートシンクとしての効果が十分に発揮されていない。即ち、半導体素子による発熱は、半導体素子直下の基板に対して広角に(ほぼ45°下方に)発散するように考えることができる。従って、上記公報のように半導体素子の下方のみにヒートシンクを形成したとしても45°方向に広がる熱までも十分に放熱することができない。
【0005】
そこで、この発明は上記課題に着目してなされたものであって、その目的は、半導体素子等、パワー素子による発熱を効率的に放熱することができる多層基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、複数の絶縁層からなり基板表層にパワー素子が搭載されると共に、パワー素子下部領域の絶縁層に熱伝達用導体からなるヒートシンクを設けた多層基板であって、前記ヒートシンクは、前記パワー素子下方の絶縁層に設けられた第1のヒートシンク部と、その第1のヒートシンク部よりも下方の絶縁層に設けられ、前記基板表層に平行となる方向に延びる第2のヒートシンク部とを有し、前記第2のヒートシンク部の面積を前記第1のヒートシンク部の面積よりも大きくするとともに、前記第1のヒートシンク部及び第2のヒートシンク部の中心を同一にして両ヒートシンク部を配置している。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、半導体素子等、パワー素子により発生した熱は、第1のヒートシンク部並びに第2のヒートシンク部により吸収、発散される。このとき、第2のヒートシンク部は、第1のヒートシンク部よりも下方であって且つ基板表層に平行となる少なくとも一方向に延設されているため、パワー素子による熱は基板表層に垂直な方向だけでなく他の方向にも放熱され、放熱性が向上する。つまり、熱が例えばパワー素子の下方45°に伝達されるとした場合にも、その際に最も効果的なヒートシンクを多層基板内に設けることが可能となる。また、請求項1に記載の発明によれば、第2のヒートシンク部の面積を第1のヒートシンク部の面積よりも大きくするとともに、第1のヒートシンク部及び第2のヒートシンク部の中心を同一にして両ヒートシンク部を配置しているため、パワー素子による発熱が拡散しながら伝達されることから、より効率の良い放熱が可能となるとともに、ヒートシンクがピラミッド状に積層されることになるため、広角な範囲での放熱が可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、複数の絶縁層からなり基板表層にパワー素子が搭載されると共に、パワー素子下部領域の絶縁層に熱伝達用導体からなるヒートシンクを設けた多層基板であって、前記ヒートシンクは、前記パワー素子下方の絶縁層に設けられた第1のヒートシンク部と、その第1のヒートシンク部よりも下方の絶縁層に設けられ、前記基板表層に平行となる方向に延びる第2のヒートシンク部とを有し、前記第1のヒートシンク部及び第2のヒートシンク部は、一部が上下に重なった状態で、かつ前記パワー素子を制御するための制御回路から離れる方向にずらして配置している。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、熱伝導に方向性を持たすことができるとともに、制御回路を有する場合には、その制御回路に与える熱影響が解消できる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の発明において、前記ヒートシンクとパワー素子とが対向配置されている。請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の発明において、前記ヒートシンクにおける対向面の面積を、前記パワー素子における対向面の面積よりも大きくした。
【0011】
請求項5に記載の発明では、請求項1乃至4の何れか1つに記載の多層基板において、前記パワー素子下部領域の絶縁層には充填金属収納用貫通部が形成され、該充填金属収納用貫通部内に前記熱伝達用導体からなるヒートシンクが充填されている。
【0012】
請求項5に記載の発明によれば、絶縁層の厚さを調整することにより、所望のヒートシンク厚さを容易に形成することができる。
【0013】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至5の何れか1つに記載の多層基板において、前記多層基板はアルミナ基板であるとともに、前記熱伝達用導体からなるヒートシンクは少なくともアルミナを含んでいる。
【0014】
請求項6に記載の発明によれば、充填金属の熱膨脹率をアルミナ基板の熱膨脹率に近づけることができるため、アルミナ基板と充填金属の熱応力を低く抑えることができる。
【0015】
請求項7に記載の発明では、請求項1乃至6の何れか1つに記載の多層基板において、前記多層基板はアルミナ基板であるとともに、前記熱伝達用導体からなるヒートシンクは少なくともモリブデンを含んでいる。
【0016】
請求項7に記載の発明によれば、モリブデンは高融点材料(多層基板の焼成温度よりも融点の高い材料)であるため、グリーンシートに充填金属のペーストを充填した後、グリーンシートを千数百℃以上で焼成しても充填金属であるモリブデンが融けることがない。
【0017】
請求項8に記載の発明では、請求項1乃至7の何れか1つに記載の多層基板において、前記第2のヒートシンク部の一端は前記基板表層の反対側の基板裏面に露出するとともに、前記第2のヒートシンク部には多数のホールが形成されている。
【0018】
請求項8に記載の発明によれば、第2のヒートシンク部に形成されたホールにより第2のヒートシンクの放熱面積が増し、放熱性が向上する。
【0019】
請求項9に記載の発明では、請求項1乃至6の何れか1つに記載の多層基板において、前記基板表層の反対側の基板裏面には放熱板が接合される。
【0020】
請求項9に記載の発明によれば、より効率の良い放熱が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、この発明を具体化した実施例を図面に従って説明する。図1に全体構成図を示す。多層基板2は、アルミナよりなる3つの絶縁層1a,1b,1cを重ねて形成されている。多層基板2の最上層の絶縁層1aにおける所定領域には充填金属収納用貫通部(以下、単に貫通部という)3aが形成され、この貫通部3a内に熱伝導性のよい熱伝達用導体としての充填金属4aが充填されている。また、絶縁層1aの下層にあたる絶縁層1bの所定領域には充填金属収納用貫通部(以下、単に貫通部という)3bが形成され、この貫通部3b内には前記充填金属4aと同じ金属からなる熱伝達用導体としての充填金属4bが充填されている。尚、本実施例では、上記充填金属4a,4bによりヒートシンクS1,S2が構成されており、充填金属4aの部分が第1のヒートシンク部に、充填金属4bの部分が第2のヒートシンク部に相当する。
【0022】
ヒートシンクS1,S2は、多層基板2の表層(基板表層)に対して平行となる図の横方向に延設されており、このうちヒートシンクS2の横方向の長さはヒートシンクS1の横方向の長さよりも大きい。即ち、ヒートシンクS2の上面(下面)での面積はヒートシンクS1の上面(下面)での面積よりも大きい。このとき、ヒートシンクS1,S2の中心はほぼ同一であるため、その断面形状はピラミッド状をなしている。また、ヒートシンクS1,S2(充填金属4a,4b)は、絶縁層1bにおける内層配線5と電気的に接続されている。
【0023】
充填金属4a,4bには、高融点材料であるMo(モリブデン)粒子とアルミナ粒子の混合物が用いられている。ここで、Mo(モリブデン)は、その熱伝導度が0.328cal・cm-1deg-1-1(20℃)、融点が2622±10℃である。他の充填金属4a,4bとしては、高融点材料であるW(タングステン)粒子とアルミナ粒子の混合物、或いは、Mo(モリブデン)粒子とW(タングステン)粒子とアルミナ粒子との混合物が使用される。W(タングステン)は、その熱伝導度が0.382cal・cm-1deg-1-1(20℃)、融点が3382℃である。
【0024】
ヒートシンクS1(充填金属4a)の上にはパワー素子6(シリコンチップ)が半田(或いはAgペースト)によりダイマウントされている。また、パワー素子6はワイヤ7にて多層基板2の最上層の絶縁層1a上の導体部と電気的に接続されている。
【0025】
次に、多層基板2の製造方法を図2〜図6を用いて説明する。図2に示すように、平板状のアルミナグリーンシート8(図1の絶縁層1aに相当する)を用意する。このアルミナグリーンシート8の厚みは0.254mmである。そして、アルミナグリーンシート8の所定領域に正方形状の貫通部3aをパンチングにより形成する。尚、貫通部3aはスルーホールの形成と同一工程で作ってもよい。
【0026】
その後、図3に示すように、貫通部3bを形成したアルミナグリーンシート9(図1の絶縁層1bに相当する)と、貫通部の無いアルミナグリーンシート10(図1の絶縁層1cに相当する)とを2枚重ねにし、エマルジョンマスク或いはメタルマスクを用いてMo粒子とアルミナ粒子を混合したペースト11を印刷により貫通部3bに充填する。さらにその上に、前記アルミナグリーンシート8を重ね合わせる。その結果、図4のものが得られる。
【0027】
さらに、図5に示すように、エマルジョンマスク或いはメタルマスクを用いてMo粒子とアルミナ粒子を混合したペースト11を印刷により貫通部3aに充填する。
【0028】
その後、積層されたアルミナグリーンシート8〜10を加圧し、千数百℃以上で焼成することにより、多層セラミック基板を得る。さらに、焼成された多層基板の表面の導体部分(ペースト11を焼成した充填金属4、メタライズ)に接合性を向上させるためにメッキを施す。そして、多層基板の表面または裏面に厚膜導体、厚膜抵抗体、ガラス等の印刷・焼成を繰り返す。
【0029】
そして、図6に示すように、ペースト11を焼成した充填金属4に、パワー素子6を半田(或いはAgペースト)によりダイマウントし、ワイヤ7によるワイヤーボンドを施す。その結果、図1に示す多層基板2が形成される。
【0030】
この図1の構成においては、パワー素子6に発生する熱がヒートシンクS1,S2(充填金属4a,4b)で吸収できる。このとき、充填金属4a,4bの成分であるMo(モリブデン)自体も極めて低抵抗であるため、充填金属4a,4bを配線として考えた場合には基板全体の発熱を軽減できる。
【0031】
また、図1の構成では、下側のヒートシンクS2の横方向の幅を上側のヒートシンクS1の横方向の幅よりも大きくし、両ヒートシンクS1,S2をピラミッド状に多層配置した。かかる場合、パワー素子6で発生した熱は、同素子6の下方へ向けて広角(約45°の角度)で伝達されるが、この熱がヒートシンクS1,S2でいち早く吸収される。その結果、パワー素子6での発熱をより効果的に放熱させることが可能となる。
【0032】
さらに、充填金属4a,4bにて構成されるヒートシンクS1,S2を絶縁層1a,1bの厚さに応じて厚くすることができるので、表層導体(図18の厚膜導体32)を使用した場合に比べ電気抵抗を数10分の1にできる。さらには、熱抵抗も例えば、Mo単体の80〜90%程度になるが充填金属4a,4bの厚みや面積を大きくして充填金属4a,4bの体積を増加することにより、図18のヒートシンク34を使用したものよりも熱抵抗を小さくすることができる。
【0033】
また、充填金属4a,4bにはMo粒子に対しアルミナ粒子を混合してあるので、充填金属4a,4bの熱膨張率をアルミナ基板の熱膨張率に近づけることができる。よって、アルミナ基板と充填金属4a,4bの熱応力を低く抑えることができる。
【0034】
さらに本実施例では、表層(絶縁層1a)内に熱伝導性のよい充填金属4a(熱伝達用導体)を充填し、その充填金属4a上にパワー素子6を配置した。また、絶縁層1bには、充填金属4aに接触させて充填金属4b(熱伝達用導体)を充填した。よって、パワー素子6で発生した熱は、表層(絶縁層1a)内の充填金属4a及びその下層(絶縁層1b)の充填金属4bを通して伝達され放熱される。この際、従来のヒートシンクが基板内に配置されていると考えるならば、充填金属4a,4bの体積を大きくすることにより過渡熱抵抗を下げることができ、このように過渡熱抵抗を下げることができるのでヒートシンクを薄くして定常熱抵抗を下げることが可能となる。換言すれば、従来のように表層の上方に突出したヒートシンクは不要、若しくはヒートシンクを小さくすることが可能となり、コストダウンが図れると共に実装容積を縮小させることができる。さらに、放熱のために高価なAlN等の基板材料を使用する必要もなくなり安価に熱伝導性の優れた基板を作成することが可能となる。
【0035】
また、充填金属4a,4bには、高融点材料(多層基板2の焼成温度よりも融点の高い材料)であるMo(融点;2622±10℃)の粒子を使用したので、グリーンシートに充填金属のペーストを充填した後、グリーンシートを千数百℃以上で焼成しても充填金属であるMoが融けることがない。
【0036】
また、図1では、多層基板2内において横方向に延びるヒートシンクS2を埋設したため、基板表面の高密度化が可能になる。尚、この発明は上記実施例に限定されるものでなく、その変形例を以下に記述する。例えば図7において、多層基板2の表層(絶縁層1a)にはヒートシンクが配置されておらず、2層目以降の絶縁層1b,1cにヒートシンクS1,S2が2段に配置されている。この場合、ヒートシンクS1,S2はパワー素子6に接触していないが、接触している場合(例えば、図1の場合)に近い効果が期待できる。
【0037】
また、図8は前述の図1を変形した具体例を示す。図8において、多層基板2の絶縁層1a,1bには図1と同様のヒートシンクS1,S2が形成されている。また、絶縁層1cには、絶縁層1bのヒートシンクS2よりも横方向に幅の長いヒートシンクS3が形成されている。この場合、絶縁層1b,1cのヒートシンクS2,S3が第2のヒートシンク部に相当する。この構成でも、ヒートシンクS1〜S3がピラミッド状に多層配置される構造となるため、約45°方向で広がる熱(パワー素子6による発熱)を効率的に吸収し、放熱性を高めることができる。尚、最下層のヒートシンクS3は、特にヒートシンク全域に充填金属を充填させなくてもよく、ヒートシンクS3に複数の貫通穴を形成してもよい。
【0038】
また、図8の多層基板2において、表層の反対側の基板裏面には、接着剤21によりアルミニウム製の放熱板22が接合されている。この場合、接着剤21に高熱伝導性のものを使用することにより、熱抵抗を大幅に低減させることができる。
【0039】
図9は他の実施例の構成を示す。図9において、多層基板2は4層の絶縁層1a〜1dを有し、パワー素子6直下の絶縁層1a及び絶縁層1b(絶縁層1aだけでも可)には、比較的幅の狭いヒートシンクS4(第1のヒートシンク部)が設けられている。また、絶縁層1cを隔てた最下層の絶縁層1dには、比較的幅の広いヒートシンクS5(第2のヒートシンク部)が設けられている。この場合、パワー素子6による発熱は絶縁層1c(充填金属の無い層)を経由して最下層(絶縁層1d)のヒートシンクS5に伝達される。つまり、熱は基板裏面から放熱されることになる。尚、パワー素子6直下のヒートシンクS4に電流が流れない構成であれば、そのヒートシンクS4と最下層のヒートシンクS5とを直接、接続することができ、それにより大きな放熱効果が得られる。
【0040】
図10は図9の変形例を示す。図10の多層基板2において、絶縁層1dの下方には絶縁層1eが設けられ、この絶縁層1eには、ヒートシンクS5と同じ幅のヒートシンクS6が設けられている。このヒートシンクS6には多数のホール23が形成されている。この場合、ホール23によりヒートシンクS6の放熱面積が増し、放熱性が向上する。
【0041】
ここで、図11には、図10における絶縁層1eの形成過程を示す。つまり、図11(a)において、アルミナグリーンシート24に矩形状の貫通部25を成形し、そこに充填金属26を充填する。そして、充填金属26を乾燥させた後に、図11(b)に示すように、例えば円形状(四角形状,長穴形状等、形状は任意でよい)のホール27をパンチング等により成形する。
【0042】
さらに、図12は他の変形例の構成を示す。図12において、多層基板2の表層には、IC回路(チップ)50及びコンデンサ51が設けられると共に、その下方領域には内部抵抗52及び抵抗53等が設けられており(以下、制御回路55という)、この制御回路55によりパワー素子6が駆動されるようになっている。ヒートシンクS7〜S9は、上記制御回路55から離れる方向(図の左下方)に階段状に設けられている。この場合、上記制御回路55は、概してパワー素子6による発熱の影響を受け易いが、ヒートシンクS7〜S9により発熱による制御回路55の温度上昇が抑えられる。即ち、パワー素子6による発熱の横方向の広がりを吸収し且つ放熱すると共に、熱伝導に方向性を持たせることができ、その結果、制御回路55への熱影響が回避できる。
【0043】
ここで、上記図1〜図11に示す実施例は特に請求項に記載した発明に相当し、図12に示す実施例は特に請求項2に記載した発明に相当する。尚、図12の実施例においては、制御回路55から離れる方向に伝熱方向を設定したが、この構成に限られるものではなく、伝熱方向を任意に設定できることをその要点とする。
【0044】
一方で、本発明の多層基板は、熱発生量の大きいPGA(ピングリッドアレイ)や、チップキャリア、スライドブレージング、フラットパッケージ等のパッケージ構造にも適用することができる。即ち、図13はPGAに適用した具体例を示す。図13において、PGA80は、セラミック板81、セラミックパッケージ82及びピン端子83を有する。セラミックパッケージ82には、発生熱量の大きなIC素子84等が内蔵されており、セラミック板81はIC素子84やワイヤボンディング部85等を保護している。
【0045】
セラミックパッケージ82には、熱抵抗の小さい充填金属からなるヒートシンクS13〜S15が多層に設けられており、それらはピラミッド状に積層されている。この場合、IC素子84にて発生した比較的多量の熱は、ヒートシンクS13〜S15を伝わってパッケージ外(大気中)に放出される。
【0046】
また、本実施例によれば、以下に示す効果も得られる。即ち、本実施例ではパワー素子がシリコン基板に形成され、ヒートシンクがモリブデン(Mo)やタングステン(W)からなる。この場合、シリコンの熱膨張係数が3ppm/℃、モリブデンの熱膨張係数が4ppm/℃、タングステンの熱膨張係数が4.5ppm/℃であるため、熱膨張係数に関して各金属の相性が良い。そのため、応力緩和層を必要としない。
【0047】
さらに、本実施例では、アルミナ層(絶縁層)と上記高融点材料(Mo,W)を用いており、この場合、やはり基板との熱膨張係数の整合性が良い。即ち、アルミナ基板の熱膨張係数は7.5ppm/℃であり、充填金属としてのモリブデンやタングステンの熱膨張係数はおよそ3.7〜5.3ppm/℃、4.5〜5.0ppm/℃程度と非常に近寄っている。そのため、焼成後に充填材料が抜け落ちてしまうという問題も解消できる。
【0048】
尚、本発明のパワー素子としては、パワートランジスタ、パワーダイオード、又は高速マイクロコンピュータに使用される発熱量の大きい素子や、スーパーコンピュータやワークステーションに使用される発熱量の大きい素子が、それに相当する。
【0049】
基板材質としてはガラスとセラミックの複合材料であるガラスセラミックまたはガラス材を用いてもよい。この場合の導体材は、Ag,Ag−Pd,Cu等を用いる。製法はアルミナの場合と同一である。
【0050】
以上詳述したように請求項1〜6に記載の発明によれば、半導体素子等、パワー素子による発熱を効率的に放熱することができるという優れた効果を発揮する。この場合、放熱性を向上させると共に、放熱の方向性を持たせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例の多層基板の断面図。
【図2】多層基板の製造工程図。
【図3】多層基板の製造工程図。
【図4】多層基板の製造工程図。
【図5】多層基板の製造工程図。
【図6】多層基板の製造工程図。
【図7】他の別例の多層基板の断面図。
【図8】他の別例の多層基板の断面図。
【図9】他の別例の多層基板の断面図。
【図10】他の別例の多層基板の断面図。
【図11】図10の多層基板の製造工程の一部を示す図。
【図12】他の別例の多層基板の断面図。
【図13】他の別例の多層基板の断面図。
【図14】従来の多層基板の断面図。
【符号の説明】
【0052】
1a〜1e…絶縁層、2…多層基板、4a,4b…熱伝達用導体としての充填金属、
6…パワー素子、S1〜S15…ヒートシンク(第1,第2のヒートシンク部)、
55…制御回路。
【出願人】 【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
【住所又は居所】愛知県刈谷市昭和町1丁目1番地
【出願日】 平成17年3月3日(2005.3.3)
【代理人】 【識別番号】100096998
【弁理士】
【氏名又は名称】碓氷 裕彦

【識別番号】100118197
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 大登

【識別番号】100123191
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高順

【公開番号】 特開2005−223348(P2005−223348A)
【公開日】 平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願番号】 特願2005−58708(P2005−58708)