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【発明の名称】 電磁波シールド材料の作製方法及び電磁波シールド材料
【発明者】 【氏名】加納 丈嘉
【住所又は居所】静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写真フイルム株式会社内

【氏名】川村 浩一
【住所又は居所】静岡県榛原郡吉田町川尻4000番地 富士写真フイルム株式会社内

【要約】 【課題】エッチング工程を行うことなく、微細な金属パターンを高精度で形成することができ、該金属パターンの基材との密着性も良好な、電磁波シールド材料の作製方法を提供すること。

【解決手段】(a)可視光に対して透明な基材上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程と、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)可視光に対して透明な基材上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、
を順次有する電磁波シールド材料の作製方法。
【請求項2】
(a1−1)可視光に対して透明な基材上に、熱、酸、又は輻射線により、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造へと変化する官能基、若しくは、該相互作用を失う官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、
(a1−2)該ポリマー層に、熱、酸、又は輻射線をパターン状に付与して、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、
を順次有する電磁波シールド材料の作製方法。
【請求項3】
(a2)可視光に対して透明な基材上に、重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、輻射線をパターン状に照射し、該化合物を該基材に直接化学結合させて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、
を順次有する電磁波シールド材料の作製方法。
【請求項4】
(a3−1)可視光に対して透明な基材上に、光熱変換物質及びバインダーを含む感光層を設ける工程と、
(a3−2)該感光層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、
(a3−3)該ポリマー層に輻射線をパターン状に照射し、前記感光層をアブレーションにより除去して、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、
を順次有する電磁波シールド材料の作製方法。
【請求項5】
前記(c)工程後に、(d)電気メッキを行う工程を有することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の電磁波シールド材料の作製方法。
【請求項6】
可視光に対して透明な基材上に形成された、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に基材と直接化学結合してなる領域に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与した後、無電解メッキを行って形成された金属パターンを有する電磁波シールド材料。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド材料の作製方法及び電磁波シールド材料に関し、特に、CRT、PDP(プラズマディスプレイ)、液晶、ELなどのディスプレイ前面から発生する電磁波のシールド部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年各種の電気設備や電子応用設備の利用が増加するの伴い、電磁気的なノイズ妨害(Electro−Magnetic Interference;EMI)も増加の一途をたどっている。ノイズは大きく分けて伝導ノイズと放射ノイズに分けられる。伝導ノイズの対策としては、ノイズフィルタなどを用いる方法がある。一方、放射ノイズの対策としては、電磁気的に空間を絶縁する必要があるため、筐体を金属体又は高導電体にするとか、回路基板と回路基板の間に金属板を挿入するとか、ケーブルを金属箔で巻き付けるなどの方法が取られている。しかしながら、CRT(ブラウン管)ディスプレイやカラー表示プラズマディスプレイ等の表示装置は画面から電磁波が放射され、かつ、これらの表示装置ではその使用者が当該表示装置の画面の前にいる時間が比較的長くなり易いことから、画面から放射される電磁波についても画質を低下させることなく十分にシールドする必要があるのだが、上記手法では、CRT、PDPなどのディスプレイ前面より発生する電磁波シールド用途としては、不透明であるため適したものではなかった。
【0003】
そこで、近年、電磁波シールド性と透明性を両立させる方法として、透明性基材上に金属又は金属酸化物を蒸着して薄膜導電層を形成する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この手法では、透明性が達成できる程度の膜厚(数100Å〜2,000Å)にすると、導電層の表面抵抗が大きくなりすぎるため、30MHz〜1GHzで要求される30dB以上のシールド効果に対して20dB以下と不十分であった。
【0004】
また、良導電性繊維を透明基材に埋め込んだ電磁波シールド材が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この電磁波シールド材は、30MHz〜1GHzの電磁波シールド効果は40〜50dBであるが、電磁波漏れのないように導電性繊維を規則配置させるために必要な繊維径が35μmと太すぎるため繊維が見え、要求される可視光透過率60%以上に対して、55%以下と不十分であり、ディスプレイ用途には適したものではなかった。
【0005】
更に、プラスチックフィルム上に形成された導電性金属の層に、活性電磁波の照射により感光する感光層を設け、この感光層に像様露光し、現像してレジスト像を形成し、次いで、導電性金属をエッチングして導電性金属の幾何学的模様を形成し、最後にレジストを剥離して、導電性金属の幾何学パターンを形成し、これを電磁波シールドフィルムとして使用する提案がされている(例えば、特許文献3参照。)。この手法では、形成したエッチングレジストパターンの線幅よりもエッチング後の線幅が細くなる、いわゆる、オーバーエッチング法を用いることで約30μm程度の細線パターンが形成可能である。しかしながら、金属幾何学パターン部以外の大部分のエリアをエッチング処理によって除去してしまうため、無駄が多く、また、そのエッチング処理によって生じる銅廃液の処理に費用がかかるなど、電磁波シールドフィルムの低価格化に限界がある。また、エッチング処理によりパターンを形成するためにパターンの交点部が太り、精度が低いという欠点がある。この欠点はモアレの原因となり、パターンの交点部における太りの減少、すなわち、精度の向上が求められている。
【0006】
加えて、透明基板上に無電解メッキ触媒を、印刷法にてパターン状に設け、その上に無電解めっき法により銅のメッシュパターンを形成したシールド材料が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。この手法では、エッチング工程を必要としないため、銅廃液は排出されず、また、金属パターンの交点部の太りが少ないが、印刷法を用いていることから金属パターンの精度に限界があり、ライン幅では30μm前後となることから、可視光透過性が55%以下で不十分である問題点があった。また、基板と金属パターンとの密着性が悪いという問題点があった。
【特許文献1】特開平5−323101号公報
【特許文献2】特開平5−327274号公報
【特許文献3】特開平10−41682号公報
【特許文献4】特開平5−283889号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記従来における技術的問題点を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。
すなわち、本発明の目的は、エッチング工程を行うことなく、微細な金属パターンを高精度で形成することができ、該金属パターンの基材との密着性も良好な、電磁波シールド材料の作製方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、微細かつ高精度であると共に、基材との密着性が良好な金属パターンを備えた電磁波シールド材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、無電解メッキ触媒又はその前駆体が付与されたポリマーが、パターン状に基材と直接化学結合している領域に、無電解メッキを行うことで、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の電磁波シールド材料の作製方法は、
(a)可視光に対して透明な基材上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、
を順次有することを特徴とする。
【0009】
また、本発明の電磁波シールド材料の作製方法における好適な態様としては、下記に示す3つがある。
すなわち、本発明の電磁波シールド材料の作製方法における好適な第1の態様は、
(a1−1)可視光に対して透明な基材上に、熱、酸、又は輻射線により、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造へと変化する官能基、若しくは、該相互作用を失う官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、
(a1−2)該ポリマー層に、熱、酸、又は輻射線をパターン状に付与して、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、
を順次有することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の電磁波シールド材料の作製方法における好適な第2の態様は、
(a2)可視光に対して透明な基材上に、重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、輻射線をパターン状に照射し、該化合物を該基材に直接化学結合させて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、
を順次有することを特徴とする。
【0011】
更に、本発明の電磁波シールド材料の作製方法における好適な第3の態様は、
(a3−1)可視光に対して透明な基材上に、光熱変換物質及びバインダーを含む感光層を設ける工程と、
(a3−2)該感光層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程と、
(a3−3)該ポリマー層に輻射線をパターン状に照射し、前記感光層をアブレーションにより除去して、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、
を順次有することを特徴とする。
【0012】
加えて、上記の本発明の電磁波シールド材料の作製方法においては、前記(c)工程後に、(d)電気メッキを行う工程を有することがより好ましい。このように、無電解メッキ後に電気メッキを行うことで、所望の膜厚を有する電磁波シールド膜を形成することができるという利点を有する。
【0013】
本発明の電磁波シールド材料は、可視光に対して透明な基材上に形成された、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に基材と直接化学結合してなる領域に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与した後、無電解メッキを行って形成された金属パターンを有することを特徴とする。
【0014】
このように、本発明によれば、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域に、選択的に無電解メッキ又はその前駆体を付与し、続いて、無電解メッキを行うため、従来の電磁波シールド材料と比較して、微細で、高精度の金属パターンを容易に得ることができる。
また、パターン状に形成されたポリマーと無電解メッキ触媒又はその前駆体とが相互作用し、更に、その触媒又はその前駆体に対し無電解メッキを行うため、得られた金属パターンは基材との密着性が優れたものとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の電磁波シールド材料の作製方法によれば、エッチング工程を行うことなく、微細な金属パターンを高精度で形成することができ、該金属パターン基材との密着性も良好となる。
また、電磁波シールド材料は、微細かつ高精度であると共に、基材との密着性が良好な金属パターンを備えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
《電磁波シールド材料の作製方法》
まず、本発明の電磁波シールド材料の作製方法について述べる。
本発明の電磁波シールド材料の作製方法は、
(a)可視光に対して透明な基材上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する工程と、
(b)該領域に無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程と、
(c)無電解メッキを行い、金属パターンを形成する工程と、を順次有することを特徴とする。
本発明の電磁波シールド材料の作製方法をより具体的に説明する。まず、可視光に対して透明な基材上に、特定の官能基を有するポリマーを用いて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する領域と、相互作用しない領域と、を形成し、次いで、その相互作用する領域に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与させた後、無電解メッキを行い、金属パターンを形成することで、電磁波シールド材料が作製される。
【0017】
これらの(a)〜(c)工程については、本発明の電磁波シールド材料の作製方法における好適な態様(1)〜(3)(以下、適宜、本発明の態様(1)〜(3)と称する。)の説明において詳述する。
なお、態様(1)における(a1−1)及び(a1−2)工程、態様(2)における(a2)工程、態様(3)における(a3−1)〜(a3−3)工程のいずれの方法であっても、「可視光に対して透明な基材上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に直接化学結合した領域を形成する(上記(a)工程)」ことができる。
【0018】
上述のように、本発明の態様(1)〜(3)において、(b)及び(c)工程は、いずれの態様においても同じであるため、後でまとめて説明することにし、まず、態様(1)における(a1−1)及び(a1−2)工程、態様(2)における(a2)工程、態様(3)における(a3−1)〜(a3−3)工程についてそれぞれ説明する。
なお、本発明の態様(1)〜(3)において形成される「無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域」は、以下、適宜、「相互作用性領域」と称する。
【0019】
<本発明の態様(1)における(a1−1)工程>
(a1−1)工程は、可視光に対して透明な基材上に、熱、酸、又は輻射線により、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造へと変化する官能基、若しくは、該相互作用を失う官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程である。
以下、適宜、「熱、酸、又は輻射線により、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造へと変化する官能基、若しくは、該相互作用を失う官能基」を、極性変換基と称する。
【0020】
〔表面グラフト重合〕
(a1−1)工程において形成されるポリマー層は、一般的に表面グラフト重合と呼ばれる手段を応用して作製される。グラフト重合とは高分子化合物鎖上に活性種を与え、これによって重合を開始する別の単量体を更に重合させ、グラフト(接ぎ木)重合体を合成する方法で、特に、活性種を与える高分子化合物が固体表面を形成する時には表面グラフト重合と呼ばれる。
ここで、本発明における表面グラフト重合から得られたポリマー層は、活性種を有する固体表面に対し、極性変換基を有するポリマー鎖の末端がグラフト鎖として直接結合してなるグラフトポリマーからなるものでもよいし、極性変換基を有するポリマー鎖が幹高分子化合物を介して結合してなるグラフトポリマーからなるものでもよい。
【0021】
本態様を実現するための表面グラフト重合法としては、文献記載の公知の方法をいずれも使用することができる。例えば、新高分子実験学10、高分子学会編、1994年、共立出版(株)発行、p135には表面グラフト重合法として光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法が記載されている。また、吸着技術便覧、NTS(株)、竹内監修、1999.2発行、p203、p695には、γ線、電子線などの放射線照射グラフト重合法が記載されている。
光グラフト重合法の具体的方法としては、特開昭63−92658号公報、特開平10−296895号公報及び特開平11−119413号公報に記載の方法を使用することができる。
【0022】
また、活性種を有する固体表面に対し、極性変換基を有するポリマー鎖が幹高分子化合物を介して結合しているポリマー層を形成する場合には、幹高分子化合物鎖の末端にトリアルコキシシリル基、イソシアネート基、アミノ基、水酸基、カルボキシル基などの反応性官能基を付与し、かかる反応性官能基と、固体表面に存在する官能基と、のカップリング反応等による化学結合により行うこともできる。
【0023】
より具体的には、まず、固体表面に存在する官能基とカップリング反応し得る官能基を幹高分子高分子の側鎖に付与し、更に、グラフト鎖として、極性変換基を有するポリマー鎖を組み込んだグラフトポリマーを合成し、次いで、このグラフトポリマーと固体表面に存在する官能基とのカップリング反応により、ポリマー層を形成する方法である。
【0024】
次に、本態様に用いられる、極性変換基について説明する。本態様における極性変換基は、(A)熱又は酸により極性が変化するタイプと、(B)輻射線(光)により極性が変化するタイプと、がある。
なお、本発明において「無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する構造」とは、後述する無電解メッキ触媒又はその前駆体が付着しうる官能基であれば特に制限はないが、一般的には親水性基が挙げられる。
【0025】
[(A)熱又は酸により極性が変化する官能基]
まず、(A)熱又は酸により極性が変化する官能基について説明する。
(A)熱又は酸により極性が変化する官能基としては、熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基と、熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基と、の2種類がある。
【0026】
((A−1)熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基)
(A−1)熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基としては、文献記載の公知の官能基を挙げることができる。
下記に、(A−1)熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基、及び該官能基を有する化合物の例を挙げる。
例えば、特開平10−282672号公報に記載のアルキルスルホン酸エステル、ジスルホン、スルホンイミド、EP0652483、WO92/9934記載のアルコキシアルキルエステル、H.Itoら著、Macromolecules,vol.21,pp.1477記載のt−ブチルエステル、その他、シリルエステル、ビニルエステルなどの文献記載の酸分解性基で保護されたカルボン酸エステルなどを挙げることができる。
【0027】
また、角岡正弘著、「表面」vol.133(1995),p.374記載のイミノスルホネート基、角岡正弘著、Polymer preprints,Japan vol.46(1997),p.2045記載のβケトンスルホン酸エステル類、山岡亜夫著、特開昭63−257750号のニトロベンジルスルホネート化合物も挙げることができるが、これらの官能基に限定される訳ではない。
また、特開2001−117223公報記載の官能基も好適である。該公報の中でも、特に好ましくは、一般式(1)で表される2級のアルキルスルホン酸エステル基、3級のカルボン酸エステル基、及び、一般式(2)で表されるアルコキシアルキルエステル基が挙げられ、中でも、一般式(1)で表される2級のアルキルスルホン酸エステル基が最も好ましい。以下、特に好ましい官能基の具体例を示す。
【0028】
【化1】


【0029】
((A−2)熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基)
本発明において、(A−2)熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基としては、公知の官能基を挙げることができる。
下記に、(A−2)熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基、及び該官能基を有する化合物の例を挙げる。
例えば、特開平10−296895号及び米国特許第6,190,830号に記載のオニウム塩基を含むポリマー、特にアンモニウム塩を含むポリマーを挙げることができる。より具体的なものとして、(メタ)アクリロルオキシアルキルトリメチルアンモニウムなどを挙げることができる。
また、特開2001−117223公報記載の官能基も好適である。該公報の中でも、特に好ましくは、一般式(3)で示されるカルボン酸基及びカルボン酸塩基が好適なものとして挙げられるが、これらの例示に特に限定されるものではない。以下、特に好ましい官能基の具体例を示す。
【0030】
【化2】


【0031】
本発明における極性変換基を有するポリマーは、上記のような官能基を有するモノマー1種の単独重合体であってもよく、2種以上の共重合体であってもよい。また、本発明の効果を損なわない限り、他のモノマーとの共重合体であってもよい。
【0032】
(A−1)熱又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有するモノマーの具体例を以下に示す。
【0033】
【化3】


【0034】
(A−2)熱又は酸により親水性から疎水性に変化する官能基を有するモノマーの具体例を以下に示す。
【0035】
【化4】


【0036】
[光熱変換物質]
上述の表面グラフト重合により基材上に形成されたポリマー層に対し、極性変換させるために付与するエネルギーがIRレーザなどの光エネルギーであれば、該光エネルギーを熱エネルギーに変換するための光熱変換物質を、ポリマー層、基材、及び中間層のどこかに含有させておくことが好ましい。また、中間層と基材との間に光熱変換物質層を設け、そこに添加してもよい。
【0037】
ここで用いられる光熱変換物質としては、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線等の光を吸収して熱に変換し得る物質ならば全て使用でき、例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、顔料、フタロシアニン系顔料、鉄粉、黒鉛粉末、酸化鉄粉、酸化鉛、酸化銀、酸化クロム、硫化鉄、硫化クロム等が挙げられる。特に好ましいのは、エネルギー付与に使用する赤外線レーザの露光波長である760nmから1200nmに極大吸収波長を有する染料、顔料又は金属微粒子である。
【0038】
使用される染料としては、市販の染料及び文献(例えば、「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭59−202829号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0039】
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換アリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、好ましい別の染料の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体が挙げられる。
【0040】
使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0041】
使用される金属微粒子としては、Au、Ag、Pt、Cu,Ni、Zn、Pd、Cr、Fe、Pb等からなる微粒子、また、それらの金属の酸化物や硫化物からなる微粒子が用いられ、具体的には、鉄粉、黒鉛粉末、酸化鉄粉、酸化鉛、酸化銀、酸化クロム、硫化鉄、硫化クロム等が挙げられる。
【0042】
これらの染料又は顔料は、感度及び光熱変換物質含有層の膜強度の観点から、光熱変換物質含有層全固形分の0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは3.1〜10質量%の割合で使用することができる。
また、金属微粒子は、感度及び光熱変換物質含有層の膜強度の観点から、光熱変換物質含有層全固形分の0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で使用することができる。
【0043】
[酸発生物質]
上述の表面グラフト重合により基材上に形成されたポリマー層に対し、極性変換させるために酸を付与するためには、酸発生物質を、ポリマー層、基材、及び中間層のどこかに含有させておくことが好ましい。また、中間層と基材との間に酸発生物質層を設け、そこに添加してもよい。
【0044】
酸発生物質としては、熱若しくは光により酸を発生する化合物であり、一般的には、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている公知の光により酸を発生する化合物及びそれらの混合物等を挙げることができ、これらを適宜選択して使用することができる。
【0045】
例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al.,Polymer,21,423(1980)等に記載のジアゾニウム塩、特開平3−140140号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書等に記載のホスホニウム塩、特開平2−150848号公報、特開平2−296514号公報等に記載のヨードニウム塩、J.V.Crivello et al.,Polymer J.17,73(1985)、米国特許第3,902,114号明細書、欧州特許第233,567号明細書、同297,443号明細書、同297,442号明細書、米国特許第4,933,377号明細書、同4,491,628号明細書、同5,041,358号明細書、同4,760,013号明細書、同4,734,444号明細書、同2,833,827号明細書、独国特許第2,904,626号明細書、同3,604,580号明細書、同3,604,581号明細書等に記載のスルホニウム塩、
【0046】
J.V.Crivello et al.,Macromolecules,10(6),1307(1977)等に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al.,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478,Tokyo,Oct(1988)等に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩、特開昭63−298339号公報等に記載の有機ハロゲン化合物、特開平2−161445号公報等に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、S.Hayase et al.,J.Polymer Sci.,25,753(1987)、特開昭60−198538号公報、特開昭53−133022号公報等に記載のo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、特開昭64−18143号公報、特開平2−245756号公報、特開平3−140109号公報等に記載のイミノスルホネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物、特開昭61−166544号公報等に記載のジスルホン化合物を挙げることができる。
【0047】
これらの酸発生物質は、感度及び酸発生物質含有層の膜強度の観点から、酸発生物質含有層全固形分の0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%の割合で使用することができる。
【0048】
[(B)光により極性が変化する官能基]
極性が変化する官能基の中でも、700nm以下の光照射により、その極性を変化させるものがある。このような(B)光により極性が変化する官能基(700nm以下の光に感応する極性変換基)は、赤外線などの長波長露光や熱によらず、所定の波長の光照射により直接に、分解、開環或いは二量化反応が生じることで、高感度で極性が変化することを特徴とする。以下、700nm以下の光照射により、極性が変化する官能基について説明する。
(B)光により極性が変化する官能基についても、(B−1)光により疎水性から親水性に変化する官能基と、(B−2)光により親水性から疎水性に変化する官能基との2種類がある。
【0049】
((B−1)光により疎水性から親水性に変化する官能基)
(B−1)光により疎水性から親水性に変化する官能基としては、例えば、特開2003−222972公報に記載の一般式(1)〜(4)、及び、(7)〜(9)で表される官能基を用いることができる。
【0050】
((B−2)光により親水性から疎水性に変化する官能基)
(B−2)光により親水性から疎水性に変化する官能基としては、例えば、ビスピリジニオエチレン基が挙げられる。
【0051】
〔基材〕
[基材表面]
態様(1)に用いられる基材は、可視光に対して透明で、かつ、極性変換基を有するポリマー鎖の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合する機能を有する固体表面を有していればよい。
このような固体表面は、上記機能を有していれば、無機層、有機層のいずれで形成されていてもよい。また、本態様では、固体表面の極性は問題ではなく、親水性であってもよいし、疎水性であってもよい。
これらのことから、本発明における基材は、このような固体表面し、かつ、透明性及び形状保持性を有する支持体のみから形成されていてもよいし、かかる支持体上に中間層や重合開始能を発現する層を設けて、上記の固体表面を付与したものでもよい。
ここで、基材の透明性は、可視光に対して100%であることが理想であるが、中間層や重合開始能を有する層を設けた場合であっても、透過率80〜98%の範囲であることが好ましい。
【0052】
[中間層]
上記の固体表面を形成し得る中間層としては、態様(1)におけるポリマー層を形成する際、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法により行う場合には、特に、有機表面を有する層であることが好ましく、特に、有機ポリマーの層であることが好ましい。
かかる有機ポリマーとしては、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、メラミン系樹脂、フォルマリン樹脂などの合成樹脂、ゼラチン、カゼイン、セルロース、デンプンなどの天然樹脂のいずれも使用することができる。中でも、光グラフト重合法、プラズマ照射グラフト重合法、放射線照射グラフト重合法などではグラフト重合の開始が有機ポリマーの水素の引き抜きから進行するため、水素が引き抜かれやすいポリマー、特に、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ樹脂などを使用することが、特に製造適性の点で好ましい。
【0053】
[重合開始能を発現する層]
態様(1)においては、上記固体表面として、エネルギーを付与することにより重合開始能を発現する層を用いることが、活性点を効率よく発生させ、表面グラフト重合の感度を向上させるという観点から好ましい。
重合開始能を発現する層(以下、適宜、重合性層と称する)は、エネルギーを付与することにより重合開始能を発現する成分として、重合性化合物と重合開始剤とを含んでなることが好ましい。
重合性層は、必要な材料を、それらを溶解可能な溶媒に溶解し、支持体上に塗布して塗膜を形成した後、加熱又は光照射により硬膜し、形成することができる。
【0054】
(a)重合性化合物
重合性層に用いられる重合性化合物は、支持体との密着性が良好であり、かつ、活性光線照射などのエネルギー付与により、極性変換基を有するポリマー鎖の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合し得るものであれば特に制限はないが、中でも、分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーが好ましい。
このような疎水性ポリマーとしては、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリぺンタジエンなどのジエン系単独重合体、アリル(メタ)アクリレー卜、2−アリルオキシエチルメタクリレー卜などのアリル基含有モノマーの単独重合体;
更には、前記のポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンタジエンなどのジエン系単量体又はアリル基含有モノマーを構成単位として含む、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどとの二元又は多元共重合体;
不飽和ポリエステル、不飽和ポリエポキシド、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリル、高密度ポリエチレンなどの分子中に炭素−炭素二重結合を有する線状高分子又は3次元高分子類;などが挙げられる。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
重合性化合物の含有量は、重合性層中、固形分で0〜100質量%の範囲が好ましく、10〜80質量%の範囲が特に好ましい。
【0055】
(b)重合開始剤
重合性層には、エネルギー付与により重合開始能を発現させるための重合開始剤を含有することが好ましい。ここで用いられる重合開始剤は、所定のエネルギー、例えば、活性光線の照射、加熱、電子線の照射などにより、重合開始能を発現し得る公知の熱重合開始剤、光重合開始剤などを目的に応じて、適宜選択して用いることができる。中でも、熱重合よりも反応速度(重合速度)が高い光重合を利用することが製造適性の観点から好適であり、このため、光重合開始剤を用いることが好ましい。
本態様に用い得る光重合開始剤は、照射される活性光線に対して活性であり、重合性層に含まれる重合性化合物と、極性変換基を有するポリマー鎖の末端と、が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合し得ることが可能なものであれば、特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などを用いることができる。
【0056】
そのような光重合開始剤としては、具体的には、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2’−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン(4,4’−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、の如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類、などが挙げられる。
重合開始剤の含有量は、重合性層中、固形分で0.1〜70質量%の範囲が好ましく、1〜40質量%の範囲が特に好ましい。
【0057】
上記重合性化合物及び重合開始剤を塗布する際に用いる溶媒は、それらの成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、3−メトキシプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテートなどが挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
【0058】
重合性層を支持体上に形成する場合の塗布量は、十分な重合開始能の発現、及び、膜性を維持して膜剥がれを防止するといった観点からは、乾燥後の質量で、0.1〜20g/m2が好ましく、更に、1〜15g/m2が好ましい。
【0059】
上記のように、支持体上に上記の重合性層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて重合性層を形成するが、このとき、加熱及び/又は光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、極性変換基を有するポリマー鎖の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合した後に重合性層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制し得るため好ましい。ここで、予備硬化に光照射を利用するのは、前記光重合開始剤の項で述べたのと同様の理由による。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が十分乾燥し得る条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
【0060】
加熱乾燥後に所望により行われる光照射は、後述するパターン形成に用いる光源を用いることができるが、引き続き行われる、エネルギー付与により実施される重合性層の活性点と極性変換基を有するポリマー鎖との化学結合の形成を阻害しないという観点から、重合性層中に存在する重合性化合物が部分的にラジカル重合しても、完全にはラジカル重合しない程度に光照射することが好ましく、光照射時間については光源の強度により異なるが、一般的には30分以内であることが好ましい。このような予備硬化の目安としては、溶剤洗浄後の膜残存率が10%以上となり、かつ、予備硬化後の開始剤残存率が1%以上であることが、挙げられる。
【0061】
[支持体]
本発明の電磁波シールドフィルム材料に使用される支持体としては、形状保持性を有し、かつ、可視光に対して透明なものであればいずれのものでも使用することができる。
透明支持体としては、具体的には、例えば、無色透明ガラスや同様な各種の透明なプラスチック基板や、各種の透明なプラスチックフィルム等を使用することができる。
更に、上記の透明なプラスチック基板や透明なプラスチックフィルムとしては、具体的には、殆どの汎用樹脂材料を使用することができ、特に、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、又はトリアセテートセルロース(TAC)のフィルムないしシートを使用すること好ましいものである。
なお、このような支持体が、極性変換基を有するポリマー鎖の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合する機能を有する固体表面を有するもであれば、支持体自体が基材として用いられてもよい。
【0062】
透明支持体の大きさ及び厚さは、使用用途により変化する。例えば、透明支持体の厚さとしては、小型のディスプレイに適用する場合は、適当な可撓性を持つ薄いフィルム状であればよく、0.03mm〜0.5mmのものが好ましい。また、数十インチ以上の大型ディスプレイに適用する場合には、コシのあるフレキシブルなフィルム、或いは、剛体支持体であることが好ましく、厚さ0.3〜10.0mmのものが好適である。これは、大型ディスプレイに適用する場合は、ディスプレイに付帯治具等を用いて、機械的に設置する必要があるからである。
いずれの場合においても、支持体の透明性は、可視光に対して100%であることが理想であるが、透過率80〜98%のものを選択することが好ましい。
【0063】
<本発明の態様(1)における(a1−2)工程>
(a1−2)工程は、(a1−1)工程にて形成されたポリマー層に対し、加熱、酸の付与、又は光などの輻射線の照射を行い、パターン状に極性変換させて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する領域(相互作用性領域)を形成する工程である。
【0064】
パターン状に極性変換させる方法としては、例えば、加熱や、露光等の輻射線照射による書き込みを用いることができる。例えば、赤外線レーザ、紫外線ランプ、可視光線などによる光照射、γ線などの電子線照射、サーマルヘッドによる熱的な書き込みなどが可能である。これらの光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。またg線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接書き込み、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
また、光照射の一態様として、ポリマー層が光熱変換物質を含有するタイプであれば、赤外線領域のレーザー光等の走査露光による加熱により、パターン状に極性変換させることも可能である。
【0065】
一方、700nm以下の光に感応する極性変換基を用いて得られたポリマー層の場合には、パターン状に極性変換させる手段としては、極性変換基を分解、開環或いは二量化させて、親疎水性を変化させることの可能なものであれば、いずれの光照射の手段も使用できる。例えば、紫外線ランプ、可視光線などによる光照射を使用することが可能である。これらの光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等が挙げられる。
【0066】
コンピュータのデジタルデータによるダイレクトパターン形成を行うためには、レーザ露光により極性変換させる方法が好ましい。レーザとしては、炭酸ガスレーザ、窒素レーザ、Arレーザ、He/Neレーザ、He/Cdレーザ、Krレーザ等の気体レーザ、液体(色素)レーザ、ルビーレーザ、Nd/YAGレーザ等の固体レーザ、GaAs/GaAlAs、InGaAsレーザ等の半導体レーザ、KrFレーザ、XeClレーザ、XeFレーザ、Ar2等のエキシマレーザ等を使用することができる。
【0067】
<本発明の態様(2)における(a2)工程>
(a2)工程は、可視光に対して透明な基材上に、重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物を接触させた後、輻射線をパターン状に照射し、該化合物を該基材に直接化学結合させて、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域(相互作用性領域)を形成する工程である。
態様(2)において、「重合性基、及び、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有する化合物」は、適宜、相互作用性基含有重合性化合物と称する。
【0068】
このように、基材上に、相互作用性基含有重合性化合物を接触させ、輻射線をパターン状に照射することで、そのパターン状に、該相互作用性基含有重合性化合物の重合性基と基材とが化学結合を生成するため、強固で耐久性に優れた相互作用性領域を形成することができる。
このような相互作用性基含有重合性化合物の重合性基と基材との化学結合を生成する方法としては、表面グラフト重合法を用いることができる。この表面グラフト重合法により、活性種を有する基材の固体表面に対し、相互作用性基含有重合性化合物鎖の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合してなるグラフトポリマーを生成することができ、そのグラフトポリマーにより相互作用性領域を形成することができる。
なお、態様(2)に係る表面グラフト重合法は、前記態様(1)で説明した表面グラフト重合法と同様である。
【0069】
また、基材上に、相互作用性基含有重合性化合物を接触させる方法としては、基材を、該相互作用性基含有重合性化合物を含有する液状の組成物中に浸漬することで行ってもよいが、取り扱い性や製造効率の観点からは、後述するように、該相互作用性基含有重合性化合物を含有する組成物を主成分とする層を基材表面に、塗布法により形成することが好ましい。
【0070】
〔相互作用性基含有重合性化合物〕
態様に用いられる相互作用性基含有重合性化合物とは、後述の相互作用性基を有するモノマー、該相互作用性基を有するモノマーから選ばれる少なくとも一種を用いて得られるホモポリマー、コポリマーに、重合性基として、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリル基などのエチレン付加重合性不飽和基(重合性基)を導入したポリマーを指し、このポリマーは、少なくとも末端又は側鎖に重合性基を有するものであり、特に末端に重合性基を有するものが好ましく、更に、末端及び側鎖に重合性基を有するものが好ましい。
【0071】
このような相互作用性基含有重合性化合物は以下のように合成できる。
合成方法としては、(I)相互作用性基を有するモノマーと重合性基を有するモノマーとを共重合する方法、(II)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、(III)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、二重結合を導入(重合性基を導入する)方法が挙げられる。好ましい合成方法は、合成適性の観点から、(II)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法、(III)相互作用性基を有するポリマーと重合性基を有するモノマーとを反応させ、重合性基を導入する方法である。
【0072】
上記相互作用性基含有重合性化合物の合成に用いられるモノマーとしては、(メタ)アクリル酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、イタコン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、N−モノメチロール(メタ)アクリルアミド、N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、アリルアミン若しくはそのハロゲン化水素酸塩、3−ビニルプロピオン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、ビニルスルホン酸若しくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン(下記構造)などの、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミノ基、水酸基、アミド基、ホスフィン基、イミダゾール基、ピリジン基、及びエーテル基などの官能基(塩構造を形成し得る場合はそれらの塩)を有するモノマーが挙げられる。
【0073】
【化5】


【0074】
上記相互作用性基を有するモノマーと共重合するアリル基含有モノマーとしては、アリル(メタ)アクリレート、2−アリルオキシエチルメタクリレートが挙げられる。
また、二重結合前駆体を有するモノマーとしては2−(3−クロロ−1−オキソプロポキシ)エチルメタクリレー卜や、特開2003−335814号公報に記載の化合物(i−1〜i−60)が使用することができ、これらの中でも、特に下記化合物(i−1)が好ましい。
【0075】
【化6】


【0076】
更に、相互作用性基を有するポリマー中のカルボキシル基、アミノ基若しくはそれらの塩、水酸基及びエポキシ基などの官能基との反応を利用して不飽和基を導入するために用いられる重合性基を有するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートなどがある。
【0077】
次に、(III)相互作用性基を有するモノマーと二重結合前駆体を有するモノマーとを共重合させ、次に塩基などの処理により二重結合を導入する方法について詳しく述べる。
本合成手法に関しては、特開2003−335814号公報に記載の手法を用いることができる。
【0078】
(脱離反応に用いられる塩基)
塩基などの処理により二重結合を導入する際に使用される塩基としては、アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩、有機アミン化合物、金属アルコキシド化合物が好ましい例として挙げられる。
【0079】
アルカリ金属類の水素化物、水酸化物又は炭酸塩の好ましい例としては、水素化ナトリウム、水素化カルシウム、水素化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。
【0080】
有機アミン化合物の好ましい例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルメチルアミン、トリブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリオクチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N−ジエチルシクロヘキシルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、N−エチルジシクロヘキシルアミン、ピロリジン、1−メチルピロリジン、2,5−ジメチルピロリジン、ピペリジン、1−メチルピペリジン、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ピペラジン、1,4−ジメチルピペラジン、キヌクリジン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]−オクタン、ヘキサメチレンテトラミン、モルホリン、4−メチルモルホリン、ピリジン、ピコリン、4−ジメチルアミノピリジン、ルチジン、1、8−ジアザビシクロ〔5,4,0〕−7−ウンデセン(DBU)、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルエチルアミン、Schiff塩基などが挙げられる。
【0081】
金属アルコキシド化合物の好ましい例としては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムt−ブトキシドなどが挙げられる。
【0082】
これらの塩基は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
使用される塩基の量は、化合物中の二重結合前駆体の量に対して、当量以下であってもよく、また当量以上であってもよい。
脱離反応における、温度条件は、室温、冷却、過熱いずれの条件であってもよい。好ましい温度条件としては、−20〜100℃の範囲である。
【0083】
相互作用性基含有重合性化合物の例として、マクロモノマーも使用することができる。本態様に用いられるマクロモノマーの製造方法は、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」に各種の製法が提案されている。本態様で用いられるマクロモノマーで特に有用なものとしては、アクリル酸、メタクリル酸などのカルボキシル基含有のモノマーから誘導されるマクロモノマー、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスチレンスルホン酸、及びその塩のモノマーから誘導されるスルホン酸系マクロモノマー、(メタ)アクリルアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルカルボン酸アミドモノマーから誘導されるアミド系マクロモノマー、ヒドロキシエチルメタクリレー卜、ヒドロキシエチルアクリレート、グリセロールモノメタクリレートなどの水酸基含有モノマーから誘導されるマクロモノマー、メトキシエチルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールアクリレートなどのアルコキシ基若しくはエチレンオキシド基含有モノマーから誘導されるマクロモノマーである。またポリエチレングリコール鎖若しくはポリプロピレングリコール鎖を有するモノマーも本態様に用いられるマクロモノマーとして有用に使用することができる。
これらのマクロモノマーのうち有用な分子量は250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
【0084】
このような相互作用性基含有重合性化合物を含有する組成物に使用する溶剤は、主成分である前記マクロモノマーやモノマーなどが溶解可能ならば特に制限はないが、水、水溶性溶剤などの水性溶剤が好ましく、これらの混合物や、溶剤に更に界面活性剤を添加したものなどが好ましい。
水溶性溶剤は、水と任意の割合で混和し得る溶剤を言い、そのような水溶性溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコール、グリセリンの如きアルコール系溶剤、酢酸の如き酸、アセトンの如きケトン系溶剤、ホルムアミドの如きアミド系溶剤、などが挙げられる。
【0085】
必要に応じて溶剤に添加することのできる界面活性剤は、溶剤に溶解するものであればよく、そのような界面活性剤としては、例えば、n−ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの如きアニオン性界面活性剤や、n−ドデシルトリメチルアンモニウムクロライドの如きカチオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル(市販品としては、例えば、エマルゲン910、花王(株)製など)、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(市販品としては、例えば、商品名「ツイーン20」など)、ポリオキシエチレンラウリルエーテルの如き非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
組成物を液状のまま接触させる場合には、任意に行うことができるが、塗布法により塗布層を形成する場合の塗布量は、十分なメッキ触媒又はその前駆体との相互作用性、及び、均一な塗布膜とを得る観点からは、固形分換算で0.1〜10g/m2が好ましく、特に0.5〜5g/m2が好ましい。
【0086】
〔輻射線のパターン状の照射〕
(a2)工程において、輻射線をパターン状に照射する際、その輻射線に関しては特に制限はなく、基材の固体表面に活性点を生じさせ、相互作用性基含有重合性化合物の重合性基と、固体表面と、が結合し得るエネルギーを付与できるものであれば、いずれも使用できるが、コスト、装置の簡易性の観点からは活性光線を照射する方法が好ましい。
活性光線を照射する場合、デジタルデータに基づく走査露光、リスフィルムを用いたパターン露光のいずれも使用することができる。
また、パターンの書き込み方法としては、先に態様(1)において挙げた各種の書き込み方法が本態様においても同様に好ましく適用できる。
【0087】
このように輻射線の照射を行うことで固体表面に発生した活性点に対し、相互作用性基含有重合性化合物が重合して、運動性の高いグラフト鎖が形成される。また、好ましい態様として、末端及び側鎖に重合性基を有する相互作用性基含有重合性化合物を用いることで、基材と結合したグラフト鎖の側鎖の重合性基に更に、グラフト鎖が結合することで、枝分かれを有するグラフト鎖構造が形成され、グラフト鎖の形成密度、運動性ともに飛躍的に向上し、無電解メッキ触媒又はその前駆体との更に高い相互作用が発現するものである。
【0088】
〔基材〕
態様(2)に用いられる基材とは、可視光に対し透明で、かつ、前述の相互作用性基含有重合性化合物の末端又は側鎖が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合できるような固体表面を有するものである。このような基材としては、態様(1)に記載の基材を用いることができる。
【0089】
<本発明の態様(3)における(a3−1)工程>
(a3−1)工程は、可視光に対して透明な基材上に、光熱変換物質及びバインダーを含む感光層を設ける工程である。
【0090】
〔感光層(感光層)〕
態様(3)における感光層は、アブレーションを起こす機能を有すると共に、(a3−2)工程において、ポリマー層が表面グラフト重合により形成されるため、先の態様(1)のように、活性点を効率よく発生させ、また、表面グラフト重合の感度を向上させるという観点において、支持体上に設けられた重合開始能を発現する層と同様の機能を有することが好ましい。
そのため、また、本態様においては、感光層中に、エネルギーを付与することにより重合開始能を発現する化合物として重合性化合物と重合開始剤とを添加し、該感光層を重合開始能を発現する層として形成することが、感光層表面に活性点を効率よく発生させ、感度を向上させるという観点から好ましい。
【0091】
前記感光層を形成するには、必要な成分を、それらを溶解可能な溶媒に溶解し、塗布などの方法で、基材上に設け、加熱又は光照射により硬膜すればよい。
以下に、前記感光層に含有され得る成分について説明する。
このような感光層は、後述する光熱変換物質とバインダーとを含有することを要し、重合開始能を発現する層と同様の機能を付与するために、重合性化合物及び重合開始剤を含有することが好ましく、更に、必要に応じてその他の添加剤を含有してもよい。
【0092】
(バインダー)
感光層に用いられるバインダーは、塗膜性、膜強度、及びアブレーションの効果を高める目的で使用されるものであり、光熱変換物質との相溶性、或いは、光熱変換物質の分散性を考慮して適宜選択される。
前記バインダーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸やイタコン酸等の不飽和酸と、(メタ)アクリル酸アルキル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、スチレン、α−メチルスチレン等との共重合体;ポリメチルメタクリレートに代表されるメタクリル酸アルキルやアクリル酸アルキルの重合体;(メタ)アクリル酸アルキルとアクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、スチレン等との共重合体;アクリロニトリルと塩化ビニルや塩化ビニリデンとの共重合体;側鎖にカルボキシル基を有するセルロース変性物;ポリエチレンオキシド;ポリビニルピロリドン;フェノール、o−、m−、p−クレゾール、及び/又はキシレノールとアルデヒド、アセトン等との縮合反応で得られるノボラック樹脂;エピクロロヒドリンとビスフェノールAとのポリエーテル;可溶性ナイロン;ポリ塩化ビニリデン;塩素化ポリオレフィン;塩化ビニルと酢酸ビニルとの共重合体;酢酸ビニルの重合体;アクリロニトリルとスチレンとの共重合体;アクリロニトリルとブタジエン及びスチレンとの共重合体;ポリビニルアルキルエーテル;ポリビニルアルキルケトン;ポリスチレン;ポリウレタン;ポリエチレンテレフタレートイソフタレート;アセチルセルロース;アセチルプロピオキシセルロース;アセチルブトキシセルロース;ニトロセルロース;セルロイド;ポリビニルブチラール;エポキシ樹脂;メラミン樹脂;フォルマリン樹脂等が用いられる。
なお、本明細書では、「アクリル、メタクリル」の双方或いはいずれかを指す場合、「(メタ)アクリル」と表記することがある。
【0093】
前記バインダーの感光層中における含有量は、全感光層固形分中、5〜95質量%が好ましく、10〜90質量%がより好ましく、20〜80質量%が更に好ましい。
【0094】
(重合性化合物)
前記バインダーと併用して用いられる重合性化合物としては、基材との密着性が良好であり、かつ、活性光線照射などのエネルギー付与により、後述する相互作用性基含有重合性化合物が付加し得るものであれば特に制限はないが、中でも、分子内に重合性基を有する疎水性ポリマーが好ましい。
前記重合性化合物としては、前記バインダーがこれを兼ねていてもよいし、前記バインダーとは異なる化合物であってもよい。
具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリぺンタジエンなどのジエン系単独重合体、アリル(メタ)アクリレー卜、2−アリルオキシエチルメタクリレー卜などのアリル基含有モノマーの単独重合体;
更には、前記のポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリペンタジエンなどのジエン系単量体又はアリル基含有モノマーを構成単位として含む、スチレン、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリルなどとの二元又は多元共重合体;
不飽和ポリエステル、不飽和ポリエポキシド、不飽和ポリアミド、不飽和ポリアクリル、高密度ポリエチレンなどの分子中に炭素−炭素二重結合を有する線状高分子又は3次元高分子類;などが好適に挙げられる。
【0095】
前記重合性化合物の感光層中における含有量は、全感光層固形分中、5〜95質量%の範囲が好ましく、20〜80質量%の範囲が特に好ましい。
【0096】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、先の態様(1)の重合開始能を有する層で用いた重合開始剤をそのまま使用することができる。
重合開始剤の含有量は、感光層中、固形分で0.1〜70質量%の範囲が好ましく、1〜40質量%の範囲が特に好ましい。
【0097】
(光熱変換物質)
感光層に用いられる光熱変換物質としては、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線等の光を吸収して熱に変換し得る物質であれば全て使用でき、より詳細には、先の態様(1)に記載されている光熱変換物質と同様の染料、顔料及び金属微粒子を用いることができる。
【0098】
用いられる染料又は顔料は、感度及び感光層の膜強度の観点からは、感光層全固形分の0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは3.1〜10質量%の割合で使用することができる。
また、用いられる金属微粒子は、感度及び感光層の膜強度の観点からは、感光層全固形分の0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で使用することができる。
【0099】
(その他の添加剤)
感光層には、アブレーション効果を向上させる目的で、ニトロセルロースに更に含有させることが好ましい。ニトロセルロースは、近赤外レーザー光を光吸収剤が吸収し発生した熱により分解し、効率よく低分子のガスを発生することにより、感光層の除去を促進する。
【0100】
[感光層の形成]
感光層は、前記成分を適当な溶媒に溶かし、基材上に塗布することで設けることができる。なお、感光層を塗布する際に用いる溶媒は、光熱変換物質、バインダー等の上記各成分が溶解するものであれば特に制限されない。乾燥の容易性、作業性の観点からは、沸点が高すぎない溶媒が好ましく、具体的には、沸点40℃〜150℃程度のものを選択すればよい。
感光層を基材上に形成する場合の塗布量としては、乾燥後の質量で、0.05〜10g/m2が好ましく、0.3〜5g/m2がより好ましい。
【0101】
感光層は、基材表面上に前記感光層形成用の組成物を塗布などにより配置し、溶剤を除去することにより成膜させて形成するが、このとき、加熱及び/又は光照射を行って硬膜することが好ましい。特に、加熱により乾燥した後、光照射を行って予備硬膜しておくと、重合性化合物のある程度の硬化が予め行なわれるので、次の(a3−2)工程において、感光層上にポリマー層が形成された後、感光層ごと脱落するといった事態を効果的に抑制しうるため好ましい。ここで、予備硬化に光照射を利用するのは、態様(1)における光重合開始剤の項で述べたのと同様の理由による。
加熱温度と時間は、塗布溶剤が十分乾燥しうる条件を選択すればよいが、製造適正の点からは、温度が100℃以下、乾燥時間は30分以内が好ましく、乾燥温度40〜80℃、乾燥時間10分以内の範囲の加熱条件を選択することがより好ましい。
【0102】
加熱乾燥後に所望により行われる光照射は、後述するパターン形成に用いる光源を用いることができる。該光照射は、引き続き行われる、エネルギー付与により実施される重合性層の活性点と相互作用性基含有重合性化合物との化学結合の形成を阻害しないという観点から、感光層中に存在する重合性化合物が部分的にラジカル重合しても、完全にはラジカル重合しない程度にすることが好ましい。光照射時間については光源の強度により異なるが、一般的には30分以内であることが好ましい。このような予備硬化の目安としては、溶剤洗浄後の膜残存率が10%以上となり、かつ、予備硬化後の開始剤残存率が1%以上であることが、挙げられる。
【0103】
<本発明の態様(3)における(a3−2)工程>
(a3−2)工程は、感光層上に、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーを直接化学結合させて、ポリマー層を形成する工程である。
なお、以下、「無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基」は、適宜、相互作用性基と称する。
【0104】
〔ポリマー層の形成〕
態様(3)におけるポリマー層の形成方法としては、表面グラフト重合法を用いることができる。この表面グラフト重合法により、活性種を有する感光層表面に対し、相互作用性基を有するポリマー鎖の末端が直接又は幹高分子化合物を介して化学的に結合してなるグラフトポリマーを生成することができ、そのグラフトポリマーにより相互作用性領域を形成することができる。
なお、態様(3)に係る表面グラフト重合法は、前記態様(1)で説明した表面グラフト重合法と同様である。
【0105】
このようなポリマー層を構成するポリマー鎖の分子量は、Mw500〜500万の範囲であり、好ましい分子量はMw1000〜100万の範囲であり、更に好ましくはMw2000〜100万の範囲である。
【0106】
本態様における相互作用性基を有するポリマーとしては、上記態様(2)で用いた相互作用性基含有重合性化合物を表面グラフト重合して合成される。
【0107】
[相互作用性基含有重合性化合物]
本態様に好適に用いられる相互作用性基含有重合性化合物としては、前記態様(2)において用いた相互作用性基含有重合性化合物と同じものを用いることができる。
また、相互作用性基含有重合性化合物を含有する組成物に使用する溶剤、添加剤、等も同様のものを用いることができる。
【0108】
<本発明の態様(3)における(a3−3)工程>
(a3−3)工程は、ポリマー層に輻射線をパターン状に照射し、感光層をアブレーションにより除去して、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域を形成する工程である。
【0109】
この(a3−3)工程において、照射されたレーザ光等の輻射線が、感光層をアブレーション(溶融、分解、揮発、燃焼等)させ、これにより感光層が除去されることに伴って、感光層上に設けれられたポリマー層が除去され、その結果、パターン状の相互作用性領域が形成される。
【0110】
〔輻射線のパターン状の照射〕
本態様における輻射線のパターン状の照射として、加熱、露光等の輻射線照射により書き込みを行う方法が挙げられる。例えば、赤外線レーザ、紫外線ランプ、可視光線などによる光照射、γ線などの電子線照射、サーマルヘッドによる熱的な書き込みが可能である。これらの光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプ、カーボンアーク灯等がある。放射線としては、電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線などがある。また、g線、i線、Deep−UV光、高密度エネルギービーム(レーザービーム)も使用される。
【0111】
一般的に用いられる具体的な態様としては、熱記録ヘッド等による直接書き込み、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが好適に挙げられる。
コンピュータのデジタルデータによるダイレクトパターン形成を行うためには、レーザ露光によりアブレーションを生じさせる方法が好ましい。レーザとしては、炭酸ガスレーザ、窒素レーザ、Arレーザ、He/Neレーザ、He/Cdレーザ、Krレーザ等の気体レーザ、液体(色素)レーザ、ルビーレーザ、Nd/YAGレーザ等の固体レーザ、GaAs/GaAlAs、InGaAsレーザ等の半導体レーザ、KrFレーザ、XeClレーザ、XeFレーザ、Ar2等のエキシマレーザ等を使用することができる。中でも、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
【0112】
〔基材〕
態様(3)に使用される基材は、先の態様(1)及び(2)とは異なり、感光層の存在から、特定の固体表面を有する必要ななく、可視光に対し透明で形状保持性を有していれば、制限なく用いることができる。具体的には、態様(1)において支持体として挙げたものと同様のもの挙げることができる。
【0113】
以上、態様(1)〜(3)における相互作用性領域の形成工程について述べてきたが、この相互作用性領域は、ポリマーの末端が基材や感光層に結合しており、かつ、相互作用性基を発現する部分が高い運動性を保持できるグラフトポリマーにより形成されているという特徴を有する。このため、相互作用性領域と、無電解メッキ触媒又はその前駆体と、の優れた相互作用性が発現されることになる。
【0114】
<本発明における(b)工程>
本発明における(b)工程は、上記の態様(1)〜(3)のいずれかの方法によって形成された、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用するパターン状の領域(相互作用性領域)に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与する工程である。
【0115】
〔無電解メッキ触媒〕
本工程において用いられる無電解メッキ触媒とは、主に0価金属であり、Pd、Ag、Cu、Ni、Al、Fe、Coなどが挙げられる。本発明においては、特に、Pd、Agがその取り扱い性の良さ、触媒能の高さから好ましい。0価金属を相互作用性領域に固定する手法としては、例えば、相互作用性領域の相互作用性基と相互作用するように荷電を調節した金属コロイドを、相互作用性領域に付与する手法が用いられる。一般に、金属コロイドは、荷電を持った界面活性剤又は荷電を持った保護剤が存在する溶液中において、金属イオンを還元することにより作製することができる。金属コロイドの荷電は、ここで使用される界面活性剤又は保護剤により調節することができ、このように荷電を調節した金属コロイドを、相互作用性領域が有する相互作用性基と相互作用させることで、相互作用性領域上に選択的に金属コロイド(無電解メッキ触媒)を吸着させることができる。
【0116】
〔無電解メッキ触媒前駆体〕
本工程において用いられる無電解メッキ触媒前駆体とは、化学反応により無電解メッキ触媒となりうるものであれば、特に制限なく使用することができる。主には上記無電解メッキ触媒で用いた0価金属の金属イオンが用いられる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、還元反応により無電解メッキ触媒である0価金属になる。無電解メッキ触媒前駆体である金属イオンは、(b)工程において相互作用性領域に付与した後、無電解メッキ浴への浸漬前に、別途還元反応により0価金属に変化させて無電解メッキ触媒としてもよいし、無電解メッキ触媒前駆体のまま無電解メッキ浴に浸漬し、無電解メッキ浴中の還元剤により金属(無電解メッキ触媒)に変化させてもよい。
【0117】
実際には、無電解メッキ前駆体である金属イオンは、金属塩の状態でパターン領域へ付与する。使用される金属塩としては、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるものであれば特に制限はなく、M(NO3)n、MCln、M2/n(SO4)、M3/n(PO4)(Mは、n価の金属原子を表す)などが挙げられる。金属イオンとしては、上記の金属塩が解離したものを好適に用いることができる。具体例としては、例えば、Agイオン、Cuイオン、Alイオン、Niイオン、Coイオン、Feイオン、Pdイオンが挙げられ、Agイオン、Pdイオンが触媒能の点で好ましい。
【0118】
無電解メッキ触媒である金属コロイド、或いは、無電解メッキ前駆体である金属塩を相互作用性領域に付与する方法としては、金属コロイドを適当な分散媒に分散、或いは、金属塩を適切な溶媒で溶解し、解離した金属イオンを含む溶液を調製し、その溶液を相互作用性領域が存在する基材に塗布するか、或いは、その溶液中に相互作用性領域を有する基材を浸漬すればよい。金属イオンを含有する溶液を接触させることで、相互作用性領域の相互作用性基に、イオン−イオン相互作用、又は、双極子−イオン相互作用を利用して金属イオンを吸着させること、或いは、相互作用性領域に金属イオンを含浸させることができる。このような吸着又は含浸を充分に行なわせるという観点からは、接触させる溶液中の金属イオン濃度、或いは金属塩濃度は0.01〜50質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。また、接触時間としては、1分〜24時間程度であることが好ましく、5分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0119】
<本発明における(c)工程>
本工程では、前記(b)工程により得られた、無電解メッキ触媒又はその前駆体が相互作用性領域に付与された基材上に、無電解メッキを行うことで、金属パターンが形成される。すなわち、本工程における無電解メッキを行うことで、相互作用性領域のパターンに従った高密度の金属膜(電磁波シールド膜)が形成され、金属パターンとなる。形成された金属パターンは、優れた電磁波シールド性を有する。
【0120】
〔無電解メッキ〕
無電解メッキとは、メッキとして析出させたい金属イオンを溶かした溶液を用いて、化学反応によって金属を析出させる操作のことをいう。
本工程における無電解メッキは、例えば、前記(b)工程で得られた、無電解メッキ触媒が相互作用性領域に付与された基材を、水洗して余分な無電解メッキ触媒(金属)を除去した後、無電解メッキ浴に浸漬して行なう。使用される無電解メッキ浴としては一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
また、無電解メッキ触媒前駆体が相互作用性領域に付与された基材を、無電解メッキ触媒前駆体が相互作用性領域に吸着又は含浸した状態で無電解メッキ浴に浸漬する場合には、基材を水洗して余分な前駆体(金属塩など)を除去した後、無電解メッキ浴中へ浸漬される。この場合には、無電解メッキ浴中において、前駆体の還元とこれに引き続き無電解メッキが行われる。ここ使用される無電解メッキ浴としても、上記同様、一般的に知られている無電解メッキ浴を使用することができる。
【0121】
一般的な無電解メッキ浴の組成としては、1.メッキ用の金属イオン、2.還元剤、3.金属イオンの安定性を向上させる添加剤(安定剤)が主に含まれている。このメッキ浴には、これらに加えて、メッキ浴の安定剤など公知の添加物が含まれていてもよい。
無電解メッキ浴に用いられる金属の種類としては、銅、すず、鉛、ニッケル、金、パラジウム、ロジウムが知られており、中でも、導電性の観点からは、銅、金が特に好ましい。
また、上記金属に合わせて最適な還元剤、添加物がある。例えば、銅の無電解メッキの浴は、銅塩としてCu(SO42、還元剤としてHCOH、添加剤として銅イオンの安定剤であるEDTAやロッシェル塩などのキレート剤が含まれている。また、CoNiPの無電解メッキに使用されるメッキ浴には、その金属塩として硫酸コバルト、硫酸ニッケル、還元剤として次亜リン酸ナトリウム、錯化剤としてマロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウムが含まれている。また、パラジウムの無電解メッキ浴は、金属イオンとして(Pd(NH34)Cl2、還元剤としてNH3、H2NNH2、安定化剤としてEDTAが含まれている。これらのメッキ浴には、上記成分以外の成分が入っていてもよい。
【0122】
このようにして形成される電磁波シールド膜(金属パターン)の膜厚は、メッキ浴の金属塩又は金属イオン濃度、メッキ浴への浸漬時間、或いは、メッキ浴の温度などにより制御することができるが、電磁波シールド性の観点からは、0.5μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。また、メッキ浴への浸漬時間としては、1分〜3時間程度であることが好ましく、1分〜1時間程度であることがより好ましい。
【0123】
<本発明における(d)工程>
本発明の電磁波シールド材料の作製方法においては、前記(c)工程後、(d)電気メッキを行う工程(電気メッキ工程)を行うこともできる。本工程では、前記(c)工程における無電解メッキの後、この工程により形成された電磁波シールド膜を電極とし、更に電気メッキを行うことができる。これにより基材との密着性に優れた電磁波シールド膜をベースとして、そこに新たに任意の厚みをもつ電磁波シールド膜(金属パターン)を容易に形成することができる。この工程を付加することにより、金属パターンを目的に応じた厚みに形成することができるため、電磁波シールド性を向上させるのに有用である。
【0124】
本発明における電気メッキの方法としては、従来公知の方法を用いることができる。なお、本工程の電気メッキに用いられる金属としては、銅、クロム、鉛、ニッケル、金、銀、すず、亜鉛などが挙げられ、導電性の観点から、銅、金、銀が好ましく、銅がより好ましい。
電気メッキによって得られる電磁波シールド膜の膜厚については、求められる電磁波シールド性に応じて異なるものであり、メッキ浴中に含まれる金属濃度、浸漬時間、或いは、電流密度などを調整することでコントロールすることができる。なお、一般的な電磁波シールド材料などに用いる場合の膜厚は、電磁波シールド性の観点から、0.3μm以上であることが好ましく、3μm以上であることがより好ましい。
【0125】
<金属パターン>
本発明における金属パターンの幾何学図形(相互作用性領域の幾何学図形)とは、正三角形、二等辺三角形、直角三角形などの三角形、正方形、長方形、ひし形、平行四辺形、台形などの四角形、(正)六角形、(正)八角形、(正)十二角形、(正)二十角形などの(正)n角形、円、だ円、星型などを組み合わせた模様であり、これらの単独の繰り返し、あるいは2種類以上組み合わせで使用することも可能である。電磁波シールド性の観点からは三角形が最も有効であるが、可視光透過性の点からは同一の線幅なら(正)n角形のn数が大きいほど開口率が上がる。可視光透過性の点から開口率は50%以上が必要で、60%以上がさらに好ましく、四角形が電磁波シールド性と可視光透過性を両立する形として好ましい。開口率は、電磁波シールド材料の有効面積に対する有効面積から導電性金属で描かれた幾何学図形の導電性金属の面積を引いた面積の比の百分率である。ディスプレイ画面の面積を電磁波シールド材料の有効面積とした場合、その画面が見える割合となる。
【0126】
また、電磁波シールド材料における電磁波シールド性としては、電界シールド効果、磁界シールド効果が共に50dB以下であることが求められる。一般的に、電磁波シールド材料の金属パターン(電磁波シールド膜)面の表面抵抗が1Ω/□以下であると、電界シールド効果、磁界シールド効果が共に、50dB以下となることが知られており、上述の、金属パターンの膜厚や、金属パターン形状(幾何学図形)を調整し、表面抵抗値を1Ω/□以下とすることが好ましい。
【0127】
<電磁波シールド材料>
本発明の電磁波シールド材料は、可視光に対して透明な基材上に形成された、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーがパターン状に基材と直接化学結合してなる領域に、無電解メッキ触媒又はその前駆体を付与した後、無電解メッキを行って形成された金属パターンを有することを特徴とする。
【0128】
以上、本発明の電磁波シールド材料の作製方法、及び電磁波シールド材料によれば、無電解メッキ触媒又はその前駆体と相互作用する官能基を有するポリマーからなる領域(相互作用性領域)に、選択的に無電解メッキ又はその前駆体を付与し、続いて、無電解メッキを行うことにより作製されるため、従来の電磁波シールド材料と比較して、微細で、高精度の金属パターンを容易に得ることができる。
これにより、得られた電磁波シールド材料は、高い電磁波シールド性と、高い透明性とを併せ持つことができる。
【0129】
また、相互作用性領域と無電解メッキ触媒又はその前駆体とが相互作用し、更に、その触媒又はその前駆体に対し無電解メッキを行うため、得られた金属パターンは基材との密着性が優れたものとなる。特に、相互作用性領域を、上述の態様(1)〜(3)の方法で形成する場合には、当該領域がグラフトポリマーからなるため、そのグラフトポリマーと、形成された金属膜(電磁波シールド膜)との間で、金属膜の基材界面にハイブリッド状態が形成され、より優れた密着性を発揮できる。
これにより、得られた電磁波シールド材料を変形させて使用した場合であっても、金属パターンが剥離することはなく、高い電磁波シールド性を維持することができる。
【0130】
更に、相互作用性領域がグラフトポリマーからなる場合、内部のグラフト鎖中においても一部メッキが進行するため、そこに、粒径の小さな金属粒子が析出することになる。この小さな粒径の金属粒子は黒色を呈するため、電磁波シールド材料が黒化することになり、その結果、ディスプレイの電磁波シールド材料として適用した場合、画面のコントラストを高めることができる。
【0131】
<電磁波シールド材料の使用方法>
本発明における電磁波シールド材料は、例えば、これをディスプレイ前面に取り付けて使用される。ディスプレイとしては、CRT、PDP、ELパネル、液晶パネル等がある。
取り付け方によっては画面にモアレが生じる。モアレは走査線に対して、一定の角度以上に導電金属ライン(金属パターン)が交差する場合には目立ちにくくなる。本発明における電磁波シールド材料において最良の角度を検討した結果、直交メッシュ(90度交差)とした場合には、約30度付近が良好であることが判明した。
また、電磁波シールド材料は、その片面或いは両面の周辺部に、任意の場所から除電できるように、例えば、ベタ状の導電性層が形成されているものが好ましい。特に、本発明においては、電磁波シールド材料の周辺部にベタ状の導電性層を形成し、これを除電端子部とし、これにアース等を接続して、簡単に除電する方法がより好ましい態様である。
更に、電磁波シールド材料のいずれかの面には、赤外線遮断性を有する層、反射防止処理を有する層、防眩処理を有する層、表面硬度の高い耐擦性を有する層を形成することができる。なお、これらは例示であり、この他の形態で使用することもできる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[実施例1]
(基材の作製)
PETフィルム(製品名:M4100、東洋紡社製)を支持体として用い、その表面に下記の組成の中間層塗布液をロッド10番の塗布バーを使用して塗布し、100℃で1分乾燥し、膜厚1.6μmの赤外線吸収剤を含有する中間層を形成し、実施例1で用いる基材を作製した。
【0133】
<中間層塗布液>
・エポキシ樹脂 2g
(エピコート、Yuka−shell Co,Ltd.)
・赤外線吸収剤(IR125 和光純薬剤) 0.2g
・1−メトキシ−2−プロパノール 9g
・メチルエチルケトン 9g
【0134】
(本発明の態様(1)における(a1−1)工程)
基材の表面を、次の条件にてプラズマ処理して表面グラフト重合によりポリマー層を形成した。
島津製作所製LCVD−01型プラズマ処理装置を用いて5.33Pa(0.04torr)のアルゴンガス雰囲気下にて10秒間処理後、空気に曝し、中間層表面にパーオキシド基を導入した。このようにプラズマ処理された基材Aを、10wt%のα(スチレン−4−スルホニル)酢酸Na塩水溶液に浸漬し、15分間アルゴンガスをバブルした後、7時間60℃に加温することによって表面グラフト重合を行った。
グラフト重合後、基材を3000mlのイオン交換水中に浸漬し、グラフトポリマー以外のホモポリマーを除去することにより、ポリマー層を得た。
【0135】
(本発明の態様(1)における(a1−2)工程)
得られたポリマー層を、波長830nmの赤外光を発する赤外線レーザ(ビーム径20μm)にてパターン露光し、相互作用性領域を形成した。
【0136】
(本発明の(b)及び(c)工程)
次いで、相互作用性領域を有する基材を、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。
その後、下記組成の40℃の無電解メッキ浴に20分間浸漬し、金属パターンを形成した。
<無電解メッキ浴成分>
・OPCカッパ−H T1(奥野製薬(株)製) 6mL
・OPCカッパ−H T2(奥野製薬(株)製) 1.2mL
・OPCカッパ−H T3(奥野製薬(株)製) 10mL
・水 83mL
【0137】
[実施例2]
(基材の作製)
実施例1で使用したPETフィルムを支持体として用い、その表面に下記の組成の中間層塗布液をロッドバー18番を用いて塗布し、80℃で2分間乾燥し、膜厚6μmの中間層を形成した。
そして、上記中間層を備えた支持体に、400Wの高圧水銀灯(型番:UVL−400P、理工科学産業社製)を使用して、10分間光照射し、予備硬化させて、実施例2で用いる基材を作製した。
【0138】
<中間層塗布液>
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 2g
(共重合モル比率80/20、平均分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(IR125 和光純薬剤)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
【0139】
(本発明の態様(1)における(a1−1)工程)
予備硬化させた基材を、アクリル酸(10wt%)及び過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO4、0.01wt%)を含む水溶液に浸漬し、アルゴン雰囲気下で、上記の400Wの高圧水銀灯を使用し、30分間光照射した。光照射後、得られた基材をイオン交換水でよく洗浄し、アクリル酸がグラフトされた基材を得た。
【0140】
次に、水1リットルと、N−エチル−N’(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩40gと、N−ヒドロキシスクシンイミド6gと、からなる水溶液を調製し、そこにアクリル酸がグラフトされた基材を1時間浸漬し、エステル変換を行った。その後、更に、2−ニトロベンジルフェノール6gを加え、反応させて、光分解性官能基(極性変換基)を有するグラフトポリマーからなる、ポリマー層を得た。
【0141】
(本発明の態様(1)における(a1−2)工程)
得られたポリマー層を、波長400nmの青色光を発するレーザ(ビーム径20μm)にて像様に露光し、相互作用性領域を形成した。
【0142】
(本発明の(b)及び(c)工程)
相互作用性領域を有する基材を、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。
その後、実施例1と同一の40℃の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンを形成した。
【0143】
[実施例3]
(本発明の態様(2)における(a2)工程)
実施例2と同じ基材の表面に、アクリル酸をロッドバー#6を用いて塗布し、塗布面を厚さ25μmのPETフィルムでラミネートした。
更に、その上にクロムを蒸着したマスクパターンを重ね、上から、UV光を照射(400W高圧水銀灯:UVL−400P、理工科学産業(株)製、照射時間30秒)した。光照射後、マスクとラミネートフィルムを取り除き、水洗することにより、パターン状にポリアクリル酸がグラフトされてなる、相互作用性領域を形成した。
【0144】
(本発明の(b)及び(c)工程)
次いで、相互作用性領域を有する基材を、硝酸パラジウム(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。その後、0.2M(mol/l)のNaBH4水溶液に20分浸漬し、0価パラジウムに還元した。
更にその後、実施例1と同一の40℃の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンを形成した。
【0145】
[実施例4]
(本発明の態様(2)における(a2)工程)
実施例2と同じ基材に下記組成からなるポリマー塗布液をロッドバー#18を用いて塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.8μmだった。
【0146】
<ポリマー塗布液>
・親水性ポリマー(合成方法は下記に示す) 0.25g
・水 5g
・アセトニトリル 3g
【0147】
<上記親水性ポリマーの合成方法>
ポリアクリル酸(平均分子量25,000)18gをDMAc300gに溶解し、ハイドロキノン0.41gと2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート19.4gとジブチルチンジラウレート0.25gを添加し、65℃、4時間反応させた。得られたポリマーの酸価は7.02meq/gであった。1N(mol/l)水酸化ナトリウム水溶液でカルボキシル基を中和し、酢酸エチルに加えポリマーを沈殿させ、よく洗浄し親水性ポリマーを得た。
【0148】
そして、得られた膜に、マスクパターンを用いて、400W高圧水銀灯を使用し1分間パターン露光を行った。その後、得られた膜を水にて洗浄し、露光部に親水性ポリマーが結合してなる、相互作用性領域を形成した。
【0149】
(本発明の(b)及び(c)工程)
相互作用性領域を有する基材を、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。
その後、実施例1と同一の40℃の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンを形成した。
【0150】
[実施例5]
(本発明の(d)工程)
実施例4で形成された金属パターン(電磁波シールド膜)に、更に、室温で15分間電気メッキした。
<電気メッキ浴の組成>
・硫酸銅 38g
・硫酸 95g
・塩酸 1mL
・カッパ−グリームPCM(メルテックス(株)製) 3mL
・水 500g
【0151】
[実施例6]
(本発明の態様(3)における(a3−1)工程)
実施例1と同じPETを基材として用い、その基材上に、下記の組成の光重合性組成物をロッド17番の塗布バーを使用して塗布し、80℃で2分乾燥させた。次に、塗布層が形成されたフィルムに、400W高圧水銀灯(UVL−400P、理化学産業(株)製)を使用し、上からUV光を10分間照射し、予備硬化させ、感光層の形成した。
【0152】
<光重合性組成物>
・アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体 4g
(モル比率80/20、分子量10万)
・エチレンオキシド変性ビスフェノールAジアクリレート 4g
(M210、東亞合成(株)製)
・1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 1.6g
・1−メトキシ−2−プロパノール 16g
・カーボンブラック(MA100、三菱化学(株)製) 2g
【0153】
(本発明の態様(3)における(a3−2)工程)
次に、感光層表面に、スルホン酸ナトリウムの水溶液(30wt%)をロッドバー#12を用いて塗布し、乾燥させることなく塗布面を25μmのPETフィルムでラミネートした。そして、この上からUV光を照射(400W高圧水銀灯 照射時間1分)した。光照射後、ラミネートフィルムを取り除き、水洗することによりスルホン酸ナトリウムがグラフトされてなる、ポリマー層を得た。
【0154】
(本発明の態様(3)における(a3−3)工程)
得られたポリマー層を有する基材に、波長830nmの赤外光を発する赤外線レーザ(ビーム径20μm)にて像様に露光した。このレーザー露光により、レーザー光を吸収した感光層はアブレーションを起こし、ポリマー層と共に除去されて、相互作用性領域が形成された。
【0155】
(本発明の(b)及び(c)工程)
相互作用性領域を有する基材を、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。
その後、実施例1と同一の40℃の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンを形成した。
【0156】
[実施例7]
(本発明の態様(1)における(a1−1)工程)
実施例2と同じ基材を、t−ブチルアクリレート溶液(30質量%、溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG))に浸漬し、アルゴン雰囲気下で400W高圧水銀灯を使用し30分間露光をした。
光照射後に得られた基材をプロピレングリコールモノメチルエーテル(MFG)でよく洗浄し、基材上にポリ−t−ブチルアクリレートがグラフトされてなる、ポリマー層を得た。
【0157】
(本発明の態様(1)における(a1−2)工程)
次いで、ポリマー層上に、下記組成の溶液を塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.5μmだった。
・トリフェニルスルホニウムトリフラート 0.05g
・メチルエチルケトン(MEK) 1g
【0158】
次に、得られた膜に、マスクパターンを用いて、400W高圧水銀灯を使用し1分間パターン露光をし、90℃、2分間後加熱を行った。その後、得られた膜をメチルエチルケトン(MEK)にて洗浄し、露光部の官能基が親水性基に変換してなる、相互作用領域を形成した。
【0159】
(本発明の(b)及び(c)工程)
形成された相互作用領域を有する基材を、下記手法で作製した正電荷を有するAg粒子が分散した液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。
その後、実施例1と同一の40℃の無電解メッキ浴にて20分間無電解メッキし、金属パターンを形成した。
【0160】
<正電荷を有するAg粒子の合成手法>
過塩素酸銀のエタノール溶液(5mmol/l)50mlにビス(1,1−トリメチルアンモニウムデカノイルアミノエチル)ジスルフィド3gを加え、激しく攪拌しながら水素化ホウ素ナトリウム溶液(0.4mol/l)30mlをゆっくり滴下してイオンを還元し、4級アンモニウムで被覆されたAg粒子(銀粒子)の分散液を得た。
【0161】
[実施例8]
(本発明の態様(2)における(a2)工程)
実施例2と同じ基材に、下記組成からなる塗布液をロッドバー#18を用いて塗布した。なお、得られた膜の膜厚は0.8μmだった。
<塗布液の組成形成>
・重合性基含有ポリマー(合成方法は下記に示す) 0.25g
・シクロヘキシルケトン 8.0g
【0162】
<上記重合性基含有ポリマーの合成方法>
500mlの三口フラスコに、2−ヒドロキシエチルメタクリレート58.6gを入れ、アセトン250mlを加え、撹拌した。ピリジン39.2g、p−メトキシフェノール0.1gを添加した後に、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、2−ブロモイソブタン酸ブロミド114.9gを滴下ロートにて3時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに3時間撹拌した。反応混合液を水750mlに投入し、1時間撹拌した。水混合液を分液ロートを用いて、酢酸エチル500mlで3回抽出した。有機層を1mol/l塩酸500ml、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液500ml、飽和食塩水500mlで順次洗浄した。有機層に硫酸マグネシウム100gを入れ、脱水乾燥した後、濾過した。溶媒を減圧留去し、モノマーAを120.3g得た。
次に、1000ml三口フラスコにN,N−ジメチルアセトアミド40gを入れ、窒素気流下、70℃まで加熱した。モノマーA12.58g、メタクリル酸27.52g、V−601(和光純薬製)0.921gのN,N−ジメチルアセトアミド40g溶液を、2.5時間かけて滴下した。滴下終了後、90℃まで加熱し、更に2時間撹拌した。室温まで、反応溶液を冷却した後、水3.5Lに投入し、高分子化合物を析出させた。析出した高分子化合物を濾取、水で洗浄、乾燥し高分子化合物を30.5g得た。得られた高分子化合物をポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により、質量平均分子量を測定した結果、124,000であった。
200ml三口フラスコに得られた高分子化合物26.0g、p−メトキシフェノール0.1gを入れ、N,N−ジメチルアセトアミド60g、アセトン60gに溶解し、氷水を入れた氷浴にて冷却した。混合液温度が5℃以下になった後に、1、8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕−7−ウンデセン(DBU)60.4gを滴下ロート用いて、1時間かけて滴下した。滴下終了後、氷浴を外してさらに8時間撹拌した。反応液を濃塩酸17mlを溶解させた水2Lに投入し重合性基含有ポリマーを析出させた。析出した重合性基含有ポリマーを濾取、水で洗浄、乾燥し15.6g得た。
【0163】
得られた膜に、マスクパターンを用いて、400W高圧水銀灯を使用し3分間パターン露光を行った。その後、得られた膜を飽和重曹水に5分浸漬して、未露光部を現像し、相互作用性領域を形成した。
【0164】
(本発明の(b)及び(c)工程)
得られた相互作用性領域を有する基材を、硝酸銀(和光純薬製)0.1質量%の水溶液に1時間浸漬した後、蒸留水で洗浄した。
その後、実施例1と同一の40℃の無電解メッキ浴にて50℃、20分間無電解メッキし、金属パターンを形成した。
【0165】
〔評価〕
(金属パターンの形状評価)
実施例1〜8で得られた電磁波シールド材料における金属パターンを、光学顕微鏡(ニコン製、OPTI PHOTO−2)を用いて、開口部のパターン形状、金属パターン幅、金属パターン間の幅、交点の太りを測定した。評価指標は以下の通りである。また、測定結果を下記表1に示す。
○:交点の太りが無いもの
×:交点の太りがあるもの
【0166】
(可視光透過率の測定)
実施例1〜8で得られた電磁波シールド材料を、分光光度計(バリアン製)を用い、400〜800nmにおける透過率の平均値を求めた。測定結果を下記表1に示す。
【0167】
(密着性の評価)
実施例1〜8で得られた電磁波シールド材料を、JIS 5400に順じて碁盤目テープ法により膜密着性(基板と金属パターンとの密着性)を評価した。なお、下記評価指標において、〇は、カットした碁盤目に対するテープの引き剥がしテストを1回行ったところ、いずれも1目の剥離も見られなかったことを意味する。測定結果を下記表1に示す。
○:剥離が無かった
×:剥離があった
【0168】
(表面抵抗の評価)
実施例1〜8で得られた電磁波シールド材料における金属パターンが形成された面の表面抵抗を、ロレスターEP(三菱化学製)を用いて測定した。測定結果を下記表1に示す。
【0169】
【表1】


【0170】
上記表1の結果によれば、本発明の実施例により得られた電磁波シールド材料では、そのいずれもが、従来の技術では困難であった幅30μm以下の細線が形成されていることがわかった。なお、これらの細線幅は、上記の本発明の態様(1)〜(3)や、露光条件により制御可能であることが確認された。例えば、アブレーションにより相互作用性領域を形成した場合には、細線幅が28μm程度であり、実用上充分な細線幅が得られることが確認された。更に、マスクを用いたUV露光により相互作用性領域を形成した場合には、細線幅が10〜15μm程度であり、非常に細かい金属パターンを得ることができた。このように、本発明によれば、目的により所望の細線幅を得ることができる。また、パターンの交点の太りも見られなかった。
また、本発明の実施例により得られた電磁波シールド材料は、いずれも、電界シールド効果及び磁界シールド効果に優れ、更に、透明性や、基板と金属パターンとの密着性にも優れていることが判明した。
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【住所又は居所】神奈川県南足柄市中沼210番地
【出願日】 平成16年2月9日(2004.2.9)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳

【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳

【識別番号】100085279
【弁理士】
【氏名又は名称】西元 勝一

【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志

【公開番号】 特開2005−223271(P2005−223271A)
【公開日】 平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願番号】 特願2004−32390(P2004−32390)