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【発明の名称】 電磁波吸収シート
【発明者】 【氏名】宇津木 格

【氏名】山下 正巳

【氏名】麻木 和美

【氏名】吉眞 崇史

【氏名】目黒 卓

【要約】 【課題】デジタル化された携帯電話、デジタルカメラ、パソコン等の小型の電子機器の更なる薄型化の要請に対応でき、そして、これらの小型の電子機器から発生する高長波の電磁波を充分に遮断することができると共に、これらの小型の電子機器における難燃性を充分に達成することができ、しかも、焼却処理の際に有害なガスを発生しない電磁波吸収シートを低コストで提供する。

【解決手段】(イ)ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される4〜20μm厚の基材層1、(ロ)該基材層1の表面に設けた軟磁性金属の粉末とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる10〜100μm厚の軟磁性層2、及び、(ハ)該軟磁性層2の表面に設けた非ハロゲン系の難燃剤とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる6〜70μm厚の難燃層3、を有する電磁波吸収シート10とし、その全体の厚みを20〜150μmする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される4〜20μm厚の基材層、(ロ)該基材層の表面に設けた軟磁性金属の粉末とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる10〜100μm厚の軟磁性層、及び、(ハ)該軟磁性層の表面に設けた非ハロゲン系の難燃剤とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる6〜70μm厚の難燃層、を有する電磁波吸収シートであって、その全体の厚みを20〜150μmとしたことを特徴とする電磁波吸収シート。
【請求項2】
前記軟磁性金属の粉末が粒径50nm以下の結晶粒を主体として構成され、そして、その平均粒径が20μm以上であると共に、その形状がアスペクト比10以上の扁平状をなしていることを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収シート。
【請求項3】
前記軟磁性金属の粉末が、Fe基ナノ結晶磁性金属粉末であることを特徴とする請求項2に記載の電磁波吸収シート。
【請求項4】
前記軟磁性体層が、前記結合剤100重量部に対して、前記軟磁性金属の粉末を600〜1200重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電磁波吸収シート。
【請求項5】
前記非ハロゲン系の難燃剤が、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電磁波吸収シート。
【請求項6】
前記難燃層が、前記結合剤100重量部に対して、難燃剤を200〜900重量部、好ましくは、300〜800重量部の割合で含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電磁波吸収シート。
【請求項7】
前記難燃層が、前記結合剤100重量部に対して、難燃助剤として赤燐を10〜100部の割合で含有することを特徴とする請求項6に記載の電磁波吸収シート。
【請求項8】
前記基材層が、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の電磁波吸収シート。
【請求項9】
前記軟磁性層及び難燃層を構成する結合剤が、アクリル系の樹脂であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の電磁波吸収シート。
【請求項10】
前記電磁波吸収シートのSパラメータ法による1GHzにおける複素透磁率の実数項値が3以上であり、そして、該複素透磁率の虚数項値が4以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の電磁波吸収シート。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器の装置内部から発生する電磁波及び該装置外部から伝搬される電磁波を遮蔽又は吸収して電磁波ノイズを抑制すると共に難燃性とした電磁波吸収シートに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器から発生する不要電磁波は、他の電子機器に影響を及ぼして誤作動を招く原因となっている。これらの不要電磁波の弊害を抑制するするために、磁性粉末をゴム又は合成樹脂等の結合剤中に混合させた樹脂組成物をシート状に成形加工して得た様々な電磁波吸収シートが広く用いられている。
【0003】
このような電磁波吸収シートには、不要な電磁波ノイズを吸収又は抑制させる性能以外に、その用途によっては難燃性を有することが要求される。従来、これらの要求特性を満たすために、例えば、結合剤として、燃焼しにくい成形性の優れた塩素化ポリエチレンが用いられており、また、ハロゲン元素を含まない結合剤が用いられたものであっても、難燃剤としてハロゲン化合物を混合したものが用いられていた。しかしながら、これらの電磁波吸収シートは、廃棄物となったときに焼却処理すると、有害なダイオキシンを発生する恐れがあり、このような環境に対する影響の観点から、他の材料への転換が図られている。
【0004】
これらの電磁波吸収シートとしては、例えば、軟磁性金属の粉末、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムよりなる難燃剤、並びに、アクリル系樹脂よりなる結合剤を構成成分とする樹脂組成物で形成された1.0mm厚の電磁波吸収シートが提案されている(特許文献1を参照。)。
【0005】
これらの電磁波吸収シートは、軟磁性金属の粉末よりなる電波吸収剤、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムよりなる難燃剤、並びに、アクリル樹脂よりなる結合剤を構成成分とする樹脂組成物で形成されるので、その成形性を確保するために、1.0mm、即ち、1000μmとその膜厚を厚くする必要があったが、最近、急速に普及したデジタル化された携帯電話、デジタルカメラ、パソコン等の小型の電子機器の更なる薄型化の要請に対応できない、という問題があった。そして、従来の電磁波吸収シートは、前述のとおり膜厚を厚くするので、電波吸収剤の添加量に対する難燃剤の量を多くしないと、充分な難燃性が得られなくなるという問題があった。さらに、電磁波吸収シートに多量の軟磁性金属の粉末並びに水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムよりなる難燃剤を含有させると、製造コストが上昇するという問題があった。
【特許文献1】特開2001−308583号公報
【特許文献2】特開平11−269503号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる問題を解決することを目的としている。
【0007】
即ち、本発明は、デジタル化された携帯電話、デジタルカメラ、パソコン等の小型の電子機器の更なる薄型化の要請に対応でき、そして、これらの小型の電子機器から発生する高周波の電磁波ノイズを充分に抑制することができると共に、これらの小型の電子機器における難燃性を充分に達成することができ、しかも、焼却処理の際に有害なガスを発生しない電磁波吸収シートを低コストで提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
従来の電磁波吸収シートは、前述のとおり、軟磁性金属の粉末並びに水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムよりなる難燃剤が多量に配合されているので、その成形性を確保するために、1.0mm、即ち、1000μmとその膜厚を厚くする必要があったが、本発明者らは、従来の電磁波吸収シートを薄膜の軟磁性層と薄膜の難燃層とに分離することにより、10〜100μm厚の軟磁性層及び6〜70μm厚の難燃層とすると共に、4〜20μm厚の基材層とし、しかも、全体の厚みを20〜150μmとしたので、デジタル化された携帯電話、デジタルカメラ、パソコン等の小型の電子機器の更なる薄型化の要請に対応でき、そして、これらの小型の電子機器から発生する高長波の電磁波を充分に遮断することができると共に、これらの小型の電子機器における難燃性を充分に達成することができ、しかも、焼却処理の際に有害なガスを発生しない電磁波吸収シートを低コストで提供することができることを見出して本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、請求項1に記載された発明は、上記目的を達成するために、(イ)ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される4〜20μm厚の基材層、(ロ)該基材層の表面に設けた軟磁性金属の粉末とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる10〜100μm厚の軟磁性層、及び、(ハ)該軟磁性層の表面に設けた非ハロゲン系の難燃剤とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる6〜70μm厚の難燃層、を有する電磁波吸収シートであって、その全体の厚みを20〜150μmとしたことを特徴とする電磁波吸収シートである。
【0010】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記軟磁性金属の粉末が粒径50nm以下の結晶粒を主体として構成され、そして、その平均粒径が20μm以上であると共に、その形状がアスペクト比10以上の扁平状をなしていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項3に記載された発明は、請求項2に記載された発明において、前記軟磁性金属の粉末が、Fe基ナノ結晶磁性金属粉末であることを特徴とするものである。
【0012】
請求項4に記載された発明は、請求項1〜3のいずれかに記載された発明において、前記軟磁性体層が、前記結合剤100重量部に対して、前記軟磁性金属の粉末を600〜1200重量部の割合で含有することを特徴とするものである。
【0013】
請求項5に記載された発明は、請求項1〜4のいずれかに記載された発明において、前記非ハロゲン系の難燃剤が、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムであることを特徴とするものである。
【0014】
請求項6に記載された発明は、請求項1〜5のいずれかに記載された発明において、前記難燃層が、前記結合剤100重量部に対して、難燃剤を200〜900重量部、好ましくは、300〜800重量部の割合で含有することを特徴とするものである。
【0015】
請求項7に記載された発明は、請求項6に記載された発明において、前記難燃層が、前記結合剤100重量部に対して、難燃助剤として赤燐を10〜100部の割合で含有することを特徴とするものである。
【0016】
請求項8に記載された発明は、請求項1〜7のいずれかに記載された発明において、前記基材層が、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムで構成されていることを特徴とするものである。
【0017】
請求項9に記載された発明は、請求項1〜8のいずれかに記載された発明において、前記軟磁性層及び難燃層を構成する結合剤が、アクリル系の樹脂であることを特徴とするものである。
【0018】
請求項10に記載された発明は、請求項1〜9のいずれかに記載された発明において、前記電磁波吸収シートのSパラメータ法による1GHzにおける複素透磁率の実数項値が3以上であり、そして、該複素透磁率の虚数項値が4以上であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、(イ)ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される4〜20μm厚の基材層、(ロ)該基材層の表面に設けた軟磁性金属の粉末とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる10〜100μm厚の軟磁性層、及び、(ハ)該軟磁性層の表面に設けた非ハロゲン系の難燃剤とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる6〜70μm厚の難燃層、を有する電磁波吸収シートとし、その全体の厚みを20〜150μmとしたので、デジタル化された携帯電話、デジタルカメラ、パソコン等の小型の電子機器の更なる薄型化の要請に対応でき、そして、これらの小型の電子機器から発生する高周波の電磁波ノイズを充分に抑制することができると共に、これらの小型の電子機器における難燃性を充分に達成することができ、しかも、焼却処理の際に有害なガスを発生しない電磁波吸収シートを低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明一実施の形態を示す電磁波吸収シートの断面図である。
【0021】
図1において、10は、電磁波吸収シートである。本発明の電磁波吸収シート10は、(イ)ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される4〜20μm厚の基材層1、(ロ)該基材層1の表面に設けた軟磁性金属の粉末とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる10〜100μm厚の軟磁性層2、及び、(ハ)該軟磁性層2の表面に設けた非ハロゲン系の難燃剤とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる6〜70μm厚の難燃層3、を有している。そして、本発明のする電磁波吸収シート10は、その全体の厚みが20〜150μmとされている。本発明における電磁波吸収シート10の全体の厚みは、前述のとおり、20〜150μmとしたが、好ましくは、100〜20μmであり、さらに、さらに好ましくは、60〜20μmである。
【0022】
本発明における基材層1は、電磁波吸収シート10の機械的強度を保つための層であるので、ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される良好な機械的強度を有する各種の熱可塑性樹脂フィルムで形成されるが、その厚みは、4〜20μmである。その厚みが、20μmを越えるものでは、電磁波吸収シート10の強度を充分に保持することができるが、電磁波吸収シート10全体の厚みが厚くなってしまうので好ましなく、また、その厚みが、4μm未満では、電磁波吸収シート10の強度を保持することができなくなる。それ故、本発明においては、その基材層1の厚みは、4〜20μmとされる。
【0023】
前記ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成されるその基材層1は、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」という。)フィルム、ポリフエニレンスルフィドフィルム、ポリイミドフィルム、及び、エチレンエチルアクリレートフィルムで構成されるが、さらに好ましくは、延伸されたポリエチレンテレフタレートフィルムで構成される。延伸されたPETフィルムは、薄肉であっても優れた機械強度を有すると共に、平滑な表面を有しているので、本発明における基材層1を形成する材料として特に好ましい。
【0024】
本発明における軟磁性層2は、軟磁性金属の粉末とハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤とからなる。かかる軟磁性層2は、軟磁性金属の粉末をハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤に添加して得た樹脂組成物をフィルム状上に成形して得ることができる。
【0025】
前記「軟磁性金属の粉末」としては、ソフトフェライト、Fe−Si−Al、Fe−Cr−Al、Fe−Si等の軟磁性金属の粉末が使用できるが、好ましくは、粒径50nm以下の結晶粒を主体として構成され、そして、その平均粒径が20μm以上であると共に、その形状がアスペクト比10以上の扁平状をなしているものが使用できる。また、前記「粒径50nm以下の結晶粒を主体として構成され、そして、その平均粒径が20μm以上であると共に、その形状がアスペクト比10以上の扁平状をなしている軟磁性金属の粉末」としては、Fe−Cu−Cr−Nb−Si−B、Fe−Co−Cu−Nb−Si−B、Fe−Zn−Cu−B等の軟磁性金属の粉末が使用できるが、Feを主成分として、ナノ結晶組織により軟磁性を確保するもの、即ち、Fe基ナノ結晶磁性金属粉末(特許文献2を参照。)であれば、その組成は特に限定されない。
【0026】
この「Fe基ナノ結晶軟磁性金属粉末」は、アトマイズ法、キャビテーション法等の方法により、予め、アモルファス合金粉末を作製し、これをボールミルやアトリュ―ションミルで扁平化した後、結晶化のための熱処理を施して、ナノ結晶化させて製造することができる。また、溶湯急冷法により厚さ25μm以下のアモルファス合金の薄帯を作成した後、これを粉砕し結晶化のための熱処理を施すことでも製造することができる。
【0027】
この「Fe基ナノ結晶軟磁性金属粉末」の粒径は、好ましくは、20μm以上、アスペクト比は10以上の扁平状である。「Fe基ナノ結晶軟磁性金属粉末」の粒径が20μm未満であるか、又は、アスペクト比が10未満であると、反磁界の影響が著しくなるので、所望の磁気特性が得られなくなることがある。
【0028】
前記軟磁性層2を形成する「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」は、1)軟磁性金属の粉末の高充填が可能であること、2)柔軟性を有していること、及び、3)基材1との密着性が良く凝集破壊が起こらないこと、という条件を満たすものから選択される。これらの「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」は、天然ゴム系樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、これらの変性樹脂又はこれらの複合体であるが、好ましくは、アクリル系樹脂である。ここでいう「アクリル系樹脂」とは、アクリル酸、メタクリル酸、及び、それらの誘導体の2種以上からなる共重合体であり、一般的なものを適宜選択して採用できる。前記「アクリル系樹脂」は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、ドデシル基、ラウリル基、トリデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコキシル基等の炭素数が20以下のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルの1種以上からなる重合体もしくは共重合体が挙げられる。また、一部の共重合成分としては、アクリル酸ヒドロキエチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドリキシプロピル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、N―メチロールアクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸グリシジル、酢酸ビニル、スチレン、イソプレン、ブタジエン、イソブチレン、ビニルエーテル等の1種以上を含有したものであってもよい。アクリル系樹脂は、耐候性及び柔軟性に優れており、また、軟磁性金属の粉末を高充填させることができるので、前記軟磁性層2を形成する「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」として好ましい。さらに、このような結合剤に、必要に応じて、一般的に用いられている硬化剤、分散材等添加剤を含有してもよい。
【0029】
本発明における軟磁性体層2は、好ましくは、ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤100重量部に対して、前記軟磁性金属の粉末を600〜1200重量部の割合で含有する樹脂組成物で形成される。前記軟磁性金属の粉末の含有量が600部未満であると、所望の磁気特性が得られなくなるので、電磁波吸収性が低下し、また、前記軟磁性金属の粉末の含有量が1200部を越えると、磁気特性に変化がなくなるので、電磁波吸収性が向上せず、材料費のみがかかって好ましくない。
【0030】
前記樹脂組成物は、前記「軟磁性金属酸化物の粉末」と「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」とを均一に混合することによって得ることができるが、その混合方法は、均一に混合できる方法であるかぎり特に限定されるものではなく、例えば、テーブルミキサーを用いて公知の方法で混合すればよい。本発明における軟磁性層2は、このようにして得られた樹脂組成物を基材層1の上に均一に塗布し、乾燥させることにより形成される。このような樹脂組成物の塗布、乾燥の方法としては、一般的な公知の方法により適宜選択できるが、乾燥後の厚さを薄くするためには、塗布はロールコーターを用いて行うことが好ましい。このように乾燥された軟磁性層2の厚さは、好ましくは、10〜100μmであり、さらに好ましくは、10〜70μmである。この軟磁性層2の厚さが10μm未満であると、これに難燃層3を積層したときに十分な電磁波の吸収効果が得られなくなり、また、100μmを超えると、難燃層を積層したときに充分な難燃性が得られなくなる。
【0031】
次に、難燃層3について述べる。本発明における難燃層3の「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」は、前記軟磁性層2の「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」と同様の樹脂を用いることができる。また、難燃層3に含有される「非ハロゲン系の難燃剤」は、好ましくは、水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムである。このように非ハロゲン系の難燃剤として水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムを用いると、これらを前記「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」に高充填することができる。
【0032】
これらの難燃剤の添加量は、好ましくは、「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」100重量部に対して、200〜900重量部、好ましくは、300〜800重量部である。前記難燃剤の添加量が200重量部未満であると、難燃層3を軟磁性層2に積層したときに十分な難燃性が得られなくなり、また、前記難燃剤の添加量が900部を超えると、難燃層3を軟磁性層2に積層したときに電磁波吸収シート10の柔軟性が不十分となる。前記難燃層3は、前記結合剤100重量部に対して、難燃助剤として赤燐を10〜100部の割合で含有することができる。このように、前記難燃層3が、前記結合剤100重量部に対して、難燃助剤として赤燐を10〜100部の割合で含有すると、その難燃性がいっそう向上する。
【0033】
本発明によれば、このようにして基材層1の表面に設けた軟磁性層2の表面に難燃層3を設けると、基材層1及び軟磁性層2が難燃剤を含まなくても、電磁波吸収シート10が、全体として、高い難燃性を示す。
【0034】
前記難燃層3を形成する「非ハロゲン系の難燃剤」と「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」とからなる樹脂組成物は、前記「軟磁性金属酸化物の粉末」と「ハロゲン元素を含まない高分子化合物で構成される結合剤」とを混合して樹脂組成物を得る方法と同様の方法によって得ることができる。そして、本発明における難燃層3は、このようにして得た樹脂組成物を前記軟磁性層2を形成するのと同様の方法によって得ることができる。また、これらの難燃剤及び難燃助剤の添加量並びに難燃層の厚さを適宜変えることにより、必要に応じた難燃性を達成することができる。
【0035】
従来の電磁波吸収シートは、前述のとおり、軟磁性金属の粉末並びに水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウムよりなる難燃剤が多量に配合されているので、その成形性を確保するために、1.0mm、即ち、1000μmとその膜厚を厚くする必要があったが、本発によれば、従来の電磁波吸収シートを薄膜の軟磁性層と薄膜の難燃層とに分離することにより、10〜100μm厚の軟磁性層及び6〜70μm厚の難燃層とすると共に、4〜20μm厚の基材層とし、しかも、全体の厚みを20〜150μmとしたので、デジタル化された携帯電話、デジタルカメラ、パソコン等の小型の電子機器の更なる薄型化の要請に対応でき、そして、これらの小型の電子機器から発生する高長波の電磁波を充分に遮断することができると共に、これらの小型の電子機器における難燃性を充分に達成することができ、しかも、焼却処理の際に有害なガスを発生せず、さらには、軟磁性金属の粉末及び難燃剤の使用量を低減して製造コストを低減できる。
【0036】
本発明においては、その磁波吸収シートのSパラメータ法による1GHzにおける複素透磁率の実数項値が3以上であり、そして、該複素透磁率の虚数項値が4以上である。このように、磁波吸収シートのSパラメータ法による1GHzにおける複素透磁率の実数項値が3以上であり、そして、該複素透磁率の虚数項値が4以上であると、高周波の電磁ノイズを抑制することができる。
【0037】
(実施例1)
平均粒径30μmの軟磁性粉末(日立金属社製、ファインメット(登録商標))1000重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を16μmのPET基材上にロールコーターにより塗布した後、80℃で乾燥して、厚さ50μmの積層シートを作成した。次に、水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライト)300重量部、赤燐(日本化学工業社製、ヒシガード)20重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を前記積層シートの軟磁性層側の表面に、ロールコーターにより塗布後、60℃で乾燥させ、厚さ30μmになるように難燃層を積層し、電磁波吸収シートを作成した。
【0038】
(実施例2)
平均粒径30μmの軟磁性粉末(日立金属社製、ファインメット(登録商標))1000重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を16μmのPET基材上にロールコーターにより塗布した後、80℃で乾燥して、厚さ50μmの積層シートを作成した。次に、水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライト)500重量部、赤燐(日本化学工業社製、ヒシガード)40重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を前記積層シートの軟磁性層側の表面に、ロールコーターにより塗布後、60℃で乾燥させ、厚さ30μmになるように難燃層を積層し、電磁波吸収シートを作成した。
【0039】
(実施例3)
平均粒径30μmの軟磁性粉末(日立金属社製、ファインメット(登録商標))1000重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を16μmのPET基材上にロールコーターにより塗布した後、80℃で乾燥して、厚さ50μmの積層シートを作成した。次に、水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライト)700重量部、赤燐(日本化学工業社製、ヒシガード)60重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を前記積層シートの軟磁性層側の表面に、ロールコーターにより塗布後、60℃で乾燥させ、厚さ30μmになるように難燃層を積層し、電磁波吸収シートを作成した。
【0040】
(実施例4)
平均粒径30μmの軟磁性粉末(日立金属社製、ファインメット(登録商標))1000重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を16μmのPET基材上にロールコーターにより塗布した後、80℃で乾燥して、厚さ30μmの積層シートを作成した。次に、水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライト)300重量部、赤燐(日本化学工業社製、ヒシガード)20重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を前記積層シートの軟磁性層側の表面に、ロールコーターにより塗布後、60℃で乾燥させ、厚さ30μmになるように難燃層を積層し、電磁波吸収シートを作成した。
【0041】
(比較例1)
平均粒径30μmの軟磁性粉末(日立金属社製、ファインメット(登録商標))1000重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を16μmのPET基材上にロールコーターにより塗布した後、80℃で乾燥して、厚さ60μmの積層シートを作成した。
【0042】
(比較例2)
平均粒径30μmの軟磁性粉末(日立金属社製、ファインメット(登録商標))1000重量部及び水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライト)500重量部、赤燐(日本化学工業社製、ヒシガード)20重量部及びアクリル樹脂(日本ゼオン社製、Nipol)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を前記比較例1で得た積層シートの軟磁性層側の表面に、ロールコーターにより塗布後、60℃で乾燥させ、厚さ30μmになるように難燃層を積層し、電磁波吸収シートを作成した。
【0043】
(比較例3)
平均粒径30μmの軟磁性粉末(日立金属社製、ファインメット(登録商標))1000重量部及び水酸化アルミニウム(昭和電工社製、ハイジライト)700重量部、赤燐(日本化学工業社製、ヒシガード)60重量部及びアクリル樹脂(高圧ガス社製、ペガール)100重量部を混練して樹脂組成物を得た。この樹脂組成物を前記比較例1で得た積層シートの軟磁性層側の表面に、ロールコーターにより塗布後、60℃で乾燥させ、厚さ30μmになるように難燃層を積層し、電磁波吸収シートを作成した。
【0044】
以上、実施例1〜3及び比較例1〜3で得た電磁波吸収シートの電波吸収性及び難燃性を評価した。本発明における電磁波吸収の評価は、サンプルの透磁率の測定によって行った。透磁率は磁化のし易さを表す。前記透過率は、外径7mm、内径3mmの円柱に加工したシートを、ヒューレット・パッカード社製ネットワークアナライザ8720Dを用いて、Sパラメータ法にしたがって、10MHz〜10GHzの周波数域で複素比透磁率を測定することによって行った。この透磁率が高いものほど、物質中に磁束が通り易くなるので、電磁波吸収の特性が大きくなる。電磁波吸収性そのものは電磁波吸収シートの使用のされ方によっても大きく変化するので、透磁率によって電磁波吸収シート自体の特性を表す方法が広く採用されている。そして、本発明における難燃性の評価は、UL94規格によるフィルム材料の垂直燃焼試験(VTM)の結果に基づいて行った。測定結果は、次の表1に示される。表1において、難燃性は、VTM−2、VTM−1,及び、VTM−0の順に良くなり、VTM−0が最良となる。
【0045】
【表1】


【0046】
実施例1〜4で得た電磁波吸収シートは、いずれも高透磁率と難燃性とが認められ、実施例1では、高透磁率と難燃性VTM−2が得られ、実施例2では、高透磁率と難燃性VTM−1が得られ、実施例3では、高透磁率と難燃性VTM−0が得られ、そして、実施例4では、高透磁率と難燃性VTM−0が得られた。これらに対して、比較例1及び比較例2で得た電磁波吸収シートは、難燃性が認められず、また、比較例3で得た電磁波吸収シートは、難燃性は得られるが、十分な透磁率を有するものではなかった。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明一実施の形態を示す電磁波吸収シートの断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 基材層
2 軟磁性層
3 難燃層
10 電磁波吸収シート
【出願人】 【識別番号】000003296
【氏名又は名称】電気化学工業株式会社
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
【出願日】 平成16年2月5日(2004.2.5)
【代理人】 【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄

【識別番号】100097858
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 浩史

【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男

【識別番号】100075421
【弁理士】
【氏名又は名称】垣内 勇

【公開番号】 特開2005−223157(P2005−223157A)
【公開日】 平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願番号】 特願2004−29858(P2004−29858)